JP6849448B2 - インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6849448B2
JP6849448B2 JP2017010134A JP2017010134A JP6849448B2 JP 6849448 B2 JP6849448 B2 JP 6849448B2 JP 2017010134 A JP2017010134 A JP 2017010134A JP 2017010134 A JP2017010134 A JP 2017010134A JP 6849448 B2 JP6849448 B2 JP 6849448B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid
recovery
image
ink
porous body
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017010134A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017213854A (ja
Inventor
坂本 敦
敦 坂本
智 増田
智 増田
祥之 本田
祥之 本田
山根 徹
徹 山根
恭介 出口
恭介 出口
良助 廣川
良助 廣川
大西 徹
徹 大西
毛利 明広
明広 毛利
遠山 上
上 遠山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Publication of JP2017213854A publication Critical patent/JP2017213854A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6849448B2 publication Critical patent/JP6849448B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方式では、色材を含む液体組成物(インク)を紙等の記録媒体上に直接的または間接的に付与することで画像を形成している。このとき、記録媒体がインク中の液体成分を過剰に吸収することによるカールや、コックリングが生じることがある。
そこで、インク中の液体成分を速やかに除去するため、記録媒体を温風や赤外線等の手段を用いて乾燥する方法や、転写体上で画像を形成し、その後転写体上の画像に含まれる液体成分を熱エネルギー等により乾燥した後、紙等の記録媒体に画像を転写する方法がある。
さらに、転写体上の画像に含まれる液体成分を除去する手段として、熱エネルギーを用いずに、ローラ状の多孔質体をインク画像と接触させてインク画像から液体成分を吸収して除去する方法が提案されている(特許文献1)。
上述の多孔質体を繰り返し使用するためには、再度使用する前に多孔質体から一旦吸収した液体を除去または回収することが必要となる。その際、多孔質体の一部で液体が吸収された状態であっても、空気抜けの発生を抑制し、多孔質体を傷つけずに多孔質体から均一に液体の除去及び回収を行うことを可能とする構成が知られている。具体的には、転写体上で多孔質体をインク画像に当接させて液吸収を行った後、再び該多孔質体を用いて液吸収を行うまでの間に、多孔質体に対して別の液体を付与する工程と、多孔質体が吸収した液体を除去または回収する工程とを実施する提案がなされている(特許文献2)。
一方、多孔質体により転写体上のインクから液体成分を吸収し除去する際に、多孔質体へインク由来のゴミが付着することがある。特許文献3では、繰り返し使用する可撓性シートの防塵方法として、粉塵捕捉性を有する転写ローラと粘着ローラとからなる除塵ローラを可撓性シートに接触させる工程、および、該可撓性シートに空気を吹き付けて除塵作業を行う工程を含む方法が開示されている。
特開2009−45851号公報 特開2007−268975号公報 特開2000−288483号公報
多孔質体を用いて転写体上のインク凝集物から液体成分を吸収、除去することを目的として、インクジェット記録装置内で該多孔質体を繰り返し使用する場合には、再び該多孔質体を使用する前に、以下に示す初期化およびクリーニング工程を実施する必要がある。
・多孔質体に対して一様に別の液体を付与する工程
・多孔質体に吸収された液体を除去または回収する工程
・多孔質体表面に付着したゴミを除去する工程
しかしながら、特許文献1および2では、吸収体として用いた多孔質体を繰り返し使用する場合における該多孔質体からの液体回収方法について開示されているものの、インク凝集物由来等のゴミが多孔質体に付着することに対するクリーニング等の提案はなされていない。
さらに、上記多孔質体の初期化およびクリーニング工程は、その工程順序によっては、所定の機能が発生せずに多孔質体の繰返し使用ができない場合がある。具体的には、多孔質体に対して一様に別の液体を付与する工程の後に、多孔質体表面に付着したゴミを除去する工程を実施すると、多孔質体表面に付着したゴミが除去されずに残存し、次に多孔質体と転写体上の記録画像とが接触するタイミングで、多孔質体から記録画像へ該ゴミが移動し、画像欠陥が生じる場合がある。しかしながら、前記特許文献1〜3においては、このような課題は認識されておらず、多孔質体の初期化およびクリーニング工程の順序について言及されていない。
本発明は、連続して画像形成を行う場合においても、液吸収部材として使用する多孔質体表面に付着したゴミの除去を繰り返し行うことを可能とし、画像欠陥の発生を抑制して安定した画像出力を可能とするインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のインクジェット記録装置は、
被記録体にインクを付与して該被記録体上に第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成する画像形成ユニットと、
前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部を吸収する多孔質体を有する液吸収部材と、
を備えるインクジェット記録装置であって、
前記第一の液体を吸収した前記多孔質体に前記インクよりも粘度の低い回復液を付与する回復液付与装置と、
前記多孔質体に吸収された前記第一の液体を回収する液回収装置と、
前記液吸収部材を搬送する液吸収部材搬送装置と、
前記多孔質体をクリーニングするクリーニング部材と、を備え、
前記液吸収部材の搬送経路には、
前記多孔質体が前記第一の画像から前記第一の液体を吸収する液吸収部と、
前記回復液付与装置によって前記回復液が付与される回復液付与部と、
前記多孔質体に吸収された前記第一の液体が前記液回収装置によって回収される液回収部と、
がこの順に配置され、
前記多孔質体が前記クリーニング部材によってクリーニングされるクリーニング部が2つ以上配置され、該クリーニング部が、前記液吸収部と前記回復液付与部の間および前記液回収部と前記液吸収部の間に配置される
ことを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録方法は、
被記録体にインクを付与して第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成する画像形成工程と、
多孔質体を有する液吸収部材によって前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部を吸収する液吸収工程と、
を有するインクジェット記録方法であって、
前記第一の液体を吸収した前記多孔質体に前記インクよりも粘度の低い回復液を付与する回復液付与工程と、
前記多孔質体に吸収された前記第一の液体を回収する液回収工程と、を有し、
前記液吸収部材は、前記液吸収工程と前記回復液付与工程と前記液回収工程とが、この順で繰り返し供され、
前記多孔質体をクリーニング部材によってクリーニングするクリーニング工程を2回以上有し、該クリーニング工程は、前記液吸収工程と前記回復液付与工程の間および前記液回収工程と前記液吸収工程の間で実施される
ことを特徴とする。
本発明によれば、連続して画像形成を行う場合においても、多孔質体表面に付着したゴミの除去を繰り返し行うことが可能となり、画像欠陥の発生を抑制し、安定した画像出力を可能とするインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明の一実施形態における転写型インクジェット記録装置の構成の一例を示す模式図である。 本発明の一実施形態における直接描画型インクジェット記録装置の構成の一例を示す模式図である。 図1、2に示すインクジェット記録装置における装置全体の制御システムを示すブロック図である。 図1に示す転写型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。 図2に示す直接描画型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。 図1に示す転写型インクジェット記録装置における液吸収装置を拡大し、液吸収後の液吸収部材を初期化する複数の工程を配置した模式図である。 図6に示す液吸収部材の複数の初期化工程に対して1つのクリーニング工程を配置した模式図である。 図2に示す直接描画型インクジェット記録装置における液吸収装置を拡大し、液吸収後の液吸収部材を初期化する複数の工程を配置した模式図である。 クリーニング性能をローラ粘着力とゴミ−多孔質体間のタック力とを用いて説明する図である。 クリーニング工程を各位置で実施した場合におけるローラ粘着力とゴミ−多孔質体間のタック力を示す図である。
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本実施形態にかかるインクジェット記録装置は、被記録体にインクを付与して被記録体上に第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成する画像形成ユニットと、第一の画像から第一の液体の少なくとも一部を吸収する多孔質体を有する液吸収部材とを備える。多孔質体を有する液吸収部材を被記録体上の第一の液体と色材とを含む第一の画像と接触させることで、第一の画像から第一の液体の少なくとも一部が除去される。この結果、紙などの記録媒体が第一の画像中の第一の液体を過剰に吸収することによるカールや、コックリングが抑制される。
本実施形態にかかるインクジェット記録装置において、画像形成ユニットとしては、被記録体上に第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成できるものであれば、特に限定されるものではない。好ましくは、1)第一の液体または第二の液体を含む第一の液体組成物を被記録体上に付与する装置と、2)第一の液体または第二の液体と色材とを含む第二の液体組成物を被記録体上に付与する装置と、を含み、第一の液体組成物及び第二の液体組成物の混合物として第一の画像を形成するものである。本実施形態では、第二の液体組成物は、色材を含有するインクであり、第二の液体組成物を被記録体上に付与する装置は、インクジェット記録デバイスである。また、第一の液体組成物は、第二の液体組成物と化学的または物理的に作用して、第一の液体組成物及び第二の液体組成物の混合物を第一の液体組成物及び第二の液体組成物のそれぞれよりも粘稠する成分を含む。第一の液体組成物及び第二の液体組成物の少なくとも一方は、第一の液体を含む。ここで、第一の液体は、常温(室温)での揮発性が低い液体を含み、特に水を含む。第二の液体は、第一の液体以外の液体であり、揮発性の高低は問わないが、第一の液体よりも揮発性の高い液体であることが好ましい。以下、第一の液体組成物を「反応液」、第一の液体組成物を被記録体上に付与する装置を「反応液付与装置」と称す。また、第二の液体組成物を「インク」、第二の液体組成物を被記録体上に付与する装置を「インク付与装置」と呼ぶ。また、第一の画像とは、液吸収部材による液吸収処理に供される前の液除去前インク像のことをいう。液吸収処理を行って第一の液体の含有量が低減された液除去後インク像のことを第二の画像と称する。
さらに、本実施形態にかかるインクジェット記録装置は、第一の液体を吸収した多孔質体に、インクよりも粘度の低い回復液を付与する回復液付与装置と、液吸収部材が有する多孔質体に吸収された第一の液体を回収する液回収装置と、液吸収部材を搬送する液吸収部材搬送装置と、を備える。液吸収部材の搬送経路には、多孔質体を有する液吸収部材を押圧部材によって第一の画像に押圧して、第一の画像から第一の液体の吸収を行う液吸収部と、回復液付与装置によって回復液を付与する回復液付与部と、多孔質体に吸収された第一の液体を液回収装置によって回収する液回収部と、がこの順で配置される。さらに、多孔質体に付着したゴミをクリーニング部材によって除去するクリーニング部が、少なくとも液吸収部と液付与部の間および液回収部と液吸収部の間のいずれか一方に配置されていることを特徴とする。
<反応液付与装置>
反応液付与装置は、インク増粘用の反応液を被記録体上に付与できるいかなる装置であってもよく、従来から知られている各種装置を適宜用いることができる。具体的には、グラビアオフセットローラ、インクジェットヘッド、ダイコーティング装置(ダイコータ)、ブレードコーティング装置(ブレードコータ)などが挙げられる。反応液付与装置による反応液の付与は、被記録体上でインクと混合(反応)することができれば、インクの付与前に行っても、インクの付与後に行ってもよい。好ましくは、インクの付与前に反応液を付与する。反応液をインクの付与前に付与することによって、インクジェット方式による画像記録時に、隣接して付与されたインク同士が混ざり合うブリーディングや、先に着弾したインクが後に着弾したインクに引き寄せられてしまうビーディングを抑制することもできる。
<反応液>
反応液は、インクを高粘度化する成分(インク高粘度化成分)を含有する。反応液は、インクと接触することでインクを増粘させる。インクの高粘度化とは、インクを構成している成分の一部である色材や樹脂等がインク高粘度化成分と接触することによって化学的に反応し、あるいは物理的に吸着し、これによってインク粘度の上昇が認められることである。このインクの高粘度化には、インク粘土の上昇が認められる場合のみならず、色材や樹脂などのインクを構成する成分の一部が凝集することにより局所的に粘度の上昇を生じる場合も含まれる。インクを構成する成分の一部を凝集する方法として、水性インク中の顔料の分散安定性を低下させる反応液を用いることができる。このインク高粘度化成分は、被記録体上でのインク及び/又はインクを構成している成分の一部の流動性を低下せしめて、第一の画像形成時のブリーディングや、ビーディングを抑制する効果がある。インクを高粘度化することを「インクを粘稠する」とも称する。このようなインク高粘度化成分として、多価の金属イオン、有機酸、カチオンポリマー、多孔質性微粒子などの公知のものを用いることができる。中でも、特に多価の金属イオン及び有機酸が好適である。また、複数の種類のインク高粘度化成分を含有させることも好適である。なお、反応液中のインク高粘度化成分の含有量は、反応液全質量に対して5質量%以上であることが好ましい。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+及びZn2+等の二価の金属イオンや、Fe3+、Cr3+、Y3+及びAl3+等の三価の金属イオンが挙げられる。
また有機酸としては、例えば、シュウ酸、ポリアクリル酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、レブリン酸、コハク酸、グルタル酸、グルタミン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸等が挙げられる。
反応液は、第一の液体として水や低揮発性の有機溶剤を適量含有することができる。この場合に用いる水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、反応液に用いることのできる有機溶剤としては、特に限定されず、公知の有機溶剤を用いることができる。
また、反応液は、界面活性剤や粘度調整剤を加えてその表面張力や粘度を適宜調整して用いることができる。用いられる材料としては、インク高粘度化成分と共存できるものであれば特に制限はない。具体的に用いられる界面活性剤としては、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(商品名:アセチレノールE100、川研ファインケミカル株式会社製)、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(商品名:メガファックF444、DIC株式会社製)等が挙げられる。
<インク付与装置>
インクを付与するインク付与装置としては、インクジェットヘッドを用いる。インクジェットヘッドとしては、例えば電気−熱変換体によりインクに膜沸騰を生じさせ気泡を形成することでインクを吐出する形態、電気−機械変換体によってインクを吐出する形態、静電気を利用してインクを吐出する形態等が挙げられる。本発明では、公知のインクジェットヘッドを用いることができる。中でも、特に高速で高密度の印刷の観点からは、電気−熱変換体を利用したものが好適に用いられる。描画は画像信号を受け、各位置に必要なインク量を付与する。
インク付与量は、画像濃度(duty)やインク厚みでも表現することができるが、本実施形態では、各インクドットの質量に付与個数(吐出数)を掛けて、印字面積で割った平均値をインク付与量(g/m)とした。なお、画像領域における最大インク付与量とは、インク中の液体分を除去する観点より、被記録体の情報として用いられる領域内において、少なくとも5mm以上の面積において付与されているインク付与量を示す。
本発明のインクジェット記録装置は、被記録体上に各色のインクを付与するために、インクジェットヘッドを複数有していてもよい。例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを用いてそれぞれの色画像を形成する場合、インクジェット記録装置は上記4種類のインクを被記録体上にそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッドを有する。また、インク付与装置は、色材を含有しないインク(クリアインク)を吐出するインクジェットヘッドを含んでいてもよい。
<インク>
本発明に適用されるインクの各成分について説明する。
(色材)
本発明に適用されるインクに含有される色材として、顔料又は染料と顔料との混合物を用いることができる。色材として用いることができる顔料の種類は特に限定されない。顔料の具体例としては、カーボンブラックなどの無機顔料;アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イミダゾロン系、ジケトピロロピロール系、ジオキサジン系などの有機顔料を挙げることができる。これらの顔料は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
色材として用いることができる染料の種類は特に限定されない。染料の具体例としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料、食用染料などを挙げることができ、アニオン性基を有する染料を用いることができる。染料骨格の具体例としては、アゾ骨格、トリフェニルメタン骨格、フタロシアニン骨格、アザフタロシアニン骨格、キサンテン骨格、アントラピリドン骨格などが挙げられる。
インク中の顔料の含有量は、インク全質量に対し0.5質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
(分散剤)
顔料を分散させる分散剤としては、インクジェット用インクに用いられる公知の分散剤を使用することができる。中でも本発明の態様においては構造中に親水性部と疎水性部とを併せ持つ水溶性の分散剤を用いることが好ましい。特に、少なくとも親水性のモノマーと疎水性のモノマーとを含んで共重合させた樹脂からなる顔料分散剤が好ましく用いられる。ここで用いられる各モノマーについては特に制限はなく、公知のものが好適に用いられる。具体的には、疎水性モノマーとしては、スチレン及びその他のスチレン誘導体、アルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また親水性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
該分散剤の酸価は、50mgKOH/g以上550mgKOH/g以下であることが好ましい。また、該分散剤の重量平均分子量は1000以上50000以下であることが好ましい。なお、顔料と分散剤との質量比(顔料:分散剤)としては1:0.1〜1:3の範囲であることが好ましい。
また、分散剤を用いず、顔料自体を表面改質して分散可能としたいわゆる自己分散顔料を用いることも好適である。
(樹脂微粒子)
本発明に適用されるインクは、色材を有しない各種微粒子を含有させて用いることができる。中でも樹脂微粒子は、画像品位や定着性の向上に効果がある場合があり好適である。
本発明に用いることのできる樹脂微粒子の材質としては特に限定されず、公知の樹脂を適宜用いることができる。具体的には、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ尿素、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸及びその塩、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、ポリジエン等の単独重合物、または、これらの単独重合物を生成するためのモノマーを複数組み合わせて重合した共重合物が挙げられる。該樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上2,000,000以下の範囲が好適である。またインク中における樹脂微粒子の量は、インク全質量に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上40質量%以下である。
さらに本発明の態様においては、該樹脂微粒子が液中に分散した樹脂微粒子分散体として用いることが好ましい。分散の手法については特に限定はないが、解離性基を有するモノマーを単独重合もしくは複数種共重合させた樹脂を用いて分散させた、いわゆる自己分散型樹脂微粒子分散体は好適である。ここで、解離性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられ、この解離性基を有するモノマーとしては、アクリル酸やメタクリル酸等が挙げられる。また、乳化剤により樹脂微粒子を分散させたいわゆる乳化分散型樹脂微粒子分散体も、同様に本発明に好適に用いることができる。ここでいう乳化剤としては、低分子量、高分子量に関わらず公知の界面活性剤が好ましい。該界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、または樹脂微粒子と同じ極性の電荷を有する界面活性剤が好ましい。
本発明の態様に用いる樹脂微粒子分散体は、10nm以上1000nm以下の分散粒径を有することが好ましく、50nm以上500nm以下の分散粒径を有することがより好ましく、100nm以上500nm以下の分散粒径を有することがさらに好ましい。
また、本発明の態様に用いる樹脂微粒子分散体を作製する際に、安定化のために各種添加剤を加えておくことも好ましい。該添加剤としては、例えば、n−ヘキサデカン、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、クロロベンゼン、ドデシルメルカプタン、青色染料(ブルーイング剤)、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
(界面活性剤)
本発明に用いることのできるインクは界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、具体的には、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(商品名:アセチレノールE100、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。インク中の界面活性剤の量は、インク全質量に対して0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
(水及び水溶性有機溶剤)
本発明に用いるインクは、溶剤として水及び/または水溶性有機溶剤を含むことができる。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、インク中の水の含有量は、インク全質量に対して30質量%以上97質量%以下であることが好ましく、インク全質量に対して50質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
用いる水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、公知の有機溶剤をいずれも用いることができる。具体的には、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、2−ピロリドン、エタノール、メタノール、等が挙げられる。もちろん、これらの中から選択した2種類以上のものを混合して用いることもできる。
また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量に対して3質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
(その他添加剤)
本発明に用いることのできるインクは、上記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂及びその中和剤、粘度調整剤など種々の添加剤を含有してもよい。
<液吸収部材>
本発明では、第一の画像から第一の液体の少なくとも一部を、多孔質体を有する液吸収部材と接触させることで吸収し、第一の画像中の液体成分の含有量を減少させる。液吸収部材の第一の画像との接触面を第一の面とし、第一の面に多孔質体が配置される。このような多孔質体を有する液吸収部材は、被記録体の移動に連動して移動し、第一の画像と当接した後、所定の周期で別の第一の画像に再当接する循環して液吸収が可能な形状を有するものが好ましい。例えば、無端ベルト状やドラム状などの形状が挙げられる。
[多孔質体]
液吸収部材の多孔質体は、第一の面側の平均孔径が、第一の面と対向する第二の面側の平均孔径よりも小さいものを使用することが好ましい。多孔質体へのインクの色材の付着を抑制するため、多孔質体の孔径は小さいことが好ましく、少なくとも画像と接触する第一の面側の多孔質体の平均孔径は、10μm以下であることが好ましい。なお、平均孔径とは第一の面または第二の面の表面での平均直径のことを示し、公知の手段、例えば水銀圧入法や、窒素吸着法、SEM画像観察等で測定可能である。
また、均一に高い通気性とするために多孔質体の厚みを薄くすることが好ましい。通気性はJIS P8117で規定されるガーレ値で示すことができ、ガーレ値は10秒以下であることが好ましい。ただし、多孔質体を薄くすると、液体成分を吸収するために必要な容量を十分に確保できない場合があるため、多孔質体を多層構成とすることが可能である。また、液吸収部材は、第一の画像と接触する層が多孔質体であればよく、第一の画像と接触しない層は多孔質体でなくてもよい。
次に、多孔質体を多層構成とする場合の実施形態について説明する。ここでは第一の画像に接触する側の第一の層、第一の層の第一の画像との接触面と反対の面に積層される層を第二の層として説明する。さらに多層の構成についても順次第一の層からの積層順で表記する。なお、本明細書において、第一の層を「吸収層」、第二の層以降を「支持層」ということがある。
(第一の層)
本発明において、第一の層の材料は特に限定されることはなく、水に対する接触角が90°未満の親水性材料と、水に対する接触角が90°以上の撥水性材料のいずれも使用することができる。親水性材料の場合、水に対する接触角が40°以下であることがより好ましい。第一の層が親水性材料で構成されている場合、毛管力により水性液体成分、特に水を吸い上げる効果がある。
親水性材料としては、セルロースやポリアクリルアミドなどの単一素材、またはこれらの複合材料などから好ましく選択される。また、下記の撥水性材料の表面を親水化処理して用いることもできる。親水化処理としては、スパッタエッチング法、放射線やHOイオン照射、エキシマ(紫外線)レーザー光照射などの方法が挙げられる。
なお、本明細書において、接触角とは、測定液体を対象物に滴下し、その液滴が対象物に接している部分での対象物表面と液滴の接線とがなす角度のことである。測定の技法にはいくつか種類があるが、例えばJIS R3257の「6.静滴法」に記載の技法に準拠して撥水性の測定を行うことができる。
一方、色材の付着を抑制するため、及び、クリーニング性を高くするために、第一の層の材料は、表面自由エネルギーの低い撥水性材料、特にフッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂としては、具体的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。これらの樹脂は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができ、第一の層の中に複数の膜が積層された構成でもよい。第一の層が撥水性材料で構成されている場合、毛管力により水性液体成分を吸い上げる効果が殆どなく、初めて画像と接触する際に水性液体成分の吸い上げに時間を要することがある。このため、第一の層中に第一の層との接触角が90°未満である液体をしみ込ませておくことが好ましい。第一の画像中の第一の液体及び任意の第二の液体に対して、第一の層中にしみ込ませておく液体を「第三の液体」あるいは、「湿潤液」等ということがある。第三の液体は、液吸収部材の第一の面から塗布することで第一の層中にしみ込ませておくことができる。第三の液体は、第一の液体(水)に界面活性剤や第一の層との接触角の低い液体を混合して調製することが好ましい。
本発明において、第一の層の膜厚は、50μm以下であることが好ましい。膜厚は、30μm以下であることがより好ましい。本発明の実施例において、膜厚は、直進式のマイクロメーターOMV_25(ミツトヨ製)で任意の10点の膜厚を測定し、その平均値を算出することで得た。
第一の層は、公知の薄膜多孔質膜の製造方法により製造することができる。例えば、樹脂材料を押出成形などの方法でシート状物を得た後、所定の厚みに延伸することで得ることができる。また、押出成形時の材料にパラフィン等の可塑剤を添加し、延伸時に加熱などにより可塑剤を除去することで多孔質膜として得ることができる。孔径は添加する可塑剤の添加量、延伸倍率などを適宜調整することで調節することができる。
(第二の層)
本発明において、第二の層は通気性を有する層であることが好ましい。このような層は樹脂繊維の不織布でもよいし、織布でもよい。第二の層の材料としては、特に限定されないが、第一の層側へ吸収した液体が逆流しないように、第一の層に対して第一の液体との接触角が同等かそれよりも低い材料であることが好ましい。具体的には、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリウレタン、ナイロンなどのポリアミド、ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート(PET)など)、ポリスルフォン(PSF)などの単一素材、またはこれらの複合材料などから好ましく選択される。また、第二の層は第一の層よりも孔径の大きな層であることが好ましい。
(第三の層)
本発明において、多層構造の多孔質体は3層以上の構成であってもよく、限定されない。三層目(第三の層ともいう)以降の層としては剛性の観点から不織布が好ましい。材料としては第二の層と同様なものが用いられる。
[その他の材料]
液吸収部材には、上記の積層構造の多孔質体以外に、液吸収部材の側面を補強する補強部材を有してもよい。また、長尺のシート形状の多孔質体の長手方向端部を繋いでベルト状の部材とする際の接合部材を有してもよい。このような材料としては非孔質のテープ材などを用いることができ、画像と接触しない位置あるいは周期に配置すればよい。
[多孔質体の製造方法]
第一の層と第二の層を積層して多孔質体を形成する方法は、特に限定されることはない。重ね合わせるだけでもよいし、接着剤ラミネートまたは熱ラミネートなどの方法を用いて互いに接着してもよい。通気性の観点から、本発明においては熱ラミネートが好ましい。また例えば、加熱により第一の層または第二の層の一部を溶融させて接着積層してもよい。また、ホットメルトパウダーのような融着材を第一の層と第二の層の間に介在させて加熱により互いに接着積層してもよい。第三の層以上を積層する場合は、一度に積層させてもよいし、順次積層させてもよく、積層順に関しては適宜選択される。加熱工程では、加熱されたローラで多孔質体を挟み込んで加圧しながら、多孔質体を加熱するラミネート法が好ましい。
次に、インクジェット記録装置の具体的な実施形態について説明する。
インクジェット記録装置としては、被記録体としての転写体上に第一の画像を形成し、液吸収部材による第一の液体の吸収後の第二の画像を記録媒体へ転写するインクジェット記録装置と、被記録体としての記録媒体上に第一の画像を形成するインクジェット記録装置とが挙げられる。なお、本発明において、前者のインクジェット記録装置を、以下便宜的に転写型インクジェット記録装置と称し、後者のインクジェット記録装置を、以下便宜的に直接描画型インクジェット記録装置と称する。
以下にそれぞれのインクジェット記録装置について説明する。
<転写型インクジェット記録装置>
図1は、本実施形態の転写型インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す模式図で
ある。
転写型インクジェット記録装置100は、第一の画像と、第一の画像から第一の液体の少なくとも一部を吸収除去した第二の画像とを一時的に保持する転写体101を備えている。また、転写型インクジェット記録装置100は、第二の画像を、画像を形成すべき紙などの記録媒体、すなわち目的とする最終画像を形成するための記録媒体上に転写する転写用の押圧部材106を備えている。
本発明の転写型インクジェット記録装置100は、支持部材102によって支持された転写体101と、転写体101上に反応液を付与する反応液付与装置103と、反応液が付与された転写体101上にインクを付与し転写体上で第一の画像を形成するインク付与装置104と、転写体上の第一の画像から液体成分を吸収する液吸収装置105と、記録媒体108を押圧することによって液体成分を除去した転写体上の第二の画像を紙などの記録媒体108上に転写する押圧部材106と、を有する。また、転写型インクジェット記録装置100は、第二の画像を記録媒体108に転写した後の転写体101の表面をクリーニングする転写体クリーニング部材109を有していてもよい。
支持部材102は、回転軸102aを中心として図1の矢印Aの方向に回転する。この支持部材102の回転により、転写体101が移動される。移動される転写体101上には、反応液付与装置103による反応液、および、インク付与装置104によるインクが順次付与され、転写体101上に第一の画像が形成される。転写体101上に形成された第一の画像は、転写体101の移動により、液吸収装置105が有する液吸収部材105aと接触する位置まで移動される。
液吸収装置105の液吸収部材105aは、転写体101の回転に同期して移動する。転写体101上に形成された第一の画像は、この移動する液吸収部材105aと接触した状態を経る。この間に液吸収部材105aは、第一の画像から少なくとも水性液体成分を含む液体成分を除去する。この液吸収部材105aと接触した状態を経ることで、第一の画像に含まれる液体成分が除かれる。この接触した状態において、液吸収部材105aは、所定の押圧力をもって第一の画像に押圧されることが、液吸収部材105aを効果的に機能させる点で好ましい。
液体成分の除去を異なる視点で説明すれば、転写体上に形成された第一の画像を構成するインクを濃縮するとも表現することができる。インクを濃縮するとは、インクに含まれる液体成分が減少することによって、インクに含まれる色材や樹脂といった固形成分の液体成分に対する含有割合が増加することを意味する。
そして、第一の画像から液体成分が除去された後の第二の画像は、転写体101の移動により、記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108と接触する転写部に移動される。液体成分が除去された後の第二の画像が記録媒体108と接触している間に、押圧部材106が記録媒体108を押圧することによって、記録媒体上に画像(インク像)が転写される。記録媒体108上に転写された転写後インク像は第二の画像の反転画像である。以降の説明では、上述した第一の画像(液除去前インク像)、第二の画像(液除去後インク像)とは別に、この転写後インク像を第三の画像ということがある。
なお、転写体上には、反応液が付与された後にインクが付与されて第一の画像が形成されるため、非画像領域(非インク像形成領域)には、反応液がインクと反応することなく残っている。本装置では、液吸収部材105aは第一の画像からのみならず、未反応の反応液とも接触し、反応液の液体成分も併せて転写体101の表面上から除去している。
したがって、以上では、第一の画像から液体成分を除去すると表現して説明しているが、第一の画像のみから液体成分を除去するという限定的な意味合いではなく、少なくとも転写体上の第一の画像から液体成分を除去していればよいという意味合いで用いている。例えば、第一の画像とともに第一の画像の外側領域に付与された反応液中の液体成分を除去することも可能である。なお、液体成分は、一定の形を持たず、流動性を有し、ほぼ一定の体積を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクや反応液に含まれる水や有機溶媒等が液体成分として挙げられる。
また、上述したクリアインクが第一の画像に含まれている場合においても、液吸収処理によるインクの濃縮を行うことができる。例えば、転写体101上に付与された色材を含有するカラーインクの上にクリアインクが付与された場合、第一の画像の表面には全面的にクリアインクが存在する、あるいは、第一の画像の表面の一箇所または複数箇所にクリアインクが部分的に存在し、他の箇所はカラーインクが存在する。第一の画像において、カラーインク上にクリアインクが存在している箇所では、多孔質体が第一の画像の表面のクリアインクの液体成分を吸収し、クリアインクの液体成分が移動する。それに伴ってカラーインク中の液体成分が多孔質体側へ移動することで、カラーインク中の水性液体成分が吸収される。一方、第一の画像の表面にクリアインクの領域とカラーインクの領域が存在している箇所では、カラーインク及びクリアインクのそれぞれの液体成分が多孔質体側へ移動することで水性液体成分が吸収される。なお、このクリアインクには、転写体101から記録媒体への画像の転写性を向上させるための成分を多く含ませておいてもよい。例えばカラーインクよりも加熱により記録媒体への粘着性が高くなる成分の含有率を高くしておくことが挙げられる。
[転写体]
転写体101は、画像形成面を含む表面層を有する。表面層の部材としては、樹脂、セラミック等各種材料を適宜用いることができるが、耐久性等の点で圧縮弾性率の高い材料が好ましい。具体的には、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、加水分解性有機ケイ素化合物を縮合して得られる縮合物等が挙げられる。反応液の濡れ性、転写性等を向上させるために、表面処理を施して用いてもよい。表面処理としては、フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理、研磨処理、粗化処理、活性エネルギー線照射処理、オゾン処理、界面活性剤処理、シランカップリング処理などが挙げられる。これらを複数組み合わせてもよい。また、表面層に任意の表面形状を設けることもできる。
また転写体は、圧力変動を吸収する機能を有する圧縮層を有することが好ましい。圧縮層を設けることで、圧縮層が変形を吸収し、局所的な圧力変動に対してその変動を分散し、高速印刷時においても良好な転写性を維持することができる。圧縮層の部材としては、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。上記ゴム材料の成形時に、所定量の加硫剤、加硫促進剤等を配合し、さらに発泡剤、中空微粒子あるいは食塩等の充填剤を必要に応じて配合し多孔質としたものが好ましい。これにより、様々な圧力変動に対して気泡部分が体積変化を伴って圧縮されるため、圧縮方向以外への変形が小さく、より安定した転写性、耐久性を得ることができる。多孔質のゴム材料としては、各気孔が互いに連続した連続気孔構造のものと、各気孔がそれぞれ独立した独立気孔構造のものがある。本発明ではいずれの構造であってもよく、これらの構造を併用してもよい。
さらに転写体は、表面層と圧縮層との間に弾性層を有することが好ましい。弾性層の部材としては、樹脂、セラミック等、各種材料を適宜用いることができる。加工特性等の点で、各種エラストマー材料、ゴム材料が好ましく用いられる。具体的には、例えばフルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンのコポリマー、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴムは、圧縮永久ひずみが小さいため、寸法安定性、耐久性の面で好ましい。また、温度による弾性率の変化が小さく、転写性の点でも好ましい。
転写体を構成する各層(表面層、弾性層、圧縮層)の間に、これらを固定・保持するために各種接着剤や両面テープを用いてもよい。また、装置に装着する際の横伸びの抑制や、コシを保つために圧縮弾性率が高い補強層を設けてもよい。また、織布を補強層としてもよい。転写体は上記の材質による各層を任意に組み合わせて作製することができる。
転写体の大きさは、目的の印刷画像サイズに合わせて自由に選択することができる。転写体の形状としては、特に制限されず、具体的にはシート形状、ローラ形状、ベルト形状、無端ウェブ形状等が挙げられる。
[支持部材]
転写体101は、支持部材102上に支持されている。転写体の支持方法として、各種接着剤や両面テープを用いてもよい。または、転写体に金属、セラミック、樹脂等を材質とした設置用部材を取り付けることで、設置用部材を用いて転写体を支持部材102上に支持してもよい。
支持部材102には、その搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。支持部材の材質には金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。またこれらを組み合わせて用いることも好ましい。
[反応液付与装置]
本実施形態のインクジェット記録装置は、転写体101に反応液を付与する反応液付与装置103を有する。図1の反応液付与装置103は、反応液を収容する反応液収容部103aと、反応液収容部103aにある反応液を転写体101上に付与する反応液付与部材103b、103cとを有するグラビアオフセットローラの場合を示している。
[インク付与装置]
本実施形態のインクジェット記録装置は、反応液を付与された転写体101にインクを付与するインク付与装置104を有する。反応液とインクとが混合されることで第一の画像が形成され、次の液吸収装置105により第一の画像から液体成分が吸収される。
[液吸収装置]
本実施形態において、液吸収装置105は、液吸収部材105a、および、液吸収部材105aを転写体101上の第一の画像に押し当てる液吸収用の押圧部材105bを有する。押圧部材105bが作動して液吸収部材105aの第二の面を押圧することで、多孔質体の第一の面を転写体101の外周表面に接触させることにより形成されるニップ部に、第一の画像を通過させることにより、第一の画像からの液吸収処理を行うことができる。ここで、転写体101の外周表面に対して液吸収部材105aの押圧接触を可能とする領域を液吸収処理領域とする。
押圧部材105bの転写体101に対する位置は、位置制御機構(不図示)によって調整することができる。例えば、図1に示す矢印B方向に往復移動可能に構成し、液吸収処理が必要とされるタイミングで、液吸収部材105aを転写体101の外周面に接触させる、また、外周面から離間させることができる。
なお、液吸収部材105aおよび押圧部材105bの形状については特に制限がない。例えば、図1に示すように、押圧部材105bが円柱形状であり、液吸収部材105aがベルト形状であって、円柱形状の押圧部材105bでベルト形状の液吸収部材105aを転写体101に押し当てる構成であってもよい。また、押圧部材105bが円柱形状であり、液吸収部材105aが円柱形状の押圧部材105bの周面上に形成された円筒形状であって、円柱形状の押圧部材105bで円筒形状の液吸収部材105aを転写体に押し当てる構成であってもよい。
本発明において、インクジェット記録装置内でのスペース等を考慮すると、液吸収部材105aはベルト形状であることが好ましい。また、このようなベルト形状の液吸収部材105aを有する液吸収装置105は、液吸収部材105aを張架する張架部材を有していてもよい。図1において、105c、105d、105eは張架部材としての張架ローラである。これらの張架ローラと、該張架ローラに張架されたベルト形状の液吸収部材105aとにより、第一の画像からの液吸収を行う液吸収部材を搬送する液吸収部材搬送装置が構成されている。該搬送装置により、液吸収部材の液吸収処理領域への搬入、搬出及び再送を行うことができる。なお、図1において、押圧部材105bも張架ローラと同様に回転するローラ部材としているが、これに限定されるものではない。
張架ローラが液吸収部材105aの第一の画像と接触する面に当接する場合、張架ローラの材質を滑りやすい材質や、柔らかい材質にすることが好ましく、フッ素樹脂等が好ましい。また、第一の画像と接触する面に当接する張架ローラと、反対面に当接する張架ローラの表面材料を変えることも好ましい。
液吸収装置105では、多孔質体を有する液吸収部材105aを押圧部材105bによって第一の画像に押圧することで、第一の画像に含まれる液体成分の少なくとも一部を液吸収部材105aに吸収させ、第一の画像から液体成分を減少させた第二の画像とする。第一の画像中の液体成分を減少させる方法として、液吸収部材を押圧する本方式に加え、その他従来から用いられている各種手法、例えば、加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法等を組み合わせてもよい。また、液体成分を減少させた第二の画像にこれらの方法を適用してさらに液体成分を減少させてもよい。
以下、液吸収装置105における、各種条件と構成について詳細に述べる。
(加圧条件)
転写体上の第一の画像に対して押圧する液吸収部材の圧力が2.9N/cm(0.3kgf/cm)以上であれば、第一の画像中の液体成分をより短時間に固液分離でき、第一の画像中から液体成分を除去できるため好ましい。なお、本明細書における液吸収部材の圧力とは、被記録体と液吸収部材との間のニップ圧を示しており、面圧分布測定器(商品名:I−SCAN、新田株式会社製)により面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割って、値を算出したものである。
(作用時間)
第一の画像に液吸収部材105aを接触させる作用時間は、第一の画像中の色材が液吸収部材へ付着することをより抑制するために、50ms(ミリ秒)以内であることが好ましい。なお、本明細書における作用時間とは、上述した面圧測定における、被記録体の移動方向における圧力感知幅を、被記録体の移動速度で割って算出される。以降、この作用時間を液吸収ニップ時間と称す。
このようにして、転写体101上には、第一の画像から液体成分が吸収され、液体成分の減少した第二の画像が形成される。第二の画像は、次に転写部において記録媒体108上に転写される。
(前処理)
液吸収装置105には、必要に応じて前処理液付与部を有する前処理液付与装置を設けることができる。本実施形態においては、多孔質体を有する液吸収部材105aを第一の画像に接触させる前に、液吸収部材に湿潤液(第三の液体)を付与する前処理付与装置(図1および2では不図示)によって前処理を施すことが好ましい。
湿潤液は、多孔質体の第一の面との接触角が90°未満であり、多孔質体に目的とする液体吸収性を与えることができるものであれば特に限定されない。水性液媒体(水溶性液体)、例えば、水、あるいは水と水溶性有機溶媒との混合物を含有し、界面活性剤を加えてその表面張力を適宜調整して用いることができる。この湿潤液の調製に用いられる材料としては特に制限はないが、界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の少なくとも1種を用いることが好ましい。湿潤液は、水及び水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水は、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、エタノールやイソプロピルアルコール等の公知の有機溶剤をいずれも用いることができる。液吸収部材の前処理において、湿潤液の付与方法は特に限定されないが、浸漬や液滴滴下が好ましい。
前処理液付与工程は、液吸収工程の前に行うことが好ましく、液回収工程と液吸収工程の間に行うことがより好ましい。
[液吸収部材の初期化・クリーニング]
多孔質体を有する液吸収部材105aを繰り返して使用し、連続印刷を可能とするためには、多孔質体の表面へ付着するゴミの除去や、多孔質体に吸収した液体の除去などを実施することにより、液吸収部材を初期化する工程が必要となる。図6は、図1に示す転写型インクジェット記録装置における液吸収装置105を拡大した模式図である。また、液吸収を行った多孔質体を初期化するための複数の工程を示している。以下、図6を用いて、多孔質体を初期化するための各工程について説明する。
図6に示すように、液吸収装置105は、多孔質体を有する液吸収部材105aと、液吸収部材105aを張架する押圧部材105b、張架部材105c、105d、105eとから構成される液吸収部材搬送装置6を備えている。液吸収部材105aは、液吸収部材搬送装置6によって、矢印C方向に搬送されている。液吸収部材105aの搬送経路には、液吸収部材105aを押圧部材105bによって転写体1上の第一の画像(不図示)に押圧して液吸収を行う液吸収部2と、第一の画像から液体成分を吸収した後の液吸収部材105aに対して、回復液付与装置11によって回復液を付与する回復液付与部3と、液吸収部材105aに吸収された液体成分を液回収装置12によって回収する液回収部4と、がこの順で配置されている。上記の搬送経路内を液吸収部材が繰り返し搬送されることによって、液吸収部材は、液吸収工程と、回復液付与工程と、液回収工程とに繰り返し供される。以下、液吸収部2において液吸収を行う工程を液吸収工程2、回復液付与部3において回復液を付与する工程を回復液付与工程3、液回収部4において液回収を行う工程を液回収工程4とも称する。
具体的には、時計回りに回転する転写体1に対して、図6では不図示の反応液付与装置103およびインク付与装置104により、反応液の塗布および記録ヘッドからのインク吐出が、この順で実施され、転写体1の表面上で、反応液とインクとが凝集反応を起こして凝集物(第一の画像)が形成される。液吸収部材(例えば、無端状の多孔質ベルト)105aは、反時計回りに回転しており、液吸収処理領域において上記の凝集物と接触してニップ部を形成し、凝集物から余分な液吸収を行う液吸収工程2を経る。次に、液吸収部材に吸収された液体の増粘防止のため、また、液吸収部材内部の液分布を均一にするために、回復液付与工程3において回復液を付与する。回復液付与工程3において、11bは回復液を保持するチャンバーであり、チャンバー内の回復液を粘着ゴムローラ11aの表面へ汲み上げて、液吸収部材の表面へ回復液を付与する。
多孔質体を繰り返し使用して第一の画像からの液吸収を行うためには、次に多孔質体が第一の画像と接触する前に、多孔質体中の空き容積を確保する必要がある。そこで、回復液付与工程3の次の工程として、液吸収部材が一旦吸収した液体を液回収装置12によって除去または回収する液回収工程4を実施する。一方で、液吸収工程2を経た転写体1には、余分な液分が除去された状態のインクが残存しており、次の転写プロセスで、記録媒体への転写が行われる。
このように、液吸収部材搬送装置によって液吸収部材105aが搬送経路内を繰り返し搬送されることにより、液吸収部材は、液吸収工程と回復液付与工程と液回収工程とに、この順で繰り返し供される。その結果、一度液吸収工程を経た液吸収部材105aが、再度液吸収処理領域に搬送され、再び液吸収工程に供される前に、該液吸収部材に含まれる液体成分を回収することが可能となり、液吸収部材を繰り返し使用する場合においても、液吸収部材の液吸収性能の低下を抑制することができる。
しかしながら、後述するように、発明者らが、上述した液吸収部材の初期化工程:液吸収工程2→回復液付与工程3→液回収工程4を繰り返し行い、連続印刷を試みたところ、20枚目の液吸収工程2のタイミングにおいて、液吸収部材表面へ付着したゴミが、回復液付与工程3→液回収工程4でも残ったまま搬送経路内を1周して、次の液吸収工程2において、該ゴミが転写体上の第一の画像へ移動し、転写後の印刷画像において画像欠陥を発生させてしまうことが分かった。この画像欠陥とは、例えばシアン色の画像を印刷した後にイエロー色の画像を印刷すると、イエロー色の画像にシアン色のシミのようなものが点在する現象である。
これは、転写体へ先に印刷したシアン色の画像に対して、液吸収部材を用いて液吸収工程を実施した際に、余分な液体成分の吸収とともにインク中に含まれる固形成分である色材までもが少量であるが液吸収部材表面へ移動してしまい、その結果、後から転写体へ印刷したイエロー色の画像の液吸収工程のタイミングで、転写体のイエロー色のベタ画像へシアン色の色材が移動したためであると考えられる。
そのため、本発明に係るインクジェット記録装置は、さらに、多孔質体に付着したインク等に由来するゴミをクリーニング部材によって除去するクリーニング部を有することを特徴とする。しかしながら、発明者らが検討した結果、クリーニング部材を多孔質体へ当接させてゴミを除去するクリーニング工程は、上記液吸収部材の搬送経路内のいずれの位置に配置した場合でも十分な効果が得られるわけではなく、回復液付与工程や液回収工程といった他の多孔質体の初期化工程との順序によって、多孔質体のクリーニング性能の効果に違いがあることを見出した。
具体的には、図7に示すように、多孔質体の初期化工程:液吸収工程2→回復液付与工程3→液回収工程4のいずれかの段階においてクリーニング工程5を実施する場合、クリーニング工程の実施位置としては、液吸収工程2→回復液付与工程3の間(位置5A)、回復液付与工程3→液回収工程4の間(位置5B)、液回収工程4→液吸収工程2の間(位置5C)の3つが想定される。これらの中でも、少なくとも、液吸収工程2→回復液付与工程3の間(位置5A)、または、液回収工程4→液吸収工程2の間(位置5C)において、クリーニング工程を実施することが好ましい。すなわち、少なくとも液吸収部と回復液付与部の間および液回収部と液吸収部の間のいずれか一方にクリーニング部が配置されることが好ましい。
なお、液吸収部材の搬送経路内には、上記各工程において使用する各種ローラ以外の張架ローラ等が配置されていてもよい。以下、液吸収部、液回収部、クリーニング部について詳細に述べる。
(液吸収部)
液吸収部2では、上述した多孔質体を有する液吸収部材105aを押圧部材105bによって第一の画像に押圧して第一の画像から第一の液体の吸収を行う。
(回復液付与部)
回復液付与部3では、液吸収部材105aの有する多孔質体が繰り返し第一の画像に接触するまでの間に、回復液付与装置を用いて、液吸収部材105aに対して、インクまたは/及び反応液よりも粘度の低い回復液を付与する。液吸収部材を繰り返し使用する場合、液吸収工程2の後であって、液回収工程4の前に、液吸収部材105aに対して回復液を付与することにより、多孔質体内部の液体成分の増粘を抑制し、また、多孔質体内部の液体分布を均一にすることができる。図7では、回復液付与部材11aと、回復液を保持するチャンバー11bと張架ローラ105cとの組み合わせにより回復液付与部を構成する回復液付与装置11が図示されている。
回復液は、水を主成分として調製することができ、液体粘度がインクまたは/及び反応液よりも低く、かつ無色透明なものであれば特に限定されない。回復液として、水のみを用いることも可能である。水としては、イオン交換等により脱イオンした水であることが好ましい。回復液は、本発明の効果が得られる範囲であれば、さらに水溶性有機溶剤を含有していてもよい。水溶性有機溶剤の種類は特に限定されず、エタノールやイソプロピルアルコール等の公知の有機溶剤をいずれも用いることができる。また、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、具体的には、アセチレノールE100(商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
また、回復液を汲み上げて多孔質体へ付与する回復液付与部材11aとしては、例えばゴムローラを用いることができる。ゴムの材質は、回復液の液量や粘度によって、公知の材質から適宜選択して用いることができる。ゴムの表面粗さについても同様である。ゴムローラに用いるゴムとしては、例えばニトリルゴム(NBR)が挙げられる。
回復液は、インクの成分から色材を除いた成分を用いて、その粘度を所定の値に調整する方法により調製することもできる。この場合には、先にインクに関する「(水及び水溶性有機溶剤)」及び「(その他添加剤)」の項において説明した各種材料を用いることができる。回復液は、インクまたは/及び反応液に対し、低い粘度である。低い粘度であることにより、回復液付与後の液体が低粘度化しやすくなり、また、多孔質体内部の液体を均一に分布させることができる。その結果、多孔質体からの液回収を効率よく行うことができる。なお、本発明におけるインク、反応液、回復液の粘度とは、乾燥前の粘度である。インクおよび反応液に対し、回復液の粘度は2.0cP以上低いことが好ましい。
また、回復液は、インク、反応液に対し、水分濃度が高いことが好ましい。水分濃度が高いことにより、回復液を付与した際の、吸収体内部の残存溶剤と、付与した回復液との置換速度が高まる。さらに、回復液は、反応液、インクと比較して蒸気圧が低いことも好ましい。吸収体内部に付与された回復液が蒸発しにくい場合には、液体成分が増粘されにくくなり、回復液の使用量を抑制することが可能となる。蒸気圧を低くする有機溶媒としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
回復液を付与するタイミングについて、回復液は毎回付与してもよいが、液回収工程において空気抜け等の問題が発生しない範囲においては、間欠的に回復液を付与することもできる。間欠的に回復液を付与することで、回復液の使用量を抑制することが可能となる。間欠的に付与する際は、回復液付与装置11を液吸収部材105aから離間させる装置(不図示)により離間させることが好ましい。例えば、液吸収部材105aに対して回復液を付与する位置へ移動する動作と液吸収部材105aから離間する動作、例えば図7に示す矢印D方向の往復移動が、必要とされるタイミングで可能となるように、回復液付与装置を設置することができる。この往復動作は、昇降用エアーシリンダ(不図示)により昇降可能とした昇降ステージ(不図示)に回復液付与装置を配置した構成により行うことができる。
なお、回復液は、上述した液吸収部材105aの前処理に用いる湿潤液と同じ液体を用いることも、装置が簡易化されるため好ましい。そして、回復液付与装置は、前処理液付与装置を兼ねることも好ましい。したがって、本発明においては、回復液付与工程を実施することにより、前処理工程を省略することができる。その場合、回復液としては、回復液と湿潤液の要件を同時に満たす液体を用いる。具体的には、インクまたは/及び反応液よりも低粘度であり、かつ、多孔質体の第一の面との接触角が90°未満である液体を用いることにより、回復液が湿潤液を兼ねることができる。このような構成とすることにより、装置を単純化でき、低コスト化が可能となる。
(液回収部)
液回収部4では、多孔質体(液吸収部材)105aに吸収された液体成分を液回収装置12によって回収する。液体成分は、公知の手段により多孔質体105aから回収することが可能である。例としては、加熱による方法、低湿空気を送風する方法、減圧する方法、多孔質体を絞る方法等が挙げられる。図6において、12はエアーブロー方式のノズルを模擬しており、多孔質体と第一の画像との接触面である第一の面の裏側である第二の面に対し、ノズル12から噴霧されるエアーが吹き付けられて、多孔質体が保持している液体を飛ばす方法を示している。また別の方式として、負圧を発生させたキャップなどを多孔質体へ接触させて、多孔質体が一旦吸収した液体を除去、または回収する方式を用いることも可能である。
(クリーニング部)
クリーニング部5では、多孔質体の第一の面にクリーニング部材を接触させて、該第一の面に付着したインク等に由来するゴミをクリーニング部材によって除去する。上記のとおり、クリーニング部は、少なくとも、液吸収部と回復液付与部との間(5A)、または、液回収部と液吸収部との間(5C)に配置される。多孔質体へ付着するゴミの種類としては、主に上記のようなインク中に含まれる色材やエマルジョン樹脂などの固形成分ゴミと、ホコリや紙粉などの繊維ゴミなどが想定される。発明者らが検討したところ、インクジェット記録装置の実使用形態のほとんどのケースにおいて、どちらのゴミも液吸収工程のタイミングで多孔質体表面へ付着していることが分かった。さらに、本発明においては、クリーニング工程を実施するタイミングによって、クリーニング性能が変化すること、および、付着するゴミの種類によって、クリーニング性能に影響するパラメータが異なることを見出した。詳細は、実施例において説明する。
なお、多孔質体へ付着するゴミの種類が限定できないケースなどにおいても、少なくとも液吸収部と回復液付与部の間および液回収部と液吸収部の間のいずれか一方にクリーニング工程5を配置することにより、本発明の効果をより得ることができる。
多孔質体にインク由来の凝集物ゴミが付着したまま回復液付与部へ突入すると、回復液を保持するチャンバー内にインク色材成分が徐々に溶け込み、回復液の交換頻度が増加する場合がある。このため、5Aにクリーニング部を設置することは、回復液の交換頻度の低減や、回復液を供給−廃液する経路のフィルターなどの負荷低減等に有効である。
クリーニング部材としては、粘着性を有するゴムローラを用いることができる。その際、多孔質体の最表層は液吸収性能を満足するために厚みが薄く、かつ機械強度が弱いため、その構造を粘着ゴムローラの当接や剥離によって壊さないレベルの範囲でクリーニング工程を行う。粘着ゴムローラの材質は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、ブチル、シリコーン、ウレタンなどのゴム材質が挙げられる。
クリーニング部は、液吸収部材の搬送経路内に2つ以上配置されていてもよい。すなわち、搬送経路においてクリーニング工程を2回以上有していてもよい。その場合においても、1つのクリーニング部が、少なくとも液吸収部と回復液付与部の間および液回収部と液吸収部の間の少なくともいずれか一方に配置される。
液吸収部と回復液付与部の間に配置されるクリーニング部が有するクリーニング部材は、多孔質体へ付着したインク凝集物を効率的に除去し、かつ該クリーニング部材に付着したインク凝集物をブレード等の二次クリーニング部材を用いて効果的に二次クリーニングを行う(二次クリーニング工程)ために、硬い材料であることが好ましい。なお、二次クリーニング部材は、クリーニング部材に接触して配置される。
一方で、液回収部と液吸収部との間に配置されるクリーニング部が有するクリーニング部材は、液吸収部材105aが搬送されている間に付着したゴミを除去する。ゴミ付着が少ない場合、該クリーニング部材の二次クリーニングをオフラインで行うことが好ましい。また、間欠的にクリーニング工程を行うことが好ましい。さらに、液回収部と液吸収部との間に配置されるクリーニング部が有するクリーニング部材としては、液吸収部と回復液付与部との間に配置される場合と比較して、柔らかい材料を用いることが好ましい。なお、硬さは圧縮弾性率で示すことが可能であり、公知の手法で測定した値を示す。
多孔質体の第一の面にクリーニング部材を接触させる方法としては、例えば、多孔質体の第二の面にバックアップローラを配置し、バックアップローラにより多孔質体を挟み込み、粘着ゴムローラを多孔質体の第一の面に接触させる方法が挙げられる。
(転写用の押圧部材)
本実施形態では、第二の画像と記録媒体搬送装置107によって搬送される記録媒体108とが接触している間に、転写用の押圧部材106が記録媒体108を押圧することで記録媒体108上に画像(インク像)を転写する。転写体101上の第一の画像に含まれる液体成分を除去した後に、記録媒体108へ転写することにより、カールや、コックリング等を抑制した記録画像を得ることが可能となる。
押圧部材106には、記録媒体108の搬送精度や耐久性の観点からある程度の構造強度が求められる。押圧部材106の材質には金属、セラミック、樹脂等が好ましく用いられる。中でも特に、転写時の加圧に耐え得る剛性や寸法精度のほか、動作時のイナーシャを軽減して制御の応答性を向上するために、アルミニウム、鉄、ステンレス、アセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、シリカセラミクス、アルミナセラミクスが好ましく用いられる。またこれらを組み合わせて用いてもよい。押圧部材106の形状については特に制限されないが、例えばローラ形状のものが挙げられる。
転写体101上の第二の画像を記録媒体108に転写するために押圧部材106が記録媒体108を押圧する時間については特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体の耐久性を損なわないようにするために、5ms以上100ms以下であることが好ましい。なお、本実施形態における押圧する時間とは、記録媒体108と転写体101間が接触している時間を示しており、面圧分布測定器(商品名:I−SCAN、新田株式会社製)により面圧測定を行い、加圧領域の搬送方向長さを搬送速度で割って、値を算出したものである。
また、転写体101上の第二の画像を記録媒体108に転写するために押圧部材106が記録媒体108を押圧する圧力についても特に制限はないが、転写が良好に行われ、かつ転写体の耐久性を損なわないようにする。このために、圧力が9.8N/cm(1kgf/cm)以上294.2N/cm(30kgf/cm)以下であることが好ましい。なお、本実施形態における圧力とは、記録媒体108と転写体101間のニップ圧を示しており、面圧分布測定器により面圧測定を行い、加圧領域における加重を面積で割って、値を算出したものである。
転写体101上の第二の画像を記録媒体108に転写するために押圧部材106が記録媒体108を押圧しているときの温度についても特に制限はないが、インクに含まれる樹脂成分のガラス転移点以上又は軟化点以上であることが好ましい。また、加熱には転写体101上の第二の画像、転写体101及び記録媒体108を加熱する加熱装置を備える態様が好ましい。
(記録媒体および記録媒体搬送装置)
本実施形態において、記録媒体108は特に限定されず、公知の記録媒体をいずれも用いることができる。記録媒体としては、ロール状に巻回された長尺物、あるいは所定の寸法に裁断された枚葉のものが挙げられる。材質としては、紙、プラスチックフィルム、木板、段ボール、金属フィルムなどが挙げられる。
また、図1において、記録媒体108を搬送するための記録媒体搬送装置107は、記録媒体繰り出しローラ107aおよび記録媒体巻き取りローラ107bによって構成されているが、記録媒体を搬送できればよく、特にこの構成に限定されるものではない。
(制御システム)
本実施形態における転写型インクジェット記録装置は、各装置を制御する制御システムを有する。図3は、図1に示す転写型インクジェット記録装置における、装置全体の制御システムを示すブロック図である。図3において、301は外部プリントサーバー等の記録データ生成部、302は操作パネル等の操作制御部、303は記録プロセスを実施するためのプリンタ制御部、304は記録媒体を搬送するための記録媒体搬送制御部、305は印刷するためのインクジェットデバイスである。
図4は、図1の転写型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。401はプリンタ全体を制御するCPU、402はCPUの制御プログラムを格納するためのROM、403はプログラムを実行するためのRAMである。404はネットワークコントローラ、シリアルIFコントローラ、ヘッドデータ生成用コントローラ、モーターコントローラ等を内蔵した特定用途向けの集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)である。405は液吸収部材搬送モータ406を駆動するための液吸収部材搬送制御部であり、ASIC404からシリアルIFを介して、コマンド制御される。407は転写体駆動モータ408を駆動するための転写体駆動制御部であり、同様にASIC404からシリアルIFを介してコマンド制御される。409はヘッド制御部であり、インクジェットデバイス305の最終吐出データ生成、駆動電圧生成等を行う。
<直接描画型のインクジェット記録装置>
本発明における別の実施形態として、直接描画型インクジェット記録装置が挙げられる。直接描画型インクジェット記録装置において、被記録体は画像を形成すべき記録媒体、すなわち目的とする最終画像を形成すべき記録媒体である。
図2は、本実施形態における直接描画型インクジェット記録装置200の概略構成の一例を示す模式図である。直接描画型インクジェット記録装置は、前述した転写型インクジェット記録装置と比較して、転写体101、支持部材102、転写体クリーニング部材109を有さず、記録媒体208上で画像を形成する点以外は、転写型インクジェット記録装置と同様の部材を有する。したがって、記録媒体208に反応液を付与する反応液付与装置203、記録媒体208にインクを付与するインク付与装置204、および、記録媒体208上の第一の画像に接触する液吸収部材205aにより第一の画像に含まれる液体成分を吸収する液吸収装置205は、転写型インクジェット記録装置と同様の構成を有しており、説明を省略する。
なお、本実施形態の直接描画型インクジェット記録装置において、液吸収装置205は液吸収部材205a、および、液吸収部材205aを記録媒体208上の第一の画像に押し当てる液吸収用の押圧部材205bを有する。また、液吸収部材205aおよび押圧部材205bの形状については特に制限がなく、転写型インクジェット記録装置で使用可能な液吸収部材および押圧部材と同様の形状のものを用いることができる。また、液吸収装置205は、液吸収部材を張架する張架部材を有していてもよい。図2において、205c、205d、205e、205f、205gは張架部材としての張架ローラである。張架ローラの数は図4の5個に限定されるものではなく、装置設計に応じて必要数を配置すればよい。また、インク付与装置204によって記録媒体208にインクを付与するインク付与部、および、液吸収部材205aを記録媒体上の第一の画像と接触させて液体成分を除去する液体成分除去部と対向する位置に、記録媒体を下方より支持する不図示の記録媒体支持部材が設けられていてもよい。
また、本実施形態において、液吸収装置205を構成する液吸収部材205aは、転写型インクジェット記録装置と同様に、その搬送経路に、例えば図8に示すように、液吸収部2、回復液付与部3、液回収部4をこの順で有する。そして、クリーニング部5が、少なくとも液吸収部と回復液付与部の間(5A)および液回収部と液吸収部の間(5C)のいずれか一方に配置される。液吸収部材205aは、液吸収部材搬送装置(不図示)によって搬送される。液吸収部2、回復液付与部3、液回収部4、およびクリーニング部5に関しては、転写型インクジェット記録装置と同様の構成を有しており、説明を省略する。なお、図8は、各初期化工程の配置の一例を示すものであり、液吸収部材の搬送経路内に所定の順序で配置されている限りは、図示する位置以外に各工程が配置されていてもよい。
(記録媒体搬送装置)
本実施形態の直接描画型インクジェット記録装置において、記録媒体搬送装置207は特に限定されず、公知の直接描画型インクジェット記録装置における搬送装置を用いることができる。例として、図2に示すように、記録媒体繰り出しローラ207a、記録媒体巻き取りローラ207b、記録媒体搬送ローラ207c、207d、207e、207fを有する記録媒体搬送装置が挙げられる。
(制御システム)
本実施形態における直接描画型インクジェット記録装置は、各装置を制御する制御システムを有する。図2に示す直接描画型インクジェット記録装置における、装置全体の制御システムを示すブロック図は、図1に示す転写型インクジェット記録装置と同様に、図3に示す通りである。
図5は、図2の直接描画型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図である。転写体駆動制御部407及び転写体駆動モータ408を有さない以外は、図4における転写型インクジェット記録装置におけるプリンタ制御部のブロック図と同等である。すなわち、501はプリンタ全体を制御するCPU、502はCPUの制御プログラムを格納するためのROM、503はプログラムを実行するためのRAMである。504はネットワークコントローラ、シリアルIFコントローラ、ヘッドデータ生成用コントローラ、モーターコントローラ等を内蔵したASICである。505は液吸収部材搬送モータ506を駆動するための液吸収部材搬送制御部であり、ASIC504からシリアルIFを介して、コマンド制御される。509はヘッド制御部であり、インクジェットデバイス305の最終吐出データ生成、駆動電圧生成等を行う。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
本実施例では、図1に示す転写型インクジェット記録装置を用い、液吸収装置105としては、図6に示す装置を用いた。液吸収部材105aとしては、以下2層を加熱ラミネートして得た多孔質体からなるベルト状の液吸収部材(多孔質ベルト)を用いた。
第一の層:平均孔径0.2μm、厚み10μmの撥水PTFE
第二の層:オレフィン製の不織布(商品名:HOP60、廣瀬製紙株式会社製)
回復液としては、純水を使用し、チャンバー11bに保持された回復液を、回復液付与部材11aとしてのゴムローラの表面へ汲み上げて、液吸収部材表面へ付与した。ゴムローラ11aの材質はニトリルゴム(NBR)とした。さらに、本実施例では、液回収工程4において、エアーブロー方式のノズル12を用いて、液吸収部材の第二の面へ、ノズル12から噴霧されるエアーを吹き付け、多孔質体が保持している液体を除去・回収した。
初めに、クリーニング工程を実施せず、転写体上に第一の画像を形成した後に上述した液吸収部材の初期化工程:液吸収工程2→回復液付与工程3→液回収工程4のみを行う操作を繰り返して、連続印刷を実施した。その結果、20枚目の液吸収工程2のタイミングで液吸収部材表面へ付着したゴミが、回復液付与工程3→液回収工程4でも残ったまま搬送経路を1周して、次の液吸収工程2において、転写体上の第一の画像へ移動し、転写後の印刷画像において画像欠陥が発生した。具体的には、シアン色の画像を印刷した後にイエロー色の画像を印刷した際に、イエロー色の画像にシアン色のシミのようなものが点在していた。なお、液吸収部材へ付着したゴミは、インク中に含まれる色材やエマルジョン樹脂などの固形成分ゴミと、ホコリや紙粉などの繊維ゴミであった。
そこで、次に、初期化工程に加え、以下のとおりクリーニング工程5を実施した。なお、以後のクリーニング工程で使用した粘着ゴムローラの材質、及び液吸収部材との当接条件においては、液吸収部材の破壊がないことを別途検証している(不図示)。
図7に示すように、図6に示す液吸収部材の初期化工程:液吸収工程2→回復液付与工程3→液回収工程4に対して、クリーニング工程5を実施した。クリーニング部には、粘着ゴムローラ13aと、液吸収部材を挟むために配置するバックアップローラ13bを準備した。そして、一点鎖線で囲んだ5A、5B及び5Cの各位置において、それぞれクリーニング工程を実施し、クリーニング工程の実施位置によるクリーニング性能の変化を確認する検証実験を行った。クリーニング工程5を実施する位置について、位置5Aは液吸収工程2→回復液付与工程3の間、位置5Bは回復液付与工程3→液回収工程4の間、位置5Cは液回収工程4→液吸収工程2の間である。
なお、液吸収部材に付着するゴミとして、インク中の固形成分ゴミと繊維上の紙粉ゴミの2種類を用いて検討した。また、本検討における各種条件は以下のとおりである。結果を表1に示す。
転写体及び液吸収部材の搬送速度:0.3m/sec
粘着ゴムローラ条件;
ゴム材質・硬度:ブチルゴム、30°(アスカーC硬度)
ニップ圧/ニップ幅:9.8N/cm(1.0kgf/cm)、6mm
上記条件下での粘着ゴム−多孔質体間の剥離時タック力(ドライ状態):3.9N/cm(0.4kgf/cm
表1に示すように、液吸収工程2→回復液付与工程3の間にクリーニング工程5を配置した場合(5A)、インク中の固形成分ゴミは十分に除去され、次の出力画像における画像欠陥は解消された。また、繊維上の紙粉ゴミについても画像欠陥に至らないレベルで除去されていた。
一方、回復液付与工程3→液回収工程4の間にクリーニング工程5を配置した場合(5B)、インク中の固形成分ゴミは除去しきれず、次の出力画像で画像欠陥が見られた。また、繊維上の紙粉ゴミについても十分には除去されていなかった。
液回収工程4→液吸収工程2の間にクリーニング工程5を配置した場合(5C)、インク中の固形成分ゴミについては、除去できている場合と除去できていない場合とが混在した。そのため、表1では△と表記している。一方、繊維上の紙粉ゴミについては、上記の5Aで実施した場合と比べても明らかに優れた結果であった。
このように、クリーニング工程を実施するタイミングによってクリーニング性能が変化した要因について、以下に2つの現象を説明しながら考察する。
第一に、クリーニング性能は、粘着ゴムローラとバックアップローラとで液吸収部材を挟み、液吸収部材表面と粘着ゴムローラ間でニップ部を形成する際の粘着ゴム−多孔質体間の剥離時タック力と関係しており、該剥離時タック力は、液吸収部材が保持している液体成分の量によって変化すると推定した。
液吸収部材は複数の多孔質層で形成されており、その多孔質層の空隙部に液体を保持している。また、多孔質体は、押下する圧力によって弾性変形(潰れる方向)する。つまり、液吸収部材が保持している液量が多い状態で、液吸収部材が粘着ゴムローラとバックアップローラとのニップ部へ突入すると、多孔質体からニップ部へ液体が浸み出してしまう。なお、この現象については、別途、ニップ部観察検討を行い検証している(不図示)。
上記検証実験において、クリーニング工程を5A〜5Cの位置で実施した場合、各位置において液吸収部材が保持する液量の相対的な関係は、表2に示すとおりであった。また、粘着ゴム−多孔質体間の剥離時タック力は、多孔質体がドライな状態では3.9N/cm(0.4kgf/cm)であった。これに対して、回復液付与工程3→液回収工程4の間にクリーニング工程5を配置した場合(5B)、液吸収部材には5Aと比較して多量の液体が含まれ、粘着ゴム−多孔質体間の剥離時タック力は0.98N/cm(0.1kgf/cm)以下であることを確認した。
このように、液吸収部材が保持する液量が多いほど、ニップ部へ浸み出す液量が増加し、粘着ゴム−多孔質体間の剥離時タック力が低下することが分かった。この現象は、特に回復液付与工程3→液回収工程4の間(5B)におけるクリーニング性能について、紙粉ゴミとインク中の固形成分ゴミのいずれについても十分なクリーニング性能が得られなかったことと一致している。
ここで、上記現象だけを基にクリーニング工程の配置を考えると、液吸収部材の保持液量が最も少ない液回収工程4→液吸収工程2の間にクリーニング工程5を配置した場合(5C)に、最も優れたクリーニング性能が得られるはずである。この推定に対して、表2に示すように、紙粉ゴミのクリーニング性能は液吸収部材の保持液量との相関が高く、液吸収部材の保持液量が最も少なくなる位置5Cでのクリーニング性能が非常に良い結果であった。一方で、インク中の固形成分ゴミについては、上記のとおり、十分に除去できている場合と十分に除去できていない場合とがあり、紙粉ゴミのクリーニング性能の結果と一致しない。
そこで、第二に、クリーニング性能には、液吸収部材表面に付着するゴミの種類によって、液吸収部材表面とゴミとの間に働くゴミの付着力(ゴミ−多孔質体間タック力)が影響する場合があると推定した。
上記推定を検証するため、以下の検討を行った。図7に示す液吸収部材を使用して、液吸収部材が保持している液量が少ない状態のまま変化しないように、回復液付与部3を液吸収部材から離間し、さらに液回収部4のエアーブローをOFF状態にした。そして、多孔質体の保持液量を一定とした場合における、インク中の固形成分ゴミのクリーニング性能を確認した。その結果を表3に示す。
この検討では、クリーニング性能は位置5A>5B>5Cの順に優れていた。これは、ゴミが液吸収工程2において液吸収部材表面に付着し、クリーニング工程に達するまでの経過時間が、位置5A、5B、5Cの順に大きくなるため、それに従いゴミと液吸収部材表面に発生する付着力も大きくなるためであると推定される。
以上の結果から、クリーニング性能には、少なくとも、ゴミ−多孔質体間タック力F1(ゴミが多孔質体表面へ付着する付着力)と、粘着ゴム−多孔質体間の剥離時タック力(粘着ゴムローラのローラ粘着力)F2とが関係していることが明らかとなった。そして、図9Aに示すように、ゴミ−多孔質体間タック力F1に対して、粘着ゴム−多孔質体間の剥離時タック力(ローラ粘着力)F2が大きい場合に、ゴミ14は多孔質体105aから除去される。なお、F1は多孔質体の保持液量と相関を有し、F2はゴミが多孔質体表面に付着している時間と相関を有するが、ゴミの種類によって、その相関の程度が変化することが分かった。
したがって、インク中の固形成分ゴミについては、図9Bに示すように、ゴミが多孔質体表面へ付着する付着力F1が最も小さく、かつ、粘着ゴム−多孔質体間の剥離時タック力F2が2番目に大きい液吸収工程2→回復液付与工程3の間にクリーニング工程5を配置した5Aの位置でのクリーニング性能が高くなったと推定される。一方で、紙粉ゴミについては、多孔質体の保持液量がクリーニング性能に大きく寄与したため、表2に示す結果が得られたものと推定される。
なお、紙粉ゴミとインク中の固形成分ゴミのいずれについても、回復液付与工程3→液回収工程4の間(5B)にクリーニング工程5を配置した場合は、5A、5Cに比べ、クリーニング性能が十分ではない結果であった。これは、多孔質体の保持液量が多いためF2が小さくなり、かつ、ゴミ−多孔質体間タック力F1が中程度に大きいためであると推定される。
Figure 0006849448
Figure 0006849448
Figure 0006849448
1 転写体
2 液吸収部
3 回復液付与部
4 液回収部
5 クリーニング部
6 液吸収部材搬送装置
11 回復液付与装置
11a 回復液付与部材
11b チャンバー
12 液回収装置
13 クリーニング装置
13a 粘着ゴムローラ
13b バックアップローラ
14 ゴミ
100 転写型インクジェット記録装置
101 転写体
102 支持部材
102a 支持部材の回転軸
103 反応液付与装置
103a 反応液収容部
103b、c 反応液付与部材
104 インク付与装置
105 液吸収装置
105a 液吸収部材
105b 液吸収用の押圧部材
105c、d、e 張架ローラ
106 転写用の押圧部材
107 記録媒体搬送装置
107a 記録媒体繰り出しローラ
107b 記録媒体巻き取りローラ
108 記録媒体
109 転写体クリーニング部材

Claims (14)

  1. 被記録体にインクを付与して該被記録体上に第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成する画像形成ユニットと、
    前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部を吸収する多孔質体を有する液吸収部材と、
    を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記第一の液体を吸収した前記多孔質体に前記インクよりも粘度の低い回復液を付与する回復液付与装置と、
    前記多孔質体に吸収された前記第一の液体を回収する液回収装置と、
    前記液吸収部材を搬送する液吸収部材搬送装置と、
    前記多孔質体をクリーニングするクリーニング部材と、を備え、
    前記液吸収部材の搬送経路には、
    前記多孔質体が前記第一の画像から前記第一の液体を吸収する液吸収部と、
    前記回復液付与装置によって前記回復液が付与される回復液付与部と、
    前記多孔質体に吸収された前記第一の液体が前記液回収装置によって回収される液回収部と、
    がこの順に配置され、
    前記多孔質体が前記クリーニング部材によってクリーニングされるクリーニング部が2つ以上配置され、該クリーニング部が、前記液吸収部と前記回復液付与部の間および前記液回収部と前記液吸収部の間に配置される
    ことを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記画像形成ユニットは、前記インクを付与する前に前記被記録体にインク増粘用の反応液を付与し、
    前記回復液は、前記反応液よりも粘度が低い、
    ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記被記録体は、前記第一の画像と、前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部が除去された第二の画像とを一時的に保持する転写体であり、該転写体上の前記第二の画像が最終画像を形成するための記録媒体に転写される、ことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記被記録体は、最終画像を形成するための記録媒体であり、該記録媒体上で前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部が除去された第二の画像が形成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記クリーニング部材をクリーニングする二次クリーニング部材をさらに備える、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記液回収部と前記液吸収部の間に配置されるクリーニング部が有するクリーニング部材の圧縮弾性率は、前記液吸収部と前記回復液付与部の間に配置されるクリーニング部が有するクリーニング部材の圧縮弾性率より小さい、ことを特徴とする請求項に記載のインクジェット記録装置。
  7. 被記録体にインクを付与して該被記録体上に水性液体成分と色材とを含むインク像を形成する画像形成ユニットと、
    前記インク像から前記水性液体成分の少なくとも一部を吸収して前記インク像を構成するインクを濃縮する多孔質体を有する液吸収部材と、
    を備えるインクジェット記録装置であって、
    前記水性液体成分を吸収した前記多孔質体に前記インクよりも粘度の低い回復液を付与する回復液付与装置と、
    前記多孔質体に吸収された前記水性液体成分を回収する液回収装置と、
    前記液吸収部材を搬送する液吸収部材搬送装置と、
    前記多孔質体をクリーニングするクリーニング部材と、を備え、
    前記液吸収部材の搬送経路には、
    前記多孔質体が前記インク像から前記水性液体成分を吸収する液吸収部と、
    前記回復液付与装置によって前記回復液が付与される回復液付与部と、
    前記多孔質体に吸収された前記水性液体成分が前記液回収装置によって回収される液回収部と、
    がこの順に配置され、
    前記多孔質体が前記クリーニング部材によってクリーニングされるクリーニング部が2つ以上配置され、該クリーニング部が、前記液吸収部と前記回復液付与部の間および前記液回収部と前記液吸収部の間に配置される
    ことを特徴とするインクジェット記録装置。
  8. 被記録体にインクを付与して第一の液体と色材とを含む第一の画像を形成する画像形成工程と、
    多孔質体を有する液吸収部材によって前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部を吸収する液吸収工程と、
    を有するインクジェット記録方法であって、
    前記第一の液体を吸収した前記多孔質体に前記インクよりも粘度の低い回復液を付与する回復液付与工程と、
    前記多孔質体に吸収された前記第一の液体を回収する液回収工程と、を有し、
    前記液吸収部材は、前記液吸収工程と前記回復液付与工程と前記液回収工程とが、この順で繰り返し供され、
    前記多孔質体をクリーニング部材によってクリーニングするクリーニング工程を2回以上有し、該クリーニング工程は、前記液吸収工程と前記回復液付与工程の間および前記液回収工程と前記液吸収工程の間で実施される
    ことを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. 前記画像形成工程において、前記インクを付与する前に前記被記録体にインク増粘用の反応液を付与し、
    前記回復液は、前記反応液よりも粘度が低い、
    ことを特徴とする請求項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記被記録体は、前記第一の画像と、前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部が除去された第二の画像とを一時的に保持する転写体であり、該転写体上の前記第二の画像が最終画像を形成するための記録媒体に転写される、ことを特徴とする請求項8または9に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記被記録体は、最終画像を形成するための記録媒体であり、該記録媒体上で前記第一の画像から前記第一の液体の少なくとも一部が除去された第二の画像が形成される、ことを特徴とする請求項8または9に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記クリーニング部材をクリーニングする二次クリーニング工程をさらに有する、ことを特徴とする請求項11のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記液回収工程と前記液吸収工程の間に実施されるクリーニング工程で用いるクリーニング部材の圧縮弾性率は、前記液吸収工程と前記回復液付与工程の間に実施されるクリーニング工程で用いるクリーニング部材の圧縮弾性率より小さい、ことを特徴とする請求項に記載のインクジェット記録方法。
  14. 被記録体にインクを付与して水性液体成分と色材とを含むインク像を形成する画像形成工程と、
    多孔質体を有する液吸収部材によって前記インク像から前記水性液体成分の少なくとも一部を吸収することで前記インク像を構成するインクを濃縮する液吸収工程と、
    を有するインクジェット記録方法であって、
    前記水性液体成分を吸収した前記多孔質体に前記インクよりも粘度の低い回復液を付与する回復液付与工程と、
    前記多孔質体に吸収された前記水性液体成分を回収する液回収工程と、を有し、
    前記液吸収部材は、前記液吸収工程と前記回復液付与工程と前記液回収工程とが、この順で繰り返し供され、
    前記多孔質体をクリーニング部材によってクリーニングするクリーニング工程を2回以上有し、該クリーニング工程は、前記液吸収工程と前記回復液付与工程の間および前記液回収工程と前記液吸収工程の間で実施される
    ことを特徴とするインクジェット記録方法。
JP2017010134A 2016-02-15 2017-01-24 インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法 Active JP6849448B2 (ja)

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016026419 2016-02-15
JP2016026419 2016-02-15
JP2016107448 2016-05-30
JP2016107448 2016-05-30

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017213854A JP2017213854A (ja) 2017-12-07
JP6849448B2 true JP6849448B2 (ja) 2021-03-24

Family

ID=60576372

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017010134A Active JP6849448B2 (ja) 2016-02-15 2017-01-24 インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6849448B2 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7677716B2 (en) * 2005-01-26 2010-03-16 Hewlett-Packard Development Company, L.P. Latent inkjet printing, to avoid drying and liquid-loading problems, and provide sharper imaging
JP2007268975A (ja) * 2006-03-31 2007-10-18 Fujifilm Corp 画像形成装置
JP2008213333A (ja) * 2007-03-05 2008-09-18 Fujifilm Corp インクジェット記録方法及び装置
JP2008246787A (ja) * 2007-03-29 2008-10-16 Fujifilm Corp 溶媒吸収装置及び画像形成装置
JP2009061644A (ja) * 2007-09-05 2009-03-26 Fujifilm Corp 溶媒回収機構及びこれを備えた画像形成装置並びに溶媒回収方法
JP6217420B2 (ja) * 2014-02-04 2017-10-25 株式会社リコー 画像形成装置及び画像形成方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017213854A (ja) 2017-12-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10730285B2 (en) Ink jet printing apparatus and ink jet printing method
JP6821438B2 (ja) インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP6881987B2 (ja) インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
US10556448B2 (en) Ink jet printing apparatus and ink jet printing method
US10543679B2 (en) Ink jet printing apparatus
JP6862184B2 (ja) インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP6686107B2 (ja) 液体吸収用多孔質体
JP6840552B2 (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
US10857784B2 (en) Printing method and printing apparatus
JP6821439B2 (ja) 画像形成装置及び画像形成方法
US10569580B2 (en) Ink jet recording apparatus and ink jet recording method
JP6415610B2 (ja) 記録方法および記録装置
JP6849448B2 (ja) インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP6849450B2 (ja) インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
JP6869782B2 (ja) インクジェット記録方法
JP2023019460A (ja) インクジェット記録装置
JP2019014246A (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2020040330A (ja) インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置
JP2019010756A (ja) 転写型インクジェット記録方法及び転写型インクジェット記録装置
JP2017213893A (ja) インクジェット記録装置
JP2019010831A (ja) 転写型インクジェット記録方法及び転写型インクジェット記録装置
JP2019001126A (ja) 転写型インクジェット記録装置、及び転写型インクジェット記録方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200122

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201124

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210121

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210202

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210304

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6849448

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151