JP6845018B2 - ビール様発泡性飲料及びその製造方法 - Google Patents

ビール様発泡性飲料及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6845018B2
JP6845018B2 JP2017000079A JP2017000079A JP6845018B2 JP 6845018 B2 JP6845018 B2 JP 6845018B2 JP 2017000079 A JP2017000079 A JP 2017000079A JP 2017000079 A JP2017000079 A JP 2017000079A JP 6845018 B2 JP6845018 B2 JP 6845018B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
beer
raw material
concentration
fermentation
furaneol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017000079A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018108050A (ja
Inventor
大和 伊藤
大和 伊藤
慎介 伊藤
慎介 伊藤
道代 竹田
道代 竹田
規央 土井
規央 土井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Breweries Ltd
Original Assignee
Asahi Breweries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Breweries Ltd filed Critical Asahi Breweries Ltd
Priority to JP2017000079A priority Critical patent/JP6845018B2/ja
Publication of JP2018108050A publication Critical patent/JP2018108050A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6845018B2 publication Critical patent/JP6845018B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Alcoholic Beverages (AREA)
  • Non-Alcoholic Beverages (AREA)
  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)

Description

本発明は、黄桃様の香気が付与されたビール様発泡性飲料及びその製造方法に関する。
ビールや発泡酒等のビール様発泡性飲料は、消費者の嗜好の多様化にともない、多種多様の商品が上市されている。特に、近年は、サクランボやキイチゴ、柑橘類、パイナップル、マスカットなどの様々なフルーツを副原料として用いたいわゆるフルーツビールが好まれている。フルーツビールは、副原料として使用したフルーツの香りや風味を有しており、一般的に苦味も弱く、苦味の苦手な人にも飲み易い。
フルーツ自体を副原料とする代わりに香料を添加することにより、フルーツ様の香気を有するビール様発泡性飲料を製造することも行われている。例えば、特許文献1には、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、リナロール、β−シトロネロール、ネロール、へプタン酸、イソブチルイソブチラート、及びシス−リナロールオキシドをそれぞれ特定の濃度範囲となるように含有させることにより、みかん様の香りを有するビール様発泡性飲料が製造できることが記載されている。
また、香料を直接添加するのではなく、製造条件を調整することによって、フルーツ様の香気を付与する方法も知られている。特に、酢酸イソアミルは、バナナ様の香りを有しており、フルーティさを付与する醸造香の香気成分の一種であり、酢酸イソアミル含有量を高めることによってより香気の改善されたビール様発泡性飲料が得られる。酢酸イソアミルは発酵工程でロイシンが酵母により代謝されて産生される。そこで、例えば、特許文献2には、発酵原料としてロイシン又はロイシン残基を含むアミノ酸源を用い、発酵工程で酵母に酢酸イソアミルを産生させることにより、酢酸イソアミル含有量が高く、香味が改善されたビール様発泡性飲料が製造できることが記載されている。また、特許文献3には、発酵原料として大麦麦芽を用い、下面発酵酵母で発酵させることにより、酢酸イソアミルと4−ヴィニルグアイアコールを多く含有し、ヴァイツェンビール様のフルーティ香を有するビール様発泡性飲料が製造できることが記載されている。
特許第5836572号公報 特開2012−105673号公報 特開2012−38号公報
本発明は、黄桃様の香気が付与されたビール様発泡性飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、飲料中のフラネオール(2,5-dimethyl-4-hydroxy-3(2H)furanone)濃度と酢酸イソアミル濃度を特定の範囲内に調整することにより、ビール様発泡性飲料に黄桃様の香気を付与できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明に係るビール様発泡性飲料、ビール様発泡性飲料の製造方法、及びビール様発泡性飲料の香味改善方法は、下記[1]〜[14]である。
[1] フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L、及び酢酸イソアミル濃度が5.0〜12.0mg/Lであることを特徴とする、ビール様発泡性飲料。
[2] ビール様発泡性飲料のフラネオール濃度と酢酸イソアミル濃度は、[酢酸イソアミル濃度(mg/L)]/[フラネオール濃度(mg/L)]が6.0〜10.0の範囲内である、前記[1]のビール様発泡性飲料。
[3] 発酵飲料である、前記[1]又は[2]のビール様発泡性飲料。
[4] 発酵原料液に酵母を接種して発酵させる発酵工程を有し、
前記発酵原料液の二糖類と三糖類の総含有量に対する単糖類の含有量の比率(質量)が0.3〜1.5であり、
前記発酵原料液の単糖類と二糖類と三糖類の総含有量に対するフルクトースの含有量の比率が、3%(質量)以上であり、
前記発酵原料液のロイシン濃度が15mg/L以上であり、
前記発酵原料が、単糖類の含有量が80%(質量)以上かつフルクトースの含有量が40%(質量)以上である液糖を含有することを特徴とする、ビール様発泡性飲料の製造方法。
[5] 前記単糖類が、グルコース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上である、前記[4]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[6] 前記発酵工程において、ロイシン消費量が15mg/100mL以上になるまで発酵させる、前記[4]又は[5]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[7] 前記発酵原料液のロイシン濃度が15〜35mg/Lである、前記[4]〜[6]のいずれかのビール様発泡性飲料の製造方法。
[8] 前記発酵工程の前に、
発酵原料と水とを含む混合物を糖化処理し、得られた糖化液を煮沸処理する仕込工程と、
前記仕込工程により得られた煮沸済の糖化液から少なくとも一部の固形分を除去し、前記発酵原料液を調製する固液分離処理工程と、
を有する、前記[4]〜[7]のいずれかのビール様発泡性飲料の製造方法。
[9] 前記糖化処理において、グルコアミラーゼを用いる、前記[8]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[10] 前記発酵原料が穀物原料を含有しており、
前記混合物におけるグルコアミラーゼの濃度が、穀物原料の含有量に対して、1.00g/kg〜3.00g/kgである、前記[9]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[11] 前記煮沸処理における煮沸時間が60分間以上である、前記[8]〜[10]のいずれかのビール様発泡性飲料の製造方法。
[12] フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L、及び酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lであるビール様発泡性飲料を製造する、前記[8]〜[11]のいずれかのビール様発泡性飲料の製造方法。
[13] 前記混合物に、さらにロイシン又はロイシン残基を含むアミノ酸源を含有させる、前記[8]〜[12]のいずれかのビール様発泡性飲料の製造方法。
[14] ビール様発泡性飲料に、フラネオール及び酢酸イソアミルを、フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L、酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lとなるように添加することにより、黄桃様の香気を付与することを特徴とする、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。
本発明により、黄桃様の香気が付与されたビール様発泡性飲料を提供できる。
本発明及び本願明細書におけるビール様発泡性飲料とは、ビールらしさ(香味上ビールを想起させる呈味)を有する発泡性飲料を意味する。本発明におけるビール様発泡性飲料のアルコール濃度は限定されず、0.5容量%以上のアルコール飲料であってもよく、0.5容量%未満のいわゆるノンアルコール飲料であってもよい。また、本発明におけるビール様発泡性飲料は、発酵原料を酵母により発酵させる発酵工程を経て製造される発酵ビール様発泡性飲料であってもよく、発酵工程を経ずに製造される非発酵ビール様発泡性飲料であってもよい。具体的には、ビール、発泡酒、ノンアルコールビール等が挙げられる。その他、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。
なお、アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。例えば、原料用アルコール、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等を用いることができる。
本発明に係るビール様発泡性飲料は、フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L、及び酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lであることを特徴とする。フラネオールは、イチゴやパイナップルに含まれている甘い香りの香気成分であり、酢酸イソアミルは、バナナ様の香りの香気成分である。驚くべきことに、フラネオールと酢酸イソアミルをそれぞれ特定の濃度範囲で含有させることにより、それぞれの香りの質とは全く異なる黄桃様の香気を有するビール様発泡性飲料とすることができる。そこで、本発明に係るビール様発泡性飲料は、黄桃様の香気を体感するために飲用されることができる。なお、一般的なビール様発泡性飲料におけるフラネオール濃度と酢酸イソアミル濃度はいずれも低く、特許文献2や3に記載されているように、酢酸イソアミル濃度のみを高めたビール様発泡性飲料や、フラネオール濃度のみを高めたビール様発泡性飲料はあるものの、両者の濃度がいずれも高いビール様発泡性飲料は従来知られていなかった。
本発明に係るビール様発泡性飲料のフラネオール濃度は、0.5〜1.2mg/Lの範囲内であれば特に限定されるものではない。より強い黄桃様の香気がえられることから、本発明に係るビール様発泡性飲料のフラネオール濃度としては、0.5mg/L以上1.0mg/L以下であることが好ましく、0.6mg/L以上1.0mg/L以下であることがより好ましく、0.7mg/L以上1.0mg/L以下であることがさらに好ましい。
本発明に係るビール様発泡性飲料の酢酸イソアミル濃度は、3.0〜12.0mg/Lの範囲内であれば特に限定されるものではない。より強い黄桃様の香気がえられることから、本発明に係るビール様発泡性飲料の酢酸イソアミル濃度としては、3.0mg/L以上10.0mg/L以下であることが好ましく、4.0mg/L以上10mg/L以下であることがより好ましく、5.0mg/L以上10mg/L以下であることがさらに好ましく、5.5mg/L以上10mg/L以下であることがよりさらに好ましい。
本発明に係るビール様発泡性飲料のフラネオールと酢酸イソアミルの含量比率、すなわち、[酢酸イソアミル濃度(mg/L)]/[フラネオール濃度(mg/L)]は、6.0〜10.0の範囲内であることが好ましく、8.0〜10.0の範囲内であることがより好ましい。フラネオールと酢酸イソアミルの含量比率を前記範囲内にすることにより、黄桃様の香気をより強く付与することが可能である。
ビール様発泡性飲料中のフラネオールの濃度は、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析)により測定することができる。
また、ビール様発泡性飲料中の酢酸イソアミルの濃度は、ビール分析の国際基準とされているEBC(European Brewery Convention)のAnalytica−EBC標準法に準じて、GCを用いて測定することができる。
本発明に係るビール様発泡性飲料のフラネオールの濃度は、例えば、フラネオールを添加剤として添加することにより調整することができる。添加剤として添加するフラネオールは、合成されたフラネオールでもよく、天然物から抽出・精製されたフラネオールでもよい。また、フラネオールをその他の成分と共に含有する香料であってもよい。
本発明に係るビール様発泡性飲料の酢酸イソアミルの濃度は、例えば、酢酸イソアミルを添加剤として添加することにより調整することができる。添加剤として添加する酢酸イソアミルは、合成された酢酸イソアミルでもよく、天然物から抽出・精製された酢酸イソアミルでもよい。また、酢酸イソアミルをその他の成分と共に含有する香料であってもよい。
発酵工程においては、酵母により様々な化合物が生産されるため、発酵液には多種多様な化合物が豊富に含まれる。このため、比較的組成が均質な原料を混合して調製される非発酵ビール様発泡性飲料よりも、発酵ビール様発泡性飲料は、発酵に由来する多種多様な化合物が豊富に含まれることになり、味に厚みが増し、コクが強くなりやすい。そこで、本発明に係るビール様発泡性飲料としては、非発酵ビール様発泡性飲料よりも、発酵ビール様発泡性飲料のほうが好ましい。中でも、ビールらしい風味に優れるため、発酵原料の少なくとも一部に麦芽を用いる発酵ビール様発泡性飲料が好ましく、発酵原料に対する麦芽使用比率が20%以上である発酵ビール様発泡性飲料がより好ましく、発酵原料に対する麦芽使用比率が50%以上である発酵ビール様発泡性飲料がさらに好ましい。
本発明に係るビール様発泡性飲料が発酵ビール様発泡性飲料の場合には、飲料のフラネオールの濃度は、フラネオールを原料として直接添加せずとも、製造条件を適宜調整することによっても調整することができる。フラネオールは、発酵工程において酵母によりフルクトースから合成される。このため、例えば、発酵に供される発酵原料液中のフルクトース含有量を高めることにより、最終的に飲料中のフラネオールの濃度を高めることができる。また、発酵原料液を調製する仕込工程における煮沸処理時間を調整することによっても、飲料中のフラネオールの濃度を調整することができる。
本発明に係るビール様発泡性飲料が発酵ビール様発泡性飲料の場合には、飲料の酢酸イソアミルの濃度は、酢酸イソアミルを原料として直接添加せずとも、製造条件を適宜調整することによっても調整することができる。酢酸イソアミルは、発酵時に、ロイシンが酵母に資化される途中の段階で生成されたイソアミルアルコールとアセチルCoAのアシル基を基質として生成される。このため、例えば、発酵中のロイシン消費量を高めることによって、酢酸イソアミル濃度の高い発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。また、発酵中のロイシン消費量は、ロイシンを多く含む発酵原料液を用いたり、発酵度を高くしたり、ロイシンに対する資化性の高い酵母を使用することによって高めることができる。
このように、発酵原料液中のフルクトース含有量が多いほど、酵母により産生されるフラネオールの量が多くなり、発酵原料液中のグルコースの含有量が多いほど、酵母による発酵度が高くなり、酵母による酢酸イソアミルの産生量も多くなる。すなわち、発酵原料液中のグルコース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上の単糖類の含有量が多いほど、フラネオール濃度と酢酸イソアミル濃度の両方が高い発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。
フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L及び酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lである発酵ビール様発泡性飲料を製造するためには、発酵原料液の二糖類と三糖類の総含有量に対する単糖類の含有量の比率([単糖類の総含有量(質量)]/([二糖類の総含有量(質量)]+[三糖類の総含有量(質量)]))(以下、「単糖類含有比率」ということがある。)は、0.3〜1.5に調節されていることが好ましい。単糖類含有比率が0.3以上になるほどグルコースやフルクトースの含有量が多い発酵原料液を用いることにより、発酵時におけるフラネオールと酢酸イソアミルの産生が効率よく行われ、両者の濃度がいずれも高い発酵ビール様発泡性飲料を製造しやすい。本発明に係るビール様発泡性飲料の製造においては、発酵原料液の単糖類含有比率が、0.5〜1.5であることが好ましく、0.8〜1.5であることがより好ましく、1.0〜1.5であることがさらに好ましい。
中でも、本発明に係るビール様発泡性飲料を製造するための発酵原料液としては、単糖類含有比率が0.3〜1.5であり、かつ単糖類と二糖類と三糖類の総含有量に対するフルクトースの含有量の比率([フルクトースの含有量(質量)]/([単糖類の総含有量(質量)]+[二糖類の総含有量(質量)]+[三糖類の総含有量(質量)]))(以下、「フルクトース含有比率」ということがある。)が、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることがさらに好ましい。また、当該発酵原料液としては、単糖類含有比率が0.3〜1.5であり、かつ単糖類と二糖類と三糖類の総含有量に対するグルコースの含有量の比率([グルコースの含有量(質量)]/([単糖類の総含有量(質量)]+[二糖類の総含有量(質量)]+[三糖類の総含有量(質量)]))(以下、「グルコース含有比率」ということがある。)が、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましい。
本発明に係るビール様発泡性飲料が発酵ビール様発泡性飲料の場合には、飲料中のフラネオール及び酢酸イソアミルの濃度が特定の範囲内となるように調整する以外は、一般的な発酵ビール様発泡性飲料と同様にして製造できる。一般的な発酵ビール様発泡性飲料は、仕込(発酵原料液調製)、発酵、貯酒、濾過の工程で製造することができる。
まず、仕込工程(発酵原料液調製工程)として、発酵原料と水とを含む混合物を糖化処理し、得られた糖化液を煮沸処理する。具体的には、まず、発酵原料と原料水とを含む混合物を調製して加温し、発酵原料の澱粉質を糖化させる。発酵原料としては、穀物原料のみを用いてもよく、糖質原料のみを用いてもよく、両者を混合して用いてもよい。
穀物原料としては、例えば、大麦や小麦、これらの麦芽等の麦類、米、トウモロコシ、大豆等の豆類、イモ類等が挙げられる。穀物原料は、穀物シロップ、穀物エキス等として用いることもできるが、粉砕処理して得られる穀物粉砕物として用いることが好ましい。穀物類の粉砕処理は、常法により行うことができる。穀物粉砕物としては、麦芽粉砕物、コーンスターチ、コーングリッツ等のように、粉砕処理の前後において通常なされる処理を施したものであってもよい。麦芽粉砕物は、大麦、例えば二条大麦を、常法により発芽させ、これを乾燥後、所定の粒度に粉砕したものであればよい。また、本発明において用いられる穀物原料としては、1種類の穀物原料であってもよく、複数種類の穀物原料を混合したものであってもよい。例えば、主原料として麦芽粉砕物を、副原料として米やトウモロコシの粉砕物を用いてもよい。
糖質原料としては、例えば、液糖等の糖類が挙げられる。単糖類含有比率の高い発酵原料液を調製しやすいことから、本発明において使用される液糖としては、単糖類の含有量が多いものが好ましく、単糖類の含有量が80%(質量)以上である液糖を用いることがより好ましい。中でも、グルコース及びフルクトースの総含有量が80%(質量)以上である液糖を用いることが好ましく、フルクトースの含有量が40%(質量)以上、グルコースの含有量が30%(質量)以上であり、かつグルコース及びフルクトースの総含有量が80%(質量)以上である液糖を用いることが特に好ましい。
発酵工程において酵母が充分量の酢酸イソアミルを産生できるように、発酵工程に供される発酵原料液には充分量のロイシン又はロイシン残基を含むアミノ酸源が含有されていることが好ましい。ロイシン等は、発酵開始前に発酵原料液に直接添加してもよいが、仕込工程において副原料として添加することも好ましい。ロイシン又はロイシン残基を含むアミノ酸源は、糖化処理前に発酵原料等と混合させてもよく、糖化処理中に混合させてもよく、煮沸処理中に混合してもよい。
仕込工程におけるロイシン又はロイシン残基を含むアミノ酸源の添加量は、発酵工程において酵母が、最終飲料中の濃度が3.0mg/L以上となる酢酸イソアミルを産生するために必要な量のロイシンを含有する発酵原料液を調製するために充分な量であればよい。例えば、発酵原料液のロイシン濃度が15mg/L以上であれば、最終的に発酵ビール様発泡性飲料中の酢酸イソアミル濃度を3.0mg/L以上に調整しやすい。本発明においては、酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lの発酵ビール様発泡性飲料を効率よく調製できるため、発酵原料液のロイシン濃度を15〜35mg/Lに調製することが好ましい。
ロイシン残基を含むアミノ酸源としては、ロイシンを含むタンパク質やその分解物等が挙げられる。タンパク質分解物は、ロイシン含有量が比較的高いタンパク質の分解物であることが好ましいが、植物由来、動物由来又は微生物由来のいずれのタンパク分解物でもよい。タンパク分解物は、例えば、原料となる植物等の組織や培養液から、抽出・精製分離後、熱や圧力による分解、酸やアルカリによる分解、酵素による分解等を行うことにより得られたものを用いることができる。本発明において用いられるタンパク質分解物としては、例えば、大豆タンパク分解物等が挙げられる。
本発明においては、使用する副原料としては、その他、ホップ、酵母エキス、水溶性食物繊維、甘味料、苦味料、果汁、着色料、香草、香料等が挙げられる。
水溶性食物繊維とは、水に溶解し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。本発明において用いられる水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、大豆食物繊維、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げられる。これらの水溶性食物繊維は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
甘味料としては、砂糖であってもよく、比較的甘味度の低いものであってもよく、高甘味度甘味料であってもよい。比較的甘味度の低い甘味料としては、具体的には、多糖類、甘味系アミノ酸が挙げられる。多糖類とは、3以上の単糖が重合した糖質を意味する。多糖類は、主にその大きさによって、でんぷん、デキストリン、及びオリゴ糖に大別される。オリゴ糖は、3〜10個程度の単糖が重合した糖質であり、デキストリンは、でんぷんを加水分解して得られる糖質であって、オリゴ糖よりも大きなものを指す。甘味系アミノ酸としては、アラニンやグリシンが挙げられ、アラニンが好ましい。高甘味度甘味料としては、アセスルファムカリウム、ネオテーム、アスパルテーム、スクラロース、ステビア、酵素処理ステビア等が挙げられる。これらの甘味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
苦味料としては、製品である発酵ビール様発泡性飲料において、ビールと同質若しくは近似する苦味を呈するものであれば特に限定されるものではなく、ホップ中に含まれている苦味成分であってもよく、ホップには含まれていない苦味成分であってもよい。当該苦味料としては、具体的には、マグネシウム塩、カルシウム塩、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、ナリンジン、クワシン、イソα酸、テトライソα酸、β酸の酸化物、キニーネ、モモルデシン、クエルシトリン、テオブロミン、カフェイン等の苦味付与成分、及びゴーヤ、センブリ茶、苦丁茶、ニガヨモギ抽出物、ゲンチアナ抽出物、キナ抽出物等の苦味付与素材が代表的に挙げられる。これらの苦味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
着色料としては、例えば、カラメル色素等が挙げられる。
香料としては、例えば、ビールフレーバー、ビール香料、ホップ香料等が挙げられる。
仕込工程においては、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤を添加することが好ましい。これらの酵素により、発酵原料中の非資化性糖を、資化性糖への分解反応が促進され、麦芽使用比率が高い発酵原料を用いた場合でも、非資化性糖の含有量が低く抑えられた発酵原料液を調製することができる。
糖化処理は、穀物原料等由来の酵素や、別途添加した酵素を利用して行う。糖化処理時の温度や時間は、用いた穀物原料等の種類、発酵原料全体に占める穀物原料の割合、添加した酵素の種類や混合物の量、目的とする発酵ビール様発泡性飲料の品質等を考慮して、適宜調整される。例えば、糖化処理は、穀物原料等を含む混合物を35〜70℃で20〜90分間保持する等、常法により行うことができる。糖化処理の時間を調節することにより、糖化効率を制御し、最終的に得られる発酵ビール様発泡性飲料の糖質含有量を所望の範囲内に調整することもできる。
本発明においては、仕込工程において、特にグルコアミラーゼを添加して糖化処理を行うことが好ましい。グルコアミラーゼにより発酵原料中の三糖類を充分に分解することができ、単糖類の含有量を高めることができる。例えば、発酵原料が麦芽破砕物等の穀物原料を含有している場合には、発酵原料と水とを含有する混合物に対して、当該混合物におけるグルコアミラーゼの濃度が、穀物原料の含有量に対して、1.00g/kg〜3.00g/kgとなるように添加することが好ましい。グルコアミラーゼの添加量を前記範囲内にすることにより、発酵原料中の三糖類が充分に分解され、グルコースやフルクトース含有量の高い発酵原料液が得られる。
糖化処理後に得られた糖化液を煮沸することにより、煮汁(糖化液の煮沸物)を調製することができる。糖化液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。また、この糖化液の濾液の替わりに、麦芽エキスに温水を加えたものを用い、これを煮沸してもよい。煮沸方法及びその条件は、適宜決定することができる。
煮沸処理前又は煮沸処理中に、香草等を適宜添加することにより、所望の香味を有する発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。特にホップは、煮沸処理前又は煮沸処理中に添加することが好ましい。ホップの存在下で煮沸処理することにより、ホップの風味・香気成分を効率よく煮出することができる。ホップの添加量、添加態様(例えば数回に分けて添加するなど)及び煮沸条件は、適宜決定することができる。
糖化液の煮沸時間が長くなるほど、得られた煮汁から調製された発酵原料液を発酵して得られる発酵ビール様発泡性飲料中のフラネオール濃度が高くなる。つまり、発酵ビール様発泡性飲料のフラネオール濃度は、仕込工程における糖化液の煮沸時間を調節することにより調整することができる。フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/Lの発酵ビール様発泡性飲料を調製するために、糖化液の煮沸時間は60分間以上にすることが好ましく、60〜120分間とすることがより好ましい。
仕込工程により得られた煮汁(煮沸済の糖化液)には、沈殿により生じたタンパク質等の粕が含まれている。そこで、発酵工程前に、固液分離処理工程として、当該煮汁から少なくとも一部の固形分を除去することが好ましい。固形分を除去する固液分離処理は、一般的には、ワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去することにより行う。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50〜80℃程度で行われる。粕を除去した後の煮汁(濾液)は、プレートクーラー等により適切な発酵温度まで冷却する。この粕を除去した後の煮汁をそのまま発酵原料液としてもよく、除去後の煮汁を所望のエキス濃度に調整した液を発酵原料液としてもよい。
次いで、発酵工程として、発酵原料液に酵母を接種して発酵させる。発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよいが、大型醸造設備への適用が容易であることから、下面発酵酵母であることが好ましい。
発酵工程におけるアルコール発酵を促進して最終発酵度を高めることが好ましい。酵母による発酵が盛んになるほど、フラネオールと酢酸イソアミルの産生量が多くなる。特に、酢酸イソアミルの産生量が充分になることから、本発明に係るビール様発泡性飲料の製造のためには、ロイシン消費量が、15mg/100mL以上になるまで発酵させることが好ましく、18mg/100mL以上になるまで発酵させることがより好ましく、20mg/100mL以上になるまで発酵させることがさらに好ましい。
さらに、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、目的の発酵ビール様発泡性飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が0.4〜0.6μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。また、所望のアルコール濃度とするために、濾過前又は濾過後に適量の加水を行って希釈してもよい。得られた発酵ビール様発泡性飲料は、通常、充填工程により瓶詰めされて、製品として出荷される。
その他、酵母による発酵工程以降の工程において、例えばアルコール含有蒸留液と混和することにより、酒税法におけるリキュール類に相当する発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。アルコール含有蒸留液の添加は、アルコール濃度の調整のための加水前であってもよく、加水後であってもよい。添加するアルコール含有蒸留液は、より好ましい麦感を有する発酵ビール様発泡性飲料を製造し得ることから、麦スピリッツが好ましい。
発酵ビール様発泡性飲料におけるフラネオールと酢酸イソアミルの濃度を、直接フラネオールと酢酸イソアミルを原料として添加する場合には、添加したフラネオール等が製造工程中で失われることを抑制するために、フラネオール等は、仕込工程の煮沸処理後に添加することが好ましく、発酵工程以降の工程で添加することがより好ましく、貯酒工程又はその後の濾過工程において添加することがさらに好ましい。
本発明に係るビール様発泡性飲料が非発酵ビール様発泡性飲料の場合には、飲料中のフラネオールと酢酸イソアミルは、原料として添加したものである。このため、添加剤として使用するフラネオールと酢酸イソアミルの量を適宜調整することによって、フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L及び酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lである非発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。
フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L及び酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lである非発酵ビール様発泡性飲料は、例えば、フラネオールを含む添加剤と酢酸イソアミルを含む添加剤の使用量を調節しつつ、全ての原料を混合して調合液を調製する調製工程と、前記調製工程により得られた調合液に炭酸ガスを加えるガス導入工程を有する製造方法により製造することができる。
非発酵ビール様発泡性飲料を製造するための原料としては、前記の発酵ビール様発泡性飲料の原料のうち、発酵原料以外のものを適宜選択して用いることができる。さらに、大豆サポニン、アルギン酸エステル、キラヤサポニン等の起泡剤を用いることも好ましい。
まず、調製工程において、原料を混合することにより、調合液を調製する。調製工程においては、炭酸ガス以外の全ての原料を混合した調合液を調製することが好ましい。各原料を混合する順番は特に限定されるものではない。原料水に、全ての原料を同時に添加してもよく、先に添加した原料を溶解させた後に残る原料を添加する等、順次原料を添加してもよい。また、例えば、原料水に、固形(例えば粉末状や顆粒状)の原料及びアルコールを混合してもよく、固形原料を予め水溶液としておき、これらの水溶液、及びアルコール、必要に応じて原料水を混合してもよい。
調製工程において調製された調合液に、不溶物が生じた場合には、ガス導入工程の前に、当該調合液に対して濾過等の不溶物を除去する処理を行うことが好ましい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、濾過法、遠心分離法等の当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。本発明においては、不溶物は濾過除去することが好ましく、珪藻土濾過により除去することがより好ましい。
次いで、ガス導入工程として、調製工程により得られた調合液に炭酸ガスを加える。これにより、非発酵ビール様発泡性飲料を得る。炭酸を加えることによって、ビールと同様の爽快感が付与される。なお、炭酸ガスの添加は、常法により行うことができる。例えば、調製工程により得られた調合液、及び炭酸水を混合してよく、調製工程により得られた調合液に炭酸ガスを直接加えて溶け込ませてもよい。
炭酸ガスを添加した後、得られた非発酵ビール様発泡性飲料に対して、さらに濾過等の不溶物を除去する処理を行ってもよい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。
次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。
<酢酸イソアミル濃度の測定>
以降の実施例において、麦汁や飲料中の酢酸イソアミルの濃度は、Analytica−EBC標準法に準じて、GCを用いて測定した。
<フラネオール濃度の測定>
以降の実施例において、麦汁や飲料中のフラネオールの濃度は、以下の方法により行った。
まず、0.5gの試料を19.5gの超純水に溶解し、内部標準物質として100ppmのcis−3−ヘプテノールを5μL添加した。ここで、検量線用試料については、500ppmのフラネオール標準品溶液を0、12.5、25、50μL添加した。
次いで、20mLのジクロロメタンを添加して室温で45分間振とうし、香気成分を抽出した。その後、ジクロロメタンを回収し、無水硫酸ナトリウムを適量添加して脱水した後、窒素パージにて約200μLにまで濃縮したものをGC−MSに供し、以下に示すGC−MS定量条件にて定量した。
GC−MS定量条件;
測定機器:Agilent6890NGC−5973MSD(Agilent社製)
カラム:DB−WAX(60m×0.25mm(ID)×0.25μm(F.T))(J&W社製)
温度プログラム:38℃(10min)→3℃/min→230℃(20min)→5℃/min→245℃(5min)
注入口温度/注入量/モード:230℃/1μL/パルスドスプリットレス(パルス圧:250KPa、until 1.01m)
キャリアガス:He(1.0mL/min)
イオン源温度:230℃
四重極温度:150℃
イオン化法:EI、70eV
イオン検出法:Scan
定量イオン:128
定性イオン:43.57
ISの定量イオン:96
<糖類の測定>
以降の実施例において、麦汁や飲料、液糖中の各糖類の濃度は、以下の方法により行った。
まず、脱炭酸した麦汁又は飲料を適宜蒸留水で希釈した後、フィルター濾過したものを、HPLC分析に供した。HPLCの測定条件は以下の通りとした。
測定機器:HPLC装置(島津製作所製)(コミュニケーションバスモジュール:CMB−20A、インジェクター:SIL−20AC HT、RI検出器:RID−20A、カラムオーブン:CTO−20AC)
カラム:Aminex HPX−42A carbohydorate Column(BIO−RAD社製)
ガードカラム:脱塩カートリッジ・脱塩用システムホルダー(BIO−RAD社製)
カラム温度:80℃(Tmax=85℃)
移動相:蒸留水(脱気)
流量:0.5mL/分(P.Max:50kgf/cm
サンプル量:5μL
[実施例1]
酢酸イソアミル及びフラネオールの標品を、炭酸水、ビール市販品A、及びビール市販品Bにそれぞれ表1〜3に記載の濃度に調整されるように添加した。得られた各サンプルのうち、酢酸イソアミルのみを添加したサンプルについてはバナナ様の香りについて、フラネオールのみを添加したサンプルについてはフラネオール特有の甘い香りについて、酢酸イソアミルとフラネオールの両方を添加したサンプルについては黄桃様の香りについて、それぞれ官能評価した。官能評価は、10名の専門パネリストが、各サンプルをそれぞれブラインドで官能試飲を行い、5段階(1:悪い、2:やや悪い、3:普通、4:やや良好、5:良好)で、質と強度の両方を総合的に評価した。評価結果を表1〜3に示す。
Figure 0006845018
Figure 0006845018
Figure 0006845018
炭酸水に酢酸イソアミル及び/又はフラネオールを添加したサンプルの結果から、酢酸イソアミルとフラネオールを特定の範囲内で含有させることにより、黄桃様の香りが付与されることがわかった。また、同様の結果が、2種類の市販品のビールでも得られたことから、炭酸水のみならず、ビール様発泡飲料においても、酢酸イソアミルとフラネオールを特定の範囲内で含有させることにより、黄桃様の香りが付与されることがわかった。
[実施例2]
麦芽550kgを1200Lの湯に混合し、50℃で30分間保持した後、添加する酵素と糖化温度、糖化時間を適宜調整し、単糖類と二糖類と三糖類の総量に対する単糖類の割合が20質量%以上となるように糖化させた3種の麦汁(サンプル1〜3)を調製した。なお、サンプル1及び2には、グルコアミラーゼを添加して酵素処理を行い、サンプル3にはグルコアミラーゼは使用しなかった。得られた麦汁を濾過した後、ホップ1200gを添加し、90分間麦汁煮沸を実施した。煮沸後の麦汁をワールプールで清澄化させたものを発酵原料液とした。得られた発酵原料液を冷却させた後、酵母を添加し、10℃で10日間発酵させた(主発酵)。主発酵後、さらに7日間熟成させた後、0℃に冷却し、ビール濾過を実施して最終製品たるビール様発泡飲料を得た。
濾過後の麦汁(サンプル1〜3)と主発酵終了時点の発酵液(酒下し)のフルクトース、グルコース、マルトース、及びマルトトリオースの濃度を測定し、単糖類含有比率([単糖類の総含有量(質量)]/([二糖類の総含有量(質量)]+[三糖類の総含有量(質量)])を算出した。結果を表4に示す。この結果、グルコアミラーゼ処理を行ったサンプル1及び2の麦汁では、グルコアミラーゼ処理を行わなかったサンプル3に比べてフルクトースとグルコースの含有量が多く、マルトトリオースの含有量が少なかった。
Figure 0006845018
また、各サンプルの主発酵中のロイシン消費量(mg/100mL)、アミノ態窒素消費量(mg/100mL)を測定した。測定結果を表5に示す。なお、ロイシン消費量とアミノ態窒素消費量は、以下の通りに測定した。
<ロイシンの分析方法及びロイシン消費量について>
各サンプル中のロイシン含有量を測定し、各麦汁の発酵前サンプル中のロイシン含有量から発酵後サンプル中のロイシン含有量を差し引いた値を、ロイシン消費量(mg/100mL)とした。各サンプル中のロイシン含有量は、L−8800A Amino Acid Analyzar(HITACHI社製)によって測定した。
<アミノ態窒素の分析方法及びアミノ態窒素消費量について>
各サンプル中のアミノ態窒素含有量を測定し、各麦汁の発酵前サンプル中のアミノ態窒素含有量から発酵後サンプル中のアミノ態窒素含有量を差し引いた値を、アミノ態窒素消費量(mg/100mL)とした。各サンプル中のアミノ態窒素含量は、アミノ態窒素自動測定装置(BL−TEC社製)によって測定した。
また、各サンプルの主発酵終了時点の発酵液(酒下し)の酢酸イソアミル及びフラネオールの濃度を測定し、さらに実施例1と同様にして黄桃様の香りの官能評価を行った。酢酸イソアミル及びフラネオールの濃度の測定結果と官能評価の評点と評価人数(評価した専門パネリストの数)を表5に示す。
Figure 0006845018
さらに、最終的に得られたビール様発泡性飲料の酢酸イソアミル及びフラネオールの濃度を測定し、さらに実施例1と同様にして黄桃様の香りの官能評価を行った。酢酸イソアミル及びフラネオールの濃度の測定結果と官能評価の評点と評価人数(評価した専門パネリストの数)を表6に示す。
Figure 0006845018
いずれのサンプルでも、酢酸イソアミル濃度が3.0mg/L以上、フラネオール濃度が0.5mg/L以上であり、好ましい黄桃様の香りがした(評点が3以上)。特に、麦汁中のグルコース含有量が高かったサンプル1及び2では、主発酵中のロイシン消費量が高く、得られた発酵液の酢酸イソアミルの含有量も高く、黄桃様の香りも非常に良好であった。これらの結果から、単糖類の含有量の高い麦汁を発酵させることによって酢酸イソアミルとフラネオールの両方の濃度の高い発酵液が得られること、発酵度が上がることによって、アミノ酸消費量も増加し、ロイシンが代謝されることによって酢酸イソアミルの産生量も増加すること、がわかった。
[実施例3]
麦芽380kgを1000Lの湯に混合し、50℃で30分間保持した後、65℃で30分間糖化させて麦汁を調製した。得られた麦汁を濾過した後、ホップ1100g及び液糖160Lを添加し、90分間麦汁煮沸を実施した。液糖としては、表7に記載の高マルトース液糖又は果糖ブドウ糖液糖を用いた。煮沸後の麦汁をワールプールで清澄化させたものを発酵原料液とした。得られた発酵原料液を冷却させた後、酵母を添加し、10℃で10日間発酵させた(主発酵)。主発酵後、さらに7日間熟成させた後、0℃に冷却し、ビール濾過を実施して最終製品たるビール様発泡飲料を得た。
Figure 0006845018
実施例1と同様にして得られたビール様発泡飲料の黄桃様の香りの官能評価を行ったところ、高マルトース液糖を用いたビール様発泡飲料は、黄桃様の香りがほとんどせず、穀物臭がしていたのに対して、果糖ブドウ糖液糖を用いたビール様発泡飲料は、非常に良好な黄桃様の香りがした。また、両ビール様発泡飲料の酢酸イソアミル及びフラネオールの濃度を測定したところ、高マルトース液糖を用いたビール様発泡飲料は、フラネオール濃度が0.5mg/L未満、酢酸イソアミル濃度が3.0mg/L未満であったのに対して、果糖ブドウ糖液糖を用いたビール様発泡飲料は、0.5mg/L以上、酢酸イソアミル濃度が3.0mg/L以上であった。特に、フラネオール濃度は、高マルトース液糖を用いたビール様発泡飲料は0.2mg/Lであったのに対して、果糖ブドウ糖液糖を用いたビール様発泡飲料は0.56mg/Lであった。これらの結果から、フルクトース含有量の高い液糖を発酵原料の少なくとも一部として用いることにより、フラネオール濃度の高いビール様発泡性飲料が得られることがわかった。
[実施例4]
麦芽380kgを1000Lの湯に混合し、50℃で30分間保持した後、65℃で30分間糖化させて麦汁を調製した。得られた麦汁を濾過した後、ホップ1100g及び液糖60Lを添加し、120分間麦汁煮沸を実施した。液糖としては、表7に記載の果糖ブドウ糖液糖を用いた。煮沸開始から0、30、60、90、及び120分目に麦汁の一部をサンプリングし、フラネオールの濃度を測定した。測定結果を表8に示す。この結果、麦汁の煮沸時間が長くなるほど、麦汁中のフラネオール濃度が高くなり、フラネオール濃度の高いビール様発泡性飲料が得られることがわかった。
Figure 0006845018

Claims (14)

  1. フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L、及び酢酸イソアミル濃度が5.0〜12.0mg/Lであることを特徴とする、ビール様発泡性飲料。
  2. ビール様発泡性飲料のフラネオール濃度と酢酸イソアミル濃度は、[酢酸イソアミル濃度(mg/L)]/[フラネオール濃度(mg/L)]が6.0〜10.0の範囲内である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
  3. 発酵飲料である、請求項1又は2に記載のビール様発泡性飲料。
  4. 発酵原料液に酵母を接種して発酵させる発酵工程を有し、
    前記発酵原料液の二糖類と三糖類の総含有量に対する単糖類の含有量の比率(質量)が0.3〜1.5であり、
    前記発酵原料液の単糖類と二糖類と三糖類の総含有量に対するフルクトースの含有量の比率が、3%(質量)以上であり、
    前記発酵原料液のロイシン濃度が15mg/L以上であり、
    前記発酵原料が、単糖類の含有量が80%(質量)以上かつフルクトースの含有量が40%(質量)以上である液糖を含有することを特徴とする、ビール様発泡性飲料の製造方法。
  5. 前記単糖類が、グルコース及びフルクトースからなる群より選択される1種以上である、請求項4に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  6. 前記発酵工程において、ロイシン消費量が15mg/100mL以上になるまで発酵させる、請求項4又は5に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  7. 前記発酵原料液のロイシン濃度が15〜35mg/Lである、請求項4〜6のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  8. 前記発酵工程の前に、
    発酵原料と水とを含む混合物を糖化処理し、得られた糖化液を煮沸処理する仕込工程と、
    前記仕込工程により得られた煮沸済の糖化液から少なくとも一部の固形分を除去し、前記発酵原料液を調製する固液分離処理工程と、
    を有する、請求項4〜7のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  9. 前記糖化処理において、グルコアミラーゼを用いる、請求項8に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  10. 前記発酵原料が穀物原料を含有しており、
    前記混合物におけるグルコアミラーゼの濃度が、穀物原料の含有量に対して、1.00g/kg〜3.00g/kgである、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  11. 前記煮沸処理における煮沸時間が60分間以上である、請求項8〜10のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  12. フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L、及び酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lであるビール様発泡性飲料を製造する、請求項8〜11のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  13. 前記混合物に、さらにロイシン又はロイシン残基を含むアミノ酸源を含有させる、請求項8〜12のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
  14. ビール様発泡性飲料に、フラネオール及び酢酸イソアミルを、フラネオール濃度が0.5〜1.2mg/L、酢酸イソアミル濃度が3.0〜12.0mg/Lとなるように添加することにより、黄桃様の香気を付与することを特徴とする、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。
JP2017000079A 2017-01-04 2017-01-04 ビール様発泡性飲料及びその製造方法 Active JP6845018B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017000079A JP6845018B2 (ja) 2017-01-04 2017-01-04 ビール様発泡性飲料及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017000079A JP6845018B2 (ja) 2017-01-04 2017-01-04 ビール様発泡性飲料及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018108050A JP2018108050A (ja) 2018-07-12
JP6845018B2 true JP6845018B2 (ja) 2021-03-17

Family

ID=62843927

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017000079A Active JP6845018B2 (ja) 2017-01-04 2017-01-04 ビール様発泡性飲料及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6845018B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7335069B2 (ja) * 2018-12-28 2023-08-29 サッポロビール株式会社 ビールテイスト飲料の製造方法及びビールテイスト飲料

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4260207B1 (ja) * 2007-11-30 2009-04-30 麒麟麦酒株式会社 低糖質ビール風味アルコール飲料の製造方法
CN101878292A (zh) * 2007-12-14 2010-11-03 三得利控股株式会社 高麦芽酚及高呋喃酮含量的啤酒风味饮料
JP5658489B2 (ja) * 2010-06-16 2015-01-28 アサヒビール株式会社 発酵麦芽飲料の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018108050A (ja) 2018-07-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6649946B2 (ja) 発酵ビール様発泡性飲料
TWI695885B (zh) 類啤酒發泡性飲料
JP6898143B2 (ja) 発酵麦芽飲料
JP6757136B2 (ja) ビール様発泡性飲料
JPWO2017038437A1 (ja) ビール様発泡性飲料の製造方法
JP6841674B2 (ja) ビール様発泡性飲料
JP6777791B1 (ja) 発酵飲料、及び発酵飲料の後味改善方法
JP2018186716A (ja) 発酵麦芽飲料
JP6698121B2 (ja) ビール様発泡性飲料及びビール様発泡性飲料ののどのひっかかりを増強する方法
JP6845018B2 (ja) ビール様発泡性飲料及びその製造方法
JP7364772B1 (ja) ビール様発泡性飲料
JP2018099140A (ja) ビール様飲料
JP7348379B1 (ja) ビール様発泡性飲料
JP7201769B2 (ja) 発酵麦芽飲料の製造方法
JP6867542B2 (ja) 発酵飲料、及び発酵飲料の後味改善方法
JP7270862B1 (ja) ビール様発泡性飲料
JP7368585B1 (ja) 発酵ビールテイスト飲料及びその製造方法
JP6317531B1 (ja) ビール様飲料
JP6969893B2 (ja) 発酵麦芽飲料の製造方法
JP2019208493A (ja) 発泡性飲料及び発泡性飲料ののどのひっかかりを増強する方法
JP2024093269A (ja) ビール様発泡性飲料

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170105

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191203

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200923

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201104

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201221

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210202

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210225

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6845018

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250