JP6851852B2 - ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物 - Google Patents

ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に関する。より詳細には、軽量性に優れ、薄い成形体とした場合の導電性、難燃性、及び機械的強度にも優れた、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に関する。
ATM(Auto Teller Machine)やCD(Cash Dispenser)のような金融自動装置の内部導電フレームや内部シャーシ、紙幣収納部品等の内部部品は、従来、板金材料が用いられてきた。しかし近年になって、低比重による軽量化が期待できることから、板金材料から樹脂への置き換えが検討されている。
ところがこうした用途では、紙幣を高速で搬送する際に紙幣と内部部品が接触して摩擦により生じる静電気が、装置内部に滞留することで紙幣詰りや電子回路の誤作動の原因となるため、静電気を速やかに除去するための十分な導電性が要求される。また紙幣搬送時に駆動するモーターの発熱により、装置内部に熱が籠もり、しばしば高温となることから、発火の危険がある。そのため発火時に紙幣等に着火しても燃焼が拡大しないよう、樹脂材料に高い耐熱性と難燃性が要求される場合も少なくない。
近年、成形体の更なる薄肉化、軽量化の要求に伴い、比重が低い樹脂材料であって、薄肉な成形体としたときでも難燃性に優れ、更には組み付け時と使用時の割れ防止対策から十分な機械強度を保持しており、なおかつ十分な導電性能を兼ね備えた成形体を得ることができる樹脂材料の需要が高まる傾向である。
ところで、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテルに、必要とされる耐熱性や成形流動性等のレベルに応じて任意の割合で、スチレン系樹脂、エラストマー成分、難燃剤、熱安定剤等の添加剤成分を配合して樹脂組成物としたものである。
一般に、ポリフェニレンエーテル系樹脂に炭素繊維を配合することで導電性と機械強度とを付与することが可能ではあるが、少量の場合、成形品に均一で十分な導電性能が得られ難く、機械強度も十分ではない。多量に配合した場合は、難燃化が著しく困難になる傾向であり、また材料の比重も高比重となり必ずしも十分では無い。
ポリフェニレンエーテル系樹脂に、炭素繊維と共にグラファイトや、アルキルスルホン酸金属塩を配合して、導電性と共に、靱性や難燃性を改良する技術が既に開示されている(例えば特許文献1参照)。
熱可塑性樹脂組成物にカーボンナノチューブと芳香族ポリエステル樹脂を配合することで、成形品の導電性能のばらつきを改善する技術も開示されている。(例えば特許文献2参照)。また、特定の中空構造を有する炭素繊維を配合した、紙等との摺動性が良好な持続性帯電防止樹脂組成物に関する技術も開示されている(例えば特許文献3参照)。
特開2007−277313号公報 特開2009−1740号公報 特開平11−181301号公報
特許文献1には、外観、耐熱性と成形流動性のバランス、耐衝撃性、引張伸度に優れ、安定した導電性能を示し、難燃化も容易な導電性樹脂組成物が記載されている。しかしながら、近年、ATMやCD等の金融自動装置等の分野において求められる、軽量化の検討や、薄肉な成形体としたときの物性については検討がなされていない。
また、特許文献2、3で用いられるカーボンナノチューブや中空構造を有する炭素繊維は、通常の炭素繊維と比べると取り扱い性が極めて困難であり、樹脂中での分散性も悪く、マスターバッチのように予め樹脂中に十分なせん断応力を掛けて十分に予備分散させたものを使用する必要がある。そのため工程の煩雑化や、材料設計の自由度の制限をも伴うこと等から、ATMやCD等の金融自動装置等の用途への適応には必ずしも十分では無い。
従って、本発明は、軽量性に優れ、薄い成形体とした場合の導電性、難燃性、及び機械的強度に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物、及びこれを用いた成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル、炭素繊維、芳香族リン酸エステル系難燃剤、及び任意成分としてのスチレン系樹脂の配合量を特定範囲とし、比重、体積抵抗率、難燃性、曲げ強度を特定の範囲とすることで、長期間トラブル無く安定した性能を持続して使用可能な、金融自動装置等の内部部品に適するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が得られることを見出した。
即ち、本発明は、以下を含む。
[1]
ポリフェニレンエーテル(A)50〜85質量%、スチレン系樹脂(B)0〜16質量%、炭素繊維(C)5〜9質量%、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%を含有し、
比重が1.10〜1.17であり、
長さ150mm、幅150mm、厚さ2mmの成形板としたときの体積抵抗率が10〜1000Ω・cmであり、
長さ127mm、幅13mm、厚さ1mmの成形板としたときのUL94に準拠して測定した難燃レベルがV−1又はV−0であり、
長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形板としたときのISO178に準拠して23℃で測定した曲げ強度が120MPa以上であり、
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の合計100質量部に対して、熱可塑性エラストマー(E)0.5〜5質量部を更に含有し、
前記(E)成分が、スチレンブロックと共役ジエン化合物ブロックとを少なくとも有するブロック共重合体であって、前記共役ジエン化合物ブロックにおける共役ジエン化合物由来の不飽和結合の水素添加率が50%以上である、
ことを特徴とする、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[2]
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の合計100質量部に対して、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)0.05〜3質量部を更に含有する、[1]に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[3]
前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の合計100質量部に対して、脂肪酸アミド(G)0.005〜0.5質量部を更に含有する、[1]又は[2]に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[4]
前記(B)成分(100質量%)中に、少なくとも5質量%のスチレン−アクリロニトリル共重合体が含まれる、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[5]
前記スチレン−アクリロニトリル共重合体が、アクリロニトリル共重合量が15〜40質量%のスチレン−アクリロニトリル共重合体である、[4]に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[6]
前記(C)成分が、収束本数が40000〜80000本のチョップドストランドである、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[7]
前記(F)成分が、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムである、[2]に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[8]
前記(G)成分が、エチレンビスステアリルアミドである、[3]に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[9]
前記体積抵抗率が、10〜500Ω・cmである、[1]〜[8]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
[10]
[1]〜[9]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
[11]
金融自動装置の内部部品である、[10]に記載の成形体。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、軽量性に優れ、薄い成形体とした場合の導電性、難燃性、及び機械的強度に優れる。そのため、ATM、CD等の金融自動装置の内部導電フレーム、内部シャーシ、紙幣収納部品のような、紙幣等の紙類と高速で連続的に接触する使用環境下において、長期間有効にトラブル無く使用することが可能である。
図1は、実施例、比較例において、体積抵抗率の測定時の測定箇所を示す概略図(平面図)である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
〔ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物〕
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル(A)50〜85質量%、スチレン系樹脂(B)0〜16質量%、炭素繊維(C)5〜9質量%、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%を含有する。
(ポリフェニレンエーテル(A))
ポリフェニレンエーテル(A)は、下記一般式(1)及び/又は(2)の繰り返し単位を有し、構成単位が一般式(1)又は(2)からなる単独重合体(ホモポリマー)、あるいは共重合体(コポリマー)であることが好ましい。
Figure 0006851852
Figure 0006851852
(上記一般式(1)、(2)中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、並びにハロゲン及び水素等の一価の基からなる群より選ばれる基である。但し、R及びRが同時に水素である場合を除く。)
上記アルキル基の好ましい炭素数は1〜3であり、上記アリール基の好ましい炭素数は6〜8であり、前記一価の基は水素原子が好ましい。
尚、上記一般式(1)、(2)の繰り返し単位数については、ポリフェニレンエーテル(A)の分子量分布により様々であるため、特に制限されることはない。
ポリフェニレンエーテル(A)のうち、単独重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル及び、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。特に、原料入手の容易性及び加工性の観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。
ポリフェニレンエーテル(A)のうち、共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体、及び2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体といった、ポリフェニレンエーテル構造を主体とするものが挙げられる。
特に、原料入手の容易性及び加工性の観点から、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、物性改良の観点から2,6−ジメチルフェノール90〜70質量%と2,3,6−トリメチルフェノール10〜30質量%との共重合がより好ましい。
上述した各種ポリフェニレンエーテル(A)は、一種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
ポリフェニレンエーテル(A)は、耐熱性が低下しすぎない程度であれば、上記一般式(1)、(2)以外の他のフェニレンエーテル単位を部分構造として含んでいてもよい。
上記一般式(1)、(2)以外の他のフェニレンエーテル単位としては、以下に限定されるものではないが、例えば、特開平01−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位や、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテル単位等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル(A)は、ポリフェニレンエーテルの主鎖中にジフェノキノン等が少量結合していてもよい。
更に、ポリフェニレンエーテル(A)は、ポリフェニレンエーテルの一部又は全部をアシル官能基と、カルボン酸、酸無水物、酸アミド、イミド、アミン、オルトエステル、ヒドロキシ及びカルボン酸アンモニウム塩よりなる群から選択される1種以上の官能基とを含む官能化剤と反応(変性)させることによって官能化ポリフェニレンエーテルに置き換えた構成を有していてもよい。
ポリフェニレンエーテル(A)の、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn値)は、好ましくは1.0〜5.5であり、より好ましくは1.5〜4.5、更により好ましくは2.0〜4.5である。
上記Mw/Mn値は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の成形加工性の観点から1.0以上が好ましく、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の機械的物性の観点から5.5以下が好ましい。
ここで、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定による、ポリスチレン換算分子量から得られる。
ポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度は、0.25〜0.65dL/gの範囲が好ましい。より好ましくは0.30〜0.55dL/gで、更により好ましくは0.33〜0.42dL/gの範囲である。
ポリフェニレンエーテル(A)の還元粘度は、十分な機械的物性の観点から0.25dL/g以上であることが好ましく、成形加工性の観点から0.65dL/g以下であることが好ましい。
尚、還元粘度は、ウベローデ粘度計を用いて、クロロホルム溶媒、30℃、0.5g/dL溶液で測定できる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量%に対する、ポリフェニレンエーテル(A)の含有量は、50〜85質量%であり、好ましくは50〜75質量%、より好ましくは55〜75質量%である。
ポリフェニレンエーテル(A)の含有量は、十分な耐熱性、難燃性付与の観点から50質量%以上とし、成形加工性の観点から85質量%以下とする。
(スチレン系樹脂(B))
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(B)は、スチレン系化合物又はスチレン系化合物と共重合可能な化合物を、ゴム質重合体存在下又は非存在下にランダム共重合して得られる重合体である。
上記スチレン系化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。特に原材料の実用性の観点から、スチレンが好ましい。
上記スチレン系化合物とランダム共重合可能な化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物;等が挙げられる。
スチレン系樹脂(B)としては、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)及びゼネラルパーパスポリスチレン(GPPS)、及びスチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)を用いることが、成形品の機械的物性や成形流動性の改良等の観点から好ましい。
中でも、耐衝撃性改良の観点から、スチレン系樹脂(B)の内の、一部又は全部に、HIPSを用いることが好ましい。本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に配合するスチレン系樹脂(B)(100質量%)中のHIPSの配合割合は、10〜100質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
また、導電性、導電性のばらつき改良、成形流動性、耐熱性の改良、難燃性の改良の観点から、本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に配合するスチレン系樹脂(B)の一部又は全部に、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)を用いることが好ましく、スチレン系樹脂(B)(100質量%)中に、AS樹脂を5〜100質量%含むことがより好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(B)(100質量%)に対し、5〜100質量%のAS樹脂を含むことによって、なぜ成形体表面の導電性ばらつき等が改良されるのか、詳細は定かではないが、樹脂マトリックス中にドメインとして分散するAS樹脂の分散形態が、炭素繊維等の導電性フィラーの導電経路形成に影響を及ぼしているためとも推測される。スチレン系樹脂(B)中の、AS樹脂の配合割合は、20〜70質量%がより好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に配合するAS樹脂中のアクリロニトリル(AN)共重合量は、十分な導電性、導電性のばらつき及び難燃性改良の観点から、AS樹脂(100質量%)中に、10〜50質量%が好ましく、15〜40質量%が特に好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に配合するAS樹脂のMFR(JIS K7210に準拠して測定、測定温度220℃、測定荷重3.8kg)は、成形流動性と耐熱性改良の観点から、1〜150g/10minが好ましく、5〜120g/10minがより好ましく、8〜100g/10minが更に好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(B)は任意成分であり、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量%に対する、スチレン系樹脂(B)の含有量は、0〜16質量%であり、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは3〜12質量%である。
スチレン系樹脂(B)は、本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の成形流動性改良の観点から添加することが好ましいが、十分な難燃性を付与する観点から16質量%以下の配合であることが望ましい。
(炭素繊維(C))
炭素繊維(C)は、本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、導電性の付与、耐熱性、機械的強度を向上させる目的で配合される。炭素繊維(C)としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、気相成長炭素繊維等が挙げられる。
炭素繊維(C)としては、例えば、原糸をエポキシ系等の収束剤で10000〜90000の本数の範囲内で収束したカット長2〜7mmのチョップドストランドが用いられる。
チョップドストランドの収束本数は、12000〜90000本が好ましく、より好ましくは20000〜80000本であり、また、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の導電性、耐熱性、機械強度付与の観点から、収束本数が40000〜80000本の範囲内のチョップドストランドが更に好ましい。なぜ収束本数が40000〜80000本の範囲内のチョップドストランドが導電性、耐熱性及び、機械強度が特に優れるのか、詳細は不明であるが、成形体中での繊維長分布や樹脂中での繊維の分散状態が性能に影響を及ぼしていることが推測される。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に使用する炭素繊維のチョップドストランドは、取扱性の観点から12000本以上の収束本数が好ましく、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物中での開繊性の観点から90000本以下の収束本数が好ましい。
炭素繊維(C)に含まれる炭素繊維の繊維径は、0.5〜15μmが好ましく、より好ましくは5〜10μmである。
また、炭素繊維(C)に含まれる炭素繊維の繊維長は、50〜700μmが好ましく、より好ましくは100〜600μmであり、更に好ましくは200〜500μmであり、特に好ましくは250〜450μmである。十分な導電性発現の観点から、50μm以上が好ましく、成形品の外観保持、成形加工性と開繊性の観点から、700μm以下が好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量%に対する、炭素繊維(C)の含有量は、5〜9質量%であり、好ましくは6〜9質量%、より好ましくは6〜8質量%である。十分な導電性発現の観点から、5質量%以上の含有が望ましく、難燃性付与の観点、特に薄肉の成形体における難燃性の観点から9質量%以下の含有が望ましい。
(芳香族リン酸エステル系難燃剤(D))
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において用いられる、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)は、環境負荷を極力低減して、熱安定性及び難燃性を付与する観点から、配合される。
芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ヒドロキシノンビスフェノールホスフェート、レゾルシノールビスホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート等のトリフェニル置換タイプの芳香族リン酸エステル類が好適に用いられる。中でもビスフェノールAビスホスフェートがより好適に用いられる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量%に対する、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)の含有量は、5〜25質量%であり、好ましくは7〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%、更に好ましくは12〜20質量%である。十分な難燃性付与の観点から5質量部以上の含有が好ましく、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の十分な耐熱性保持の観点から25質量%以下の含有が好ましい。
(熱可塑性エラストマー(E))
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、必要に応じて、更に導電性を改良する目的で、スチレン系熱可塑性エラストマーやオレフィン系エラストマー、ポリオレフィン等の熱可塑性エラストマー(E)を含んでいてもよい。
なお、本明細書において、熱可塑性エラストマー(E)としてのスチレン系熱可塑性エラストマーとは、スチレン系樹脂(B)とは異なり、スチレンブロックと共役ジエン化合物ブロックとを少なくとも有するブロック共重合体である。
上記共役ジエン化合物ブロックは、熱安定性の観点から、共役ジエン化合物由来の不飽和結合の水素添加率が、50%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは95%以上である。なお、水素添加率は、例えば、核磁気共鳴装置(NMR)により求めることができる。
上記共役ジエン化合物ブロックとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(エチレン・ブチレン)、ポリ(エチレン・プロピレン)、ビニル−ポリイソプレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物ブロックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性エラストマー(E)としてのブロック共重合体を構成する繰り返し単位の配列の様式は、リニアタイプでもよい。また、スチレンブロック、及び共役ジエン化合物ブロックにより構成されるブロック構造は、二型、三型及び四型のいずれかであってもよい。中でも、本実施の所望の効果を十分に発揮し得る観点から、ポリスチレン−ポリ(エチレン・ブチレン)−ポリスチレン構造で構成される三型のリニアタイプのブロック共重合体であることが好ましい。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーを、オレフィン系エラストマー及び/又はポリオレフィン等の熱可塑性エラストマーと併用して用いる場合、スチレン系熱可塑性エラストマー中の結合スチレン量は20〜80質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜65質量%である。ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物中での混和性の観点から、結合スチレン量は20質量%以上であることが好ましく、耐衝撃性の観点から80質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量部に対する、熱可塑性エラストマー(E)の含有量は0.5〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.8〜4質量部、更に好ましくは1〜3質量部である。なぜエラストマー成分を添加することで導電性が改良される傾向であるのか詳細は不明であるが、エラストマー成分が樹脂中で分散相(ドメイン)を形成することで、炭素繊維等の導電性フィラーの導電経路の形成に寄与していると推測される。熱可塑性エラストマー(E)の含有量は、導電性改良の観点から、0.5質量部以上が好ましく、剛性及び難燃性保持の観点から、5質量部以下が好ましい。
(アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F))
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、必要に応じて、更に導電性、耐熱性及び機械強度を改良する目的で、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)を含んでいてもよい。
アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)のアルキル部分は、樹脂との混和性の観点から、炭素数7〜16の範囲の成分であることがより好ましい。
アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)の金属塩部分は、具体的には、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩が挙げられる。中でも、導電性発現及び取扱性の観点から、ナトリウム塩が好ましい。
アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)の形状としては、特に限定されるものではないが、取扱性の観点から、平均粒子径が1〜10mmのペレット形状又は粒状が好ましく、平均粒子径が2〜5mmのペレット形状又は粒状がより好ましい。上記平均粒子径は、吸湿による生産性低下防止の観点から、1mm以上が好ましく、押出機フィーダーによるスムーズな搬送の観点から、10mm以下であることが好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量部に対する、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)の含有量は、0.05〜3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3質量部、更に好ましくは0.2〜2質量部、更に好ましくは0.3〜1.5質量部、特に好ましくは0.5〜1質量部である。十分な導電性と、耐熱性、機械強度改良の観点から0.1質量部以上の含有が好ましく、樹脂組成物の生産安定性及び成形品外観保持の観点から3質量部以下の含有が好ましい。
(脂肪酸アミド(G))
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、必要に応じて、成形品表面でのばらつきの少ない均一な導電性を発現させる目的で、脂肪酸アミド(G)を含んでいてもよい。
脂肪酸アミド(G)の具体例としては、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリルアミド、メチロールステアリルアミド等が挙げられる。中でも、オレイン酸アミドとエチレンビスステアリルアミドが好ましく、エチレンビスステアリルアミドがより好ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量部に対する、脂肪酸アミド(G)の含有量は、0.005〜0.5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量部、更に好ましくは0.02〜0.3質量部、特に好ましくは0.03〜0.2質量部である。十分な導電性と摺動性改良の観点から、0.005質量部以上が望ましく、樹脂組成物の生産安定性及び成形時の発生MD抑制の観点から、0.5質量部以下が望ましい。
(その他の材料)
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物においては、本発明の効果や、耐熱性、機械的物性、難燃性、成形品の表面外観等を低下させない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤類、着色剤、離型剤等のその他の材料を、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量部に対して、0.001〜3質量部含んでいてもよく、0.001〜2質量部含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜1質量部である。
十分なその他の材料の添加効果発現の観点から、0.001質量部以上とすることが望ましく、物性保持の観点から、3質量部以下とすることが望ましい。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物においては、本発明の効果や、比重、機械強度、難燃性、成形品表面外観を低下させない範囲において、更に無機質充填剤を、ポリフェニレンエーテル(A)と、スチレン系樹脂(B)と、炭素繊維(C)と、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)との合計量100質量部に対して、0.5〜5質量部含んでいてもよく、1〜5質量部含むことが好ましく、より好ましくは2〜4質量部である。尚、無機質充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、グラファイト、ガラス繊維、マイカ、ガラスフレーク、タルク、ガラスミルドファイバー、クロライト等が挙げられる。
また、本発明の低比重、特定範囲の曲げ強度を達成するには、グラファイトは含まないことが望ましい。
なお、上記無機質充填剤に、炭素繊維(C)は含まないものとする。
(ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の物性)
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の比重は、軽量性等の観点から、1.10〜1.17であり、好ましくは1.11〜1.16、より好ましくは1.12〜1.16である。
上記比重は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記比重は、例えば、ポリフェニレンエーテル(A)等の樹脂成分、炭素繊維(C)、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)、グラファイト等の無機充填剤の配合比率により調整することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、薄肉な成形体としたときの導電性等の観点から、長さ150mm、幅150mm、厚さ2mmの成形板としたときの体積抵抗率が、10〜1000Ω・cmであり、10〜500Ω・cmが好ましく、100〜500Ω・cmがより好ましい。
また、本実施形態のポリフェニレンーテル系樹脂組成物は、導電性の観点から、長さ150mm、幅150mm、厚さ2mmの成形板としたときの、図1に示す測定箇所1〜5で測定した体積抵抗率のばらつきが小さいことが好ましく、例えば、測定箇所1〜5の測定値の標準偏差が90未満であることがより好ましく、70以下であることが更に好ましい。
上記体積抵抗率は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記体積抵抗率は、例えば、炭素繊維(C)の含有量、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)の含有量等により調整することができる。
また、上記体積抵抗率のばらつきは、例えば、炭素繊維(C)の含有量、炭素繊維(C)の種類、熱可塑性エラストマー(E)の含有量、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)の含有量、脂肪酸アミド(G)の含有量、スチレン−アクリロニトリル共重合体の含有量等により調整することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、難燃性等の観点から、長さ127mm、幅13mm、厚さ1mmの成形板としたときのUL94に準拠して測定した難燃レベルが、V−1又はV−0であり、V−0であることが好ましい。
上記難燃レベルは、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記難燃レベルは、例えば、ポリフェニレンエーテル(A)の含有量、炭素繊維(C)の含有量、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)の含有量等により調整することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、薄肉な成形体としたときの機械的強度等の観点から、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形板としたときのISO178に準拠して23℃で測定した曲げ強度が120MPa以上であり、125〜170MPaが好ましく、130〜160MPaがより好ましい。
上記曲げ強度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記曲げ強度は、例えば、炭素繊維(C)の含有量、ポリフェニレンエーテル(A)の含有量、熱可塑性エラストマー(E)の含有量、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)の添加の有無等により調整することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、耐熱性の観点から、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形板としたときのISO75に準拠し、フラットワイズ法、1.82MPaで測定される荷重たわみ温度は、100〜160℃が好ましく、110〜150℃がより好ましい。
上記荷重たわみ温度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
上記荷重たわみ温度は、例えば、炭素繊維(C)の含有量、ポリフェニレンエーテル(A)の含有量、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)の含有量、無機充填剤の含有量等により調整することができる。
〔ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル(A)、炭素繊維(C)、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)、及び必要に応じて、スチレン系樹脂(B)、熱可塑性エラストマー(E)、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)、脂肪酸アミド(G)、その他の材料を溶融混練することによって、製造することができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を製造するための条件については、以下に限定されるものではないが、押出機を用いて製造することが好ましく、特にポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を大量に安定して製造するには、製造効率の観点から二軸押出機が好適に用いられる。
二軸押出機のスクリュー径としては、25〜90mmが好ましく、より好ましくは40〜70mmである。
二軸押出機を用いた製造方法としては、例えば、ZSK40MC二軸押出機(独国Werner&Pfleiderer社製、バレル数13、スクリュー径40mm、L/D=50;ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:6個、及びニーディングディスクN:4個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度260〜330℃、スクリュー回転数150〜450rpm、押出レート40〜250kg/hの条件で溶融混練する方法、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53;ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度260〜330℃、スクリュー回転数150〜500rpm、押出レート200〜700kg/hの条件で溶融混練する方法等が挙げられる。
ここで、上記「L」は、押出機の「スクリューバレル長さ」であり、上記「D」は「スクリューバレルの直径」である。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を、二軸押出機を用いて製造するに際して、耐熱性及び機械的物性付与の観点から、(C)成分以外の成分((A)成分、(B)成分、(D)成分等)は押出機の最上流部の供給口(トップフィード)から供給して、(C)成分は押出機途中の供給口(サイドフィード)から別に供給することが好ましい。また、(D)成分が常温(23℃)で液状の場合、押出機途中のバレルから液添ノズルを設置して、液添加することが安定生産の観点から好ましい。
また(F)成分は、大気中の水分を吸収して吸湿しやすいため、開封後、速やかに使用するか、使用に時間が掛かる場合、製品サイロやホッパー中の湿度を低減する等、極力吸湿させないことが望ましい。
(G)成分は微量の配合となるため、事前に(B)成分等のペレット形状の原材料成分に、ミネラルオイルやパラフィンオイル等の添着オイル等で、添着させることで、他の原材料と溶融混練してもよい。また、先に他の原料を押出機で溶融混練して、押出ストランドを裁断して、得られたペレット形状の組成物に後から(G)成分をブレンドして、製品ペレット表面に添着させてもよい。
〔成形体〕
本実施形態の成形体は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる。本実施形態の成形体は、ATM又はCD等の金融自動装置の内部部品であることが好ましく、特に、内部導電フレームや内部シャーシ、紙幣収納部品であることがより好ましい。
本実施形態の成形体の厚さとしては、例えば、0.5〜3.0mmが好ましく、0.8〜2.0mmがより好ましい。
本実施形態の成形体は、例えば、本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の成形方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、射出成形、押出成形、真空成形及び、圧空成形等の方法が好適に挙げられ、特に成形品の外観特性及び量産性の観点から、射出成形が好ましい。
以下、本発明について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例1−3は、参考例として記載するものである。
実施例及び比較例に用いた物性の測定方法及び原材料を以下に示す。
(1.比重)
実施例及び比較例により製造したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の比重を、アルファーミラージュ社製の電子比重計SD−200Lを用いて測定した。
評価基準としては、比重が小さい程、軽量性等に優れると評価した。
(2.体積抵抗率)
実施例及び比較例により製造したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。乾燥後のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を、寸法150mm×150mm×2mm厚みのピンゲート平板金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度320℃、金型温度120℃、射出圧力(ゲージ圧70MPa)、射出速度(パネル設定値)85%、射出時間/冷却時間=10sec/30secに設定して、成形して成形平板を得た。得られた成形平板を温度23℃、湿度50%で24時間放置した後、抵抗率計LORESTA−GP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて、図1に示す、成形平板の四隅(1、2、3、4)と中央部(5)の箇所の体積抵抗率を測定した。
体積抵抗率の値が小さい値であるほど、導電性等に優れる傾向である。体積抵抗率が1000Ω・cmを超える場合はNGと判定し、上記測定箇所1〜5の内、1箇所でもNG判定があれば、導電性等に劣り、ATM又はCD等の金融自動装置の内部部品用成形体への適用は困難と評価した。また、測定箇所1〜5の体積抵抗率がいずれも1000Ω・cm以下の数値であれば、導電性等が良好であり、ATM又はCD等の金融自動装置の内部部品用成形体に好適に使用可能であると判定した。
更には、測定箇所1〜5の体積抵抗率の数値がいずれも1000Ω・cm以下の数値であって、かつ、測定箇所による数値のばらつきが小さく、均一な数値であるほど、導電性等に優れていると判定して、ATM又はCD等の金融自動装置の内部部品用成形体により好適に使用可能であると判定した。
(3.難燃レベル)
実施例及び比較例により製造したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。乾燥後のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を、射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度90℃、射出圧力(ゲージ圧70MPa)、射出速度(パネル設定値)80%、射出時間/冷却時間=10sec/30secに設定して、127mm×13mm×1.0mmのタンザク成形片を成形した。得られた成形片を用いて、UL−94(米国アンダーライターズラボラトリー規格)に基づき、5本の試験片について、各々2回ずつ接炎して、計10回の燃焼時間を測定して、難燃レベルを判定した。なお、V−0、V−1、V−2のいずれの難燃レベルにも該当しないものはNGと判定した。
(4.曲げ強度)
実施例及び比較例により製造したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。乾燥後のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を用いて、ISO物性試験片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度280℃、金型温度90℃、射出圧力50MPa(ゲージ圧)、射出速度(パネル設定値)40%、射出時間/冷却時間=20sec/20secに設定し、ISO3167、多目的試験片A型のダンベル成形片を成形した。得られた多目的試験片A型のダンベル成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの成形片を作製した。当該試験片を用いて、ISO178に準拠し、23℃で、曲げ強度(MPa)を測定した。曲げ強度が高い値であるほど、機械的強度等に優れていると判定した。
(5.荷重たわみ温度)
実施例及び比較例により製造したポリフェニレンエーテル系樹脂組成物のペレットを、90℃の熱風乾燥機中で1時間乾燥した。乾燥後のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を用いて、ISO物性試験片金型を備え付けた射出成形機(IS−80EPN、東芝機械社製)により、シリンダー温度280℃、金型温度90℃、射出圧力50MPa(ゲージ圧)、射出速度(パネル設定値)40%、射出時間/冷却時間=20sec/20secに設定し、ISO3167、多目的試験片A型のダンベル成形片を成形した。得られた多目的試験片A型のダンベル成形片を切断して、80mm×10mm×4mmの成形片を作成した。当該試験片を用いて、ISO75に準拠し、フラットワイズ法、1.82MPaで荷重たわみ温度(DTUL)(℃)を測定した。
評価基準としては、DTULが高い値であるほど、耐熱性等が優れていると評価した。
〔原材料〕
<ポリフェニレンエーテル(A)>
(PPE1)還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.40dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いた。
(PPE2)還元粘度(クロロホルム溶媒を用いて30℃で測定)0.32dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを用いた。
<スチレン系樹脂(B)>
(HIPS)ハイインパクトポリスチレン(商品名:PS6200、米国ノバケミカルズ社製)を用いた。
(GPPS)ゼネラルパーパスポリスチレン(商品名:スタイロン660〔登録商標〕、米国ダウケミカル社製)を用いた。
(AS1)スチレン−アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル成分25%)を用いた。
(AS2)スチレン−アクリロニトリル共重合体(アクリロニトリル成分9%)を用いた。
<炭素繊維(C)>
(CF1)PAN系炭素繊維(エポキシ系収束剤で収束、収束本数14000本のチョップドストランド)を用いた。
(CF2)PAN系炭素繊維(エポキシ系収束剤で収束、収束本数60000本のチョップドストランド)を用いた。
<芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)>
(FR)ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート(商品名:CR741、大八化学工業社製)を用いた。
<熱可塑性エラストマー(E)>
(エラストマー)スチレン系熱可塑性エラストマー(商品名:クレイトンG1651〔登録商標〕、クレイトンポリマー社製)を用いた。
<アルキルスルホン酸金属塩(F)>
(RSOX)アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名:AKS−518−2、竹本油脂社製)を用いた。
<脂肪酸アミド(G)>
(脂肪酸アミド)エチレンビスステアリルアミド(商品名:カオーワックスEB−FF、花王社製)を用いた。
[比較例1]
(PPE1)55質量部と、(HIPS)12質量部、(GPPS)7質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)16質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF1)10質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
なお、表1中、樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテル(A)、スチレン系樹脂(B)、炭素繊維(C)、及び芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)の含有量は、ポリフェニレンエーテル(A)、スチレン系樹脂(B)、炭素繊維(C)、及び芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)の合計量(100質量%)に対する割合で示した。また、熱可塑性エラストマー(E)、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)、脂肪酸アミド(G)の含有量は、ポリフェニレンエーテル(A)、スチレン系樹脂(B)、炭素繊維(C)、及び芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)の合計量(100質量部)に対する割合で示した。
[比較例2]
(HIPS)を12質量部から10質量部に減らして、(FR)を16質量部から18質量部に増やしたこと以外は、比較例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例1]
(PPE1)58質量部と、(HIPS)10質量部、(GPPS)5質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)18質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF1)9質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例2]
(PPE1)50質量部と、(PPE2)25質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)16質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF1)9質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[比較例3]
(GPPS)を5質量部から6質量部に増やし、(CF1)を9質量部から8質量部に減らしたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例3]
更に、日本黒鉛工業社製の平均粒子径130μmの鱗片状グラファイト粉末(商品名:F#2〔登録商標〕)2質量部を、押出機の最上流部から供給したこと以外は、比較例3と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[比較例4]
(PPE1)55質量部と、(HIPS)12質量部と、(GPPS)12質量部と、実施例3で使用した鱗片状グラファイト粉末5質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)16質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF1)5質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[比較例5]
(PPE1)55質量部と、(HIPS)10質量部と、(GPPS)7質量部と、実施例3で使用した鱗片状グラファイト粉末9質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)18質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF1)10質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例4]
更に、(エラストマー)2質量部を、押出機の最上流部から供給したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例5]
実施例4の(CF1)を(CF2)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例6]
実施例4の(GPPS)を(AS1)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例14]
実施例4の(GPPS)を(AS2)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例7]
実施例6の(PPE1)58質量部を59質量部に増やし、(CF1)を9質量部から8質量部に減らしたこと以外は、実施例6と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例8]
更に、(RSOX)1質量部を、押出機の最上流部から供給したこと以外は、実施例4と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例9]
(PPE1)64質量部と、(HIPS)5質量部と、(GPPS)5質量部と、(エラストマー)2質量部と、(RSOX)1質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)18質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF1)8質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例10]
更に、(脂肪酸アミド)0.01質量部を、押出機の最上流部から供給したこと以外は、実施例9と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例11]
更に、(脂肪酸アミド)0.05質量部を、押出機の最上流部から供給したこと以外は、実施例9と同様にして樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例12]
(PPE1)64質量部と、(HIPS)5質量部と、(AS1)7質量部と、(エラストマー)2質量部と、(RSOX)1質量部と、(脂肪酸アミド)0.03質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)18質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF2)6質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[実施例13]
(PPE1)51質量部と、(PPE2)22質量部と、(AS1)5質量部と、(エラストマー)2質量部と、(RSOX)1質量部と、(脂肪酸アミド)0.03質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)16質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF2)6質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[比較例6]
奇美実業社製のポリカーボネート(商品名:ワンダーライトPC−110〔登録商標〕)72質量部を、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)18質量部を液添フィードし、途中のバレル8から、(CF2)10質量部をサイドフィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
[比較例7]
(PPE1)55質量部と、(GPPS)7質量部と、ハイペリオン社製のカーボンナノチューブを15質量%含有するカーボンナノチューブマスターバッチ(商品名:MB6015−00〔登録商標〕)20質量部とを、TEM58SS二軸押出機(東芝機械社製、バレル数13、スクリュー径58mm、L/D=53);ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:14個、及びニーディングディスクN:2個を有するスクリューパターン)の最上流部(トップフィード)から供給し、途中のバレル4から液添装置及び液添ノズルを用いて(FR)18質量部を液添フィードして、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数400rpm、押出レート400kg/hr、ベント真空度7.998kPa(60Torr)の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の物性測定結果を下記表1に示す。
Figure 0006851852
表1に示されるように、炭素繊維を多く(10質量部)入れると、導電性は良好であるが難燃性が低下した(比較例1)。また、難燃剤の配合量を他の物性を著しく低下させない範囲で増量しても、難燃性の改良効果は認められなかった(比較例2)。
炭素繊維の含有量を適度に減らして、ポリスチレン系樹脂の一部をポリフェニレンエーテルに置き換えることで、難燃性が改良した(実施例1)。
更にスチレン系樹脂を用いずに、スチレン系樹脂成分を全量、ポリフェニレンエーテルに置き換えることで、難燃性は著しく改良した(実施例2)。
炭素繊維の含有量を減らしすぎると、導電性は低下した(比較例3)。(AS1)(AS2)(RSOX)(エラストマー)等を含まない場合、炭素繊維(C)の含有量8質量部では十分な導電性が得られなかった。
比較例3に、さらにグラファイトを2質量部配合すると、導電性が向上した(実施例3)。
比較例1から、炭素繊維10質量部の内の5質量部をグラファイトに置き換え、(GPPS)を12質量部用いることで、難燃性は向上したが、導電性と曲げ強度は著しく低下した(比較例4)。
比較例2に、さらにグラファイトを9質量部配合すると、難燃性が向上し、体積抵抗率のばらつきが小さくなって導電性は向上したが、比重が増加し、軽量性に劣っていた。また、曲げ強度も低下し、機械的強度も、十分でなかった(比較例5)。
実施例1の組成に、更に熱可塑性エラストマーを2質量部配合すると、曲げ強度が向上して機械的強度に一層優れ、体積抵抗率のばらつきが小さくなって導電性が一層向上した。また、荷重たわみ温度が高くなり、耐熱性にも優れていた(実施例4)。
実施例4の炭素繊維を、(CF1)から収束本数が60000本である(CF2)に置き換えることで、曲げ強度が向上して機械的強度が増し、体積抵抗値が低くなって導電性が一層向上した。また、荷重たわみ温度が高くなり、耐熱性が一層向上した(実施例5)。
実施例4のスチレン系樹脂を、(GPPS)から(AS1)に置き換えることで、体積抵抗値が低くなり、且つ体積抵抗値のばらつきが小さくなって導電性が一層向上した。また、荷重たわみ温度が高くなり、耐熱性が一層向上した(実施例6)。
また、実施例4のスチレン系樹脂を、(GPPS)から(AS2)に置き換えることで、荷重たわみ温度(HDT)、導電性、体積抵抗値のばらつきが改良される傾向がみられた(実施例14)。
また、実施例6から、炭素繊維の含有量を8質量部に減らし、ポリフェニレンエーテルを59質量部に増やしても、体積抵抗率の値や、体積抵抗率のばらつきはほとんど変わらず、優れた導電性の改良効果が得られた(実施例7)。
実施例4に、更にアルキルベンゼンスルホン酸金属塩を1質量部添加することで、体積抵抗率が低下して導電性が著しく向上し、曲げ強度が向上して機械的強度が著しく向上した。また、荷重たわみ温度が高くなり、耐熱性が一層向上した(実施例8)。また、実施例8から、炭素性繊維の含有量を8質量部に減らし、ポリフェニレンエーテルを64質量部に増やした場合でも、導電性、機械的強度の優れた改良効果が得られ、耐熱性にも優れていた(実施例8、9)。
実施例9に、更に脂肪酸アミドを微量添加することで、体積抵抗率のばらつきが小さくなり、導電性が著しく改良した(実施例10、11)。また、炭素繊維として、収束本数が60000本である炭素繊維を用い、その配合量を6質量部に減らした場合でも、体積抵抗率のばらつきは小さく、導電性に優れており、ATM又はCD等の金融自動装置の内部部品用成形体に好適に使用可能であった(実施例12、13)。
ポリカーボネートに難燃剤、炭素繊維を配合したところ、軽量性、導電性、難燃性の面で、劣っていた(比較例6)。
炭素繊維を配合する代わりに、カーボンナノチューブのマスターバッチを配合したところ、導電性、機械的強度の面で劣っていた(比較例7)。
本実施形態のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなる成形体は、軽量性に優れており、薄い成形体とした場合の導電性、難燃性、及び機械強度を兼ね備えているため、ATMやCD等の金融自動装置内部部品用成形体、特に、内部導電フレーム、内部シャーシ、紙幣収納部品等として有効に使用することが可能である。
1 測定箇所1
2 測定箇所2
3 測定箇所3
4 測定箇所4
5 測定箇所5
6 ピンゲート

Claims (11)

  1. ポリフェニレンエーテル(A)50〜85質量%、スチレン系樹脂(B)0〜16質量%、炭素繊維(C)5〜9質量%、芳香族リン酸エステル系難燃剤(D)5〜25質量%を含有し、
    比重が1.10〜1.17であり、
    長さ150mm、幅150mm、厚さ2mmの成形板としたときの体積抵抗率が10〜1000Ω・cmであり、
    長さ127mm、幅13mm、厚さ1mmの成形板としたときのUL94に準拠して測定した難燃レベルがV−1又はV−0であり、
    長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形板としたときのISO178に準拠して23℃で測定した曲げ強度が120MPa以上であり、
    前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の合計100質量部に対して、熱可塑性エラストマー(E)0.5〜5質量部を更に含有し、
    前記(E)成分が、スチレンブロックと共役ジエン化合物ブロックとを少なくとも有するブロック共重合体であって、前記共役ジエン化合物ブロックにおける共役ジエン化合物由来の不飽和結合の水素添加率が50%以上である、
    ことを特徴とする、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  2. 前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の合計100質量部に対して、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩(F)0.05〜3質量部を更に含有する、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  3. 前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分、及び前記(D)成分の合計100質量部に対して、脂肪酸アミド(G)0.005〜0.5質量部を更に含有する、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  4. 前記(B)成分(100質量%)中に、少なくとも5質量%のスチレン−アクリロニトリル共重合体が含まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  5. 前記スチレン−アクリロニトリル共重合体が、アクリロニトリル共重合量が15〜40質量%のスチレン−アクリロニトリル共重合体である、請求項4に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  6. 前記(C)成分が、収束本数が40000〜80000本のチョップドストランドである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  7. 前記(F)成分が、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムである、請求項2に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  8. 前記(G)成分が、エチレンビスステアリルアミドである、請求項3に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  9. 前記体積抵抗率が、10〜500Ω・cmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
  11. 金融自動装置の内部部品である、請求項10に記載の成形体。
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