<実施の形態>
(概略構成)
図1はこの発明の実施の形態である車両固定システムの概略構成を模式的に示す説明図である。図1(a)は平面構成を示し、図1(b)は断面構成を示している。また、図1(a),(b)にそれぞれXYZ直交座標系を示している。
図1に示すように、試験車両2は4つの固定用ロープ4(第1〜第4のロープ)を用いて4つのポール21〜24(第1〜第4のポール)にて固定されている。なお、図1(b)では、前方(−Y方向)のポール20がポール21,22に対応し、後方のポール20がポール23,24に対応している。また、図1(b)に示すように、試験車両2はピットカバー1上に配置される。
図1に示すように、本実施の形態の車両固定システムは、ポール21に関し、固定用ロープ4(第1のロープ)を用いて、試験車両2の前方方向から、第1の張力で、試験車両2を固定する第1の車両固定部(図1では図示せず)を設けている。
同様に、本実施の形態の車両固定システムは、ポール22に関し、固定用ロープ4(第2のロープ)を用いて、試験車両2の前方方向から、第2の張力で、試験車両2を固定する第2の車両固定部(図1では図示せず)を設けている。
さらに、本実施の形態の車両固定システムは、ポール23に関し、固定用ロープ4(第3のロープ)を用いて、試験車両2の後方方向から、第3の張力で、試験車両2を固定する第3の車両固定部(図1では図示せず)を設けている。
加えて、本実施の形態の車両固定システムは、ポール24に関し、固定用ロープ4(第4のロープ)を用いて、試験車両2の後方方向から、第4の張力で、試験車両2を固定する第4の車両固定部(図1では図示せず)を設けている。なお、第1〜第4の車両固定部の詳細については後に詳述する。
また、第i(i=1〜4のいずれか)の車両固定部は張力調整機構9(第iの張力調整部)有しており、各張力調整機構9は上記第iの張力の大きさを大きくしたり、小さくしたりする第iの張力調整動作を実行する。
すなわち、第1の車両固定部は第1の張力調整動作を実行する第1の張力調整部を有し、第2の車両固定部は第2の張力調整動作を実行する第2の張力調整部を有し、第3の車両固定部は第3の張力調整動作を実行する第3の張力調整部を有し、第4の車両固定部は第4の張力調整動作を実行する第4の張力調整部を有している。
なお、図1では、4つの張力調整機構9はそれぞれ対応する固定用ロープ4の中央に設けられている態様で図示されているが、説明の都合上、便宜的に図示したにすぎず、実際の配置位置を示している訳ではない。
ポール21を構成要素として含む第1の車両固定部は、上記第1の張力における試験車両2に対する前方方向(−Y方向)の第1の前方拘束力である前方拘束力F211を計測する第1の前後方向測定部(図示せず)と、上記第1の張力における試験車両2に対する左右方向(−X方向)の第1の左右拘束力である左方拘束力F212を計測する第1の左右方向測定部(図示せず)とをさらに有している。
ポール22を構成要素として含む第2の車両固定部は、上記第2の張力における試験車両2に対する前方方向の第2の前方拘束力である前方拘束力F221を計測する第2の前後方向測定部(図示せず)と、上記第2の張力における試験車両2に対する左右方向(+X方向)の第2の左右拘束力である右方拘束力F222を計測する第2の左右方向測定部(図示せず)とをさらに有している。
ポール23を構成要素として含む第3の車両固定部は、上記第3の張力における試験車両2に対する後方方向(+Y方向)の第1の後方拘束力である後方拘束力F231を計測する第3の前後方向測定部(図示せず)と、上記第3の張力における試験車両2に対する左右方向(−X方向)の第3の左右拘束力である左方拘束力F232を計測する第3の左右方向測定部(図示せず)とをさらに有している。
ポール24を構成要素として含む第4の車両固定部は、上記第4の張力における試験車両2に対する後方方向の第2の後方拘束力である後方拘束力F241を計測する第4の前後方向測定部(図示せず)と、上記第4の張力における試験車両2に対する左右方向(+X方向)の第4の左右拘束力である右方拘束力F242を計測する第4の左右方向測定部(図示せず)とを有している。
なお、図1(a)に示すよう、前方拘束力F211と前方拘束力F221との和が車両前方拘束力Ffとなり、後方拘束力F231と後方拘束力F241との和が車両後方拘束力Frとなる。
さらに、本実施の形態の車両固定システムは、前方拘束力F211及びF221、後方拘束力F231及びF241、並びに左右拘束力F212〜F242を受けて、4つの張力調整機構9(第1〜第4の張力調整部)による第1〜第4の張力調整動作を制御する制御動作を実行する制御部(図示せず)をさらに備えている。
上記制御部は、左方拘束力F212と右方拘束力F222とが互いに釣り合う第1の条件と、左方拘束力F232と右方拘束力F242とが互いに釣り合う第2の条件と、車両前方拘束力Ffと車両後方拘束力Frとが互いに釣り合う第3の条件とを全て満足するように、4つの張力調整機構9による前記第1〜第4の張力調整動作を制御する制御動作を実行している。
なお、左方拘束力F212及びF232は左方(−X方向)が正となり、右方拘束力F222及びF242(+X方向)は右方が正となり、車両前方拘束力Ffは前方(−Y方向)が正となり、車両後方拘束力Frは後方(+Y方向)が正となる。
(試験車両2の固定)
図2は試験車両2のピットカバー1上での固定状態を示す説明図である。同図において、試験車両2の後方左側の車輪8及びその周辺を示している。図2にXYZ直交座標系を示している。
車輪8はシャシーダイナモメータのローラ7上に配置される際、車輪8の前方及び後方に設けられた一対の位置決め用補充部材19のタイヤ位置決め用ローラ17によって位置決めされる。また、後述する高さ調整装置15の構成要素である固定部71は、ピットカバー1の底面から固定部71の裏面(−Y側の面)にかけて設けられた補強用リブ1Rによって、固定部71の形成位置が安定的に固定されるように補強されている。
図3は車輪8のローラ7上での位置決め内容を示す説明図である。同図(a)に示すように、車両搬入時には、タイヤ位置決め用ローラ17,17を車輪8から開放状態にして、ローラ7上に車輪8を仮配置する。
その後、図3(b)に示すように、車両位置決め時において、一対の位置決め用補充部材19のタイヤ位置決め用ローラ17それぞれを車輪8に密着させることにより、ローラ7上における車輪8の位置を正確に位置決めすることができる。上述した車輪8の位置決めは、4つの車輪8それぞれにおいて行われる。
なお、試験車両2への各固定用ロープ4の取付箇所は、図3(b)で示す車両位置決め後は固定され、各固定用ロープ4の平面(XY平面)上における取付角度も固定される。
(車両固定部(ロープ引張装置10)の全体構成)
図2に戻って、ポール20(図1のポール23に対応)は、ピットカバー1に選択的に設けられたポール貫通穴1hを貫通して、一部がピットカバー1から突出する態様で設けられる。なお、ポール20は後述するように、車両固定部であるロープ引張装置10の一部として機能する。
固定用ロープ4はチェーン27と、シャックル29と介してチェーン27と連結されるワイヤ28との組み合わせにより構成される。チェーン27の中間部位にシャックル29が設けられる。
図4はロープ引張装置10の全体構成を模式的に示す斜視図である。本実施の形態の基本構成では、ロープ引張装置10によって車両固定部を実現している。すなわち、ポール21〜24に対応し、第1〜第4の車両固定部として4つのロープ引張装置10が設けられる。また、図4にXYZ直交座標系を示している。
図4に示すように、ロープ引張装置10は、内部に空洞部を有する筒状のポール20、XY方向拘束機構13、高さ調整装置15、油圧駆動機構40(あるいは電動駆動機構60)、及び角度検出機構80を主要構成部として含んでいる。
(XY方向拘束機構13)
XY方向拘束機構13は、上下方向(Z方向)に移動可能に、高さ調整装置15の固定部71に取り付けられ、ポール20はXY方向拘束機構13を貫通し、かつXY方向拘束機構13に固定される態様で、XY方向拘束機構13と連結される。
図5はXY方向拘束機構13の詳細を示す説明図であり、各構成部を分解した態様で示している。また、図5にXYZ直交座標系を示している。
同図に示すように、XY方向拘束機構13は、スライド板31、スライド板32、昇降部材33、ロードセル35、ロードセル36、リニアガイド37及びリニアガイド38を主要構成部として含んでいる。
昇降部材33はXZ平面を有する立設部33sとXY平面を有する平面部33pとを含んでおり、立設部33s及び平面部33pが直角形状を形成する態様で連結されている。また、立設部33s及び平面部33pは、平面部33pの底面と立設部33sの側面(+Y側の面)との間に設けられた補強用リブ39によって、昇降部材33の立設部33s及び平面部33pとの位置関係が安定的に維持されるように補強されている。
スライド板31、スライド板32及び昇降部材33の平面部33pはポール20を貫通可能に貫通口31h、貫通口32h及び貫通口33hを有しており、上方(+Z方向)から下方(−Z方向)にかけてスライド板31、スライド板32及び昇降部材33の順で組み合わせられる。なお、貫通口31hはスライド板31で固定できるようにポール20の外周径とほぼ同一径に設定され、スライド板32及び昇降部材33に水平方向の自由度をもたせるべく、貫通口32h及び33hは、ポール20の外周径より少し広く、ポール20との間に隙間が形成されるように設けられる。
図6はXY方向拘束機構13による拘束力測定機能を説明する説明図である。同図(a)は前後方向の拘束力を測定する機能を示し、同図(b)は左右方向の拘束力を測定する機能を示している。また、図6(a),(b)にそれぞれXYZ直交座標系を示している。
図5及び図6(a)に示すように、昇降部材33は平面部33pの上面に貫通口33hを挟んで、各々が前後方向(Y方向)に沿って設けられる一対のリニアガイド38(移動部38m+レール部38r)を有している。そしてリニアガイド38の移動部38mの上面に密着してスライド板32が固定される。
移動部38mは前後方向(Y方向)に沿って設けられるレール部38r上を移動可能に設けられている。したがって、スライド板32は前後方向のみ移動可能に拘束された状態でリニアガイド38を介して昇降部材33の平面部33p上に設けられる。
図5及び図6(b)に示すように、スライド板32はその上面に貫通口32hを挟んで、各々が左右方向(X方向)に沿って設けられる一対のリニアガイド37(移動部37m+レール部37r)を有している。そしてリニアガイド37の移動部37mの上面に密着してスライド板31が固定される。
移動部37mは左右方向(X方向)に沿って設けられるレール部37r上を移動可能に設けられている。したがって、スライド板31は左右方向のみ移動可能に拘束された状態でリニアガイド37を介してスライド板32上に設けられる。
スライド板32のXZ平面を構成する側面にロードセル36の一端が固定され、ロードセル36の他端が昇降部材33の平面部33pの上面上に固定される。ロードセル36は一端から他端にかけて前後方向(Y方向)に沿って形成されている。
スライド板31のYZ平面を構成する側面にロードセル35の一端が固定され、ロードセル35の他端がスライド板32の上面上に固定される。ロードセル35は一端から他端にかけて左右方向(X方向)に沿って形成されている。
したがって、スライド板32の側面に設けられるロードセル36によって、貫通口32hを貫通するポール20の前後方向のみの拘束力を測定することができる。すなわち、ポール21〜24に対応して設けられた第1〜第4の前後方向測定部によって、図1で示した前方拘束力F211、前方拘束力F221、後方拘束力F231、及び後方拘束力F241を測定することができる。
なお、第1〜第4の前後方向測定部は、それぞれスライド板32、ロードセル36及びリニアガイド38の組み合わせを主要構成部として含むことにより実現される。
同様にして、スライド板31に設けられるロードセル35によって、貫通口31hを貫通するポール20の左右方向のみの拘束力を測定することができる。すなわち、ポール21〜24に対応して設けられた第1〜第4の左右方向測定部によって、図1で示した左方拘束力F212、右方拘束力F222、左方拘束力F232及び右方拘束力F242を測定することができる。
なお、第1〜第4の左右方向測定部は、それぞれスライド板31、ロードセル35、及びリニアガイド37の組み合わせを主要構成部として含むことよって実現される。
このように、一単位のXY方向拘束機構13は一単位の前後方向測定部と一単位の左右方向測定部とを含んで構成される。
(油圧駆動機構40)
図7は油圧駆動機構40の内部構成を示す説明図である。同図に示すように、油圧駆動機構40は、内部に空洞部を有する筒状のポール20と一体化して形成され、ポール20と共に、スライド板31、スライド板32及び昇降部材33(平面部33p)の貫通口31h〜33hを貫通して、XY方向拘束機構13に固定される態様(図7ではスライド板31のみを仮想的に図示)で設けられる。
ワイヤ28の先端部がポール20の空洞部内においてスイベル43の頂部に設けられたシャックル42に取り付けられ、スイベル43は本体ロッド部41の上部に設けられる。スイベル43は首振り機構を有しており、首振り機構によって固定用ロープ4(ワイヤ28)の取付角度が変化した場合に固定用ロープ4にねじれが発生することに伴う固定用ロープ4の損傷防止を図っている。
本体ロッド部41は上方のスライドブッシュ44及び下方のスライドブッシュ48内を上下動可能に貫通しつつ、下方の油圧シリンダ50のピストンロッド55とフロージョイント49によって固定される。ピストンロッド55に連結されるフロージョイント49は油圧シリンダ50内の油圧によって上下動する。
また、本体ロッド部41のスライドブッシュ44,48間の中間領域が一対のブレーキ摩擦板47によって挟まれ、一対のブレーキ摩擦板47はキャリパ46の動作によって本体ロッド部41に対する固定度合(ブレーキ力)が調整される。
図8は油圧シリンダ50の制御系を模式的に示す説明図である。油圧サーボユニット52は、圧力計54により油圧ユニット53からの油圧をモニタしつつ、電磁弁51を制御して油圧シリンダ50における油圧を制御する。
油圧シリンダ50のα側に油圧をかけると油圧シリンダ50内のピストンロッド55は下方に動き、ピストンロッド55に連動してフロージョイント49、本体ロッド部41及びシャックル42等が下方に動く分、ワイヤ28を下方に引っ張ることにより、固定用ロープ4に係る張力を大きくするように張力調整動作を行うことができる。
油圧シリンダ50のβ側に油圧をかけると油圧シリンダ50内のピストンロッド55は上方に動き、ピストンロッド55に連動してフロージョイント49、本体ロッド部41及びシャックル42等が上方に動く分、ワイヤ28を開放することにより、固定用ロープ4に係る張力を小さくするように張力調整動作を行うことができる。
このように、油圧駆動機構40はポール20と一体化して油圧シリンダ50(に付与する油圧)を駆動源とした張力調整部として、図1で示した張力調整機構9に対応する機能を有する。
すなわち、ポール21〜24に対応して設けられた4つの油圧駆動機構40(第1〜第4の張力調整部)によって、上記した第1〜第4の張力調整動作を実行することができる。
図9は油圧駆動機構40のブレーキ動作(ブレーキ設定動作+ブレーキ開放動作)を示す説明図である。同図に示すように、油圧駆動機構40は、一対のキャリパ46を動作させて一対のブレーキ摩擦板47による本体ロッド部41を固定する力である固定度合(ブレーキ力)を所定レベルに設定することにより、本体ロッド部41を上下動不能に固定するブレーキ設定動作を実行することができる。
すなわち、後述する制御部200による制御動作が完了すると、油圧シリンダ50を駆動源としたフロージョイント49等の上下動による張力調整動作が不要となるため、油圧駆動機構40はブレーキ設定動作を実行して、本体ロッド部41を上下動不能に固定することができる。
また、一対のキャリパ46を動作させて一対のブレーキ摩擦板47による本体ロッド部41の固定度合を所定レベルから弱めることにより、本体ロッド部41を上下動可能にしてブレーキ開放動作を実行することができる。
すなわち、後述する制御部200による制御動作の実行時は、油圧シリンダ50を駆動源としたフロージョイント49等の上下動による張力調整動作が必要となるため、ブレーキ開放動作を実行して、本体ロッド部41を上下動可能にすることができる。
(電動駆動機構60)
図10は電動駆動機構60の内部構成を示す説明図である。同図に示すように、電動駆動機構60は、油圧駆動機構40と同様、ポール20と一体化して形成され、ポール20と共に、スライド板31、スライド板32及び昇降部材33の貫通口31h〜33hを貫通して固定される態様(図示せず)で設けられる。
ワイヤ28の先端部がポール20の空洞部内においてスイベル63の頂部に設けられたシャックル62に取り付けられ、スイベル63は本体ロッド部61の上部に固定される。なお、スイベル63は油圧駆動機構40のスイベル43と同様に首振り機構を有している。
本体ロッド部61は上方のスライドブッシュ64内を上下動可能に貫通しつつ下方の台形ネジ用ナット65にバネ68を介して取り付けられる。台形ネジ用ナット65は台形ネジ69に取り付けられ、台形ネジ69の回転動作に伴い上下方向に移動可能である。台形ネジ69の回転動作は、電動のサーボモータ58によって実行される。
また、本体ロッド部61のスライドブッシュ64直下の中間領域は一対のブレーキ摩擦板67によって挟まれ、一対のブレーキ摩擦板67はキャリパ66の動作によって本体ロッド部61に対する固定度合(ブレーキ力)が調整される。
このような構成において、サーボモータ58によって台形ネジ69を第1の回転方向で回転させると、台形ネジ用ナット65は下方に動き、連動する本体ロッド部61及びシャックル62等の下方移動に伴い、ワイヤ28を下方に引っ張ることにより、固定用ロープ4に係る張力を大きくするように張力調整動作を行うことができる。
一方、サーボモータ58によって台形ネジ69を第2の回転方向(第1の回転方向と反対の回転方向)で回転させると、台形ネジ用ナット65は上方に動き、連動する本体ロッド部61及びシャックル62等が上方に動く分、ワイヤ28を開放することにより、固定用ロープ4に係る張力を小さくするように張力調整動作を行うことができる。
このように、電動駆動機構60はポール20と一体化して電動のサーボモータ58を駆動源とした張力調整部として、図1で示した張力調整機構9に対応する機能を有する。
すなわち、ポール21〜24に対応して設けられた4つの電動駆動機構60(第1〜第4の張力調整部)によって、上記した第1〜第4の張力調整動作を実行することができる。
図11は電動駆動機構60のブレーキ動作(ブレーキ設定動作+ブレーキ開放動作)を示す説明図である。同図に示すように、電動駆動機構60は、一対のキャリパ66を動作させて一対のブレーキ摩擦板67による本体ロッド部61を固定する力である固定度合(ブレーキ力)を所定レベルに設定することにより、本体ロッド部61を上下動不能に固定するブレーキ設定動作を実行することができる。
すなわち、後述する制御部200による制御動作が完了すると、サーボモータ58を駆動源とした台形ネジ用ナット65の上下動による張力調整動作が不要となるため、電動駆動機構60はブレーキ設定動作を実行して、本体ロッド部61を上下動不能に固定することができる。
また、一対のキャリパ66を動作させて一対のブレーキ摩擦板67による本体ロッド部61の固定度合を所定レベルから弱めることにより、本体ロッド部61を上下動可能にしてブレーキ開放動作を実行することができる。
すなわち、後述する制御部200による制御動作の実行時は、サーボモータ58を駆動源とした台形ネジ用ナット65の上下動による張力調整動作が必要となるため、ブレーキ開放動作を実行して、本体ロッド部61を上下動可能にすることができる。
(高さ調整装置15)
図12は高さ調整装置15の構成を示す説明図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は台形ネジ79及びその周辺を示すXZ平面における断面構造を示す断面図である。また、図12(a),(b)にそれぞれXYZ直交座標系を示している。
高さ調整装置15は、電動のサーボモータ70、固定部71、一対のリニアガイド73、昇降版取付部材74、ベアリング75,76、カップリング78及び台形ネジ79を主要構成部として含んでいる。
図12(a)に示すように、板状の固定部71のXZ平面を規定する表面上に上下方向(Z方向)に沿って一対のリニアガイド73,73が設けられ、XY方向拘束機構13の昇降部材33の立設部33sがリニアガイド73,73上において上下方向に移動可能に取り付けられる。
一方、昇降部材33の立設部33sは下方中央部に上下方向(Z方向)に沿って所定幅(X方向の長さ)の切欠け部33oが設けられ、固定部71には切欠け部33oによる開口領域を介して突出するベアリング75が取り付けられ、さらに、切欠け部33oの下方に、ベアリング75と平面視重複する位置にベアリング76が取り付けられる。
一方、立設部33sの上面(+Y側の面)において、ベアリング75,76間の切欠け部33o上を横断して昇降版取付部材74が取り付けられる。そして、下方から上方にかけて(+Z方向にかけて)カップリング78、ベアリング76、及び昇降版取付部材74を貫通した台形ネジ79の上端がベアリング75に取り付けられる。台形ネジ79の下端がサーボモータ70に取り付けられ、電動のサーボモータ70によって台形ネジ79の回転動作が駆動される。ベアリング75及び76は台形ネジ79の軸受けとして機能する。また、カップリング78はバネ機能を有し、サーボモータ70の駆動軸の軸芯と台形ネジ79の軸芯とがずれた場合に、余計な負荷を与えることなく、動力を伝達するために設けられている。
このような構成において、サーボモータ70の駆動によって台形ネジ79を第1の回転方向で回転させると、昇降版取付部材74は下方に動き、昇降部材33の下方への移動に伴い、XY方向拘束機構13及び電動駆動機構60(油圧駆動機構40)を含むロープ引張装置10全体の下降動作を行うことができる。
一方、サーボモータ70によって台形ネジ79を第2の回転方向(第1の回転方向と反対の回転方向)で回転させると、昇降版取付部材74は上方に動き、昇降版取付部材74が上方への移動に伴いロープ引張装置10全体の上昇動作を行うことができる。
このように、高さ調整装置15によって、ロープ引張装置10の昇降動作を行い、ロープ引張装置10の形成位置(ポール20の上面の形成位置等を含む)を調整することができる。
すなわち、ポール21〜24に対応して設けられた4つの高さ調整装置15(第1〜第4の高さ調整部)によって、4つのロープ引張装置10の形成位置を調整することができる。
(角度検出機構80)
図13は角度検出機構80の構成を示す説明図である。同図(a)で示す油圧駆動機構40におけるポール20の上部領域R80に、同図(b)〜(d)に示すように、角度検出機構80が設けられる。図13(a)〜(d)にそれぞれXYZ直交座標系を示している。なお、図13(b)〜(d)に示すXYZ座標系のX軸及びY軸は図1、図2、図4〜図6等で示したX軸及びY軸と必ずしも一致しない、便宜的に示したものである。
角度検出機構80は、ワイヤ挿入部81、ワイヤサポート部82、ポールリンク部83、角度検出センサ部85、及び角度検出ドグ88を主要構成部として含んでいる。なお、角度検出ドグ88はXY平面に沿ってY方向に延びる水平部分88hと上下方向(Z方向)に沿って延びる垂直部分88vとから構成され、水平部分88h及び垂直部分88vが直角形状を形成する態様で連結されている。また、水平部分88hはその先端下方にワイヤ28を通過させるためのワイヤ挿入部81を有している。
回転部材25は、ポール20の頂部における空洞部の周辺に設けられるベアリング26を回転軸として、同図(c)で示す回転方向R20に沿って回転可能に設けられている。
回転部材25の上部表面には、ポール20の空洞部を挟んでワイヤサポート部82及びポールリンク部83が設けられ、ワイヤ28は、ワイヤ挿入部81及びワイヤサポート部82を通過して、ポール20の空洞部内の油圧駆動機構40のシャックル42に接続されている。
また、角度検出センサ部85がポール20の側面から同図(b)のY方向に立設して形成されている。同図(d)に示すように、角度検出センサ部85は角度検出ドグ88の垂直部分88vの下方先端部分を中心として左側(−Y側)に近接センサ86L、右側に(+Y側)に近接センサ86Rが配置される。
角度検出ドグ88は、水平部分88hの垂直部分88v側の部位をポールリンク部83に連結することにより、回転部材25に取り付けされる。この際、角度検出ドグ88は、ポールリンク部83との連結点を回転軸として回転方向R8に沿って垂直平面(YZ平面)上を回転することができる。さらに、ポールリンク部83は回転部材25に取付けられているため、回転部材25の回転方向R20に沿った回転に伴い、角度検出ドグ88全体を水平平面上で回転させることができる。
このような構成において、角度検出ドグ88の水平部分88hの先端部(ワイヤ挿入部81の形成箇所)が上昇すると、上昇に伴う角度検出ドグ88の回転方向R8に沿った回転動作により、垂直部分88vの先端部が近接センサ86L側に移動する。この場合、垂直部分88vの先端部が近接センサ86Lに近い位置に存在することを検出することにより、ワイヤ28の高さ方向の昇降角度が高い方向に変化したことを認識することができる。
一方、水平部分88hの先端部が下降すると、下降に伴う角度検出ドグ88の回転方向R8に沿った回転動作により、垂直部分88vの先端部が近接センサ86R側に移動する。この場合、垂直部分88vの先端部が近接センサ86Rに近い位置に存在することを検出することにより、ワイヤ28が低い位置に変化したことを認識することができる。
このように、ポール21〜24に対応して設けられた4つの角度検出機構80(第1〜第4の昇降角度検出部)によって、固定用ロープ4(ワイヤ28)の水平面(XY平面)に対する高さ方向の昇降角度を検出することができる。
したがって、4つの角度検出機構80により検出された昇降角度を参照しつつ、前述した4つの高さ調整装置15(第1〜第4の高さ調整装置)によってポール21〜24の上面の形成位置を調整して、4つの固定用ロープ4(第1〜第4のロープ)の昇降角度を近接センサ86L及び86Rの取り付け角度(例えば、0度)に設定することができる。
その結果、制御部200による制御動作に先がけて、試験車両2とポール21〜24との間に設ける4つの固定用ロープ4を全て水平方向に沿って引っ張られるように初期設定を行うことができる。
(固定用ロープ4の固定ロープ長の可変設定方法(第1の態様))
図14は固定用ロープ4の固定ロープ長の可変設定方法の第1の態様を示す説明図である。なお、固定用ロープ4の固定ロープ長とは、固定用ロープ4の試験車両2からポール20(21〜24)までの長さを意味する。
図14(a)及び(b)の比較から判るように固定用ロープ4の固定ロープ長は、試験車両2に対する固定用ロープ4の接続仕様によって変化する。例えば、ポール22,試験車両2間の固定用ロープ4の固定ロープ長は同図(b)で示す仕様は同図(a)で示す仕様より長くなり、ポール24,試験車両2間の固定用ロープ4の固定ロープ長は同図(b)で示す仕様は同図(a)で示す仕様より短くなる。
そこで、第1の態様では、図14(c)に示すように、固定用ロープ4をチェーン27及びワイヤ28の組み合わせにより実現し、チェーン27とワイヤ28とを連結するシャックル29のチェーン27への接続箇所を適宜変更することにより、固定用ロープ4の固定ロープ長の長さを可変設定している。
すなわち、比較的長い固定ロープ長に設定する場合、固定用ロープ4として用いるチェーン27の長さが比較的長くなるようにシャックル29を接続し、比較的短い固定ロープ長に設定する場合、固定用ロープ4として用いるチェーン27の長さが比較的短くなるようにシャックル29を接続する。
このように、第1の態様では、固定用ロープ4として用いるチェーン27の長さを可変設定することにより、固定ロープ長を比較的簡単に可変設定することができる。
(固定用ロープ4のロープ長設定方法(第2の態様))
図15は固定用ロープ4の固定ロープ長の可変設定方法の第2の態様を示す説明図である。図15にXYZ直交座標系を示している。同図に示すように、第2の態様では、基本構成のロープ引張装置10に代えて、ポール連結装置10B及びワイヤ巻き取り装置100の組合せを車両固定部として構成している。
なお、ポール連結装置10Bは、張力調整部である油圧駆動機構40及び電動駆動機構60が設けられていない点を除き、ロープ引張装置10と同様な構成を呈している。したがって、ポール連結装置10Bは、ロープ引張装置10と同様、XY方向拘束機構13、高さ調整装置15、及び角度検出機構80それぞれと等価な構成を内部に有している。
また、第2の態様では、ワイヤ28のみを固定用ロープ4として用いている。ワイヤ28はポール連結装置10Bにおけるポール20内の空洞部を通過させた後、ワイヤ巻き取り装置100に巻き取り可能に接続される。
ワイヤ巻き取り装置100内において、ワイヤ28は、固定滑車110A、110B及び111A、動滑車112A、固定滑車111B、及び動滑車112Bを中継して終端がワイヤ固定部125で固定される。
固定滑車110A及び110Bは滑車固定部材120に設けられ、固定滑車111A及び111Bは滑車固定部材121に設けられる。そして、滑車固定部材120及び121はその形成位置が固定されている。例えば、滑車固定部材121はピットカバー1の底面に設けられた滑車取付部126によってその形成位置が固定される。
一方、動滑車112A及び112Bは、滑車固定部材122に設けられる。滑車固定部材122はバネ118及びフロージョイント119を介して油圧シリンダ130のピストンロッド136に接続される。
油圧シリンダ130のピストンロッド136の上下動によってフロージョイント119等の高さ位置を変化させる昇降動作を実行させる。その結果、フロージョイント119等の昇降動作に連動して、固定板131に設けられたリニアガイド135に沿った昇降動作を滑車固定部材122に実行させることができる。
したがって、油圧シリンダ130は、滑車固定部材122に設けられる動滑車112A及び112Bに対し上下方向(Z方向)に沿った昇降動作を実行することにより、ピットカバー1下の固定滑車111Aとワイヤ固定部125との間における必要なワイヤ28のロープ長である中継ロープ長を変化させることができる。
すなわち、油圧シリンダ130によって動滑車112A及び112Bを上方向(+Z方向)に上昇させる昇降動作を実行すると、上記中継ロープ長が短くなる結果、ピットカバー1下において必要なワイヤ28のロープ長である床面下ロープ長を短くすることでき、その分、ピットカバー1上において必要となるワイヤ28のロープ長である固定ロープ長を長くすることができる。
一方、油圧シリンダ130によって動滑車112A及び112Bを下方向(−Z方向)に下降させる下降動作を実行すると、上記中継ロープ長が長くなる結果、上記床面下ロープ長を長くすることでき、その分、上記固定ロープ長を短くすることができる。
このように、第2の態様では、ワイヤ巻き取り装置100によって、床面下ロープ長を可変設定することにより、固定ロープ長を可変設定することができる。
なお、図15では、油圧シリンダ130及びフロージョイント119等を含む張力設定部形成部位R40を簡略化して示したが、張力設定部形成部位R40に図7〜図9で示した油圧駆動機構40に等価な構成、あるいは図10及び図11で示した電動駆動機構60に等価な構成を設けることにより、張力設定部形成部位R40に張力調整部を設けることができる。
具体的には、張力設定部形成部位R40に、図7及び図9で示す油圧駆動機構40を上下反転させ、シャックル42から油圧シリンダ50に至る構成部分を設け、シャックル42にフロージョイント119を接続することにより、張力設定部形成部位R40に油圧駆動機構40と等価な張力調整部を実現することができる。
この構成では、固定ロープ長の設定後、油圧駆動機構40において油圧シリンダ50のピストンロッド55に連動してフロージョイント49を下降させることにより、滑車固定部材122が下方に動く分、ワイヤ28を下方に引っ張ることにより、固定用ロープ4に係る張力を大きくするように張力調整動作を行うことができる。
逆に、固定ロープ長の設定後、油圧駆動機構40において油圧シリンダ50のピストンロッド55に連動してフロージョイント49を上昇せることにより、滑車固定部材122が上方に動く分、ワイヤ28を開放することにより、固定用ロープ4に係る張力を小さくするように張力調整動作を行うことができる。
このように、油圧駆動機構40は、張力調整動作機能と、上述したワイヤ28(固定用ロープ4)の固定ロープ長の可変設定機能を兼ねることになる。
同様にして、張力設定部形成部位R40に、図10及び図11で示す電動駆動機構60を上下反転させ、シャックル62からサーボモータ58に至る構成部分を設けることにより、張力設定部形成部位R40に油圧駆動機構60と等価な張力調整部を実現することができる。この際、油圧駆動機構60は、張力調整動作機能と、上述したワイヤ28(固定用ロープ4)の固定ロープ長の可変設定機能を兼ねることになる。
(制御部200による制御動作)
図16は制御部200による制御体系を模式的に示す説明図である。制御部200は、ポール21〜24に対応して設けられた4つのXY方向拘束機構13(第1〜第4の前後方向測定部+第1〜第4の左右方向測定部)から、制御情報として前方拘束力F211及びF221、左右拘束力F212〜F242、並びに左右拘束力F232及びF242を受け、制御信号SC1〜SC4を出力する。
制御信号SC1〜SC4は、ポール21〜24に対応して設けられた4つの張力調整部(油圧駆動機構40あるいは電動駆動機構60)に対する操作量SV1〜SV4を指示する制御信号である。
図17は制御部200による制御動作の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、制御動作を説明する。
同図に示すように、制御動作は、試験車両2の前側(ポール21,22側)に対する第1の部分制御動作をステップS11〜S15として実行し、試験車両2の後側(ポール23,24側)に対する第4の部分制御動作をステップS21〜S25として実行する。そして、第1及び第2の部分制御動作は互いに並行して実行される。
制御動作に先がけて以下の初期設定が行われる。まず、図2及び図3を参照して説明したように、車両位置決め処理を実行してローラ7上に車輪8を位置決めした状態で配置する。
その後、4つの固定用ロープ4を試験車両2の所定箇所に固定する。この際、図14及び図15で示した固定用ロープ4の固定ロープ長の可変設定方法の第1及び第2の態様のうち一方の態様を採用して、試験車両2の車長に少し余裕を持たせて適合する仮ロープ長になるように、各固定用ロープ4の固定ロープ長を仮設定する。
固定ロープ長の仮設定の際、ポール21〜24それぞれに対応する角度検出機構80による水平面に対する高さ方向の昇降角度を検出しつつ、ポール21〜24それぞれに対応する高さ調整装置15によるXY方向拘束機構13の高さ調整を行うことにより、試験車両2とポール21〜24との間に設ける4つの固定用ロープ4を全て水平方向に沿って引っ張られるように設定する。
また、油圧駆動機構40あるいは電動駆動機構60は、制御動作に先がけて、ブレーキ開放動作を実行して、本体ロッド部41あるいは本体ロッド部61を上下動可能にする。
また、油圧駆動機構40あるいは電動駆動機構60に関し、制御動作に先がけて、固定用ロープ4に係る張力を大きくしたり、小さくしたりすることが可能なように、フロージョイント49及び台形ネジ用ナット65の形成位置を初期設定することが望ましい。
上述した初期設定の完了後に、制御部200は制御動作を実行する。まず、ステップS11〜S15として実行される第1の部分制御動作について説明する。
まず、ステップS11において、操作量SV1及びSV2をそれぞれ所定の初期値に設定する初期操作量セット処理を行う。
そして、ステップS12において、以下の式(11)及び式(12)を適用して偏差量DV1及びDV2を求める。なお、式(11)においてFTは前方方向における目標拘束力を意味する。
DV1=FT−(F211+F221)…(11)
DV2=F212−F222…(12)
ステップS12において、さらに、以下の式(13)及び式(14)を適用して操作量SV1及びSV2を求める。なお、式(13)及び式(14)にけるK1,K2は係数を意味する。
SV1=SV1+K1*DV1*F211/(F211+F221)−K2*DV2…(13)
SV2=SV2+K1*DV1*F221/(F211+F221)−K2*DV2…(14)
その後、ステップS13において、以下の式(15)を満足するか否かに基づき、4つの車輪8の前後バランス確認を行う。なお、式(15)において、ΔF(>0)は基準変位量を意味している。
Ff−Fr<ΔF…(15)
ステップS13で式(15)を満足すれば(YES)、続くステップS14に移行し、式(15)を満足しない場合(NO)、式(15)を満足するまでステップS13を繰り返す。すなわち、ステップS21〜S25として実行される第2の部分制御動作によって車両後方拘束力Frが大きくなり、車両前方拘束力Ffに近づき式(15)を満足するようになるまで、第1の部分制御動作はステップS13で待機する。
ステップS13でYESの場合に実行されるステップS14において、ステップS12で得た操作量SV1及びSV2を指示する制御信号SC1及びSC2を出力し、試験車両2の前側の固定用ロープ4に対する第1及び第2の張力調整動作を、ポール21及び22に対応して設けられた油圧駆動機構40(あるいは電動駆動機構60)に実行させる。
例えば、ポール21に対応して設けられた油圧駆動機構40において、操作前より増大する操作量SV1を制御信号SC1が指示する場合、図7で示す油圧シリンダ50は、フロージョイント49が下降するように第1の張力制御動作を実行し、ポール21における固定用ロープ4(ワイヤ28)係る張力を操作前より大きくする。
一方、ポール21に対応して設けられた油圧駆動機構40において、操作前より減少する操作量SV1を制御信号SC1が指示する場合、図7で示す油圧シリンダ50は、フロージョイント49が上昇するように第1の張力制御動作を実行し、ポール21における固定用ロープ4(ワイヤ28)係る張力を操作前より小さくする。
その後、ステップS15において、以下の式(16)及び式(17)を共に満足するか否かに基づく最終確認処理を実行する。
FT=F211+F221…(16)
F212=F222…(17)
ステップS15において、式(16)及び式(17)を共に満足した場合(YES)、第1の部分制御動作は完了する。一方、ステップS15において、式(16)及び式(17)のうち少なくとも一つを満足しない場合(NO)、ステップS12に戻り、第1の部分制御動作を続行する。
なお、式(16)及び式(17)の等式は、左辺と右辺との差が予め定めた偏差量ΔS以内となる場合を含む。
次に、ステップS21〜S25として実行される第2の部分制御動作について説明する。ステップS21において、操作量SV3及びSV4をそれぞれ所定の初期値に設定する初期操作量セット処理を行う。
そして、ステップS22において、以下の式(21)及び式(22)を適用して偏差量DV3及びDV4を求める。なお、式(21)においてFTは後方方向における目標拘束力を意味し、式(11)における目標拘束力FTと同一値である。
DV3=FT−(F231+F241)…(21)
DV4=F232−F242…(22)
ステップS12において、さらに、以下の式(23)及び式(24)を適用して操作量SV3及びSV4を求める。なお、式(23)及び式(24)にけるK1,K2は係数を意味する。
SV3=SV3+K1*DV3*F231/(F231+F241)−K2*DV4…(23)
SV4=SV4+K1*DV3*F241/(F231+F241)−K2*DV4…(24)
その後、ステップS23において、以下の式(25)を満足するか否かに基づき、4つの車輪8の前後バランス確認を行う。なお、式(25)において、ΔF(>0)は基準変位量を意味している。
Fr−Ff<ΔF…(25)
ステップS23で式(25)を満足すれば(YES)、ステップS24に移行し、式(25)を満足しない場合(NO)、式(25)を満足するまでステップS23を繰り返す。すなわち、ステップS11〜S15として実行される第1の部分制御動作によって車両前方拘束力Ffが大きくなり、車両後方拘束力Frに近づき式(25)を満足するようになるまで、第2の部分制御動作はステップS23で待機する。
なお、式(15)及び式(25)のうち、少なくとも一方は必ず成立するため、ステップS13及びステップS23のループによって第1及び第2の部分制御動作が共に停止することはない。
ステップS23でYESの場合に実行されるステップS24において、ステップS22で得た操作量SV3及びSV4を指示する制御信号SC3及びSC4を出力し、試験車両2の後側の固定用ロープ4に対する第3及び第4の張力調整動作を、ポール23及び24に対応して設けられた油圧駆動機構40(あるいは電動駆動機構60)に実行させる。
例えば、ポール23に対応して設けられた油圧駆動機構40において、操作前より増大する操作量SV3を制御信号SC3が指示する場合、図7で示す油圧シリンダ50は、フロージョイント49が下降するように第3の張力制御動作を実行し、ポール22における固定用ロープ4(ワイヤ28)係る張力を操作前より大きくする。
一方、ポール23に対応して設けられた油圧駆動機構40において、操作前より減少する操作量SV3を制御信号SC3が指示する場合、図7で示す油圧シリンダ50は、フロージョイント49が上昇するように第3の張力制御動作を実行し、ポール23における固定用ロープ4(ワイヤ28)係る張力を操作前より小さくする。
その後、ステップS25において、以下の式(26)及び式(27)を共に満足するか否かに基づく最終確認処理を実行する。
FT=F231+F241…(26)
F232=F242…(27)
ステップS25において、式(26)及び式(27)を共に満足した場合(YES)、第2の部分制御動作は完了する。一方、ステップS25において、式(26)及び式(27)のうち少なくとも一つを満足しない場合(NO)、ステップS22に戻り、第2の部分制御動作を続行する。
なお、式(26)及び式(27)の等式は、左辺と右辺との差が予め定めた偏差量ΔS以内となる場合を含む。
最終的に第1及び第2の部分制御動作が共に完了すると、制御部200による制御動作は終了する。
制御部200による制御動作が終了すると、油圧駆動機構40あるいは電動駆動機構60は、ブレーキ設定動作を実行して、本体ロッド部41あるいは本体ロッド部61を上下動不能に固定する。
このように、図17で示す制御部200による制御動作は、前方拘束力F211及びF221、並びに左右拘束力F212及びF222に基づき、第1及び第2の張力調整動作を制御する第1の部分制御動作(ステップS11〜S15)と、後方拘束力F231及びF241、並びに左右拘束力F232及びF242に基づき、第3及び第4の張力調整動作を制御する第2の部分制御動作(ステップS21〜S25)とを含んでいる。
そして、第1の部分制御動作は、第1の条件(式(17))と車両前方拘束力Ffが目標拘束力FTに等しくなる第1の部分条件(式(16))とを満足するように、第1及び第2の張力調整動作を制御している。
一方、第2の部分制御動作は、第2の条件(式(27))と車両後方拘束力Frが目標拘束力FTに等しくなる第2の部分条件(式(26))とを満足するように、第3及び第4の張力の調整動作を制御している。
そして、上述した1及び第2の部分条件を共に満足することは、車両前方拘束力Ffと車両後方拘束力Frとが互いに釣り合う第3の条件(Ff=Fr=FT)を満足することなる。すなわち、第3の条件は、前記第1及び第2の部分条件の組合せを含んでいる。
なお、式(13)及び式(14)並びに式(24)及び式(25)において、偏差量DV1は(F211+F221)が目標拘束力FTに近づくように操作量SV1及びSV2を導く制御変数であり、偏差量DV3は(F231+F241)が目標拘束力FTに近づくように操作量SV3及びSV4を導く制御変数である。
また、偏差量DV2は左方拘束力F212と右方拘束力F222とが互いに近づくように操作量SV1及びSV2を導く制御変数であり、また、偏差量DV4は左方拘束力F232と右方拘束力F242とが互いに近づくように操作量SV3及びSV4を導く制御変数である。
したがって、第1の部分制御動作におけるステップS12〜S15を繰り返し実行することにより、最終的に必ず、ステップS15の式(16)及び式(17)を共に満足させることができる。同様にして、第2の部分制御動作におけるステップS22〜S25を繰り返し実行することにより、最終的に必ず、ステップS25の式(26)及び式(27)を共に満足させることができる。
(効果)
本実施の形態の車両固定システムは、制御部200による制御下で、左方拘束力F212及び右方拘束力F222(第1及び第2の左右拘束力)が互いに釣り合う第1の条件(式(17))と、左方拘束力F232及び右方拘束力F242(第3及び第4の左右拘束力)が互いに釣り合う第2の条件(式(27))と、車両前方拘束力Ffと車両後方拘束力Frとが互いに釣り合う第3の条件(式(16)+式(26))を満足するように、第1〜第4の張力調整部(ポール21〜24に対応して設けられる油圧駆動機構40あるいは電動駆動機構60)による第1〜第4の張力調整動作を制御する制御動作を実行している。
したがって、試験車両2に対する水平面(XY平面)における4つの固定用ロープ4(第1〜第4のロープ)の取付角度、及び4つの固定用ロープ4にかかる張力(第1〜第4の張力)を検出することなく、制御部200の制御下で自動的に前後方向及び左右方向のバランスを保ちつつ車両を安定性良く固定することができる。
さらに、本実施の形態の車両固定システムにおける制御部200は、図17に示すように、制御動作として、第1の部分制御動作(ステップS11〜S15)と第2の部分制御動作(ステップS21〜S25)とを互いに並行して実行することにより、速やかに制御動作を完了することができる効果を奏する。
加えて、本実施の形態の車両固定システムにおいて、第i(i=1〜4のいずれか)の車両固定部は、第iの高さ調整装置(高さ調整装置15)と、第iのポール上面に対する第iのロープの高さ方向における昇降角度を検出する第iの角度検出機構(角度検出機構80)とを含んでいる。
このように、本実施の形態の車両固定システムは、4つの高さ調整装置25(第1〜第4の高さ調節装置)及び4つの角度検出機構80(第1〜第4の角度検出機構)を有するため、試験車両2とポール21〜24との間に設ける4つの固定用ロープ4(第1〜第4のロープ)を全て正確に所望の昇降角度(例えば0度)に設定することができる。
その結果、本実施の形態の車両固定システムは、制御部200による制御動作に先がけて、所望の昇降角度を0度にした場合、水平方向に沿って4つの固定用ロープ4が引っ張られるように正確に初期設定することができる。
本実施の形態の車両固定システムにおいて、固定用ロープ4の固定ロープ長の可変設定方法の第1の態様は、図14(c)に示すように、固定用ロープ4をチェーン27及びワイヤ28の組み合わせにより実現している。すなわち、本実施の形態の車両固定システムは、ポール2i(i=1〜4のいずれか)用の固定用ロープ4(第iのロープ)は、チェーン27とワイヤ28との組合せを含んでいる。
その結果、本実施の形態の車両固定システムは、チェーン27とワイヤ28とを連結するシャックル29のチェーン27への接続箇所を適宜変更することにより、固定用ロープ4の固定ロープ長の長さを可変設定することができるため、4つの固定用ロープ4の試験車両2とポール21〜24との間における固定ロープ長を比較的簡単に可変設定することができる。
<その他>
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。