JP4219454B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性、流動性、耐熱性、機械的特性に優れた難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に熱可塑性樹脂は流動性、耐熱性、機械的特性のバランスに優れたものが産業用に求められている。また、火災の問題から難燃性が要求され、最近では特に環境面からハロゲン系化合物を含有しない難燃性樹脂が求められている。
【0003】
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は機械的特性、電気的特性、耐酸、耐アルカリ性、耐熱性等に優れ、しかも吸水性が低く寸法安定性が良いなどの性質を備えており、またハロゲン系化合物を用いずに難燃化し易いことから環境面でも優れており、電気製品、コンピュータやワープロなどのOA機器のハウジングシャーシ材料などとして幅広く利用されている。
【0004】
ポリフェニレンエーテル樹脂は流動性が良くないため、一般には特公昭43−17812号や米国特許第3383435号に示されているとおり、ポリスチレンとのポリマーブレンド組成物として利用される。また、ポリフェニレンエーテル自身は難燃性を有するが、ポリスチレンとのポリマーブレンド物は難燃性が十分でないため、難燃性が必要な用途には、一般にリン酸エステル系難燃剤を添加した難燃性樹脂組成物として提供される。
【0005】
しかしながら、必要な難燃性能を満足させるために、ポリフェニレンエーテルの配合比率を高めたり、難燃剤を多量に添加するなどの手段を取る必要があった。その結果、物性バランスが劣るものとなり、また経済的にも良くなかった。特に、ポリフェニレンエーテルに非難燃性のポリスチレンを多量にポリマーブレンドしたものはリン酸エステル系難燃剤を添加しても、難燃化することが難しいため難燃化助剤を添加するなどの手段が取られていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、流動性、耐熱性、機械的特性等のバランスに優れ、かつハロゲン系化合物を含まずに高度の難燃性を有する難燃性樹脂組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成する技術を鋭意検討した結果、加熱溶融混練りにより得られる難燃性樹脂組成物において、その組成物を構成するポリフェニレンエーテルおよびポリスチレンの分子量を特定することにより可能となることを見いだし本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、
[1]第一段階として、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂50〜100重量%と(B)スチレン系樹脂0〜50重量%との混合樹脂成分100重量部に対し(C)リン酸エステル系難燃剤5〜50重量部を第一の押出機で加熱溶融混練りすることにより樹脂混合物を得て、さらに第二段階として、前記樹脂混合物に(B)スチレン系樹脂を追加し、第二の押出機で加熱溶融混練りすることを特徴とする(A)重量平均分子量が少なくとも60,000であるポリフェニレンエーテル樹脂を1〜50重量%、(B)重量平均分子量が少なくとも200,000であるスチレン系樹脂を50〜90重量%、および(C)リン酸エステル系難燃剤を2〜30重量%含有する難燃性樹脂組成物の製造方法。
[2](C)リン酸エステル系難燃剤として、一般式(I)で表されるリン酸エステル系難燃剤を用いる[1]に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【化2】
(式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、炭素数1から6のアルキル基、または水素を表し、R1、R2、R3、R4はメチル基、または水素を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0から2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1から3の整数を示す。)
[3]スチレン系樹脂の重量平均分子量が少なくとも230,000以上であることを特徴とする[1]〜[2]のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
[4](A)ポリフェニレンエーテル樹脂が、重量平均分子量が少なくとも65,000のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルであり、(B)スチレン系樹脂の重量平均分子量が少なくとも220,000のゴム変性ポリスチレンおよび/又はホモポリスチレンであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
[5]第二の押出機が、単軸押出機であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
【0009】
本発明の(A)ポリフェニレンエーテル樹脂とは、一般式(III)及び/または(IV)で表される繰り返し単位を有する単独重合体、あるいは共重合体である
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6は独立に炭素1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン、水素を表す。但し、R5、R6は同時に水素ではない。)
ポリフェニレンエーテル樹脂の単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−14−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテルポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられる。
【0013】
この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましく、特開昭63−301222号公報等に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含んでいるポリフェニレンエーテルは特に好ましい。
【0014】
ここでポリフェニレンエーテル共重合体とは、フェニレンエーテル構造を主単量単位とする共重合体である。その例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等がある。
【0015】
本発明においてはポリフェニレンエーテル樹脂の一部又は全部を、特開平2−276823号公報、特開昭63−108059号公報、特開昭59−59724号公報等に記載されている、炭素−炭素二重結合を持つ化合物により変性したポリフェニレンエーテルに置き換えて用いることができる。
【0016】
本発明の(A)ポリフェニレンエーテル樹脂は、加熱溶融混練りして得られた後の最終樹脂組成物において、重量平均分子量が少なくとも60000、好ましくは65000以上であることが必要である。重量平均分子量が60000以下の場合は、難燃性が劣るため本発明が達成できない。分子量の上限は、成形流動性が許される範囲内であれば大きいほど好ましいが、重量平均分子量が100000を超えて性能が向上することはない。
【0017】
分子量の測定は、市販されている分子量既知の単分散ポリスチレンを基準として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーを用いて行い、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
【0018】
本発明の(B)スチレン系樹脂とは、スチレン系化合物、スチレン系化合物と共重合可能な化合物をゴム質重合体存在または非存在下に重合して得られる重合体である。さらに、本発明の(B)スチレン系樹脂は、加熱溶融混練りして得られた後の最終樹脂組成物において、重量平均分子量が少なくとも200000、好ましくは230000以上でであることが必要である。
【0019】
スチレン系化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、最も好ましいのはスチレンである。また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、スチレン系化合物とともに使用される。共重合可能な化合物の使用量は、スチレン系化合物との合計量に対して20重量%以下が好ましく、さらに好ましくは15重量%以下である。
【0020】
また、ゴム質重合体としては共役ジエン系ゴムあるいは共役ジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体あるいはエチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。具体的には特に、ポリブタジェンおよびスチレン−ブタジェン共重合体が好ましい。また、不飽和ゴム質重合体を用いる場合に、部分的に水添したゴムを用いることが好ましい。
【0021】
該スチレン系樹脂として特に好ましいのは、ポリスチレンおよびゴム変性ポリスチレンである。
【0022】
ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとをポリマーブレンドするには、ポリフェニレンエーテルの溶融温度が高く、かつ溶融粘度が高いことから大きな剪断力が伴うためため、同時に溶融混練りするポリスチレンの分子量は低下し、市販されているポリフェニレンエーテルとポリスチレンとのポリマーブレンド物におけるポリスチレンの重量平均分子量は一般に200000以下である。
【0023】
本発明は、ポリスチレンの重量平均分子量が、加熱溶融混練りして得られた後の最終樹脂組成物において、重量平均分子量が少なくとも200000、好ましくは220000以上にすることにより、重量平均分子量が少なくとも60000のポリフェニレンエーテル樹脂および有効なリン酸エステル系難燃剤との組み合わせにより、機械的特性だけでなく、著しい難燃性の向上を見出した。加熱溶融混練りして得られた後の最終樹脂組成物において、ポリスチレンの重量平均分子量が少なくとも200000以上にするには、従来の製造方法では難しく、好ましい製法としては、第一段階として、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂50〜100重量%と、(B)スチレン系樹脂0〜50重量%との混合樹脂成分100重量部に対し、(C)リン酸エステル系難燃剤5〜50重量部を加熱溶融混練りした樹脂混合物(I)を得て、さらに第二段階として、追加の(B)スチレン系樹脂を加熱溶融混練りすることによって得る方法が挙げられる。さらに好ましい製法は、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と、(B)スチレン系樹脂との混合樹脂成分100重量部に対し、(D)ベンゾフラノン化合物を0.01〜3重量部を添加して加熱溶融混練りする方法である。
【0024】
本発明の(C)リン酸エステル系難燃剤とは、難燃性向上に有効なリン酸エステル化合物全般を指す。例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合タイプのリン酸エステル化合物が挙げられるが、縮合リン酸エステル化合物が好ましい。
【0025】
これらの中で、一般式(V)で表されるリン酸エステル化合物が特に好ましい。
【0026】
【化5】
【0027】
(式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、炭素数1から6のアルキル基、または水素を表し、R1、R2、R3、R4はメチル基、または水素を表す。nは1以上の整数を、n1、n2は0から2の整数を示し、m1、m2、m3、m4は、1から3の整数を示す。)
で表される。
【0028】
一般式(V)におけるQ1、Q2、Q3、Q4のうち特に好ましいのは水素、またはメチル基である。
【0029】
一般式(V)におけるR1、R2で好ましいのは水素であり、R3、R4で好ましいのははメチル基である。
【0030】
一般式(V)におけるnは1以上の整数であってその数により耐熱性、加工性が異なってくる。好ましいnの範囲は1〜5である。また該リン酸エステルはn量体の混合物であってもかまわない。
【0031】
(C)成分としての好ましいリン酸エステル化合物は、“特定の二官能フェノール”による結合構造と“特定の単官能フェノール”による末端構造を有す。
【0032】
“特定の二官能フェノール”としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称ビスフェノールA〕、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビスフェノール類が挙げられるが、これに限定されない。特にビスフェノールAが好ましい。
【0033】
“特定の単官能フェノール”としては、無置換フェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール、トリアルキルフェノールを単独または2種以上の混合物として使用できる。特にフェノール、クレゾール、ジメチルフェノール(混合キシレノール)、2,6−ジメチルフェノール、トリメチルフェノールが好ましい。
【0034】
これらのリン系化合物は単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、リン酸エステル化合物以外の他の難燃剤、さらには滴下防止剤としてのポリテトラフルオロエチレン、シリコン樹脂、フェノール樹脂、ガラス繊維、カーボン繊維等の併用も有効である。
【0035】
(C)成分の配合量は、(A)および(B)の合計量100重量部に対して2〜30重量部、好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは4〜15重量部である。2重量%未満では難燃効果が不十分であり、30重量%以上では耐熱性や機械的特性が損なわれ、経済的にも不利であり好ましくない。
【0036】
本発明の難燃性樹脂組成物は、第一段階として、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂50〜100重量%と、(B)スチレン系樹脂0〜50重量%との混合樹脂成分100重量部に対し、(C)リン酸エステル系難燃剤5〜50重量部を加熱溶融混練りした樹脂混合物(I)とし、さらに第二段階として、樹脂混合物(I)に追加の(B)スチレン系樹脂やその他の配合物を加熱溶融混練りすることにより樹脂混合物(II)とする方法で、最終組成物としての本発明難燃性樹脂組成物を得ることがより好ましい。この方法によれば、第一段階おいては多量のリン酸エステル系難燃剤の存在により剪断発熱が抑制され、第二段階では加熱溶融混練りするときの温度を低く設定でき、また低剪断速度での溶融混練りが可能なため、本発明難燃性樹脂組成物を得られ易い。
【0037】
本発明の難燃性樹脂組成物を得るために、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂と(B)スチレン系樹脂との合計量100重量部に対して、(D)一般式(I)、
【0038】
【化6】
【0039】
(式中、R1は未置換の、または炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルコキシ基、炭素原子数1ないし4のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、あるいはR1は一般式(II)
【0040】
【化7】
【0041】
で表される基を表し、R2、R3、R4およびR5はおのおの互いに独立して水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1ないし25のアルキル基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、未置換炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、炭素原子数1ないし18のアルコキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基を表す。また、一般式(II)のR6、R7、R8、R9はおのおの互いに独立して水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数1ないし18のアルコキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、炭素原子数3ないし4のアルケニルオキシ基、炭素原子数3ないし4のアルキニルオキシ基、フェニル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基を表し、R10は水素原子、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、フェニル基、シクロヘキシル基を表す。)
で表されるベンゾフラノン化合物を0.01〜3重量部を添加して加熱溶融混練りすることは、難燃性、機械的特性さらには耐熱性を維持しながら成形流動性を向上させることからより好ましい。
【0042】
(D)ベンゾフラノン化合物の製法および具体例としては、特開平7−233160号公報に記述されており、5,7−ジ−ターシャリ−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オンおよびその異性体との混合物が好ましく、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社よりHP−136として市販されている。
【0043】
本発明の難燃性樹脂組成物には、ガラス繊維、ガラスフレーク、カオリンクレー、タルク等の無機充填剤やその他の繊維状補強剤等を配合し、流動性と耐熱性に優れた高強度複合体を得ることができる。また、耐衝撃付与剤としてスチレン系熱可塑性エラストマー、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体およびそれらの水素添加エラストマーが好適に用いられる。
【0044】
本発明の樹脂組成物には、更に他の特性を付与するため、または本発明の効果を損なわない範囲で他の添加剤、例えば可塑剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、離型剤、染顔料、あるいはその他の樹脂を添加することができる。
【0045】
本発明の組成物の製造方法は、特に規定するものではなく、押出機、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造することができる。その中でも押出機による混練りが、生産性の面で好ましい。混練り温度は、230〜360℃の範囲、好ましくは240〜320℃の範囲である。
【0046】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0047】
得られた樹脂組成物の物性評価は、以下の方法及び条件で行った。
【0048】
(1)ポリフェニレンエーテルおよびポリスチレンの分子量
分子量の測定は、クロロホルム溶液とし、市販されている分子量既知の単分散ポリスチレンを基準として、コンピューター処理で自動化されたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーを用いて分析し、ポリスチレン換算分子量として分析結果を得た。
【0049】
(2)難燃性
UL−94 垂直燃焼試験に基ずき、1/16インチ厚みの射出成形試験片を用いて測定した。難燃性のレベルは、V−0が最も優れ、V−1、V−2のランクになるにしたがって劣る。
【0050】
(3)成形流動性
SSP:厚み1.6mm、巾12.7mm、流動方向の長さ127mmの成形片を射出成形した際、この成形片を完全充填するのに必要な最低成形圧力(以下、SSPと略す。圧力はゲージ圧力kg/cm2で示す。)を測定し、成形流動性の尺度とした。SSPの値が低いほど成形流動性に優れることを意味する。
【0051】
(4)耐熱温度
ASTM D648に基づき荷重18.6kg/cm2にて荷重たわみ温度を測定し、耐熱性の尺度とした。
【0052】
(5)曲げ強度
ASTM D790に基づき測定した。
【0053】
(6)落錘衝撃強度
50mm×90mm×厚み2.5mmの平板成形片を用い、東洋精機製作所(株)製、商品名、グラフィックインパクトテスターにより全吸収エネルギー値(J:ジュール)を測定した。
【0054】
実施例および比較例で用いた各成分は以下のものを用いた。
【0055】
(1)ポリフェニレンエーテル樹脂
PPE−1:30℃のクロロホルム溶液で測定したηsp/cが0.54のポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル
PPE−2:30℃のクロロホルム溶液で測定したηsp/cが0.43のポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル
(2)スチレン系樹脂
PS−1:重量平均分子量360,000のホモポリスチレン
PS−2:重量平均分子量280,000のホモポリスチレン
PS−3:重量平均分子量190,000のホモポリスチレン
HIPS−1:ゴム含量12%、30℃、トルエン溶液で測定したマトリックスポリスチレンのηsp/cが0.64、体積平均ゴム粒子径が1.5μmのゴム補強ポリスチレン
HIPS−2:ゴム含量8%、30℃、トルエン溶液で測定したマトリックスポリスチレンのηsp/cが0.9、体積平均ゴム粒子径が1.6μmのゴム補強ポリスチレン
(3)リン酸エステル系難燃剤
FR−1:化学式(VI)で表されるn=1〜3の混合物
【0056】
【化8】
【0057】
FR−2:化学式(VII)で表される化合物
【0058】
【化9】
【0059】
(4)ベンゾフラノン化合物として、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名 HP−136を用いた。
【0060】
参考例1
表1に示す組成で、加熱シリンダーの最高温度を320℃に設定したスクリュー直径40mmの二軸押出機に供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融混練りし、第一段の混合物ペレットを得た。次に、この第一段で得られたペレットに表1に示す追加の成分を配合して、加熱シリンダーの最高温度260℃に設定したスクリュー直径40mmの単軸押出機に供給して100rpmで第二段の溶融混練りを行い、樹脂組成物ペレットを得た。
【0061】
得られた樹脂組成物ペレットについて、ポリフェニレンエーテルおよびポリスチレンの分子量を測定した。
【0062】
樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度240℃および金型温度60℃に設定された型締め圧力80トンの射出成形機により射出成形を行い、成形流動性の評価と得られた成形片を用いて物性を評価した。結果を表1に示した。
【0063】
比較例1
参考例1において、全成分を一段階で、加熱シリンダーの最高温度を320℃に設定したスクリュー直径40mmの二軸押出機に供給し、スクリュー回転数300rpmで溶融混練りして樹脂組成物ペレットを得た。
【0064】
比較例2
参考例1において、第二段の溶融混練り時に添加するポリスチレンを替えて同様に評価し、表1の結果を得た。
【0065】
比較例3
参考例1において、2種類のポリフェニレンエーテルを用いて、同様に評価し、表1の結果を得た。
【0066】
参考例2
比較例1において、HP−136を0.2重量部およびトリス(2,4−ジーt−ブチルフェニルフォスファイト)を0.8重量部添加して同様に評価し、表1の結果を得た。
【0067】
参考例3
参考例1において、第二段の溶融混練り時にHP−136を0.2重量部およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルフォスファイト)を0.8重量部添加して同様に評価し、表1の結果を得た。
【0068】
実施例1
参考例3において、組成および第二段で追加のポリスチレンを変更して同様に評価し、表1の結果を得た。
【0069】
実施例2、比較例4
参考例1と同様の混練り方法により、難燃剤種、組成を変更し、第二段で異なるHIPSを追添加して比較した。同様に評価して、表2に示す結果を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、従来のポリフェニレンエーテル樹脂、スチレン系樹脂およびリン酸エステル系難燃剤とから成る組成物に比べて著しく難燃性に優れ、成形加工性、機械的特性、耐熱性に優れた材料を提供する。
Claims (5)
- 第一段階として、(A)ポリフェニレンエーテル樹脂50〜100重量%と(B)スチレン系樹脂0〜50重量%との混合樹脂成分100重量部に対し(C)リン酸エステル系難燃剤5〜50重量部を第一の押出機で加熱溶融混練りすることにより樹脂混合物を得て、さらに第二段階として、前記樹脂混合物に(B)スチレン系樹脂を追加し、第二の押出機で加熱溶融混練りすることを特徴とする(A)重量平均分子量が少なくとも60,000であるポリフェニレンエーテル樹脂を1〜50重量%、(B)重量平均分子量が少なくとも200,000であるスチレン系樹脂を50〜90重量%、および(C)リン酸エステル系難燃剤を2〜30重量%含有する難燃性樹脂組成物の製造方法。
- スチレン系樹脂の重量平均分子量が少なくとも230,000以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
- (A)ポリフェニレンエーテル樹脂が、重量平均分子量が少なくとも65,000のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルであり、(B)スチレン系樹脂の重量平均分子量が少なくとも220,000のゴム変性ポリスチレンおよび/又はホモポリスチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
- 第二の押出機が、単軸押出機であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
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