図1〜図2を参照して、本発明の製造方法により製造される第一の実施態様におけるリチウムイオン電池について説明する。図1は、本発明のリチウムイオン電池の製造方法により製造される第一の実施態様におけるリチウムイオン電池を示す斜視図、図2は図1に示す第一の実施態様におけるリチウムイオン電池がコネクタに接続された状態を示す断面図である。
本発明の製造方法により製造されるリチウムイオン電池Lは、図1に示すように、このリチウムイオン電池Lの外殻である外形略直方体状の電池外殻容器20(以下、単に容器20、外殻容器20と称することがある)を備える。容器20は、図1及び図2に示すように、その長手方向(図1において右手前から左後方に向かう方向)に2分割されて構成され、それぞれ一対の第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bとされている。図2に示されるように、容器20は中空に成型されており、この中空部分に後述するリチウムイオン電池Lの発電部1が収納されている。容器20の側部には、この容器20を第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとに分割する分割線が形成されており、第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bそれぞれの一端部(図1において右手前端部)には、容器20の内部にまで貫通する切欠部20c及び20dがそれぞれ形成されており、この切欠部20c及び20dを通じて発電部1が外部に露出している。
図2に示すように、第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの内面のうち切欠部20c及び20dと反対側の端部(図2において内部上面)を除く内面には、導電性高分子組成物からなる正極集電体7及び負極集電体8がそれぞれ配置されている。正極集電体7及び負極集電体8は、図2に示すように、切欠部20c及び20dにおいて露出する部分が他の部分(図2において第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの内面)よりも厚く成型されていることが好ましい。
第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとの間には略平板状のセパレータ4が配置され、これら第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとの間にある中空な空間を正極室2と負極室3とにそれぞれ区分している。そして、正極室2及び負極室3には、正極電極組成物及び負極電極組成物がそれぞれ充填され、それぞれ正極活物質層5及び負極活物質層6を形成している。
なお、正極電極組成物及び負極電極組成物は、それぞれ正極活物質粒子及び負極活物質粒子を含む組成物であり、それぞれ、更に電解液を含む組成物であることが好ましい。
正極活物質層5及び負極活物質層6が形成された第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとを一体化して封止することで、第1極集電体7、第1極活物質層5、セパレータ4、第2極活物質層6及び第2極集電体8を順に積層してなる発電部1と樹脂成形体からなる電池外殻容器20とを有する本実施態様のリチウムイオン電池Lが形成される。
なお、第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとの封止は、超音波溶着等により直接溶着されることで封止されてもよいし、シール部材を介して封止されてもよい。
また、正極集電体7及び負極集電体8からの電流引き出し効率を高める観点から、第1の分割容器20aと正極集電体7との間、及び第2の分割容器20bと負極集電体8との間に金属箔等の導電体層を形成してもよい。正極集電体7及び負極集電体8は導電性高分子組成物からなり、金属集電体に比較して導電率が高くない。このため、金属箔等の導電体層を形成することで電流引き出し効率が良好になる。
本発明の製造方法により製造されるリチウムイオン電池Lは、いわゆる電子機器に搭載される着脱自在なバッテリーであり、図2に示すように、充電用クレードルCに装着され、切欠部20c、20dを通じて露出している発電部1の正極集電体7及び負極集電体8がそれぞれ充電用クレードルCのコネクタ電極E1、E2にそれぞれ電気的に接触することで、リチウムイオン電池Lが充電される。
正極電極組成物が充填されることで形成される正極活物質層5は、正極活物質粒子と電解液とを含む非結着体であることが好ましく、同様に、負極電極組成物が充電されることで形成される負極活物質層6は、負極活物質粒子と電解液とを含む非結着体であることが好ましい。
ここで、本明細書において、「充填された」とは、正極活物質粒子及び負極活物質粒子が正極室2及び負極室3にそれぞれ収納されている状態を意味し、好ましくは、この正極活物質粒子と電解液とが正極室2に収納されており、負極活物質粒子と電解液とが負極室3に収納されている状態を意味する。正極室2に収納されている正極活物質粒子及び電解液並びに負極室3に収容されている負極活物質粒子及び電解液は、それぞれ正極活物質粒子又は負極活物質粒子と電解液とが均一に混合された状態であることが好ましい。
また、本明細書において、「非結着体」とは、既知のリチウムイオン電池の正極及び負極において従来のリチウムイオン電池において用いられる電極用バインダ等により活物質同士が相互に結着されていない正極活物質層5及び負極活物質層6であることを意味する。すなわち、正極活物質層5及び負極活物質層6に含まれる正極活物質粒子及び負極活物質粒子は、それぞれ外力に応じて移動できる状態であることを意味する。そのため、正極活物質粒子及び負極活物質粒子は、正極活物質層5及び負極活物質層6の変形に追従して移動することができるため、隣接する正極活物質粒子及び負極活物質粒子との電気的接続が切れることが無い。一方、従来のリチウムイオン電池は、活物質層の構造や導電ネットワークを保持するため、バインダを用いて電極活物質及び導電助剤等を相互に結着しているため、正極活物質粒子及び負極活物質粒子の移動が許容される状態にはない。
なお、非結着体である正極活物質層5及び負極活物質層6は流動性を有する性状であれば制限は無く、正極活物質層5及び負極活物質層6が正極活物質粒子又は負極活物質粒子と電解液との混合物である場合、その重量比によってゲル状、泥状、粘土状、粉体状、又はこれらに近い状態が含まれる。
本発明において、正極室2及び負極室3に正極電極組成物又は負極電極組成物が充填された状態にするには、正極活物質粒子又は負極活物質粒子を直接正極室2及び負極室3にそれぞれに入れてもよく、正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含む混合物である電極組成物(正極電極組成物又は負極電極組成物)を正極室2及び負極室3にそれぞれ入れることで行ってもよい。正極活物質粒子及び負極活物質粒子を直接正極室2及び負極室3に入れた場合、その後電解液を入れることで正極室2及び負極室3のそれぞれに正極電極組成物及び負極電極組成物が充填される。
正極活物質粒子及び負極活物質粒子を正極室2及び負極室3にそれぞれ充填する際には、容器20に振動及び衝撃を与えること等の操作を行い、正極活物質粒子及び負極活物質粒子を正極室2及び負極室3にそれぞれ均一に充填することが好ましい。
正極電極組成物は正極活物質粒子を含んでなり、正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2及びLiMn2O4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられる。
また、負極電極組成物は負極活物質粒子を含んでなり、負極活物質粒子としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリキノリン等)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi4Ti5O12等)等が挙げられる。
正極活物質粒子及び負極活物質粒子は、それぞれ表面の少なくとも一部が被覆用樹脂を含んでなる被覆剤で被覆されてなる被覆活物質粒子であることが好ましく、正極活物質粒子は、その表面の少なくとも一部が被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆剤からなる被覆層で被覆されてなる被覆正極活物質粒子であると、正極活物質層5の電子電導性がさらに良好となりより好ましい。なお、被覆負極活物質粒子が有する被覆層は導電助剤を含んでいても含んでいなくとも良く、特に負極活物質粒子として黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体、コークス類及び炭素繊維を用いる場合には、被覆剤が導電助剤を含まなくとも負極活物質層6は良好な電子電導性を有するが、導電助剤を含む被覆剤で被覆して負極活物質層6の電子電導性を調整しても良い。
なお、本発明において被覆とは、活物質粒子の表面の少なくとも一部に被覆剤が付着している状態を意味し、活物質粒子表面に被覆剤が点在している状態も含む。活物質粒子の表面に被覆剤が付着している状態は、走査型電子顕微鏡等を用いて得られた被覆活物質粒子の拡大観察画像を観察することで確認することができる。
正極活物質粒子及び負極活物質粒子の周囲が被覆用樹脂を含んでなる被覆剤で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨脹を抑制することができる。
被覆剤に含まれる被覆用樹脂としては、電解液を吸収して膨潤する樹脂を用いることができ、具体的な例としては、国際公開第2015/005117号に記載されたビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂及びポリカーボネート等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が好ましく、なかでもビニル樹脂が好ましい。
ビニル樹脂は、ビニルモノマー(a)を必須構成単量体とする樹脂であり、ビニルモノマー(a)としてカルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)及び下記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)を必須構成単量体とする樹脂であることが好ましい。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数4〜36の分岐アルキル基である。]
カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)としては、ビニル基含有モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸等]、ビニル基含有ジカルボン酸[(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等]等が挙げられ、これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味する。
ビニルモノマー(a1)は、アルカリ金属(ナトリウム及びリチウム等)との塩として用いることもできる。ビニルモノマー(a1)を塩で用いる場合、塩であるビニルモノマー(a1)を重合してもよく、樹脂を中和して塩にしてもよい。
上記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
R2は炭素数4〜36の分岐アルキルアルコールから水酸基を除いた残基であり、具体例としては、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−メチルノニル基、1−エチルオクチル基、1−メチルデシル基、1−エチルノニル基、1−ブチルエイコシル基、1−ヘキシルオクタデシル基、1−オクチルヘキサデシル基、1−デシルテトラデシル基、1−ウンデシルトリデシル基、iso−ブチル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルオクチル基、2−エチルヘプチル基、2−メチルノニル基、2−エチルオクチル基、2−メチルデシル基、2−エチルノニル基、2−ヘキシルオクタデシル基、2−オクチルヘキサデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルトリデシル基、2−ドデシルヘキサデシル基、2−トリデシルペンタデシル基、2−デシルオクタデシル基、2−テトラデシルオクタデシル基、2−ヘキサデシルオクタデシル基、2−テトラデシルエイコシル基及び2−ヘキサデシルエイコシル基等が挙げられ、好ましくは2−エチルヘキシル基及び2−デシルテトラデシル基である。
上記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)としては、(メタ)アクリル酸と前記の炭素数4〜36の分岐アルキルアルコールとを公知の方法でエステル化して得られるビニルモノマーが挙げられ、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましく、メタクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
また、ビニル樹脂の構成単量体としては、カルボキシル基又は酸無水物基を有するビニルモノマー(a1)及び上記一般式(1)で表されるビニルモノマー(a2)の他に、共重合性ビニルモノマー(a3)が含まれていてもよい。
共重合性ビニルモノマー(a3)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと(メタ)アクリレートとのエステル、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニルスチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。
導電助剤としては、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック、カーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブ等)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、ハードカーボン及びフラーレン等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、更に好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料及び樹脂材料等の非導電性材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたもの及び非導電性材料と導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)とを混合したもの等を用いてもよい。
導電助剤の形状に特に制限はなく、球状、不定形状、繊維状、単一粒子状、凝集体及びこれらの組み合わせ等の形状を有するものを用いることができ、なかでも、導電性等の観点から、一次粒子径が5〜50nmの微粒子の凝集体であることが好ましい。導電助剤の形状は、走査型電子顕微鏡等を用いて得られた導電助剤の拡大観察画像を観察し視野にある粒子を計測することで得ることができる。
導電助剤として導電性繊維を用いることも可能である。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、導電性物質を含む樹脂で有機物繊維の表面を被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
被覆活物質粒子は、例えば、活物質粒子を万能混合機に入れて30〜500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂及び必要により用いる導電助剤を有機溶剤に溶解、混合した樹脂溶液を1〜90分かけて滴下混合し、更に必要により用いる導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
前記の樹脂溶液に含まれる被覆用樹脂の割合は、樹脂溶液の重量に基づいて10〜50重量%が好ましい。樹脂溶液に用いる有機溶剤としては被覆用樹脂を溶解可能な有機溶剤を選択することができる。
被覆活物質粒子が得られたことは、走査型電子顕微鏡等を用いて得られた被覆活物質粒子の拡大観察画像を観察することで確認することができ、活物質粒子が有する表面の少なくとも一部に被覆用樹脂が付着していればよい。
正極室2及び負極室3に充填する正極電極組成物及び負極電極組成物は、活物質層が良好に形成できる等の理由から、それぞれ活物質粒子と電解液とを含んでなることが好ましい。活物質粒子と電解液とを含む場合、正極電極組成物及び負極電極組成物にそれぞれ含まれる正極活物質粒子又は負極活物質粒子の重量は、電解液の重量に基づいて10〜60重量%であることが好ましい。
電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられ、これらの電解質は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPF6である。
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水溶媒のなかでも、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、更に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、プロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)との混合液、及びエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合液である。
電解液に含まれる電解質の濃度は、電解液の容量に基づいて0.1〜3mol/Lが好ましく、0.5〜2mol/Lが更に好ましい。
本発明において正極活物質層5及び負極活物質層6は、イオン抵抗を低減できる等の観点からそれぞれ前記の被覆活物質粒子と繊維状導電性フィラーを含むことが好ましい。繊維状導電性フィラーとしては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
繊維状導電性フィラーは、イオン抵抗及び活物質層の強度等の観点から、平均繊維長が100〜1000μmが好ましく、110μm〜600μmが更に好ましく、150μm〜500μmが特に好ましい。平均繊維径は、0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることが更に好ましい。
正極活物質層5及び負極活物質層6に繊維状導電性フィラーを含む場合、繊維状導電性フィラーの割合は、活物質層に含まれる被覆活物質粒子の重量に基づいて0.5〜5重量%であることが好ましい。
正極活物質層5及び負極活物質層6に繊維状導電性フィラーを含む場合、正極室2及び負極室3のそれぞれに、正極活物質粒子と繊維状導電性フィラーと電解液とを含む正極電極組成物及び負極活物質粒子と繊維状導電性フィラーと電解液とを含む負極電極組成物をそれぞれ充填して正極活物質層及び負極電極層を形成することができる。
セパレータ4としては、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)等の炭化水素系樹脂及びポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)製の多孔性フィルム、多孔性フィルムの多層フィルム(例えば、PP/PE/PPの3層構造をした積層体等)、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)及びガラス繊維等からなる不織布並びにそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用セパレータ等を用いることができる。
セパレータ4の厚みは、リチウムイオン電池の用途により調整することができるが、携帯機器等の電子機器等の用途においては、単層あるいは多層で好ましくは5〜100μmであり、更に好ましくは10〜50μmである。
前記多孔性フィルム又はその多層フィルムからなるセパレータ4の細孔径は、最大の細孔径が1μm以下であることが好ましい。不織布を用いる場合、セパレータ4の厚さは、好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは10〜100μmである。
正極集電体7及び負極集電体8は導電性高分子組成物からなる集電体(樹脂集電体ともいう)である。樹脂集電体を構成する高分子材料は、導電性高分子であってもよいし、導電性を有さない高分子材料に導電性を付与した高分子組成物であってもよい。
導電性高分子材料としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル及びポリオキサジアゾール等が挙げられる。なお、導電性の高分子材料を含む樹脂集電体の導電性を向上させる目的から、更に後述する導電性フィラーを含むことができる。
導電性を有さない高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
導電性を有さない高分子材料としては、電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、更に好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
導電性を有さない高分子材料に導電性を付与した高分子組成物は、導電性を有さない高分子材料と導電性フィラーとを混合することで得ることができる。導電性フィラーは、導電性を有する材料から得られるフィラーから選択される。好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から得られるフィラーを用いるのが好ましい。イオンに関して伝導性を有さない材料としては、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケル及びステンレス(SUS)等の合金材等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料又はニッケルから得られるフィラー、より好ましくはカーボン材料から得られるフィラーである。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。導電性フィラーの形状は粒子状、繊維状及びこれらの凝集体のいずれの形状であってもよい。導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料等の導電性を有さない微粒子の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
樹脂集電体は、日本国特許公開第2012−150905号公報及び国際公開第WO2015/005116号等に記載の公知の方法で得ることができ、具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5〜30部分散させて導電性を付与したもの等が挙げられる。また、樹脂集電体の厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
樹脂集電体からの電流引き出し効率を高めるために、分割容器と集電体との間に導電体層を形成することができる。導電体層としては樹脂集電体よりも面方向の導電性が高い材料であれば制限無く用いることができ、面方向の導電性が高い材料としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの一種以上を含む合金並びにステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属を用いることができ、なかでも銅、ニッケル、アルミニウム及びチタンを好ましく用いることができる。導電体層は、これらの金属からなる箔及びフィルムを用いても良く、分割容器と集電体との間に境地の条件によるスパッタ及び蒸着等によって成膜してもよい。
樹脂集電体は外殻容器20の内方に配置されてなるが、耐久性等の観点から、外殻容器20と一体に形成されていることが好ましく、樹脂成形体である外殻容器20の内方に成形型を用いて導電性高分子組成物を溶融成形して集電体を成型する方法等により一体に成型することができる。
第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとは、シール部材を用いて一体化して封止することができ、シール部材としては、正極集電体7及び負極集電体8に対して接着性を有し、かつ電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されず、公知のリチウムイオン電池用のシール剤を用いることができ、なかでも熱硬化性樹脂を主成分とするシール剤が好ましい。シール部材としては、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニデン樹脂等を主成分とするシール剤が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂を主成分とするシール剤が好ましい。
シール部材は、平面状の基材の両面に上述の熱硬化性樹脂等を塗布して両面テープ状にしたシール剤及び公知のシールフィルム等を用いたものが好ましい。シールフィルムとしては、三層構造のシールフィルム(ポリエチレンナフタレートフィルムの上下に変性ポリプロピレンフィルムを積層したフィルム等)等を好ましく用いることができる。シール部材はインパルスシーラー等の公知のシール装置を用いて加熱圧着することで容器を封止することができる。
容器20(第1の分割容器20a、第2の分割容器20b)は樹脂成形体からなり、樹脂成形体は、有機高分子を公知の成型機を用いて成型することで得ることができる。有機高分子としては、容器20内に正極活物質層5及び負極活物質層6を収納しうる空間を形成可能な有機高分子であれば、任意の有機高分子が好適に適用可能である。但し、電極組成物と容器20とが接触する可能性があることを考慮して、容器20を構成する材料は絶縁性を有する有機高分子であることが好ましい。
樹脂成形体に用いる有機高分子としては、前記の導電性を有さない高分子材料、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフタルアミド樹脂(PPA)、ポリフタルアミド樹脂及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
樹脂成形体である容器20は、その内部又は外方に金属層を有することが好ましい。樹脂成形体の内部又は外方に金属層を有すると容器の内部にある発電部が吸湿することを防止でき、充放電特性の低下を防止することができ好ましい。樹脂成形体の内部又は外方に金属層を有する場合、金属層は樹脂成形体の全面に設けられることが好ましい。金属層を形成する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの一種以上を含む合金並びにステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属を用いることができ、なかでもアルミニウムを好ましく用いることができる。金属層は、これらの金属からなる箔及びフィルムを樹脂成形体の内部又は外方に配置する方法及びこれらの金属からなる薄膜を樹脂成形体の内部又は外方にスパッタ及び蒸着等によって成膜する方法等で設けることが出来る。
樹脂成形体は、加熱溶融した前記の有機高分子を成形型に入れて成型する方法及び有機高分子から構成されたフィルムを成形型に入れて成型する方法等の公知の成型方法で得ることができる。樹脂成形体がその外方に金属層を有する場合、成型した樹脂成形体の外方に金属箔又は金属フィルムを積層する方法、成形型内で樹脂成形体の外方に金属箔又は金属フィルムを一体成型する方法(インサート成型)及び樹脂成形体の外方に金属薄膜をスパッタ及び蒸着等によって成膜する方法によって金属層を形成することができる。樹脂成形体がその内部に金属層を有する場合、成形型内で樹脂成形体の内面に金属箔を配置等して金属層を設けた後、更にその上に加熱溶融した前記の有機高分子を入れて成型する方法等で金属層を形成することができる。樹脂成形体がその内部に金属層を有する場合、樹脂成形体としては、金属層の上下を高分子材料で狭持した高分子フィルムを成形型に入れて成型した成形体であってもよい。
次に、図3及び図4を参照して、本発明のリチウムイオン電池の製造方法について説明する。図3は本発明の第一の実施態様におけるリチウムイオン電池の製造方法の一工程を示す断面図、図4は第一の実施態様におけるリチウムイオン電池の製造方法の工程を示す図である。
まず、成形型を用いて有機高分子を第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bに成型し、次いで、成型された第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの内方に、成形型を用いて正極集電体7及び負極集電体8を成型する集電体成型工程を行う。
集電体成型工程は、第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの成型と連続して行ってもよく、予め成型された第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bに対して集電体成型工程を行ってもよい。
本発明の製造方法において、集電体成型工程を容器の成型と連続して行う場合、図3に示す二色成型工程により、第1の分割容器20aと第2の分割容器20b及び正極集電体7と負極集電体8を連続して成型することができる。
図3において、30は、第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bの外面形状に対応する複数(図示例では2つ)の凹部30a及び30bを備える第1の金型であり、この第1の金型30は、回転自在なターンテーブル31に固定されている。32は、第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bの内面形状に対応する第1の凸部32a及び正極集電体7又は負極集電体8の内面形状に対応する第2の凸部32bをそれぞれ備える第2の金型である。
従って、凹部30aと第1の凸部32aとの間には、第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bに対応する空隙33が形成される。凹部30bと第2の凸部32bとの間には、第1の分割容器20a又は第2の分割容器20b及び正極集電体7又は負極集電体8に対応する空隙34が形成され、その内方に第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bが配置された状態にある空隙34を用いて正極集電体7又は負極集電体8が成型される。
図3において、第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bを形成する有機高分子を加熱溶融等して流動状態で保持する注入器35が空隙33に連通して設けられ、正極集電体7又は負極集電体8となる導電性高分子組成物を加熱溶融等して流動状態で保持する注入器36が空隙34に連通して設けられている。
有機高分子の溶融温度よりも低い温度に以下に保った金型に注入器35から有機高分子を流動状態のまま注入する外殻容器成型工程を行うと、空隙33内で有機高分子が固化し、この空隙33に沿った形状を有する第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bが成型される。その後、ターンテーブル31を回転して第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bが成型された凹部を第2の凸部32bと組み合わせて、注入器36から空隙34内に導電性高分子材料を流動状態のまま注入する集電体成型工程を行うと、空隙34には既に第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bが成型されていることから、この空隙34内で第1の分割容器20a又は第2の分割容器20bと正極集電体7又は負極集電体8とが一体に成型される。
図3においては、2つある凹部30aに対してターンテーブル31を180度回転しながら外殻容器成型工程と集電体成型工程とを順に行う外殻容器成型工程と集電体成型工程とを連続して行うことができる。
なお、第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの成型後、正極集電体7又は負極集電体8の成型工程に先立って、第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの内面に金属箔等の導電体層を配置してもよい。第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの内面に導電体層を配置する場合、第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの成型後に第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bが有する表面のうち、正極集電体7又は負極集電体8を成型する面を露出させ、露出面に金属層を設けた後、再び金型に収納してから正極集電体7又は負極集電体8の成型を行うこと等によって導電体層を設けることができる。
次いで、図4の(a)及び(d)にそれぞれ示すように、内面に正極集電体7又は負極集電体8が成型された第1の分割容器20a及び第2の分割容器20b内に、正極電極組成物又は負極電極組成物をそれぞれ充填する電極組成物充填工程を行う。正極電極組成物及び負極電極組成物を第1の分割容器20a及び第2の分割容器20b内にそれぞれ充填する手法に限定はなく、一例として、正極電極組成物及び負極電極組成物が格納されたタンクからノズルを介して充填する手法や、インクジェット装置により第1の分割容器20a及び第2の分割容器20b内に正極電極組成物及び負極電極組成物をそれぞれ充填する手法等の周知の手法が好適に適用される。
なお、内面に正極集電体7又は負極集電体8が成型された第1の分割容器20a及び第2の分割容器20b内にそれぞれ充填する正極電極組成物及び負極電極組成物の量は、少なくとも第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bが有する凹部が正極電極組成物及び負極電極組成物によりそれぞれ充満される量であり、正極電極組成物及び負極電極組成物が、凹部から若干盛り上がる程度の量であることが好ましい。
次いで、図4の(b)に示すように、正極電極組成物又は負極電極組成物が充填された第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bのいずれか一方(図示例では第1の分割容器20a)の上面に平板状のセパレータ4を配置し、図4の(c)に示すように、正極電極組成物及び負極電極組成物のいずれか一方(図示例では正極電極組成物)の上面をセパレータ4で覆う。この際、上述のように正極電極組成物又は負極電極組成物を第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bの凹部から盛り上がる程度の量だけ充填した場合、セパレータ4の上面をローラで押さえながらこのセパレータ4を配置することで、正極電極組成物又は負極電極組成物を均等な厚さにすることが好ましい。
次いで、図4の(e)に示すように、第1の分割容器20a及び第2の分割容器20bのいずれか(図示例では第1の分割容器20a)を上下逆転させて、第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとを相対向するように配置し、更に、好ましくは、第1の分割容器20a内及び第2の分割容器20b内を脱気し、図4の(f)に示すように、第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとを超音波溶着等により直接溶着して封止し、あるいは、シール部材により封止して一体化工程を行うことで、図1及び図4の(g)に示すようなリチウムイオン電池Lを得ることができる。
以上のような構成の本発明の製造方法により製造されるリチウムイオン電池Lによれば、内方に樹脂集電体を成型した樹脂成形体からなる外殻容器20を用いているので、高容量化と軽量化の両立が可能なリチウムイオン電池Lを提供することができ、射出成型等の周知の成型技術を用いて従来の製造方法と比較して容易かつ高い生産性でリチウムイオン電池の製造が可能となる。加えて、正極集電体7及び負極集電体8を外殻容器20と一体に成型しているので正極集電体7及び負極集電体8の強度が向上し、リチウムイオン電池の耐久性を向上させることができる。更に第1の分割容器20a、第2の分割容器20b、正極集電体7及び負極集電体8を二色成型等の多色成型技術により成型している場合には、成型工程の簡略化が図れるとともに、生産性の向上を図ることができる。
次に、図5を参照して、本発明の製造方法により製造される第二の実施態様におけるリチウムイオン電池L’について説明する。図5は、本発明の製造方法により製造された第二の実施態様におけるリチウムイオン電池L’を示す一部破断斜視図である。なお、以下の説明において、上述の本発明の第一の実施態様におけるリチウムイオン電池Lと略同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
第一の実施態様におけるリチウムイオン電池Lと上述の第二の実施態様におけるリチウムイオン電池L’との最も大きい相違点は、分割容器の形状にある。すなわち、図5に示すように、リチウムイオン電池L’の容器20は、外形略直方体状の中空部材の、図5において上面を取り除いた形状の第2の分割容器20fと、この第2の分割容器20fの上面を覆う平板状の第1の分割容器20eとから構成されている。
また、図5及び図6に示すように、第1の分割容器20e及び第2の分割容器20fの一部には切欠部20g及び20h(図5には切欠部20gのみ図示している)が形成されており、この切欠部20g及び20hを通じて発電部1が外部に露出している。
次に、図6を参照して、本発明の製造方法であって、第二の実施態様におけるリチウムイオン電池L’の製造方法について説明する。図6は、第二の実施態様におけるリチウムイオン電池L’の製造方法の工程を示す図である。
まず、型を用いて第1の分割容器20e及び第2の分割容器20fを成型し、次いで、成型された第1の分割容器20e及び第2の分割容器20fの内方に、同様に型を用いて正極集電体7及び負極集電体8を成型する集電体成型工程を行う。成型工程の詳細は、上述の第一の実施態様におけるリチウムイオン電池Lにおける成型工程と略同一であるので、ここでの説明は省略する。
次いで、図6の(a)に示すように、内面に負極集電体8が成型された第2の分割容器20f内に負極電極組成物を充填して負極活物質層6を形成し、次いで、図6の(b)に示すように、負極電極組成物の上面にセパレータ4を形成し、更に、図6の(c)に示すように、第2の分割容器20f内で形成されたセパレータ4の上に更に正極電極組成物を充填して正極活物質層5を形成する電極組成物積層工程を行う。正極電極組成物及び負極電極組成物を第2の分割容器20f内に充填する手法の詳細については、上述の第一の実施態様におけるリチウムイオン電池Lの製造方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
負極電極組成物の上面に形成するセパレータ4としては、正極活物質層5と負極活物質層6とを絶縁することができ、かつ電解液を透過できる多孔性の絶縁層を形成できれば、その材料及びその形成方法に制限はなく、上述のリチウムイオン電池Lの製造方法と同様に、平板状のセパレータ4を負極電極組成物の上面に配置する方法、加熱溶融及び有機溶剤に溶解等して流動状態にある炭化水素系樹脂及びポリオレフィン等を負極電極組成物の上面に塗布して平板状の多孔膜を形成する方法、及び絶縁性粒子を負極電極組成物の上面に積層して絶縁性多孔質層を形成する方法等を適用することができる。なお、絶縁性粒子としては、前記の導電性を有さない高分子材料からなる微粒子及び無機酸化物微粒子(好ましくは、酸化アルミニウム及び二酸化珪素)等を用いることができる。
次いで、図6の(d)に示すように、第2の分割容器20fの上面を覆うように、正極集電体7が成型された第1の分割容器20eを配置し、図6の(e)に示すように、第1の分割容器20eと第2の分割容器20fとを超音波溶着等により直接溶着して封止し、あるいは、シール部材により封止する一体化工程を行うことで、図5及び図6の(f)に示すようなリチウムイオン電池L’を得ることができる。
第二の実施態様におけるリチウムイオン電池L’は内方に樹脂集電体を成型した樹脂成形体からなる外殻容器20を用いているので、上述の第一の実施態様におけるリチウムイオン電池Lと略同一の効果を奏することができる。
次に、図7〜図9を参照して、本発明の製造方法により製造される第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’について説明する。図7は、本発明の製造方法により製造された第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’を示す一部破断斜視図、図8は図7に示す第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’を示す分解図、図9は図7に示す第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’を示す断面図である。
図7及び図8に示すように、第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’の容器20は、中空状の有底円錐台形に成型された第1の分割容器20jと、この第1の分割容器20jの開口部を覆う蓋である略円形板状の第2の分割容器20kとから構成されており、容器20は樹脂成形体である。
図8に示すように、第1の分割容器20jの内部には、枠体11により周囲が支持されたセパレータ4が配置され、このセパレータ4により第1の分割容器20jが正極室2及び負極室3に区分される。
第1の分割容器20jの内面には、図7及び図8に示す様に上下方向に延びる溝12が形成され、第2の分割容器20kの下面には、図8に示す様にその直径方向に延びる溝13が形成され、これら溝12及び溝13に枠体11が嵌合されることで、セパレータ4が第1の分割容器20j及び第2の分割容器20kにより形成される空間内に固定されている。なお、第2の分割容器20kには、図8に示されるように、溝12に向かって延出する凸部14が形成され、これにより、第1の分割容器20j及び第2の分割容器20kにより形成される空間の気密性が確保されている。
第1の分割容器20jの内面には、この内面に沿うように、略半円錐台形の正極集電体7及び負極集電体8が相対向した状態で、それぞれ成型されている。そして、図9に示すように、正極電極組成物及び負極電極組成物が正極室2及び負極室3にそれぞれ充填されることで、第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’が構成されている。
より詳細には、第2の分割容器20kには、図8〜図9に示すように、正極室2及び負極室3にそれぞれ連通する貫通孔15及び貫通孔16が形成されており、これら貫通孔15及び貫通孔16から正極電極組成物及び負極電極組成物がそれぞれ正極室2及び負極室3にそれぞれ充填され、更に貫通孔15及び貫通孔16に栓17及び栓18が挿入されることで、これら正極室2及び負極室3が封止されている。
正極集電体7及び負極集電体8には、図8に示されるように、その上部に第1の分割容器20jの内方に膨出する膨出部7a及び膨出部8aがそれぞれ形成されている。これら膨出部7a及び膨出部8aの上端部はそれぞれ正極集電体7及び負極集電体8の上端を超え、更に第2の分割容器20kの上面を超えてこの第2の分割容器20kの上面から露出されている。そして、この膨出部7aの上面7b及び膨出部8aの上面8bが、第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’から電流を取り出すための電極端子とされる。この膨出部7a及び膨出部8aに対応して、第2の分割容器20kには切欠部19が形成されている。
なお、第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’において、第2の分割容器20kは、前述の二色成型技術及び後述する三色成型技術等の樹脂成型技術により成型される必要はないので、有機高分子以外の材料によって形成されてもよく、その形成方法は成型技術を用いた方法に限定されない。
第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’は、一例として図13に示すように、ロボットの腕A等の内部に空間を有する構造体の内部に収納され、電極端子7b及び電極端子8bから取り出された電流によりこの構造体を駆動すること等に好ましく用いることができる。
次に、図10〜図12を参照して、本発明の製造方法により製造される第三の実施態様におけるリチウムイオン電池の製造方法について説明する。図10は、本発明の製造方法による第三の実施態様におけるリチウムイオン電池の製造において行う一工程を上面視したときの図、図11は本発明の製造方法による第三の実施態様におけるリチウムイオン電池の製造において行う図10で示した一工程を示す断面図、図12は本発明の製造方法における第三の実施態様を有するリチウムイオン電池の製造において更に行う別の工程を示す断面図である。
まず、型を用いて第1の分割容器20jを成型し、次いで、成型された第1の分割容器20jの内方に、同様に型を用いて正極集電体7及び負極集電体8を順次成型する。
図10及び図11に示すように、三色成型工程により空隙45に第1の分割容器20jを成型し、引き続き空隙46と空隙47とに正極集電体7及び負極集電体8をそれぞれ成型する。
図11に示すように、40は、第1の分割容器20jの外面形状に対応する凹部40aを備える第1の金型であり、本実施態様では、図10に示すように、第1の金型40が3つ用意されている。これら第1の金型40は、回転自在なターンテーブル41に固定されることで回転自在とされている。
42は第1の分割容器20jの内面形状に対応する第1の凸部42aを備える第2の金型、43は正極集電体7の内面形状と第1の分割容器20jの内面形状とを連ねた内面形状に対応する第2の凸部43aを備える第3の金型、44は正極集電体7の内面形状、負極集電体8の内面形状、及び第1の分割容器20jの内面形状を連ねた内面形状に対応する第3の凸部44aを備える第4の金型である。
従って、凹部40aと第1の凸部42aとの間には、第1の分割容器20jに対応する空隙45が形成され、凹部40aと第2の凸部43aとの間には、第1の分割容器20a及び正極集電体7に対応する空隙46が形成され、凹部40aと第3の凸部44aとの間には、第1の分割容器20a、正極集電体7及び負極集電体8に対応する空隙47が形成される。
この空隙45に連通して、第1の分割容器20jを成型する有機高分子を加熱溶融等して流動状態で保持する注入器48が設けられ、また、空隙46に連通して、正極集電体7を成型する導電性高分子組成物を加熱溶融等して流動状態で保持する注入器49が設けられ、更に、空隙47に連通して、負極集電体8を成型する導電性高分子組成物を加熱溶融等して流動状態で保持する注入器50が設けられている。
図11の(a)に示すように、注入器48から空隙45内に有機高分子を流動状態のまま注入すると、第1の金型40及び第2の金型42が有機高分子の溶融温度よりも低い温度に保たれていることから、この空隙45に沿った形状を有する第1の分割容器20jが成型される。
続いて、図11の(b)に示すように、第2の金型42を第3の金型43に変更し、空隙46内に導電性高分子組成物を流動状態のまま注入すると、空隙46のうち空隙45に対応する部分には第1の分割容器20jが成型されていることから第1の分割容器20jと正極集電体7が空隙46内で一体に成型される。
更に、図11の(c)に示すように、第3の金型43を第4の金型44に変更し、空隙47内に導電性高分子組成物を流動状態のまま注入すると、空隙47のうち空隙45に対応する部分には第1の分割容器20jが成型されていることから、第1の分割容器20jと負極集電体8が空隙47内で一体に成型される。
図10に示す様に、ターンテーブル41を120度回転しながら上述の注入工程を繰り返し行い、外殻容器成型工程と集電体成型工程とを連続して行うことで、正極集電体7及び負極集電体8が内面に成型された第1の分割容器20jを三色成型技術により成型することができる。
なお、第1の分割容器20jの成型後、第1の分割容器20jの内面に正極集電体7及び負極集電体8を成型する工程に先立って、第1の分割容器20jの内面に金属箔等の導電体層を配置してもよい。
次いで、図12に示すように、内面に正極集電体7及び負極集電体8が成型された第1の分割容器20jの上面に第2の分割容器20kを配置した後、第1の分割容器20jに形成された正極室2及び負極室3に、第2の分割容器20kに形成された貫通孔15及び貫通孔16を通じて正極電極組成物及び負極電極組成物をそれぞれ充填する。正極電極組成物及び負極電極組成物を充填する手法に限定はないが、図12においては正極電極組成物及び負極電極組成物がそれぞれ格納されたタンク51からノズル52を介して充填する手法を採用している。なお、タンク51及びノズル52は、正極用と負極用との2つがあり、それぞれ貫通孔15及び貫通孔16に接続されている。そして、正極室2及び負極室3にそれぞれ正極電極組成物及び負極電極組成物を充填したあと、貫通孔15及び貫通孔16を栓17及び栓18でそれぞれ封止することにより、第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’を製造することができる。
第三の実施態様におけるリチウムイオン電池L’’は内方に樹脂集電体を成型した樹脂成形体からなる外殻容器20を用いているので、上述の第一の実施態様におけるリチウムイオン電池Lと略同一の効果を奏することができる。
次に、図14を参照して、上述の図12に示す工程の変形例について説明する。図14は、上述の図12に示す工程の変形例を示す断面図である。
上述の図12に示した工程と図14に示す工程は、正極室2及び負極室3のそれぞれに電極組成物を充填する充填工程であるが、その方法が異なる。すなわち、図14に示す工程では、正極室2及び負極室3のそれぞれに電極組成物を充填する充填工程が、少なくとも、正極室2及び負極室3のそれぞれに活物質粒子と液体を含む混合物を注入する注入工程と、注入工程で注入された混合物に含まれる液体の少なくとも一部を排出孔60及び排出孔61のそれぞれに設けられた分離膜を通して正極室2及び負極室3から排出する排出工程と、を含んでいる。
この排出工程を実現可能にするために、第1の分割容器20jの図14において底面には、正極室2及び負極室3から外部に連通する排出孔60及び排出孔61がそれぞれ設けられているとともに、この排出孔60及び排出孔61の孔内には活物質粒子と液体とを分離可能な分離膜62及び分離膜63が配置されており、正極室2及び負極室3にそれぞれ注入された混合物に含まれる液体は必ず分離膜62及び分離膜63を通過して外部へ出るようになっている。
分離膜62及び分離膜63は、活物質粒子と液体とを分離可能な部材であれば特に制限なく用いることができるが、セパレータ4と同種の素材で形成された部材であることが好ましい。正極室2及び負極室3のそれぞれに電極組成物を充填する場合、取り扱い性等の観点から、電極組成物は活物質粒子と電解液とを含み高い流動性を有する状態(例えばスラリー状)であることが好ましく、この分離膜62及び分離膜63を通過させることによって、電極組成物に含まれる活物質粒子を正極室2及び負極室3内に残したまま、電極組成物に含まれる過剰の液体を正極室2及び負極室3から排出することができる。電極組成物に含まれる過剰の電解液が正極室2及び負極室3から排出されることによって、正極室2及び負極室3に注入された電極組成物に含まれる活物質粒子の割合を上げることができ、取り扱い性と電池性能の両立が可能となる。
以下、本実施態様で正極室2に正極電極組成物を充填する工程について、詳しく説明する。なお、負極室3に負極電極組成物を充填する工程についても、以下に説明する工程と同様の工程によって実現される。
まず、第2の分割容器20kに形成された貫通孔15を通じて正極活物質粒子と電解液を含んだスラリー状正極電極組成物(正極活物質スラリーともいう)を注入する。正極活物質スラリーを正極室2に注入する手法に限定はないが、図14において正極電極組成物が格納されたタンク51からノズル52を経て充填する手法を採用している。
ここで、正極室2に注入される正極活物質スラリーは、その中に含まれる正極活物質粒子の割合が、注入後に電解液の一部を排出して正極室2内に充填された正極電極組成物に含まれる正極活物質粒子の割合よりも低くなるように調製されている。
その後、正極室2に注入された正極活物質スラリーに含まれる電解液の一部を排出孔60から排出する。排出する方法としては、正極室2の内部を加圧する方法、及び真空ポンプ等を用いて排出孔60から吸引する方法等を用いることができる。図14に記載の方法では、排出孔60には排出管64が挿入されており、この排出管64経由で電解液が排出される。
正極室2に注入する正極活物質スラリーは、活物質粒子及び必要により用いる導電助剤を電解液に分散して得ることができ、正極活物質スラリーに含まれる活物質粒子及び必要により用いる導電助剤の合計重量は正極活物質スラリーの重量合計に基づいて1〜50重量%(好ましくは5〜30重量%)であることが好ましい。正極室2に注入された正極活物質スラリーは、排出工程を経て活物質粒子を電解液の重量に基づいて30〜80重量%(好ましくは30〜60重量%)の濃度で含んだ正極電極組成物とすることが好ましい。
なお、上述した排出工程において電解液の一部を正極室2から排出した後、必要に応じて活物質粒子と電解液を含んだ正極活物質スラリーを更に貫通孔15から注入してもよい。この場合、新たに注入する正極活物質スラリーに含まれる活物質粒子の割合は、最初に注入する正極活物質スラリーに含まれる活物質粒子の割合とは異なってもよい。
注入工程及び排出工程によって正極電極組成物を正極室2に充填した後は、例えば第1の分割容器20jに振動及び衝撃等を与える等して、正極室2内の活物質粒子と電解液とが均一に混合された状態とすることが好ましい。その後、排出管64を取り外し、正極室2内を減圧脱気して、シール部材等を用いて排出孔60を封止する。
排出孔60の封止に用いるシール部材を構成する材料としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されず、前記の第1の分割容器20aと第2の分割容器20bとの封止に用いる材料と同じ材料を用いることができ、好ましい材料も同じである。排出孔60の封止は、これらの材料を主成分とするシール剤を排出孔60に充填することで行うことができる。
前述したように、負極室3内への負極電極組成物の充填も、以上説明した正極電極組成物を正極室2に充填する工程と同様の工程によって実現される。すなわち、まず負極活物質粒子と電解液とを含むスラリー状負極電極組成物(負極活物質スラリーともいう)を貫通孔16から負極室3内に注入し、次いで、注入された負極活物質スラリーに含まれる電解液を、分離膜63を通して排出孔61及び排出管65から排出する。その後、排出管65を取り外し、負極室3内を減圧脱気し、シール部材等を用いて排出孔61を封止する。
なお、正極室2内に正極電極組成物を充填する工程と、負極室3内に負極電極組成物を充填する工程とは、別々に行っても同時に行ってもよい。なかでも、正極室2内への正極活物質スラリーの注入と、負極室3内への負極活物質スラリーの注入とを同時に行うと、セパレータ4に対して均等に圧力がかかり、セパレータ4の破損等を防止することができ好ましい。
第三の実施態様におけるリチウムイオン電池の製造方法によれば、液体の割合が大きく、粘度の低い活物質スラリーを注入するので、活物質スラリーの取り扱いが容易であり、正極室2及び負極室3の形状にかかわらず容易に活物質スラリーを注入することができる。その後、活物質スラリーに含まれる液体を正極室2及び負極室3からそれぞれ排出することで、電極組成物に含まれる活物質粒子の割合を好ましい値に調整することができ、取り扱い性と電池性能の向上を両立することができる。
なお、第三の実施態様におけるリチウムイオン電池の製造方法は以上説明したものに限られない。例えば、以上の説明では電解液を含む正極活物質スラリーを正極室2に注入することとしたが、正極室2に注入する活物質スラリーは、正極活物質粒子及び必要により用いる導電助剤を非水溶媒に分散した混合物を用いることもできる。
正極活物質粒子及び必要により用いる導電助剤を非水溶媒に分散した混合物を用いた場合、非水溶媒の大部分を排出孔60から排出し、その後、非水溶媒と電解質とを含んだ電解液を、排出した非水溶媒の代わりに貫通孔15から注入することによっても、活物質スラリーに含まれる活物質粒子の割合を好ましい値に調整することができ、取り扱い性と電池性能の向上を両立することができる。
負極室3に負極電極組成物を充填する際にも、同様に負極活物質粒子を非水溶媒に分散した混合物を注入し、排出工程で非水溶媒を排出した後、あらためて電解液を貫通孔16から注入して負極電極組成物を充填してもよい。
また、以上の説明では分離膜62及び分離膜63は排出管64及び排出管65に固定され、排出工程の終了後に排出管64及び排出管65とともに取り外されることとした。しかしながら分離膜62及び分離膜63は、第1の分割容器20jの排出孔60及び排出孔61に対して直接固定され、リチウムイオン電池の完成後も第1の分割容器20jに固定されたまま電池内に残ることとしてもよい。
次に、図15を参照して、本発明のリチウムイオン電池の製造方法において、更に実施することができる別の一工程について説明する。図15は、更に実施することができる別の一工程による効果を示す断面図である。
本発明のリチウムイオン電池の製造方法では、更に正極活物質スラリー及び負極活物質スラリーとして、それぞれに熱重合性単量体を含む正極活物質スラリー及び負極活物質スラリーを正極室2及び負極室3に注入した後に、加熱等して熱重合性単量体を重合し、ゲル状の正極電極組成物及び負極電極組成物にするゲル化工程を更に実施することができる。
熱重合性単量体としては、熱重合可能な重合基を1分子中に2個以上有するモノマー、オリゴマー及びこれらの混合物等が挙げられ、これらの熱重合性単量体のなかから、熱重合性単量体の重合物が架橋重合体を形成してゲル状の正極電極組成物及び負極電極組成物を生成する熱重合性単量体又はその混合物を選択して用いることができる。
熱重合性単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、並びにジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらに限定されるものではない。上記の他に、ウレタン(メタ)アクリレート等の反応性オリゴマーを用いることもできる。これら熱重合性単量体は2種以上併用して用いることが好ましい。
熱重合性単量体の使用量(2種以上併用する場合はその合計量)としては特に制限はないが、電極の構造安定性とこれとは相反するイオン伝導性の観点から、電解液の重量(すなわち電解質と有機溶媒との合計重量)に対して、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは4〜10重量%、特に好ましくは5〜10重量部である。熱重合性単量体の使用量がこの範囲であると、サイクル特性がより向上し、好ましい。
熱重合性単量体は、少なくとも2つの重合性基を有する2官能性単量体と、重合性基を3つ以上持つ単量体との混合物であり、更に熱重合開始剤を併用することが好ましい。前記の混合物である熱重合性単量体を熱重合することで、必要なイオン伝導性とゲルの堅さを有するゲル状の正極電極組成物及び負極電極組成物が得られる。
また、熱重合開始剤としては特に種類に制限はないが、電解液が分解しない温度で熱重合性単量体を重合でき、熱重合開始剤の分解生成物が容易に酸化還元を受けないことが好ましく、このような熱重合開始剤として、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート及びt−ブチルパーオキシイソブチレート等が使用できる。
ゲル化工程は、熱重合性単量体をそれぞれ含む正極活物質スラリー及び負極活物質スラリーを正極室2及び負極室3にそれぞれ充填したあと、更に恒温槽に入れて重合温度まで加温し、所定の時間だけ当該温度雰囲気中に置くことで行うことができる。この熱重合の時間に特に制限はないが、10〜300分であることが好ましい。
正極電極組成物及び負極電極組成物の粘度が低く、その流動性が高い場合には、図15の(b)に例示するように、電池内で電極活物質粒子が沈殿して分離し、電池性能が劣化することが懸念される。一方、上記のゲル化工程を行ったリチウムイオン電池は、正極電極組成物及び負極電極組成物がゲル状であるため、電極活物質粒子が沈殿・分離することがなく、電池性能の劣化を防止することができる。
なお、本発明のリチウムイオン電池の製造方法及びリチウムイオン電池は、その細部が上述の実施態様に限定されず、種々の形態での実施が可能である。一例として、上述の分割容器は二色成型技術及び三色成型技術等の多色成型技術により成型していたが、金型を変更しながら各材料の射出成型を繰り返す方法等の周知の成型技術を用いて成型してもよい。