JP6851619B2 - 液圧ブレーキホース - Google Patents

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Description

本発明は、補強糸層を有する液圧ブレーキホースに関し、特に、油圧ブレーキホースとして、好適に使用される液圧ブレーキホースに関する。
補強糸層を有するホースとして、例えば、特許文献1,2に記載のものがある。特許文献1に記載のホースは、例えば、冷媒輸送用ホースであって、その補強層(内側補強層および外側補強層)は、スパイラル巻き構造の補強糸層とされている。スパイラル巻き構造の補強糸層とは、その内側の補強糸層の外周面に、補強糸を一方向に巻き付けてなるものである。
ここで、車両などに使用される冷媒輸送用ホースは、例えば、3.5MPa程度の耐圧性能が要求される。これに対して、車両などに使用される油圧ブレーキホースは、例えば、25MPa程度の耐圧性能が要求される。また、車両などに使用される油圧ブレーキホースは、配置スペースの観点から、冷媒輸送用ホースよりも細径のホースとされている。
そのため、油圧ブレーキホースでは、その補強糸層としてスパイラル巻き構造の補強糸層が採用されることはなく、その補強糸層としてブレード編み構造の補強糸層が採用される。これは、スパイラル巻き構造の補強糸層の耐圧強度が、ブレード編み構造の補強糸層の耐圧強度よりも低いからである。そして、油圧ブレーキ用のホースにおいて、スパイラル巻き構造の補強糸層とする場合には、その耐圧性能を確保するために、スパイラル巻き構造の補強糸層を多層設ける必要があり、太径のホースとなってしまう。また、ホースを細径のものとする場合には、ホースの耐圧性能を満足させることができない。
そこで、油圧ブレーキホースは、特許文献2に記載のホースのように、内面ゴム層、ブレード編み構造の第1補強糸層、中間ゴム層、ブレード編み構造の第2補強糸層、および外面ゴム層を、内側からこの順に有する5層構造のホースとされるのが一般的である。
特開2013−242000号公報 特開平10−122444号公報
通常、油圧ブレーキホースの端部には、金具が取り付けられる。油圧ブレーキホースの端部に金具が取り付けられる(締結される)際、第1補強糸層および第2補強糸層は、ホースの周方向から圧縮されることで、ホースの軸方向に伸長される。そして、第1補強糸層と第2補強糸層との間に設けられる中間ゴム層は、第1補強糸層と第2補強糸層とが相対的に軸方向に伸長されて、ずれることを防止するためのものである。なお、第1補強糸層と第2補強糸層とが相対的に軸方向にずれると、金具が取り付けられた部位から油漏れが生じる。
ここで、本発明者らは、上記したような油圧ブレーキホースに関して、中間ゴム層を無くすことができないか検討した。中間ゴム層を無くすことができれば、油圧ブレーキホースを従来よりも少ない工程数で製造することができ、しかも、油圧ブレーキホースを従来よりも細径化することができる。
すなわち、本発明の目的は、中間ゴム層が無しでも、第1補強糸層と第2補強糸層とが相対的に軸方向にずれることを防止できる構造の液圧ブレーキホースを提供することである。
本発明に係る液圧ブレーキホースは、内面ゴム層、ブレード編み構造の第1補強糸層、ブレード編み構造の第2補強糸層、および外面ゴム層を、内側からこの順に有し、前記第1補強糸層の外周面に、前記内面ゴム層の一部がはみ出して付着していることを特徴とする。
本発明では、第1補強糸層の外周面にはみ出した内面ゴム層の一部で、第1補強糸層と第2補強糸層とが密着させられる。これにより、中間ゴム層が無しでも、第1補強糸層と第2補強糸層とが相対的に軸方向にずれることが防止される。
本発明の一実施形態に係る液圧ブレーキホースの一部切欠斜視図である。 図1に示す第1補強糸層の加硫処理前の一部展開図(概略図)である。 図1に示す第1補強糸層の加硫処理後の一部展開図(概略図)である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
(油圧ブレーキホースの構成)
図1に示すように、本発明の一実施形態である油圧ブレーキホース100(液圧ブレーキホース)は、その内側から、内面ゴム層1、ブレード編み構造の第1補強糸層2、ブレード編み構造の第2補強糸層3、および外面ゴム層4を有する。内面ゴム層1の内側空間は、ブレーキ油で満たされる。当該ブレーキ油に圧力がかけられることで、ブレーキ(不図示)が作動する。油圧ブレーキホース100は、例えば、四輪自動車に好適に使用される。
内面ゴム層1は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)組成物で形成されている。内面ゴム層1の材料は、EPDM組成物に限定されることはない。内面ゴム層1の他の材料としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)組成物などが挙げられる。また、EPDMとSBRとをブレンドしたゴム組成物が、内面ゴム層1の材料として用いられてもよい。
なお、内面ゴム層1を構成するゴム組成物のムーニー粘度は、55以上、115以下であることが好ましい。なお、ムーニー粘度とは、JIS K6300−1に規定の方法で、ムーニー粘度計を用いて測定された加硫前のゴム(未加硫ゴム)の粘性の値のことをいう。すなわち、内面ゴム層1を構成するゴム組成物のムーニー粘度とは、JIS K6300−1に規定の方法で、ムーニー粘度計を用いて測定された当該ゴムの加硫前のゴム(未加硫ゴム)の粘性の値(いわゆる、ML[1+4]100℃)のことである。
第1補強糸層2は、内面ゴム層1の外周面に、ポリビニルアルコール系(以下、PVAという)繊維からなる補強糸11をブレード編みにて編み組むことによって形成されている。補強糸11の材料は、PVA繊維に限定されることはない。補強糸11の他の材料としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アラミド系繊維、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられる。
なお、ブレード編みとは、公知の編み方であって、例えば、複数本の補強糸11を一方向と他方向との両方向から、同一円周上で互いをクロスさせて編むことをいう。本実施形態の第1補強糸層2は、2本の補強糸11をセットにしてブレード編みされたものである。
また、編み組まれた補強糸11のホースの軸方向に対する傾斜角度、すなわち編組角度θ(図2参照)は、54度44分以上であることが好ましい。この54度44分の角度は、静止角と呼ばれる。
ここで、図1、3に示すように、第1補強糸層2の外周面に、その内側から、内面ゴム層1の一部のゴム1aがはみ出して付着している。ゴム1aは、補強糸11の網目12(図2参照)から、内面ゴム層1の一部がはみ出したものである。補強糸11の網目12とは、同一円周上で一方向に編み組みされた隣り合う補強糸11aと、これらにクロスするとともに、同一円周上で他方向に編み組みされた隣り合う補強糸11bとに囲まれた、わずかな隙間のことをいう。
また、第1補強糸層2の外周面の面積に対する、第1補強糸層2の外周面にはみ出して付着した内面ゴム層1の一部であるゴム1a(内面ゴム)の総面積の比率、すなわち、ゴム1aの総面積率が、5%以上、100%未満であることが好ましい。なお、はみ出して付着したゴム1aの総面積とは、複数箇所ではみ出して付着したゴム1aのそれぞれの面積の総和のことである。
第1補強糸層2の外周面の何パーセントの部分に、内面ゴム層1の一部であるはみ出したゴム1aが付着しているかは、加硫処理後の油圧ブレーキホース100を分解し、第1補強糸層2の外周面を、例えば、カメラ撮影および画像処理をすることによって、ゴム1aの総面積率として自動計測することができる。
第2補強糸層3は、第1補強糸層2の外周面に、PVA繊維からなる補強糸13をブレード編みにて編み組むことによって形成されている。補強糸13の材料は、補強糸11と同様、PVA繊維に限定されることはない。補強糸13の他の材料としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アラミド系繊維、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられる。
ここで、第1補強糸層2における単位体積当たりの補強糸11の存在割合は、第2補強糸層3における単位体積当たりの補強糸13の存在割合より少なくされていることが好ましい。換言すれば、第1補強糸層2は、第2補強糸層3よりも「粗」とされていることが好ましい。ブレード編みする補強糸11,13の繊度、本数、駒数、および補強糸層2,3の径により、補強糸層2,3における単位体積当たりの補強糸11,13の存在割合が決定される。
第2補強糸層3は、外面ゴム層4で被覆されている。外面ゴム層4は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)組成物で形成されている。外面ゴム層4の材料は、EPDM組成物に限定されることはない。外面ゴム層4の他の材料としては、クロロプレンゴム(CR)組成物などが挙げられる。また、EPDMとCRとをブレンドしたゴム組成物が、外面ゴム層4の材料として用いられてもよい。
(油圧ブレーキホースの製造方法)
図示しない長尺のマンドレルの外周面に、押出機により成形されたチューブ状の内面ゴム層1を被覆する。マンドレル上に被覆された内面ゴム層1の外周面に、所定のテンションをかけながら補強糸11をブレード編みしていく。ここで、前記したように、内面ゴム層1を構成するゴム組成物のムーニー粘度は、限定されるものではないが、55以上、115以下であることが好ましい。所定のテンションをかけながら内面ゴム層1の外周面に、補強糸11をブレード編みしていく過程で、内面ゴム層1は、補強糸11にしごかれて、程度の差はあれ、軸方向に延伸される。内面ゴム層1を構成するゴム組成物のムーニー粘度が、55以上、115以下であると、硬すぎず柔らかすぎずのゴム組成物の選択になり、後に行われる加硫処理において、第1補強糸層2の外周面に、内面ゴム層1の一部がはみ出しやすい。
これに対して、内面ゴム層1を構成するゴム組成物のムーニー粘度が、55未満であると柔らかすぎて、ブレード編みの過程でしごかれすぎることで、後に行われる加硫処理において、内面ゴム層1の一部がはみ出しにくくなる。これとは逆に、内面ゴム層1を構成するゴム組成物のムーニー粘度が、115超であると硬すぎて、後に行われる加硫処理において、内面ゴム層1の一部がはみ出しにくくなる。
補強糸11が、ブレード編みされて形成された第1補強糸層2の外周面に、所定のテンションをかけながら補強糸13をブレード編みしていくことで、第2補強糸層3を形成する。第2補強糸層3の外周面に、押出機により成形されたチューブ状の外面ゴム層4を被覆する。その後、未加硫の内面ゴム層1、第1補強糸層2、第2補強糸層3、および未加硫の外面ゴム層4で構成されたホースを加硫処理する。これにより、油圧ブレーキホース100が完成する。
上記加硫処理において、第1補強糸層2の外周面に、内面ゴム層1の一部がはみ出す。第1補強糸層2は、補強糸11がブレード編みされて形成されるものであるので、その外周面は凹凸となっている。同様に、第2補強糸層3は、補強糸13がブレード編みされて形成されるものであるので、その内周面は凹凸となっている。第1補強糸層2と第2補強糸層3との間に、内面ゴム層1からはみ出したゴム1aは、網目12および第1補強糸層2の外周面の凹部に入り込むとともに、第2補強糸層3の内周面の凹部にも入り込んで、第1補強糸層2と第2補強糸層3とを密着(一体化)させる。これにより、ゴム1aは、密着(一体化)効果およびクサビ効果を発揮する。その結果、第1補強糸層2と第2補強糸層3とが、相対的に軸方向にずれることが防止される。
なお、第1補強糸層2の外周面の凸部(編み組まれた補強糸11のうちの第2補強糸層3側に位置する補強糸11)と、第2補強糸層3の内周面の凸部(編み組まれた補強糸13のうちの第1補強糸層2側に位置する補強糸13)とが、互いに接触している部分では、第1補強糸層2と第2補強糸層3との間に、内面ゴム層1からはみ出したゴム1aは入り込まない。換言すれば、第1補強糸層2の外周面の全面に、はみ出した内面ゴム層1の一部が付着することはないため、付着する内面ゴムの総面積率としては、100%未満となる。
(実施例)
表1および表2に、油圧ブレーキホース100の実施例を5つ示す。実施例4,5では、油圧ブレーキホース100の金具が取り付けられた部位から、最終的に油漏れが生じてしまったが、第1補強糸層2の外周面に、内面ゴム層1の一部がはみ出して付着するとともに、十分な耐圧および破裂圧性能を有することは、確認された。
なお、油漏れが発生するか否かについての油漏れの試験は、JIS D2601「ブレーキ液適合性」に準じて、次のように評価を行った。ブレーキ液を内部に満たした状態で、120℃で72時間保持させた後、27.6MPaの圧力を120秒間加えて異状がなければ、続けて破裂試験を行った後、金具が取り付けられた部位からの油漏れの発生有無(締結部の金具内部への油回りを含む)までを確認した。

Figure 0006851619
Figure 0006851619
(作用・効果)
液圧ブレーキホースの一例である前記した油圧ブレーキホース100は、内面ゴム層1、ブレード編み構造の第1補強糸層2、ブレード編み構造の第2補強糸層3、および外面ゴム層4を、内側からこの順に有する。そして、第1補強糸層2の外周面に、内面ゴム層1の一部(ゴム1a)がはみ出して付着している。
この構成によると、第1補強糸層2の外周面に、はみ出した内面ゴム層1の一部(ゴム1a)で、第1補強糸層2と第2補強糸層3とが密着させられる。ゴム1aは、密着(一体化)効果およびクサビ効果を発揮し、中間ゴム層が無しでも、第1補強糸層2と第2補強糸層3とが、相対的に軸方向にずれることが防止される。
ここで、第1補強糸層2における単位体積当たりの補強糸11の存在割合が、第2補強糸層3における単位体積当たりの補強糸13の存在割合より少ないことが好ましい。
この構成によると、内面ゴム層1の一部は、相対的に、第1補強糸層2を通過しやすいが、第2補強糸層3は通過しにくい。これにより、密着(一体化)効果およびクサビ効果を発揮するゴム1aを、第1補強糸層2と第2補強糸層3との間に、ほどよい総面積率で存在させることができる。また、内面ゴム層1の一部が、第2補強糸層3を通過して外面ゴム層4まで達すると、外観異常のホースとなってしまうが、これを防止することができる。
また、内面ゴム層1を構成するゴムのムーニー粘度は、55以上、115以下であることが好ましい。この構成によると、第1補強糸層2の外周面に、内面ゴム層1の一部がはみ出しやすい。
また、第1補強糸層2の外周面の面積に対する、第1補強糸層2の外周面にはみ出して付着した内面ゴム(ゴム1a)の総面積の比率、すなわち、ゴム1aの総面積率が、5%以上、100%未満であることが好ましい。この構成によると、第1補強糸層2と第2補強糸層3とが、相対的に軸方向にずれることを、より防止することができる。
(変形例)
上記の実施形態は、次のように変更可能である。
第1補強糸層2における単位体積当たりの補強糸11の存在割合は、第2補強糸層3における単位体積当たりの補強糸13の存在割合より少ないことに限定さることはない。例えば、第1補強糸層2における単位体積当たりの補強糸11の存在割合と、第2補強糸層3における単位体積当たりの補強糸13の存在割合とが、同程度であってもよい。
内面ゴム層1を構成するゴム組成物のムーニー粘度は、55以上、115以下であることに限定されることはない。ムーニー粘度が上記範囲外であっても、第1補強糸層2の外周面に、内面ゴム層1の一部がはみ出して付着するとともに、十分な耐圧および破裂圧性能を有する効果は得られる。
第1補強糸層2の外周面の5%以上、100%未満の部分に、はみ出した内面ゴム層1の一部が付着していることに限定さることはない。第1補強糸層2の外周面の5%未満の部分に、はみ出した内面ゴム層1の一部が付着していても、第1補強糸層2と第2補強糸層3とが、相対的に軸方向にずれることを防止する効果は得られる。
その他に、当業者が想定できる範囲で、種々の変更を行えることは勿論である。
1:内面ゴム層
1a:内面ゴム層1からはみ出したゴム
2:第1補強糸層
3:第2補強糸層
4:外面ゴム層
11,13:補強糸
100:油圧ブレーキホース(液圧ブレーキホース)

Claims (3)

  1. 内面ゴム層、ブレード編み構造の第1補強糸層、ブレード編み構造の第2補強糸層、および外面ゴム層を、内側からこの順に有する液圧ブレーキホースであって、
    前記内面ゴム層を構成するゴム組成物のムーニー粘度が、55以上、115以下であり、
    前記第1補強糸層の外周面に、前記内面ゴム層の一部がはみ出して付着していることを特徴とする、液圧ブレーキホース。
  2. 請求項1に記載の液圧ブレーキホースにおいて、
    前記第1補強糸層における単位体積当たりの補強糸の存在割合が、前記第2補強糸層における単位体積当たりの補強糸の存在割合より少ないことを特徴とする、液圧ブレーキホース。
  3. 請求項1または2に記載の液圧ブレーキホースにおいて、
    前記第1補強糸層の外周面の面積に対する、前記第1補強糸層の外周面にはみ出して付着した内面ゴムの総面積の比率が、5%以上、100%未満であることを特徴とする、液圧ブレーキホース。
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