JP6852036B2 - 抵抗スポット溶接用電極チップ - Google Patents

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Description

本発明は、被接合物(板材等)のスポット溶接に用いられる電極チップ等に関する。
複数の素材を接合する場合、高い接合強度が確保される溶接が多用される。例えば、自動車の車体等を構成する板材同士は、複数の箇所(スポット)を点状に溶接するスポット溶接により接合される。
スポット溶接は、対向配置した一対の電極で、被接合物(板材等の被接合材)の両外表面を挟圧(加圧力を印加)しつつ、電極から被接合物へ大電流を短時間供給してなされる抵抗溶接の一つである。スポット溶接を行うと、被接合物の内側に被接合物自体が溶融凝固してできたナゲットが形成される。このナゲットを介して被溶接物が接合される。スポット溶接に関する提案は多数なされており、例えば、下記の特許文献に関連する記載がある。
特許第6136249号公報 特開平10−244379号公報 実開平4−83486号公報
(1)特許文献1は、チリ(膨張した溶融金属がスポットの周囲に飛散する現象)の発生を抑制しつつ、十分に大きなナゲットを形成できる凹状電極(被接合物に対する圧接面の中央域が窪んだ電極)を提案している。凹状電極を用いると、スポット溶接時に被接合物の内側で生じた溶融金属は、その電極の窪み側へ膨出する。これによりチリの発生が抑制され、所望の接合強度が安定的に確保される。
しかし、このとき形成されるナゲットは、当然、その膨出した溶融金属が凝固したままの形態となる。このため凹状電極を用いると、溶接された板材の外表面に突起ができる。このような突起は、溶接物の外観の悪化や後工程の作業性の低下等を招く。
(2)特許文献2は、アルミニウム系被接合材の抵抗スポット溶接用電極チップを提案している。具体的にいうと、抵抗発熱が少ない高導電率(電気伝導度が97%IACS以上)の素材(タフピッチ銅や無酸素銅等の純銅)からなり、内部に冷却小孔が設けられた電極が提案されている。この電極は冷却効率が高く、被接合材と接触する圧接面の温度上昇が抑制され得る。
しかし、純銅は、高導電率である反面、低強度である。例えば、銅合金(クロム銅等)と比較すると、200℃以下における強度が1/2程度しかない。このような素材からなる電極を大きな加圧力で被接合材へ押し付けると、冷却小孔の外周側壁部で座屈が生じ易く、また、溶接点数の増加と共に先端部も変形・摩耗し易い。所望のナゲットを安定的に形成するためには、電極の交換、その先端部の整形(ドレッシング)等を高頻度で行うとが必要となる。これは、タクトタイムの長期化による生産性の低下や製造コストの上昇を招く。
(3)特許文献3(図10)には、銅合金(クロム銅またはアルミナ分散銅)からなる有底円筒状のスポット溶接用電極に関する開示がある。銅合金は純銅よりも高強度(高硬度)である反面、低導電率である。また、その電極は、底部および円筒部が全体的に相当に薄くなっている。このため、材質と形状が相俟って、特許文献3(図10)電極は、大電流を通電したときに自己発熱して軟化し易い。この軟化により、やはり、そのような電極も、大きな加圧力で被接合材に押し付けられたときに座屈を生じ易くなる。仮に座屈に至らなくても、溶接点数の増加と共に変形し易くなり、上述したように、交換や整形の頻度が多くなり得る。
さらに、電極の自己発熱に伴う温度上昇により、被接合材との接触界面温度も上昇し、両者間で化合物が生成され易くなる。このような化合物の生成は、ピックアップや溶着等の溶接不具合を招く。なお、被接合材がAl合金材や亜鉛めっきまたはAl−Siめっき等された(高張力)鋼板である場合に、被接合材側のAlやZnと電極側のCuとが溶融反応したCu系化合物が生成され易い。
(4)ちなみに、自動車分野では、軽量化等を目的として、高張力鋼板やアルミニウム合金板等が多用されており、それらのスポット溶接も増加している。高張力鋼板やアルミニウム合金板等のスポット溶接には、軟鋼板のスポット溶接よりも、大きな熱量(熱量(Q)=電流値(I)×抵抗値(R)×時間(t))が必要となる。これは、アルミニウム合金が低抵抗なために、大きな電流を要するためである。このような熱量(通電量)の増加は、電極の高温化・化合物の生成量増加を招く。
また、一般的にプレス成形性が悪い(例えば、スプリングバックが大きい)高張力鋼板やアルミニウム合金板等を、プレス成形後に重ね合わせると、従来よりも大きな隙間が被溶接部に生じ易い。隙間がある状態でスポット溶接を行うと、スパッタ(チリ)が発生して、作業環境の悪化のみならず、安定した溶接ナゲットの形成が困難となる。その隙間を無くしてスポット溶接を行うには、電極に大きな加圧力を印加して、被接合材同士を強く挟圧する必要がある。
このように、電極に作用する通電量(発熱量)や加圧力は益々増加傾向にある。その一方で、電極の交換や整形の頻度低減等も要求されている。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、過酷な状況下でも、良好なスポット溶接物を安定して効率よく製造できる抵抗スポット溶接用電極チップ等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、電極の材質と形態を見直すことにより、電極の交換・整形、化合物の生成等を抑制しつつ、良好なスポット溶接物(単に「溶接物」という。)を安定的に得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成させるに至った。
《抵抗スポット溶接用電極チップ》
(1)本発明は、有底略円筒状の先端部と該先端部に連なる略円筒状の胴部とを有する本体を備える抵抗スポット溶接用電極チップであって、該本体は、銅合金からなり、該記先端部は、圧接される被接合物に対して窪んでいない圧接面を有する先端底部と該先端底部から連なる略円筒状の先端筒部とを有し、該胴部の外径(B)に対する該先端筒部の内径(f)の比である先端内径比(f/B)は0.4〜0.6であり、該胴部の外径(B)に対する該先端底部の厚さ(L)の比である先端底厚比(L/B)は0.15〜0.5である。
(2)本発明の抵抗スポット溶接用電極チップ(単に「電極」という。)は、先ず、先端底部の外側表面にある圧接面が被接合物側に窪んでいない(非凹状である)凸状電極である。このため、本発明の電極を用いてスポット溶接すると、外表面に目立つ突起等がなく、外観の良好なスポット溶接物(単に「溶接物」という。)が得られる。なお、説明の便宜上、形態とは無関係に、被接合物を単に「板材」ともいう。
次に、本発明の電極は、銅合金からなると共に特有な形状をしている。そのような材質と形態が相乗的に作用して、本発明の電極は、大きな加圧力が印加されても、座屈等の変形が生じ難くなっている。
さらに、本発明の電極は、その形態に主に起因して、電極と被接合物の接触界面における温度上昇が抑制される傾向を示す。これにより、電極(チップ)を構成する成分元素(例えばCu)の板材側への移動(拡散、侵入)や、その界面近傍において化合物や合金の生成等が抑制される。また、本発明の電極を用いてスポット溶接すると、従来よりもナゲット厚さが相対的に小さい扁平ナゲットにより接合された溶接物が得られ易くなる。
いずれにしても、材質と形態が整合した本発明の電極によれば、その変形や消耗が抑制され、清浄化(ドレッシング、整形等)や交換の頻度の低減等を図りつつ、安定したナゲットの形成や溶接物の製造が可能となる。また、本発明の電極を用いると、スポット溶接された板材(溶接物)の外表面近傍やナゲットにおける成分組成の変化も小さくなり、本来予定されている特性(強度、耐食性等)の溶接物が得られ易くなる。こうして本発明によれば、外観や特性に優れた溶接物が安定的または効率的に得られるようになる。
《スポット溶接方法またはスポット溶接物》
本発明は、上述した電極を用いたスポット溶接方法としても把握できる。この溶接方法により、例えば、重ね合わせた板材が外側から圧接された一対の対向配置された電極から通電されて内側に形成されたナゲットで接合されてなるスポット溶接物であって、該ナゲットは、ナゲット径(D)がD≧4√t(t:板材の厚さ)を満たすと共に、ナゲット厚さ(H)に対する該ナゲット径(D)の比率であるナゲット扁平度(D/H)が3.5〜8であり、該板材の両外表面部には、溶融金属の膨出によりできる突起がない溶接物が得られる。
《その他》
特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
スポット溶接に用いた各電極チップの断面図である。 各電極を用いてスポット溶接したときに得られたナゲットの断面写真である。 ナゲット扁平度とCu増加量の関係を示すグラフである。 電極形状が溶融池(ナゲット)の生成過程に及ぼす影響を示す説明図である。 スポット溶接のシミュレーションに係る解析モデル、通電・加圧力パターンおよび解析結果(温度分布)を示す図である。 溶着性に及ぼす電極形状の影響を示す散布図である。 電極の変形性に及ぼす電極形状の影響を示す散布図である。 溶着性と変形性に及ぼす電極形状の影響を示す散布図である。 異なる形状の電極チップの断面図である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、電極のみならず、その電極を用いたスポット溶接方法やそれにより得られた溶接物等にも適宜該当し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《被接合物》
(1)材質
被接合物の代表例である板材は、例えば、アルミニウムまたはその合金、鉄またはその合金(特に鋼)等からなる。鉄(合金)からなる板材は、例えば、亜鉛めっきやAl−Siめっきされた(高張力)鋼板でもよい。亜鉛めっき鋼板は、例えば、非合金溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、電気亜鉛めっき鋼板(EG)等である。溶接前の板材がアルミニウム(合金)板や上述しためっき鋼板等の場合、溶接物の(両)外表面部にはAlやZnが存在することになる。
接合される板材は、同種材でも、異種材でもよい。また、板材は、接合前にプレス成形等の塑性可能が施されたものでもよい。なお、本明細書でいう高張力鋼板は、敢えて定義するなら、引張強度(破断強度)が440MPa以上さらには590MPa以上ある鋼板である。高張力鋼板は、その種類を問わず、析出強化鋼板、DP鋼板、加工誘起変態(TRIP)鋼板、熱間プレス鋼板等のいずれでもよい。
(2)形態
スポット溶接される被接合物は、例えば、2枚(一対)の板を重ね合わせたものでも、3枚以上の板を重ね合わせたものでもよい。各板厚は同じでも異なっていてもよい。板厚が異なるとき、指標となるナゲット径は、最小の板厚(t)に基づいて算出する。板厚が不均一な(分布した)板材を溶接するときは、ナゲットが形成される箇所の板厚に基づいてナゲット径等を算出する。なお、ナゲット径の算出に用いる板厚は、スポット溶接前(電極の接触前)の初期板厚である。初期板厚は、例えば、0.4〜4mm程度である。
《ナゲット》
(1)形状
溶融凝固部であるナゲットは、電極の先端部(特に板材の外表面と接触する先端底部の圧接面)を反映した形状となる。板材との接触面が円形状の平面または曲面(例えば略球面)なら、ナゲットは略円盤状となる。
なお、本明細書では、ナゲットの形状(円形状等か否か)を問わず、ナゲットの大きさを「ナゲット径」と呼ぶ。ナゲット径(D)は、溶接部の断面画像等に基づいて、板材の延在方向に沿って測定されるナゲットの最大長とする。ナゲット厚さ(H)も、ナゲットの形状を問わず、板材の厚さ方向(ナゲット径の測定方向に直交する方向)で測定したナゲットの最大高さとする。本明細書でいう「溶接部」は、特に断らない限り、電極により圧接されていた領域(打痕)内であって、少なくとも、ナゲットと、そのナゲットの両側にある板材部分(外表面部を含む未溶融部分)とを含む。
ナゲット径とナゲット厚さは、例えば、次のようにして特定される。先ず、断面画像上に現れたナゲットの輪郭線を特定する。その輪郭線に外接する長方形を描く。その長方形の長辺の長さをナゲット径(D)、その短辺の長さをナゲット厚さ(H)とする。溶接箇所が単数のときは、その溶接部の略中心(板材の垂直方向)を通るいずれかの断面画像に基づいて、各測定を行えばよい。溶接箇所が複数のときは、各溶接部の略中心を通り、各溶接部が連なる方向に延在する断面画像に基づいて、各測定を行うとよい。
(2)接合強度
溶接物の接合強度(剥離強度、せん断強度/JIS Z3136、Z3137参照)は、ほぼナゲット径(厳密にはナゲットの周長)で定まることが知られている。ナゲット径または接合強度が十分な溶接物は、破面がナゲットへ進展せず、母材(板材)部分で破断するプラグ破断を生じる。その目安として、既述した板厚(t)を用いて、ナゲット径が4√t以上、5√t以上さらには6√t以上であると好ましい。
(3)ナゲット扁平度(D/H)
ナゲット扁平度はナゲット厚さに対するナゲット径の比率である。ナゲット扁平度は、3.5〜8、3.8〜6さらには4〜5であると好ましい。ナゲット扁平度の過大な溶接物は、溶け込みが少ない状態となり、界面破断し易くて十分な接合強度の確保が困難である。また、そのような溶接物の製造自体も困難である。一方、ナゲット扁平度が過小な場合、電極と板材の接触界面の温度が十分に低減されず、その接触界面で化合物が生成され易くなる。このように、ナゲットの形状は、電極と被接合物の接触界面における温度や化合物の生成と相関があると考えられる。
《電極》
(1)形態
電極は、シャンクに着脱できるもの(キャップチップ型)でも、シャンクと一体化したもの(一体型)でもよい。以下では、溶接コストを低減できるキャップチップ型の電極(単に「(電極)チップ」ともいう。)を主に想定して説明する。
電極(チップ)は、有底略円筒状の先端部と、その先端部から連なる略円筒状の胴部とを有する本体を備える。先端部は、圧接される被接合物に対して窪んでいない圧接面を有する先端底部と先端底部から連なる略円筒状の先端筒部とを有する。先端底部は、被接合物に対して窪んでいない(凸状)圧接面を外表面側に有する。各部の具体的な形態(サイズ)は次の通りである。なお、電極の大きさは、通常、胴部の外径(B/元径/呼び径)に基づいて規定されているため、本明細書でも、その外径(B)に対する比率で各部の形態を規定した。
先ず、胴部の外径(B)に対する先端筒部の内径(f)の比である先端内径比(f/B)は、例えば、0.4〜0.6さらには0.44〜0.56とするとよい。先端内径比が過小では、冷媒(冷却液/冷却水)の先端筒部における循環性が悪化して、冷却効率が低下し得る。先端内径比が過大になると、外周側壁が薄くなり、強度の低下と電流路の減少(抵抗の増大)による自己発熱量の増加とにより、座屈等の変形が生じ易くなる。
先端筒部の内径(f)が一定でないとき、その最大値を内径(f)とする。また、胴部の外径(B)は、電極がシャンクと嵌合される部分の最大外径とする。一体型の場合は、被接合材と接触する先端部の最大外径とする。
次に、胴部の外径(B)に対する先端底部の厚さ(L)の比である先端底厚比(L/B)は、例えば、0.15〜0.5、0.2〜0.4さらには0.25〜0.35とするとよい。これにより扁平度の大きなナゲット(扁平ナゲット)が得られ易く、電極と板材の溶着低減や電極の変形・摩耗等の抑制が図られる。
先端底部の厚さ(L)は、先端筒部の最深位置(内底面)から先端底部の外側最先端位置までの距離である。先端底部の厚さ(L)が一定でないとき、通常、その最小値が厚さ(L)となる。ちなみに、先端部の内底面(先端底部の内側上面)は、例えば、緩やかな湾曲面でも、円錐面でも、略平坦状でもよい。その内底面が略平坦状であると、先端部の冷却性がよく、扁平ナゲットが得られ易くなる。
さらに、胴部の外径(B)に対する先端部の高さ(H)の比である先端高比(H/B)は、例えば、0.6〜0.9さらには0.7〜0.8であるとよい。先端高比が過大になると、先端部に座屈変形等が生じ易くなる。先端高比が過小であると、整形可能な領域が少なくなり、電極寿命が低下し得る。
先端部の高さ(H)は、先端筒部の開口端(上端)位置から先端底部の外側最先端位置までの距離である。先端部の高さ(H)が一定でないとき、その最大値を高さ(H)とする。先端部の高さ(H)と先端底部の厚さ(L)から先端筒部の深さ(D)が求まる(D=H−L)。先端筒部の深さ(D)は、先端筒部の開口端(上端)位置からその最深位置までの距離である。胴部の外径(B)に対する先端筒部の深さ(D)の比である先端内深比(D/B)は、例えば、0.1〜0.75さらには0.2〜0.6であるとよい。
ちなみに、胴部の外径(B)に対する本体(胴部と先端部)の高さ(T)の比である全高比(T/B)は、例えば、1.2〜2.4さらには1.4〜2とするとよい。また、胴部の外径(B)に対する胴部の高さ(G)の比である胴高比(G/B)は、例えば、0.3〜1.8さらには0.6〜1.2とするとよい。なお、胴部の高さ(G)は、その本体の高さ(T)と先端部の高さ(H)から求まる(G=T−H)ため、本体から先端部を除いた部分を胴部と定義してもよい。
凸状電極(先端部)の基本形状には、例えば、JIS C9304(1999)に多数規定されているように、平面形(F形)、ラジアス形(R形)、ドーム形(D形)、ドームラジアス形(DR形)、円錐台形(CF形)、円錐台ラジアス形(CR形)等がある。いずれの形状も採用し得るが、DR形またはF形が冷却小孔を設けた時の強度と冷却能がバランスする点で好ましい。
胴部と先端筒部の内筒部は、冷媒(冷却液/冷却水等)の流路を構成している。これにより、電極は内側から強制冷却され、溶接物も先端底部の圧接面を介して冷却される。
先端筒部の内筒部は、胴部の開口端側から形成される。このため、胴部の内筒部は、先端筒部の内筒部と同等以上の大きさとなっている。つまり、胴部の内径(e)の最小値(emin)は、先端筒部の内径(f)の最大値(fmax)以上になる。
先端筒部の内筒部は、例えば、エンドミル等による切削加工、パンチ等による塑性加工(鍛造加工)により形成される。本体は、胴部から先端部へ沿う方向に鍛流線が延びた鍛造物であるとよい。このように鍛造された電極は、金属組織的にも高強度となり、変形や摩耗が抑制されて高寿命である。
ちなみに、本明細書でいう「略円筒」とは、鍛造時のパンチの抜き勾配等を考慮して、周側面(壁)が中心軸に平行な場合(中心軸に対する傾角:θ=0°)に限らず、テーパー状(θ≦10°さらにはθ≦5°)である場合も含む意味である。なお、テーパー面は中心軸に沿った湾曲面でもよい。
(2)材質
電極本体(少なくとも先端部)は、導電性および強度に優れる銅合金からなる。銅合金の電気伝導度(導電率)は75〜95%IACSさらには80〜90%IACSであるとよい。導電率が高い純銅は低強度である。導電率が過小な銅合金は、通電時の自己発熱により軟化して、スポット溶接時に変形し易くなる。
ちなみに、「%IACS」は、国際的に採択された焼鈍標準軟銅(IACS:international annealed copper standard)に対する電気伝導度(または電気抵抗)の割合である。電気伝導度(導電率)が100%IACSである焼鈍標準軟銅の体積抵抗率は1.7241×10-2μΩmと規定されている。
銅合金は、純銅(無酸素銅、タフピッチ銅、リン脱酸銅等)以外である。その組成は、敢えていうと、純度が99.8%以下(合金元素が0.2%以上さらには0.5%以上)である。合金元素としてはCr、Zr、Be等がある。具体的にいうと、例えば、クロム銅、ジルコニウム銅、クロム・ジルコニウム銅、アルミナ分散銅、ベリリウム銅等がある。例えば、電気伝導度と強度に優れるクロム銅(Cr:0.5〜1.4質量%、Cu:残部)を用いるとよい。このような電極材料は、JIS Z3234(2種)、またはRWMA(Resistance Welder Manufacturer’s Association/米国抵抗溶接機製造者協会)のGroupA(Class2)に準拠して選択されるとよい。
銅合金製の電極と、少なくとも表面部にAlまたはZnが存在する被接合物(板材)が高温で接触すると、その接触界面近傍で両金属が反応して、化合物または合金が生成され得る。例えば、Cu-Al二元状態図上のθ相またはCu-Zn二元状態図上のQ相等が生成される。
もっとも、本発明の電極を用いて扁平ナゲットが形成されるようにすると、その接触界面の温度上昇は抑制され、金属間化合物等の生成も抑制されるようになる。これにより、溶接部(外表面部やナゲット)中へ、耐食性を低下させる元素(Cu等)が侵入したり、そのような化合物が生成されたりすることが抑制される。このとき、電極の消耗や変形も抑制される。こうして本発明によれば、電極の長寿命化や整形、ドレッシング等の間隔等の長期化を図りつつ、外観や特性(接合強度、耐食性等)に優れた溶接物が得られる。
《溶接物》
本発明の電極によれば、板材との接触界面における反応が抑制され、溶接部における成分組成の変化が少ない溶接物が得られる。例えば、銅合金製の電極を用いてスポット溶接した場合、スポット溶接前の板材の成分組成に対して、溶接部におけるCuの増加分は0.2質量%以下、0.15質量%以下さらには0.1質量%以下に留まる。このような溶接物は、Cuの拡散等に起因した溶接部における耐食性の低下等が抑制される。
なお、本明細書でいうCuの増加分は、溶接部の成分組成とスポット溶接前の成分組成とから求まるCuの差分として特定される。溶接前のCu量は、板材の初期組成から求まる。溶接部におけるCu量は次のようにして特定される。溶接部の外表面中央付近にあるφ8mmの円形領域内(内側にナゲットが存在する領域にほぼ相当)の4箇所から、φ3mmドリルを用いた穿孔により生じる切り粉を採取する。これらの切り粉をICP(Inductively Coupled Plasma/高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析することにより、溶接部のCu濃度(成分組成)が特定される。分析装置には、例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製PS3520UVDDIIを用いるとよい。
《溶接条件》
溶接条件は、適宜、調整され得る。例えば、溶接電流値は20〜60kAさらには30〜50kAとするとよい。溶接電流は交流でも直流でもよい。溶接電流の電源は定電流電源でも定電圧電源でもよいが、定電流電源の方が所望のナゲットを安定的に形成し易い。
本発明の電極を用いれば、例えば、加圧力を2〜10kNさらには3〜8kNとすることもできる。通電時間は、被接合物の種類等に応じて調整され、例えば、10〜800msさらには20〜400msとするとよい。
[第1実施例]
《試料の製造》
(1)被接合物
スポット溶接する被接合物として、板厚0.9mmと2.0mmのアルミニウム合金板(A6016)からなる短冊状(30mm×100mm)の板片(板材)を用意した。
(2)電極
スポット溶接を行う電極として、図1Aに示す3タイプのDR形(JIS C9304)電極チップを用意した。電極1は、有底円筒状の先端部11と略円筒状の胴部12とを有する本体10からなる。先端部11は、先端底部111と先端筒部112を有する。先端底部111は、窪みがない凸状面からなる圧接面111cを外表面側に有する。この圧接面111cが被接合物と接触する。
先端筒部112の内周側面は、上端開口112aから平坦状の内底面112b(先端底部111の内側上端面)にかけて同径(ストレート)な円筒面からなる。胴部12の内周側面は、上端開口12aから下端面12bにかけて緩やかに縮径した円錐面(テーパー面)からなる。先端筒部112の上端開口112aは胴部12の下端面12bに連なる。但し、先端筒部112の上端開口112aの内径(f)は、胴部12の下端面12bの内径よりも小径となっている。なお、本実施例でいう「上・下(方向)」は説明の便宜のために用いており、電極が実際に使用される向き(方向)を限定するものではない。
電極Cは、クロム銅(Cr:1質量%、Cu:残部)からなる市販の電極チップ(OBARA株式会社製)である。このクロム銅合金の電気伝導度は80%IACSである。電極Cの各寸法は次の通りである。
胴部の外径(元径):B=φ16mm、
先端底部の厚さ(先端厚):L(H)=12mm(H/B=0.75)、
上端開口の内径:e=約φ13mm、
本体の高さ(全高):T=23mm(T/B=1.44、G/B=0.69)、
圧接面径(先端径):d=φ8mm(圧接面は半径:R=40mmの球面)、
丸め面取の半径:r=8mm
電極1は、電極Cの内側底部を中心軸に沿ってエンドミルで円筒状に彫り込んで、先端筒部112を形成したものである。電極2は、同様に、電極Cの内側底部をドリルで円筒状に彫り込んで製作したものである。加工具の相違により、電極1の内底面112bは平面状、電極2の内底部は円錐面状となっている。電極1と電極2の先端底部の厚さ(L)と先端筒部の内径(f)は種々変更した。それら先端部を除き、電極1と電極2の各寸法は電極Cと同じである。各寸法の表示は、図1Aに示す通りである。なお、特に断らない限り(後述する第3実施例を除き)、先端筒部の内径:f=8mm(f/B=0.5)とした。
(3)スポット溶接
形状または諸元の異なる各電極を用いて、次のようなスポット溶接を行った。上述した板厚の異なる2枚の板片を重ね合わせ、その両外側に一対の同じ電極を対向配置する。各電極の先端部を板片の外表面に圧接した状態で通電する。溶接条件は、特に断らない限り、溶接電流値:39kA、電極加圧力:5kN、通電時間(溶接時間):32msecとした。なお、スポット溶接は、電極冷却用ホース(外径:φ6mm)から各電極の内部へ冷却水を供給(水量:3L/min)しつつ行った。
《観察・測定》
(1)ナゲット扁平度
スポット溶接して得られた各溶接物を中央で切断して、エメリー紙、アルミナ砥粒を用いて鏡面研磨した後、水酸化ナトリウム水溶液でエッチング処理して、その断面を観察した。電極1(L=3mm:L/B=0.188)を用いた溶接物(試料11)、電極2(L=3mm:L/B=0.188)を用いた溶接物(試料21)、電極C(L=12mm:L/B=0.75)を用いた溶接物(試料C1)の各断面を図1Bに示した。なお、先端底部の厚さを単に「先端厚」ともいう。また、電極1、電極2の先端厚をそれぞれL1、L2ともいう。
各断面に現れたナゲットの輪郭に外接する長方形を描き、その長辺と短辺の各長さを、それぞれナゲット径(D)とナゲット厚さ(H)とし、ナゲット扁平度(D/H)を算出した。その結果を図1Bに併せて示した。
(2)Cu増加量
電極1(L=5mm:L/B=0.312)を用いた溶接物(試料12)、電極1(L=3mm:L/B=0.188)を用いた溶接物(試料13)および電極C(L=12mm:L/B=0.75)を用いた溶接物(試料C2)を、それぞれ別途製造した。各試料の表面部におけるCu増加量(質量%)を、スポット溶接前後の成分組成に基づいて算出した。溶接前の成分組成には、板片(母材)の成分組成を用いた。溶接後の溶接部の成分組成は既述した方法により特定した。こうして得られた結果を図2にまとめて示した。なお、Cu源は電極を構成する銅合金である。
《評価》
(1)ナゲット扁平度
図1Bから明らかなように、先端底厚比が所定範囲内である電極1、電極2を用いることにより、従来の電極Cを用いた場合よりも、扁平なナゲットを形成できることがわかった。
(2)Cu増加量
図2から明らかなように、ナゲット扁平度が高くなるほど、Cu増加量が少なくなり、電極側から溶接物側へ移動(拡散、化合物生成等)するCu量を低減できることがわかった。これにより、ナゲット扁平度の高い溶接物は、CuまたはCu化合物・合金に起因して生じ得る耐食性の低下が抑制されるといえる。
《考察》
(1)相関
電極形状、Cu増加量およびナゲット形状は、次のように関連していると推察される。
先ず、図3に示すように、従来の電極Cを用いてスポット溶接した場合、電極Cに投入された電流は中央部に集中して板材へ流れ込み、板材の内側中央部から溶融が開始される。こうして中央部に生成した溶融池は、横方向(板材の延在方向)へ、相似形のまま拡大して成長する。
所望の接合強度が得られるナゲット径を確保するために、溶融池を横方向へ成長させると、その溶融池は、必然的に、縦方向(板材の表面側)へも成長する。成長した溶融池は、電極と接触している板材の表面部付近にまで到達し、電極と板材の接触界面温度を上昇させる。その結果、電極の構成金属(主にCu)と板材の構成金属(例えばAlやZn)との間で、拡散または溶融反応等を生じ易くなる。これにより電極側から板材側へCuが移動し易くなり、溶接部の少なくとも外表面部においてCu量が増加し易い。
そして、上記のような溶融池が凝固してできたナゲットは、ナゲット径(D)と共にナゲット厚さ(H)も大きくなるため、ナゲット扁平度(D/H)は比較的小さくなる。
こうして従来の電極を用いて得られたスポット溶接物は、ナゲット扁平度が小さく、耐食性の低下要因となるCuを多く含むものといえる。この場合、電極の消耗や変形も生じ易くなるため、電極の清浄化や交換の頻度も多くなり、スポット溶接物の製造コストも増加する。
一方、図3に示すように、先端底厚比(L1/B)が所定範囲内の電極1を用いてスポット溶接した場合、電極1に投入された電流は、先端部の外周域から分散して板材へ主に流れ込み、板材の内側外周域から溶融が開始される。電極1の冷却能力が向上している点も相まって、環状または離散状の溶融池が外周側に発生し、それが板材の中央側へ横方向に成長していく。このような成長過程を経る溶融池は、相似形に成長せず、横方向への成長と縦方向への成長が連動しない。つまり、その溶融池は、横方向へ成長しても、縦方向への成長は抑制される。その結果、電極と板材の接触界面温度の上昇も抑制され、電極と板材の接触界面における反応も生じ難くなる。これにより、電極側から板材側へ拡散するCu量も低減される。
そして、上記のような溶融池が凝固してできたナゲットは、ナゲット扁平度(D/H)が比較的大きくなる。
こうして先端底厚比(L/B)が所定範囲内の電極を用いて得られたスポット溶接物は、ナゲット扁平度が大きく、耐食性の低下要因となるCuの含有量も少ないといえる。この場合、電極の消耗や変形も抑制され、電極の清浄化や交換の頻度も少なくなり、スポット溶接物の製造コストも低減される。
なお、スポット溶接物の接合強度はナゲット径で定まり、ナゲット厚さはその接合強度に影響しない。このため、ナゲット扁平度が比較的大きい(ナゲット厚さが比較的小さい)溶接物でも、ナゲット径(D)が所定値以上(D≧4√t)なら、十分な接合強度が確保される。また、ここでは便宜上、電極1を例にとり説明したが、上述した内容は図1Aに示す電極2等にも該当し得る。
(2)解析
上述した考察を確認するため、抵抗溶接シミュレーションソフト SORPASを用いてスポット溶接したときの様子をシミュレーションした。そのとき用いた解析モデル、通電・加圧力パターンおよび解析結果(温度分布)を図4にまとめて示した。なお、このときの電極の先端底厚比(L/B)は0.19とした。電極の材質は銅合金(Cu−Cr)、板材の材質はアルミニウム合金(A6016)とした。
解析の結果、電極と板材の接触界面温度は458℃となり、Cu−Alの共晶温度(548.2℃)よりも小さくなることが確認できた。
なお、先端底厚比(L/B)が0.75である従来の電極(図1Aの電極C参照)を用いてスポット溶接した場合も同様にシミュレーションした。この場合、電極と板材の接触界面温度は586℃となり、Cu−Alの共晶温度よりも大きくなった。
[第2実施例]
電極の板材に対する溶着性と電極の変形性(耐摩耗性)とに及ぼす電極の形状(先端底厚比)の影響を次のように評価した。
《電極》
図1Aに示した既述の電極C(B=φ16mm、L=12mm、L/B=0.75)と、それにエンドミル加工を種々施した電極1(B=φ16mm)を用意した。電極1の先端厚(L1)は、2mm(L1/B=0.125)、3mm(L1/B=0.1875)、5mm(L1/B=0.3125)または7mm(L1/B=0.4375)のいずれかとした。
《スポット溶接》
既述した重ね合わせた板材に、各電極を用いてスポット溶接を繰り返し行った。印加した電流値は、35〜50kAの範囲で種々変更した。それ以外の溶接条件は、既述した通りとした。
《評価》
(1)溶着性
電極と電流値の各組み合わせ毎に、25打点のスポット溶接を、電極の整形を行わずに一気に繰り返し行った。各打点間隔は1secとした。溶接不可となる程に強溶着した場合を×、25打点のスポット溶接を行えた場合を○として、図5Aにまとめて示した。
図5Aから明らかなように、先端厚(先端底厚比)が小さい電極を用いると、電流値を高めても、溶着し難く、整形なしで連続的にスポット溶接を行えることが明らかとなった。なお、先端厚(先端底厚比)の小さい電極ほど優れた耐溶着性を発揮する理由は、前述したように、扁平度の大きな溶融池ひいてはナゲットが形成され易いためと考えられる。
(2)変形性
電極と電流値の各組み合わせ毎に、1000打点のスポット溶接を行った。この際、電極の整形(ドレッシング)は12打点毎に1回行った。また各打点間隔は1secとした。1000打点のスポット溶接後の電極の変形量が0.5mm以上となる場合を×、その変形量が0.5mm未満である場合を○として、図5Bにまとめて示した。なお、ここでいう電極の変形量とは、連続するスポット溶接により電極の先端部が塑性変形(陥没等)してシャンク側へ変位した量(突出量の減少量)を意味する。
図5Bから明らかなように、先端厚(先端底厚比)が過小な電極を用いると、電流値を高めたときに、電極が変形または消耗し易いことが明らかとなった。
以上から、所定範囲内の先端底厚比を有する電極を用いてスポット溶接することにより、例えば、電流値が39kA以下の範囲で、溶着の発生や電極の変形を抑制しつつ、スポット溶接を安定して行えることが明らかとなった。
[第3実施例]
電極の板材に対する溶着性と電極の変形性(耐摩耗性)とに及ぼす電極の形状(先端内径比)の影響を次のように評価した。
《電極/スポット溶接物》
図1Aに示した先端筒部112の内径(f)を種々変更した電極1(B=φ16mm、L=3〜8mm、L/B=0.19〜0.5)を用意した。これらの各電極を用いて、既述した重ね合わせた板材にスポット溶接を行った。印加した電流値は34〜50kAとした。それ以外の溶接条件は、既述した通りとした。1000打点のスポット溶接後の電極の状態を観察・評価した。なお、電極の整形(ドレッシング)は、12打点毎に1回行った。また各打点間隔は1secとした。
《評価》
1000打点後の各電極の状態を図6にまとめて示した。図6中の×は、圧接面111cと板材(被接合材)が溶融反応して連続溶接できなくなる場合または連続溶接により先端筒部112に変形(座屈)が発生していた場合を意味し、○はそれらのいずれでもない場合を意味する。
図6から明らかなように、先端内径比(f/B)が過小(0.4未満)になると、電極と板材の間で溶着が発生した。これは先端部内における冷却水の循環が悪く、冷却効率が低下したためと考えられる。逆に先端内径比(f/B)が過大(0.6超)になると、電極(先端部)に座屈が発生した。これは、先端筒部の周側壁が薄くなり、強度低下と自己発熱(抵抗発熱)による軟化の影響と考えられる。
以上から、所定範囲内の先端内径比を有する電極を用いてスポット溶接することにより、溶着の発生や電極の変形を抑制しつつ、スポット溶接を安定して行えることも明らかとなった。
[その他]
上述した内容は、図1Aに例示したDR形に替えて、F形、R形、D形、CF形、CR形等のいずれの電極(チップ)を用いた場合にも該当し得る。R形の一例である電極3を図7に示した。電極3は、クロム銅素材を冷間鍛造して、先端底厚比(L3/B)を所定範囲内としたものである。図1Aと同様に、図7中に示した各記号は、B:外径(元径)、e:内径、R:先端球面の曲率半径をそれぞれ意味している。
1 電極
10 本体
11 先端部
12 胴部
111 先端底部
112 先端筒部

Claims (8)

  1. 有底略円筒状の先端部と該先端部に連なる略円筒状の胴部とを有する本体を備える抵抗スポット溶接用電極チップであって、
    該本体は、純度が99.8%以下の銅合金からなり、
    該先端部は、圧接される被接合物に対して窪んでいない圧接面を有する先端底部と該先端底部から連なる略円筒状の先端筒部とを有し、
    該胴部の外径(B)に対する該先端筒部の内径(f)の比である先端内径比(f/B)は0.4〜0.6であり、
    該胴部の外径(B)に対する該先端底部の厚さ(L)の比である先端底厚比(L/B)は0.15〜0.5であり、
    通電される溶接電流値が20〜60kAである抵抗スポット溶接用電極チップ。
  2. 前記胴部の外径(B)に対する前記先端部の高さ(H)の比である先端高比(H/B)は0.6〜0.9である請求項1に記載の抵抗スポット溶接用電極チップ。
  3. 前記銅合金は、電気伝導度が75〜95%IACSである請求項1または2に記載の抵抗スポット溶接用電極チップ。
  4. 前記銅合金は、クロム銅である請求項3に記載の抵抗スポット溶接用電極チップ。
  5. 前記本体は、前記胴部から前記先端部へ沿う方向に鍛流線が延びた鍛造物からなる請求項1〜4のいずれかに記載の抵抗スポット溶接用電極チップ。
  6. 前記先端部の内底面は略平坦状である請求項1〜5のいずれかに記載の抵抗スポット溶接用電極チップ。
  7. 前記被接合物は、少なくとも外表面部にAlまたはZnを含む請求項1〜6のいずれかに記載の抵抗スポット溶接用電極チップ。
  8. 前記被接合物は、アルミニウム合金板またはめっき高張力鋼板からなる請求項1〜7のいずれかに記載の抵抗スポット溶接用電極チップ。
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