以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1には、本実施の形態に係る建物10の主要部が平面図にて示されている。本実施の形態に係る建物10は、各々が鉄骨によって枠組みされた複数の建物用ユニットを縦横に配列して鉄骨ラーメン構造の躯体が形成されたユニット式の建物(ユニット住宅)とされている。また、建物10としては、ユニット式の建物に限らず躯体が鉄骨軸組構造であってもよく、鉄骨ラーメン構造及び鉄骨軸組構造以外の構造であってもよい。
建物10には、居住空間としての居室12が設けられており、居室12の周囲は、外壁或いは内壁などの壁部14(14A〜14D)によって区画されている。居室12の一つの壁部14Aには、壁部14D側にドア16が設けられ、ドア16により出入り口としてのドア開口16Aが開閉される。
図2には、居室12内の主要部が断面図(図1の2−2矢視図)にて示されている。図2に示すように、居室12の天井18は、図示しない天井梁に天井下地20Aが支持され、天井下地20Aに天井板20Bが取り付けられ、天井板20Bの居室12側(下面)に設けられた天井クロスなどの天井仕上げ材により天井面18Aが形成されている。また、居室12の床22は、図示しない床梁又は根太が床下地として、床下地に床板22Aが取り付けられており、床板22A上には、床材(床仕上げ材)24が設けられている。
図1に示すように、居室12の壁部14A、14Bには、薄壁部26が形成されている。薄壁部26は、壁部14A側が薄壁部26Aとされ、壁部14B側が薄壁部26Bとされている。壁部14Aの薄壁部26Aは、ドア開口16Aより壁部14B側において、壁部14Aから居室12内側に突設されており、壁部14Bの薄壁部26Bは、壁部14Aと壁部14Cとの中間位置において壁部14Bから居室12内側に突設されている。
居室12の床材24は、薄壁部26A、26Bの各々からの図示しない延長線と壁部14A、14Bとによって囲われた矩形領域内の床材24Aと、他の領域内が床材24Bとが異なっている。床材24Aとしては、例えば、畳風の模様ないし色調のクッションフロア、ビニルシート又はビニルタイル等が用いられる。本実施の形態では、床材24Aとして和風の雰囲気の床仕上げ材が用いられており、これにより、居室12内において和風空間28が形成されている。また、床材24Bとしては、例えば、フローリング調のクッションフロア、ビニル床シート又はビニルタイルが用いられている。
なお、居室12の床22は、床材24Aと床材24Bとが同じ仕上がり高さであってもよいが、床材24Aの仕上がり高さが、床材24Bの仕上がり高さより僅かに高く(例えば、数ミリ程度)されてもよく、この場合、床材24A、24Bの境界部分の床材24B側に見切り材(スロープ)が設けられてもよい。また、床材24Aには、畳が用いられてもよく、床材24Bには、フローリングが用いられてもよい。
一方、居室12の天井面18Aには、本発明に係る鴨居が取り付けられており、第1の実施の形態及び第2の実施の形態において、本発明に係る鴨居を詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態では、居室12の天井18に第1の実施の形態に係る鴨居30が取り付けられている。図3には、天井18側から見た鴨居30の配置が伏せ図にて示され、図4には、鴨居30の主要部が斜め下方(床22側)から見た斜視図にて示されている。
図1及び図3に示すように、鴨居30は、壁部14A側から床材24Aと床材24Bとの境界部分に沿って配置された鴨居30A、及び壁部14B側から床材24Aと床材24Bとの境界部分に沿って配置された鴨居30Bとにより構成されている。鴨居30A、30Bは、天井面18AにL字状に配置されている。
鴨居30(30A、30B)には、建具としての引戸32が設けられており、引戸32は、1枚又は複数枚が鴨居30に設けられる。第1の実施の形態では、鴨居30Aの長さが鴨居30Bの長さより短くされており、鴨居30Aには、引戸32として2枚の引戸32A、32Bが設けられ、鴨居30Bには、引戸32として3枚の引戸32A、32B、32Cが設けられている。鴨居30A、30Bの各々において、引戸32が引き出されることにより、居室12内の一部が仕切られて和風空間28が形成され、和風空間28は、L字状に配置された鴨居30(30A、30B)により二方が開放及び仕切り可能とされている。
鴨居30Aは2枚の引戸32A、32Bに対応した構成であり、鴨居30Bは3枚の引戸32A〜32Cに対応した構成である点で鴨居30A、30Bが相違するが、鴨居30A、30Bは、基本的構成が同様とされている。以下では、主に鴨居30Aを例に鴨居30(30A、30B)の構成を説明する。
図2から図4に示すように、鴨居30は、支持部材としての長尺で断面矩形の鴨居本体34、案内支持部材としての吊下げレール36、及び隠蔽部材としての合板製のプレート38を含んで構成されている。鴨居本体34には、MDF(Medium Density Fiberboard:中密度繊維板)が用いられている。なお、本実施の形態では、鴨居本体34としてMDFを用いたが、鴨居本体34は、MDFに限らず木材などのMDF以外の建築材料が用いられてもよい。
鴨居本体34は、長手方向と交差する方向の断面において長辺となる面(上面40A)が天井面18A側に向けられ、他方の面(下面40B)が床22側に向けられ、幅方向の両側の側面40Cの一方が和風空間28に向けられている。鴨居本体34は、長手方向周りの周囲の表面(上面40A、下面40B及び両側面40C)が所定の仕上がり(意匠性が考慮された仕上り)とされている。鴨居本体34の仕上げには、シート状の化粧材(化粧シート又は化粧フィルム)が用いられてもよい(被覆されていてもよい)。この場合、例えば、化粧材には、天井板20Bの表面の仕上がりに合わせた雰囲気(色や模様など)の材料が用いられてもよい。
図1及び図3に示すように、薄壁部26(26A、26B)の先端部には、縦枠42Aが配置されており、縦枠42Aは、長手方向が上下方向とされて、薄壁部26の先端部(薄壁部26Aの壁部14Aとは反対側の端部及び薄壁部26Bの壁部14Bとは反対側の端部)に取り付けられている。
また、薄壁部26の壁部14(14A、14B)側には、壁厚が薄壁部26の壁厚よりも厚くされた厚壁部44が設けられており、薄壁部26Aは、厚壁部44を介して壁部14Aに接続され、薄壁部26Bは、厚壁部44を介して壁部14Bに接続されている。厚壁部44は、薄壁部26A、26Bから和風空間28側に突出するように形成されており、薄壁部26A、26Bの各々には、和風空間28側において厚壁部44との間に段差が形成されている。
薄壁部26A側の厚壁部44には、薄壁部26Aとの間の段差部分において壁部14Aとは反対側の端部(端面)に縦枠42Bが取り付けられており、薄壁部26B側の厚壁部44には、薄壁部26Bとの間の段差部分において壁部14Bとは反対側の端部(端面)に縦枠42Bが取り付けられている。縦枠42Bは、長手方向が上下方向に配置されて薄壁部26(26A、26B)の和風空間28側の面に接している。
鴨居30Aの鴨居本体34Aは、薄壁部26Aの和風空間28側に配置されて、長手方向の一端が縦枠42Bに当接されており、鴨居30Bの鴨居本体34Bは、薄壁部26Bの和風空間28側に配置されて、長手方向の一端が縦枠42Bに当接されている。また、鴨居本体34A及び鴨居本体34Bは、壁部14A及び壁部14Bとは反対側において、一方の長手方向の端面が他方の側面40Cに当接されてL字状に接合されている。第1の実施の形態では、一例として、鴨居本体34Bの壁部14Bとは反対側の端部の側面40Cに、鴨居本体34Aの長手方向端面が当接されている。鴨居本体34A、34Bは、鴨居本体34Bの長手方向において鴨居本体34Bの壁部14Bとは反対側の端面と、鴨居本体34Aの和風空間28とは反対側の側面40Cとが面一とされている。
図2及び図4に示すように、吊下げレール36は、矩形略筒状かつ断面略C字形状とされている。吊下げレール36の一つの面には、幅方向中間部にガイド溝46が開口されており、ガイド溝46は、吊下げレール36の長手方向の両端まで延設されている。
鴨居本体34には、下面40Bに一つ又は複数の矩形溝48が形成されており、矩形溝48は、鴨居本体34において長手方向の両端まで延設されている。矩形溝48には、吊下げレール36が挿入(嵌合でもよい)されている。吊下げレール36は、ガイド溝46が外側(下側)に向けられた状態で矩形溝48に挿入されて、鴨居本体34内に収容されている。鴨居本体34Aには、2本の矩形溝48が形成されて、2本の吊下げレール36が収容されており、鴨居本体34Bには、3本の矩形溝48が形成されて、3本の吊下げレール36が収容されている(図1参照)。
図4に示すように、吊下げレール36のガイド溝46と反対側の壁面には、幅方向中間部に取付孔36Aが設けられており、取付孔36Aは、吊下げレール36の長手方向に所定間隔で穿孔されている。図2に示すように、吊下げレール36は、鴨居本体34の矩形溝48に収容された状態で取付孔36Aにタッピングねじ50が挿入される。このタッピングねじ50が鴨居本体34に捩じ込まれることで、吊下げレール36が鴨居本体34に取り付けられる。また、鴨居本体34は、上面40Aから突出されたタッピングねじ50が、さらに天井板20B及び天井下地20Aに捩じ込まれることで、天井18に取り付けられている。
引戸32は、吊下げレール36に支持されている。鴨居本体34Aには、和風空間28側の吊下げレール36に引戸32Aが配置されて、和風空間28とは反対側の吊下げレール36に引戸32Bが配置されている。なお、鴨居本体34Bには、和風空間28側の吊下げレール36に引戸32Aが配置されて、和風空間28とは反対側の吊下げレール36に引戸32Bが配置されている共に、幅方向中間部(引戸32A、32Bの間)の吊下げレール36に引戸32Cが配置されている。
吊下げレール36の各々には、複数(例えば、2個)の吊下げ車52が配置されている。吊下げ車52には、支持金具54Aに一対のローラ(吊車)54Bが回転自在に取り付けられていると共に、支持金具54Aに固定金具54Cが取り付けられている。吊下げ車52は、ローラ54Bの各々が吊下げレール36内に配置されて、ガイド溝46の開口周縁壁面上に当接されており、支持金具54Aがガイド溝46から下方に突出されて、支持金具54Aの突出先端部に固定金具54Cが取り付けられている。吊下げ車52は、ローラ54Bが吊下げレール36内を移動されることで、支持金具54Aが固定金具54Cと共に、吊下げレール36の長手方向に移動される。
引戸32には、幅方向の両端部において上部に吊下げ車52の固定金具54Cが取り付けられている。これにより、引戸32は、吊下げ車52を介して吊下げレール36に吊下げられて支持され、吊下げレール36の長手方向に移動可能とされている。また、図1に示すように、薄壁部26(26A、26B)の幅寸法(縦枠42Aと縦枠42Bとの間隔)と引戸32(32A〜32C)の幅寸法とは略同様とされており、引戸32は、縦枠42Bに当接されることで、薄壁部26(26A、26B)の和風空間28側に重なって収納状態とされる。
引戸32(32A〜32C、図2では、引戸32Cの図示を省略)の下面には、連結溝56Aが形成されている。連結溝56Aは、所定深さとされて引戸32の下面に形成されて、下方に向けて開口されており、連結溝56Aは、引戸32の幅方向に連続され、且つ引戸32の幅方向の両端において閉じられている(幅方向の両端面には開口していない)。
また、和風空間28とは反対側の引戸32(32B、32C、図2では、引戸32Bを図示)には、和風空間28側(引戸32A側)の面の下端部に略帯状の連結金具56Bが取り付けられている。連結金具56Bの下端部は、和風空間28側に向けて折り曲げられていると共に、折り曲げられた先端部が更に上方に向けて折り返されている。鴨居本体34A側においては、引戸32Bに連結金具56Bが取り付けられており、この連結金具56Bの先端部が引戸32Aの連結溝56Aに挿入されている。なお、鴨居本体34B側においては、引戸32B、32Cに連結金具56Bが取り付けられており、引戸32Bの連結金具56Bの先端部が引戸32Cの連結溝56Aに挿入され、引戸32Cの連結金具56Bの先端部が引戸32Aの連結溝56Aに挿入されている(図示省略)。
これにより、図1に示すように、鴨居30A側において引戸32Aを収納状態から引き出す(引出し方向に移動する)ことで、引戸32A、32Bが収納状態から順に引き出され(図1の破線参照)、引戸32Aを収納状態に戻す(引戻し方向に移動する)ことで、引戸32Aと共に、引戸32Bが収納位置に移動される(図1の実線参照)。また、鴨居30B側において引戸32Aを引出し方向に移動することで、引戸32A、32C、32Bが収納状態から順に引き出され(図1の破線参照)、引戸32Aを引戻し方向に移動することで、引戸32Aと共に、引戸32C、32Bが収納位置に移動される(図1の実線参照)。
一方、図2及び図4に示すように、鴨居30には、間隔調整部材としてのスペーサ60が設けられており、スペーサ60は、鴨居本体34の上面40Aと天井面18Aとの間に配置されている。鴨居本体34の長手方向の両端部の間において、スペーサ60は、少なくとも1箇所に設けられ、鴨居本体34の長手方向の両端部の間の複数個所に設けられてもよい。第1の実施の形態において、スペーサ60は、複数個所に設けており、スペーサ60の配置箇所には、鴨居本体34及び吊下げレール36においてタッピングねじ50が捩じ込まれる箇所が含まれる。
スペーサ60は、合板製とされており、長さ(鴨居本体34の長手方向の長さ)及び幅(鴨居本体34の幅方向の長さ)が同様とされたものが複数枚用いられており、スペーサ60の幅寸法は、鴨居本体34の幅寸法と同様か僅かに短くされている。また、スペーサ60は、厚さの異なる複数種類が用いられており、第1の本実施の形態では、厚さが2mm及び4mmの2種類のスペーサ60を用いている。即ち、スペーサ60は、所望の高さとするように、厚さの同じ同種又は厚さの異なる異種のものが1枚又は複数枚ずつ用いられる。
スペーサ60は、鴨居本体34(鴨居本体34に取り付けられた吊下げレール36)を水平状態にした際に、鴨居本体34の上面40Aと天井面18Aとの隙間に1枚又は複数枚が重ねられて用いられる。この際、スペーサ60は、鴨居本体34の上面40Aと天井面18Aとの間隔に合せて、種類(厚さ)及び枚数が調整される。
図4に示すように、スペーサ60は、上面に両面テープ62Aが貼付されて、両面テープ62Aによって複数枚が重ねて仮止めされる。また、仮止めされたスペーサ60には、少なくとも四隅において、下側からサラタッピングねじ62Bが捩じ込まれ、サラタッピングねじ62Bが天井板20B及び天井下地20Aに捩じ込まれる。これにより、スペーサ60は、天井18(天井面18A)に強固に固定される(図2参照)。
図1から図4に示すように、鴨居本体34(34A、34B)には、隠蔽部材としてのプレート38が設けられている。プレート38には、所定厚さ(例えば、厚さ4mm)の帯板状合板が用いられ、プレート38は、一方の面(仕上げ面38A)が所定状態に仕上げられている。
図2に示すように、プレート38の幅寸法は、天井面18Aと天井面18Aに取り付けられた鴨居本体34の下面40Bとの距離(長さ)に等しくなるように形成されている。また、プレート38は、仕上げ面38Aが鴨居本体34の幅方向外側に向けられ、且つ長手方向が水平方向(鴨居本体34の長手方向)とされて、鴨居本体34の幅方向両側の側面40Cに取り付けられている。この際、プレート38は、幅方向の一方の端面(下側の端面、下端面)が鴨居本体34の下面40Bに略面一とされ、幅方向の他方の端面(上側の端面)が天井面18Aに当接するか天井面18Aに近接されている。プレート38の鴨居本体34への取り付けには、エチレン系接着剤などの建築材料の接着剤が用いられ、プレート38は、接着剤によって鴨居本体34の側面40Cの略全域に固着されている。
一方、プレート38には、図2及び図5(B)に示すように、被覆部及びシート状の化粧材としての化粧シート58が設けられている。プレート38は、鴨居本体34に取り付けられた際の少なくとも下端面が化粧シート58により覆われる。また、化粧シート58は、プレート38の下端面のみならず、プレート38の仕上り面38Aを覆うように設けられてもよく、プレート38の上端面から仕上り面38A及び下端面を含めて覆ってもよい。図5(B)に二点鎖線で示すように、第1の実施の形態において、化粧シート58は、プレート38の裏面(仕上り面38Aとは反対側の面)の上側から仕上り面38Aを経て裏面の下側に達するように取り付けられている。
化粧シート58としては、鴨居本体34の下面40Bが化粧シートにより被覆されている場合、この化粧シートと同様のものを用いてもよい。また、化粧シート58としては、居室12の天井面18Aに設けられた天井仕上げ材(例えば、天井クロス)又は天井仕上げ材と同様の色調(色及びデザイン)のものが用いられてもよく、天井面18A及び鴨居本体34の下面40Bの仕上りに合せ且つ意匠性を考慮した色調のものを用いてもよい。
これにより、鴨居30は、鴨居本体34と天井面18Aの間に配置されたスペーサ60が、鴨居本体34の側面40Cに取り付けたプレート38によって隠されると共に、プレート38の居室12内への露出部分(床22側から視認される部分)が化粧シート58によって覆われる。
次に第1の実施の形態の作用として、鴨居30(30A、30B)の取り付けを説明する。第1の実施の形態において、鴨居30の鴨居本体34には、矩形溝48が形成されており、矩形溝48に吊下げレール36が収納される。この鴨居本体34を天井18に取り付ける際には、鴨居本体34と天井面18Aとの間にスペーサ60を配置する。
スペーサ60は、鴨居本体34の長手方向の所定箇所(長手方向の両端部及び吊下げレール36の取付孔36Aに対応する箇所)に配置されて、各箇所において最下層のスペーサ60の下面が略面一になるようにスペーサ60の種類(厚さ)及び種類ごとの枚数が設定される。各箇所のスペーサ60の種類及び枚数(厚さごとの枚数)が設定されると、設定されたスペーサ60を重ねて両面テープ62Aによって仮止めする。この後、仮止めした各位置のスペーサ60をサラタッピングねじ62Bによって天井下地20A及び天井板20Bに固定して、スペーサ60を天井面18Aに配置する。
このようにして天井面18Aの複数箇所にスペーサ60を取り付けた後、各箇所のスペーサ60に跨るように鴨居本体34を架け渡して、タッピングねじ50によって鴨居本体34をスペーサ60と共に天井18に取り付ける。鴨居本体34の天井18への取り付けは、タッピングねじ50をスペーサ60、天井板20B及び天井下地20Aに捩じ込んで行われる。この際、スペーサ60が天井下地20A及び天井板20Bに固定されており、鴨居本体34は、このスペーサ60に固定されると共に、天井下地20A及び天井板20Bに固定される。これにより、天井梁等に支持手段を設けなくても、鴨居本体34及び吊下げレール36を強固に天井18に固定できるので、既に仕上がっている天井18に鴨居本体34及び吊下げレール36を強固に固定して、天井面18Aに配置できる。
次に、図5(A)及び図5(B)を参照しながら、鴨居本体34へのプレート38の取り付けを説明する。図5(A)には、天井18に取り付けられた鴨居本体34に合わせたプレート38の切り出しの概略が斜視図にて示され、図5(B)には、切り出したプレート38の鴨居本体34への取り付けの概略が斜視図にて示されている。
図5(A)に示すように、鴨居本体34に取り付けるプレート38には、鴨居本体34の上下方向寸法(上面40Aと下面40Bとの間隔寸法、厚さ)の2倍以上の幅を有する規格品の帯板材66が用いられる。この帯板材66は、一方の面が所定状態に仕上げられた仕上げ面66Aとされており、仕上げ面66Aがプレート38における仕上げ面38Aとされる。
帯板材66からのプレート38の切り出しは、帯板材66の仕上げ面66Aを鴨居本体34の一方の側面40Cに当てると共に、帯板材66の幅方向の上側の端面を天井面18Aに当てて、鴨居本体34に対して帯板材66を仮配置する。この状態で、鴨居本体34の下面40B(帯板材66が接する側面40Cと下面40Bとの間の角部分)に合わせた位置に、墨だし用筆記具68を用いて墨入れを行う(切り出し線を書き込む)。
次に、帯板材66を切り出し線に沿って切断することで、鴨居本体34の一方の側面40Cに用いるプレート38を切り出す。なお、鴨居本体34の他方の側面40Cのプレート38は、鴨居本体34の一方の側面40Cのプレート38を切り出した残りの帯板材66を用いて、同様の作業を行う。これにより、帯板材66から鴨居本体34の両側面40Cの各々に合わせた2枚のプレート38が得られる。
次に、図5(B)に示すように、プレート38の小口(帯板材66において切断した端面)を上側にして、プレート38を鴨居本体34に取り付ける。この際、鴨居本体34へのプレート38の取り付けに先立って、プレート38に化粧シート58を取り付けて、プレート38を化粧シート58により被覆する。
化粧シート58は、例えば、プレート38の小口側の裏面から仕上り面38Aを経て小口とは反対側の裏面に達するようにプレート38に巻き掛ける。これにより、鴨居本体34に取り付け状態で下側になるプレート38の端面を化粧シート58によって覆うことができると共に、プレート38の仕上り面38Aも化粧シート58によって覆うことができる。また、プレート38の下端面のみ覆う場合に比べて、被覆作業が極めて容易になると共に、被覆されていない部分が生じるのを防止できて、被覆作業の作業性を向上できる。
この後、プレート38の仕上り面38A(墨入れ時に鴨居本体34の側面40Cに当てた帯板材66の仕上り面66A)が、鴨居本体34の幅方向外側に向くようにプレート38を鴨居本体34の側面40Cに対向させ、プレート38の下端面が鴨居本体34の下面40Bと略面一になるようにして、プレート38の裏面を鴨居本体34の側面40Cに固着する。これにより、プレート38の小口が天井18側とされていると共に、小口が天井面18Aに接するか又は近接した状態で、プレート38が鴨居本体34に固定される。鴨居本体34の両側面40Cにプレート38が固定されることで、天井18に固定されて天井面18Aに配置された鴨居30が仕上げられる。
なお、鴨居本体34A、34Bでは、鴨居本体34Aの長手方向の一方(壁部14Aとは反対側)の端面が鴨居本体34Bの側面40Cに当接し、鴨居本体34Bの長手方向の一方(壁部14Bとは反対側)の端面が露出しているので、この端面にも、化粧シート58により被覆したプレート38を取り付ける。鴨居本体34Bの長手方向の端面に設けるプレート38は、鴨居本体34Bの長手方向の端面に合せて帯板材66から切り出して形成してもよい。また、鴨居本体34Bの長手方向端面は、鴨居本体34Aの和風空間28とは反対側の側面40Cと面一になる。ここから、鴨居本体34Aにおいて和風空間28とは反対側の側面40Cのプレート38を、鴨居本体34Bの長手方向端面を含めた長さにして帯板材66から切出すようにしてもよい。
また、プレート38の1枚の長さは、プレート38を取り付ける鴨居本体34の側面40Cと同じ略長さにしてもよい。この場合、1枚のプレート38によって鴨居本体34の一つの側面40C側を覆うことができるので、作業性を向上できる。また、鴨居本体34の側面40Cを長手方向に複数の領域に分割して、分割した領域の各々に合せてプレート38を切り出して、鴨居本体34の側面40C上において各プレート38を突き合わせて繋ぐようにしてもよい。この場合、各プレート38の長さを短くできるので、プレート38の取り扱い性を向上できて、鴨居本体34への取り付け作業を容易にできる。また、天井面18Aの湾曲が大きい場合には、プレート38を複数に分割することで、鴨居本体34に取り付けた際に、プレート38の上端(小口)と天井面18Aの隙間を狭めることができる。
また、鴨居本体34A、34Bの接続部分における出隅側及び入隅側においては、鴨居本体34A側のプレート38と鴨居本体34B側のプレート38の各々を面取りして、面取り面を突き合わせた留め加工を行うことが好ましい。また、鴨居本体34A、34Bの各々の縦枠42A、42B側においては、プレート38の端部を所定の形状で切落とし、切落とし部分と縦枠42A、42Bとの間の形状に合せた形状に形成したプレート38を、端部を切落としたプレート38と縦枠42A、42Bとの間に嵌め込んで留め加工を行うことが好ましい。これにより、プレート38の端部の仕上りを向上できて鴨居30A、30Bの意匠性を確保できる。
このようにして形成された鴨居30では、鴨居本体34と天井面18Aとの間にスペーサ60が設けられており、鴨居本体34と天井面18Aとの間の隙間がプレート38によって塞がれる。このため、鴨居本体34と天井面18Aとの間に挟んでいるスペーサ60をプレート38によって目隠し(隠蔽)できる。これにより、鴨居本体34と天井面18Aとの間に設けられたスペーサ60を見えなくできて、鴨居30の意匠性を確保できる。
また、プレート38を鴨居本体34の側面40Cに取り付ける際には、帯板材66から切り出したときの小口を天井面18A側にしている。このため、帯板材66において直線状に仕上がっている幅方向の端面を居室12内から見える下側にできるので、プレート38の下端面と鴨居本体34の下面40Bとが不揃いになるのを抑制できる。これにより、鴨居本体34の下面40B側の仕上がりを向上できて、鴨居30の意匠性を確保できる。しかも、帯板材66から切り出すことにより生じるプレート38の小口が、下側から視認し難い天井面18Aに向けられているので、小口が見え難くなって、鴨居の意匠性を確保できる。
また、プレート38の下端面が居室12内(床22側)から見えるが、プレート38の下端面は、化粧シート58によって覆われている。このため、プレート38の下端面の仕上りが鴨居30の意匠性を損ねることがないので、鴨居30の意匠性を確保できる。
さらに、鴨居30では、鴨居本体34の上面40Aと天井面18Aとの間に設けたスペーサ60により、鴨居本体34及び鴨居本体34の吊下げレール36を略水平にできる。このため、吊下げレール36に吊下げられている引戸32の位置が偏るのを抑制できる。即ち、吊下げレール36が傾斜していると、引戸32が傾斜下側に移動してしまうことがあるが、このような引戸32の移動を抑制できる。また、吊下げレール36が傾斜している場合、吊下げレール36の長手方向の一方向へ移動と他方向への移動とでは、引戸32の動きが異なることがあるが、鴨居30では、吊下げレール36を略水平にできるので、引戸32を吊下げレール36の長手方向の一方向及び他方向の各々に円滑に移動可能にできる。
また、鴨居30は、天井面18Aに配置されて取り付けられるので、既存の建物の天井や建築中の建物において既に仕上がった天井に取り付けることができる。この際、スペーサ60を用いることで、天井面18Aの状態(平面状態)に関わらず、鴨居本体34の長手方向を水平方向にできる。また、スペーサ60を設けることで、複数の鴨居本体34A、34Bが接続される際にも、鴨居本体34A、34Bの下面40Bが面一になるように調整できる。鴨居30では、これらのスペーサ60がプレート38によって隠されると共に、プレート38の露出部分(下端面)を化粧シート58により覆っている。このため、スペーサ60及びプレート38を設けた場合において、鴨居30の意匠性を確保できる。
〔第2の実施の形態〕
次に、図6及び図7を用いて、本発明の第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態の基本的構成は、前記した第1の実施の形態と同様であり、第2の実施の形態において第1の実施の形態と同様の機能部品については、第1の実施と同様の符号を付与し、その詳細な説明を省略する。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の鴨居30に代えて鴨居70が用いられおり、居室12には、鴨居30に代えて鴨居70が取り付けられ、鴨居70に設けられた引戸32によって和風空間28が仕切られる。図6には、第2の実施の形態に係る鴨居70の主要部が斜め下方から見た分解斜視図にて示されており、図7には、第2の実施の形態に係る鴨居70が断面図にて示されている。
鴨居70には、支持部材としての長尺で断面略矩形の鴨居本体72が設けられている。鴨居本体72は、MDF等が用いられて形成されており、厚さ方向(上下方向)の一方の面が天井面18Aに対向される上面74Aとされ、厚さ方向の他方の面が下側に向けられる下面74Bとされている。また、鴨居本体72の下面74Bには、矩形溝48が形成されており、鴨居本体72には、矩形溝48に吊下げレール36が挿入配置されている。
一方、鴨居本体72の幅方向両側には、段差部76が形成されており、段差部76は、鴨居本体72の上面74A側が断面矩形状に切り取られた形に形成されて、鴨居本体72の長手方向全域に渡って形成されている。これにより、鴨居本体72には、被覆部及び突部としての断面矩形状の突条部78が設けられており、突条部78は、下面74Bに沿って鴨居本体72の幅方向の外側に突出され、鴨居本体72の長手方向に筋状に延伸されている。鴨居本体72は、上面74A、下面74B及び突条部78の先端の表面78A(鴨居本体72の側面に対応する面)が仕上げ面として適切な所定の状態に仕上げられている。この鴨居本体72の表面の仕上げには、化粧シート(図示省略)が用いられてもよい。
鴨居本体72が取り付けられる天井面18Aには、鴨居本体72の長手方向の複数箇所においてスペーサ60が設けられており、鴨居本体72は、各箇所のスペーサ60に跨って架け渡されて天井18に取り付けられている。鴨居本体72に用いられるスペーサ60の幅寸法は、鴨居本体72の上面74Aの幅寸法(段差部76部分を除いた幅寸法)と同様に設定されるか僅かに短く設定されている。また、各箇所のスペーサ60は、下面が面一とされ、全体として略水平とされている。
天井18に取り付けられた鴨居本体72の段差部76の各々には、隠蔽部材としてのプレート80が配置されており、プレート80は、鴨居本体72においてプレート38に代えて設けられている。プレート80は、帯板状合板とされており、プレート80の厚さは、鴨居本体72の突条部78の突出長さ(段差部76の切欠き幅)と同様にされている。また、プレート80は、一方の表面が所定の状態に仕上げられた仕上げ面80Aとされている。なお、この仕上げ面80Aには、化粧シート58が用いられてもよい。
プレート80は、鴨居本体72の突条部78上面と天井面18Aとの間隔に略等しくなる幅寸法に加工される(例えば、帯板材から切り出される)。加工されたプレート80は、長手方向が鴨居本体72の長手方向(水平方向)に向けられると共に、幅方向が上下方向に向けられ、かつ、仕上げ面80Aが鴨居本体72とは反対側に向けられて、下側が鴨居本体72の段差部76に収められる。また、プレート80は、仕上げ面80Aが鴨居本体72の幅方向外側に向けられると共に、幅方向の一端が突条部78上面に当接され、幅方向の他端が天井面18Aに接するか又は近接された状態で接着剤等により鴨居本体72に固着される。
このように構成された鴨居70は、鴨居本体72の上面74Aと天井面18Aとの間に設けたスペーサ60により、鴨居本体72及び吊下げレール36を略水平に配置されている。このため、鴨居70では、吊下げレール36を略水平にできるので、引戸32を吊下げレール36の長手方向の一方向(引出し方向)及び他方向(引戻し方向)の各々に円滑に移動できる。
また、鴨居70では、鴨居本体72と天井面18Aとの間の隙間がプレート80によって隠される。このため、鴨居本体72と天井面18Aとの間に挟んでいるスペーサ60をプレート80によって目隠し(隠蔽)できるので、鴨居70の意匠性を確保できる。
また、鴨居本体72には、突条部78が形成されており、突条部78の上面にプレート80の下端面が当接されている。鴨居本体72からの突条部78の突出長さとプレート80の厚さとが同様とされているので、プレート80の仕上り面80Aと突条部78の表面78Aとを略面一にできる。このため、鴨居70の側面に凹凸が生じることがないので、鴨居70の意匠性を確保できる。
また、プレート80の下端面は、予め鴨居本体72に形成されている突条部78上面に当接されて、突条部78により隠される。このため、プレート80は、下端面にシート状の化粧材(例えば化粧シート58)等を設けて仕上げを行う必要がないので、鴨居70の取り付け(組み付け)を容易にできる。しかも、鴨居70の下端面は、鴨居本体72の下面74Bのみにより形成されるので、鴨居70の意匠性を確保できる。なお、プレート80の仕上り面80Aには、仕上り面80A及び鴨居70のデザイン性を考慮して設定したシート状の化粧材(例えば化粧シート58)を設けてもよく、これにより、鴨居70の意匠性を向上できる。
さらに、鴨居70においても前記した鴨居30と同様に、天井面18Aに配置されて取り付けられるので、既存の建物の天井や、建築中の建物において既に仕上がった天井に取り付けることができる。この際、鴨居70自体の意匠性を確保できると共に、鴨居70が設けられる居室12の意匠性を向上できる。
なお、以上説明した第1及び第2の実施の形態では、間隔調整部材として複数枚を重ねて所定の厚さを形成するスペーサ60を用い、スペーサ60を鴨居本体(30、70)の長手方向の複数個所に配置した。しかしながら、間隔調整部材の構成はこれに限るものではなく、間隔調整部材は、鴨居本体と天井面との間に配置されることで、鴨居本体を適正な所定の状態し得る構成であればよい。間隔調整部材は、鴨居本体の長手方向の複数個所に限らず1箇所に配置されてもよく、複数個所に配置されてもよい。また、間隔調整部材は、複数枚を重ねて所定の厚さにする構成に限らず、鴨居本体と天井面との間隔に合わせた厚さに加工される構成であってもよい。さらに、間隔調整部材は、スペーサ60に比して長いものであってもよく、長尺の間隔調整部材の厚さは、鴨居本体及び天井面と接する範囲において、鴨居本体の長手方向に沿う鴨居本体と天井面との間隔の変化に合せて長手方向の厚さを変化させてもよい。
また、第1及び第2の実施の形態では、居室12内において、二方を開放及び仕切るように鴨居30、70を設けた例を説明した。しかしながら、鴨居は、居室内において一方を開放及び仕切るように設けてもよく、三方や四方を開放及び仕切るように設けてもよい。即ち、第1及び第2の実施の形態では、鴨居30、70をL字状に配置したが、鴨居は、対向する二つの壁部を直線状に繋ぐように配置してもよく、コ字状や矩形状に配置してもよい。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、吊下げレール36を設け、建具としての引戸32を吊下げレール36に移動可能に支持した鴨居30、70を例に説明した。しかしながら、鴨居は、床面に設けられる敷居との間で建具を移動可能に保持する構成であってもよい。この場合、鴨居は、吊下げレールを収容する矩形溝48に代えて、建具の上かまち上部(縦かまち上端部、上縁上部)が案内されるあぜが形成されればよい。これにより、既存の天井においても、居室の一部を仕切る建具を設けるための鴨居の取り付けが容易になると共に、取り付けた鴨居が居室の美観を損ねるのを防止できる。