JP6846362B2 - 線維性疾患を処置するための方法および組成物 - Google Patents

線維性疾患を処置するための方法および組成物 Download PDF

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Description

関連出願への相互参照
本出願は、その全体が参考として本明細書に援用される、2015年6月17日に出願された米国仮特許出願第62/181,146号、2016年2月17日に出願された米国仮特許出願第62/296,482号および2016年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/344,357号に対する優先権を主張する。これらの出願の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
ASCIIテキストファイルにおける配列表の提出
ASCIIテキストファイルにおける次の提出の内容は、その全体が参照により本明701712000340SEQLIST.txt、記録された日付:2016年6月16日、サイズ:91KB)。
発明の分野
本発明は、ヒトシグレック−8に結合する抗体もしくはアゴニストまたは前記抗体もしくはアゴニストを含む組成物の投与により、線維性疾患および前線維性(pre-fibrotic)疾患を予防および/または処置するための方法に関する。
発明の背景
線維症は、強靱な線維性瘢痕組織の蓄積をもたらす、臓器または組織における細胞外マトリックス成分の過剰沈着によって特徴付けられる状態である。例えば、肺線維症は、マクロファージ、好中球、リンパ球および肥満細胞を含む炎症性応答によって特徴付けられる主要な型の線維性疾患である。特発性肺線維症(IPF)は、未知の病因による慢性肺疾患であり、正常な肺実質が線維性組織に徐々に置き換わり、呼吸困難、咳、肺機能障害および死亡率増加をもたらす。IPFは、予後不良となり、診断時からおよそ3年間の生存期間中央値を有し、それに伴う罹患率が高く、クオリティオブライフに広範囲の悪影響がある。多くのIPF患者は、呼吸不全で亡くなる。IPFの発症において起こるいくつかの病原となる事象が存在し、これらの事象のうちいくつかは、IPF処置目的の治療剤による標的とされてきた。マクロファージ、好中球またはリンパ球を標的とする治療アプローチは、IPF病因の経過を変更することができなかった。IPFおよび利用できるIPF処置の総説については、Ahluwaliaら、Am J Respir Crit Care Med.、190巻(8号):867〜78頁、2014年およびWoodcockら、F1000Prime Rep.、6巻:16頁、2014年を参照されたい。したがって、依然として、線維性疾患の病因に関与する免疫細胞の活性を制御することができる治療法の必要がある。
肥満細胞および肥満細胞メディエーターの数は、IPFにおいて有意に上昇する。肥満細胞は、TGF−βの主な供給源であり、TGF−βは、線維芽細胞によるコラーゲン産生の刺激および線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化のためのシグナル伝達を介する、線維症発症において役割を果たすサイトカインである。肥満細胞欠損マウスが、ブレオマイシン誘発肺線維症から保護されることも示された。Veerappanら、DNA Cell Biol.、32巻(4号):206〜18頁を参照されたい。肥満細胞は、IPFの病因に関与するようであるが、線維性疾患発症の根底にある(underlay)数多くの複雑な病原性事象におけるその正確な役割は、依然として不明である。
シグレック(シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン)は、主に白血球に存在し、細胞表面の複合糖質に付着したシアル酸に対するその特異性によって特徴付けられる、1回膜貫通細胞表面タンパク質である。シグレックファミリーは、哺乳動物において見出される少なくとも15種のメンバーを含有する(Pillaiら、Annu Rev Immunol.、30巻:357〜392頁、2012年)。これらのメンバーは、シアロアドヘシン(sialoadhesion)(シグレック−1)、CD22(シグレック−2)、CD33(シグレック−3)、ミエリン関連糖タンパク質(シグレック−4)、シグレック−5、OBBP1(シグレック−6)、AIRM1(シグレック−7)、SAF−2(シグレック−8)およびCD329(シグレック−9)を含む。シグレック−8は、新規ヒト好酸球タンパク質を同定する試みの一環として最初に発見された。好酸球による発現に加えて、これは、肥満細胞および好塩基球によっても発現される。シグレック−8は、硫酸化グリカン、すなわち、6’−スルホ−シアリルルイスXまたは6’−スルホ−シアリル−N−アセチル−S−ラクトサミンを認識し、肥満細胞機能を阻害することが示された細胞内免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)ドメインを含有する。シグレック−8は、IgE経路によって媒介される細胞性応答をモジュレートすることが示されたが、非IgE媒介性免疫応答経路におけるシグレック−8活性化の効果は、分かっていない。
特許出願、特許公報および科学文献を含む本明細書に引用されるあらゆる参考文献は、個々の参考文献それぞれが具体的かつ個別に参照によりその全体が本明細書に組み入れられると示されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
Ahluwaliaら、Am J Respir Crit Care Med.、190巻(8号):867〜78頁、2014年 Woodcockら、F1000Prime Rep.、6巻:16頁、2014年 Veerappanら、DNA Cell Biol.、32巻(4号):206〜18頁 Pillaiら、Annu Rev Immunol.、30巻:357〜392頁、2012年
線維性疾患または前線維性疾患(pre-fibrotic disease)の予防または処置のための、ヒトシグレック−8に結合する抗体もしくはアゴニストまたはそれを含む組成物を使用する方法が、本明細書に提供される。線維性疾患として、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、肝線維症、腎線維症(例えば、腎間質線維症)、心臓線維症、脾臓線維症、眼線維症、機械的誘発線維症(mechanical-induced fibrosis)(例えば、人工呼吸器誘発肺線維症)、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症(例えば、ブレオマイシン誘発肺線維症)、ウイルス誘発線維症(viral-induced fibrosis)、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症(例えば、骨髄線維症)、強皮症(例えば、全身性硬化症)、縦隔線維症および後腹膜腔線維症が挙げられるがこれらに限定されない。前線維性疾患として、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症が挙げられるがこれらに限定されない。
一態様では、個体における線維性疾患を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患と診断された、または線維性疾患を発症するリスクがある。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症である。また別のさらなる実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症である。一部の実施形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、強皮症は、全身性硬化症である。本明細書における実施形態の一部では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて低減する。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている線維性疾患に関連する症状であり得る。本明細書における一部の実施形態では、肺線維症を有する個体における1種または複数種の肺機能は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%増加する。さらなる実施形態では、1種または複数種の肺機能は、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(inspirator capacity)(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)からなる群から選択される。一部の実施形態では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、抗体は、抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。本明細書における実施形態のいずれかでは、アゴニストは、アゴニストおよび薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。
一態様では、個体における前線維性疾患を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患と診断された、または前線維性疾患を発症するリスクがある。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて低減する。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている前線維性疾患に関連する症状であり得る。一部の実施形態では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、抗体は、抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。本明細書における実施形態のいずれかでは、アゴニストは、アゴニストおよび薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。
別の態様では、個体における非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子(agent)による肥満細胞活性化を低下させるための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一実施形態では、個体は、線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患と診断された、または線維性疾患を発症するリスクがある。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症である。また別のさらなる実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症である。一部の実施形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、強皮症は、全身性硬化症である。本明細書における実施形態の一部では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて低減する。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている線維性疾患に関連する症状であり得る。本明細書における一部の実施形態では、肺線維症を有する個体における1種または複数種の肺機能は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%増加する。さらなる実施形態では、1種または複数種の肺機能は、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)からなる群から選択される。一部の実施形態では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子は、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、幹細胞因子(SCF)、トール様受容体3(TLR3)、インターロイキン33(IL−33)および補体タンパク質からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、抗体は、抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。本明細書における実施形態のいずれかでは、アゴニストは、アゴニストおよび薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。
別の態様では、個体における非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子による肥満細胞活性化を低下させるための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一実施形態では、個体は、前線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患と診断された、または前線維性疾患を発症するリスクがある。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて低減する。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている前線維性疾患に関連する症状であり得る。一部の実施形態では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子は、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、幹細胞因子(SCF)、トール様受容体3(TLR3)、インターロイキン33(IL−33)および補体タンパク質からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、抗体は、抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。本明細書における実施形態のいずれかでは、アゴニストは、アゴニストおよび薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。
別の態様では、個体における線維性疾患の処置または予防における使用のための、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患と診断された、または線維性疾患を発症するリスクがある。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満は、フコース残基を含有する。さらなる実施形態では、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症である。また別のさらなる実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症である。一部の実施形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、強皮症は、全身性硬化症である。本明細書における実施形態の一部では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて低減する。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている線維性疾患に関連する症状であり得る。本明細書における一部の実施形態では、肺線維症を有する個体における1種または複数種の肺機能は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%増加する。さらなる実施形態では、1種または複数種の肺機能は、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)からなる群から選択される。一部の実施形態では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、組成物は、薬学的に許容されるキャリアをさらに含むことができる。
別の態様では、個体における前線維性疾患の処置または予防における使用のための、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患と診断された、または前線維性疾患を発症するリスクがある。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満は、フコース残基を含有する。さらなる実施形態では、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて低減する。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている前線維性疾患に関連する症状であり得る。一部の実施形態では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、組成物は、薬学的に許容されるキャリアをさらに含むことができる。
別の態様では、個体に組成物を投与するステップを含む、個体における非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子による肥満細胞活性化の低下における使用のための、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖を含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満は、フコース残基を含有する。さらなる実施形態では、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患と診断された、または線維性疾患を発症するリスクがある。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症である。また別のさらなる実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症である。一部の実施形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、強皮症は、全身性硬化症である。本明細書における実施形態の一部では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて低減する。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている線維性疾患に関連する症状であり得る。本明細書における一部の実施形態では、肺線維症を有する個体における1種または複数種の肺機能は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%増加する。さらなる実施形態では、1種または複数種の肺機能は、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)からなる群から選択される。一部の実施形態では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子は、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、幹細胞因子(SCF)、トール様受容体3(TLR3)、インターロイキン33(IL−33)および補体タンパク質からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、組成物は、薬学的に許容されるキャリアをさらに含むことができる。
別の態様では、個体に組成物を投与するステップを含む、個体における非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子による肥満細胞活性化の低下における使用のための、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満は、フコース残基を含有する。さらなる実施形態では、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患と診断された、または前線維性疾患を発症するリスクがある。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて低減する。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている前線維性疾患に関連する症状であり得る。一部の実施形態では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子は、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、幹細胞因子(SCF)、トール様受容体3(TLR3)、インターロイキン33(IL−33)および補体タンパク質からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む組成物の投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、組成物は、薬学的に許容されるキャリアをさらに含むことができる。
一部の態様では、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む医薬と、線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む製造品も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患と診断された、または線維性疾患を発症するリスクがある。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症である。また別のさらなる実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症である。一部の実施形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、強皮症は、全身性硬化症である。本明細書における実施形態の一部では、添付文書は、処置が、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状を低下させることにおいて有効であることをさらに示す。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている線維性疾患に関連する症状であり得る。本明細書における一部の実施形態では、肺線維症を有する個体における1種または複数種の肺機能は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%増加する。さらなる実施形態では、1種または複数種の肺機能は、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)からなる群から選択される。一部の実施形態では、線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、抗体は、抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。本明細書における実施形態のいずれかでは、アゴニストは、アゴニストおよび薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。
一部の態様では、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む医薬と、前線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む製造品も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患と診断された、または前線維性疾患を発症するリスクがある。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。本明細書における実施形態の一部では、添付文書は、処置が、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の症状を低下させることにおいて有効であることをさらに示す。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている前線維性疾患に関連する症状であり得る。一部の実施形態では、前線維性疾患を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。本明細書における実施形態のいずれかでは、個体は、ヒトであってもよい。本明細書における実施形態のいずれかでは、抗体は、抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。本明細書における実施形態のいずれかでは、アゴニストは、アゴニストおよび薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在することができる。
他の態様では、個体における線維性疾患を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合するアゴニストの有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患と診断された、または線維性疾患を発症するリスクがある。本明細書における一部の実施形態では、アゴニストは、6’−スルホ−sLe含有リガンド、6’−スルホ−sLe含有オリゴ糖、6’−スルホ−sLe含有ポリペプチドおよび6’−スルホ−sLe含有糖タンパク質からなる群から選択される、6’−スルホ−sLe含有アゴニストである。一部の実施形態では、アゴニストは、ヒトシグレック−8に結合するアゴニスト抗体である。
また別の態様では、個体における前線維性疾患を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合するアゴニストの有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患と診断された、または前線維性疾患を発症するリスクがある。本明細書における一部の実施形態では、アゴニストは、6’−スルホ−sLe含有リガンド、6’−スルホ−sLe含有オリゴ糖、6’−スルホ−sLe含有ポリペプチドおよび6’−スルホ−sLe含有糖タンパク質からなる群から選択される、6’−スルホ−sLe含有アゴニストである。一部の実施形態では、アゴニストは、ヒトシグレック−8に結合するアゴニスト抗体である。
また別の態様では、個体における非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子による肥満細胞活性化を低下させるための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合するアゴニストの有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、線維性疾患と診断された、または線維性疾患を発症するリスクがある。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患を有する。一部の実施形態では、個体は、前線維性疾患と診断された、または前線維性疾患を発症するリスクがある。本明細書における一部の実施形態では、アゴニストは、6’−スルホ−sLe含有リガンド、6’−スルホ−sLe含有オリゴ糖、6’−スルホ−sLe含有ポリペプチドおよび6’−スルホ−sLe含有糖タンパク質からなる群から選択される、6’−スルホ−sLe含有アゴニストである。一部の実施形態では、アゴニストは、ヒトシグレック−8に結合するアゴニスト抗体である。
本方法およびそれにおける使用のための組成物の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、モノクローナル抗体であってよい。本方法およびそれにおける使用のための組成物の実施形態のいずれかでは、抗体は、IgG1抗体であってよい。本方法およびそれにおける使用のための組成物の実施形態のいずれかでは、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作することができる。さらなる実施形態では、抗体は、ADCC活性を改善する、Fc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。本方法およびそれにおける使用のための組成物の実施形態のいずれかでは、抗体の重鎖のうち1または2つは、フコシル化していなくてよい。本方法およびそれにおける使用のための組成物の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってよい。本方法およびそれにおける使用のための組成物の実施形態のいずれかでは、抗体は、マウス抗体であってよい。本方法およびそれにおける使用のための組成物の実施形態のいずれかにおいて、抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFvおよび(Fab’)断片からなる群より選択される抗体断片となることができる。一部の実施形態において、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域は、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含む。さらなる実施形態において、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4を含む。さらなる実施形態において、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、アミノ酸残基は、Kabatで規定されたEUインデックスに従って番号付けされる。一部の実施形態において、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖;および/または配列番号76もしくは77のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態において、抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、(a)(1)配列番号26〜29から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR1;(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(3)配列番号31〜36から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR2;(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(5)配列番号38〜43から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR3;(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3;および(7)配列番号45〜46から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR4を含む重鎖可変領域、および/または(b)(1)配列番号48〜49から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR1;(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(3)配列番号51〜53から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR2;(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2;(5)配列番号55〜58から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR3;(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3;および(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、(a)(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1;(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2;(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3;(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3;および(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4を含む重鎖可変領域;および/または(b)(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1;(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2;(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2;(5)配列番号55のアミノ酸配列を含むLC−FR3;(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3;および(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、(a)(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1;(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1;(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2;(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2;(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3;(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3;および(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4を含む重鎖可変領域;および/または(b)(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1;(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1;(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2;(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2;(5)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC−FR3;(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3;および(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域;および/または(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域;および/または(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域;および/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗体は、配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
本明細書に記載されている様々な実施形態の特性のうち1種、一部または全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形作ることができることを理解されたい。本発明の上述および他の態様は、当業者には明らかになるであろう。本発明の上述および他の実施形態を次の詳細な説明によりさらに記載する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
個体における線維性疾患を処置または予防するための方法であって、該個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体の有効量を投与するステップを含む、方法。
(項目2)
前記線維性疾患が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記肺線維症が、特発性肺線維症である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記肺線維症が、慢性閉塞性肺疾患に関連する、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記線維性疾患が、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記機械的誘発線維症が、人工呼吸器誘発肺線維症である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記薬物誘発線維症が、ブレオマイシン誘発肺線維症である、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記線維性疾患が、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記強皮症が、全身性硬化症である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記線維性疾患を有する前記個体における1種または複数種の症状が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて低下する、項目1〜9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
肺線維症を有する前記個体における1種または複数種の肺機能が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%増加する、項目1〜7および10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記1種または複数種の肺機能が、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV )、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)からなる群から選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
線維性疾患を有する前記個体における1種または複数種の病理学的パラメータが、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する、項目1〜12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記1種または複数種の病理学的パラメータが、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される、項目13に記載の方法。
(項目15)
個体における前線維性疾患を処置または予防するための方法であって、該個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体の有効量を投与するステップを含む、方法。
(項目16)
前記前線維性疾患が、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目17)
肥満細胞活性化が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて前記個体において低下する、項目1〜16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目1〜17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記抗体が、IgG1抗体である、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、項目1〜19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記抗体が、ADCC活性を改善する、Fc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記抗体の重鎖のうち少なくとも1または2つが、フコシル化していない、項目1〜21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、項目1〜22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記抗体が、マウス抗体である、項目1〜22のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記抗体が、Fab、Fab’−SH、Fv、scFvおよび(Fab’) 断片からなる群より選択される抗体断片である、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、および/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記抗体が、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含む、項目1〜27のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記ヒトIgG Fc領域が、ヒトIgG1またはヒトIgG4を含む、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記ヒトIgG4が、アミノ酸置換S228Pを含み、前記アミノ酸残基が、Kabatで規定されたEUインデックスに従って番号付けられる、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記抗体が、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記抗体が、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、および/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記抗体が、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号23〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記抗体が、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記抗体が、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記抗体が、以下:
(a)以下:
(1)配列番号26〜29から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号31〜36から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38〜43から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45〜46から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、ならびに/または
(b)以下:
(1)配列番号48〜49から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51〜53から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55〜58から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記抗体が、以下:
(a)以下:
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、ならびに/または
(b)以下:
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55のアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記抗体が、以下:
(a)以下:
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、ならびに/または
(b)以下:
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記抗体が、以下:
(a)(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、ならびに/または(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域、
(b)(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、ならびに/または(i)配列番号98のアミノ酸配列
を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域、
(c)(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む重鎖可変領域、ならびに/または(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む軽鎖可変領域
を含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記抗体が、
(a)配列番号106のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号109のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(b)配列番号107のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号110のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(c)配列番号108のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または配列番号111のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記個体が、ヒトである、項目1〜41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記抗体が、該抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在する、項目1〜42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
個体における線維性疾患の処置または予防における使用のための、ヒトシグレック−8に結合する抗体を含む組成物。
(項目45)
前記抗体が、Fc領域と、該Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、該N−グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満が、フコース残基を含有する、項目44に記載の組成物。
(項目46)
前記N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない、項目44に記載の組成物。
(項目47)
個体における前線維性疾患の処置または予防における使用のための、ヒトシグレック−8に結合する抗体を含む組成物。
(項目48)
前記抗体が、Fc領域と、前記Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、前記N−グリコシド結合型炭水化物鎖の50%未満が、フコース残基を含有する、項目47に記載の組成物。
(項目49)
前記N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない、項目47に記載の組成物。
(項目50)
肥満細胞活性化が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて前記個体において低下する、項目44〜49のいずれか一項に記載の組成物。
(項目51)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目44〜50のいずれか一項に記載の組成物。
(項目52)
前記抗体が、IgG1抗体である、項目44〜51のいずれか一項に記載の組成物。
(項目53)
前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、項目44〜52のいずれか一項に記載の組成物。
(項目54)
前記抗体が、ADCC活性を改善する、Fc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、項目53に記載の組成物。
(項目55)
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、項目44〜54のいずれか一項に記載の組成物。
(項目56)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、および/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目44〜55のいずれか一項に記載の組成物。
(項目57)
前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目44〜55のいずれか一項に記載の組成物。
(項目58)
前記抗体が、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含む、項目44〜57のいずれか一項に記載の組成物。
(項目59)
前記ヒトIgG Fc領域が、ヒトIgG1を含む、項目58に記載の組成物。
(項目60)
前記抗体が、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目44〜55のいずれか一項に記載の組成物。
(項目61)
前記抗体が、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目44〜55のいずれか一項に記載の組成物。
(項目62)
前記抗体が、以下:
(a)以下:
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、ならびに/または
(b)以下:
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55のアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目44〜55のいずれか一項に記載の組成物。
(項目63)
前記抗体が、以下:
(a)以下:
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、ならびに/または
(b)以下:
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目44〜55のいずれか一項に記載の組成物。
(項目64)
ヒトシグレック−8に結合する抗体を含む医薬と、線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む、製造品。
(項目65)
前記線維性疾患が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される、項目64に記載の製造品。
(項目66)
前記肺線維症が、特発性肺線維症である、項目65に記載の製造品。
(項目67)
前記肺線維症が、慢性閉塞性肺疾患に関連する、項目65に記載の製造品。
(項目68)
前記線維性疾患が、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される、項目64に記載の製造品。
(項目69)
前記機械的誘発線維症が、人工呼吸器誘発肺線維症である、項目68に記載の製造品。
(項目70)
前記薬物誘発線維症が、ブレオマイシン誘発肺線維症である、項目68に記載の製造品。
(項目71)
前記線維性疾患が、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される、項目64に記載の製造品。
(項目72)
前記強皮症が、全身性硬化症である、項目71に記載の製造品。
(項目73)
前記添付文書は、前記処置が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて前記線維性疾患を有する前記個体における1種または複数種の症状を低下させることにおいて有効であることをさらに示す、項目64〜72のいずれか一項に記載の製造品。
(項目74)
肺線維症を有する前記個体における1種または複数種の肺機能が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%増加する、項目64〜70および73のいずれか一項に記載の製造品。
(項目75)
前記1種または複数種の肺機能が、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV )、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)からなる群から選択される、項目74に記載の製造品。
(項目76)
線維性疾患を有する前記個体における1種または複数種の病理学的パラメータが、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する、項目64〜75のいずれか一項に記載の製造品。
(項目77)
前記1種または複数種の病理学的パラメータが、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される、項目76に記載の製造品。
(項目78)
ヒトシグレック−8に結合する抗体を含む医薬と、前線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む、製造品。
(項目79)
前記前線維性疾患が、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される、項目78に記載の製造品。
(項目80)
前記添付文書が、前記処置が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて前線維性疾患を有する前記個体における1種または複数種の症状を低下させることにおいて有効であることをさらに示す、項目78または79に記載の製造品。
(項目81)
前記個体が、ヒトである、項目64〜80のいずれか一項に記載の製造品。
(項目82)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目64〜81のいずれか一項に記載の製造品。
(項目83)
前記抗体が、IgG1抗体である、項目64〜82のいずれか一項に記載の製造品。
(項目84)
前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、項目64〜83のいずれか一項に記載の製造品。
(項目85)
前記抗体が、ADCC活性を改善する、Fc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、項目84に記載の製造品。
(項目86)
前記抗体の重鎖のうち少なくとも1または2つが、フコシル化していない、項目64〜85のいずれか一項に記載の製造品。
(項目87)
前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、項目64〜86のいずれか一項に記載の製造品。
(項目88)
前記抗体が、マウス抗体である、項目64〜86のいずれか一項に記載の製造品。
(項目89)
前記抗体が、Fab、Fab’−SH、Fv、scFvおよび(Fab’) 断片からなる群より選択される抗体断片である、項目64〜86のいずれか一項に記載の製造品。
(項目90)
前記抗体が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、および/または前記軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む、項目64〜87のいずれか一項に記載の製造品。
(項目91)
前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、項目64〜87のいずれか一項に記載の製造品。
(項目92)
前記抗体が、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含む、項目64〜91のいずれか一項に記載の製造品。
(項目93)
前記ヒトIgG Fc領域が、ヒトIgG1またはヒトIgG4を含む、項目92に記載の製造品。
(項目94)
前記ヒトIgG4が、アミノ酸置換S228Pを含み、前記アミノ酸残基が、Kabatで規定されたEUインデックスに従って番号付けられる、項目93に記載の製造品。
(項目95)
前記抗体が、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目64〜87のいずれか一項に記載の製造品。
(項目96)
前記抗体が、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、項目64〜87のいずれか一項に記載の製造品。
(項目97)
前記抗体が、以下:
(a)以下:
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、ならびに/または
(b)以下:
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55のアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目64〜87のいずれか一項に記載の製造品。
(項目98)
前記抗体が、以下:
(a)以下:
(1)配列番号26のアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号34のアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38のアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45のアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変領域、ならびに/または
(b)以下:
(1)配列番号48のアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51のアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号58のアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変領域
を含む、項目64〜87のいずれか一項に記載の製造品。
(項目99)
個体における線維性疾患を処置または予防するための方法であって、該個体に、ヒトシグレック−8に結合するアゴニストの有効量を投与するステップを含む、方法。
(項目100)
前記アゴニストが、6’−スルホ−sLe 含有リガンド、6’−スルホ−sLe 含有オリゴ糖、6’−スルホ−sLe 含有ポリペプチドおよび6’−スルホ−sLe 含有糖タンパク質からなる群より選択される6’−スルホ−sLe 含有アゴニストである、項目99に記載の方法。
(項目101)
前記アゴニストが、ヒトシグレック−8に結合するアゴニスト抗体である、項目99に記載の方法。
(項目102)
個体における前線維性疾患を処置または予防するための方法であって、前記個体に、ヒトシグレック−8に結合するアゴニストの有効量を投与するステップを含む、方法。
(項目103)
前記アゴニストが、6’−スルホ−sLe 含有リガンド、6’−スルホ−sLe 含有オリゴ糖、6’−スルホ−sLe 含有ポリペプチドおよび6’−スルホ−sLe 含有糖タンパク質からなる群より選択される6’−スルホ−sLe 含有アゴニストである、項目102に記載の方法。
(項目104)
前記アゴニストが、ヒトシグレック−8に結合するアゴニスト抗体である、項目102に記載の方法。
図1は、抗シグレック−8抗体による処置による、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスにおける気管支肺胞空間への好中球流入の阻害を示すグラフである。(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)m2E2枯渇は、ADCC活性によって好酸球および肥満細胞を死滅させる、マウスIgG2aアイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(3)m2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、m2E2枯渇抗体試験群、m2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。好中球の%は、試料中の白血球の総数と比べた好中球のパーセンテージを示す。
図2Aおよび図2Bは、抗シグレック−8抗体による処置による、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスにおけるコラーゲン蓄積の予防を示す一連のグラフである。実験2が、m2E2枯渇抗体で処置されるマウスの群を含むことを除いて、図2A)実験1および図2B)実験2は、2つ組の実験である。BALは、気管支肺胞洗浄を示す;(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)m2E2枯渇は、ADCC活性によって好酸球および肥満細胞を死滅させる、マウスIgG2aアイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(3)m2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、m2E2枯渇抗体試験群、m2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。
図3は、抗シグレック−8抗体が、ブレオマイシン誘発体重減少からシグレック−8トランスジェニックマウスを保護することを示すグラフである。(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)m2E2枯渇は、ADCC活性によって好酸球および肥満細胞を死滅させる、マウスIgG2aアイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(3)m2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、m2E2枯渇抗体試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。
図4は、抗シグレック−8抗体による処置による、シグレック−8トランスジェニックマウスにおけるブレオマイシン誘発肺線維症後の気管支肺胞洗浄液におけるサイトカイン上昇の阻害を示すグラフである。(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)m2E2枯渇は、ADCC活性によって好酸球および肥満細胞を死滅させる、マウスIgG2aアイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(3)m2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、m2E2枯渇抗体試験群、m2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。G−CSFは、顆粒球コロニー刺激因子を示す;IL−6は、インターロイキン−6を示す;IP−10は、インターフェロンガンマ誘導性タンパク質10を示す;KCは、ケラチノサイト由来サイトカインを示す;RANTESは、活性化時に調節される正常T細胞により発現および分泌されるタンパク質(regulated on activation normal T cell expressed and secreted protein)を示す;活性TGF−β2は、活性型のトランスフォーミング増殖因子−β2を示す。
図5は、抗シグレック−8抗体による処置による、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスの肺のAshcroftスコアの低下を示すグラフである。(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)m2E2枯渇は、ADCC活性によって好酸球および肥満細胞を死滅させる、マウスIgG2aアイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(3)m2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、m2E2枯渇抗体試験群、m2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。
図6は、抗シグレック−8抗体による治療的処置による、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスにおける気管支肺胞空間への好中球流入の阻害を示すグラフである。(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(3)m2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、m2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。好中球の%は、試料中の白血球の総数と比べた好中球のパーセンテージを示す。
図7は、抗シグレック−8抗体による処置による、腹膜に異物誘発線維症を有するヒト化マウスにおけるコラーゲン沈着の予防および阻害を示すグラフである。(1)hIgG4アイソタイプ対照は、ヒトIgG4アイソタイプ対照抗体を示す;(2)−1日目のc2E2 IgG4抗体は、ビーズの植え込みの1日前に投薬された、ヒトIgG4アイソタイプおよびマウス2E2可変ドメインを有するキメラモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(3)7日目のc2E2 IgG4抗体は、ビーズの植え込みの7日後に投薬された、ヒトIgG4アイソタイプおよびマウス2E2可変ドメインを有するキメラモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。p値は、c2E2 IgG4抗体試験群と、ヒトIgG4アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。
図8は、抗シグレック−8抗体による処置による、腹膜に異物誘発線維症を有するヒト化マウスにおける筋線維芽細胞蓄積の予防および阻害を示すグラフである。(1)hIgG4アイソタイプ対照は、ヒトIgG4アイソタイプ対照抗体を示す;(2)−1日目のc2E2 IgG4抗体は、ビーズの植え込みの1日前に投薬された、ヒトIgG4アイソタイプおよびマウス2E2可変ドメインを有するキメラモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す;(3)7日目のc2E2 IgG4抗体は、ビーズの植え込みの7日後に投薬された、ヒトIgG4アイソタイプおよびマウス2E2可変ドメインを有するキメラモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。α−平滑筋アクチンは、筋線維芽細胞のマーカーである。%線維性ビーズは、筋線維芽細胞と会合した、回収したポリスチレンビーズの数を示す。
図9は、抗シグレック−8抗体により処置された、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスにおける肺重量減少を示すグラフである。(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)7日目のm2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。初回ブレオマイシン投与7日後から、マウスに投薬した;(3)−1日目のm2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。初回ブレオマイシン投与1日前から、マウスに投薬した;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、7日目に処置されたm2E2阻害抗体試験群、−1日目に処置されたm2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。
図10Aおよび図10Bは、抗シグレック−8抗体処置による、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスの皮膚および肺におけるヒドロキシプロリン蓄積の予防を示す一連のグラフである。図10A)は、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスの肺におけるヒドロキシプロリン蓄積の減少を示すグラフであり、一方、図10B)は、皮膚におけるヒドロキシプロリンの減少を示すグラフである。(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)7日目のm2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。初回ブレオマイシン投与7日後から、マウスに投薬した;(3)−1日目のm2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。初回ブレオマイシン投与1日前から、マウスに投薬した;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、7日目に処置されたm2E2阻害抗体試験群、−1日目に処置されたm2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。
図11Aおよび図11Bは、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスにおける抗シグレック−8抗体による処置による、皮膚病変における線維化促進(pro-fibrotic)メディエーターの発現減少を示す一連のグラフである。図11Aは、ブレオマイシン誘発皮膚線維症におけるm2E2処置後の、TGFβ RNA発現の減少を示すグラフであり、図11Bは、皮膚におけるIL−13 RNA発現の減少を示すグラフである。IL−13は、インターロイキン−13を示す;TGFβは、トランスフォーミング増殖因子ベータを示す;(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)7日目のm2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。初回ブレオマイシン投与7日後から、マウスに投薬した;(3)−1日目のm2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。初回ブレオマイシン投与1日前から、マウスに投薬した;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、7日目に処置されたm2E2阻害抗体試験群、−1日目に処置されたm2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。
図12は、抗シグレック−8抗体により処置された、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスにおける視覚的皮膚スコアにおける減少傾向を示すグラフである。(1)アイソタイプは、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体を示す;(2)7日目のm2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。初回ブレオマイシン投与7日後から、マウスに投薬した;(3)−1日目のm2E2阻害は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体を示す。初回ブレオマイシン投与1日前から、マウスに投薬した;(4)ナイーブは、抗体またはブレオマイシンを投与されていない、シグレック−8トランスジェニックマウスを示す。p値は、7日目に処置されたm2E2阻害抗体試験群、−1日目に処置されたm2E2阻害抗体試験群またはナイーブ試験群と、マウスIgG1アイソタイプ対照抗体試験群とを比較することにより決定された。
詳細な説明
I.定義
本発明に関して詳細に記載する前に、本発明が、当然ながら変動し得る特定の組成物または生命システムに限定されないことを理解されたい。本明細書で使用されている用語法が、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定を目的としないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されている通り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容がそれ以外を明らかに指示しない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「分子(a molecule)」と言及される場合、2個またはそれを超える斯かる分子の組合せその他を任意選択で含む。
用語「約」は、本明細書において、本技術分野における当業者であれば容易に分かるそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書において「約」の値またはパラメータが言及される場合、該値またはパラメータそれ自体に指示される実施形態を含む(および記載する)。
本明細書に記載されている本発明の態様および実施形態が、態様および実施形態を「含む」、「からなる」および「から本質的になる」ことを含むことが理解される。
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ)および単鎖分子ならびに抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)およびFv)を含む。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書において「抗体」と互換的に使用される。
基本的4鎖抗体単位は、2つの同一軽(L)鎖および2つの同一重(H)鎖で構成されたヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加的なポリペプチドと共に5個の基本的ヘテロ四量体単位からなり、10個の抗原結合部位を含有するが、IgA抗体は、J鎖と組み合わせた、重合して多価集合体を形成することができる2〜5個の基本的4鎖単位を含む。IgGの場合、4鎖単位は一般に、約150,000ダルトンである。各L鎖は、1個の共有結合性ジスルフィド結合によってH鎖に連結される一方、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1個または複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。各HおよびL鎖は、規則的に間隔をあけた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端において、可変ドメイン(V)に続いて、αおよびγ鎖のそれぞれに対し3個の定常ドメイン(C)、μおよびεアイソタイプに対し4個のCドメインを有する。各L鎖は、N末端において可変ドメイン(V)、続いてその他端に定常ドメインを有する。Vは、Vと整列され、Cは、重鎖の第1の定常ドメイン(C1)と整列される。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる。VおよびVの対形成は共に、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造および特性に関して、例えば、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P. Sties、Abba I. TerrおよびTristram G. Parsolw(編)、Appleton & Lange、Norwalk、CT、1994年、71頁、第6章を参照されたい。
いずれかの脊椎動物種由来のL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパおよびラムダと呼ばれる明らかに異なる2型の一方に割り当てることができる。その重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。それぞれα、δ、ε、γおよびμと命名された重鎖を有する5クラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在する。γおよびαクラスは、CH配列における相対的に軽微な差および機能に基づいてサブクラスへとさらに分割され、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと名付けられた複数の多型バリアントで存在することができ(JefferisおよびLefranc 2009年、mAbs、1巻、4号、1〜7頁において概説)、そのうちいずれかが、本発明における使用に適する。ヒト集団における共通アロタイプバリアントは、文字a、f、n、zによって命名されている。
「単離された」抗体は、その産生環境(例えば、天然または組換えによる)の構成成分から同定、分離および/または回収された抗体である。一部の実施形態において、単離されたポリペプチドは、その産生環境由来のあらゆる他の構成成分との関連を含まない。組換えトランスフェクト細胞に起因するもの等、その産生環境の夾雑構成成分は、抗体の研究、診断または治療的使用に典型的に干渉する材料であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含むことができる。一部の実施形態において、ポリペプチドは、(1)例えば、ローリー方法によって決定される抗体の95重量%超まで、一部の実施形態において、99重量%超まで;(1)スピニングカップシークエネーターの使用により、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは銀染色を使用した非還元もしくは還元条件下のSDS−PAGEによって均一になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1種の構成成分が存在しないため、組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかし通常、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1回の精製ステップにより調製される。
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書において、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在し得る可能な天然起源の変異および/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にC末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のC末端において切断される。一部の実施形態において、C末端切断は、重鎖からC末端リシンを除去する。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にN末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5個のアミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のN末端において切断される。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられている。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、複数の抗原部位に向けられている(二重特異性抗体または多特異性抗体等)。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られるという抗体の性状を示し、いずれか特定の方法による抗体の産生を要求するものと解釈するべきではない。例えば、本発明に従って使用するべきモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ技術、およびヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全体を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術を含む種々の技法によって作製することができる。
用語「裸の抗体」は、細胞傷害性部分または放射性標識にコンジュゲートされていない抗体を指す。
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」または「全抗体」は、抗体断片とは対照的に、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すように互換的に使用される。特に、全抗体は、Fc領域を含む重および軽鎖を有する抗体を含む。定常ドメインは、ネイティブ配列定常ドメイン(例えば、ヒトネイティブ配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントとなり得る。場合によっては、インタクト抗体は、1種または複数種のエフェクター機能を有することができる。
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部、インタクト抗体の抗原結合および/または可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapataら、Protein Eng.8巻(10号):1057〜1062頁[1995年]を参照);抗体断片から形成された単鎖抗体分子および多特異性抗体が挙げられる。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2個の同一抗原結合性断片と、容易に結晶化する能力を反映する命名であるところの、残余の「Fc」断片を産生する。Fab断片は、一方の重鎖のH鎖可変領域ドメイン(V)および第1の定常ドメイン(C1)と共にL鎖全体からなる。各Fab断片は、抗原結合に関して一価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大型のF(ab’)断片を生じ、これは、異なる抗原結合活性を有し、依然として抗原を架橋することができる2個のジスルフィド結合したFab断片に大まかに相当する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1個または複数のシステインを含む数個の追加的な残基をC1ドメインのカルボキシ末端に有するという点において、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’の本明細書における命名である。F(ab’)抗体断片は本来、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
Fc断片は、ジスルフィドによって一体に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、ある特定の種類の細胞上に存在するFc受容体(FcR)によって認識される領域でもあるFc領域における配列によって決定される。
「Fv」は、完全抗原認識および結合部位を含有する最小抗体断片である。この断片は、緊密な非共有結合性会合した1個の重および1個の軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これら2個のドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する6個の高頻度可変性ループ(それぞれHおよびL鎖由来の3個のループ)を発する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3個のHVRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識および結合する能力を有する。
「sFv」または「scFv」としても省略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖へと接続されたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。一部の実施形態において、sFvポリペプチドは、VおよびVドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、sFvが、抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にする。sFvの概説に関しては、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag、New York、269〜315頁(1994年)を参照されたい。
本発明の抗体の「機能断片」は、インタクト抗体の抗原結合もしくは可変領域を一般に含むインタクト抗体の部分、または修飾されたFcR結合能を保持もしくは有する抗体のFv領域を含む。抗体断片の例として、抗体断片から形成された線状抗体、単鎖抗体分子および多特異性抗体が挙げられる。
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重および/または軽鎖の部分が、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における相当する配列と同一または相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)と共に、所望の生物学的活性を呈する限りにおいて、斯かる抗体の断片を特に含む(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851〜6855頁(1984年))。本明細書における目的のキメラ抗体は、PRIMATIZED(登録商標)抗体を含み、この抗体の抗原結合領域は、例えば、目的の抗原でマカクザルを免疫化することによって産生された抗体に由来する。本明細書において、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基に置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例において、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、相当する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に存在しない残基を含むことができる。これらの修飾を為して、結合親和性等、抗体性能をさらに精緻化することができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1、典型的には2個の可変ドメインのうち実質的に全てを含み、それによると、高頻度可変性ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン配列のものに相当し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域は、結合親和性、異性化、免疫原性等、抗体性能を改善する1個または複数の個々のFR残基置換を含むことができるであろう。一部の実施形態において、FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、H鎖において6個以下であり、L鎖においては、3個以下である。ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分も任意選択で含むであろう。さらなる詳細に関して、例えば、Jonesら、Nature 321巻:522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature 332巻:323〜329頁(1988年);およびPresta、Curr. Op. Struct. Biol.2巻:593〜596頁(1992年)を参照されたい。例えば、VaswaniおよびHamilton、Ann. Allergy, Asthma & Immunol.1巻:105〜115頁(1998年);Harris、Biochem. Soc. Transactions 23巻:1035〜1038頁(1995年);HurleおよびGross、Curr. Op. Biotech.5巻:428〜433頁(1994年);ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照されたい。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、単一の抗原部位に向けられている。一部の実施形態において、ヒト化抗体は、複数の抗原部位に向けられている。代替的ヒト化方法は、米国特許第7,981,843号および米国特許出願公開第2006/0134098号に記載されている。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」および「VL」と称することができる。これらのドメインは一般に、抗体の最も可変的な部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含有する。
用語「高頻度可変領域」、「HVR」または「HV」は、本明細書において使用される場合、配列が高頻度可変性であるおよび/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6個のHVRを含む;VHにおける3個(H1、H2、H3)およびVLにおける3個(L1、L2、L3)。ネイティブ抗体において、H3およびL3は、6個のHVRのうち最大の多様性を表示し、H3は特に、抗体への優れた特異性の付与において特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xuら、Immunity 13巻:37〜45頁(2000年);JohnsonおよびWu、Methods in Molecular Biology 248巻:1〜25頁(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003年))を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる天然起源のラクダ科動物(camelid)抗体は、軽鎖の非存在下で機能的かつ安定的である。例えば、Hamers−Castermanら、Nature 363巻:446〜448頁(1993年)およびSheriffら、Nature Struct. Biol.3巻:733〜736頁(1996年)を参照されたい。
多数のHVRの図解が使用されており、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列可変性に基づき、最も一般的に使用されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institute of Health、Bethesda、MD(1991年))。Chothia HVRは、その代わりに、構造ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk、J. Mol. Biol.196巻:901〜917頁(1987年))。「Contact」HVRは、利用できる複雑な結晶構造の解析に基づく。これらのHVRのそれぞれに由来する残基を下に記す。
Figure 0006846362
他に断りがなければ、可変ドメイン残基(HVR残基およびフレームワーク領域残基)は、Kabatら(上掲)に従ってナンバリングする。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されているHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
表現「Kabatにおける通りの可変ドメイン残基ナンバリング」または「Kabatにおける通りのアミノ酸位置ナンバリング」およびこれらの変種は、Kabatら(上掲)における抗体の編集の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリング方式を指す。このナンバリング方式を使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮またはそれへの挿入に相当する、より少ないまたは追加的なアミノ酸を含有することができる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)を、また、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82bおよび82c等)を含むことができる。残基のKabatナンバリングは、「標準」Kabatナンバリングされた配列との抗体配列の相同性領域におけるアライメントにより、所定の抗体に対して決定することができる。
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含むことができる、あるいは先在するアミノ酸配列変化を含有することができる。一部の実施形態において、先在するアミノ酸変化の数は、10個もしくはそれに満たない、9個もしくはそれに満たない、8個もしくはそれに満たない、7個もしくはそれに満たない、6個もしくはそれに満たない、5個もしくはそれに満たない、4個もしくはそれに満たない、3個もしくはそれに満たないまたは2個もしくはそれに満たない。
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列し、必要であればギャップを導入して、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮することなく、最大パーセント配列同一性を達成した後に、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、当業者の技能範囲内の様々な仕方で、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたる最大アライメントの達成に必要とされるいずれかのアルゴリズムを含む、配列の整列に適切なパラメータを決定することができる。例えば、所定のアミノ酸配列Bとの、これに関するまたはこれに対する所定のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(あるいは、所定のアミノ酸配列Bと、これに関しまたはこれに対し、ある特定の%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所定のアミノ酸配列Aと表現することができる)は、次の通りに計算される:
100×分数X/Y
(式中、Xは、AおよびBの該プログラムのアライメントにおける配列により同一マッチとしてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性が、Aに対するBの%アミノ酸配列同一性に等しくならないことが認められよう。
特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドにおけるエピトープ「に結合する」、「に特異的に結合する」または「に特異的な」抗体は、他のいかなるポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく、この特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチドにおけるエピトープに結合する抗体である。一部の実施形態において、無関係の非シグレック−8ポリペプチドへの本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)の結合は、本技術分野で公知の方法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA))によって測定されるシグレック−8への抗体結合の約10%未満である。一部の実施形態において、シグレック−8に結合する抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦2nM、≦1nM、≦0.7nM、≦0.6nM、≦0.5nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10−8Mまたはそれに満たない、例えば、10−8M〜10−13M、例えば、10−9M〜10−13M)の解離定数(Kd)を有する。
用語「抗シグレック−8抗体」または「ヒトシグレック−8に結合する抗体」は、無関係の非シグレック−8ポリペプチドの他のいずれかのポリペプチドまたはエピトープに実質的に結合することなく、ヒトシグレック−8のポリペプチドまたはエピトープに結合する抗体を指す。
用語「シグレック−8」は、本明細書において、ヒトシグレック−8タンパク質を指す。この用語は、スプライスバリアントまたはアレルバリアントを含むシグレック−8の天然起源のバリアントも含む。例示的なヒトシグレック−8のアミノ酸配列を配列番号72に示す。別の例示的なヒトシグレック−8のアミノ酸配列を配列番号73に示す。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8タンパク質は、免疫グロブリンFc領域に融合されたヒトシグレック−8細胞外ドメインを含む。免疫グロブリンFc領域に融合された例示的なヒトシグレック−8細胞外ドメインのアミノ酸配列を配列番号74に示す。配列番号74における下線を引いたアミノ酸配列は、シグレック−8 Fc融合タンパク質アミノ酸配列のFc領域を示す。
Figure 0006846362
「アポトーシスを誘導する」または「アポトーシス性」である抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化および/または膜小胞の形成(アポトーシス小体と呼ばれる)等、標準アポトーシスアッセイによって決定されるプログラム細胞死を誘導する抗体である。例えば、本発明の抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)のアポトーシス活性は、アネキシンVで細胞を染色することにより示すことができる。
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(ネイティブ配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因し得る生物学的活性を指し、抗体アイソタイプにより変動する。抗体エフェクター機能の例として:C1q結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節;およびB細胞活性化が挙げられる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」または「ADCC」は、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌されたIgが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞を、抗原を有する標的細胞に特異的に結合させ、その後、細胞毒で標的細胞を死滅させることができる細胞傷害の形態を指す。抗体は、細胞傷害性細胞を「武装(arm)」させ、この機構による標的細胞の死滅に必要とされる。ADCCを媒介するための主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFc発現は、RavetchおよびKinet、Annu. Rev. Immunol.9巻:457〜92頁(1991年)の464頁の表3に要約されている。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)は、ADCCを増強する。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているもの等、in vitro ADCCアッセイを行うことができる。斯かるアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。その代わりにまたはその上、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynesら、PNAS USA 95巻:652〜656頁(1998年)に開示されているもの等、動物モデルにおいて評価することができる。ADCC活性および他の抗体特性を変更する他のFcバリアントは、Ghetieら、Nat Biotech.15巻:637〜40頁、1997年;Duncanら、Nature 332巻:563〜564頁、1988年;Lundら、J. Immunol 147巻:2657〜2662頁、1991年;Lundら、Mol Immunol 29巻:53〜59頁、1992年;Alegreら、Transplantation 57巻:1537〜1543頁、1994年;Hutchinsら、Proc Natl. Acad Sci USA 92巻:11980〜11984頁、1995年;Jefferisら、Immunol Lett.44巻:111〜117頁、1995年;Lundら、FASEB J 9巻:115〜119頁、1995年;Jefferisら、Immunol Lett 54巻:101〜104頁、1996年;Lundら、J Immunol 157巻:4963〜4969頁、1996年;Armourら、Eur J Immunol 29巻:2613〜2624頁、1999年;Idusogieら、J Immunol 164巻:4178〜4184頁、200;Reddyら、J Immunol 164巻:1925〜1933頁、2000年;Xuら、Cell Immunol 200巻:16〜26頁、2000年;Idusogieら、J Immunol 166巻:2571〜2575頁、2001年;Shieldsら、J Biol Chem 276巻:6591〜6604頁、2001年;Jefferisら、Immunol Lett 82巻:57〜65頁.2002年;Prestaら、Biochem Soc Trans 30巻:487〜490頁、2002年;Lazarら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103巻:4005〜4010頁、2006年;米国特許第5,624,821号;同第5,885,573号;同第5,677,425号;同第6,165,745号;同第6,277,375号;同第5,869,046号;同第6,121,022号;同第5,624,821号;同第5,648,260号;同第6,194,551号;同第6,737,056号;同第6,821,505号;同第6,277,375号;同第7,335,742号;および同第7,317,091号に開示されているものを含む。
本明細書における用語「Fc領域」は、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するように使用されている。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226またはPro230の位置のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端に伸びるものと定義される。本発明の抗体における使用に適したネイティブ配列Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。単一のアミノ酸置換(KabatナンバリングによるS228P;IgG4Proと命名)を導入して、組換えIgG4抗体において観察される異質性を消失させることができる。Angal, S.ら(1993年)Mol Immunol 30巻、105〜108頁を参照されたい。
「非フコシル化」または「フコース欠損」抗体は、Fc領域を含むグリコシル化抗体バリアントを指し、このFc領域に付着した糖質構造は、低下したフコースを有するまたはフコースを欠如する。一部の実施形態において、フコースが低下したまたはフコースを欠如する抗体は、改善されたADCC機能を有する。一部の実施形態において、非フコシル化またはフコース欠損抗体は、細胞株において産生される同じ抗体におけるフコースの量と比べて低下したフコースを有する。本明細書において企図される非フコシル化またはフコース欠損抗体組成物は、組成物における抗体のFc領域に付着したN結合型グリカンの約50%未満が、フコースを含む組成物である。
用語「フコシル化」または「フコシル化された」は、抗体のペプチド骨格に付着したオリゴ糖内のフコース残基の存在を指す。特に、フコシル化抗体は、例えば、ヒトIgG1
FcドメインのAsn297位における(Fc領域残基のEUナンバリング)、抗体Fc領域に付着したN結合型オリゴ糖の一方または両方における最内側N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基にα(1,6)結合型フコースを含む。Asn297は、免疫グロブリンにおける軽微な配列変種により、297位の上流または下流の約+3アミノ酸に、すなわち、294〜300位の間に位置することもできる。
「フコシル化の程度」は、本技術分野で公知の方法によって、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI TOF MS)によって評価されるN−グリコシダーゼF処理抗体組成物において同定された、全オリゴ糖と比べたフコシル化オリゴ糖のパーセンテージである。「完全にフコシル化された抗体」の組成物において、基本的に全オリゴ糖が、フコース残基を含む、すなわち、フコシル化されている。一部の実施形態において、完全にフコシル化された抗体の組成物は、少なくとも約90%のフコシル化の程度を有する。したがって、斯かる組成物における個々の抗体は、典型的に、Fc領域における2個のN結合型オリゴ糖のそれぞれにフコース残基を含む。逆に、「完全非フコシル化」抗体の組成物において、基本的にいかなるオリゴ糖もフコシル化されておらず、斯かる組成物における個々の抗体は、Fc領域における2個のN結合型オリゴ糖のいずれにもフコース残基を含有しない。一部の実施形態において、完全非フコシル化抗体の組成物は、約10%未満のフコシル化の程度を有する。「部分的にフコシル化された抗体」の組成物において、オリゴ糖の一部のみが、フコースを含む。組成物が、Fc領域におけるN結合型オリゴ糖にフコース残基を欠如する基本的にあらゆる個々の抗体も、Fc領域におけるN結合型オリゴ糖の両方にフコース残基を含有する基本的にあらゆる個々の抗体も含まないのであれば、斯かる組成物における個々の抗体は、Fc領域におけるN結合型オリゴ糖の一方または両方にフコース残基を含むことができるまたはどちらにも含まない。一実施形態において、部分的にフコシル化された抗体の組成物は、約10%〜約80%(例えば、約50%〜約80%、約60%〜約80%または約70%〜約80%)のフコシル化の程度を有する。
本明細書における「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位およびその結合パートナー(例えば、抗原)の間の非共有結合性相互作用の強度を指す。一部の実施形態において、シグレック−8(本明細書に記載されているシグレック−8−Fc融合タンパク質等、二量体の場合がある)に対する抗体の結合親和性は、一般に、解離定数(Kd)により表すことができる。親和性は、本明細書に記載されている方法を含む、本技術分野で公知の一般的方法により測定することができる。
本明細書における「結合アビディティー」は、分子(例えば、抗体)の複数の結合部位およびその結合パートナー(例えば、抗原)の結合強度を指す。
本明細書における抗体をコードする「単離された」核酸分子は、同定され、これが産生された環境においてこれが通常関連する少なくとも1種の夾雑核酸分子から分離された核酸分子である。一部の実施形態において、単離された核酸は、産生環境と関連するあらゆる構成成分との関連を含まない。本明細書におけるポリペプチドおよび抗体をコードする単離された核酸分子は、これが天然に見出される形態または設定以外の形態である。したがって、単離された核酸分子は、本明細書において細胞中に天然に存在するポリペプチドおよび抗体をコードする核酸から区別される。
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物学的活性が有効となることを可能にするような形態の、この製剤が投与される個体にとって容認し難い毒性がある追加的な構成成分を含有しない調製物を指す。斯かる製剤は無菌である。
本明細書における「キャリア」は、用いられている投与量および濃度でこれに曝露される細胞または哺乳動物にとって無毒性の、薬学的に許容されるキャリア、賦形剤または安定剤を含む。多くの場合、生理的に許容されるキャリアは、水性pH緩衝溶液である。生理的に許容されるキャリアの例として、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖、二糖および他の糖質;EDTA等のキレート剤;マンニトールまたはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;および/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)およびPLURONICS(商標)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
本明細書において、用語「処置」または「処置する」は、臨床病理学の経過において処置されている個体または細胞の天然の経過を変更するように設計された臨床介入を指す。処置の望ましい効果は、疾患進行速度の減少、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。例えば、障害(例えば、線維性疾患)に関連する1種または複数種の症状が、軽減または排除される場合、個体はうまく「処置」される。例えば、処置が、疾患に罹った個体のクオリティ・オブ・ライフの増加、疾患処置に必要とされる他の薬物療法の用量の減少、疾患再発の頻度の低下、疾患の重症度の低減、疾患の発症もしくは進行の遅延および/または個体の生存の延長をもたらす場合、個体はうまく「処置」される。
本明細書において、「と併せて」は、ある処置様式に加えた、別の処置様式の投与を指す。このようなものとして、「と併せて」は、個体へのある処置様式の投与の前、最中または後における、他の処置様式の投与を指す。
本明細書において、用語「予防」または「予防する」は、個体における疾患の発生または再発に関する予防法の提供を含む。個体は、障害の素因がある、障害になりやすいまたは障害発症リスクがある可能性があるが、未だ障害と診断されていない。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)は、障害(例えば、線維性疾患)の発症を遅延させるために使用される。
本明細書において、障害(例えば、線維性疾患)発症「リスクがある」個体は、検出可能な疾患または疾患症状を有していても有していなくてもよく、本明細書に記載されている処置方法に先立ち検出可能な疾患または疾患症状を呈していてもいなくてもよい。「リスクがある」は、個体が、本技術分野で公知の疾患(例えば、線維性疾患)の発症と相関する測定可能なパラメータである1種または複数種のリスク因子を有することを意味する。これらのリスク因子のうち1種または複数を有する個体は、これらのリスク因子の1種または複数がない個体よりも高い障害発症確率を有する。
「有効量」は、治療的または予防的結果を含む、所望のまたは表示の効果の達成に必要な投与量および期間で、少なくとも有効な量を指す。有効量は、1回または複数の投与でもたらすことができる。「治療有効量」は、特定の障害の測定可能な改善をもたらすために要求される少なくとも最小濃度である。本明細書における治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力等の因子に応じて変動し得る。治療有効量は、治療的に有益な効果が、抗体のいかなる毒性または有害効果も上回る量となることもできる。「予防有効量」は、所望の予防的結果の達成に必要な投与量および期間で有効な量を指す。典型的には、ただし必然的にではなく、予防的用量は、疾患のより早期ステージにおいてまたはそれに先立ち個体において使用されるため、予防有効量は、治療有効量未満となり得る。
「慢性」投与は、延長された期間で初期治療効果(活性)を維持するために、急性様式とは対照的に継続的な様式での医薬(複数可)の投与を指す。「間欠的」投与は、中断することなく連続的に為されないが、周期性の性質の処置である。
本明細書において、「個体」または「被験体」は、哺乳動物である。処置目的のための「哺乳動物」は、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、スナネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコ等、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園、スポーツまたは愛玩動物を含む。一部の実施形態において、個体または被験体は、ヒトである。
II.組成物および方法
A.本発明の方法
個体における線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されている抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはその組成物の有効量を投与するステップを含む方法が本明細書に提供される。個体における線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されているアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニストまたはアゴニスト抗体)またはその組成物の有効量を投与するステップを含む方法も本明細書に提供される。一部の実施形態において、個体(例えば、ヒト)は、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)と診断されている、または線維性疾患を発症するリスクがある。本発明の抗体およびアゴニストならびにそれらの組成物により処置可能な線維性疾患の非限定例として、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)、肝線維症(例えば、肝硬変)、腎線維症(例えば、腎間質線維症)、心臓線維症(例えば、心内膜心筋線維症および心房線維症)、脾臓線維症、眼線維症、機械的誘発線維症(例えば、人工呼吸器誘発肺線維症)、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症(例えば、ブレオマイシン誘発肺線維症)、ウイルス誘発線維症、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症(例えば、骨髄線維症)、強皮症(例えば、全身性硬化症)、縦隔線維症および後腹膜腔線維症が挙げられる。一部の実施形態では、線維性疾患は、肥満細胞媒介性障害である。
個体における前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されている抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはその組成物の有効量を投与するステップを含む方法も、本明細書に提供される。個体における前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されているアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニストまたはアゴニスト抗体)またはその組成物の有効量を投与するステップを含む方法も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、個体(例えば、ヒト)は、前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)と診断された、または線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を発症するリスクがある。本発明の抗体およびアゴニストならびにそれらの組成物により処置可能な前線維性疾患の非限定例として、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症が挙げられる。一部の実施形態では、前線維性疾患は、肥満細胞媒介性障害である。
線維性疾患は、臓器および組織の正常な構造および機能に進行性増悪をもたらし得る、過剰な結合組織蓄積および組織収縮によって特徴付けられる。線維性疾患は一般に、正常な創傷治癒過程がうまくいかなかったことにより生じる。組織損傷後の正常な創傷治癒過程は、血餅形成を誘発する抗線維素溶解性凝固カスケードを惹起する炎症性メディエーターを放出する上皮細胞および/または内皮細胞が関与する。このあとに炎症および増殖期が続き、そこでは、白血球が動員され、次いでケモカインおよび増殖因子によって活性化および誘導されて、増殖する。活性化された白血球は、IL−13およびTGF−β等、線維化促進サイトカインを分泌する。刺激された上皮細胞、内皮細胞および筋線維芽細胞も、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ならびにさらなるサイトカインおよびケモカインを産生し、これらは、修復組織の重要成分である、好中球、マクロファージ、T細胞、B細胞および好酸球を動員および活性化する。初期炎症期の直後に、筋線維芽細胞は、細胞外マトリックス(ECM)成分を産生し、内皮細胞は、新たな血管を形成する。その後のリモデリング期において、活性化された筋線維芽細胞は、創傷収縮を刺激する。コラーゲン線維もより組織化されるようになり、血管は正常へと回復し、瘢痕組織は排除され、上皮細胞および/または内皮細胞は分裂し、基底層上を遊走して、それぞれ上皮または内皮を再生し、損傷した組織をその正常な外観に回復する。慢性創傷の場合、この正常な創傷治癒過程が破壊される。持続性炎症、組織壊死および感染は、慢性筋線維芽細胞活性化および過剰なECM成分蓄積をもたらし、これらは、線維性瘢痕の形成を促進する。Wynn T.A.、J Clin Invest.、2007年、114巻(3号):524〜529頁を参照されたい。種々の損傷に起因する、臓器および組織の多くの線維性疾患が存在する。線維症をもたらす損傷として、組織および/または臓器の異常創傷治癒をもたらす慢性損傷によって特徴付けられる、感染性病原体(infectious agent)(例えば、細菌、ウイルス、真菌および多細胞寄生生物)による感染、機械的ストレス(例えば、人工呼吸器)、環境因子(例えば、粉塵、カビ、アスベスト等)への曝露、放射線曝露、薬物曝露(例えば、化学療法薬)および前線維性疾患が挙げられるがこれらに限定されない。様々な種類の線維性疾患が存在するが、それらは全て、当業者にとって周知の疾患の共通の特質である、過剰ECM成分の蓄積を含有する。Wynnら、Nature Medicine、2012年、18巻:1028〜1040頁を参照されたい。
一部の実施形態では、個体における臓器の線維性疾患を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、臓器の線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症(IPF)、特発性非特異性間質性肺臓炎(NSIP)、原因不明の器質化肺炎(COP)、ハンマン・リッチ症候群(急性間質性肺炎としても公知)、リンパ球性間質性肺臓炎(LIP)、呼吸細気管支炎間質性肺疾患、剥離性間質性肺臓炎(desquamative interstitial pneumonitis)または特発性リンパ性間質性肺炎(idiopathic lymphoid interstitial pneumonia)または特発性胸膜肺実質線維弾性症(idiopathic pleuroparenchymal fibroelastosis)であるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。一部の実施形態では、肝線維症は、肝硬変、アルコール誘発肝線維症、C型肝炎ウイルス(HCV)誘発肝線維症、B型肝炎ウイルス(HBV)誘発線維症または非アルコール性脂肪肝炎であるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、腎線維症は、腎間質線維症または糸球体硬化症であるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、心臓線維症は、心内膜心筋線維症または心房線維症であるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、個体における環境因子によって誘発される線維性疾患を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、環境因子によって誘発される線維性疾患は、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症であるが、これに限定されない。一部の実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症、メトトレキセート誘発線維症およびシクロホスファミド誘発線維症、アミオダロン誘発線維症、プロプラノロール誘発線維症、ニトロフラントイン誘発線維症およびスルファサラジン誘発線維症であるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ウイルス誘発線維症は、HCV誘発線維症、HBV誘発線維症、TTウイルス誘発線維症、アデノウイルス誘発線維症、ヒトサイトメガロウイルス誘発線維症およびエプスタイン・バーウイルス誘発線維症であるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、個体における線維性疾患を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、線維性疾患は、がんに関連する(すなわち、がん関連線維症)。一部の実施形態では、がんは、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、軟骨肉腫および骨肉腫等の肉腫、脳腫瘍、頭頸部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、虫垂癌、結腸癌、直腸癌、肝癌、膵癌、胆嚢癌、胆管癌、肛門癌、腎臓癌、尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、外陰部癌、腟癌および皮膚癌ならびにさらには白血病または悪性リンパ腫であるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、がん関連線維症は、脳、頭頸部、乳房、肢、肺、心臓、胸腺、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(結腸、盲腸、虫垂、直腸)、肝臓、膵臓、胆嚢、肛門、腎臓、尿管、膀胱、前立腺、陰茎、精巣、子宮、卵巣、外陰部、腟、皮膚、横紋筋、平滑筋、滑膜、軟骨、骨、甲状腺、副腎、腹膜、腸間膜、骨髄、血液、脈管系、リンパ節またはリンパ液等のリンパ系に存在するが、これらに限定されない。米国特許第8,686,052号を参照されたい。一部の実施形態では、線維性疾患は、骨髄の線維症である。さらなる実施形態では、骨髄の線維症は、骨髄線維症であるが、これに限定されない。一部の実施形態では、線維性疾患は、強皮症である。さらなる実施形態では、強皮症は、限局性強皮症または全身性強皮症である。さらなる実施形態では、強皮症は、限局型全身性強皮症、線状強皮症、全身性硬化症、限局型強皮症またはびまん性強皮症であるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、線維性疾患は、デュピュイトラン拘縮である。
線維性疾患の種類および線維性疾患を診断する方法は、当業者に周知である。例えば、特発性肺線維症(IPF)の症状として、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、筋痛、関節痛、ならびに手指および足指のばち指が挙げられるがこれらに限定されない。IPF疾患進行は、高分解能CT(HRCT)スキャニング等の技法によりモニターすることができる。HRCTによる診断において、次の特徴の存在が留意される:(1)基底および末梢優位による網状異常および/または牽引性気管支拡張の存在;(2)基底および末梢優位による蜂巣状(honeycombing)の存在;ならびに(3)微小結節(micronodule)、気管支血管周囲(peribronchovascular)小結節、硬化、孤立性(非蜂巣)嚢胞、すりガラス状陰影(または存在する場合、網状影よりも範囲が狭い)および縦隔腺症(mediastinal adenopathy)(または存在する場合、胸部x線で明らかなほど十分に広範ではない)等、非定型特色の非存在。特徴(1)、(2)および(3)が満たされる場合、確実なIPFの診断が下される。特徴(1)および(3)が満たされる場合、ほぼ確実なIPFの診断が下される。IPF患者における肺機能をモニターして、疾患の進行を決定することもできる。肺機能値は、当該技術分野で周知である。次に、使用することができる肺機能値の例を挙げる。値として、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)が挙げられるがこれらに限定されない。FEVは、完全吸気の直後の努力呼気により既定の期間にわたって呼息された空気の容量を測定する。FVCは、完全吸気の直後に呼息された空気の総容量を測定する。FEFは、秒単位の時間で割った、FVCの間に呼息された空気の容量を測定する。PEFRは、完全吸気から努力呼息の間の最大流速を測定する。Vは、完全呼気後に肺に残る空気の容量である。肺容量は通常、IPFが進行するにつれて低下する。肺容量は、機能的残気量(FRC)、総肺気量(TLC)および残余値(V)を決定することにより測定することができる。IPF患者は、疾患が進行するにつれてより速い浅呼吸も発症し、したがって、呼吸仕事量が増加する。呼気速度、努力呼気量(FEV)および努力肺活量(FVC)は多くの場合、肺容量の低下により減少するが、FEV対FVCの比(ration)は、IPFにおいて維持または増加する。安静時および運動中のガス交換ならびに肺血行動態も、IPFの診断およびモニターのために検査される肺機能であり得る。American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine、2000年、161巻(2号):646〜664頁;Travisら、Am J Respir Crit Care Med、2013年、188巻(6号):733〜748頁;および米国特許第8,247,379号を参照されたい。
線維性疾患の別の例として、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関連し得る。COPDは、慢性気管支炎および/または肺気腫の存在によって特徴付けられる。COPDにおける肺組織リモデリングは、上皮破壊、平滑筋肥大、平滑筋過形成、気道壁線維症および肺胞破壊等の過程が関与する。Salazarら、Lung、2011年、189巻(2号):101〜109頁を参照されたい。肺組織リモデリングにより線維症を有する一部のCOPD個体に加えて、COPD個体の亜集団も肺線維症を有し得る。例えば、特発性肺線維症(IPF)は現在、COPD患者におけるIPFの有病率が、6%もの高さであることを見出した近年の試験により、COPDと共存すると認識されている。Divoら、Am J Respir Crit Care Med.、2012年、186巻(2号):155〜161頁を参照されたい。肺気腫に関連する肺線維症の変種についても記載されており、労作性(extertional)呼吸困難、上葉肺気腫および下葉線維症、温存された肺容量、縮小されたガス交換能力ならびに不十分な生存によって特徴付けられる、肺気腫合併肺線維症(CPFE)としても公知である。Cottinら、Eur. Respir. J.、2005年、26巻(4号):586〜593頁を参照されたい。
線維性疾患の別の代表例として、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)等、肝臓疾患の評価に伝統的に使用されてきた肝臓酵素レベルを評価することにより、肝線維症を診断することができる。>1のAST/ALT(AAR)比は、肝硬変を予測する。Batallerら、J Clin Invest.、2005年、115巻(2号):209〜218頁を参照されたい。
別の例では、心臓線維症において、線維性組織は、高血圧、高血圧性心臓疾患、粥状動脈硬化および心筋梗塞の結果、心臓および血管に蓄積する。これらの心血管疾患は全て、細胞外マトリックスの蓄積または線維性沈着を示し、これらは、脈管構造の硬直および心臓組織それ自体の硬直をもたらす。典型的には、心臓線維症の症状は、疾患が最も広範な特定の心室および弁に関する。心臓線維症の症状として、下肢腫脹、腹囲の増加、呼吸困難、疲労、悪心、胸痛、動悸および失神が挙げられるがこれらに限定されない。米国特許第8,461,303号を参照されたい。
線維性疾患の別の例において、個体は、敗血症、急性肺損傷および急性呼吸促迫症候群等の疾病から回復する際に、酸素供給を改善し、臓器修復を容易にするために、機械的人工呼吸を要求することがある。実験研究および臨床研究からの証拠は、機械的人工呼吸が、肺線維症を引き起こし得ることを示唆する。機械的人工呼吸に関連する肺線維症を予防または処置する必要がある。機械、薬物(例えば、ブレオマイシン)および放射線誘発線維症は、同様の細胞機構を示す、すなわち、コラーゲンを産生する筋線維芽細胞を活性化した。これは、薬物誘発線維症を有効に処置することができる治療剤が、機械的誘発線維症および放射線誘発線維症の処置に有効であり得ることを示す。Cabrera-Benitezら、Anesthesiology、2014年、121巻:189〜198頁;Villarら、Critical Care、2015年、19巻:138頁;およびSchaeferら、Eur Respir Rev.、2011年、20巻(120号):85〜97頁を参照されたい。
線維性疾患の別の例において、インプラントが体内に配置され、周囲の宿主組織からの異物応答に遭遇する場合、インプラント誘発線維症が発生する。応答は、インプラントを破壊または除去する場所への炎症性細胞の浸潤と、続く損傷した組織の修復および再生によって特徴付けられる。インプラントを除去することができない場合、インプラントが線維性結合組織の層に被包され、これが免疫系から遮蔽されるまで炎症性応答が持続する。インプラントによる線維症またはインプラントの線維状被包は、インプラントの効率を損ない、インプラントの失敗をもたらし得る。Rolfe B.ら、Regenerative Medicine and Tissue Engineering-Cells and Biomaterials、InTech、2011年、551〜568頁を参照されたい。一部の実施形態では、医学的手技の際に個体にインプラントが植え込まれた後に、個体においてインプラント誘発線維症が発生する。一部の実施形態では、美容的手技の際に個体にインプラントが植え込まれた後に、個体においてインプラント誘発線維症が発生する。本明細書で企図されているインプラントとして、美容外科手術(例えば、豊胸手術、乳房再建術等)、関節置換外科手術(例えば、股関節置換術、膝関節置換術、肩関節置換術、足関節置換術等)、ヘルニア修復術、グラフト術(例えば、人工血管グラフト術、皮膚グラフト術等)、ステント留置、臓器移植手術、神経系外科手術、心臓外科手術または他のいずれかの医学的外科手術に使用されるインプラントが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で企図されているインプラントとして、整形外科インプラント、歯科インプラント、乳房インプラント、あごインプラント、頬インプラント、殿部インプラント、鼻インプラント、陰茎インプラント、ペースメーカー、縫合糸、グラフト(例えば、血管グラフト、皮膚グラフト、骨グラフト等)、心臓弁、眼内レンズ、制御薬物送達デバイス、バイオセンサー、ステント(例えば、胃腸管ステント、気管ステント、気管支ステント、泌尿器ステント、耳ステント、鼻ステント等)、手術用メッシュもしくはフィルム、生体材料、医療デバイス、カテーテル、緑内障ドレナージデバイス、圧力モニターデバイス、避妊インプラント、人工関節、臓器移植組織(例えば、腎臓移植組織、肺移植組織、心臓移植組織等)、または他のいずれかの医学的インプラントもしくは美容インプラントも挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、グラフトは、自家移植片、同系移植片、同種移植片または異種移植片である。一部の実施形態では、本明細書で企図されているヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)は、個体における本明細書で企図されているインプラントの植え込みの前および/または後に、個体に投与することができる。一部の実施形態では、本明細書で企図されているヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)は、個体における本明細書で企図されているインプラントの植え込みの最中に、個体に投与することができる。一部の実施形態では、本明細書で企図されているヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)は、個体に、本明細書で企図されているインプラントが植え込まれるのとほぼ同時に、個体に投与することができる。一部の実施形態では、本明細書で企図されているインプラントは、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)でコーティングすることができる。一部の実施形態では、本明細書で企図されているインプラントは、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)で包埋することができる。
線維性疾患の別の例において、強皮症は、皮膚、手指または足指、消化器系、心臓、肺および腎臓の結合組織等、結合組織の硬化により身体を冒す自己免疫性、リウマチ性および慢性疾患である。2種の主要な型の強皮症である、限局性強皮症および全身性強皮症が存在する。皮膚病変は、両方の型の強皮症において出現し、異なる形状および色で出現する。皮膚病変は、その周りの皮膚と比較して、異常な成長または外観を有する皮膚の一部であることが注目される。限局性強皮症の一形態であるモルフェアは、様々なサイズおよび色の、皮膚における蝋様パッチによって特徴付けられる。同様に限局性強皮症の一形態である線状強皮症は、通常、腕、脚または頭頸部区域における、硬化した蝋様皮膚の条痕または線として始まる。全身性硬化症において、結合組織の硬化は、身体内部の系において発生し、主要臓器の機能不全をもたらし得る。限局型強皮症またはびまん性強皮症は、全身性硬化症の2つの型であり、皮膚のこわばりの程度に基づく。LeRoyら、J Rheumatol.、1988年、15巻:202〜205頁を参照されたい。限局型強皮症において、皮膚のこわばりは、手指、手、および肘に対し遠位の前腕に限局され、足、および膝に対し遠位の脚の皮膚のこわばりを伴うまたは伴わない。びまん性疾患において、近位四肢および体幹の皮膚も関与する。強皮症の症状として、関節痛、皮膚発疹、皮膚における腫脹血管、皮膚潰瘍、体重減少、こわばったおよび硬化した手指、呑酸、慢性咳嗽、嚥下困難、ドライマウス、疲労、頭痛、関節硬直、冷え性または息切れを挙げることができるがこれらに限定されない。本明細書における実施形態の一部では、線維性疾患は、強皮症である。さらなる実施形態では、強皮症は、限局性強皮症または全身性強皮症である。別のさらなる実施形態では、強皮症は、限局型全身性強皮症、線状強皮症、全身性硬化症、限局型強皮症またはびまん性強皮症であるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、個体における前線維性疾患を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎である。一部の実施形態では、前線維性疾患は、慢性過敏性肺臓炎である。一部の実施形態では、前線維性疾患は、真性多血症である。一部の実施形態では、前線維性疾患は、本態性血小板血症である。一部の実施形態では、前線維性疾患は、眼の前線維性疾患である。一部の実施形態では、前線維性疾患は、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。
前線維性疾患の種類および前線維性疾患を診断する方法は、当業者に周知である。本明細書で企図されている前線維性疾患は、本明細書で企図されている線維性疾患等、線維性疾患に対し感受性が高いかまたはこれを発症するリスクがある個体をもたらす疾患を含む。例えば、慢性過敏性肺臓炎は、カビ、粉塵および化学物質等、異物を吸い込むことにより肺が炎症を起こすようになる前線維性疾患である。慢性過敏性肺臓炎の症状として、咳、息切れ、疲労、体重減少、およびばち状の手指または足指が挙げられるがこれらに限定されない。慢性過敏性肺臓炎は、肺線維症等、長期肺損傷を引き起こし得る。
前線維性疾患の別の例において、真性多血症は、血液細胞の数の異常増加をもたらす骨髄の前線維性疾患である。真性多血症の症状として、横たわったときの呼吸困難、眩暈、過剰出血、肥大した脾臓による左上腹部における膨満感、頭痛、そう痒、皮膚の赤い着色(red skin coloring)、息切れ、青みを帯びた皮膚の色、疲労、赤い皮膚斑点、視覚障害および静脈炎が挙げられるがこれらに限定されない。真性多血症の合併症は、線維性疾患、骨髄線維症(骨髄瘢痕をもたらす進行性骨髄障害)、重度貧血、ならびに肝臓および脾臓の肥大の発症である。
前線維性疾患の別の代表例において、本態性血小板血症は、身体が多過ぎる血小板を産生する前線維性疾患である。本態性血小板血症の症状として、頭痛、眩暈、胸痛、脱力、失神、一時的視力変化、手および足のしびれまたは刺痛、手および足における疼痛、軽度に肥大した脾臓、鼻出血、紫斑、口および歯茎からの出血、ならびに血便が挙げられるがこれらに限定されない。本態性血小板血症の合併症は、線維性疾患、骨髄線維症の発症である。
眼の網膜は、ニューロン、血管、ECM、ならびにグリア細胞および単球等の様々な常在性および一過性細胞の複数の層からなる。網膜の血管供給は、網膜血管および脈絡毛細管板からなる。光受容体は、神経感覚網膜の最外側部分にあり、単層の細胞である網膜色素上皮(RPE)の上にある。RPEは、コラーゲン性基底膜(ブルッフ膜)の上にあり、この構造の直下には、脈絡毛細管板が流れ、網膜の外側3分の1に血液が供給される。視力喪失をもたらす疾患は、網膜または脈絡膜の脈管構造における異常の結果としてであり得る。黄斑浮腫(macula edema)、網膜および硝子体の出血、ならびに血管結合組織瘢痕(fibrovascular scarring)によって特徴付けられるこれらの疾患は、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および血管新生緑内障を含む。これらの疾患の全てにおける最終一般的病態生理学的共通因子は、損傷に対する網膜応答であり、慢性創傷治癒は、線維症をもたらす。Friedlander, M.、J Clin Invest.、2007年、117巻(3号):576〜586頁を参照されたい。
当該技術分野で公知であり本明細書に記載されている方法論およびアッセイは、本明細書に記載されているいずれかの線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)もしくはいずれかの前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)、または本明細書に記載されている線維性疾患もしくは前線維性疾患の症状の評価に使用することができる。
本明細書に提供されている方法の一部の実施形態では、本方法は、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体(例えば、患者)を診断するステップ、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体(例えば、患者)を処置のために選択するステップ、および/または個体(例えば、患者)が線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有するか決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、線維性疾患を有する個体を診断するステップ、線維性疾患を有する個体を処置のために選択するステップ、および/または個体における線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)の処置もしくは予防前に、個体が線維性疾患を有するか決定するステップをさらに含み、本方法は、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、線維性疾患を有する個体を診断するステップ、線維性疾患を有する個体を処置のために選択するステップ、および/または個体における線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)の処置もしくは予防後に、個体が線維性疾患を有するか決定するステップをさらに含み、本方法は、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む。
本明細書に提供されている方法の一部の実施形態では、本方法は、前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を有する個体(例えば、患者)を診断するステップ、前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を有する個体(例えば、患者)を処置のために選択するステップ、および/または個体(例えば、患者)が前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を有するか決定するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、前線維性疾患を有する個体を診断するステップ、前線維性疾患を有する個体を処置のために選択するステップ、および/または個体における前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)の処置もしくは予防前に、個体が前線維性疾患を有するか決定するステップをさらに含み、本方法は、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、前線維性疾患を有する個体を診断するステップ、前線維性疾患を有する個体を処置のために選択するステップ、および/または個体における前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)の処置もしくは予防後に、個体が前線維性疾患を有するか決定するステップをさらに含み、本方法は、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む。
一部の実施形態では、個体における線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。一部の実施形態では、線維性疾患は、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症である。一部の実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症である。一部の実施形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、骨髄の線維症は、骨髄線維症である。一部の実施形態では、強皮症は、全身性線維症である。一部の実施形態では、強皮症は、全身性硬化症である。本明細書における実施形態の一部では、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の投与後に、ベースラインと比べて低下または改善される(例えば、参照値)。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛、または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている線維性疾患に関連する症状であり得る。一部の実施形態では、肺線維症(例えば、特発性肺線維症)を有する個体における1種または複数種の肺機能は、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%増加する(例えば、参照値)。さらなる実施形態では、1種または複数種の肺機能は、肺活量(VC)、残気量(V)、努力呼気量(FEV)、努力肺活量(FVC)、努力呼気流量(FEF)、最大呼気流速(PEFR)、予備吸気量(IRV)、機能的残気量(FRC)、深吸気量(IC)、総肺気量(TLC)、予備呼気量(ERV)、一回換気量(TV)および最大換気量(MVV)からなる群から選択される。一部の実施形態では、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する(例えば、参照値)。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。本明細書における一部の実施形態において、個体は、ヒトである。本明細書における実施形態の一部において、抗体は、抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在する。本明細書における実施形態の一部において、アゴニストは、アゴニストおよび薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在する。
一部の実施形態では、個体における前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎である。一部の実施形態では、前線維性疾患は、慢性過敏性肺臓炎である。本明細書における実施形態の一部では、前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を有する個体における1種または複数種の症状は、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の投与後に、ベースラインと比べて低下または改善される(例えば、参照値)。さらなる実施形態では、1種または複数種の症状は、息切れ、乾性咳嗽、体重減少、疲労、倦怠感、ばち状の手指もしくは足指、筋痛、または関節痛等であるがこれらに限定されない、本明細書に開示されている前線維性疾患に関連する症状であり得る。一部の実施形態では、前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を有する個体における1種または複数種の病理学的パラメータは、ヒトシグレック−8に結合する抗体(例えば、抗シグレック−8抗体)またはアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト)の投与後に、ベースラインと比べて少なくとも5%低下する(例えば、参照値)。さらなる実施形態では、1種または複数種の病理学的パラメータは、好中球流入、肥満細胞数、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、線維芽細胞または筋線維芽細胞浸潤、および線維芽細胞増殖巣形成からなる群から選択される。本明細書における一部の実施形態では、個体は、ヒトである。本明細書における実施形態の一部において、抗体は、抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在する。本明細書における実施形態の一部において、アゴニストは、アゴニストおよび薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在する。
本明細書において互換的に使用される用語「ベースライン」または「ベースライン値」は、治療法(例えば、抗シグレック−8抗体)の投与前の、または治療法の投与の開始時における症状(例えば、サイトカイン放出、コラーゲン蓄積、好中球流入等)の測定値または特徴付けを指すことができる。本明細書において考慮される線維性疾患または前線維性疾患の症状の低下または改善を決定するために、ベースライン値は、参照値と比較することができる。本明細書において互換的に使用される用語「参照」または「参照値」は、治療法(例えば、抗シグレック−8抗体)の投与後の症状の測定値または特徴付けを指すことができる。参照値は、投与レジメンもしくは処置サイクルの間にまたは投与レジメンもしくは処置サイクルの完了時に、1回または複数回測定することができる。「参照値」は、絶対値;相対値;上限および/または下限を有する値;値の範囲;平均値;中央値;平均的な値;またはベースライン値と比較される値となることができる。同様に、「ベースライン値」は、絶対値;相対値;上限および/または下限を有する値;値の範囲;平均値;中央値;平均的な値;または参照値と比較される値となることができる。参照値および/またはベースライン値は、1個体から、または異なる2個体から、または個体の群(例えば、2、3、4、5またはそれを超える個体の群)から得ることができる。例えば、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体は、ヒトシグレック−8に結合する抗体の投与後に、個体におけるヒトシグレック−8に結合する抗体の投与前または投与初期のコラーゲン蓄積のレベル(例えば、ベースライン値)と比較して、コラーゲン蓄積のレベルを低下させ得る(例えば、参照値)。別の例において、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体は、ヒトシグレック−8に結合する抗体の投与後に、異なる個体におけるヒトシグレック−8に結合する抗体の投与前または投与初期のコラーゲン蓄積のレベル(例えば、ベースライン値)と比較して、コラーゲン蓄積のレベルを低下させ得る(例えば、参照値)。さらに別の例において、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体は、ヒトシグレック−8に結合する抗体の投与後に、個体群におけるヒトシグレック−8に結合する抗体の投与前または投与初期のコラーゲン蓄積のレベル(例えば、ベースライン値)と比較して、コラーゲン蓄積のレベルを低下させ得る(例えば、参照値)。別の例において、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体群は、ヒトシグレック−8に結合する抗体の投与後に、個体群におけるヒトシグレック−8に結合する抗体の投与前または投与初期のコラーゲン蓄積のレベル(例えば、ベースライン値)と比較して、コラーゲン蓄積のレベルを低下させ得る(例えば、参照値)。本明細書における実施形態のいずれかでは、ベースライン値は、ヒトシグレック−8に結合する抗体により処置されていない、1個体から、2名の異なる個体から、または個体群(例えば、2、3、4、5名またはそれを超える個体の群)から得ることができる。
肥満細胞は、アレルギー性免疫応答(例えば、IgE媒介性細胞シグナル伝達経路)および非アレルギー性細胞機能(例えば、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路)の両方において役割を果たす。非IgE媒介性肥満細胞機能は、上皮機能(例えば、分泌および上皮透過性)、平滑筋機能(例えば、蠕動および細気管支収縮(bronchioconstriction))、内皮機能(例えば、血流、凝固および血管透過性)、ニューロン機能および他の組織機能(例えば、創傷治癒および線維症)の調節を含む。これらの機能は、増殖因子、組織因子、感染性病原体、神経ペプチドおよびタンパク質抗原等、種々の細胞シグナル伝達作用因子(すなわち、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子)によって媒介される。Bischoffら、Nature Reviews Immunology、2007年、7巻:93〜104頁を参照されたい。本明細書で企図されている処置方法は、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されている抗体もしくはアゴニストまたはその組成物を用いて、個体における非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子による肥満細胞活性化を低下させるための方法である。本明細書における実施形態の一部では、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子は、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、幹細胞因子(SCF)、トール様受容体3(TLR3)、インターロイキン33(IL−33)および補体タンパク質からなる群から選択される。一部の実施形態では、肥満細胞活性化は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて個体において低下する。一部の実施形態では、個体は、本明細書に記載されている線維性疾患を有する。一部の実施形態では、線維性疾患は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。本明細書における一部の実施形態では、線維性疾患は、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される。さらなる実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症である。また別のさらなる実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症である。一部の実施形態では、線維性疾患は、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される。一部の実施形態では、強皮症は、全身性硬化症である。一部の実施形態では、個体は、本明細書に記載されている前線維性疾患を有する。一部の実施形態では、前線維性疾患は、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。
一部の実施形態において、本明細書に記載されている個体は、好酸球(例えば、シグレック−8を発現する好酸球)の枯渇または低下のために、ヒトシグレック−8に結合する抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量を投与される。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、処置前のベースラインレベルと比較して、被験体から得られる試料における好酸球(例えば、シグレック−8を発現する好酸球)の少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%を枯渇または低下させる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、処置前のベースラインレベルと比較して、被験体から得られる試料における好酸球(例えば、シグレック−8を発現する好酸球)の少なくとも約20%を枯渇または低下させる。一部の実施形態において、好酸球の枯渇または低下は、抗体またはアゴニストによる処置後の個体由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における好酸球集団数を、抗体またはアゴニストによる処置前の個体由来の試料における好酸球集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、好酸球の枯渇または低下は、抗体またはアゴニストによる処置後の個体由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における好酸球集団数を、抗体処置もしくはアゴニスト処置なしの別の個体由来の試料における好酸球集団数または抗体処置もしくはアゴニスト処置なしの個体由来の試料における平均好酸球集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、試料は、組織試料(例えば、皮膚試料、肺試料、骨髄試料、等)である。本明細書における一部の実施形態において、抗体は、組織試料(例えば、肺試料)における好酸球を枯渇させる。一部の実施形態において、試料は、生体液試料(例えば、血液試料、気管支肺胞洗浄試料等)である。本明細書における一部の実施形態において、抗体は、生体液試料(例えば、気管支肺胞洗浄試料)における好酸球を枯渇させる。本明細書における方法の一部の実施形態において、ヒトシグレック−8に結合する抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量は、活性化された好酸球のアポトーシスを誘導する。好酸球は、IL−5、GM−CSF、IL−33、IFN−γ、TNF−αおよびレプチン等が挙げられるがこれらに限定されない、サイトカインまたはホルモンにより活性化または感作することができる。本明細書における方法の一部の実施形態において、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されている抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量は、休止した好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されている抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量は、好酸球に対する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を有する。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されている抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量は、炎症性メディエーターの好酸球産生を予防または低下させる。例示的な炎症性メディエーターとして、活性酸素種、顆粒タンパク質(例えば、好酸球カチオン性タンパク質、主要塩基性タンパク質、好酸球由来神経毒、好酸球ペルオキシダーゼ等)、脂質メディエーター(例えば、PAF、PGE1、PGE2等)、酵素(例えば、エラスターゼ)、増殖因子(例えば、VEGF、PDGF、TGF−α、TGF−β等)、ケモカイン(例えば、RANTES、MCP−1、MCP−3、MCP4、エオタキシン等)およびサイトカイン(例えば、IL−3、IL−5、IL−10、IL−13、IL−15、IL−33、TNF−α等)が挙げられるがこれらに限定されない。
一部の実施形態において、本明細書に記載されている個体は、肥満細胞の枯渇または低下のために、ヒトシグレック−8に結合する抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量を投与される。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または低下は、抗体またはアゴニストによる処置後の個体由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体またはアゴニストによる処置前の個体由来の試料における肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または低下は、抗体またはアゴニストによる処置後の個体由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体処置もしくはアゴニスト処置なしの別の個体由来の試料における肥満細胞集団数または抗体処置もしくはアゴニスト処置なしの個体由来の試料における平均肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、試料は、組織試料(例えば、皮膚試料、肺試料、骨髄試料等)である。一部の実施形態において、試料は、生体液試料(例えば、血液試料、気管支肺胞洗浄試料等)である。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8に結合する本明細書に記載されている抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量は、肥満細胞に対する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を有する。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または低下は、肥満細胞から産生される予め形成または新たに形成された炎症性メディエーターの低下または予防である。例示的な炎症性メディエーターとして、ヒスタミン、N−メチルヒスタミン、酵素(例えば、トリプターゼ、キマーゼ、カテプシン(cathespin)G、カルボキシペプチダーゼ等)、脂質メディエーター(例えば、プロスタグランジンD2、プロスタグランジンE2、ロイコトリエンB4、ロイコトリエンC4、血小板活性化因子、11−ベータ−プロスタグランジンF2等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL11(すなわち、エオタキシン)、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL10等)およびサイトカイン(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−15、IL−33、GM−CSF、TNF等)が挙げられるがこれらに限定されない。
一部の実施形態において、本明細書に記載されている個体は、シグレック−8を発現する肥満細胞を枯渇させるために、ヒトシグレック−8に結合する抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量を投与され、抗シグレック−8抗体は、ADCC活性によりシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、処置前のベースラインレベルと比較した場合に、被験体から得られる試料におけるシグレック−8を発現する肥満細胞の少なくとも約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約100%を枯渇させる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、処置前のベースラインレベルと比較した場合に、被験体から得られる試料におけるシグレック−8を発現する肥満細胞の少なくとも約20%を枯渇させる。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または死滅は、抗体による処置後の被験体由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体による処置前の被験体由来の試料における肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または死滅は、抗体による処置後の被験体由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞集団数を、抗体処置なしの別の被験体由来の試料における肥満細胞集団数または抗体処置なしの被験体由来の試料における平均肥満細胞集団数と比較することにより測定される。一部の実施形態において、試料は、組織試料(例えば、皮膚試料、肺試料、骨髄試料等)である。一部の実施形態において、試料は、生体液試料(例えば、血液試料、気管支肺胞洗浄試料等)である。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、ADCC活性を改善するように操作された。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、ADCC活性を改善するFc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、抗体の重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。一部の実施形態において、肥満細胞の枯渇または死滅は、肥満細胞から産生される予め形成または新たに形成された炎症性メディエーターの低下または予防である。例示的な炎症性メディエーターとして、ヒスタミン、N−メチルヒスタミン、酵素(例えば、トリプターゼ、キマーゼ、カテプシンG、カルボキシペプチダーゼ等)、脂質メディエーター(例えば、プロスタグランジンD2、プロスタグランジンE2、ロイコトリエンB4、ロイコトリエンC4、血小板活性化因子、11−ベータ−プロスタグランジンF2等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL11(すなわち、エオタキシン)、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL10等)およびサイトカイン(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−13、IL−15、IL−33、GM−CSF、TNF等)が挙げられるがこれらに限定されない。
一部の実施形態において、本明細書に記載されている個体は、肥満細胞媒介性活性の阻害のために、ヒトシグレック−8に結合する抗体もしくはアゴニストまたはその組成物の有効量を投与される。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、抗体またはアゴニストによる処置後の個体由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞媒介性活性を、抗体またはアゴニストによる処置前の個体由来の試料における肥満細胞媒介性活性と比較することにより測定される。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、抗体またはアゴニストによる処置後の個体由来の試料(例えば、組織試料または生体液試料)における肥満細胞媒介性活性を、抗体処置もしくはアゴニスト処置なしの別の個体由来の試料における肥満細胞媒介性活性または抗体処置もしくはアゴニスト処置なしの個体由来の試料における平均肥満細胞媒介性活性と比較することにより測定される。一部の実施形態において、試料は、組織試料(例えば、皮膚試料、肺試料、骨髄試料等)である。一部の実施形態において、試料は、生体液試料(例えば、血液試料、気管支肺胞洗浄試料等)である。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、肥満細胞脱顆粒の阻害である。一部の実施形態では、肥満細胞媒介性活性の阻害は、線維性疾患の部位への好中球流入の阻害である。一部の実施形態では、肥満細胞媒介性活性の阻害は、線維性疾患の部位におけるコラーゲン蓄積の阻害である。一部の実施形態では、肥満細胞媒介性活性の阻害は、線維性疾患の部位におけるサイトカイン放出の阻害である。一部の実施形態では、肥満細胞媒介性活性の阻害は、個体における肥満細胞の数の低下である。一部の実施形態において、肥満細胞媒介性活性の阻害は、肥満細胞からの予め形成または新たに形成された炎症性メディエーターの放出の阻害である。例示的な炎症性メディエーターとして、ヒスタミン、N−メチルヒスタミン、酵素(例えば、トリプターゼ、キマーゼ、カテプシンG、カルボキシペプチダーゼ等)、脂質メディエーター(例えば、プロスタグランジンD2、プロスタグランジンE2、ロイコトリエンB4、ロイコトリエンC4、血小板活性化因子、11−ベータ−プロスタグランジンF2等)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL3、CCL4、CCL11(すなわち、エオタキシン)、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL10等)およびサイトカイン(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−13、IL−15、IL−33、GM−CSF、TNF等)が挙げられるがこれらに限定されない。
疾患の予防または処置のために、活性薬剤の適切な投与量は、上に定義されている処置しようとする疾患の種類、疾患の重症度および経過、予防または治療目的のいずれのために薬剤が投与されるか、以前の治療法、個体の臨床歴および薬剤に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存するであろう。薬剤は、一度にまたは一連の処置にわたって個体に適宜投与される。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)またはアゴニストの投与間の間隔は、約1カ月間またはそれより長い。一部の実施形態において、投与間の間隔は、約2カ月間、約3カ月間、約4カ月間、約5カ月間、約6カ月間またはそれより長い。本明細書において、投与間の間隔は、抗体またはアゴニストの1投与と、抗体またはアゴニストの次の投与との間の期間を指す。本明細書において、約1カ月間の間隔は、4週間を含む。したがって、一部の実施形態において、投与間の間隔は、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11週間、約12週間、約16週間、約20週間、約24週間またはそれより長い。一部の実施形態では、投与間の間隔は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約5日間、約7日間またはそれより長い。一部の実施形態において、処置は、抗体またはアゴニストの複数投与を含み、投与間の間隔は、変動し得る。例えば、第1の投与と第2の投与との間の間隔は、約1ヶ月間であり、その後の投与間の間隔は、約3ヶ月間である。一部の実施形態において、第1の投与と第2の投与との間の間隔は、約1ヶ月間であり、第2の投与と第3の投与との間の間隔は、約2ヶ月間であり、その後の投与間の間隔は、約3ヶ月間である。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストは、平坦な用量で投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストは、用量当たり約0.1mg〜約1800mgの投与量で個体に投与される。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)またはアゴニストは、用量当たり0.1mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mgおよび1800mgのほぼいずれかの投与量で個体に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストは、用量当たり約150mg〜約450mgの投与量で個体に投与される。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)またはアゴニストは、用量当たり150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mgおよび450mgのほぼいずれかの投与量で個体に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストは、用量当たり約0.1mg/kg〜約20mg/kgの投与量で個体に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストは、用量当たり約0.01mg/kg〜約10mg/kgの投与量で個体に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストは、約0.1mg/kg〜約10mg/kgまたは約1.0mg/kg〜約10mg/kgの投与量で被験体に投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、3.5mg/kg、4.0mg/kg、4.5mg/kg、5.0mg/kg、5.5mg/kg、6.0mg/kg、6.5mg/kg、7.0mg/kg、7.5mg/kg、8.0mg/kg、8.5mg/kg、9.0mg/kg、9.5mg/kgまたは10.0mg/kgのいずれかの投与量で被験体に投与される。上述の投薬頻度のいずれかを使用することができる。上述のいずれかの投薬頻度は、本明細書に記載されている方法または組成物の使用において使用することができる。本明細書に記載されている抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストによる処置の有効性は、1週間毎〜3カ月間毎に及ぶ間隔で、本明細書に記載されている方法論またはアッセイのいずれかを使用して評価することができる。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、処置の有効性(例えば、1種または複数種の症状の低下または改善)は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、約1カ月間毎に、約2カ月間毎に、約3カ月間毎に、約4カ月間毎に、約5カ月間毎に、約6カ月間毎にまたはそれより長い間隔で評価される。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、処置の有効性(例えば、1種または複数種の症状の低下または改善)は、約1週間毎に、約2週間毎に、約3週間毎に、約4週間毎に、約5週間毎に、約6週間毎に、約7週間毎に、約8週間毎に、約9週間毎に、約10週間毎に、約11週間毎に、約12週間毎に、約16週間毎に、約20週間毎に、約24週間毎にまたはそれより長い間隔で評価される。本明細書に記載されている方法の一部の実施形態では、処置の有効性(例えば、1種または複数種の症状の低下または改善)は、約1日毎、約2日毎、約3日毎、約4日毎、約5日毎、約6日毎、約7日毎またはそれより長い間隔で評価される。
シグレック−8のアゴニスト
一態様において、本発明は、本明細書における方法のいずれかにおける使用のためのアゴニストを提供する。一部の実施形態において、アゴニストは、好酸球において発現するシグレック−8に結合し、in vitroまたはin vivoにおける好酸球のアポトーシスを誘導する薬剤である。一部の実施形態では、アゴニストは、肥満細胞において発現したシグレック−8に結合し、in vitroまたはin vivoで肥満細胞の活性化を阻害する作用因子である。一部の実施形態では、アゴニストは、肥満細胞において発現したシグレック−8に結合し、in vitroまたはin vivoで肥満細胞の数を枯渇または低下させる作用因子である。一部の実施形態において、アゴニストは、アゴニスト抗体である。一部の実施形態において、アゴニスト抗体(例えば、本明細書に提供される抗体2E2)は、好酸球によって発現するシグレック−8に架橋し、好酸球における1種または複数種のカスパーゼ(例えば、カスパーゼ−8、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−9)の活性化および/またはミトコンドリア膜電位の喪失を誘導する。Nutkuら、Biochem Biophys Res Commun.、336巻:918〜924頁、2005年を参照されたい。シグレック−8は、グリカン6’−スルホ−シアリルルイスX(本明細書において、6’−スルホ−sLeとも称される)に結合し、このグリカンへの会合は、シグレック−8発現細胞(例えば、好酸球)のアポトーシスを誘導する。Hudsonら、J Pharmacol Exp Ther.、330巻(2号):608〜12頁、2009年を参照されたい。本明細書における一部の実施形態において、シグレック−8のアゴニストは、分子(例えば、ポリマー、オリゴ糖、ポリペプチド、糖タンパク質等)に付着または連結された6’−スルホ−sLeを有する分子である。本明細書における一部の実施形態において、アゴニストは、6’−スルホ−sLe含有アゴニスト分子(例えば、6’−スルホ−sLe含有リガンド、6’−スルホ−sLe含有オリゴ糖、6’−スルホ−sLe含有ポリペプチドおよび6’−スルホ−sLe含有糖タンパク質)である。
アゴニストは、種々の供給源、例えば、細胞、無細胞調製物、化学ライブラリーおよび天然産物の混合物から同定することができる。斯かるアゴニストは、グリカン6’−スルホ−sLeXを含有し、シグレック−8に結合する天然または修飾された基質、リガンド、受容体、オリゴヌクレオチド、ポリペプチドまたは抗体となることができる、あるいはこれらの構造または機能的模倣物となることができる。グリカン6’−スルホ−sLeXを含有する斯かる天然または修飾された基質、リガンド、受容体、オリゴヌクレオチドまたは抗体の構造または機能的模倣物は、本明細書において、「6’−スルホ−sLeX含有糖模倣物(glycomimetic)」と称される。Coliganら、Current Protocols in Immunology 1巻(2号):第5章、1991年を参照されたい。例えば、6’−スルホ−sLeX含有糖模倣物は、シグレック−8の天然リガンドの活性を構造または機能的に模倣する6’−スルホ−sLeXで装飾された合成ポリマーに基づくリガンドとなることができる。例えば、本明細書で考慮される糖模倣物に関する、Hudsonら、J Pharmacol Exp Ther.、330巻(2号):608〜12頁、2009年を参照されたい。潜在的アゴニストの他の例として、抗体、あるいは一部の事例において、シグレック−8の天然リガンドに密接に関係したオリゴヌクレオチドもしくはポリペプチドまたはシグレック−8に結合する小分子が挙げられる。シグレック−8に結合する特定の多糖リガンド(例えば、6’−スルホ−sLeX含有リガンド)のコンフォメーションおよび望ましい特色を模倣し、好ましくは、目的の元の多糖リガンド(例えば、6’−スルホ−sLeX含有リガンド)の少なくとも一部の望ましくない特色(低い結合親和性、短いin vivo半減期その他等)を回避する合成化合物は、本明細書において、「模倣物」と称される。例えば、本明細書で考慮される模倣物に関する、米国特許第8,178,512号を参照されたい。
一部の態様において、本明細書に記載されているヒトシグレック−8に結合するアゴニスト(例えば、6’−スルホ−sLeX含有アゴニストまたは抗体)は、好酸球のアポトーシスを誘導する。好酸球のアポトーシスは、本技術分野で周知の方法によって評価することができる。Hudsonら、J Pharmacol Exp Ther.、330巻(2号):608〜12頁、2009年およびNutkuら、Biochem Biophys Res Commun.、336巻:918〜924頁、2005年を参照されたい。例えば、ヒト好酸球は、末梢血から単離され、精製され、IL−5において24または72時間培養され、続いてヒトシグレック−8に結合するアゴニストと共にさらに24時間インキュベーションされる。次に、アネキシン−Vおよびヨウ化プロピジウムで標識した後に、フローサイトメトリー解析により細胞生存を評価する。アゴニスト活性は、好酸球におけるカスパーゼ(例えば、カスパーゼ−8、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−9)の活性化および/または好酸球におけるミトコンドリア膜電位の喪失を検出することにより使用して評価することもできる。これらのアッセイは、Nutkuら、Biochem Biophys Res Commun.、336巻:918〜924頁、2005年に記載されている。
抗体
一態様において、本発明は、ヒトシグレック−8に結合する単離された抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合するアゴニスト抗体)を提供する。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、次の特徴のうち1種または複数種を有する:(1)ヒトシグレック−8に結合する;(2)ヒトシグレック−8の細胞外ドメインに結合する;(3)マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも高い親和性でヒトシグレック−8に結合する;(4)マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも高いアビディティーでヒトシグレック−8に結合する;(5)熱シフトアッセイにおいて約70℃〜72℃またはそれより高いTmを有する;(6)低下した程度のフコシル化を有するまたはフコシル化していない;(7)好酸球において発現したヒトシグレック−8に結合し、好酸球のアポトーシスを誘導する;(8)肥満細胞において発現したヒトシグレック−8に結合し、肥満細胞の数を枯渇または低下させる;(9)肥満細胞において発現したヒトシグレック−8に結合し、肥満細胞のFcεRI依存性活性(例えば、ヒスタミン放出、PGD2放出、Ca2+フラックスおよび/またはβ−ヘキソサミニダーゼ放出等)を阻害する;(10)ADCC活性を改善するように操作されている;ならびに(11)肥満細胞において発現したヒトシグレック−8に結合し、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子(例えば、補体タンパク質)による肥満細胞の活性化を阻害する。
一態様において、本発明は、ヒトシグレック−8に結合する抗体を提供する。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8は、配列番号72のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8は、配列番号73のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、好酸球上に発現するヒトシグレック−8に結合し、好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、肥満細胞上に発現するヒトシグレック−8に結合し、肥満細胞を枯渇させるかまたは肥満細胞の数を低下させる。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体は、肥満細胞上に発現するヒトシグレック−8に結合し、肥満細胞媒介性活性を阻害する。一部の実施形態では、本明細書に記載されている抗体は、肥満細胞において発現したヒトシグレック−8に結合し、非IgE媒介性免疫応答経路の作用因子による肥満細胞活性化を低下させる。さらなる実施形態では、非IgE媒介性細胞シグナル伝達経路の作用因子は、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、幹細胞因子(SCF)、トール様受容体3(TLR3)、インターロイキン33(IL−33)および補体タンパク質からなる群から選択される。
一態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、モノクローナル抗体である。一態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、抗体断片(抗原結合性断片を含む)、例えば、Fab、Fab’−SH、Fv、scFvまたは(Fab’)2断片である。一態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。一態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体のいずれかは、精製されている。
一態様において、シグレック−8に結合するマウス2E2抗体およびマウス2C4抗体と競合する抗シグレック−8抗体が提供される。マウス2E2抗体およびマウス2C4抗体と同じエピトープに結合する抗シグレック−8抗体も提供される。シグレック−8に対するマウス抗体、2E2および2C4抗体は、米国特許第8,207,305号;米国特許第8,197,811号、米国特許第7,871,612号および米国特許第7,557,191号に記載されている。
一態様において、シグレック−8への結合に関して本明細書に記載されているいずれかの抗シグレック−8抗体(例えば、HEKA、HEKF、1C3、1H10、4F11)と競合する抗シグレック−8抗体が提供される。本明細書に記載されているいずれかの抗シグレック−8抗体(例えば、HEKA、HEKF、1C3、1H10、4F11)と同じエピトープに結合する抗シグレック−8抗体も提供される。
本発明の一態様において、抗シグレック−8抗体をコードするポリヌクレオチドが提供される。ある特定の実施形態において、抗シグレック−8抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。ある特定の実施形態において、斯かるベクターを含む宿主細胞が提供される。本発明の別の態様において、抗シグレック−8抗体または抗シグレック−8抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に列挙されているもの等、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)または前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)の処置のための医薬製剤である。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に列挙されているもの等、線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)または前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)の予防のための医薬製剤である。
一態様において、マウス抗体2C4のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、マウス抗体2E2のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、HVRは、Kabat CDRまたはChothia CDRである。
一態様において、マウス抗体1C3のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、マウス抗体4F11のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、マウス抗体1H10のHVR配列のうち1、2、3、4、5または6個を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、HVRは、Kabat CDRまたはChothia CDRである。
一態様において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する単離された抗シグレック−8抗体が本明細書に提供される。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン1におけるエピトープに結合する。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、ヒトシグレック−8のドメイン3におけるエピトープに結合する。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体である。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、マウス抗体である。一部の実施形態において、ヒトシグレック−8および非ヒト霊長類シグレック−8に結合する抗体は、ヒトIgG1抗体である。
一態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
一態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
一態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
別の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含むHVR−H3を含み、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
別の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号88のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号91のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号94のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号97のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号100のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
別の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号89のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号92のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号95のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号98のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号101のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
別の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗シグレック−8抗体であって、重鎖可変領域が、(i)配列番号90のアミノ酸配列を含むHVR−H1、(ii)配列番号93のアミノ酸配列を含むHVR−H2および(iii)配列番号96のアミノ酸配列を含むHVR−H3を含む、かつ/または軽鎖可変領域が、(i)配列番号99のアミノ酸配列を含むHVR−L1、(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含むHVR−L2および(iii)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR−L3を含む抗体が本明細書において提供される。
本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、この抗体が、ヒトシグレック−8に結合する能力を保持するのであれば、いかなる適したフレームワーク可変ドメイン配列を含むこともできる。本明細書において、重鎖フレームワーク領域は、「HC−FR1〜FR4」と命名され、軽鎖フレームワーク領域は、「LC−FR1〜FR4」と命名される。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号26、34、38および45の重鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれHC−FR1、HC−FR2、HC−FR3およびHC−FR4)を含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号48、51、55および60の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれLC−FR1、LC−FR2、LC−FR3およびLC−FR4)を含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号48、51、58および60の軽鎖可変ドメインフレームワーク配列(それぞれLC−FR1、LC−FR2、LC−FR3およびLC−FR4)を含む。
一実施形態において、抗シグレック−8抗体は、フレームワーク配列および高頻度可変領域を含む重鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、HC−FR1〜HC−FR4配列、それぞれ配列番号26〜29(HC−FR1)、配列番号31〜36(HC−FR2)、配列番号38〜43(HC−FR3)および配列番号45または46(HC−FR4)を含み、HVR−H1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、HVR−H2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み、HVR−H3は、配列番号63のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、抗シグレック−8抗体は、フレームワーク配列および高頻度可変領域を含む重鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、HC−FR1〜HC−FR4配列、それぞれ配列番号26〜29(HC−FR1)、配列番号31〜36(HC−FR2)、配列番号38〜43(HC−FR3)および配列番号45または46(HC−FR4)を含み、HVR−H1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み、HVR−H2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み、HVR−H3は、配列番号67〜70から選択されるアミノ酸配列を含む。一実施形態において、抗シグレック−8抗体は、フレームワーク配列および高頻度可変領域を含む軽鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、LC−FR1〜LC−FR4配列、それぞれ配列番号48または49(LC−FR1)、配列番号51〜53(LC−FR2)、配列番号55〜58(LC−FR3)および配列番号60(LC−FR4)を含み、HVR−L1は、配列番号64のアミノ酸配列を含み、HVR−L2は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、HVR−L3は、配列番号66のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、抗シグレック−8抗体は、フレームワーク配列および高頻度可変領域を含む軽鎖可変ドメインを含み、フレームワーク配列は、LC−FR1〜LC−FR4配列、それぞれ配列番号48または49(LC−FR1)、配列番号51〜53(LC−FR2)、配列番号55〜58(LC−FR3)および配列番号60(LC−FR4)を含み、HVR−L1は、配列番号64のアミノ酸配列を含み、HVR−L2は、配列番号65のアミノ酸配列を含み、HVR−L3は、配列番号71のアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号23または24から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16〜22から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号11〜14から選択されるアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号23または24から選択されるアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。これらの抗体の一実施形態において、重鎖可変ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態において、重鎖HVR配列は、次のものを含む:
Figure 0006846362
一部の実施形態において、重鎖HVR配列は、次のものを含む:
Figure 0006846362
一部の実施形態において、重鎖FR配列は、次のものを含む:
Figure 0006846362
一部の実施形態において、軽鎖HVR配列は、次のものを含む:
Figure 0006846362
一部の実施形態において、軽鎖HVR配列は、次のものを含む:
Figure 0006846362
一部の実施形態において、軽鎖FR配列は、次のものを含む:
Figure 0006846362
一部の実施形態において、ヒトシグレック−8に結合する抗シグレック−8抗体(例えば、ヒト化抗シグレック−8抗体)であって、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗体であり、
(a)
(1)配列番号26〜29から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR1、
(2)配列番号61のアミノ酸配列を含むHVR−H1、
(3)配列番号31〜36から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR2、
(4)配列番号62のアミノ酸配列を含むHVR−H2、
(5)配列番号38〜43から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR3、
(6)配列番号63のアミノ酸配列を含むHVR−H3および
(7)配列番号45〜46から選択されるアミノ酸配列を含むHC−FR4
を含む重鎖可変ドメイン
および/または
(b)
(1)配列番号48〜49から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR1、
(2)配列番号64のアミノ酸配列を含むHVR−L1、
(3)配列番号51〜53から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR2、
(4)配列番号65のアミノ酸配列を含むHVR−L2、
(5)配列番号55〜58から選択されるアミノ酸配列を含むLC−FR3、
(6)配列番号66のアミノ酸配列を含むHVR−L3および
(7)配列番号60のアミノ酸配列を含むLC−FR4
を含む軽鎖可変ドメイン
を含む抗体が本明細書において提供される。
一態様において、配列番号2〜10から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16〜22から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号2〜10から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号23もしくは24から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号11〜14から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16〜22から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号11〜14から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号23もしくは24から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号6の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号16もしくは21から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。
一態様において、配列番号106〜108から選択される重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号109〜111から選択される軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号106の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号109の軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号107の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号110の軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一態様において、配列番号108の重鎖可変ドメインを含む、かつ/または配列番号111の軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。
一部の実施形態において、配列番号2〜14から選択されるアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、配列番号106〜108から選択されるアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比べて置換、挿入または欠失を含有するが、このアミノ酸配列を含む抗体は、ヒトシグレック−8に結合する能力を保持する。一部の実施形態において、置換、挿入または欠失(例えば、1、2、3、4または5アミノ酸)は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号106〜108から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態において、配列番号16〜24から選択されるアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、配列番号109〜111から選択されるアミノ酸配列に対し少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列は、参照配列と比べて置換、挿入または欠失を含有するが、このアミノ酸配列を含む抗体は、ヒトシグレック−8に結合する能力を保持する。一部の実施形態において、置換、挿入または欠失(例えば、1、2、3、4または5アミノ酸)は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号16または21のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号109〜111から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
一態様において、本発明は、(a)表2に示すVH HVRから選択される1、2もしくは3個のVH HVRおよび/または(b)表2に示すVL HVRから選択される1、2もしくは3個のVL HVRを含む抗シグレック−8抗体を提供する。
一態様において、本発明は、(a)表5に示すVH HVRから選択される1、2もしくは3個のVH HVRおよび/または(b)表5に示すVL HVRから選択される1、2もしくは3個のVL HVRを含む抗シグレック−8抗体を提供する。
一態様において、本発明は、(a)表3に示すVH FRから選択される1、2、3もしくは4個のVH FRおよび/または(b)表3に示すVL FRから選択される1、2、3もしくは4個のVL FRを含む抗シグレック−8抗体を提供する。
一部の実施形態において、表4に示す抗体、例えば、HAKA抗体、HAKB抗体、HAKC抗体等の重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインを含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。
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それぞれα、δ、ε、γおよびμと命名された重鎖を有する5クラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在する。γおよびαクラスは、サブクラスにさらに分けられ、例えば、ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。IgG1抗体は、アロタイプと命名される複数の多型バリアントで存在することができ(JefferisおよびLefranc 2009年、mAbs 1巻、4号1〜7頁において概説)、そのうちいずれかが、本明細書における実施形態の一部における使用に適する。ヒト集団における共通アロタイプバリアントは、文字a、f、n、zまたはこれらの組合せによって命名されるバリアントである。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体は、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含むことができる。さらなる実施形態において、ヒトIgG
Fc領域は、ヒトIgG1またはIgG4を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、アミノ酸置換S228Pを含み、このアミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされる。一部の実施形態において、ヒトIgG1は、配列番号78のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトIgG4は、配列番号79のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態において、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗シグレック−8抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および/または配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、肥満細胞を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、活性化された好酸球を枯渇させ、肥満細胞活性化を阻害する。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、活性化された好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、休止した好酸球のアポトーシスを誘導する。本明細書における一部の実施形態において、抗体は、組織(例えば、鼻ポリープ)における好酸球を枯渇させる。本明細書における一部の実施形態において、抗体は、生体液(例えば、血液)における好酸球を枯渇させる。
1.抗体親和性
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4と比較した場合に、ほぼ同じもしくはより高い親和性および/またはより高いアビディティーでヒトシグレック−8に結合する。ある特定の実施形態において、本明細書に提供される抗シグレック−8抗体は、≦1μM、≦150nM、≦100nM、≦50nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10−8Mまたはそれに満たない、例えば、10−8M〜10−13M、例えば、10−9M〜10−13M)の解離定数(Kd)を有する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、マウス抗体2E2および/またはマウス抗体2C4よりも約1.5倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍または約10倍高い親和性で、ヒトシグレック−8に結合する。本明細書における一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
一実施形態において、抗シグレック−8抗体の結合親和性は、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定することができる。例えば、KdまたはKd値は、固定化された抗原CM5チップにより約10の応答単位(RU)で25℃にてBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用することにより測定することができる。簡潔に説明すると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore(登録商標)Inc.)は、供給元の指示に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)により活性化される。捕捉抗体(例えば、抗ヒト−Fc)は、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で希釈され、その後、流速30μl/分で注射し、抗シグレック−8抗体でさらに固定化する。動態測定のため、二量体シグレック−8の2倍系列希釈を、0.05%Tween20含有PBS(PBST)において25℃、流速およそ25μl/分で注射する。会合および解離センサーグラムを同時に適合することにより、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して、会合速度(kon)および解離速度(koff)を計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算する。例えば、Chen, Y.ら(1999年)J. Mol. Biol.293巻:865〜881頁を参照されたい。
別の実施形態において、バイオレイヤーインターフェロメトリーを使用して、シグレック−8に対する抗シグレック−8抗体の親和性を決定することができる。例示的なアッセイにおいて、シグレック−8−Fcタグ付けタンパク質は、抗ヒト捕捉センサー上に固定化され、増加濃度のマウス、キメラまたはヒト化抗シグレック−8 Fab断片と共にインキュベートされて、例えば、Octet Red 384 System(ForteBio)等の機器を使用して親和性測定値を得る。
抗シグレック−8抗体の結合親和性は、例えば、関連技術分野において周知の標準技法を使用して、Munsonら、Anal. Biochem.、107巻:220頁(1980年)に記載されているScatchard解析によって決定することもできる。Scatchard, G.、Ann. N.Y. Acad. Sci.51巻:660頁(1947年)も参照されたい。
1.抗体アビディティー
一実施形態において、抗シグレック−8抗体の結合アビディティーは、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定することができる。例えば、KdまたはKd値は、BIAcore T100を使用することにより測定することができる。捕捉抗体(例えば、ヤギ−抗ヒト−Fcおよびヤギ−抗マウス−Fc)は、CM5チップ上に固定化される。フローセルは、抗ヒトまたは抗マウス抗体により固定化することができる。ある温度および流速、例えば、25℃、流速30μl/分でアッセイを行う。二量体シグレック−8は、アッセイバッファーにおいて様々な濃度で、例えば、15nM〜1.88pMに及ぶ濃度で希釈する。抗体を捕捉し、高速注射、続いて解離を行う。バッファー、例えば、50mMグリシンpH1.5でフローセルを再生する。空の参照セルおよび複数のアッセイバッファー注射により結果をブランク作成し、1:1グローバルフィットパラメータにより解析する。
2.競合アッセイ
競合アッセイを使用して、2種の抗体が、同一もしくは立体的に重複するエピトープを認識することにより、同じエピトープに結合するか、または一方の抗体が、抗原への別の抗体の結合を競合的に阻害するか決定することができる。このようなアッセイは、本技術分野で公知である。典型的には、抗原または抗原発現細胞が、マルチウェルプレートに固定化され、標識抗体の結合を遮断する非標識抗体の能力が測定される。斯かる競合アッセイに一般的な標識は、放射性標識または酵素標識である。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、細胞(例えば、好酸球または肥満細胞)の細胞表面に存在するエピトープへの結合に関して、本明細書に記載されている2E2抗体と競合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、細胞(例えば、好酸球または肥満細胞)の細胞表面に存在するエピトープへの結合に関して、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体と競合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、細胞(例えば、好酸球または肥満細胞)の細胞表面に存在するエピトープへの結合に関して、本明細書に記載されている2C4抗体と競合する。一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、細胞(例えば、好酸球または肥満細胞)の細胞表面に存在するエピトープへの結合に関して、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(米国特許第8,207,305号に見出されるものと同様に)および配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(米国特許第8,207,305号に見出されるものと同様に)を含む抗体と競合する。
3.熱的安定性
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8は、熱シフトアッセイにおいて少なくとも約70℃、少なくとも約71℃または少なくとも約72℃の融解温度(Tm)を有する。例示的な熱シフトアッセイにおいて、ヒト化抗シグレック−8抗体を含む試料を、qPCRサーマルサイクラーにおいて1サイクル毎に1℃増加させつつ71サイクルにわたり蛍光色素(Sypro Orange)と共にインキュベートして、Tmを決定する。本明細書における一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、マウス2E2抗体および/またはマウス2C4抗体と比較した場合に、同様のまたはより高いTmを有する。本明細書における一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、キメラ2C4抗体と比較した場合に同じまたはより高いTmを有する。一部の実施形態において、抗シグレック−8抗体は、配列番号84のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号85のアミノ酸配列を含む軽鎖を有する抗体と比較した場合に同じまたはより高いTmを有する。
4.生物学的活性アッセイ
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、好酸球のアポトーシスを誘導する。一部の他の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、肥満細胞を枯渇させる。細胞のアポトーシスを評価するためのアッセイは、本技術分野において周知であり、例えば、アネキシンVによる染色およびTUNELアッセイが挙げられる。例示的な細胞アポトーシスアッセイにおいて、血液試料由来の新鮮バフィーコートを培地に再懸濁し、96ウェルU字底プレートで平板培養する。抗シグレック−8抗体の一連の系列5倍希釈を各ウェルに添加し、このプレートを37℃、5%COで4時間より長くインキュベートする。PBSに希釈したパラホルムアルデヒドで細胞を固定し、顕微鏡を使用した検出のための好酸球に特異的なコンジュゲートされた抗体で染色する。バフィーコートが抗シグレック−8抗体の存在下でインキュベートされないときと比較した場合に、バフィーコートが抗シグレック−8抗体の存在下でインキュベートされたときの総末梢血白血球における好酸球集団を評価する。別の例示的なアッセイにおいて、血液試料から精製された好酸球(例えば、Miltenyi好酸球単離キット)を培地に再懸濁し、IL−5の存在または非存在下で一晩培養する。培養した好酸球をその後、遠心分離によって収集し、培地に再懸濁し、96ウェルU字底プレートで平板培養する。抗シグレック−8抗体の一連の系列5倍希釈を各ウェルに添加し、このプレートを37℃、5%COで4時間より長くインキュベートする。本技術分野において周知の標準技法を使用して細胞を固定し、アネキシン−Vで染色し、顕微鏡を使用して好酸球の数を検出する。精製された細胞が抗シグレック−8抗体の存在下でインキュベートされないときと比較した場合に、精製された細胞が抗シグレック−8抗体の存在下でインキュベートされたときの試料における好酸球集団を評価する。
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、ADCC活性を誘導する。一部の他の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、ADCC活性によりシグレック−8を発現する肥満細胞を死滅させる。一部の実施形態において、組成物は、非フコシル化(すなわち、アフコシル化(afucosylated))抗シグレック−8抗体を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている非フコシル化抗シグレック−8抗体を含む組成物は、部分的にフコシル化された抗シグレック−8抗体を含む組成物と比較した場合に、ADCC活性を増強する。ADCC活性を評価するためのアッセイは、本技術分野において周知であり、本明細書に記載されている。例示的なアッセイにおいて、ADCC活性を測定するために、エフェクター細胞および標的細胞が使用される。エフェクター細胞の例として、ナチュラルキラー(NK)細胞、大型顆粒リンパ球(LGL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞ならびにNKおよびLGLを含むPBMC、または好中球、好酸球およびマクロファージ等、細胞表面にFc受容体を有する白血球が挙げられる。標的細胞は、評価しようとする抗体が認識できる抗原を細胞表面に発現するいずれかの細胞である。斯かる標的細胞の例は、細胞表面にシグレック−8を発現する好酸球である。斯かる標的細胞の別の例は、細胞表面にシグレック−8を発現する肥満細胞である。標的細胞は、細胞溶解の検出を可能にする試薬で標識される。標識のための試薬の例として、クロム酸ナトリウム(Na 51CrO)等、放射性物質が挙げられる。例えば、Immunology、14巻、181頁(1968年);J. Immunol. Methods、172巻、227頁(1994年);およびJ. Immunol. Methods、184巻、29頁(1995年)を参照されたい。
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、肥満細胞媒介性活性を阻害する。肥満細胞トリプターゼは、総肥満細胞数および活性化のバイオマーカーとして使用されてきた。例えば、血液または尿中の総および活性トリプターゼならびにヒスタミン、N−メチルヒスタミンおよび11−ベータ−プロスタグランジンF2を測定して、肥満細胞の低下を評価することができる。例えば、例示的な肥満細胞活性アッセイに関して、米国特許出願公開第20110293631号を参照されたい。肥満細胞における抗シグレック−8抗体のADCCおよびアポトーシス活性を評価するための例示的なアッセイにおいて、ヒト肥満細胞は、公開されたプロトコールに従ってヒト組織から単離される(Guhlら、Biosci. Biotechnol. Biochem.、2011年、75巻:382〜384頁;Kulkaら、In Current Protocols in Immunology、2001年、(John Wiley & Sons, Inc.))、または例えば、Yokoiら、J Allergy Clin Immunol.、2008年、121巻:499〜505頁に記載されている通りにヒト造血幹細胞から分化される。精製された肥満細胞は、無菌96ウェルU字底プレートにおける完全RPMI培地に再懸濁され、0.0001ng/ml〜10μg/mlの間に及ぶ濃度における抗シグレック−8抗体の存在または非存在下で30分間インキュベートされる。精製されたナチュラルキラー(NK)細胞または新鮮PBLありまたはなしで、試料をさらに4〜16時間インキュベートして、ADCCを誘導する。肥満細胞を検出するための蛍光コンジュゲート抗体(CD117およびFcεR1)ならびに生きているおよび死んでいるまたは瀕死の細胞を識別するためのアネキシン−Vおよび7AADを使用したフローサイトメトリーにより、アポトーシスまたはADCCによる細胞死滅を解析する。製造元の指示に従ってアネキシン−Vおよび7AAD染色を行う。
一部の態様では、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、線維性疾患(例えば、肺線維症)の部位への好中球流入を阻害する。ブレオマイシンは、糖ペプチド抗腫瘍抗生物質および抗ウイルス薬である。ブレオマイシンは、DNA鎖切断の誘導によって作用する。ブレオマイシンの最も重大な合併症は、肺線維症および肺機能障害である。肺線維症の周知の動物モデルは、齧歯類(例えば、マウスまたはラット)の肺へのブレオマイシンの単一の気管内または鼻腔内送達によって作製される。ブレオマイシンの投与は一般に、炎症性細胞浸潤、コラーゲン蓄積および実質の硬化によって特徴付けられる、肺に用量依存性損傷をもたらす。肺は一般に、ブレオマイシンの単回投与の7〜14日後に試験される。Mouratisら、Curr Opin Pulm Med.、2011年、17巻(5号):355〜61頁を参照されたい。例示的なアッセイにおいて、好酸球、肥満細胞および好塩基球においてヒトシグレック−8を発現し、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するトランスジェニック齧歯類が、目的の投与量レジメンで、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体で処置される。処置された齧歯類から気管支肺胞洗浄(BAL)液を収集し、白血球評価のために処理する。BAL液を遠心分離し、細胞ペレットを適切な溶解バッファーに再懸濁して、赤血球を溶解する。ウシ胎仔血清(FBS)を補充したリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加して溶解反応を停止し、その後、再度試料を遠心分離して、白血球ペレットを得る。本明細書に記載されている血球計数器およびトリパンブルー排除方法を使用して、白血球の数を計数する。
一部の態様では、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体は、線維性疾患(例えば、肺線維症)の部位におけるコラーゲン蓄積を予防する。例示的なアッセイにおいて、好酸球、肥満細胞および好塩基球においてヒトシグレック−8を発現し、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するトランスジェニック齧歯類は、目的の投与量レジメンで、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体で処置される。処置された齧歯類から気管支肺胞洗浄(BAL)液を収集し、コラーゲン評価のために処理する。BAL液を遠心分離し、Sircol(商標)コラーゲンアッセイ(Biocolor Life Science Assays、英国)等、コラーゲンアッセイを使用して、コラーゲンに関して上清を解析する。
抗体調製
本明細書に記載されている抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)は、抗体を作製するための本技術分野において利用できる技法を使用して調製されるが、そのうち例示的な方法について次のセクションでより詳細に記載する。
1.抗体断片
本発明は、抗体断片を包含する。抗体断片は、酵素消化等の伝統的な手段または組換え技法によって作製することができる。ある特定の状況下で、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。ある特定の抗体断片の概説に関しては、Hudsonら(2003年)Nat. Med.9巻:129〜134頁を参照されたい。
抗体断片の産生のための様々な技法が開発された。伝統的には、このような断片は、インタクト抗体のタンパク質分解的消化により得られた(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24巻:107〜117頁(1992年);およびBrennanら、Science、229巻:81頁(1985年)を参照)。しかし、このような断片は現在、組換え宿主細胞によって直接的に産生することができる。Fab、FvおよびScFv抗体断片は全て、E.coliにおいて発現させ、それから分泌させることができ、よって、大量のこのような断片の手軽な産生を可能にする。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリーから単離することができる。あるいは、Fab’−SH断片をE.coliから直接的に回収し、化学的にカップリングして、F(ab’)断片を形成することができる(Carterら、Bio/Technology 10巻:163〜167頁(1992年))。別のアプローチによると、F(ab’)断片は、組換え宿主細胞培養物から直接的に単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、in vivo半減期が増加したFabおよびF(ab’)断片が、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片の産生のための他の技法は、当業者には明らかとなろう。ある特定の実施形態において、抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域を欠くインタクトな組み合わせ部位を有する唯一の種である;よって、これらは、in vivo使用における非特異的結合低下に適する可能性がある。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのアミノまたはカルボキシ末端のいずれかにおけるエフェクタータンパク質の融合体を生じることができる。Antibody Engineering、Borrebaeck編(上掲)を参照されたい。例えば抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されている「線状抗体」となることもできる。斯かる線状抗体は、単一特異性または二重特異性となり得る。
2.ヒト化抗体
本発明は、ヒト化抗体を包含する。非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が、本技術分野で公知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1個または複数のアミノ酸残基を有することができる。このような非ヒトアミノ酸残基は多くの場合、「移入」残基と称され、これは典型的には、「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は基本的に、高頻度可変領域配列をヒト抗体の相当する配列の代わりに置換することにより、Winterの方法に従って行うことができる(Jonesら(1986年)Nature 321巻:522〜525頁;Riechmannら(1988年)Nature 332巻:323〜327頁;Verhoeyenら(1988年)Science 239巻:1534〜1536頁)。したがって、斯かる「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、インタクトなヒト可変ドメインに実質的に満たないものが、非ヒト種由来の相当する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的には、いくつかの高頻度可変領域残基およびおそらくいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似性部位由来の残基によって置換されたヒト抗体である。
ヒト化抗体の作製において使用するべき軽および重両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性の低下に重要となり得る。いわゆる「ベストフィット(best−fit)」方法によると、齧歯類(例えば、マウス)抗体の可変ドメインの配列が、公知ヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対しスクリーニングされる。続いて、齧歯類の配列に最も近縁のヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワークとして受け入れられる(Simsら(1993年)J. Immunol.151巻:2296頁;Chothiaら(1987年)J. Mol. Biol.196巻:901頁)。別の方法は、軽または重鎖の特定のサブグループのあらゆるヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。いくつかの異なるヒト化抗体に同じフレームワークを使用することができる(Carterら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4285頁;Prestaら(1993年)J. Immunol.、151巻:2623頁)。
抗体が、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的特性を保持しつつヒト化されることがさらに一般に望ましい。この目標を達成するため、一方法に従って、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列および様々な概念的ヒト化産物の解析のプロセスにより調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用でき、当業者には馴染み深い。選択された候補免疫グロブリン配列の可能な三次元コンフォメーションを図解および表示するコンピュータプログラムを利用できる。このような表示の点検は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の解析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を与える残基の解析を可能にする。このようにして、標的抗原(複数可)に対する親和性増加等、所望の抗体特徴が達成できるように、レシピエントおよび移入配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般に、高頻度可変領域残基は、直接的におよび最も実質的に、抗原結合への影響に関与する。
3.ヒト抗体
本発明のヒト抗シグレック−8抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列(複数可)と公知ヒト定常ドメイン配列(複数可)を組み合わせることにより構築することができる。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗シグレック−8抗体は、ハイブリドーマ方法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株は、例えば、Kozbor、J. Immunol.、133巻:3001頁(1984年);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51〜63頁(Marcel Dekker, Inc.、New York、1987年);およびBoernerら、J. Immunol.、147巻:86頁(1991年)によって記載されている。
免疫化により、内在性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の完全レパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である。例えば、キメラおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失が、内在性抗体産生の完全阻害をもたらすことが記載されている。斯かる生殖系列変異体マウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移行は、抗原負荷によるヒト抗体の産生をもたらすであろう。例えば、Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362巻:255頁(1993年);Bruggermannら、Year in Immunol.、7巻:33頁(1993年)を参照されたい。
遺伝子シャッフリングを使用して、非ヒト(例えば、齧歯類)抗体からヒト抗体を得ることもでき、このヒト抗体は、出発非ヒト抗体と同様の親和性および特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従い、本明細書に記載されているファージディスプレイ技法によって得られる非ヒト抗体断片の重または軽鎖可変領域のいずれかを、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置き換え、非ヒト鎖/ヒト鎖scFvまたはFabキメラの集団を作り出す。抗原による選択は、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFvまたはFabの単離をもたらし、ヒト鎖は、一次ファージディスプレイクローンにおける相当する非ヒト鎖の除去により破壊された抗原結合部位を修復する、すなわち、エピトープは、ヒト鎖パートナーの選択を支配する。残存非ヒト鎖を置き換えるために、このプロセスを反復すると、ヒト抗体が得られる(PCT WO93/06213、1993年4月1日公開を参照)。CDRグラフトによる非ヒト抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技法は、非ヒト起源のFR残基もCDR残基も持たない完全なヒト抗体を提供する。
4.二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対し結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。ある特定の実施形態において、結合特異性のうち一方は、シグレック−8に対するものであり、他方は、他のいずれかの抗原に向けられている。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体は、シグレック−8の2種の異なるエピトープに結合することができる。二重特異性抗体を使用して、シグレック−8を発現する細胞に細胞傷害性薬剤を局在化させることもできる。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作製するための方法は、本技術分野で公知である。MilsteinおよびCuello、Nature、305巻:537頁(1983年)、WO93/08829、1993年5月13日公開およびTrauneckerら、EMBO J.、10巻:3655頁(1991年)を参照されたい。二重特異性抗体作製のさらなる詳細に関しては、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、121巻:210頁(1986年)を参照されたい。二重特異性抗体は、架橋されたまたは「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方は、アビジンにカップリングすることができ、他方はビオチンにカップリングすることができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製することができる。適した架橋剤は、本技術分野において周知であり、多数の架橋技法と共に米国特許第4,676,980号に開示されている。
5.シングルドメイン抗体
一部の実施形態において、本発明の抗体は、シングルドメイン抗体である。シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全体もしくは部分または軽鎖可変ドメインの全体もしくは部分を含む単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.;例えば、米国特許第6,248,516(B1)号を参照)。一実施形態において、シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全体または部分からなる。
6.抗体バリアント
一部の実施形態において、本明細書に記載されている抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましくなり得る。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することにより、あるいはペプチド合成により調製することができる。斯かる修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失および/またはそれへの挿入および/またはその置換を含む。欠失、挿入および置換のいずれかの組合せを為して、最終構築物に到達することができるが、この最終構築物が、所望の特徴を保有することを条件とする。アミノ酸変更は、配列が作製されるときに対象抗体アミノ酸配列に導入することができる。
変異誘発に好まれる位置である、抗体のある特定の残基または領域の同定に有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989年)Science、244巻:1081〜1085頁によって記載されている「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。それによると、残基または標的残基の群が同定され(例えば、arg、asp、his、lysおよびglu等、荷電残基)、中性または負電荷アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗原とアミノ酸との相互作用に影響を与える。置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置は続いて、置換部位にまたはそれに代えてさらに別のまたは他のバリアントを導入することにより精緻化される。よって、アミノ酸配列変種を導入するための部位は既定であるが、変異の性質それ自体は既定である必要はない。例えば、所定の部位における変異の性能を解析するために、alaスキャニングまたはランダム変異誘発が、標的コドンまたは領域において行われ、発現した免疫グロブリンが、所望の活性に関してスクリーニングされる。
アミノ酸配列挿入は、1残基から100またはそれを超える残基を含有するポリペプチドの長さに及ぶアミノおよび/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントは、抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドへの抗体のNまたはC末端の融合を含む。
一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にC末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のC末端において切断される。一部の実施形態において、C末端切断は、重鎖からC末端リシンを除去する。一部の実施形態において、モノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖にN末端切断を有する。例えば、1、2、3、4または5アミノ酸残基が、重鎖および/または軽鎖のN末端において切断される。一部の実施形態において、モノクローナル抗体のトランケート型は、組換え技法によって作製することができる。
ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への糖質部分の付着を指す。トリペプチド配列、アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニン(式中、Xは、プロリンを除くいずれかのアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への糖質部分の酵素による付着の認識配列である。よって、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル化部位を生じる。O結合型グリコシル化は、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンを使用してもよいが、最も一般的にはセリンまたはスレオニンであるヒドロキシアミノ酸への糖、N−アセチルガラクトサミン(N−aceylgalactosamine)、ガラクトースまたはキシロースのうち1種の付着を指す。
抗体に対するグリコシル化部位の付加または欠失は、上述のトリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位のための)のうち1種または複数が作出または除去されるように、アミノ酸配列を変更することにより簡便に達成される。変更は、本来の抗体の配列に対する1個または複数のセリンまたはスレオニン残基の付加、欠失または置換によって為すこともできる(O結合型グリコシル化部位のため)。
抗体が、Fc領域を含む場合、それに付着した糖質を変更することができる。例えば、抗体のFc領域に付着したフコースを欠如する、成熟糖質構造を有する抗体が、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta, L.)に記載されている。US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)も参照されたい。抗体のFc領域に付着した糖質において二分(bisecting)N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する抗体は、WO2003/011878、Jean−Mairetらおよび米国特許第6,602,684号、Umanaらにおいて参照される。抗体のFc領域に付着したオリゴ糖において少なくとも1個のガラクトース残基を有する抗体は、WO1997/30087、Patelらに報告されている。そのFc領域に付着した変更された糖質を有する抗体に関して、WO1998/58964(Raju, S.)およびWO1999/22764(Raju, S.)も参照されたい。修飾されたグリコシル化を有する抗原結合分子に関して、US2005/0123546(Umanaら)も参照されたい。
ある特定の実施形態において、グリコシル化バリアントは、Fc領域に付着した糖質構造が、フコースを欠如するFc領域を含む。斯かるバリアントは、改善されたADCC機能を有する。任意選択で、Fc領域は、ADCCをさらに改善する1個または複数のアミノ酸置換をそこにさらに含み、例えば、Fc領域の298、333および/または334位(残基のEuナンバリング)における置換が挙げられる。「脱フコシル化(defucosylated)」または「フコース欠損」抗体に関する刊行物の例として:US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;Okazakiら、J. Mol. Biol.336巻:1239〜1249頁(2004年);Yamane−Ohnukiら、Biotech. Bioeng.87巻:614頁(2004年)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生する細胞株の例として、タンパク質フコシル化を欠損するLec13 CHO細胞(Ripkaら、Arch. Biochem. Biophys.249巻:533〜545頁(1986年);米国特許出願公開第2003/0157108(A1)号、Presta, L;およびWO2004/056312(A1)、Adamsら、特に、実施例11)と、アルファ−1,6−フコシル基転移酵素遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(Yamane−Ohnukiら、Biotech. Bioeng.87巻:614頁(2004年))等のノックアウト細胞株と、β1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素III(GnT−III)およびゴルジμ−マンノシダーゼII(ManII)を過剰発現する細胞が挙げられる。
野生型CHO細胞において産生された同じ抗体におけるフコースの量と比べて低下したフコースを有する抗体が、本明細書において企図される。例えば、抗体は、ネイティブCHO細胞(例えば、ネイティブFUT8遺伝子を含有するCHO細胞等、ネイティブグリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合よりも少量のフコースを有する。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗シグレック−8抗体は、そのN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、5%または1%未満がフコースを含む抗体である。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗シグレック−8抗体は、そのN結合型グリカンのいずれもフコースを含まない抗体である、すなわち、抗体は、完全にフコースを含有しない、またはフコースを持たない、またはフコシル化されていない、またはアフコシル化されている。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されているMALDI−TOF質量分析によって測定される、Asn297に付着したあらゆる糖構造の和と比べて(例えば、複合的、ハイブリッドおよび高マンノース構造)、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定することができる。Asn297は、Fc領域における約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEuナンバリング);しかし、Asn297は、抗体における軽微な配列変種により、297位の約±3アミノ酸上流または下流に、すなわち、294〜300位の間に位置することもできる。一部の実施形態において、抗体の重鎖の少なくとも1または2つは、フコシル化されていない。
一実施形態において、抗体は、その血清半減期を改善するように変更される。抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国特許第5,739,277号に記載されている通り、サルベージ受容体結合エピトープを抗体(特に、抗体断片)に取り込ませることができる。本明細書において、用語「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子のin vivo血清半減期の増加の原因となる、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す(US2003/0190311、米国特許第6,821,505号;米国特許第6,165,745号;米国特許第5,624,821号;米国特許第5,648,260号;米国特許第6,165,745号;米国特許第5,834,597号)。
別の種類のバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。このようなバリアントは、異なる残基によって置き換えられた少なくとも1個のアミノ酸残基を抗体分子に有する。置換変異誘発のための目的の部位は、高頻度可変領域を含むが、FR変更も企図される。保存的置換は、表1の見出し「好まれる置換」に示す。斯かる置換が、生物学的活性に望ましい変化をもたらす場合、表1において「例示的な置換」と命名される、またはアミノ酸クラスを参照しつつさらに後述する、より実質的な変化を導入し、その産物をスクリーニングすることができる。
Figure 0006846362
抗体の生物学的特性における実質的な修飾は、(a)例えば、シートもしくはヘリックスコンフォメーションとしての、置換の区域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、またはc)側鎖の嵩の維持におけるその効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、その側鎖の特性の類似性に従ってグループ化することができる(A. L. Lehninger、Biochemistry、第2版、73〜75頁、Worth Publishers、New
York(1975年)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)無電荷極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
あるいは、天然起源の残基は、共通側鎖特性に基づき群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向性に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちあるクラスから別のクラスへのメンバーの交換を必要とするであろう。斯かる置換された残基は、保存的置換部位または残存(非保存)部位へと導入することもできる。
1種類の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)のうち1個または複数の高頻度可変領域残基の置換に関与する。一般に、さらなる開発のために選択されるその結果得られたバリアント(複数可)は、これを作製する元になった親抗体と比べて修飾された(例えば、改善された)生物学的特性を有するであろう。斯かる置換バリアントを作製するための簡便な仕方は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟化に関与する。簡潔に説明すると、いくつかの高頻度可変領域部位(例えば、6〜7部位)を変異させて、各部位にあらゆる可能なアミノ酸置換を作製する。このように作製された抗体は、各粒子内にパッケージされたファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)の少なくとも一部への融合体として繊維状ファージ粒子からディスプレイされる。次に、ファージディスプレイされたバリアントは、その生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。修飾のための候補高頻度可変領域部位を同定するために、スキャニング変異誘発(例えば、アラニンスキャニング)を行って、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。その代わりにまたはその上、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体および抗原の間の接触点を同定することが有益となり得る。斯かる接触残基および隣接する残基は、本明細書に詳述されている技法を含む、本技術分野で公知の技法に従った置換の候補である。斯かるバリアントが作製されたら、バリアントのパネルを、本明細書に記載されている技法を含む本技術分野で公知の技法を使用したスクリーニングに付し、1種または複数種の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体をさらなる開発のために選択することができる。
抗体のアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、本技術分野で公知の種々の方法によって調製される。このような方法として、天然供給源からの単離(天然起源のアミノ酸配列バリアントの場合)、または先に調製されたバリアントもしくは非バリアントバージョンの抗体のオリゴヌクレオチド媒介性(または部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発およびカセット変異誘発による調製が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の抗体のFc領域に1個または複数のアミノ酸修飾を導入し、これにより、Fc領域バリアントを作製することが望ましくなり得る。Fc領域バリアントは、ヒンジシステインの位置を含む1個または複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含むことができる。一部の実施形態において、Fc領域バリアントは、ヒトIgG4 Fc領域を含む。さらなる実施形態において、ヒトIgG4 Fc領域は、アミノ酸置換S228Pを含み、このアミノ酸残基は、Kabatにおける通りのEUインデックスに従ってナンバリングされる。
本明細書および本技術分野が教示するところに従って、一部の実施形態において、本発明の抗体が、野生型カウンターパート抗体と比較して1個または複数の変更を、例えば、Fc領域に含むことができることが企図される。それにもかかわらず、このような抗体は、その野生型カウンターパートと比較した場合に、治療的有用性に必要とされる実質的に同じ特徴を保持するであろう。例えば、WO99/51642に記載されている通り、例えば、変更された(すなわち、改善または縮小された)C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらすであろう、ある特定の変更をFc領域に為すことができることが考えられる。Fc領域バリアントの他の例に関して、DuncanおよびWinter、Nature 322巻:738〜40頁(1988年);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;およびWO94/29351も参照されたい。WO00/42072(Presta)およびWO2004/056312(Lowman)は、FcRに対し改善または縮小された結合を有する抗体バリアントについて記載する。これらの特許公報の内容は、特に参照により本明細書に組み入れられる。Shieldsら、J. Biol. Chem.9巻(2号):6591〜6604頁(2001年)も参照されたい。増加された半減期および胎児への母系IgGの移行の原因となる、新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有する抗体(Guyerら、J. Immunol.117巻:587頁(1976年)およびKimら、J. Immunol.24巻:249頁(1994年))は、US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。このような抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する、1個または複数の置換をその中に有するFc領域を含む。変更されたFc領域アミノ酸配列および増加または減少されたC1q結合能を有するポリペプチドバリアントは、米国特許第6,194,551B1号、WO99/51642に記載されている。これらの特許公報の内容は、特に参照により本明細書に組み入れられる。Idusogieら、J. Immunol.164巻:4178〜4184頁(2000年)も参照されたい。
7.ベクター、宿主細胞および組換え方法
本発明の抗体の組換え産生のため、これをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来手順を使用して(例えば、抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離および配列決定される。多くのベクターを利用できる。ベクターの選択は、一部には、使用するべき宿主細胞に依存する。一般に、宿主細胞は、原核生物または真核生物(一般には哺乳動物)起源のいずれかである。IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE定常領域を含むいかなるアイソタイプの定常領域をこの目的のために使用してもよく、いかなるヒトまたは動物種から斯かる定常領域を得てもよいことが認められよう。
原核生物宿主細胞を使用した抗体の作製:
a)ベクター構築
本発明の抗体のポリペプチド構成成分をコードするポリヌクレオチド配列は、標準組換え技法を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞等、抗体産生細胞から単離および配列決定することができる。あるいは、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成機またはPCR技法を使用して合成することができる。得られた後に、ポリペプチドをコードする配列は、原核生物宿主において異種ポリヌクレオチドを複製および発現することができる組換えベクターに挿入する。利用できる本技術分野で公知の多くのベクターを本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主に、ベクターに挿入されるべき核酸のサイズおよびベクターで形質転換されるべき特定の宿主細胞に依存するであろう。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現またはその両方)およびこれが存在する特定の宿主細胞との適合性に応じて様々な構成成分を含有する。ベクター構成成分として、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸挿入物および転写終結配列が一般に挙げられるがこれらに限定されない。
一般に、宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび対照配列を含有するプラスミドベクターは、このような宿主に関連して使用される。ベクターは通常、複製部位と共に、形質転換細胞における表現型選択をもたらすことができるマーキング配列を保有する。例えば、E.coliは典型的に、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を使用して形質転換される。pBR322は、アンピシリン(Amp)およびテトラサイクリン(Tet)抵抗性をコードする遺伝子を含有し、これにより、形質転換細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その派生体または他の微生物プラスミドまたはバクテリオファージは、内在性タンパク質の発現のために微生物によって使用され得るプロモーターを含有することもできるまたは含有するように修飾することもできる。特定の抗体の発現のために使用されるpBR322派生体の例は、Carterら、米国特許第5,648,237号に詳細に記載されている。
加えて、宿主微生物と適合性であるレプリコンおよび対照配列を含有するファージベクターは、このような宿主に関連した形質転換ベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.−11等、バクテリオファージは、E.coli LE392等、感受性宿主細胞の形質転換に使用することができる組換えベクターの作製において利用することができる。
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド構成成分のそれぞれをコードする2個またはそれを超えるプロモーター−シストロンペアを含むことができる。プロモーターは、その発現をモジュレートするシストロンの上流(5’)に位置する非翻訳調節配列である。原核生物プロモーターは、典型的には、2種のクラス、誘導性および構成的に分類される。誘導性プロモーターは、培養条件の変化、例えば、栄養素の存在もしくは非存在または温度変化に応答して、その制御下でシストロンの転写のレベル増加を開始するプロモーターである。
種々の潜在的宿主細胞によって認識される多数のプロモーターが周知である。制限酵素消化により供給源DNAからプロモーターを除去し、本発明のベクターへと単離されたプロモーター配列を挿入することにより、選択されたプロモーターは、軽または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。ネイティブプロモーター配列および多くの異種プロモーターの両方を使用して、標的遺伝子の増幅および/または発現を方向付けることができる。一部の実施形態において、一般に、ネイティブ標的ポリペプチドプロモーターと比較した場合に、より優れた転写および発現した標的遺伝子のより高い収量を可能にするため、異種プロモーターが利用される。
原核生物宿主による使用に適したプロモーターは、PhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼ(galactamase)およびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系ならびにtacまたはtrcプロモーター等のハイブリッドプロモーターを含む。しかし、細菌において機能的な他のプロモーター(他の公知細菌またはファージプロモーター等)も同様に適する。これらのヌクレオチド配列は発表されているため、当業者であれば、任意の必要とされる制限部位を供給するためのリンカーまたはアダプターを使用して、操作可能にこれらを標的の軽および重鎖をコードするシストロンにライゲーションすることができる(Siebenlistら(1980年)Cell 20巻:269頁)。
本発明の一態様において、組換えベクター内の各シストロンは、膜を横切っての発現したポリペプチドのトランスロケーションを方向付ける分泌シグナル配列構成成分を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成成分となり得る、あるいはベクターに挿入される標的ポリペプチドDNAの一部となり得る。本発明の目的のために選択されるシグナル配列は、宿主細胞によって認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)配列となるべきである。異種ポリペプチドにとってネイティブなシグナル配列を認識およびプロセシングしない原核生物宿主細胞のため、シグナル配列は、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippまたは熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpAおよびMBPからなる群から例えば選択される原核生物シグナル配列によって置換される。本発明の一実施形態において、発現系の両方のシストロンで使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはそのバリアントである。
別の態様において、本発明に係る免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質において起こることができ、したがって、各シストロン内に分泌シグナル配列の存在を必要としない。これに関して、免疫グロブリン軽および重鎖は、細胞質内で発現され、フォールドされ、アセンブルされて、機能的免疫グロブリンを形成する。ある特定の宿主系統(例えば、E.coli trxB−系統)は、ジスルフィド結合形成に好ましい細胞質条件を提供し、これにより、発現したタンパク質サブユニットの適切なフォールディングおよびアセンブリを可能にする。ProbaおよびPluckthun、Gene、159巻:203頁(1995年)。
本発明の抗体は、分泌され適切にアセンブルされた本発明の抗体の収量を最大化するために、発現されたポリペプチド構成成分の定量的な比をモジュレートすることができる発現系を使用することにより産生することもできる。斯かるモジュレーションは、少なくとも一部には、ポリペプチド構成成分の翻訳強度を同時にモジュレートすることにより達成される。
翻訳強度をモジュレートするための一技法は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号に開示されている。これは、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)のバリアントを利用する。所定のTIRのため、一連のアミノ酸または核酸配列バリアントをある範囲の翻訳強度で作り出し、これにより、特異的な鎖の所望の発現レベルにこの因子を調整するための簡便な手段を提供することができる。TIRバリアントは、アミノ酸配列を変更し得るコドン変化をもたらす従来の変異誘発技法によって作製することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレオチド配列の変化は、サイレントである。TIRにおける変更は、例えば、シグナル配列における変更と共に、シャインダルガーノ配列の数またはスペーシングの変更を含むことができる。変異体シグナル配列を作製するための一方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)、コード配列の開始における「コドンバンク」の作製である。これは、各コドンの第3のヌクレオチド位置を変化させることにより達成することができる;その上、ロイシン、セリンおよびアルギニン等、一部のアミノ酸は、バンクの作製において複雑さを加えることができる複数の第1および第2の位置を有する。この変異誘発方法は、Yansuraら(1992年)METHODS: A Companion to Methods in Enzymol.4巻:151〜158頁に詳細に記載されている。
一実施形態において、ベクターのセットが、その中のシストロン毎にある範囲のTIR強度で作製される。この限定されたセットは、各鎖の発現レベルの比較と共に、様々なTIR強度組合せ下における所望の抗体産物の収量をもたらす。TIR強度は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号に詳細に記載されている通り、レポーター遺伝子の発現レベルを定量することにより決定することができる。翻訳強度比較に基づき、所望の個々のTIRが選択されて、本発明の発現ベクター構築物において組み合わされる。
本発明の抗体の発現に適した原核生物宿主細胞は、グラム陰性またはグラム陽性生物等、古細菌および真正細菌を含む。有用な細菌の例として、Escherichia(例えば、E.coli)、Bacilli(例えば、B.subtilis)、Enterobacteria、Pseudomonas種(例えば、P.aeruginosa)、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、VitreoscillaまたはParacoccusが挙げられる。一実施形態において、グラム陰性細胞が使用される。一実施形態において、E.coli細胞が、本発明のための宿主として使用される。E.coli系統の例として、系統W3110(Bachmann、Cellular and Molecular Biology、2巻(Washington, D.C.:American Society for Microbiology、1987年)、1190〜1219頁;ATCC寄託番号27,325)および遺伝子型W3110 ΔfhuA(ΔtonA)ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE)degP41 kanRを有する系統33D3を含むその派生体(米国特許第5,639,635号)が挙げられる。E.coli 294(ATCC31,446)、E.coli B、E.coliλ 1776(ATCC31,537)およびE.coli RV308(ATCC31,608)等、他の系統およびその派生体も適している。これらの例は、限定的ではなく説明的である。定義された遺伝子型を有する上述の細菌のうちいずれかの派生体を構築するための方法は、本技術分野で公知であり、例えば、Bassら、Proteins、8巻:309〜314頁(1990年)に記載されている。細菌の細胞におけるレプリコンの複製能(replicability)を考慮に入れて適切な細菌を選択することが一般に必要である。pBR322、pBR325、pACYC177またはpKN410等、周知のプラスミドが、レプリコンの供給に使用される場合、例えば、E.coli、SerratiaまたはSalmonella種は、宿主として適切に使用することができる。典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するべきであり、望ましくは、追加的なプロテアーゼ阻害剤を細胞培養において取り込むことができる。
b)抗体産生
宿主細胞は、上述の発現ベクターで形質転換され、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するための、必要に応じて修飾された従来の栄養培地において培養される。
形質転換は、DNAが、染色体外エレメントとしてまたは染色体組み込み体により複製可能となるような、原核生物宿主へのDNAの導入を意味する。使用する宿主細胞に応じて、形質転換は、斯かる細胞に適切な標準技法を使用して行われる。塩化カルシウムを用いたカルシウム処理は、実質的な細胞壁障壁を含有する細菌細胞のために一般に使用される。形質転換のための別の方法は、ポリエチレングリコール/DMSOを用いる。使用されるさらに別の技法は、エレクトロポレーションである。
本発明のポリペプチドの産生に使用される原核細胞は、本技術分野で公知の、選択された宿主細胞の培養に適した培地において育成される。適した培地の例として、ルリアブロス(LB)に必要な栄養素補充物質を加えたものが挙げられる。一部の実施形態において、培地は、発現ベクターの構築に基づき選ばれる選択用薬剤も含有して、この発現ベクターを含有する原核細胞の成長を選択的に可能にする。例えば、アンピシリン抵抗性遺伝子を発現する細胞の成長のために、培地にアンピシリンが添加される。
炭素、窒素および無機リン酸塩源に加えて任意の必要な補充物質が、単独でまたは複合的窒素源等の別の補充物質もしくは培地との混合物として導入されて、適切な濃度で含まれていてもよい。任意選択で、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトールおよびジチオスレイトールからなる群より選択される1種または複数種の還元剤を含有することができる。
原核生物宿主細胞は、適した温度で培養される。ある特定の実施形態において、E.coliの成長のため、成長温度は、約20℃から約39℃、約25℃から約37℃の範囲であるか、または約30℃である。培地のpHは、主に宿主生物に応じて、約5〜約9に及ぶいずれかのpHとなり得る。ある特定の実施形態において、E.coliのため、pHは、約6.8〜約7.4または約7.0である。
誘導性プロモーターが、本発明の発現ベクターにおいて使用される場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に適した条件下で誘導される。本発明の一態様において、PhoAプロモーターが、ポリペプチドの転写を制御するために使用される。したがって、形質転換された宿主細胞は、誘導のためのリン酸塩制限培地において培養される。ある特定の実施形態において、リン酸塩制限培地は、C.R.A.P.培地である(例えば、Simmonsら、J. Immunol. Methods(2002年)263巻:133〜147頁を参照)。本技術分野で公知の通り、用いられているベクター構築物に従って、種々の他の誘導因子を使用することができる。
一実施形態において、本発明の発現したポリペプチドは、宿主細胞の周辺質に分泌され、そこから回収される。タンパク質回収は、典型的には、一般に、浸透圧ショック、超音波処理または溶解等の手段による微生物の崩壊に関与する。細胞が崩壊されたら、細胞デブリまたは細胞全体は、遠心分離または濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えば、親和性樹脂クロマトグラフィーによってさらに精製することができる。あるいは、タンパク質は、培養培地へと輸送され、そこに単離されてもよい。細胞をこの培養物から除去し、産生されたタンパク質のさらなる精製のために培養上清を濾過および濃縮することができる。発現したポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウエスタンブロットアッセイ等、一般的に公知の方法を使用してさらに単離および同定することができる。
本発明の一態様において、抗体産生は、発酵プロセスにより大量に行われる。様々な大規模フェドバッチ(fed−batch)発酵手順が、組換えタンパク質の産生のために利用できる。大規模発酵は、少なくとも1000リットルの容量、ある特定の実施形態において、約1,000〜100,000リットルの容量を有する。このような発酵槽は、酸素および栄養素、特にグルコースを分布させるための撹拌機羽根車を使用する。小規模発酵は一般に、およそ100リットル以下の容積測定的容量の発酵槽における発酵を指し、約1リットル〜約100リットルに及び得る。
発酵プロセスにおいて、タンパク質発現の誘導は、典型的には、細胞が適した条件下で所望の密度、例えば、約180〜220のOD550まで成長した後に開始され、このステージにおいて、細胞は定常期初期にある。本技術分野で公知かつ上述の通り、用いられているベクター構築物に従って、種々の誘導因子を使用することができる。誘導に先立ちより短い期間、細胞を育成することができる。細胞は通常、約12〜50時間誘導されるが、より長いまたはより短い誘導時間を使用してもよい。
本発明のポリペプチドの産生収量および質を改善するために、様々な発酵条件を修飾することができる。例えば、分泌された抗体ポリペプチドの適切なアセンブリおよびフォールディングを改善するために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbDおよび/またはDsbG)またはFkpA(シャペロン活性を有するペプチジルプロリルcis,trans−イソメラーゼ)等、シャペロンタンパク質を過剰発現する追加的なベクターを使用して、宿主原核細胞を同時形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、細菌宿主細胞において産生された異種タンパク質の適切なフォールディングおよび溶解度を容易にすることが実証された。Chenら(1999年)J. Biol. Chem.274巻:19601〜19605頁;Georgiouら、米国特許第6,083,715号;Georgiouら、米国特許第6,027,888号;BothmannおよびPluckthun(2000年)J. Biol. Chem.275巻:17100〜17105頁;RammおよびPluckthun(2000年)J. Biol. Chem.275巻:17106〜17113頁;Arieら(2001年)Mol. Microbiol.39巻:199〜210頁。
発現した異種タンパク質(特に、タンパク質分解に感受性のタンパク質)のタンパク質分解を最小化するために、タンパク質分解酵素を欠損したある特定の宿主系統を本発明のために使用することができる。例えば、宿主細胞系統を修飾して、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVIおよびこれらの組合せ等、公知の細菌プロテアーゼをコードする遺伝子に遺伝的変異(複数可)を生じることができる。いくつかのE.coliプロテアーゼ欠損系統を利用することができ、例えば、Jolyら(1998年)(上掲);Georgiouら、米国特許第5,264,365号;Georgiouら、米国特許第5,508,192号;Haraら、Microbial Drug Resistance、2巻:63〜72頁(1996年)に記載されている。
一実施形態において、タンパク質分解酵素を欠損し、1種または複数種のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドにより形質転換されたE.coli系統が、本発明の発現系における宿主細胞として使用される。
c)抗体精製
一実施形態において、本明細書における産生された抗体タンパク質は、さらに精製されて、さらなるアッセイおよび使用のために実質的に均一な調製物を得る。本技術分野で公知の標準タンパク質精製方法を用いることができる。次の手順は、適した精製手順に例示的である:免疫親和性またはイオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、DEAE等、シリカまたはカチオン交換樹脂におけるクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿および例えば、Sephadex G−75を使用したゲル濾過。
一態様において、固相に固定化されたプロテインAが、本発明の抗体産物の免疫親和性精製のために使用される。プロテインAは、抗体のFc領域に高親和性で結合する、Staphylococcus aureas由来の41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmarkら(1983年)J. Immunol. Meth.62巻:1〜13頁。プロテインAが固定化される固相は、ガラスもしくはシリカ表面を含むカラム、またはポア制御(controlled pore)ガラスカラムまたはケイ酸カラムであり得る。一部の適用において、カラムは、グリセロール等の試薬でコーティングされて、夾雑物の非特異的接着性を予防する可能性がある。
精製の第1のステップとして、上述の細胞培養物に由来する調製物をプロテインA固定化固相にアプライして、プロテインAへの目的の抗体の特異的結合を可能にすることができる。続いて、固相を洗浄して、固相に非特異的に結合した夾雑物を除去する。最後に、溶出により固相から目的の抗体を回収する。
真核生物宿主細胞を使用した抗体の作製:
真核生物宿主細胞における使用のためのベクターは一般に、次の非限定的構成成分のうち1種または複数を含む:シグナル配列、複製起点、1種または複数種のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列。
a)シグナル配列構成成分
真核生物宿主細胞における使用のためのベクターは、目的の成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を有する、シグナル配列または他のポリペプチドを含有することもできる。選択された異種シグナル配列は、宿主細胞により認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)配列となり得る。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列およびウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。斯かる前駆体領域のためのDNAは、抗体をコードするDNAに読み取り枠でライゲーションされる。
b)複製起点
一般に、複製起点構成成分は、哺乳動物発現ベクターには必要とされない。例えば、SV40起点は、典型的には、初期プロモーターを含有するという理由でのみ使用することができる。
c)選択遺伝子構成成分
発現およびクローニングベクターは、選択可能マーカーとも命名される選択遺伝子を含有することができる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートもしくはテトラサイクリンに対する抵抗性を付与する、(b)関連する場合、栄養要求性欠乏を補完する、または(c)複合培地から得ることができない重大な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止させるための薬物を利用する。異種遺伝子による形質転換が成功した細胞は、薬物抵抗性を付与するタンパク質を産生し、これにより、この選択レジメンを生き残る。斯かる優性選択の例は、薬物、ネオマイシン、ミコフェノール酸およびハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に適した選択可能マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−Iおよび−II、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等、抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするマーカーである。
例えば、一部の実施形態において、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキセート(Mtx)を含有する培養培地において全形質転換体を培養することにより同定される。一部の実施形態において、野生型DHFRが用いられる場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である(例えば、ATCC CRL−9096)。
あるいは、抗体、野生型DHFRタンパク質およびアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)等の別の選択可能マーカーをコードするDNA配列で形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に、内在性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド系抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシンまたはG418等、この選択可能マーカーのための選択用薬剤を含有する培地における細胞成長により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。宿主細胞は、グルタミンシンテターゼ(GS)を欠損した細胞株を含む、NS0、CHOK1、CHOK1SVまたは派生体を含むことができる。哺乳動物細胞のための選択可能マーカーとしてのGSの使用のための方法は、米国特許第5,122,464号および米国特許第5,891,693号に記載されている。
d)プロモーター構成成分
発現およびクローニングベクターは通常、宿主生物によって認識され、目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含有する。プロモーター配列は、真核生物で公知である。例えば、実際ではあらゆる真核生物遺伝子は、転写が開始される部位からおよそ25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見出された別の配列は、CNCAAT領域であり、Nは、いかなるヌクレオチドでもよい。大部分の真核生物遺伝子の3’端には、コード配列の3’端へのポリAテイルの付加のためのシグナルとなり得るAATAAA配列がある。ある特定の実施形態において、これらの配列のいずれかまたは全てを、真核生物発現ベクターに適切に挿入することができる。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびサルウイルス40(SV40)等、ウイルスのゲノムから、あるいは異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターによって制御される、ただし、斯かるプロモーターは、宿主細胞系と適合性であること。
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現するための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の修飾は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現について記載するReyesら、Nature 297巻:598〜601頁(1982年)も参照されたい。あるいは、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列をプロモーターとして使用することができる。
e)エンハンサーエレメント構成成分
高等真核生物による本発明の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、ベクターにエンハンサー配列を挿入することにより増加する。多くのエンハンサー配列が、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテインおよびインスリン)から現在公知である。しかし典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用されるであろう。例として、複製起点の後方(late side)(bp100〜270)のSV40エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、マウスサイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後方のポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核生物プロモーターの活性化のためのエンハンサーエレメントについて記載するYaniv、Nature 297巻:17〜18頁(1982年)も参照されたい。エンハンサーは、抗体ポリペプチドコード配列に対し5’位または3’位においてベクターにスプライスすることができるが、一般に、プロモーターから5’の部位に位置する。
f)転写終結構成成分
真核生物宿主細胞において使用される発現ベクターは、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列を含有することもできる。斯かる配列は、真核生物またはウイルスDNAまたはcDNAの5’および場合により3’非翻訳領域から一般的に利用できる。このような領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分におけるポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含有する。有用な転写終結構成成分の1種は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびそこに開示されている発現ベクターを参照されたい。
g)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書におけるベクターにおけるDNAのクローニングまたは発現に適した宿主細胞は、脊椎動物宿主細胞を含む、本明細書に記載されている高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)における脊椎動物細胞の繁殖は、ルーチン手順となった。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1系列(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓系列(懸濁培養における育成のためにサブクローニングされた293または293細胞、Grahamら、J. Gen Virol.36巻:59頁(1977年));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77巻:4216頁(1980年));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol. Reprod.23巻:243〜251頁(1980年));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット(buffalo rat)肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci.383巻:44〜68頁(1982年));MRC5細胞;FS4細胞;CHOK1細胞、CHOK1SV細胞または派生体およびヒトヘパトーマ系列(Hep G2)である。
宿主細胞は、抗体産生のために上述の発現またはクローニングベクターにより形質転換され、プロモーターを誘導するため、形質転換体を選択するため、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために、必要に応じて修飾された従来の栄養培地において培養される。
h)宿主細胞の培養
本発明の抗体の産生に使用される宿主細胞は、種々の培地において培養することができる。HamのF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI−1640(Sigma)およびダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)等、市販の培地は、宿主細胞の培養に適する。加えて、Hamら、Meth. Enz.58巻:44頁(1979年)、Barnesら、Anal. Biochem.102巻:255頁(1980年)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;もしくは同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国再発行特許(U.S. Pat. Re.)30,985に記載されている培地のいずれかを宿主細胞のための培養培地として使用することができる。これらの培地のいずれも、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリンまたは上皮増殖因子等)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩等)、バッファー(HEPES等)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジン等)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬物等)、微量元素(マイクロモル濃度範囲内の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義)ならびにグルコースまたは等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。他のいずれかの補充物質が、当業者に公知の適切な濃度で含まれていてもよい。温度、pHその他等、培養条件は、発現のために選択された宿主細胞により以前に使用された条件であり、当業者には明らかとなろう。
i)抗体の精製
組換え技法を使用する場合、抗体は、細胞内に産生することができる、あるいは培地に直接的に分泌することができる。抗体が、細胞内に産生される場合、第1のステップとして、宿主細胞または溶解された断片のあらゆる粒子状デブリは、例えば、遠心分離または限外濾過により除去することができる。抗体が、培地に分泌される場合、斯かる発現系から得た上清は、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して先ず濃縮することができる。PMSF等、プロテアーゼ阻害剤が、タンパク質分解を阻害するために前述ステップのいずれかに含まれていてよく、抗生物質が、偶発的な夾雑物の成長を予防するために含まれていてよい。
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析および親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーが、簡便な技法である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在するいずれかの免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトγ1、γ2またはγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmarkら、J. Immunol. Methods 62巻:1〜13頁(1983年))。プロテインGは、全マウスアイソタイプおよびヒトγ3に推奨される(Gussら、EMBO J.5巻:1567 1575頁(1986年))。親和性リガンドが付着するマトリックスは、アガロースであってよいが、他のマトリックスも利用できる。ポア制御ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等、機械的に安定的なマトリックスは、アガロースにより達成され得るものよりも速い流速およびより短い処理時間を可能にする。抗体が、CH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が、精製に有用である。イオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカにおけるクロマトグラフィー、ヘパリンにおけるクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラム等)におけるSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿等、タンパク質精製のための他の技法も、回収しようとする抗体に応じて利用できる。
任意の予備的精製ステップ(複数可)の後に、目的の抗体および夾雑物を含む混合物は、例えば、低塩濃度(例えば、約0〜0.25M塩)で行われる約2.5〜4.5の間のpHの溶出バッファーを使用した低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにより、さらなる精製に付すことができる。
一般に、研究、検査および臨床用途における使用のための抗体を調製するための様々な方法論は、本技術分野において十分に確立されており、上述の方法論と一貫しており、および/または当業者によって特定の目的の抗体に適切であると考慮される。
非フコシル化抗体の産生
フコシル化の程度が低下した抗体を調製するための方法が本明細書に提供されている。例えば、本明細書において企図される方法として、タンパク質フコシル化が欠損した細胞株の使用(例えば、Lec13 CHO細胞、アルファ−1,6−フコシル基転移酵素遺伝子ノックアウトCHO細胞、β1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素IIIを過剰発現する細胞およびゴルジμ−マンノシダーゼIIをさらに過剰発現する細胞等)および抗体の産生に使用される細胞培養培地におけるフコースアナログ(複数可)の添加が挙げられるがこれらに限定されない。Ripkaら、Arch. Biochem. Biophys.249巻:533〜545頁(1986年);米国特許出願公開第2003/0157108(A1)号、Presta, L;WO2004/056312(A1);Yamane−Ohnukiら、Biotech. Bioeng.87巻:614頁(2004年);および米国特許第8,574,907号を参照されたい。抗体のフコース含量を低下させるための追加的な技法は、米国特許出願公開第2012/0214975号に記載されているGlymaxx技術を含む。抗体のフコース含量を低下させるための追加的な技法は、抗体の産生に使用される細胞培養培地における1種または複数種のグリコシダーゼ阻害剤の添加も含む。グリコシダーゼ阻害剤は、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼIIおよびα−マンノシダーゼIを含む。一部の実施形態において、グリコシダーゼ阻害剤は、α−マンノシダーゼIの阻害剤である(例えば、キフネンシン)。
本明細書において、「コアのフコシル化」は、N結合型グリカンの還元末端におけるN−アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)へのフコースの付加(「フコシル化」)を指す。斯かる方法によって産生された抗体およびその組成物も提供される。
一部の実施形態において、Fc領域(またはドメイン)に結合した複合N−グリコシド結合型糖鎖のフコシル化が低下する。本明細書において、「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、典型的に、アスパラギン297(Kabatの番号に従う)に結合されるが、複合N−グリコシド結合型糖鎖は、他のアスパラギン残基に連結されてもよい。「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端にマンノースのみが取り込まれた高マンノース型の糖鎖を除外するが、1)コア構造の非還元末端側が、ガラクトース−N−アセチルグルコサミン(「gal−GlcNAc」とも称される)の1個または複数の分枝を有し、Gal−GlcNAcの非還元末端側が、シアル酸、二分N−アセチルグルコサミンその他を任意選択で有する複合型;または2)コア構造の非還元末端側が、高マンノースN−グリコシド結合型糖鎖および複合N−グリコシド結合型糖鎖の両方の分枝を有するハイブリッド型を含む。
一部の実施形態において、「複合N−グリコシド結合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端側が、ガラクトース−N−アセチルグルコサミン(「gal−GlcNAc」とも称される)の0、1個または複数の分枝を有し、Gal−GlcNAcの非還元末端側が、シアル酸、二分N−アセチルグルコサミンその他等の構造を任意選択でさらに有する複合型を含む。
本方法によると、典型的には、ごく微量のフコースが、複合N−グリコシド結合型糖鎖(複数可)に取り込まれる。例えば、様々な実施形態において、組成物中、抗体の約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満または約1%未満が、フコースによりコアがフコシル化されている。一部の実施形態において、組成物中、抗体の実質的に全てが、フコースによりコアがフコシル化されていない(すなわち、約0.5%未満が、フコシル化されている)。一部の実施形態において、組成物中、抗体の約40%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超または約99%超が、フコシル化されていない。
一部の実施形態において、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない(すなわち、約0.5%未満が、フコース残基を含有する)抗体が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体重鎖の少なくとも1または2つがフコシル化されていない抗体が本明細書において提供される。
上述の通り、種々の哺乳動物宿主−発現ベクター系を利用して、抗体を発現させることができる。一部の実施形態において、培養培地は、フコースを補充されない。一部の実施形態において、有効量のフコースアナログが、培養培地に添加される。この文脈において、「有効量」は、抗体の複合N−グリコシド結合型糖鎖へのフコース取り込みを、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%減少させるのに十分なアナログの量を指す。一部の実施形態において、本方法によって産生された抗体は、フコースアナログの非存在下で培養された宿主細胞から産生された抗体と比較した場合に、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%のコアがフコシル化されていないタンパク質(例えば、コアのフコシル化が欠如している)を含む。
フコースが糖鎖の還元端におけるN−アセチルグルコサミンに結合されていない糖鎖、対、フコースが糖鎖の還元端におけるN−アセチルグルコサミンに結合されている糖鎖の含量(例えば、比)は、例えば、実施例に記載されている通りに決定することができる。他の方法は、ヒドラジン分解または酵素消化(例えば、Biochemical Experimentation Methods 23巻:Method for Studying Glycoprotein Sugar Chain(Japan Scientific Societies Press)、Reiko Takahashi編集(1989年)を参照)、放出された糖鎖の蛍光標識または放射性同位元素標識と、続くクロマトグラフィーによる標識された糖鎖の分離を含む。また、放出された糖鎖の組成は、HPAEC−PAD方法によって鎖を解析することにより決定することができる(例えば、J. Liq Chromatogr.6巻:1557頁(1983年)を参照)(全般的には、米国特許出願公開第2004/0110282号を参照)。
B.本発明の組成物
一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、シグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストのいずれかを含む組成物(例えば、医薬組成物)も本明細書に提供される。一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の約50%未満が、フコース残基を含有する組成物が本明細書において提供される。一部の実施形態において、抗体は、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%または約15%未満が、フコース残基を含有する。一部の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体を含む組成物であって、抗体が、Fc領域と、Fc領域に連結されたN−グリコシド結合型炭水化物鎖とを含み、N−グリコシド結合型炭水化物鎖の実質的に全てが、フコース残基を含有しない組成物が本明細書において提供される。
任意選択の薬学的に許容されるキャリア、賦形剤または安定剤と、所望の程度の純度を有する活性成分とを混合することにより、貯蔵のための治療用製剤が調製される(Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & Wiklins, Pub.、Gennaro編、Philadelphia、Pa.2000年)。許容されるキャリア、賦形剤または安定剤は、用いられている投与量および濃度ではレシピエントに対し無毒性であり、バッファー、アスコルビン酸、メチオニン、ビタミンE、二亜硫酸ナトリウム含む抗酸化剤;保存料、等張化剤(isotonicifier)、安定剤、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);EDTA等のキレート剤および/または非イオン性界面活性剤を含む。
特に、安定性がpH依存性である場合、バッファーを使用して、治療上の有効性を最適化する範囲にpHを制御することができる。バッファーは、約50mM〜約250mMに及ぶ濃度で存在することができる。本発明による使用に適した緩衝剤は、有機および無機酸ならびにこれらの塩の両方を含む。例えば、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酢酸塩である。その上、バッファーは、ヒスチジンおよびTris等のトリメチルアミン塩で構成され得る。
保存料を添加して微生物の成長を予防することができ、これは典型的には、約0.2%〜1.0%(w/v)の範囲内で存在する。本発明による使用に適した保存料は、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3−ペンタノールおよびm−クレゾールを含む。
「安定剤」として公知の場合もある等張化剤は、組成物における液体の張度を調整または維持するために存在することができる。タンパク質および抗体等、大型の荷電生体分子と共に使用される場合、これは、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、これにより、分子間および分子内相互作用の可能性を減らすことができるため、多くの場合「安定剤」と命名される。等張化剤は、他の成分の相対量を考慮に入れつつ、約0.1%〜約25重量%の間または約1〜約5重量%の間のいずれかの量で存在することができる。一部の実施形態において、等張化剤は、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトール等、多価糖アルコール、三価またはより高次の糖アルコールを含む。
追加的な賦形剤は、次のうち1種または複数として機能し得る薬剤を含む:(1)増量剤、(2)溶解促進剤(solubility enhancer)、(3)安定剤および(4)変性または容器壁への接着を予防する薬剤。斯かる賦形剤は、次のものを含む:多価糖アルコール(上に列挙);アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リシン、オルニチン、ロイシン、2−フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン等、アミノ酸;スクロース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイノシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等、有機糖または糖アルコール;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α−モノチオグリセロールおよびチオ硫酸ナトリウム等、含硫還元剤;ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチンまたは他の免疫グロブリン等、低分子量タンパク質;ポリビニルピロリドン等、親水性ポリマー;単糖(例えば、キシロース、マンノース、フルクトース、グルコース);二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロース);ラフィノース等、三糖;ならびにデキストリンまたはデキストラン等、多糖。
非イオン性界面活性剤または洗剤(「湿潤剤」としても公知)は、治療剤の可溶化を助けると共に、撹拌誘導性凝集から治療タンパク質を保護するために存在することができ、これは、活性治療タンパク質または抗体の変性を引き起こすことなく、製剤をせん断表面応力に曝露させることもできる。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml〜約1.0mg/mlまたは約0.07mg/ml〜約0.2mg/mlの範囲内で存在する。一部の実施形態において、非イオン性界面活性剤は、約0.001%〜約0.1%w/vまたは約0.01%〜約0.1%w/vまたは約0.01%〜約0.025%w/vの範囲内で存在する。
適した非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(20、40、60、65、80等)、ポロクサマー(polyoxamer)(184、188等)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)−20、TWEEN(登録商標)−80等)、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素付加ヒマシ油10、50および60、グリセロールモノステアレート、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース(celluose)ならびにカルボキシメチルセルロースを含む。使用することができるアニオン性洗剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウムを含む。カチオン性洗剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含む。
製剤は、in vivo投与に使用するためには、無菌でなければならない。製剤は、滅菌濾過膜を通した濾過により滅菌することができる。本明細書における治療用組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針により穿刺可能な共栓を有するバイアルに入れられる。
投与の経路は、適した方式での長期間に及ぶ単一または複数のボーラスまたは注入、例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、病巣内もしくは関節内経路による注射または注入、局所的投与、吸入または徐放もしくは延長放出手段による等、公知かつ受け入れられた方法に従う。
本明細書における製剤は、処置されている特定の適応症の必要に応じて、1種より多くの活性化合物、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有する化合物を含有することもできる。その代わりにまたはそれに加えて、組成物は、細胞傷害性薬剤、サイトカインまたは成長阻害薬剤を含むことができる。斯かる分子は、意図される目的に有効な量で、組み合わせて適切に存在する。
III.製造品またはキット
別の態様において、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)または本明細書に記載されているアゴニストを含む製造品またはキットが提供される。製造品またはキットは、本発明の方法における抗体またはアゴニストの使用のための指示をさらに含むことができる。よって、ある特定の実施形態では、製造品またはキットは、個体における線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)および/または前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を処置または予防するための方法であって、個体に、ヒトシグレック−8に結合する抗シグレック−8抗体またはアゴニストの有効量を投与するステップを含む方法における、ヒトシグレック−8に結合する抗シグレック−8抗体またはアゴニストの使用のための指示を含む。
ある特定の実施形態では、製造品は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む医薬と、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症および眼線維症からなる群から選択される線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む。一部の実施形態では、肺線維症は、特発性肺線維症である。一部の実施形態では、肺線維症は、慢性閉塞性肺疾患に関連する。ある特定の実施形態では、製造品は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む医薬と、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症およびウイルス誘発線維症からなる群から選択される線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む。一部の実施形態では、機械的誘発線維症は、人工呼吸器誘発肺線維症である。一部の実施形態では、薬物誘発線維症は、ブレオマイシン誘発肺線維症である。ある特定の実施形態では、製造品は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む医薬と、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症および後腹膜腔線維症からなる群から選択される線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む。一部の実施形態では、添付文書は、処置が、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)を有する個体における1種または複数種の症状(本明細書に記載されている1種または複数種の症状等)を低下させることにおいて有効であることをさらに示す。
ある特定の実施形態では、製造品は、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストを含む医薬と、ブレオマイシン誘発肺臓炎、慢性過敏性肺臓炎、真性多血症、本態性血小板血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、未熟児網膜症および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される前線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む。一部の実施形態では、添付文書は、処置が、ヒトシグレック−8に結合する抗体またはアゴニストの投与後に、ベースラインと比べて前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を有する個体における1種または複数種の症状(本明細書に記載されている1種または複数種の症状等)を低下させることにおいて有効であることをさらに示す。ある特定の実施形態では、個体は、ヒトである。
製造品またはキットは、容器をさらに含むことができる。適した容器は、例えば、ボトル、バイアル(例えば、デュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(シングルまたはデュアルチャンバーシリンジ等)および試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチック等、種々の材料でできていてよい。容器は、製剤を保持する。
製造品またはキットは、容器上にあるかまたは容器に付随する、製剤の再構成および/または使用に関する指示を示すことができるラベルまたは添付文書をさらに含むことができる。ラベルまたは添付文書は、製剤が、個体における線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)および/または前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を処置または予防するための、皮下、静脈内または他の投与様式に有用であるまたは意図されることをさらに示すことができる。製剤を保持する容器は、使い捨てバイアルであっても多重使用バイアルであってもよく、これは、再構成された製剤の反復投与を可能にする。製造品またはキットは、適した希釈液を含む第2の容器をさらに含むことができる。製造品またはキットは、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、シリンジおよび添付文書と使用指示を含む、商業的、治療的および使用者の見地から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
具体的な実施形態において、本発明は、単一用量投与単位のためのキットを提供する。斯かるキットは、シングルまたはマルチチャンバーの両方の予め充填されたシリンジを含む、治療抗体の水性製剤の容器を含む。例示的な予め充填されたシリンジは、Vetter GmbH、ドイツ、ラーフェンスブルクから入手できる。
本発明は、また、個体における線維性疾患(例えば、特発性肺線維症)および/または前線維性疾患(例えば、慢性過敏性肺臓炎)を処置または予防するための、1種または複数種の医薬(例えば、第2の医薬)と組み合わせた、本明細書に記載されている抗シグレック−8抗体(例えば、ヒトシグレック−8に結合する抗体)またはヒトシグレック−8に結合するアゴニストを提供する。一部の実施形態において、本明細書における製造品またはキットは、第2の医薬を含む容器を任意選択でさらに含み、抗シグレック−8抗体またはアゴニストは、第1の医薬であり、製造品またはキットは、ラベルまたは添付文書に、第2の医薬の有効量により個体を処置するための指示をさらに含む。
別の実施形態において、自動注射装置における投与のための、本明細書に記載されている製剤を含む製造品またはキットが本明細書において提供される。自動注射器は、起動すると、患者または管理者の追加的な必要な動作なしでその内容物を送達する注射装置として説明することができる。送達速度が一定でなければならず、送達時間が僅かな間よりも長い場合、これは、治療用製剤のセルフメディケーションに特に適する。
本明細書に記載されている態様および実施形態は、単なる説明目的のものであり、これを踏まえた様々な修正または変更が、当業者に示唆され、これが本願の精神および範囲内ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
本発明は、次の実施例を参照することによって、より十分に理解されるであろう。しかし、実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。本明細書に記載されている実施例および実施形態が、単なる説明目的であり、これを踏まえた様々な修正または変更が、当業者に示唆され、本願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるべきであることが理解される。
(実施例1)
ヒト線維症のマウスモデルにおける抗シグレック−8抗体の活性
ブレオマイシン誘発肺線維症は、ヒト線維症の実験モデルである。肥満細胞、好酸球および好塩基球の表面においてヒトシグレック−8を選択的に発現させた、シグレック−8トランスジェニックマウスにおいて、ブレオマイシン誘発肺線維症モデルにおける抗シグレック−8抗体の活性を調べた。m2E2枯渇抗体は、ADCC活性によって好酸球および肥満細胞を死滅させる、マウスIgG2aアイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体である。m2E2阻害抗体は、好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体である。
シグレック−8トランスジェニックマウスに、総計3回、腹腔内注射により3mg/kgのマウス抗シグレック−8抗体(m2E2枯渇抗体またはm2E2阻害抗体)またはマウスIgG1アイソタイプ対照抗体を投与した。抗体の第1の投与は、ブレオマイシン投与の4日前(−4日目)に行われ、第2の投与は、ブレオマイシン投与と同じ日(0日目)に為され、第3の投与は、ブレオマイシン投与の4日後(4日目)に為された。1.5U/kgブレオマイシンの中咽頭投与は、表示の抗シグレック−8抗体またはアイソタイプ対照抗体の第1の投与の4日後に行われた。抗体またはブレオマイシンを投与されていないマウスの対照群(ナイーブ)をその後の解析に使用した。アイソタイプ対照抗体、m2E2枯渇抗体またはm2E2阻害抗体で処置された、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウス、およびブレオマイシン誘発肺線維症がない無処置シグレック−8トランスジェニックマウスの体重を、試験経過にわたってモニターした。ブレオマイシンの投与の7日後に、処置されたマウスから気管支肺胞洗浄(BAL)液を収集し、コラーゲン、白血球、細胞鑑別(cell differential)およびサイトカイン評価のために処理した。BAL液を1,000rpmで4℃にて5分間遠心分離し、その後の使用のために上清を移した。BAL細胞ペレットを2mLの1×BD Pharm Lyse(商標)溶解バッファー(BD Biosciences)に再懸濁して、赤血球を溶解した。2%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加して溶解反応を停止し、その後、細胞を再度1,000rpmで遠心分離した。その後の使用のために細胞を移した。
血球計数器およびトリパンブルー排除方法を使用して、BAL液から得た細胞ペレット試料における白血球を計数して、死細胞および生細胞をモニターした。BAL液の細胞ペレット試料からサイトスピン(Cytospin)を調製し、ギムザ染色により分染し、視覚的細胞形態に基づき、有核BAL免疫細胞(すなわち、好中球、マクロファージ、単球、リンパ球および好酸球)の百分率数(differential count)のために高倍率下で数え上げた。マウスm2E2枯渇抗体およびマウスm2E2阻害抗体は両者共に、アイソタイプ対照抗体を与えたブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスと比較して、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスの気管支肺胞空間への好中球流入を有意に阻害した(図1)。
コラーゲン定量のため、Sircol(商標)コラーゲンアッセイ(Biocolor Life Science Assays、英国)を使用して、BAL上清の160μl試料を解析した。マウスm2E2枯渇抗体およびマウスm2E2阻害抗体は両者共に、アイソタイプ対照抗体を与えたブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスと比較して、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスの気管支肺胞空間におけるコラーゲン蓄積を予防した(図2Aおよび図2B)。
ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスは、試験経過にわたって体重減少を経験した(図3)。しかし、マウスm2E2枯渇抗体またはマウスm2E2阻害抗体の投与は、ブレオマイシン誘発体重減少からシグレック−8トランスジェニックマウスを有意に保護した(図3)。ブレオマイシン誘発肺線維症を有する抗シグレック−8抗体処置マウスにおける体重変化は、ブレオマイシン誘発肺線維症がない無処置マウスにおける体重変化に匹敵した(図3)。
サイトカイン解析のため、定量のためのLuminex(登録商標)サイトカインマウス32プレックスパネル(血清、血漿および組織培養上清におけるサイトカイン、ケモカインおよび増殖因子を定量するために設計されたパネル;Life Technologies、CA)、潜在型TGF−β前駆体型パネルおよびTGF−β活性型パネルを使用して、BAL液試料から得た上清の160μl試料を解析した。マウスm2E2枯渇抗体およびマウスm2E2阻害抗体は両者共に、アイソタイプ対照抗体を与えたブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスと比較して、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスの気管支肺胞液におけるサイトカイン放出を阻害した(図4)。
BAL収集後に、病理組織学的解析のため、およそ0.5mLの10%中性緩衝ホルマリン(NBF)によって肺を膨張させた。肺検体における線維症の程度に基づき、獣医病理学者により、各マウスから得た肺の顕微鏡視野にAshcroftスコア(0〜8の尺度でグレード分け)を与えた(図5)。Ashcroftスコアリングの記載については、Ashcroftら、J. Clin. Pathol.、1998年、41巻:467〜470頁を参照されたい。
(実施例2)
ヒト線維症のマウスモデルにおける抗シグレック−8抗体処置
ブレオマイシン誘発肺線維症を示すシグレック−8トランスジェニックマウスの抗シグレック−8抗体処置を調べた。シグレック−8トランスジェニックマウスは、肥満細胞、好酸球および好塩基球の表面においてヒトシグレック−8を選択的に発現した。m2E2阻害抗体は、活性化好酸球を死滅させ、肥満細胞活性を阻害する、マウスIgG1アイソタイプを有するマウスモノクローナル抗シグレック−8抗体である。
シグレック−8トランスジェニックマウスに、腹腔内注射により、3mg/kgのマウス抗シグレック−8抗体(m2E2阻害抗体)またはマウスIgG1アイソタイプ対照抗体を投与した。1.5U/kgブレオマイシンの中咽頭投与の3日後(3日目)に、m2E2阻害抗体またはアイソタイプ対照抗体の第1の投与を行った。抗体またはブレオマイシンを投与されていないマウスの対照群(ナイーブ)をその後の解析のために使用した。ブレオマイシンの投与の7日後に、処置されたマウスからBAL液を収集し、コラーゲン、白血球および細胞鑑別評価のために処理した。BAL液を1,000rpmで4℃にて5分間遠心分離し、その後の使用のために上清を移した。BAL細胞ペレットを2mLの1×BD Pharm Lyse(商標)溶解バッファー(BD Biosciences)に再懸濁して、赤血球を溶解した。2%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したリン酸緩衝食塩水(PBS)を添加して溶解反応を停止し、その後、細胞を1,000rpmで再度遠心分離した。その後の使用のために細胞を移した。
血球計数器およびトリパンブルー排除方法を使用して、BAL液から得た細胞ペレット試料における白血球を計数して、死細胞および生細胞をモニターした。BAL液の細胞ペレット試料からサイトスピンを調製し、ギムザ染色で分染し、視覚的細胞形態に基づき、有核BAL免疫細胞(すなわち、好中球、マクロファージ、単球、リンパ球および好酸球)の百分率数のために高倍率下で数え上げた。マウスm2E2阻害抗体の投与は、アイソタイプ対照抗体を与えたブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスと比較して、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスの気管支肺胞空間への好中球流入を有意に阻害した(図6)。
コラーゲン定量のため、Sircol(商標)コラーゲンアッセイ(Biocolor Life Science Assays、英国)を使用して、上清の160μl試料を解析する。
サイトカイン解析のため、定量のためのLuminex(登録商標)サイトカインマウス32プレックスパネル(血清、血漿および組織培養上清におけるサイトカイン、ケモカインおよび増殖因子を定量するために設計されたパネル;Life Technologies、CA)、潜在型TGF−β前駆体型パネルおよびTGF−β活性型パネルを使用して、BAL液試料から得た上清の160μl試料を解析する。
BAL収集後に、病理組織学的解析のため、およそ0.5mLの10%中性緩衝ホルマリン(NBF)により肺を膨張させる。肺検体における線維症の程度に基づき、獣医病理学者によって、各マウス由来の肺の顕微鏡視野にAshcroftスコア(0〜8の尺度でグレード分け)を与える。Ashcroftスコアリングの記載については、Ashcroftら、J. Clin. Pathol.、1998年、41巻:467〜470頁を参照されたい。
アイソタイプ対照抗体またはm2E2阻害抗体で処置した、ブレオマイシン誘発肺線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウス、およびブレオマイシン誘発肺線維症がない無処置シグレック−8トランスジェニックマウスの体重を試験経過にわたってモニターする。
(実施例3)
インプラント誘発線維症のヒト化マウスモデルにおける抗シグレック−8抗体の活性
ヒト造血幹細胞(HSC)生着後に豊富なヒト肥満細胞を生成することができる免疫不全マウスについて記載されている(Tanakaら、J Immunol.、2012年、188巻(12号):6145〜55頁)。NSG−SGM3と命名されたマウス系統(The Jackson Laboratory)は、IL−2受容体ガンマ鎖遺伝子を欠失した、非肥満糖尿病/重症複合免疫不全症(NOD SCID)マウスの派生系統である(NSGマウス)。NSG−SGM3マウスは、ヒト造血幹細胞による生着を容易にするための、3種のヒトサイトカイン(幹細胞因子[SCF]、IL−3およびGM−CSF)のさらなるトランスジェニックである。NSG−SGM3マウスの生着後に、ヒトCD34細胞は、ヒト好酸球および増強された数のヒト肥満細胞を生成する。生着したNSG−SGM3マウスにおける両方の細胞型は、ヒト末梢血および組織から単離された対応する細胞型におけるレベルに匹敵するレベルでシグレック−8を発現する。よって、このようなマウスは、in vivoにおける抗シグレック−8抗体の活性の評価のためのモデルを提供する。
植え込まれた物体によって誘発された線維症における抗シグレック−8抗体の効果を評価するために、このようなヒト化マウスにポリスチレンビーズを植え込み、抗シグレック−8抗体による予防的または治療的処置後に線維症の発症をモニターした。
材料と方法
500μm平均直径のポリスチレンビーズをPhosphorex(Hopkinton、MA)から購入し、ヒト化マウスに植え込んだ。マウスにおけるポリスチレンビーズ植え込みの記載については、Veishら、Nat. Mater.、2015年、14巻:643〜651頁を参照されたい。ヒト化マウスを麻酔し、その腹部を剃毛し殺菌した。腹部の正中に沿って0.5mm切開を入れ、鈍的切開を使用して腹膜内層を露出させた。次に、腹膜壁を鉗子で掴み、白線に沿って0.5〜1mm切開を入れた。続いて、PBSに懸濁したポリスチレンビーズを無菌ピペットに充填し、切開を通して腹膜腔に植え込んだ。5−0先端テーパーポリジオキサノン(PDS II)吸収性縫合糸を使用して切開を閉鎖し、創傷クリップおよび組織接着剤を使用して、切開にわたって皮膚を閉鎖した。ポリスチレンビーズの植え込みの1日前(−1日目)に、またはポリスチレンビーズの植え込みの7日後(7日目)に、100μgの抗シグレック−8抗体(c2E2 IgG4)またはアイソタイプ適合対照ヒト抗体(hIgG4)を、14日間試験の終結まで4日毎に(q4d)腹腔内注射により投与した。したがって、100μgのc2E2 IgG4を、予防的処置試験群(n=5匹のマウス)のために−1、3、7および11日目に投与した、または治療的処置試験群(n=5匹のマウス)のために7および11日目に投与した。100μgのhIgG4を、対照試験群(n=5匹のマウス)のために−1、3、7および11日目に投与した。c2E2 IgG4抗体は、ヒトIgG4アイソタイプおよびマウス2E2可変ドメインを有するキメラモノクローナル抗シグレック−8抗体である。
試験14日目にマウスを安楽死させた。腹膜洗浄を行って浮遊性腹腔内細胞をすすぎ出して採取するために、5ml容量の氷冷PBSを先ず注射した。次に、腹部皮膚および腹膜壁に沿って切開を入れ、クレブスバッファーを使用して、採取のため腹部からペトリ皿へとポリスチレンビーズを洗い出した。全てのビーズを洗い出した後、または腹腔内組織へと直接的に線維形成した場合は手動で回収した後、イメージング前の下流処理のために、採取したビーズを50mLコニカルチューブ内に移した。腹膜洗浄およびビーズ回収後に、残っている線維形成した腹腔内組織も解析のため切除した。腹膜腔から回収したポリスチレンビーズおよび組織を、クレブスバッファーを使用して穏やかに洗浄し、位相差顕微鏡検査のためペトリ皿に移した。Bicolor Sircol可溶性コラーゲンアッセイを使用して、腹膜洗浄上清(ビーズおよび組織の除去後に残っている上清)の画分においてコラーゲン定量を行った。
抗マウスアルファ平滑筋アクチン抗体(Sigma Aldrich、St.Louis MO)を使用して、アルファ平滑筋アクチンを定量した。免疫蛍光イメージングを使用して、Veishら、Nat. Mater.、2015年、14巻:643〜651頁に記載されている通りに、ビーズに付着した細胞集団を決定した。4%パラホルムアルデヒドを使用して、マウスから回収した材料を4℃で一晩固定した。ポリスチレンビーズおよび会合した細胞をクレブスバッファーで2回洗浄し、0.1%Triton X100溶液を使用して30分間透過処理し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液を使用して1時間ブロッキングした。次に、BSA中DAPI(500nM)および抗マウスアルファ平滑筋アクチン抗体(1:200希釈)からなる免疫染色カクテル溶液において、ビーズを1時間インキュベートした。染色後に、ビーズを0.1%Tween20溶液で3回洗浄し、50%グリセロール溶液中に維持した。次に、ビーズをガラス底の皿に移し、Nikon Eclipse Tiシリーズ顕微鏡を使用して撮像した。Nikon Elements画像解析ソフトウェアにより、画像をさらに解析した。
結果
ヒト化マウスの腹膜に14日間植え込まれた無菌ポリスチレンビーズは、コラーゲン沈着の増加(図7)およびビーズに会合した筋線維芽細胞の蓄積(図8)によって示される通り、線維症を誘発した。ビーズ植え込み1日前の抗シグレック−8抗体によるヒト化マウスの予防的処置は、コラーゲン沈着およびビーズ上の筋線維芽細胞の蓄積を著しく低下させた。抗シグレック−8抗体処置は、ビーズ植え込み7日後に抗体で処置したヒト化マウスにおけるコラーゲン沈着および筋線維芽細胞の蓄積も阻害した。
(実施例4)
強皮症および全身性線維症のマウスモデルにおける抗シグレック−8抗体の活性
ブレオマイシンの皮下投与は、全身性硬化症を含む強皮症の実験モデルを提供する。皮下経路によりブレオマイシンで処置したマウスは、皮膚および肺の両方の線維症を発症する。肥満細胞、好酸球および好塩基球の表面においてヒトシグレック−8が選択的に発現されるシグレック−8トランスジェニックマウスにおいて、ブレオマイシン誘発皮膚線維症モデルにおける抗シグレック−8抗体の活性を調べた。
シグレック−8トランスジェニックマウスに、治療的試験群において総計6用量(+7日目)または予防的試験群において8用量(−1日目)、腹腔内注射により3mg/kgのマウスIgG1アイソタイプ対照抗体またはマウス抗シグレック−8抗体(m2E2 IgG1抗体;m2E2阻害抗体としても公知)を投与した。予防的試験群のため、抗体の投与は、ブレオマイシン投与の1日前(−1日目)に行われ、その後、初回ブレオマイシン投与後3、7、11、15、19、23および27日目に投与された。治療的試験群のため、抗体の投与は、初回ブレオマイシン投与後7日目(7日目)に行われ、その後、11、15、19、23および27日目に投与された。マウス当たり0.1 IUブレオマイシンを、0日目に、および28日目まで2日毎に、各マウスの背中に皮下投与した。抗体またはブレオマイシンを投与されていないマウスの対照群(ナイーブ)をその後の解析のために使用した。アイソタイプ対照抗体またはm2E2阻害抗体で処置した、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスの肺重量をブレオマイシン投与後30日間モニターした(30日目)。ブレオマイシン誘発皮膚線維症がない無処置シグレック−8トランスジェニックマウスを、この30日間のモニタリング期間モニターした。30日目に、シグレック−8トランスジェニックマウスの病変由来の肺および皮膚の部分を、製造業者の指示に従ってBioVisionキットを使用して、コラーゲンの成分であるヒドロキシプロリンのレベルの解析のために処理した。残っている病変皮膚を、RNeasyキット(Qiagen)を使用して、RNA抽出のために処理し、製造業者の指示に従ってHigh Capacity cDNAキット(Applied Biosystems)を使用して、cDNAへと逆転写した。初回ブレオマイシン投与の15日後(15日目)、20日後(20日目)、25日後(25日目)および30日後(30日目)に、ブレオマイシン誘発皮膚病変の科学的写真を撮った。アイソタイプ対照抗体またはm2E2阻害抗体で処置した、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウス、およびブレオマイシン誘発皮膚線維症がない無処置シグレック−8トランスジェニックマウスにおいて、視覚的皮膚スコア(visual dermal score)を写真から計算した。
ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスは、初回ブレオマイシン投与の30日後(30日目)に、肺重量増加を経験した。m2E2阻害抗体の投与は、アイソタイプ対照抗体を与えたブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスと比較して、肺重量増からシグレック−8トランスジェニックマウスを有意に保護および阻害した(図9)。ヒドロキシプロリン定量のため、シグレック−8トランスジェニックマウス肺および皮膚の部分を、製造業者の指示(BioVision)に従ってホモジナイズした。アイソタイプ対照抗体で処置した、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスと比較して、肺および皮膚の両方において、m2E2阻害抗体の投与により、ヒドロキシプロリンの低下が観察された(図10Aおよび図10B)。抗シグレック−8抗体処置マウスにおけるヒドロキシプロリンの低下は、ブレオマイシン誘発皮膚線維症がない無処置マウスにおいて観察されるヒドロキシプロリン含量に匹敵した。遺伝子発現解析のため、ブレオマイシン誘発皮膚線維症におけるシグレック−8トランスジェニックマウスの皮膚から得られるcDNAを、予め設計された遺伝子特異的プライマーを使用して、線維化促進メディエーターであるインターロイキン−13(IL−13)およびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)の定量的PCR(qPCR)(BioRad)解析に使用した。マウスm2E2阻害抗体は、アイソタイプ対照抗体を与えたブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスと比較して、ブレオマイシン誘発皮膚病変におけるIL−13およびTGFβの両方の発現を有意に阻害した(図11Aおよび図11B)。
ブレオマイシン誘発皮膚病変を線維症に関して視覚的に定量し、皮膚病変の線維化重症度に基づき1〜3のスコアを与えた(1は重症度が低く、3は最も重症度が高い)。m2E2阻害抗体で処置した、ブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスは、アイソタイプ対照抗体を与えたブレオマイシン誘発皮膚線維症を有するシグレック−8トランスジェニックマウスと比較して、より低い視覚的皮膚スコアを有した(図12)。
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Claims (42)

  1. 個体における線維性疾患を処置または予防する方法における使用のための組成物であって、ヒトシグレック−8に結合する抗体の有効量を含み、該個体が、ヒトである、組成物であって、ここで、該抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、該線維性疾患が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症、眼線維症、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症、ウイルス誘発線維症、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症、後腹膜腔線維症、および、デュピュイトラン拘縮からなる群から選択される、組成物
  2. 前記肺線維症が、特発性肺線維症である、請求項に記載の使用のための組成物。
  3. 前記肺線維症が、慢性閉塞性肺疾患に関連する、請求項に記載の使用のための組成物。
  4. 前記機械的誘発線維症が、人工呼吸器誘発肺線維症である、請求項に記載の使用のための組成物。
  5. 前記強皮症が、全身性硬化症である、請求項に記載の使用のための組成物。
  6. 前記線維性疾患を有する前記個体における1種または複数種の症状が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて低下する、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  7. 肥満細胞活性化が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて前記個体において低下する、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  8. 前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  9. 前記抗体が、IgG1抗体である、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  10. 前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  11. 前記抗体が、ADCC活性を改善する、Fc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の使用のための組成物。
  12. 前記抗体の重鎖のうち少なくとも1または2つが、フコシル化していない、請求項1〜1のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  13. 前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  14. 前記抗体が、Fab、Fab’−SH、Fv、scFvおよび(Fab’)断片からなる群より選択される抗体断片である、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  15. 前記抗体が、ヒトIgG Fc領域を含む重鎖Fc領域を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  16. 前記ヒトIgG Fc領域が、ヒトIgG1またはヒトIgG4を含む、請求項5に記載の使用のための組成物。
  17. 前記ヒトIgG4が、アミノ酸置換S228Pを含み、前記アミノ酸残基が、Kabatで規定されたEUインデックスに従って番号付けられる、請求項6に記載の使用のための組成物。
  18. 前記抗体が、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  19. 前記抗体が、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  20. 前記抗体が、該抗体および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物中に存在する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  21. 個体におけるブレオマイシン誘発肺線維症を処置または予防する方法における使用のための組成物であって、ヒトシグレック−8に結合する抗体の有効量を含み、該個体が、ヒトである、組成物。
  22. 前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項21に記載の使用のための組成物。
  23. 前記抗体が、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項21または22に記載の使用のための組成物。
  24. 前記抗体の重鎖のうち少なくとも1または2つが、フコシル化していない、請求項21〜23のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  25. ヒトシグレック−8に結合する抗体を含む医薬と、線維性疾患を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む、該線維性疾患を処置または予防するための製造品であって、ここで、該個体が、ヒトであり、ここで、該抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、該線維性疾患が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心臓線維症、脾臓線維症、眼線維症、機械的誘発線維症、インプラント誘発線維症、放射線誘発線維症、薬物誘発線維症、ウイルス誘発線維症、嚢胞性線維症、がん関連線維症、粥状動脈硬化、骨髄の線維症、強皮症、縦隔線維症、後腹膜腔線維症、および、デュピュイトラン拘縮からなる群から選択される、製造品
  26. 記肺線維症が、特発性肺線維症であるか、または慢性閉塞性肺疾患に関連する、請求項25に記載の製造品。
  27. 記機械的誘発線維症が、人工呼吸器誘発肺線維症である、請求項25に記載の製造品。
  28. 記強皮症が、全身性硬化症である、請求項25に記載の製造品。
  29. 前記添付文書は、前記医薬の投与が、ヒトシグレック−8に結合する前記抗体の投与後に、ベースラインと比べて前記線維性疾患を有する前記個体における1種または複数種の症状を低下させることにおいて有効であることをさらに示す、請求項2528のいずれか一項に記載の製造品。
  30. 前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項2529のいずれか一項に記載の製造品。
  31. 前記抗体が、IgG1抗体である、請求項2530のいずれか一項に記載の製造品。
  32. 前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を改善するように操作されており、必要に応じて、該抗体が、ADCC活性を改善する、Fc領域における少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、請求項251のいずれか一項に記載の製造品。
  33. 前記抗体の重鎖のうち少なくとも1または2つが、フコシル化していない、請求項252のいずれか一項に記載の製造品。
  34. 前記抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項253のいずれか一項に記載の製造品。
  35. 前記抗体が、Fab、Fab’−SH、Fv、scFvおよび(Fab’)断片からなる群より選択される抗体断片である、請求項253のいずれか一項に記載の製造品。
  36. 前記抗体が、ヒトIgG1またはヒトIgG4 Fc領域を含む重鎖Fc領域を含み、必要に応じて、該ヒトIgG4 Fc領域が、アミノ酸置換S228Pを含み、前記アミノ酸残基が、Kabatで規定されたEUインデックスに従って番号付けられる、請求項2535のいずれか一項に記載の製造品。
  37. 前記抗体が、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項2534のいずれか一項に記載の製造品。
  38. 前記抗体が、配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号76のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項2534のいずれか一項に記載の製造品。
  39. ヒトシグレック−8に結合する抗体を含む医薬と、ブレオマイシン誘発肺線維症を処置または予防するための、該医薬の投与を必要とする個体における該医薬の投与のための指示を含む添付文書とを含む、該ブレオマイシン誘発肺線維症を処置または予防するための製造品であって、ここで、該個体が、ヒトである、製造品。
  40. 前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号16もしくは21から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項39に記載の製造品。
  41. 前記抗体が、配列番号75のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号76もしくは77から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項39または40に記載の製造品。
  42. 前記抗体の重鎖のうち少なくとも1または2つが、フコシル化していない、請求項39〜41のいずれか一項に記載の製造品。
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