JP6855156B2 - チーズおよび/または卵黄高含量冷菓並びにその製造方法 - Google Patents

チーズおよび/または卵黄高含量冷菓並びにその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含む冷菓(以下、「チーズ/卵黄高含量冷菓」と称する)、およびその製造方法に関する。また、本発明は、当該チーズ/卵黄高含量冷菓について、乳化分散していた脂肪球が過度に凝集する現象(チャーニング現象)を抑制し、乳化を安定化させる方法に関する。
チーズ含有冷菓を製造する方法として、例えば、アルカリ性物質で処理したチーズ等を用いる方法(特許文献1)、グリセリンを加えて加熱乳化したチーズと冷菓を、層状またはうず巻き状に成形する方法(特許文献2)、およびプロセスチーズに適量の牛乳、水、食塩、卵黄を加え、混合し熱を加え、クリーム状にし、それを冷却し、付加物を加え混合し、フリーザーに入れ冷凍する方法(特許文献3)等が知られている。
また、卵黄含有冷菓として、例えば、卵黄、糖類および水からなる液状混合物を100℃以上の温度で沸騰させて卵黄成分を熱変性することによって得られた卵黄加工品を、卵黄固形分として0.1〜10重量%含有する冷菓(特許文献4)、−20℃における硬度が6kgf以下であって、卵黄を2〜20重量%含有することを特徴とする冷菓(特許文献5)等が知られている。
特許文献1:特開昭61−149050号公報
特許文献2:特開平08−256696号公報
特許文献3:特開平06−253744号公報
特許文献4:特開平09−313132号公報
特許文献5:特開2004−016088号公報
特許文献1〜3にチーズ含有冷菓に関する記述があるように、実際の市場においてもチーズ含有冷菓が流通している。しかし、チーズ含量が5質量%を超える高い割合でチーズを含む冷菓(チーズ高含量冷菓)に関しては数多くない。
そこで、本発明者らは、新たな市場を開拓するため、チーズ高含量冷菓の製造を企図して種々検討を行ったところ、チーズを含有する冷菓において、チーズ含量を増加させると、乳化安定化を図ることが非常に難しいという課題を見出した。また、特許文献4および5には、卵黄を高い割合で含む冷菓が開示されているが、チーズ含量を増加させた場合と同様に、卵黄を含有する冷菓において、卵黄含量を増加させると、乳化安定化を図ることが非常に難しいという課題を見出した。
具体的には、実際の製造において、乳化安定を図ることが難しく、また、一時は乳化した場合であっても、乳化後のフリージング工程や氷との混合工程において、乳化分散していた脂肪球が過度に凝集する現象(チャーニング現象)が生じ、食感が著しく低下するという問題が発生することを見出した。
そこで、本発明は、従来技術では達成できなかった、チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含む冷菓(チーズ/卵黄高含量冷菓)であって、フリージング工程や氷との混合工程において生じるチャーニング現象が有意に抑制され、乳化安定性に優れたチーズ/卵黄高含量冷菓、およびその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、チーズ/卵黄高含量冷菓について、フリージング工程や氷との混合工程において生じるチャーニング現象を抑制する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねていたところ、チーズ/卵黄高含量冷菓の製造に際して、下記のいずれか少なくとも一種の添加剤を配合することで、当該課題が解消できることを見出した。
(a)炭酸塩、
(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステル、
(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を有するものである。
(I)耐チャーニング性チーズ/卵黄高含量冷菓
(I−1)チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含む冷菓(チーズ/卵黄高含量冷菓)であって、下記(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を配合して調製されることを特徴とする冷菓;
(a)炭酸塩、
(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステル、
(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上。
(I−2)少なくとも(a)炭酸塩を配合して調製されるチーズ/卵黄高含量冷菓であって、炭酸塩の配合量が0.01〜0.5質量%であることを特徴とする(I−1)記載の冷菓。
(I−3)少なくとも(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを配合して調製されるチーズ/卵黄高含量冷菓であって、グリセリン脂肪酸エステルの含有量が総量で0.01〜1.2質量%であることを特徴とする(I−1)記載の冷菓。
(I−4)少なくとも(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上の添加剤を配合して調製されるチーズ/卵黄高含量冷菓であって、当該添加剤の含有量が総量で0.01〜1.2質量%であることを特徴とする(I−1)記載の冷菓。
(I−5)添加剤が、上記(a)〜(c)からなる群から選択される1種の添加剤であるか、または(a)と(c)の組み合わせである、(I−1)〜(I−4)のいずれかに記載の冷菓。
(II)耐チャーニング性チーズ/卵黄高含量冷菓または当該冷菓用ミックスの製造方法
(II−1)チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含む冷菓(チーズ/卵黄高含量冷菓)または当該冷菓用ミックスの製造工程において、下記(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を配合する工程を有することを特徴とする、上記チーズ/卵黄高含量冷菓または当該冷菓用ミックスの製造方法;
(a)炭酸塩、
(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステル、
(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上。
(II−2)少なくとも(a)炭酸塩を配合する製造方法であって、チーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中の炭酸塩の配合割合が0.01〜0.5質量%となるように(a)炭酸塩を配合することを特徴とする、(II−1)記載の製造方法。
(II−3)少なくとも(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを配合する製造方法であって、チーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中の2種以上のグリセリン脂肪酸エステルの含有割合が総量で0.01〜1.2質量%となるように(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを配合することを特徴とする、(II−1)記載の製造方法。
(II−4)少なくとも(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上の添加剤を配合する製造方法であって、チーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中の上記添加剤の含有割合が総量で0.01〜1.2質量%となるように、当該添加剤を配合することを特徴とする(II−1)記載の製造方法。
(II−5)添加剤が、上記(a)〜(c)からなる群から選択される1種の添加剤であるか、または(a)と(c)の組み合わせである、(II−1)〜(II−4)のいずれかに記載の製造方法。
(III)チーズ/卵黄高含量冷菓のチャーニング抑制方法
(III−1)チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含む冷菓(チーズ/卵黄高含量冷菓)に対して、下記(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を配合することを特徴とする、上記チーズ/卵黄高含量冷菓のチャーニング抑制方法;
(a)炭酸塩、
(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステル、
(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上。
(III−2)少なくとも(a)炭酸塩を配合するチャーニング抑制方法であって、チーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中の炭酸塩の配合割合が0.01〜0.5質量%となるように(a)炭酸塩を配合することを特徴とする、(III−1)記載のチャーニング抑制方法。
(III−3)少なくとも(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを配合するチャーニング抑制方法であって、チーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中の2種以上のグリセリン脂肪酸エステルの含有割合が総量で0.01〜1.2質量%となるように(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを配合することを特徴とする、(III−1)記載のチャーニング抑制方法。
(III−4)少なくとも(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上の添加剤を配合するチャーニング抑制方法であって、チーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中の上記添加剤の含有割合が総量で0.01〜1.2質量%となるように、当該添加剤を配合することを特徴とする(III−1)記載のチャーニング抑制方法。
(III−5)添加剤が、上記(a)〜(c)からなる群から選択される1種の添加剤であるか、または(a)と(c)の組み合わせである、(III−1)〜(III−4)のいずれかに記載のチャーニング抑制方法。
本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓は、上記する(a)〜(c)のいずれの添加剤をも配合しないチーズ/卵黄高含量冷菓と比較して、フリージング工程や氷との混合工程等において生じるチャーニング現象(脂肪球の凝集)が有意に抑制されており、乳化が安定に保持されている。その結果、本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓は、上記添加剤を配合しないチーズ/卵黄高含量冷菓と比較して、チーズ/卵黄高含量冷菓の組織が均一で緻密であり、またその食感も滑らかで、ざらつきのない、食感が良好なチーズ/卵黄高含量冷菓である。
(I)耐チャーニング性チーズ/卵黄高含量冷菓およびその製造方法
(1)チーズ/卵黄高含量冷菓
本発明が対象とする冷菓は、冷やして供される菓子のうち、フリージング工程や氷との混合工程を経て製造される乳製品を含む菓子である。具体的には、乳製品を含む原料を、冷やしながら空気を含むように撹拌して、半流動体のクリーム状に凍らせる工程(フリージング工程)、または、乳製品を含む原料と氷とを混合する工程を経て製造される菓子である。フリージング工程は、原料混合物を急激に冷却することで水分を凍結するとともに、空気を混入して激しく撹拌することで、氷の粒子、微細な空気の泡、および脂肪等を均一に分散させるための工程である。
かかる冷菓としては、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(日本国厚生労働省令第二八号)および「アイスクリーム類及び氷菓の表示に関する公正競争規約」(日本アイスクリーム協会)における分類に基づけば、乳固形分15質量%以上(うち、乳脂肪分8質量%以上)のアイスクリーム、乳固形分10質量%以上(うち、乳脂肪分3質量%以上)のアイスミルク、乳固形分3質量%以上のラクトアイス(以上、「アイスクリーム類」)、および乳固形分3質量%未満の氷菓を挙げることができる。後述するように、これらの冷菓のうち、特に油脂含量(乳脂肪分を含む)が3質量%以上のものは、チャーニング現象が生じやすいという問題を有しているため、本発明が対象とする冷菓のうち、好適な冷菓である。なお、フリージング工程後に凍結工程(硬化工程)に供することなく、フリージングした時点で取り出して容器に盛りつけたものをソフトクリームと称するが、本発明の冷菓には当該ソフトクリームも含まれる。
また、本発明の冷菓にはかき氷も含まれる。一般的に、かき氷は、冷菓のミックス液と砕氷した氷を混合、均一化し、容器に充填することで得られるが、ミックス液と氷の混合物が油脂を含有する場合、特に油脂含量(乳脂肪分を含む)が3質量%以上になると、タンク内壁や、前記混合物を容器に充填する際の充填機(パイプや充填口等)内にチャーニング現象が生じやすくなるため、本発明が対象とする冷菓のうち、好適な冷菓となる。
本発明で対象とするチーズ/卵黄高含量冷菓は、チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含む冷菓である。
ここでチーズの定義は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(日本国厚生労働省令第二八号)に基づく。具体的には、当該省令第2条16〜17項で規定されるナチュラルチーズ、並びに同条16および18項で規定されるプロセスチーズをいう。また、本発明で対象とするチーズには、当該ナチュラルチーズおよびプロセスチーズを、物理的または化学的方法により、低粘度化したものも含まれる。なお、チーズ/卵黄高含量冷菓の製造に使用するチーズの形状、および最終製品(チーズ/卵黄高含量冷菓)に含まれるチーズの形状は、特に制限されず、塊状、粉砕状、加熱溶融状、および乳化状のいずれの形状であってもよい。
また本発明で対象とする卵黄は、鳥、特に鶏の卵黄であり、卵黄を、物理的または化学的方法により処理したものも含まれる。なお、チーズ/卵黄高含量冷菓の製造に使用する卵黄の形状、および最終製品(チーズ/卵黄高含量冷菓)に含まれる卵黄の形状は、特に制限されず、塊状、粉砕状、溶液状、および乳化状のいずれの形状であってもよい。
チーズ/卵黄高含量冷菓中のチーズおよび/または卵黄の含量が増加するほど、チャーニング現象は顕著に発生し、その抑制が非常に困難となる。しかし、本発明によれば、チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方の含量が5質量%を超える場合でもチーズ/卵黄高含量冷菓のチャーニングを抑制することが可能である。なお、チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方の含量は上記するように5質量%を超えるものであるが、当該「5質量%を超える」の範囲には、例えば8質量%以上、10質量%以上、また12質量%以上、さらに15質量%以上が含まれる。これにより、チーズを上記割合で含む場合はチーズ特有の風味が増強したチーズ高含量冷菓を提供することができ、また卵黄を上記割合で含む場合は卵黄特有の風味が増強した卵黄高含量冷菓を提供することができる。
本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓における、チーズ含量および卵黄含量のそれぞれの上限は特に制限されないが、通常、それぞれ50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下である。また、チーズと卵黄の両方を含む場合、これら総量の上限は特に制限されないが、例えば50質量%以下、好ましくは30質量%以下が挙げられる。
前述するように、油脂含量(乳脂肪分を含む)が3質量%以上のチーズ/卵黄高含量冷菓は、油脂含量の多さに由来して、チャーニング現象がより一層生じやすいという問題を抱える。さらに、油脂含量が5質量%以上、7質量%以上と増加するにつれて、チャーニング現象は、より生じやすくなる。しかし、本発明によれば、このように油脂含量が7質量%以上の冷菓であっても、チャーニング現象が顕著に抑制された、チーズ/卵黄高含量冷菓を提供することができる。
(2)添加剤
本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓は、通常使用される原材料(例えば、乳製品、甘味料、油脂、乳化剤および安定剤等)に加えて、下記に説明する添加剤を用いて製造されることを特徴とする。
(a)炭酸塩
炭酸塩としては、好適には炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等の炭酸のアルカリ金属塩を挙げることができる。
チーズ/卵黄高含量冷菓に対する炭酸塩の配合割合としては、最終のチーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中、総量で0.01〜0.5質量%を挙げることができる。好ましくは0.02〜0.4質量%、より好ましくは0.05〜0.35質量%である。
(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステル
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの3つのヒドロキシ基のうち1つないし2つに脂肪酸がエステル結合したものである。具体的には、グリセリンの3つのヒドロキシ基のうち1つに脂肪酸がエステル結合したモノグリセリド、モノグリセリドの水酸基にさらに有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸およびジアセチル酒石酸等)が結合した有機酸モノグリセリド、グリセリンを脱水縮合したポリグリセリンのヒドロキシ基の1つ以上に脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステルを挙げることができる。
グリセリン脂肪酸エステルにおいて、グリセリンに結合している脂肪酸としては、制限されないものの、通常、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、およびアラキジン酸(20:0)等の、炭素数12〜20程度の飽和または不飽和の脂肪酸を挙げることができる(名称の後ろの括弧内は、最初が炭素数、次が二重結合の数を意味する)。本発明で使用するグリセリン脂肪酸エステルは、これらから選択される1種の脂肪酸がグリセリンに結合してなるものであってもよいし、2種以上の脂肪酸がグリセリンに結合してなるものであってもよい。グリセリン脂肪酸エステルのヨウ素価は、グリセリン脂肪酸エステルの不飽和度(グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の不飽和結合の割合)を反映し、好ましくはヨウ素価40以下、より好ましくは30以下である。なお、ヨウ素価は、ウィイス法やハヌス法等の定法に従って測定することができる。
モノグリセリドは、主に種物性油脂とグリセリンを反応させることで得られる。前記反応によって生成した、モノグリセリドおよびジグリセリド等の混合物を反応モノグリセリドといい、反応モノグリセリドを分子蒸留処理により蒸留し、モノグリセリドの純度を高めたものを蒸留モノグリセリドという。本発明においては、モノグリセリドとして、反応モノグリセリドと蒸留モノグリセリドのどちらを使用してもよく、また併用してもよい。
使用するモノグリセリドのヨウ素価は制限されないが、好ましくはヨウ素価40以下、より好ましくは30以下であるものが挙げられる。また、モノグリセリドにおいて、グリセリンに結合する脂肪酸の種類は制限されないが、好ましくはパルミチン酸またはステアリン酸が挙げられる。さらに、使用するモノグリセリドのHLBは制限されないが、好ましくはHLB1〜6の範囲であるものが挙げられる。これらの条件を満たすモノグリセリドは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ホモゲンDM−S」(蒸留モノグリセリド、ヨウ素価3以下、脂肪酸としてパルミチン酸およびステアリン酸を含む、HLB1〜6)が挙げられる。
使用する有機酸モノグリセリドのHLBは制限されないが、好ましくはHLB2〜10の範囲であるものが挙げられる。さらに、グリセリンに結合する有機酸の種類は制限されないが、好ましくは酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸またはジアセチル酒石酸が挙げられる。前記条件を満たすモノグリセリドは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ホモゲンNo.3212」(コハク酸モノグリセリド、HLB2〜10)および「ホモゲンNo.3217」(クエン酸モノグリセリド、HLB2〜10)が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、重合度や脂肪酸の種類は制限されない。使用するポリグリセリン脂肪酸エステルのヨウ素価は制限されないが、好ましくはヨウ素価1〜40、より好ましくは1〜30であるものが挙げられる。さらに、使用するポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは制限されないが、好ましくはHLB3〜18の範囲であるものが挙げられる。前記条件を満たすポリグリセリン脂肪酸エステルは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ホモゲンNo.2429」(ヨウ素価30以下、HLB14)が挙げられる。
本発明において使用される好ましいグリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリド(反応モノグリセリドおよび/または蒸留モノグリセリド)、有機酸モノグリセリド、およびポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上である。組み合わせの態様は特に制限されず、任意のグリセリン脂肪酸エステルを2種以上組み合わせることができるが、特に好ましい組み合わせは、モノグリセリドと有機酸モノグリセリドとの組み合わせ、またはモノグリセリドとポリグリセリン脂肪酸エステルとの組み合わせである。
チーズ/卵黄高含量冷菓に対するグリセリン脂肪酸エステルの含有割合としては、最終のチーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中、2種以上の組み合わせの総量で0.01〜1.2質量%を挙げることができる。好ましくは0.02〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.8質量%である。
(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上
グリセリン脂肪酸エステルは、(b)で説明したものを同様に使用することができるが、モノグリセリドを含むことが好ましい。モノグリセリドを使用する場合、モノグリセリドのヨウ素価は制限されないが、好ましくはヨウ素価40以下、より好ましくは30以下であるものが挙げられる。また、モノグリセリドにおいて、グリセリンに結合する脂肪酸の種類は制限されないが、好ましくはパルミチン酸またはステアリン酸が挙げられる。さらに、使用するモノグリセリドのHLBは制限されないが、好ましくはHLB1〜6の範囲であるものが挙げられる。
本発明で使用されるプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールが持つ2つのヒドロキシ基の1つに脂肪酸がエステル結合してなるモノエステルである。プロピレングリコールに結合する脂肪酸としては、グリセリン脂肪酸エステルについて説明したものを同様に挙げることができる。グリセリン脂肪酸エステルと同様に、本発明で使用するプロピレングリコール脂肪酸エステルは、前述する脂肪酸からなる群から選択される1種の脂肪酸がプロピレングリコールに結合してなるものであってもよいし、2種以上の脂肪酸がプロピレングリコールに結合してなるものであってもよい。プロピレングリコールに結合する脂肪酸の種類は制限されないが、パルミチン酸またはステアリン酸が結合したものを好ましく使用できる。前記条件を満たすプロピレングリコール脂肪酸エステルは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ホモゲンNo.483」(脂肪酸としてパルミチン酸およびステアリン酸を含む)が挙げられる。
本発明で使用されるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンが持つ4つのヒドロキシ基の1つ〜4つに脂肪酸がエステル結合してなるエステル(モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル)である。ソルビタンに結合する脂肪酸としては、グリセリン脂肪酸エステルについて説明したものを同様に挙げることができる。グリセリン脂肪酸エステルと同様に、本発明で使用するソルビタン脂肪酸エステルは、前述する脂肪酸からなる群から選択される1種の脂肪酸がソルビタンに結合してなるものであってもよいし、2種以上の異種の脂肪酸がソルビタンに結合してなるものであってもよい。ソルビタンに結合する脂肪酸の種類は制限されないが、パルミチン酸および/またはステアリン酸が結合したものを好ましく使用できる。前記条件を満たすプロピレングリコール脂肪酸エステルは商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ホモゲンNo.3213」(脂肪酸としてパルミチン酸およびステアリン酸を含む)が挙げられる。
本発明では、添加剤として、これらグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルを、2種以上組み合わせて使用する。具体的には、グリセリン脂肪酸エステルとプロピレングリコール脂肪酸エステルとの組み合わせ、グリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルとの組み合わせ、プロピレングリコール脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルとの組み合わせ、およびグリセリン脂肪酸エステルとプロピレングリコール脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルとの組み合わせを挙げることができる。好ましくは、グリセリン脂肪酸エステルを必須とし、これにプロピレングリコール脂肪酸エステルおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルを組み合わせてなる態様である。
チーズ/卵黄高含量冷菓に対するこれらの添加剤の含有割合としては、最終のチーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中、総量で0.01〜1.2質量%を挙げることができる。好ましくは0.02〜1.0質量%、より好ましくは0.05〜0.8質量%である。
なお、(a)〜(c)の添加剤はそれぞれ単独で使用することができるが、2以上を併用してもよく、例えば(a)と(b)の併用、(a)と(c)の併用、(b)と(c)の併用、および(a)と(b)と(c)の併用を挙げることができる。好ましくは(a)〜(c)の添加剤をそれぞれ単独で使用するか、または(a)と(c)との併用である。
(3)他の原材料
本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓は、前述するように、上記するチーズ、卵黄および添加剤に加えて、乳製品、甘味料(糖類を含む)、油脂、乳化剤、安定剤、および水等の通常使用される原材料を用いて製造される。また、この他、必要に応じて、香料(フレーバー)、着色料、pH調整剤等を配合することもできる。
本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓の製造に使用される乳製品としては、牛乳またはその一部を原料とし、これを加工した製品であればよく、例えば、牛乳、クリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、醗酵乳、乳酸菌飲料および乳飲料等を挙げることができる。
これらの配合割合は、製造するチーズ/卵黄高含量冷菓の種類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓)に応じて、適宜調整することができる。
本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓の製造に使用される甘味料(糖類を含む)としては、チーズ/卵黄高含量冷菓に甘味を付与するものであれば特に制限されないが、例えば、砂糖(例えば、白糖、黒糖、三温糖および和三盆等)、水飴、蜂蜜、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、蔗糖、異性化糖、ブドウ糖果糖液糖、オリゴ糖(例えば、イソマルトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖およびキシロオリゴ糖等)、メープルシロップ、モラセス(糖密)およびビートグラニュー糖等の糖類;グリセリン、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールおよびソルビトール等の糖アルコール;イソマルツロース、トレハロース、甘草抽出物、ステビア抽出物、羅漢果抽出物、ソーマチン、モネリンおよびクルクリン等の天然甘味料;アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、ズルチン、アドバンテームおよびネオテーム等の人工甘味料等を例示することができる。これらは1種単独で使用してもよいが、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
これらの配合割合は、製造するチーズ/卵黄高含量冷菓が所期する甘味に応じて、適宜調整することができる。
油脂は、通常、アイスミルクやラクトアイス等に脂肪分を補う目的で使用される。このため、本発明においても必要に応じて使用される原材料であり、必須の原材料成分ではない。油脂としては、乳脂肪分と同様に室温付近で固体となり、体温程度の温度では液体になる性質の植物性油脂が好適に使用される。また特有の臭いを有しないものであることが好ましく、この点から、ヤシ油、ヤシ硬化油、パーム油、パーム硬化油および綿実油が好適に使用される。これらは1種単独で使用してもよいが、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
当該油脂の配合割合は、上記目的を達成するように、最終濃度が0.5〜20質量%の範囲で、適宜調整することができる。
乳製品、糖類、油脂を使用することで各種冷菓を調製することは可能であるが、保存中の温度上昇に因る氷結晶の肥大化(ヒートショック)や、ミックス液(各原料が添加・混合された溶解液)の分離等、様々な障害が存在する。これを防ぐために安定剤を使用することができる。安定剤として、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ジェランガム、タマリンド種子多糖類、キサンタンガムおよびタラガム等の増粘作用を有する増粘多糖類を例示することができる。これらは1種単独で使用してもよいが、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
当該安定化剤の配合割合は、上記目的を達成するように、最終濃度が0.02〜3質量%の範囲で、適宜調整することができる。
乳化剤は、冷菓の組織を形成するために必要となる、乳化効果を付与する目的で使用される。冷菓に配合される素材の一部、例えば乳固形分や卵黄は、ある程度の乳化効果を有するため、それら素材を充分量使用することで、冷菓を調製する事ができる。ただし、それら素材を使用しない場合や、より強い乳化効果が必要な場合は、別途乳化剤を添加する必要がある。
乳化剤としては、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステル等を例示することができる。なお、本発明において、添加剤として炭酸塩を使用する場合、乳化剤としては、上記するレシチン、サポニン、カゼインナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルのいずれか少なくとも1種を使用することができる。一方、添加剤として2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを使用する場合、乳化剤としては、上記するレシチン、サポニン、カゼインナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルのいずれか少なくとも1種を使用することができる。また添加剤として、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上を使用する場合、乳化剤としては、上記するレシチン、サポニン、カゼインナトリウムおよびショ糖脂肪酸エステルのいずれか少なくとも1種を使用することができる。
当該乳化剤の配合割合は、上記目的を達成する範囲で適宜調整することができるが、通常、最終のチーズ/卵黄高含量冷菓100質量%中、総量で0.01〜1.2質量%を挙げることができる。好ましくは0.02〜1.0質量%、より好ましくは0.05〜0.8質量%である。
(4)耐チャーニング性チーズ/卵黄高含量冷菓の製造方法
本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓は、前述する原材料を用いて、通常の冷菓の製造方法に従って製造することができる。例えば、フリージング工程を経て製造されるアイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)を一例に挙げると、当該アイスクリーム類は、(1)原材料を混合し、加温撹拌溶解する工程、(2)均質化工程、(3)エージング工程、(4)フリージング工程、および(5)充填・包装工程を経て製造される。また、(5)充填・包装工程後に、(6)冷却・硬化工程に供してもよい。
以下、これらの工程に従って、本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓の製造方法を説明するが、本発明の実施態様は特にこれに制限されるものではない。
(1)原材料を混合し、加温撹拌溶解する工程
本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓の原材料(香料以外)を、添加剤を含め、例えば、攪拌機付き混合タンクに入れ、混合し、加温撹拌しながら溶解する工程である。水、牛乳およびクリーム等の液体原料に、粉乳や砂糖等の粉体原料を、撹拌しながら徐々にいれて混合する。これを加温しながら撹拌し、溶解させる。加温温度としては、特に制限されないものの、例えば50〜80℃程度を挙げることができる。
得られたミックス液は、次の均質化工程に供する前に、必要に応じて、濾過工程を経ても良い。濾過工程としては、例えば60〜100メッシュ程度のステンレス製金網で濾過する方法が挙げられる。
(2)均質化工程
均質化工程は、上記で調製したミックス液中の脂肪球を6μm以下、好ましくは0.3〜4μm程度に細分し、均一に乳化することを目的として実施される。こうすることでフリージング中の脂肪の凝集(チャーニング)を抑制し、またフリージングにおけるオーバーラン(空気混入による容積の増加)を向上させることができる。均質化処理は、高圧型、遠心型、超音波型等の均質機を用いて実施することができる。均質圧力は、ミックスの成分、温度条件、均質機の構造によって異なるものの、通常、一段圧縮で4〜25MPa程度、二段圧縮の場合、第1バルブで10MPa程度、第2バルブで4〜7MPa程度を挙げることができる。温度条件も特に制限されないものの、50〜70℃が一般的である。
均質化されたミックスは、次のエージング工程に供する前に、殺菌冷却工程に供してもよい。殺菌は、厚生労働省の乳等省令で規定されている条件(68℃、30分以上)またはこれと同等の殺菌効果を発揮する条件で実施されればよい。例えば、プレート熱交換機を用いたHTST法では80〜85℃で15〜20秒間の加熱殺菌、UHT法では130〜160℃前後で2〜20秒間の加熱殺菌を実施することができる。殺菌処理後、ミックスは、15℃以下、好ましくは0〜10℃程度に冷却して、次のエージング工程に供することができる。
(3)エージング工程
エージングは上記で調製したミックスを0〜10℃で3〜72時間程度貯蔵する工程である。かかるエージング工程により、脂肪の固化・解乳化および/またはミックスの粘性増加が進み、フリージング後の冷菓に滑らかさ、適度な保形性および起泡性を付与することができる。また、当該エージング工程後、フリージング工程に供する前に、ミックスに香料を配合することで、フレーバリングを行うことができる。
なお、当該エージング工程後、調製されたミックス液は、ソフトクリームミックス製品として市場に流通させることができる。
(4)フリージング工程
フリージング工程は、上記エージング工程で調製したミックスを急激に冷却して水分を凍結させ、空気を混入して激しく撹拌し、ミックス中に微細な空気の泡、氷の粒子および脂肪等を均一に分散させることで、ミックスを半流動体のソフトクリーム状に調製する工程である。
フリージングはフリーザー(例えば、普通型、低温型等)を用いて実施することができる。フリーザーは、フリージングチューブ内でミックスを激しく撹拌し、空気を送り込み、冷媒でチューブ内の熱を奪うことで、ミックスを凍結させる構造になっている。フリーザーには、バッチ式と連続式があるが、大量製造するためには連続式が好ましい。
(5)充填・包装工程
上記フリージングにより調製された半流動体のミックスを容器に充填し、必要に応じて包装する工程である。
(6)冷却・硬化工程
上記充填包装後、−40〜−18℃に急冷して、一定の形を保つまで凍結する工程を硬化という。かかる冷却・硬化工程を経ることにより、本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓を調製することができる。
上記(1)〜(6)の工程で調製されるチーズ/卵黄高含量冷菓は、添加剤を配合しないチーズ/卵黄高含量冷菓と比較して、フリージング工程で生じるチャーニング現象(脂肪球の過度な凝集)が有意に抑制されており、乳化が安定に保持されている。その結果、添加剤を配合しないチーズ/卵黄高含量冷菓と比較して、チーズ/卵黄高含量冷菓の組織が均一で緻密であり、またその食感も滑らかで、ざらつきのない、食感が良好なチーズ/卵黄高含量冷菓を調製することができる。
また、本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓は、前述する原材料を用いて、通常のかき氷の製造方法と同様に、乳製品を含有するミックス液と氷とを混合する工程を経て製造することもできる。例えば、(1)原材料を混合、加温撹拌溶解し、ミックス液を調製する工程、(2)均質化工程、(3)砕氷された氷と混合、均一化する工程、および(4)充填・包装工程を経て製造される。また、(4)充填・包装工程後に、(5)冷却・硬化工程に供してもよい。
以下、これらの工程に従って、本発明のチーズ/卵黄高含量冷菓(かき氷)の製造方法を説明するが、本発明の実施態様は特にこれに制限されるものではない。
(1)原材料を混合、加温撹拌溶解し、ミックス液を調製する工程
前記アイスクリーム類の製造方法と同様の方法が挙げられる。
(2)均質化工程
均質化工程は、上記(1)で調製したミックス液中の脂肪球を6μm以下、好ましくは0.3〜4μm程度に細分し、均一に乳化することを目的として実施される。こうすることで砕氷された氷と混合、均一化する際の脂肪の凝集(チャーニング)を抑制することができる。均質化処理は、高圧型、遠心型、超音波型等の均質機を用いて実施することができる。均質圧力は、ミックス液の成分、温度条件、均質機の構造によって異なるものの、通常、一段圧縮で4〜25MPa程度、二段圧縮の場合、第1バルブで10MPa程度、第2バルブで4〜7MPa程度を挙げることができる。温度条件も特に制限されないものの、50〜70℃が一般的である。
均質化されたミックス液は、次の工程に供する前に、殺菌冷却工程に供してもよい。殺菌は、厚生労働省の乳等省令で規定されている条件(68℃、30分以上)またはこれと同等の殺菌効果を発揮する条件で実施されればよい。例えば、プレート熱交換機を用いたHTST法では80〜85℃で15〜20秒間の加熱殺菌、UHT法では130〜160℃前後で2〜20秒間の加熱殺菌を実施することができる。殺菌処理後、ミックス液は、15℃以下、好ましくは0〜10℃程度に冷却して、次の工程に供することができる。
(3)砕氷された氷と混合、均一化する工程
当該工程は、上記均質化工程で調製したミックス液と、氷塊を粒径5〜15mmに砕氷した氷とを混合、撹拌し、氷の粒子および脂肪等を均一に分散させることで、ミックス液に流動性を持たせ、充填量の安定をはかる工程である。ミックス液と氷の混合比は、例えば、ミックス液:氷=1:10〜10:1を挙げることができる。
(4)充填・包装工程、(5)冷却・硬化工程
前記アイスクリーム類の製造方法と同様の方法が挙げられる。
上記(1)〜(5)の工程で調製されるチーズ/卵黄高含量冷菓(かき氷)は、添加剤を配合しないチーズ/卵黄高含量冷菓と比較して、ミックス液と氷の混合工程および容器への充填工程で生じるチャーニング現象(脂肪球の過度な凝集)が有意に抑制されており、乳化が安定に保持されている。
(II)チーズ/卵黄高含量冷菓のチャーニング抑制方法
本発明は、チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含むチーズおよび/または卵黄含有冷菓(チーズ/卵黄高含量冷菓)について、当該冷菓でみられるチャーニング現象を抑制する方法を提供する。
当該方法は、上記チーズ/卵黄高含量冷菓の製造に際して、当該冷菓に、下記(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を配合することによって実施することができる。
(a)炭酸塩、
(b)2種以上のグリセリン脂肪酸エステル、
(c)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上。
本発明が対象とするチーズ/卵黄高含量冷菓、当該冷菓に配合する上記各種添加剤の種類およびその配合割合、冷菓のその他の原材料、並びに当該冷菓の製造方法は、上記(I)で説明した通りであり、いずれもここに援用される。
本発明のチャーニング抑制方法によれば、チーズ/卵黄高含量冷菓について、上記添加剤を配合しないチーズ/卵黄高含量冷菓と比較して、フリージング工程や氷との混合工程等において生じるチャーニング現象(脂肪球の凝集)を有意に抑制し、乳化を安定に保持することができる。また、その結果、添加剤を配合しないチーズ/卵黄高含量冷菓と比較して、冷菓の組織が均一で緻密であり、またその食感も滑らかで、ざらつきのない、食感が良好なチーズ/卵黄高含量冷菓を得ることができる。
以下、実験例および実施例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例および実施例によって制限されるものではない。なお、特に記載しない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
実験例1 炭酸塩を配合したチーズ高含量冷菓の製造およびその評価(その1)
下記の処方に従って、13%の割合でチーズを含有する冷菓を製造し、製造したチーズ高含量冷菓(アイスクリーム規格)について、チャーニングと食感を評価した。
(1)チーズ高含量冷菓の製造および評価
[処方](無脂乳固形7.4%、乳脂肪10.7%、全固形38.4%)
チーズ 13.0(%)
砂糖 14.0
20%加糖卵黄 4.0
全脂加糖練乳 8.0
脱脂粉乳 4.0
無塩バター 3.0
生クリーム 8.0
安定剤(サンベストNN-305)(1) 0.3
炭酸塩 表1参照
水にて全量 100.0%とする。
(1) サンベストNN-305(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)(実験例2以降も同じ)
グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナンおよびブドウ糖の混合物。
[調製方法]
(1)水、加糖卵黄、チーズ、全脂加糖練乳、生クリームを撹拌しながら、予め粉体混合した砂糖、脱脂粉乳、安定剤および炭酸塩を添加し、撹拌しながら加熱する。
(2)80℃達温後無塩バターを投入し、温度を保持したまま10分間撹拌溶解する。
(3)水で全量を補正した後、均質化(第一段10MPa、第二段5MPa)する。
(4)均質化したアイスミックスを5℃まで冷却した後、一晩エージングする(5℃、12時間)。
(5)アイスミックスのpHを測定する(測定温度5℃)。
(6)アイスミックスをバッチ式フリーザー(富繁産業(株)製)にてフリージングする。
(7)12分間フリージングした直後のクリームを取り出し、フリーザーのダッシャー表面の付着物(脂肪の塊)を確認し、下記の基準に従ってチャーニング現象の有無を評価する。
(8)取り出した冷菓をカップに充填して−40℃にて2時間硬化し、-18℃の冷凍庫に移して、一晩冷凍保存する。
(9)冷凍後の冷菓を、専門のパネリスト10名に食してもらい、下記の基準に従って食感評価を実施する(食感評価)。
<チャーニング評価基準>
−:付着物(脂肪の塊)がほとんど無い。
+:付着物(脂肪の塊)が僅かに有る。
++:付着物(脂肪の塊)が有る。
また、付着物(脂肪の塊)の量を「+」の数で示す。つまり、+ → ++ → +++ → ++++と、+の数が多くなるほど、付着物(脂肪の塊)が多いことを意味する。
<食感評価基準>
・専門のパネリスト10人の試食により、下記の基準に従ってそれぞれの冷菓に点数をつける。
「なめらか」:1点
「僅かに粗い」:2点
「やや粗い」:3点
「粗い」:4点
・点数の平均値を計算し、評価とする。
なお、「なめらか」(得点1点)の判断基準品として実験例2に記載する比較例2(チーズ含量0%)の冷菓(表2参照)、また「粗い」(得点4点)の判断基準品として実験例2に記載する比較例7(チーズ含量25%)のチーズ高含量冷菓(表2参照)をそれぞれ使用した。
(2)結果
結果を表1に示す。
Figure 0006855156
表1から分かるように、炭酸塩を配合しないで製造したチーズ高含量冷菓(比較例1)は、フリーザーのダッシャー表面の付着物(脂肪塊)の量が明らかに多く、チャーニング現象が生じていることが確認された。また口当たりが明らかに粗く、食感が劣っていることが確認された。これに対して、炭酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩)を配合して製造したチーズ高含量冷菓(実施例1〜4)は、上記のチャーニング現象が格段に抑制されており、また口当たりも滑らかになり、良好な食感を有していることが確認された。
実験例2 炭酸塩を配合したチーズ高含量冷菓の製造およびその評価(その2)
下記の処方に基づいて、実験例1の方法に準じて、0〜25%の割合でチーズを含有する冷菓を製造し、本願発明の効果(チャーニング抑制効果と食感向上効果)を評価した。
(1)チーズ高含量冷菓の製造および評価
[処方](無脂乳固形5.6%、乳脂肪6.5%、全固形31.1%、ただしチーズ由来分を除く)
チーズ 表2参照(%)
砂糖 14.0
20%加糖卵黄 3.0
全脂加糖練乳 6.0
脱脂粉乳 4.0
無塩バター 4.0
生クリーム 6.0
安定剤(サンベストNN-305) 0.3
乳化剤(ホモゲンDM-S)(1) 0.25
炭酸カリウム 表2参照
水にて全量 100.0%とする。
(1) ホモゲンDM-S(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)
グリセリン脂肪酸エステル(蒸留モノグリセリド、ヨウ素価3以下)。
[調製方法]
(1)水、加糖卵黄、チーズ、全脂加糖練乳、生クリームを撹拌しながら、予め粉体混合した砂糖、脱脂粉乳、安定剤、乳化剤および炭酸塩を添加し、撹拌しながら加熱する。
(2)〜(6)実験例1に記載する(2)〜(6)と同じ操作により、チーズ高含量冷菓を製造する。
(7)12分間フリージングした直後のクリームを取り出し、フリーザーのダッシャー表面の付着物(脂肪の塊)を確認し、実験例1に記載する基準に従ってチャーニング現象の有無を評価する。
(8)取り出した冷菓をカップに充填して−40℃にて2時間硬化し、-18℃の冷凍庫に移して、一晩冷凍保存する。
(9)冷凍後の冷菓を、専門のパネリスト10名に食してもらい、実験例1に記載する基準に従って食感評価を実施する(食感評価)。
(2)結果
結果を表2に示す。
Figure 0006855156
表2から、炭酸塩を配合しないで製造したチーズ高含量冷菓(比較例3〜7)は、チーズ含量が5質量%を超えて6質量%以上になると、フリーザーのダッシャー表面に付着物(脂肪塊)が認められるようになり、その付着物の量は、チーズ含量が多くなるにつれて、増加することがわかる。またチャーニング現象に伴い、口内でのざらつき感が増加し、食感が低下することも確認された。
これに対して、炭酸塩を配合することで、上記のチャーニング現象および口内でのざらつき感(食感の粗さ)が抑制し、食感が向上することが確認された(実施例5)。
実験例3 炭酸塩を配合したチーズ高含量冷菓の製造およびその評価(その3)
下記の処方に従って、実験例1と同様の方法で、15%の割合でチーズを含有する冷菓(アイスクリーム規格)を調製し、調製したチーズ高含量冷菓について、実験例1に記載する基準に従って、チャーニングと食感を評価した。
(1)チーズ高含量冷菓の調製および評価
[処方](無脂乳固形7.2%、乳脂肪7.7%、全固形37.4%)
チーズ 15.0(%)
砂糖 14.0
20%加糖卵黄 3.0
全脂加糖練乳 6.0
脱脂粉乳 4.0
無塩バター 4.0
生クリーム 6.0
安定剤(サンベストNN-305) 0.3
乳化剤(ホモゲンDM-S) 0.25
塩類 表3参照
水にて全量 100.0%とする。
(2)結果
結果を表3に示す。
Figure 0006855156
表3から分かるように、炭酸塩を配合しないで製造したチーズ高含量冷菓(比較例8)は、フリーザーのダッシャー表面の付着物(脂肪塊)の量が明らかに多く、チャーニング現象が生じていることが確認された。また口当たりが明らかに粗く、食感が劣っていることが確認された。これに対して、炭酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩)を配合して製造したチーズ高含量冷菓(実施例6〜15)は、上記のチャーニング現象が格段に抑制されており、また口当たりも滑らかになり、良好な食感を有していることが確認された。一方、炭酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩)以外の塩を配合して製造したチーズ高含量冷菓(比較例9〜16)は、比較例8と同様に、明らかなチャーニング現象が認められ、また口当たりも粗く食感が劣っており、チャーニング抑制効果および食感向上効果は得られなかった。
実験例4 チーズ高含量冷菓の調製およびその評価(その4)
下記の処方に従って、実験例1と同様の方法で、15%の割合でチーズを含有する冷菓を製造し、製造したチーズ高含量冷菓(アイスクリーム規格)について、実験例1に記載する基準に従って、チャーニングと食感を評価した。
(1)チーズ高含量冷菓の製造および評価
[処方](無脂乳固形7.2%、乳脂肪7.7%、全固形37.4%)
チーズ 15.0(%)
砂糖 14.0
20%加糖卵黄 3.0
全脂加糖練乳 6.0
脱脂粉乳 4.0
無塩バター 4.0
生クリーム 6.0
安定剤(サンベストNN-305) 0.3
添加剤 表4参照
水にて全量 100.0%とする。
(2)結果
結果を表4に示す。
Figure 0006855156
表4から分かるように、チーズ高含量冷菓の製造に際して、添加剤として、2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを併用するか(実施例16および17)、グリセリン脂肪酸エステルにソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルの少なくとも一種を併用することで(実施例18〜23)、チャーニング現象が格段に抑制し、また口当たりも滑らかになり、良好な食感を有する冷菓が得られることが確認された。これに対して、一種のグリセリン脂肪酸エステルの使用、およびグリセリン脂肪酸エステルにショ糖脂肪酸エステルを併用して製造したチーズ高含量冷菓(比較例17〜19)は、明らかなチャーニング現象が認められ、また口当たりも粗く食感が劣っており、チャーニング抑制効果および食感向上効果は得られなかった。
実験例5 チーズ高含量冷菓の調製およびその評価(その5)
下記の処方に従って、実験例1と同様の方法で、25%の割合でチーズを含有する冷菓を製造し、製造したチーズ高含量冷菓(アイスクリーム規格)について、実験例1に記載する基準に従って、チャーニングと食感を評価した。
(1)チーズ高含量冷菓の製造および評価
[処方](無脂乳固形8.3%、乳脂肪14.3%、全固形41.6%)
チーズ 25.0(%)
砂糖 14.0
20%加糖卵黄 3.0
全脂加糖練乳 6.0
脱脂粉乳 4.0
無塩バター 4.0
生クリーム 6.0
安定剤(サンベストNN-305) 0.3
添加剤 表5参照
水にて全量 100.0%とする。
(2)結果
結果を表5に示す。
Figure 0006855156
表5から分かるように、チーズの含量が25質量%と高含量になっても、グリセリン脂肪酸エステルにソルビタン脂肪酸エステルを併用することで、チャーニング抑制効果および食感向上効果が認められた(実施例24)。このことから、25質量%ものチーズ高含量の冷菓に対して、グリセリン脂肪酸エステルとプロピレングリコール脂肪酸エステルとの併用系、およびソルビタン脂肪酸エステルとプロピレングリコール脂肪酸エステルとの併用系にも同様の効果があると考えられる。また、この併用系において、さらに炭酸塩を併用することで、チャーニング抑制効果および食感向上効果が一層高まることが確認された(実施例25および26)。さらに、25質量%ものチーズ高含量の冷菓に対して、炭酸塩にグリセリン脂肪酸エステルを併用しても、炭酸塩単独使用と同様またはそれ以上に、チャーニング抑制効果および食感向上効果が得られることが確認された(実施例27)。
実験例6 卵黄高含量冷菓の製造およびその評価(その1)
下記の処方に従って、卵黄を含有する冷菓(アイスクリーム規格、卵黄含量6.4%)を製造し、製造した卵黄高含量冷菓について、チャーニングと食感を評価した。
(1)卵黄高含量冷菓の製造および評価
[処方](無脂乳固形9.3%、乳脂肪9.1%、全固形38.4%)
砂糖 10.0(%)
果糖ぶどう糖液糖 4.0
生クリーム 14.0
脱脂粉乳 8.0
全脂加糖練乳 4.0
無塩バター 3.0
20%加糖卵黄 8.0
安定剤(サンベストNN-305) 0.3
添加剤 表6参照
水にて全量 100.0%とする。
[調製方法]
(1)水、果糖ぶどう糖液糖、生クリーム、全脂加糖練乳および加糖卵黄を撹拌しながら、予め粉体混合した砂糖、脱脂粉乳、安定剤および添加剤を添加し、撹拌しながら加熱する。
(2)80℃達温後無塩バターを投入し、温度を保持したまま10分間撹拌溶解する。
(3)水で全量を補正した後、均質化(第一段10MPa、第二段5MPa)する。
(4)均質化したアイスミックスを5℃まで冷却した後、一晩エージングする(5℃、12時間)。
(5)アイスミックスをバッチ式フリーザー(富繁産業(株)製)にてフリージングする。
(6)12分間フリージングした直後のクリームを取り出し、フリーザーのダッシャー表面の付着物(脂肪の塊)を確認し、実験例1に記載する基準に従ってチャーニング現象の有無を評価する。
(7)取り出した冷菓をカップに充填して−40℃にて2時間硬化し、-18℃の冷凍庫に移して、一晩冷凍保存する。
(8)冷蔵後の冷菓を、専門のパネリスト10名に食してもらい、実験例1に記載する基準に従って、食感評価を実施する(食感評価)。
(2)結果
結果を表6に示す。
Figure 0006855156
表6から分かるように、卵黄高含量冷菓の製造に際して、添加剤として、グリセリン脂肪酸エステルにプロピレングリコール脂肪酸エステルを併用することで(実施例28)、チャーニング現象が格段に抑制し、また口当たりも滑らかになり、良好な食感を有する冷菓が得られることが確認された。これに対して、一種類のグリセリン脂肪酸エステルを使用して製造した卵黄高含量冷菓(比較例21)は、明らかなチャーニング現象が認められ、また口当たりも粗く食感が劣っており、チャーニング抑制効果および食感向上効果は得られなかった。
実験例7 卵黄高含量冷菓の製造およびその評価(その2)
下記の処方に従って、実験例6の方法に準じて、卵黄を含有する冷菓(アイスミルク規格、卵黄含量9.6%)を製造し、本願発明の効果(チャーニング抑制効果と食感向上効果)を評価した。
(1)卵黄高含量冷菓の製造および評価
[処方](無脂乳固形6.3%、乳脂肪7.0%、全固形36.8%)
砂糖 10.0(%)
果糖ぶどう糖液糖 4.0
水あめ 4.0
生クリーム 10.0
脱脂粉乳 6.0
無塩バター 3.0
20%加糖卵黄 12.0
安定剤(サンベストNN-305) 0.3
添加剤 表7参照
水にて全量 100.0%とする。
[調製方法]
(1)水、果糖ぶどう糖液糖、水あめ、生クリームおよび加糖卵黄を撹拌しながら、予め粉体混合した砂糖、脱脂粉乳、安定剤、および添加剤を添加し、撹拌しながら加熱する。
(2)〜(8)実験例6に記載する(2)〜(8)と同じ操作により、卵黄高含量冷菓を製造し、実験例1に記載する基準に従ってチャーニング現象の有無の評価および食感評価を実施する。
(2)結果
結果を表7に示す。
Figure 0006855156
表7から分かるように、一種類のグリセリン脂肪酸エステルだけで炭酸塩を配合しないで製造した卵黄高含量冷菓(比較例22)は、フリーザーのダッシャー表面の付着物(脂肪塊)の量が明らかに多く、チャーニング現象が生じていることが確認された。また口当たりが明らかに粗く、食感が劣っていることが確認された。これに対して、グリセリン脂肪酸エステルに加えて炭酸塩を配合して製造した卵黄高含量冷菓(実施例29)は、上記のチャーニング現象が抑制されており、また口当たりも滑らかになり、良好な食感を有していることが確認された。また、グリセリン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルの併用系に、さらに炭酸塩を併用することで、チャーニング抑制効果および食感向上効果が一層高まることが確認された(実施例30)。
実験例8 卵黄高含量冷菓の製造およびその評価(その3)
下記の処方に従って、実験例7と同様の方法にて卵黄を含有する冷菓(アイスミルク規格、卵黄含量12.8%)を製造し、製造した卵黄高含量冷菓について、実験例1に記載する基準に従って、チャーニングと食感を評価した。
(1)卵黄高含量冷菓の製造および評価
[処方](無脂乳固形6.3%、乳脂肪7.0%、全固形39.7%)
砂糖 10.0(%)
果糖ぶどう糖液糖 4.0
水あめ 4.0
生クリーム 10.0
脱脂粉乳 6.0
無塩バター 3.0
20%加糖卵黄 16.0
安定剤(サンベストNN-305) 0.3
添加剤 表8参照
水にて全量 100.0%とする。
(2)結果
結果を表8に示す。
Figure 0006855156
表8から分かるように、グリセリン脂肪酸エステルに加えて炭酸塩を配合して製造した卵黄高含量冷菓(実施例31および32)は、チャーニング現象が抑制、減少されており、また口当たりも滑らかになり、良好な食感を有していることが確認された。また、添加剤として、2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを併用することで(実施例33)、チャーニング現象が抑制、減少し、また口当たりも滑らかになり、良好な食感を有する冷菓が得られることが確認された。
実験例9 卵黄高含量冷菓の製造およびその評価(その4)
下記の処方に従って、実験例7と同様の方法にて卵黄を含有する冷菓(アイスミルク規格、卵黄含量16.0%)を製造し、製造した卵黄高含量冷菓について、実験例1に記載する基準に従って、チャーニングと食感を評価した。
(1)卵黄高含量冷菓の製造および評価
[処方](無脂乳固形6.3%、乳脂肪7.0%、全固形41.4%)
砂糖 10.0(%)
果糖ぶどう糖液糖 4.0
水あめ 4.0
生クリーム 10.0
脱脂粉乳 6.0
無塩バター 3.0
20%加糖卵黄 20.0
安定剤(サンベストNN-305) 0.3
乳化剤 表9参照
塩類 表9参照
水にて全量 100.0%とする。
(2)結果
結果を表9に示す。
Figure 0006855156
表9から分かるように、添加剤として、2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを併用するか(実施例34及び35)、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上を併用することで(実施例36〜39)、チャーニング現象が格段に抑制され、また口当たりも滑らかになり、良好な食感を有する冷菓が得られることが確認された。これに対して、一種のグリセリン脂肪酸エステルを使用(比較例24)、およびグリセリン脂肪酸エステルにショ糖脂肪酸エステルを併用(比較例25)して製造した卵黄高含量冷菓は、明らかなチャーニング現象が認められ、また口当たりも粗く食感が劣っており、チャーニング抑制効果および食感向上効果は得られなかった。グリセリン脂肪酸エステルに炭酸塩を併用するか(実施例40)、または、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレングリコール脂肪酸エステルに、さらに炭酸塩を併用することで(実施例41)、チャーニング抑制効果および食感向上効果が一層高まることが確認された。

Claims (3)

  1. チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含むチーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓であって、
    下記(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を配合して調製されることを特徴とするチャーニング現象が抑制された前記凍結硬化冷菓であって;
    (a)炭酸のアルカリ金属塩、
    (b)HLBが1〜6のモノグリセリド、およびHLBが2〜10の有機酸モノグリセリドまたはHLBが3〜18のポリグリセリン脂肪酸エステル、
    (c)HLBが1〜6のモノグリセリド、並びにパルミチン酸もしくはステアリン酸が結合したプロピレングリコール脂肪酸エステルおよび/またはパルミチン酸もしくはステアリン酸が結合したソルビタン脂肪酸エステル;
    前記添加剤の配合割合、前記凍結硬化冷菓100質量%あたり
    (a)を配合する場合は、その総量が0.01〜0.5質量%、
    (b)を配合する場合は、その総量が0.01〜1.2質量%、
    (c)を配合する場合は、その総量が0.01〜1.2質量%、
    であることを特徴とする、チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓(但し、カカオ脂を含む、チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓を除く)。
  2. チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含むチーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓または当該冷菓用ミックスの製造工程において、下記(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を配合する工程、および凍結硬化工程を有することを特徴とするチャーニング現象が抑制された、上記チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓または当該冷菓用ミックスの製造方法であって;
    (a)炭酸のアルカリ金属塩、
    (b)HLBが1〜6のモノグリセリド、およびHLBが2〜10の有機酸モノグリセリドまたはHLBが3〜18のポリグリセリン脂肪酸エステル、
    (c)HLBが1〜6のモノグリセリド、並びにパルミチン酸もしくはステアリン酸が結合したプロピレングリコール脂肪酸エステルおよび/またはパルミチン酸もしくはステアリン酸が結合したソルビタン脂肪酸エステル;
    前記チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓100質量%中の前記添加剤の配合割合が、
    (a)を配合する場合は、その総量が0.01〜0.5質量%、
    (b)を配合する場合は、その総量が0.01〜1.2質量%、
    (c)を配合する場合は、その総量が0.01〜1.2質量%、
    となるように前記添加剤を配合することを特徴とする、チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓または当該冷菓用ミックスの製造方法(但し、カカオ脂を含む、チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓または当該冷菓用ミックスの製造方法を除く)。
  3. チーズおよび卵黄のいずれか少なくとも一方を5質量%を超える割合で含むチーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓に対して、下記(a)〜(c)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を配合することを特徴とする、上記チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓のチャーニング抑制方法であって;
    (a)炭酸のアルカリ金属塩、
    (b)HLBが1〜6のモノグリセリド、およびHLBが2〜10の有機酸モノグリセリドまたはHLBが3〜18のポリグリセリン脂肪酸エステル、
    (c)HLBが1〜6のモノグリセリド、並びにパルミチン酸もしくはステアリン酸が結合したプロピレングリコール脂肪酸エステルおよび/またはパルミチン酸もしくはステアリン酸が結合したソルビタン脂肪酸エステル;
    前記チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓100質量%中の前記添加剤の配合割合が、
    (a)を配合する場合は、その総量が0.01〜0.5質量%、
    (b)を配合する場合は、その総量が0.01〜1.2質量%、
    (c)を配合する場合は、その総量が0.01〜1.2質量%、
    となるように前記添加剤を配合することを特徴とする、チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓のチャーニング抑制方法(但し、カカオ脂を含む、チーズおよび/または卵黄含有凍結硬化冷菓のチャーニング抑制方法を除く)。
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