JP6851141B2 - 角層採取方法および採取した角層の観察方法 - Google Patents

角層採取方法および採取した角層の観察方法 Download PDF

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Description

本発明は、生体の皮膚からの角層の採取方法に関する。採取した角層は、染色し、観察し、角層状態の評価のために用いることができる。
表皮は様々な種類の細胞により構成されており、角化細胞(ケラチノサイト)が大部分を占めている。このケラチノサイトが増殖し、上層に移行するに伴い、角化により最外層の角層を形成する。このような表皮の正常な角化や角層の維持には表皮細胞が重要な役割を果たしている。また、ケラチノサイトの細胞接着の異常は、角化症等の皮膚疾患原因であると言われている。さらに、ニキビ、フケ、落屑等のスキントラブルは細胞接着性の異常亢進により角質の重層化が亢進することが原因であることが知られている。
美容方法を選択する上で、皮膚の状態を知ることは重要である。皮膚状態は、皮膚柔軟性の測定、皮膚水分蒸散量(TEWL)の計測、マイクロスコープによる肌理の測定等のほか、テープストリップにより角層を採取し、採取した角層を観察等することにより評価することができる。
特許文献1は、テープストリップにより角層シートを取得し、取得した角層シートに対してフルオレセイン、ローズベンガル、およびそれらの塩からなる群から選ばれる染料の水溶液を接触させる工程、上記染料を洗浄する工程、角層シートにおける上記染料の染色強度を測定する工程、を含む、角層状態の評価方法を提供する。また特許文献2は、デスモグレイン等の角層蛋白質の発現または存在状態を検出し、表皮のターンオーバーや皮膚状態を評価するためのものとして、皮膚同一部位の角層をテープストリッピングにより複数回剥離、採取し、採取した複数の角層試料を蛍光抗体法により染色することを特徴とする角層中の細胞接着蛋白質の存在位置の検出方法を提供する。
特開2014−139540号公報 特開2007−199053号公報(特許第4805794号)
テープストリッピングによる角層の採取は、粘着性のあるテープを皮膚に押し当て、次いで皮膚に付着したテープを剥がすことにより実施されるため、ある程度の痛みを伴うものである。また、顔面のように角層が比較的薄い部位は、繰り返しテープストリッピングを行うと正常な角質細胞まで取り去ってしまう恐れがある。そのためより負担のない角層の採取方法が求められていた。
上述実情に鑑み、鋭意検討した結果、本発明者らは、液体を含浸させたコットン等の担体により皮膚を塗擦すれば、担体上に角層を採取でき、また採取された角層が評価のために適していることを見出した。さらにこの方法は手技として容易であり、かつ採取の際の痛みがほとんどなく、またテープストリッピングを複数回繰り返すことによるダメージもなく皮膚への負担が少なく角層を採取できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下を提供する。
[1]角層採取用液体を含浸させた担体で、対象の皮膚部位を塗擦し、皮膚から角層を採取する工程;および
塗擦後の担体から角層を取り出す工程
を含む、角層採取方法。
[2]塗擦後の担体から角層を取り出す工程が、塗布後の担体を乾燥し、乾燥した担体に粘着面を有する媒体を接触させて、角層を媒体に転写することによる、1に記載の角層採取方法。
[3]角層採取用液体が、非イオン性界面活性剤を0.01〜10質量%含有する、1または2に記載の角層採取方法
[4]角層採取用液体が、揮発性シリコーンを0.1〜50質量%含有する、1〜3のいずれか1項に記載の角層採取方法。
[5]塗擦が、顔の皮膚に対して行われる、1〜4のいずれか1項に記載の角層採取方法。
[6]塗擦が、目または口の周囲を含む皮膚に対して行われる、1〜5のいずれか1項に記載の角層採取方法。
[7]担体が綿を含む、1〜6のいずれか1項に記載の角層採取方法。
[8]1〜7のいずれか1項の角層採取方法を実施し、採取した角層を染色する工程;および染色した角層を観察する、または観察のために提示する工程
を含む、角層観察方法。
[9]染色が、非蛍光色素または蛍光染色を用いて行われる、8に記載の角層観察方法。
[10]染色が、免疫染色により行われる、8または9に記載の角層観察方法。
[11]8〜10のいずれか1項の角層観察方法を実施し、観察結果に基づき対象の美容方法を選択する、美容方法の決定方法。
[12]非イオン性界面活性剤と揮発性シリコーンとの少なくとも一方を含む、角層採取用液体組成物。
本発明の角層の採取方法は、被採取者において痛みを伴わない。
本発明の角層の採取方法は、皮膚への負担が比較的少なく、また綿棒等を用いて実施することができる。そのため、目の周囲、口の周囲等、従来法では角層の採取が困難だった部位からも、容易に角層を採取することができる。
また、本発明の角層の採取方法は、熟練した手技や特別な機器等が不要であり、簡単に行えるため、店頭での販売員や客自身による実施等、場所や採取者の限定なく実施できる。
本発明の方法により採取した角層は、従来法で採取した角層と同様に染色等を行うことができ、観察できる。
採取した角層を染色した写真。左は角層採取液体Aを用いて採取した場合、右は角層採取液体Bを用いて採取した場合。
「X〜Y」で表される範囲は、特に記載した場合を除き、両端の値XおよびYを含み、また特に記載した場合を除き、「%」は質量に基づく値である。
[角層採取方法]
本発明の角層採取方法は、以下の工程を含む。
(1)角層採取用液体を浸潤させた担体で、対象の皮膚部位を塗擦し、皮膚から角層を採取する工程;および
(2)塗擦後の担体から角層を取り出す工程。
本発明に用いられる角層採取用液体は、化粧品として許容される成分からなるものであれば、特に制限なく用いることができる。角層採取用液体に含まれることが好ましい成分については、後述する。
本発明に用いられる担体は、皮膚刺激の少ない素材からなるものであり、角質採取用液体が含浸でき、かつ表面が角層をかき取るために有効な程度に粗であれば、特に制限なく用いることができる。担体は、繊維質または多孔質であることが好ましい。繊維質である担体は、不織布または織布であり得る。
担体の基材は、天然のものであっても合成のものであってもよく、またこれらを混紡したものであってもよい。具体的には、綿、絹、羊毛、麻、パルプ、リヨセル、キュプラ、レーヨン、アセテート、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ニトリルゴム、ポリビニルアルコール等が挙げられる。液体を十分な量含浸でき、かつ肌へのなじみが良いとの観点からは、綿、パルプ、リヨセルであることが好ましく、経済的な観点からは綿が特に好ましい。スポンジやパフのように適度に空隙を持たせて液体の含浸量を増やすことも可能である。担体の大きさ、厚さ、坪量、空隙率等は当業者であれば、採取する皮膚の面積や扱いやすさ等を考慮し、適宜設計できる。担体の、より具体的な例として、シート状または多層状の脱脂綿(コットン)または綿棒が挙げられる。
角層の採取は、具体的には、対象の皮膚表面を、角層採取液体を含浸させた担体で塗擦することにより実施できる。本発明においては、塗擦の際には、強い力を加えることは要さず、また塗擦は同じ箇所を1〜数回、例えば往復させるようにまたは円を描くように、担体を動かしながら行うことができる。塗擦は、通常、1つの担体を用いて行うことにより、十分な量の角層を得ることができるが、担体を適宜交換し、複数回行ってもよい。次いで、塗擦後の担体を回収する。
塗擦後の担体からの角層の取り出しは、適宜の手段で行うことができるが、好ましくは、塗布後の担体を乾燥し、乾燥した担体に粘着面を有する媒体を接触させて、角層を媒体に転写することによる。
塗擦後の担体は、乾燥させることができ、乾燥は、担体上に採取された細胞を観察不能となるほどに損失または損傷することがなければ、加温して行うことができる。乾燥のための装置としては、従来のものを利用することができる。
乾燥させた担体からは、粘着面を有する媒体を接触させることにより、すなわちテープストリッピングにより、角層を取り出すことができる。このテープストリッピングは、具体的には、乾燥させた担体に粘着性の透明テープ、例えば、粘着層は天然ゴムあるいはアクリル系粘着剤を主成分とし、透明フィルムがPET、セロファン等であるテープを貼付け、テープの全面または一部の面が担体に張り付くようにした後、該テープを担体から剥がすことにより行うことができる。これにより、担体上に採取された角層の全部または一部が取り出される。テープストリッピングの際、担体の一部が剥がれ、角層と一緒に取り出されることがあるが、後の染色や観察の妨げにならない量であれば問題はない。テープストリッピングは、同じ担体に対し、1回〜数回行うことができる。
従来の角層採取方法である皮膚から直接テープストリッピングを行う方法は、いったん皮膚に貼付した粘着性のあるテープを皮膚から剥がすことにより実施されるため、ある程度の痛みを伴うものである。一方、角層採取液体を用いた塗擦により角層を採取する本発明の方法は、原理的に痛みを伴わないものである。また、従来のテープストリッピングは、テープの粘着力の強さによっては皮膚表面の角層を必要以上に多く剥離させてしまうリスクがあり、角層が比較的薄い部位や肌の状態の良くない部位に適用するには難点がある。一方角層採取液体を用いた塗擦により角層を採取する本発明の方法は、本質的に緩和な手技により角層を採取するものであり、また角層採取液体の組成や塗擦の回数等を調節することにより、角層の採取量をコントロールすることが容易であるという利点がある。
本発明の角層採取方法は、全身の皮膚に対して適用しうるが、特に顔面(例えば、頬、鼻、額、顎)からの角層の採取に適している。また目または口等の粘膜周囲を含む皮膚からの角層の採取にも適用することができる。さらに本発明の角層採取方法が適用可能は角層を採取する対象は、特に限定されず、成人のほか、乳幼児、子ども、老人であってもよい。
[角層採取用液体]
(非イオン性界面活性剤)
本発明に用いられる角層採取用液体は、角層を十分に採取することができるとの観点からは、非イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。本発明に用いられる非イオン性界面活性剤は、化粧品の成分として許容されるものである限り特に限定されないが、例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ソルビット、ペンタエリスリトール、ショ糖等の多価アルコールの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等の脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、エチレンジアミンのポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体付加物等のプルロニック型非イオン性界面活性剤;脂肪酸モノアルカノールアミド、脂肪酸ジアルカノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシエチレンアルキルアミン;トリアルキルアミンオキシド等のアミンオキシド型非イオン性界面活性剤;アルキルグルコシド等を挙げることができる。
具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、プロピレングリコール脂肪酸エステルの酸化エチレン誘導体、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリキシエチレン硬化ヒマシ油などの骨格を有するものなどを挙げることができる。さらに詳しく例示するのであれば、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(1)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(30)コレスタノール、ポリオキシエチレン(30)コレステリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)コレステリルエーテル、ポリオキシエチレン(15)コレステリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)コレステリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)コレステリルエーテル、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、ポリオキシエチレン(30)テトラオレイン酸ソルビット、ポリオキシエチレン(6)テトラオレイン酸ソルビット、ポリオキシエチレン(20)トリイソステアリン酸グリセリルなどを挙げることができる。これらの中でも、好ましくは、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(1)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(10)コレステリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)コレステリルエーテル、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン(6)テトラオレイン酸ソルビット、ポリオキシエチレン(20)トリイソステアリン酸グリセリル等が挙げられる。
これらのうち、ソルビタン脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤が角層を適度に採取するという観点からは好ましい。
また、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのエーテル型非イオン性界面活性剤は角層採取液体の保存安定性に優れるという点で好ましい。
これらの非イオン性界面活性剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、平均HLB値が5〜15であることが好ましく、特に好ましくは8〜12である。ここで、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、親水基としてポリオキシエチレン鎖のみを含む非イオン界面活性剤の場合は次に示すグリフィン(Griffin)の式により求められるものである。次式中のEは、界面活性剤分子中に含まれるポリオキシエチレン部分の重量%である。
HLB値= E/5
角層採取液体における非イオン性界面活性剤の含有量は、全組成中0.01〜10%とすることができ、0.1〜5%であれば好ましい。10%を超えると肌への負担が大きくなると考えられるからである。
(揮発性シリコーン)
本発明に用いられる角層採取用液体は、角層を十分に採取することができるとの観点からは、非イオン性界面活性剤に代えて、または非イオン性界面活性剤とともに、揮発性シリコーンを含むことが好ましい。
本発明に用いられる揮発性シリコーンは、化粧品の成分として許容されるものであれば、特に限定されず、環状シリコーンであってもよく、直鎖状のシリコーン油であってもよい。具体例としては、環状ジメチルシロキサン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。
角層採取液体における揮発性シリコーンの含有量は、全組成0.1〜50%とすることができ、5〜30%であることがより好ましい。
(その他の成分等)
本発明に用いられる角層採取液体に用いられる成分のうち液状であるものは、上で説明したように、テープストリッピングにより担体から角層を取り出すために担体を乾燥させる必要がある場合は、揮発させることができる成分からなることが好ましい。本発明に用いられる角層採取液体は、揮発させることができる液状成分として、例えば、精製水、エタノール、イソプロピルアルコール、揮発性炭化水素油等を含みうる。その他、本発明に用いられる角層採取液体は、非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、キレート剤、水溶性高分子、pH調節剤、多価アルコール、保湿剤、美容成分等を含んでいてもよい。
本発明に用いられる角層採取用液体の剤型は、液体である限り特に限定されず、乳水性、乳化物、油性等の剤型を採ることができる。また、上述の角層採取用液体としての要件を満たす限り、角層採取以外の目的で使用される化粧料、例えばいわゆるクレンジング料として市販されているもののうち液体状であるものを用いることも可能である。
[採取した角層の観察・評価]
本発明により採取した角層は、含まれる細胞または成分を観察するために用いることができる。観察は、細胞を顕微鏡等を用いて観察することのみならず、成分を分析(検出または定量)することを含み、また実際の観察のために、角層を提示する行為を含む。角層を提示する行為には、例えば、採取した角層自体または角層に含まれる細胞自体を示すこと、または採取した角層または角層に含まれる細胞を撮影した画像または動画を示すことが含まれる。
観察に際しては、必要に応じ、採取した角層を染色してもよい。染色は、非蛍光色素または蛍光染色を用いて行うことができる。観察はまた、抗原抗体反応を利用した免疫学的手法(免疫染色)を利用して行うことができる。用いられる抗体は、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であっても良く、これらの組み合わせであっても良い。
本発明の角層観察方法において用いられる、非蛍光または蛍光の色素は、角層細胞またはそれ以外の角層構成要素を染色することができる限り特に限定されないが、例えばフルオレセイン、ローズベンガル、コンゴーレッド、サフラニン、メチレンブルー、ローダミンB、ゲンチアナバイオレット、ブリリアントグリーン、青色1号、紫色401号、緑色201号、黄色4号、黄色5号、黄色407号、赤色102号、橙色205号、ヘマトキシリン、エオシン(エオシンBまたはエオシンYを含む。)等を挙げることができる。
角層の観察は、採取した角層に含まれる細胞(より特定すると、細胞核等の細胞小器官や細胞質基質)を染色して観察することのみならず、角層に含まれる成分を免疫染色等によって可視化し、分析することによっても実施することができる。分析対象となる成分としては、細胞接着蛋白、角層間物質、角層細胞構成成分等が挙げられる。このうち、細胞接着蛋白としては、デスモグレイン1、2、3、4、デスモコリン1、2、3、コルネオデスモシン、デスモプラキン1、2、プラコグロビン、プラコフィリン等のデスモソーム構成成分、クローディン、オクルディン、ZO−1、2、3、MUPP−1、トリセルリン、Eカドヘリン、Nカドヘリン、Pカドヘリン、α−カテニン、β−カテニン、p120等を挙げることができる。また、角層間物質としては、グルコシルセラミド、セラミド1〜9、コレステロール、遊離脂肪酸、硫酸コレステロール等の脂質類、カリクレイン5、6、7、8、10、11、13、14、プラスミン、カテプシンD、E、G、L、トランスグルタミナーゼ1、2、3、5、6、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ、ステロイドスルファターゼ、リパーゼ、カスパーゼ類等の酵素類、インターロイキン(IL)1ra、1α、1β、2、3、4、5、6、8、10、トランスフォーミング成長因子(TGF) α、β、インターフェロン(INF)α、β、腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor;TNF)、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(Granulocyte macrophage colony stimulating factor;GM−CSF)等のサイトカイン類や、フィラグリン、プロフィラグリン、各種リン酸化・脱リン酸化酵素、各種アミノ酸等を挙げることができる。さらに、角層細胞構成成分としては、ロリクリン、インボルクリン、スモールプロリンリッチタンパク等を挙げることができる。
テープに転写された角層細胞に存在する角層蛋白質は、蛍光抗体法(免疫蛍光染色法)により染色し、分析することができる。この蛍光抗体法による染色は、例えばテープストリッピングにより得た、角層が付着した透明テープをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等で洗浄し、次いでこれに蛍光標識された目的角層蛋白質に対する抗体を所定時間、室温等適当な温度にて反応させるか、上記透明テープを洗浄後、目的角層蛋白質に対する抗体を反応させ、次いで、標識されたこの抗体に対する抗体を反応させることにより行われる。蛍光抗体法による染色の好ましい例としては、一次抗体として目的とする角層蛋白質(例えば、デスモグレイン)に対するマウスIgG抗体を用い、二次抗体に蛍光標識抗マウスIgG抗体を用いることにより、免疫蛍光染色する方法が挙げられる。
本発明により採取した角層の観察に際しては、染色の前処理として、必要に応じ、角層を化学固定する操作を行ってもよい。具体的には、例えばグルタールアルデヒドを含む緩衝液などで数時間浸漬した後、酸化オスミウム水溶液で再固定する操作を行うことができる。化学固定した角層試料はまた、脱水処理してもよい。具体的には、例えば電子顕微鏡用試料を作成する方法として一般的に知られている方法であればいずれの脱水処理も採用することができ、例えば50%、60%、70%、80%、90%、99%、100%の含水エタノールに順次試料を浸漬し、脱水する操作を行うことができる。
また、皮膚状態は、角層の最外層の状態で評価できるので、本発明の角層観察方法は、対象における皮膚状態の評価のために実施できる。例えば採取した角層に含まれる細胞を核染色し、有核細胞を染め分ける。そして有核細胞率を数値化し、必要に応じて基準と比較することで、皮膚状態を判断することができる。あるいは、採取した細胞の面積や大きさを測定すること、形を観察すること、免疫染色により蛋白質の発現パターンを観察すること等により、対象における皮膚の状態を評価することができる。角層の状態の評価は、本発明による観察結果に基づく評価と、他の手法により得られる皮膚状態を表す要素、例えば皮膚柔軟性、経表皮水分蒸散量(TEWL)、または角層水分量・油分量と組み合わせて、総合的におこなってもよい。
上述評価結果に基づき、対象における美容方法を決定することができる。美容方法の決定には、用いる化粧品を選択し/選択させ、使用する/させることが含まれる。
本発明は、美容を目的として行われ、病気の診断や治療を目的とはしていない。また本発明の方法の実施の主体は、医者でない者、例えば化粧品販売員またはエステティシャン等の他人のための美容を目的とした行為を職業として行う者であることができ、また角層が採取される対象者自身であってもよい。対象に対して本発明の方法の実施を促し、または指示する行為もまた、本発明の実施に含まれる。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
[製造例1:角層採取用液体AおよびBの製造]
(成分)
Figure 0006851141
(製造方法)
(1)No.1〜No.8を均一に混合する。
(2)(1)を攪拌しながらNo.9を徐々に加え粘性が出るまで撹拌する。
(3)(2)を取り出して容器に充填し、角質採取用液体を得た。
[実施例1:角層採取]
製造例1で得た角層採取液体を用い、被験者の顔の皮膚から、下記の手順で角層を採取した。
(採取)
(1)コットンに角層採取液体AまたはBを含ませる。
(2)被験者の皮膚表面を、力を入れずに円を描くように動かしながらコットンで塗擦し、コットンを回収する。
(3)コットンを室温にて十分な時間をかけて乾燥させる
(4)乾燥したコットンの表面を、セロテープ(登録商標)(ニチバン社製)によりテープストリップする。
テープストリップにより、後述するように、観察の対象となる角層が採取できた。
[実施例2:角層観察]
実施例1で得た角層を、下記の手順で染色した。
(染色)
テープストリップしたテープは4%パラフォルムアルデヒド固定液(武藤化学株式会社製)等の固定液を用いて固定した後、PBS溶液で洗浄を行う。その後1%エオシンY溶液(和光純薬工業社製)にて染色し、一定の時間染色した後流水にて洗浄を行う。洗浄を行ったテープをスライドガラス等に張り付けたのち、適宜カバーガラス等で覆い観察用に供した。
(観察)
前記スライドガラス試料をオリンパス社製の倒立型蛍光顕微鏡を用いて観察した。染色した角層の顕微鏡写真を図1に示した。
角質細胞が赤色に染色された。写真中で、線状に映っているものは、コットン繊維である。クレンジングローションBにより、クレンジングローションAを用いた場合より角質細胞が多く採取され、角層採取液体の組成を変更することにより、角層の採取量をコントロールできることが分かった。また、観察した角質細胞の面積を測定することにより採取した皮膚の状態が正常かどうか評価することができた。これらのことから採取した皮膚は、皮膚状態の評価のために利用できることが分かった。
本発明の角層の採取方法および採取した角層の観察方法は、化粧品および医薬品の開発のために利用できる。また、対象に適した化粧品または医薬品を選択する際にも利用できる。

Claims (7)

  1. 角層採取用液体を含浸させた担体で、対象の皮膚部位を塗擦し、皮膚から角層を採取する工程;および
    塗擦後の担体から角層を取り出す工程であって、塗擦後の担体を乾燥し、乾燥した担体に粘着面を有する媒体を接触させて、角層を媒体に転写することによる、工程
    を含む、角層採取方法であって、
    角層採取用液体が、非イオン性界面活性剤0.1〜5質量%と揮発性シリコーン5〜30質量%との少なくとも一方を含有し、
    塗擦が、顔の皮膚に対して行われる、方法。
  2. 塗擦が、目または口の周囲を含む皮膚に対して行われる、請求項1に記載の角層採取方法。
  3. 担体が綿を含む、請求項1または2に記載の角層採取方法。
  4. 請求項1〜のいずれか1項の角層採取方法を実施し、採取した角層を染色する工程;および染色した角層を観察する、または観察のために提示する工程
    を含む、角層観察方法。
  5. 染色が、非蛍光色素または蛍光染色を用いて行われる、請求項4に記載の角層観察方法。
  6. 染色が、免疫染色により行われる、請求項4または5に記載の角層観察方法。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項の角層観察方法を実施し、観察結果に基づき対象の美容方法を選択する、美容方法の決定方法。
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