JP6848231B2 - 電気脱イオン装置及びその運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電気脱イオン装置及びその運転方法に関し、特にホウ素除去率を向上させるとともに装置の耐用年数を向上しうる電気脱イオン装置及びその運転方法に関する。
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理システム、一次純水システム及び一次純水を処理するサブシステムで構成される超純水製造装置で原水を処理することにより製造されている。特に電子産業分野用の超純水では、ホウ素濃度を0.1ppt以下にまで抑制することが要求されることもあり、一次純水システムにおいて処理水のホウ素濃度を低減するのが望ましい。
この一次純水システムは、前述したような超純水の用途に限らず、サブシステムを伴うことなく、医薬用や食品用などの純水製造装置としても利用可能な汎用的なシステムであり、そのシステム構成としては、1段又は2段構成の逆浸透膜(RO膜)装置と電気脱イオン装置とからなるものが一般的である。この一次純水システムでは、RO膜装置はシリカや塩類を除去すると共に、イオン性やコロイド性のTOCを除去する。さらに電気脱イオン交換装置でその他の各種無機あるいは有機性のアニオン及びカチオンの除去を行う。したがって、一次純水のホウ素濃度を低下させるには電気脱イオン装置におけるホウ素の除去率を高くすることが重要である。
ここで、電気脱イオン装置は、一般に陰極及び陽極間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配置し、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成することで脱塩室及び濃縮室を形成し、この脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂を充填したものである。
そして、この電気脱イオン装置では、脱塩室に被処理水を通過させるとともに濃縮室に濃縮水を通過させ、この状態で陰極及び陽極間に電流を流すと、脱塩室からイオン交換樹脂を介してアニオン交換膜及びカチオン交換膜を通って濃縮室へと被処理水中のイオンが移動することで、脱塩室から脱イオン水(処理水)を得る。また、濃縮室を流れるイオンが濃縮された濃縮排水は廃棄されるか、あるいは部分的にリサイクルされる。
上述したような電気脱イオン装置におけるホウ素除去率は、被処理水中のホウ素濃度にもよるが、例えば栗田工業(株)製「KCDI−UPz」(商品名)のような高性能な電気脱イオン装置でも電流密度300mA/dm以下の通常の運転条件では99%程度である。そこで、電気脱イオン装置のホウ素除去率を向上させることを目的として、電気脱イオン装置に供給する電流を多く(電流密度を高く)することでイオンの除去率を向上させる運転方法が行われており、例えば、電気脱イオン装置に供給する電流の電流密度を500mA/dm以上にすることにより、ホウ素を99.95%以上、更には99.99%以上除去することが可能である。
しかしながら、電気脱イオン装置を電流密度500mA/dm以上(特に800mA/dm以上、さらには1000mA/dm以上)で運転すると、電気脱イオン装置の電気抵抗値が上昇する傾向が激しくなる。すなわち必要な電流を流すための電圧値が上がってきてしまい、運転限界(600V)に達してしまうと、その後の電流が確保できなくなるという問題がある。また、高電流密度で運転すると、例えば運転時の電流密度が500mA/dmでは寿命が4年以下、800mA/dmでは2年以下、1000mA/dmでは1年以下となってしまうという問題がある。一方、電気脱イオン装置の耐用年数を5年以上の寿命とするためには電流密度420mA/dm程度以下で運転する必要があるが、この電流密度で電気脱イオン装置を運転してもホウ素除去率99.95%程度にしかならない、という問題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、500mA/dm以上の高い電流密度で運転しても電圧の上昇が少なくホウ素除去率を向上させることができるとともに装置寿命の低下を防止しうる電気脱イオン装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために第一に本発明は、陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、該濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と前記脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段とを有し、前記濃縮水通水手段が前記脱塩室を通水した脱イオン水を濃縮水として通水する電気脱イオン装置であって、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の少なくともカチオン交換膜が不均質膜であり、前記脱塩室に充填されるイオン交換樹脂がアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の体積比が80:20〜60:40であり、該イオン交換樹脂のうち少なくともカチオン交換樹脂がTOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにあらかじめ洗浄したものである電気脱イオン装置を提供する(発明1)。
かかる発明(発明1)によれば、電気脱イオン装置に供給する電流(電流密度)を大きくしても電圧の上昇を抑制することができ、ホウ素除去率を高くすることができる。これは以下のような理由によるものと考えられる。すなわち、電気脱イオン装置の運転時にはアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の界面、またはアニオン交換膜とカチオン交換樹脂との界面において水の解離(HO→H+OH)が発生するが、電流密度が高いほどその水解離は盛んになり、この水解離が盛んになるほど、カチオン交換樹脂からのPSA(ポリスチレンスルホン酸)成分の溶出が多くなる。そして、PSA成分のうち比較的分子量の大きい成分が、イオン交換膜に少しずつ付着・蓄積することに起因して、電気脱イオン装置の電気抵抗が上昇すると推測される。このため電気脱イオン装置の運転時の電流密度が高くなるほど電気抵抗が増加し、必要な電流を流すための電圧が高くなるのである。
そこで、本発明者は、電計抵抗の増大(電圧の上昇)の抑制方法について種々検討した結果、以下の三つの手段が有効であることがわかった。(1)イオン交換樹脂、特にカチオン交換樹脂からの有機物の溶出量と、PSAの溶出量とは相関関係があり、有機物の溶出量が少ないほどPSAの溶出量も少ない傾向にあることから、イオン交換樹脂、少なくともカチオン交換樹脂としてPSAの溶出性が少ないものを用いることが効果的であり、具体的にはイオン交換樹脂をあらかじめ洗浄することによりTOC溶出量を1ppb以下(SV=50/hの通水条件)に低減させたものを用いる。(2)電気脱イオン装置に充填するイオン交換樹脂(混合樹脂)におけるカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の比率はPSA成分溶出の点からはアニオン交換樹脂の比率が多いほど少なくなる一方、アニオン交換樹脂が増えすぎるとカチオン成分の除去率が低下するため、アニオン交換樹脂比率を80〜60%にする。さらに、(3)イオン交換膜には一般に均質膜と不均質膜とがあるが、両者の違いによっても電気脱イオン装置の電気抵抗の増加に差異があり、均質膜は表面が均質でありPSA成分は膜の中を通過していかなければいけないため、比較的大きな分子量のPSA成分が通過しにくく蓄積しやすい一方、不均質膜は基材に粉砕状のイオン交換樹脂を埋め込んだ構造であるので、イオン交換樹脂の中を通過しなくても、イオン交換樹脂の面を通じて基材との界面近くを通過することが可能になり、PSAの蓄積が起こりにくい。このため、イオン交換膜、少なくともカチオン交換膜を不均質膜とすると、電気抵抗の増加を抑制することができる。そして、これら三つの手段を兼ね備えることにより、電気脱イオン装置を500mA/dm以上の高い電流密度で運転してホウ素除去率を向上させても、経時的な電圧の上昇が少なく電気脱イオン装置の耐用年数を5年以上と長く設定できることが確認された。これらに基づき本発明(発明1)に想到した。
上記発明(発明1)においては、前記濃縮水通水手段が、前記脱塩室を通水した脱イオン水の一部を対向流で濃縮水として通水するものであることが好ましい(発明2)。
かかる発明(発明2)によれば、電気脱イオン装置の脱塩室と濃縮室におけるイオンの濃度勾配の格差を緩和することができるので、ホウ素除去率をさらに向上させることができる。
上記発明(発明1,2)においては、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の両方が不均質膜であり、前記脱塩室に充填されるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方がTOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにあらかじめ洗浄したものであることが好ましい(発明3)。
かかる発明(発明3)によれば、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の両方を不均質膜とするとともにアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方を高度に洗浄した樹脂とすることにより、電計抵抗の増大(電圧の上昇)の抑制の効果を最大限に発揮することができる。
また、第二に本発明は、陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、該濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と前記脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段とを有し、前記濃縮水通水手段が前記脱塩室を通水した脱イオン水を濃縮水として通水し、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の少なくともカチオン交換膜が不均質膜であり、前記脱塩室に充填されるイオン交換樹脂のアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の体積比が80:20〜60:40であり、該イオン交換樹脂のうち少なくともカチオン交換樹脂がTOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにあらかじめ洗浄したものである電気脱イオン装置の運転方法であって、前記電気脱イオン装置に供給する電流を500mA/dm以上の電流密度として前記脱塩室に通水処理する電気脱イオン装置の運転方法を提供する(発明4)。
かかる発明(発明4)によれば、上述したような構成の電気脱イオン装置であれば、500mA/dm以上の電流密度で運転してホウ素除去率を高く維持しても電圧の上昇を抑制することができる。
上記発明(発明4)においては、前記濃縮水通水手段が、前記脱塩室を通水した脱イオン水の一部を対向流で濃縮水として通水するものであることが好ましい(発明5)。
かかる発明(発明5)によれば、電気脱イオン装置の脱塩室と濃縮室におけるイオンの濃度勾配の格差を緩和することができるので、ホウ素除去率をさらに向上させることができる。
上記発明(発明4,5)においては、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の両方が不均質膜であり、前記脱塩室に充填されるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方がTOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにあらかじめ洗浄したものであることが好ましい(発明6)。
かかる発明(発明6)によれば、カチオン交換膜及びアニオン交換膜の両方を不均質膜とするとともにアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方を高度に洗浄した樹脂とすることにより、電計抵抗の増大(電圧の上昇)の抑制の効果を最大限に発揮することができる。
本発明によれば、電気脱イオン装置の脱塩室に充填するイオン交換樹脂として高度に洗浄したものを採用するとともに、アニオン交換樹脂をカチオン交換樹脂よりも多く配合し、さらにイオン交換膜として不均質膜を用いているので、ホウ素除去率を高く維持するために高い電流密度で運転しても電圧の上昇を抑制することができ、電気脱イオン装置の耐用年数の長期化を図ることができる。
本発明の一実施形態による電気脱イオン装置の構成を示す模式的な断面図である。 図1の電気脱イオン装置を示す系統図である。
以下、本発明の一実施形態による電気脱イオン装置について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態による電気脱イオン装置の構成を示す概略図である。図1において、電気脱イオン装置1は、電極(陽極2、陰極3)の間に複数のアニオン交換膜4及びカチオン交換膜5を交互に配列して濃縮室6と脱塩室7とを交互に形成したものであり、脱塩室7にはイオン交換樹脂(アニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂)が混合もしくは複層状に充填されている。また、濃縮室6と、陽極室8及び陰極室9にもイオン交換樹脂が充填されている。
この電気脱イオン装置1には、脱塩室7に被処理水Wを通水して処理水(脱イオン水)W1取り出す通水手段(図示せず)と、濃縮室6に濃縮水W2を通水する濃縮水通水手段(図示せず)とが設けられていて、本実施形態においては濃縮水W2を脱塩室7の処理水W1の取り出し口に近い側から濃縮室6内に導入すると共に、脱塩室7の入口に近い側から流出する、すなわち脱塩室7における被処理水Wの流通方向と反対方向から濃縮水W2を濃縮室6に導入して濃縮排水W3を吐出する構成となっている。
具体的には、図2に示すように脱塩室7から得られる処理水W1の一部を濃縮室6及び陽極室8に導入する。このように濃縮水W2として処理水W1を用いてイオン濃度が低減された濃縮水W2を流通させる。
このような電気脱イオン装置において、脱塩室7に充填されるイオン交換樹脂のアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の比率は体積比で80:20〜60:40、好ましくは80:20〜70:30である。アニオン交換樹脂の割合が体積比で80%を超えるとカチオン交換樹脂に由来するPSA成分の溶出は少なくなるものの処理水W1中のカチオン成分の除去率が低下する。一方、アニオン交換樹脂の割合が体積比で60%未満では、カチオン交換樹脂に由来するPSA成分溶出が増加し、電気脱イオン装置の電気抵抗が上昇し、運転に必要な電圧が大きくなり、もって電気脱イオン装置1の耐用年数が短期化しやすくなる。なお、このイオン交換樹脂の割合は脱塩室7の上側(入口側)と下側(出口側)とで異ならせても良く、この場合には、上記割合の範疇で上側(入口側)のアニオン交換樹脂の割合を高くすることが好ましい。
また、脱塩室7に充填されるイオン交換樹脂のうち少なくともカチオン交換樹脂は、TOC溶出量が1ppb以下となるようにあらかじめコンディショニング(洗浄)を施したものである。カチオン交換樹脂のTOC溶出量が1ppbを超えると、イオン交換樹脂に起因するPSAの溶出量が増加し、電気脱イオン装置の電気抵抗が上昇し、運転に必要な電圧が大きくなり、もって電気脱イオン装置1の耐用年数が短期化しやすくなる。本明細書中において、TOC溶出量とは2Lのイオン交換樹脂量に対し、SV=50/hで超純水を120分通水した後のTOC濃度をTOC計(アナテルA−1000)で測定したときのTOCの溶出量(増加量)をいう。このコンディショニングは、例えば酸洗浄工程、超純水による酸の押し出し工程、温超純水による温水洗浄工程、超純水による仕上げ工程などをTOC溶出量が1ppb以下となるようにそれぞれ適当な条件(濃度、時間及び流速)で順次を行えばよい。なお、アニオン交換樹脂もコンディショニング(洗浄)を施すことにより、TOC溶出量が1ppb以下となるようにあらかじめコンディショニング(洗浄)を施したものを用いることが好ましい。
また、濃縮室6に充填するイオン交換樹脂のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の比率は特に制限はなく、両者を当量とするかあるいはカチオン交換樹脂をある程度多くするのが好ましく、アニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の比率を体積比で60:40〜50:50とすればよい。さらに濃縮室6に充填するイオン交換樹脂も上述したようなコンディショニングを施したものを用いることが好ましい。
さらに、イオン交換膜としてのアニオン交換膜4及びカチオン交換膜5のうち少なくともアニオン交換膜4は不均質膜を用いる。ここで不均質膜とは、例えばイオン交換樹脂(ここではアニオン交換樹脂)の微粒子の懸濁物をバインダーと組み合わせ、キャスティング法により製膜されるイオン交換膜のことである。この不均質膜は基材に粉砕状のアニオン交換樹脂を埋め込んだ構造であるので、アニオン交換樹脂の中を通過しなくても、アニオン交換樹脂の面を通じて基材との界面近くを通過することが可能になり、PSAの蓄積が起こりにくく、電気抵抗の増加を抑制することができる。なお、カチオン交換膜5については、均質膜であってもよいが、同様に不均質膜を用いるのが好ましい。
次に上述したような構成を有する電気脱イオン装置1の運転方法について説明する。まず、RO処理水などの被処理水Wを電気脱イオン装置1で処理する。このとき、電気脱イオン装置1を電流密度500mA/dm以上で運転する。電流密度500mA/dm未満では、十分なホウ素除去率の向上効果が得られない。好ましくは電流密度800mA/dm以上で運転する。電流密度が800mA/dmで未満では99.95%を超えるホウ素除去率とするのが困難となる。特に電流密度1000mA/dm以上で運転することにより、ホウ素除去率99.99%を達成することができる。一方電気脱イオン装置1を1500mA/dmを超える電流密度で運転するのは、それ以上のホウ素除去率の向上効果が得られないばかりか、電気抵抗値が上昇し、これに伴い電気脱イオン装置1にかかる電圧が増大しすぎ、装置寿命の低下を招くため好ましくない。なお、電気脱イオン装置1の脱塩室7における被処理水Wの通水速度はLV=50〜200m/hで、空間速度はSV=50〜200/hが好ましい。さらに電気脱イオン装置1は水回収率80〜90%で運転することが好ましい。
これにより被処理水Wが脱塩室7に導入され、脱塩室7から処理水(脱イオン水)W1が得られる。本実施形態においては、この処理水W1の一部を濃縮水W2として濃縮室6に脱塩室7の通水方向とは逆方向に向流一過式で通水し、濃縮室6から濃縮排水W3を系外へ排出する。すなわち、本実施形態では、濃縮室6と脱塩室7とが交互に並設され、脱塩室7の処理水W1の取り出し側に濃縮室6の流入口となっているとともに脱塩室7の原水流入側に濃縮室6の流出口となっている。なお、処理水(脱イオン水)W1の一部は陽極室8の入口側に送給され、そして、陽極室8の流出水は、陰極室9の入口側へ送給され、陰極室9の流出水は排水として系外へ排出される。
このように濃縮室6に処理水W1を濃縮水W2として脱塩室7に対して向流一過式で通水することにより、脱塩室7の取り出し側ほど濃縮室6内の濃縮水W2中のイオン濃度が低いものとなるので、濃度拡散による脱塩室7への影響が小さくなり、イオン除去率、特にホウ素の除去率を飛躍的に高めることができる。
このようにして電気脱イオン装置1を運転することにより、ホウ素除去率を99.9%以上、特に99.95%、さらには99.99%程度にまで高めることができる。
以上、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は、電気脱イオン装置1に上述した所定の構成を採用するとともに電流密度500mA/dm以上で運転すれば前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、本実施形態においては最良の形態とすることにより電気脱イオン装置1の耐用年数を5年以上で、ホウ素除去率99.99%とすることができるが、要求される水質、耐用年数に応じて、運転時の電流密度やカチオン交換膜の種類、あるいはアニオン交換樹脂のコンディショニング条件を適宜設定することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
電気脱イオン装置1、イオン交換樹脂として以下のものを使用した。
電気脱イオン装置:KCDI−UPz(栗田工業(株)製)、図1及び図2に示すように脱塩室7を通水した脱イオン水W1の一部を対向流で濃縮水W2として濃縮室6に通水する方式を採用
イオン交換樹脂:KR−UM1(栗田工業(株)製)、TOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにコンディショニングを施したアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂
上記の電気脱イオン装置1において、コンディショニングしたイオン交換樹脂を脱塩室7の上側(入り口側)の半分の領域にはアニオン交換樹脂80容積%及びカチオン交換樹脂20容積%で下側領域ではアニオン交換樹脂60容積%及びカチオン交換樹脂40容積%となるように充填し、濃縮室6ではアニオン交換樹脂60容積%及びカチオン交換樹脂40容積%となるように充填した。さらに、アニオン交換膜4及びカチオン交換膜5として不均質膜を用いて電気脱イオン装置1を構成した。
静岡県榛原郡吉田町の市水(原水)を凝集・加圧浮上装置、ろ過装置及び活性炭塔からなる前処理システムで処理した後、2段RO膜装置により処理した。この2段RO処理水(被処理水)Wのシリカ濃度は1ppb以下であり、ホウ素濃度は1〜5ppbであった。続いて、この被処理水Wを上述した電気脱イオン装置1に(栗田工業(株)製 KCDI−UPz)に15m/hの流量で通水し、電流密度1000mA/dmで運転した。なお、この電気脱イオン装置におけるSVは100/hであり、水回収率85%とした。
この電気脱イオン装置の運転を継続したところ、初期電圧300Vであったのに対し、5年運転相当後の電圧は500Vに上昇したが、電気脱イオン装置の処理水W1のホウ素除去率は99.99%で安定しており、実施例1の電気脱イオン装置は5年以上の耐用年数を有するものであった。
〔比較例1〕
実施例1において、コンディショニングを行わなかった樹脂(TOC溶出量約10ppb、以下同じ)を用い、脱塩室7及び濃縮室6にアニオン交換樹脂50容積%及びカチオン交換樹脂50容積%で充填した。さらに、アニオン交換膜4及びカチオン交換膜5として均質膜を用いて電気脱イオン装置1を構成した。この電気脱イオン装置1で実施例1同様の運転条件で被処理水Wを処理したところ、初期電圧300Vであったのに対し、1年運転相当後の電圧は600Vの運転限界に達し、比較例1の電気脱イオン装置の耐用年数は約1年であった。
〔比較例2〕
実施例1において、コンディショニングを行わなかった樹脂を用い、脱塩室7及び濃縮室6にアニオン交換樹脂50容積%及びカチオン交換樹脂50容積%で充填して、電気脱イオン装置1を構成した。この電気脱イオン装置1で実施例1同様の運転条件で被処理水Wを処理したところ、初期電圧300Vであったのに対し、2年運転相当後の電圧は600Vの運転限界に達し、比較例2の電気脱イオン装置の耐用年数は約2年であった。
〔比較例3〕
実施例1において、コンディショニングを行わなかった樹脂を用いた以外同様にして電気脱イオン装置1を構成した。この電気脱イオン装置1で実施例1同様の運転条件で被処理水Wを処理したところ、初期電圧300Vであったのに対し、3年運転相当後の電圧は600Vの運転限界に達し、比較例3の電気脱イオン装置の耐用年数は約3年であった。
〔比較例4〕
実施例1において、脱塩室7及び濃縮室6にコンディショニング処理したアニオン交換樹脂50容積%及びカチオン交換樹脂50容積%で充填した以外同様にして電気脱イオン装置1を構成した。この電気脱イオン装置1で実施例1同様の運転条件で被処理水Wを処理したところ、初期電圧300Vであったのに対し、4年運転相当後の電圧は600Vの運転限界に達し、比較例4の電気脱イオン装置の耐用年数は約4年であった。
1 電気脱イオン装置
2 陽極(電極)
3 陰極(電極)
4 アニオン交換膜(イオン交換膜)
5 カチオン交換膜(イオン交換膜)
6 濃縮室
7 脱塩室
8 陽極室
9 陰極室
W 被処理水
W1 処理水(脱イオン水)
W2 濃縮水
W3 濃縮排水

Claims (6)

  1. 陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、該濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と前記脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段とを有し、前記濃縮水通水手段が前記脱塩室を通水した脱イオン水を濃縮水として通水する電気脱イオン装置であって、
    前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の少なくともカチオン交換膜が不均質膜であり、
    前記脱塩室に充填されるイオン交換樹脂がアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の体積比が80:20〜60:40であり、
    該イオン交換樹脂のうち少なくともカチオン交換樹脂がTOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにあらかじめ洗浄したものである電気脱イオン装置。
  2. 前記濃縮水通水手段が、前記脱塩室を通水した脱イオン水の一部を対向流で濃縮水として通水する請求項1に記載の電気脱イオン装置。
  3. 前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の両方が不均質膜であり、前記脱塩室に充填されるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方がTOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにあらかじめ洗浄したものである請求項1又は2に記載の電気脱イオン装置。
  4. 陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置されたカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、該濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段と前記脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段とを有し、前記濃縮水通水手段が前記脱塩室を通水した脱イオン水を濃縮水として通水し、前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の少なくともカチオン交換膜が不均質膜であり、前記脱塩室に充填されるイオン交換樹脂のアニオン交換樹脂:カチオン交換樹脂の体積比が80:20〜60:40であり、該イオン交換樹脂のうち少なくともカチオン交換樹脂がTOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにあらかじめ洗浄したものである電気脱イオン装置の運転方法であって、
    前記電気脱イオン装置に供給する電流を800mA/dm 以上1500mA/dm 以下の電流密度として前記脱塩室に通水処理する電気脱イオン装置の運転方法。
  5. 前記濃縮水通水手段が、前記脱塩室を通水した脱イオン水の一部を対向流で濃縮水として通水する請求項4に記載の電気脱イオン装置の運転方法。
  6. 前記カチオン交換膜及びアニオン交換膜の両方が不均質膜であり、前記脱塩室に充填されるアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の両方がTOC溶出量1ppb以下(SV=50/hの通水条件)となるようにあらかじめ洗浄したものである請求項4又は5に記載の電気脱イオン装置の運転方法。
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