JP6850070B2 - 組成物及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ジクロロテトラフルオロ酸化プロピレン又はトリクロロトリフルオロ酸化プロピレンを含む組成物及びその製造方法に関する。
特許文献1には、CFCl−CF=CFClで示されるビニル化合物を酸化する工程を含むことを特徴とする1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレンの製造方法が記載されている。
特許文献2には、CFCl−CF=CClで示されるビニル化合物を酸化する工程を含むことを特徴とする1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロ酸化プロピレンの製造方法が記載されている。
特開2010−235568号公報 特開2010−241807号公報 特開2009−167120号公報
特許文献1には、実施例1において、1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレンを含む下相を回収したことが記載されており、また、40%の反応が進行したことが記載されている。
すなわち、引用文献1の実施例1には、多量のCFCl−CF=CFClと少量の1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレンとを含む組成物が記載されているが、CFCl−CF=CFClの含有量が少ない組成物は記載されていない。
同様に、特許文献2の実施例1にも、多量のCFCl−CF=CClと少量の1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロ酸化プロピレンとを含む組成物が記載されているが、CFCl−CF=CClの含有量が少ない組成物は記載されていない。
本発明の目的は、CFCl−CF=CXCl(XはF又はCl)の含有量が少ない1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレン又は1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロ酸化プロピレンを含む組成物を提供することにある。
本発明者らは、CFCl−CF=CXCl(XはF又はCl)の含有量が少ない1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレン又は1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロ酸化プロピレンを含む組成物を得るためには、極めて限定された条件で当該組成物を製造することが必要であること、及び、組成物中のCFCl−CF=CXCl(XはF又はCl)を特定量以下とすると、優れた効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、化合物(A)及び化合物(B)を含み、化合物(B)に対して化合物(A)が40質量%以下であることを特徴とする組成物である。
化合物(A):CFCl−CF=CXCl (式中、XはF又はCl)
化合物(B):式(1)で示される酸化プロピレン
Figure 0006850070
(式中、XはF又はCl)
化合物(B)は、化合物(A)を酸化する工程を含む製造方法により得られたものであることが好ましい。
本発明は、上述の組成物を得るための製造方法であって、化合物(A)を酸化することにより化合物(A)及び化合物(B)を含む中間組成物を得る工程、及び、1気圧で測定した化合物(B)の沸点よりも低い温度、かつ、大気圧より低い圧力で中間組成物を蒸留する工程を含むことを特徴とする製造方法でもある。
上記製造方法において、上記蒸留を、48℃以下で行うことが好ましく、30℃以下で行うことがより好ましく、20〜30℃で行うことが更に好ましく、0.008〜0.010MPaで行うことが好ましい。
本発明の組成物は、上記構成を有することから、電解質膜又はイオン交換膜に使用されるポリマーを構成するモノマーの原料として有用である。例えば、本発明の組成物を原料としてFSOCFCFOCF=CFを製造することができ、得られたFSOCFCFOCF=CFとテトラフルオロエチレンとを共重合させると、分子量の大きな共重合体を得ることができる。
本発明の製造方法によれば、CFCl−CF=CXCl(XはF又はCl)の含有量が少ない1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレン又は1,1,3−トリクロロ−2,3,3−トリフルオロ酸化プロピレンを含む組成物を製造できる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の組成物は、次の化合物(A)及び化合物(B)を含む。
化合物(A):CFCl−CF=CXCl (式中、XはF又はCl)
化合物(B):式(1)で示される酸化プロピレン
Figure 0006850070
(式中、XはF又はCl)
上記組成物は、化合物(B)に対して40質量%以下の化合物(A)を含むことを特徴とする。従来の製造方法では、化合物(B)を製造することができても、比較的多量の化合物(A)を含む組成物しか得られず、化合物(A)が40質量%以下である化合物(B)の組成物は知られていなかった。
化合物(A)の含有量は、化合物(B)に対して22質量%以下であることがより好ましい。下限は特に限定されないが、製造コスト等を考慮すれば、0.92質量%であってよい。
上記組成物中に含まれる化合物(B)の量は、76.5〜99.9質量%であることが好ましく、82.0質量%以上であることがより好ましく、98.2質量%以上であることが更に好ましく、99.1質量%以下であることがより好ましい。
上記組成物は、更に、化合物(B)に対して1質量%以下で水を含むことが好ましい。上記水の量は、少ない方が好ましく、検出下限値未満であることが好ましい。上記水は、カールフィッシャー水分計により定量及び検出できる。
上記組成物は、更に、化合物(B)に対して0.1質量%以下で酸化剤を含むものであってもよい。上記酸化剤としては、上次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素水、及び、酸素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記酸化剤の量は、少ない方が好ましく、検出下限値未満であることが好ましい。上記酸化剤は、ヨウ化カリウム水溶液による抽出液の滴定により定量及び検出できる。
上記組成物は、更に、化合物(B)に対して0.01質量%以下で相間移動触媒を含むものであってもよい。上記相間移動触媒としては、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩等があげられ、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMAC)が好ましい。上記相間移動触媒の量は、少ない方が好ましく、検出下限値未満であることが好ましい。上記相間移動触媒は、H−NMRにより定量及び検出できる。
化合物(B)は、化合物(A)を酸化する工程を含む製造方法により得られたものであってよい。この場合、化合物(A)を表す式中のXがFであると、化合物(B)を表す式(1)中のXもFであり、前者のXがClであると、後者のXもClである。化合物(A)の酸化反応の効率は大きくないことから、化合物(A)を酸化することにより直接得られる組成物には、化合物(B)に対して化合物(A)が135質量%以上含まれることが通常である。化合物(A)を酸化する工程の詳細は後述する。
上記組成物は、化合物(A)を酸化することにより化合物(A)及び化合物(B)を含む中間組成物を得る工程、及び、1気圧で測定した化合物(B)の沸点よりも低い温度、かつ、大気圧よりも低い圧力で中間組成物を蒸留する工程を含むことを特徴とする製造方法により、好適に製造することができる。上記蒸留では、中間組成物よりも化合物(A)の割合が減少した留分を取り出すことができ、好ましくは、中間組成物よりも化合物(A)の割合が減少しており、化合物(B)の割合が増加した留分を取り出す。
化合物(B)の1気圧での沸点は48〜51℃である。
上記製造方法は、特に、中間組成物の蒸留を、1気圧で測定した化合物(B)の沸点よりも低い温度で実施することに特徴がある。
化合物(B)に類似する化合物として含フッ素プロピレンエポキシド類が知られている。含フッ素プロピレンエポキシド類は、プロピレンを原料として製造される。そして、含フッ素プロピレンエポキシド類とプロピレンとは、底部に蒸留釜を備えた蒸留塔を使用して、蒸留釜の液相部の温度を含フッ素プロピレンエポキシド類の沸点以上に加熱することにより、精製分離される。
例えば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをその製造原料であるヘキサフルオロプロピレンと分離する方法は多数報告されているが、いずれも液相部の温度をヘキサフルオロプロピレンオキシドの沸点以上に保持して実施されている。また、特許文献3の実施例5には、常圧蒸留により、パーフルオロ−3−ブロモプロピレンオキシドとパーフルオロアリルブロミドとを分離したことが記載されている。他方、低沸点の含フッ素プロピレンオキシド類を沸点未満でプロピレンと分離する例は報告されていない。
本発明者らは、これらの従来技術に従って、底部に蒸留釜を備えた蒸留塔を使用して、蒸留釜の液相部を化合物(B)の沸点以上に加熱することにより、化合物(B)を多量に含む組成物を取り出すことを試みた。しかしながら、意外なことに、化合物(B)の分解が観察された。化合物(B)の熱分解温度は本発明の出願時点で明らかではないが、上記実験は明らかに熱分解温度未満で実施したことから、加熱により化合物(B)が分解したことは考えにくい。従って、化合物(B)の分解が観察される理由は、化合物(A)の一部が加熱により分解することにより少量ではあるが塩化物イオンが発生し、更に塩化物イオンが化合物(B)と反応して化合物(B)が分解するためと推測される。すなわち、蒸留に通常必要とされる温度に加熱すると分解する性質は、他の含フッ素プロピレンオキシドには観察されず、化合物(A)及び化合物(B)を含む組成物に特有の性質であると思われる。
従って、1気圧で測定した化合物(B)の沸点以上で中間組成物を蒸留すると、高い純度で化合物(B)を含む組成物を得ることができない。また、大気圧よりも低い圧力で蒸留しないと、中間組成物を蒸留できない。上記蒸留は、48℃以下で行うことが好ましく、48℃未満で行うことがより好ましく、47℃以下で行うことが更に好ましく、30℃以下で行うことが特に好ましく、20〜30℃で行うことが最も好ましい。上記温度は、底部に蒸留釜を備えた蒸留塔を使用して蒸留を行う場合は、蒸留釜中の液相部の温度である。また、上記蒸留は、0.008〜0.010MPaで行うことが好ましい。
化合物(A)の酸化は、化合物(A)と酸化剤とを接触させることによって行うことが好ましい。接触させる時間は、通常3〜36時間である。
上記酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素水、及び、酸素からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記酸化剤は、上記化合物(A)100質量部に対して100〜500質量部添加することが好ましい。
上記酸化は、化合物(B)が高い収率で得られることから、化合物(A)、酸化剤及び水を添加し、化合物(A)と酸化剤とを接触させて行うことが好ましい。水は、酸化剤の水溶液に由来する水であっても、過酸化水素水に由来する水であってもよい。上記酸化剤の水溶液は、通常、酸化剤の濃度が10〜50%である。
上記酸化は、相間移動触媒の存在下に行うことが好ましく、相間移動触媒を用いると反応場が有機相と水相とに分離しても円滑に反応を進めることができる。相間移動触媒としては、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩等があげられ、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(TOMAC)が好ましい。
上記酸化を、触媒量の水溶性有機物の存在下に行ってもよい。水溶性有機物としては、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトニトリル、アセトン、ジグライム、テトラグライム等があげられ、生成物の単離が容易になる点で、ジグライムが好ましい。
本発明の組成物を使用して、FSOCFCFOCF=CFで示されるビニルエーテルを製造することができる。
FSOCFCFOCF=CFは、
化合物(A)を酸化することにより化合物(A)及び化合物(B)を含む中間組成物を得る工程、
1気圧で測定した化合物(B)の沸点よりも低い温度、かつ、大気圧より低い圧力で中間組成物を蒸留することにより本発明の組成物を得る工程、
得られた組成物に含まれる化合物(B)と、一般式:FSOCFCFOM(式中、MはNa又はK)で示されるアルコキシドと、を反応させることにより、一般式:FSOCFCFOCF(CFCl)COX(式中、XはCl又はF)で示される酸ハロゲン化物を得る工程、
上記酸ハロゲン化物を、MHCO又はMCO(式中、MはNa又はK)で示される塩基と接触させて、FSOCFCFOCF(CFCl)COOM(式中、MはNa又はK)で示されるカルボン酸塩を得る工程、及び、
上記カルボン酸塩を脱カルボキシル化反応させる工程
を含むことを特徴とする製造方法により好適に製造することができる。
上記製造方法において、化合物(B)とアルコキシドとの反応は、特公平1−32808号公報に記載されているハロゲン置換プロピレンオキサイドと求核剤との反応と同様に進行する。
MHCO又はMCOで示される塩基としては、NaHCO、NaCO等があげられる。
脱カルボキシル化反応は、乾燥させた有機溶媒中で行うことが好ましく、有機溶媒としてはジグライム、トリグライム、テトラグライム等があげられる。
上記製造方法では、酸ハロゲン化物を得る前に既に化合物(A)が除去されていることから、脱カルボキシル化反応させた後に精製する工程を実施しなくても、FSOCFCFOCF=CFが高い純度で得られる。
また、上記の製造方法により得られたFSOCFCFOCF=CFとテトラフルオロエチレンとを共重合させると、分子量の大きな共重合体が得られることも、本発明者らによって見出された。従って、本発明の組成物及び製造方法は、電解質膜又はイオン交換膜の品質の向上に大きく貢献できる。
電解質膜又はイオン交換膜は、例えば固体高分子電解質型燃料電池の電解質用膜、リチウム電池用膜、食塩電解用膜、水電解用膜、ハロゲン化水素酸電解用膜、酸素濃縮器用膜、湿度センサー用膜、ガスセンサー用膜等として使用される。
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
19F−NMR分析の方法
装置:核磁気共鳴装置(日本電子社製)、型番:JEOL JNM−EX270、
測定条件(溶媒:CDCl、内部標準物質:ベンゾトリフロライド)
実施例1
30cmの蒸留塔を有する蒸留装置を用いて、CFCl−CF=CFCl及び1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレンをそれぞれ72.2g、48.2g含む混合物120.4gを、恒温槽で釜の液相温度を20〜22℃に維持したまま減圧蒸留した。得られた留分の重量は40.1gであり、19F−NMR分析の結果、CFCl−CF=CFCl及び1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレンをそれぞれ7.6g、32.5g含む混合物であることが分かった。
比較例1
30cmの蒸留塔を有する蒸留装置を用いて、CFCl−CF=CFCl及び1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレンをそれぞれ72.2g、48.2g含む混合物120.4gを、大気圧下60℃の熱媒で釜を加熱することで蒸留した。得られた留分の重量は10.1gであり、19F−NMR分析の結果、CFCl−CF=CFCl及び1,3−ジクロロ−1,2,3,3−テトラフルオロ酸化プロピレンをそれぞれ9.8g、0.2g含む混合物であることが分かった。

Claims (5)

  1. 化合物(A)及び化合物(B)を含み、化合物(B)に対して化合物(A)が40質量%以下であることを特徴とする組成物。
    化合物(A):CFCl−CF=CXCl (式中、XはF又はCl)
    化合物(B):式(1)で示される酸化プロピレン
    Figure 0006850070
    (式中、XはF又はCl)
  2. 請求項1記載の組成物を得るための製造方法であって、
    化合物(A)を酸化することにより化合物(A)及び化合物(B)を含む中間組成物を得る工程、及び、
    1気圧で測定した化合物(B)の沸点よりも低い温度、かつ、0.008〜0.010MPaの圧力で中間組成物を蒸留する工程
    を含むことを特徴とする製造方法。
  3. 蒸留を、48℃以下で行う請求項記載の製造方法。
  4. 蒸留を、30℃以下で行う請求項又は記載の製造方法。
  5. 蒸留を、20〜30℃で行う請求項又は記載の製造方法。
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