JP6841296B2 - 絶縁被膜形成用処理液及び絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法並びに絶縁被膜付き電磁鋼板 - Google Patents

絶縁被膜形成用処理液及び絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法並びに絶縁被膜付き電磁鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成するための絶縁被膜形成用処理液及びこれを用いた絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法並びに絶縁被膜付き電磁鋼板に関する。なかでも本発明は、耐熱性、占積率に優れた絶縁被膜付き電磁鋼板を製造するための絶縁被膜形成用処理液及びこれを用いた絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法並びに絶縁被膜付き電磁鋼板に関するものである。
電磁鋼板は、回転機、静止器の鉄心材料として広く利用されている軟磁性材料である。特に、方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料で、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものである。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、二次再結晶焼鈍の際にいわゆるゴス(Goss)方位と称される(110)〔001〕方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。
一般に、方向性電磁鋼板には、最終仕上げ焼鈍時に形成されるフォルステライトを主体とする下地被膜と、その上にリン酸塩系のガラスを主体とする絶縁被膜が形成される。かかる絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板は、主に変圧器の鉄心材料として用いられる。
変圧器鉄心の製作方法には、大きく分けて2種類の方法がある。その一つは所定の形状と寸法に調製した方向性電磁鋼板を積層して鉄心を製作する積み鉄心法であり、他の一つは所定の形状と寸法に調製した方向性電磁鋼板を円筒状に巻き取り、鉄心を製作する巻き鉄心法である。
このうち後者の巻き鉄心法は、次に述べるような工程を経る。まず、方向性電磁鋼板を所定の幅に剪断後、円筒形に巻き取り、次いで、この円筒状に巻き取ったもの(以後、コアと呼ぶ)に曲げ加工を施し、所定の形態に成形する。この時、曲げ加工に伴い、鋼板に機械的歪みが導入されるために導入された歪により鉄心特性が劣化してしまう。そのため、歪みを取り除くためにコアに対し焼鈍が施される。焼鈍されたコアは一旦、展開される。展開された焼鈍済み鋼板は銅線等の間に挿入され変圧器となる。このコア展開と銅線への巻き込みからなる一連の作業はレーシング作業と呼ばれる。
レーシング作業は変圧器製造工程において生産性を左右する重要な工程である。この作業の際、コア展開に時間を要すると生産性が低下してしまう。そのため、焼鈍されたコアは展開し易いことが望まれている。ところが、時として焼鈍済みコアにおいて鋼板同士が焼き付きと呼ぶ一種の焼き付き(スティッキング)現象を起こすことがある。鋼板同士が焼き付きを起こすとコア展開に多大の労力と時間が必要となり、生産性を低下させてしまう。
また、かかる事象は変圧器鉄心の層間抵抗を低下させ、ひいては磁気特性の劣化につながるものであるから、避けなければならない。積層された鋼板間の絶縁が不十分である場合、渦電流損失により変圧効率が劣化したり、甚だしい場合には発熱により変圧器が焼損する。そこで、従来、このような焼き付き(スティッキング)現象を誘起させない技術の検討がなされている。
例えば、粉末を添加した塗布液を用いて絶縁被膜を形成することで、耐熱性(耐スティッキング性)を向上する技術として次のようなものがある。まず、特許文献1においては、コロイド状シリカ、第1リン酸塩、クロム酸を主体とする水分散液に、一次粒子径70〜500Å(7〜50nm)、見掛比重100g/リットル以下のSiO、Al、TiO粒子の1種または2種以上を添加したコーティング処理液を用いて絶縁被膜を形成する技術が提案されている。次に、特許文献2においては、リチウムシリケート水溶液中に、アルミナ、シリカ、チタニア、マイカの何れか1種の粉末を添加した電磁鋼板塗布用リチウムシリケート水溶液を用いて絶縁被膜を形成する技術が提案されている。また、特許文献3においては、コロイド状シリカ、リン酸アルミニウム、ホウ酸、硫酸塩を主体とする水分散液に、一次粒子径1000Å(100nm)以下の超微粒のSiO、Al、TiO粒子1種または2種以上を添加したコーティング処理液を用いて絶縁被膜を形成する技術が提案されている。
また、特許文献4において、リン酸塩、クロム酸、粒子径50nm以下のコロイド状シリカを主体とするコロイド溶液に、粒子径が5〜2000nmの非コロイド状の固形物を添加した絶縁被膜形成用塗布材を用いて絶縁被膜を形成する技術が提案されている。さらに、比較的小さな粒径と比較的大きな粒径をもつコロイド状シリカを使用する技術として、特許文献5において、リン酸塩、クロム酸を主体とする水分散液に、粒子径20nm以下のコロイド状シリカと粒子径80〜2000mμm(80nm〜2000nm)のコロイド状シリカを添加した絶縁被膜形成用塗布剤を用いて絶縁被膜を形成する技術も提案されている。
しかしながら、上記いずれの技術も、歪み取り焼鈍時に起こりうるスティッキング現象の抑制効果について十分に満足できるものではなかった。
特許文献6においては、上記技術で用いた粉末よりも大きい平均粒径2μm超20μm以下の無機鉱物質粒子を固形分比率で0.02重量%以上20重量%以下含有する絶縁被膜用塗布液を用いて絶縁被膜を形成する技術が提案されている。さらに特許文献7には、レーザー散乱・回折式粒度分布測定法により測定された50%中心粒径が2μm超20μm以下で、かつ90%積算粒径と50%中心粒径の比率が10以下である無機鉱物質粒子を使用する技術が提案されている。
一般に、2相界面のスティッキングはその接触面積に依存する。そのため、2相を接触させ、高温に保持した場合、接触面積を小さくすればスティッキングを起こし難くなる。これらの技術により、絶縁被膜の表面に凹凸を付与することで接触面積を低減させ、耐スティッキング性を向上することができる。しかし、添加粉末の粒径の大きさからその凹凸は相当大きなものであること、粉末に対するバインダーの不足などから、占積率及び被膜密着性の低下という問題が生じることがあるということが判明した。
特許文献8には、0.1〜7重量%の中空型ナノ粒子、0.1〜5重量%のセラミックナノファイバー、0.1〜5重量%のメソポーラスナノ粒子、30〜60重量%のコロイダルシリカナノ粒子および30〜60重量%の金属リン酸塩を含む、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を用いて絶縁被膜を形成する技術が提案されており、前記絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板は、騒音の低減効果に優れることが開示されている。しかし、中空型ナノ粒子、セラミックナノファイバー、メソポーラスナノ粒子といった異なる形状の物質を数種含有するために、均一塗布が難しく、占積率の上昇や被膜密着性の低下といった問題が生じることがあるということが判明した。
本発明が主に対象にしている変圧器の鉄心材料として用いられる方向性電磁鋼板においては、歪み取り焼鈍時の耐熱性(耐スティッキング性)の他に、占積率と呼ばれる製品指標も重要視される。占積率とは、方向性電磁鋼板を積層し、鉄心を製作した際、鉄心厚さ全体に占める鉄の割合を示すものである。鋼板表面の絶縁被膜が厚過ぎたり、絶縁被膜あるいは鋼板自体の凹凸が激しすぎるとこの割合が低下してしまう。占積率が低いということは、同一鉄心厚さで比較した場合、鉄の占める部分が少ないことを意味する。鉄の占める部分が少ないと、変圧器内部で鉄心が電磁誘導の法則に従い、電圧変換ユニットとして作動する時、磁束が通りにくくなる。そうなると、電圧変換の際、熱エネルギー損失が増大してしまう。そのため、占積率は高い方が望ましい。
特開昭52−25296号公報 特開昭53−6338号公報 特開昭54−143737号公報 特開平4−165082号公報 特開平3−39484号公報 特開2000−26979号公報 特開2002−206171号公報 特表2018−504516号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、耐熱性に優れ、かつ、占積率に優れる絶縁被膜付き電磁鋼板を製造することができる絶縁被膜形成用処理液およびこれを用いた絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐熱性に優れ、かつ、占積率に優れる絶縁被膜付き電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明によれば、中空粒子を含有する絶縁被膜形成用処理液を用いて絶縁被膜を形成することにより、上記目的を達成することができる。
即ち、本発明の要旨構成は、次の通りである。
[1]電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成するための絶縁被膜形成用処理液であって、
中空粒子を含むことを特徴とする絶縁被膜形成用処理液。
[2]前記中空粒子の固形分換算の含有量が、絶縁被膜形成用処理液中の全固形分に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする、[1]に記載の絶縁被膜形成用処理液。
[3]前記中空粒子の平均粒径が10nm以上5000nm以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の絶縁被膜形成用処理液。
[4]前記中空粒子が、酸化物及び/又は窒化物を含む材料で形成されていることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の絶縁被膜形成用処理液。
[5]前記中空粒子の25℃から200℃の温度範囲における平均熱膨張係数が7.5×10−6/K以下であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の絶縁被膜形成用処理液。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の絶縁被膜形成用処理液を、電磁鋼板の表面に塗布した後、焼付けすることを特徴とする、絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
[7]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の絶縁被膜形成用処理液を、電磁鋼板の表面に塗布した後、500℃までの温度域を20℃/sec以上45℃/sec以下の平均昇温速度で昇温し、焼付けすることを特徴とする、絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
[8]電磁鋼板の少なくとも一方の表面に中空粒子を含有する絶縁被膜を有する絶縁被膜付き電磁鋼板であって、
前記絶縁被膜は、当該絶縁被膜の膜厚をMとしたとき、電磁鋼板の表面から膜厚M/2までの領域における中空粒子の含有率Bと、膜厚M/2から膜厚Mまでの領域における中空粒子の含有率Aが、A/B>1.0を満たすことを特徴とする、絶縁被膜付き電磁鋼板。
本発明によれば、耐熱性に優れ、かつ、占積率に優れる絶縁被膜付き電磁鋼板を製造することができる。さらに本発明の絶縁被膜形成用処理液で形成した絶縁被膜は、密着性、付与張力にも優れる。
発明者らは、絶縁被膜を有する方向性電磁鋼板を積層し鉄心を製作した際の占積率の悪化を回避するとともに、絶縁被膜間の接触面積を低減させる手段として、中空粒子を絶縁被膜形成用処理液(以下、単に「処理液」ともいう)中に添加し、この処理液を方向性電磁鋼板の表面に塗布し焼き付けすることで、方向性電磁鋼板上に形成される絶縁被膜表面に空孔を形成することに思い至った。
以下、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
まず、第一リン酸マグネシウム100質量部に対して、80質量部のコロイド状シリカと、25質量部のCrOを含む処理液を用意し、従来例とした(No.1−1)。次に、第一リン酸マグネシウム、コロイド状シリカ、CrOの比率はこのままとして、各種粒子を、全固形分(すなわち、第一リン酸マグネシウム、コロイド状シリカ、CrOおよび粒子の固形分換算の合計質量)を100.0質量%としたときの粒子(固形分換算)の比率が0.5質量%となるように添加した処理液(No.1−2〜No.1−9)を用意した。
(No.1−1)粒子なし
(No.1−2)噴霧乾燥法で作製した平均粒径200nmのシリカ(中空粒子)
(No.1−3)噴霧乾燥法で作製した平均粒径200nmのアルミナ(中空粒子)
(No.1−4)噴霧乾燥法で作製した平均粒径200nmの窒化チタン(中空粒子)
(No.1−5)噴霧乾燥法で作製した平均粒径200nmのピロリン酸ニッケル(中空粒子)
(No.1−6)噴霧乾燥法で作製した平均粒径200nmのジルコニア(中空粒子)
(No.1−7)噴霧乾燥法で作製した平均粒径200nmのほう酸アルミニウムシリカ(中空粒子)
(No.1−8)アルカリ膨潤法で作製した平均粒径200nmの架橋スチレン(中空粒子)
(No.1−9)粒子の内部に空洞を持たない平均粒径200nmのアルミナ(非中空粒子)
これらの処理液を、フォルステライト被膜を有する二次再結晶焼鈍後の板厚:0.20mmの方向性電磁鋼板に塗布し、850℃の温度で30秒の焼付け処理を施し、方向性電磁鋼板の両面に絶縁被膜が形成された絶縁被膜付き方向性電磁鋼板を作製した。焼付け処理後の絶縁被膜の厚さは、いずれも2μm(片面)とし、両面に絶縁被膜を形成した。このようにして作製した絶縁被膜付き方向性電磁鋼板について、次に示す方法により、耐熱性、占積率を評価した。
耐熱性は、歪み取り焼鈍時の耐熱性を想定した落重試験により評価した。具体的には、作製した絶縁被膜付き方向性電磁鋼板を、50mm×50mmの試験片にせん断し、これを10枚積層して、2kg/cmの圧縮加重を加えた条件で、焼鈍を830℃で3時間行った後、500gの分銅を20cmの高さから落下させ、10枚の試験片の分離状態を調べ、以後、10枚の試験片が全て分離するまで20cmずつ分銅を落下させる高さをあげていき試験を行った。そして、10枚の試験片が全て分離したときの分銅の高さ(落重高さ)により絶縁被膜の耐熱性を評価した。なお、上記焼鈍を行った後、10枚の試験片が全て分離している場合は、落重高さ0cmとした。この落重試験において、落重高さ40cm以下の場合、その絶縁被膜は耐熱性に優れ、20cm以下の場合は極めて優れるものとして評価できる。
また、占積率は、JIS C 2550に準拠する方法で評価した。
以上のようにして評価した結果を表1に示す。
表1に示す通り、粒子を添加しなかった条件(No.1−1)では、97.5%と高い占積率を示したが、落重高さが120cmと非常に大きく、所望の耐熱性が得られなかった。一方、中空粒子を添加した条件(No.1−2からNo.1−8)では、いずれの中空粒子を用いた場合においても、落重高さが40cm以下と小さく耐熱性に優れ、さらに97.4%から97.8%と高い占積率を示した。これは、絶縁被膜表面から突出した中空粒子の頭頂部が削れる等し、凹凸がなく空孔のあいた絶縁被膜表面(細孔を有する絶縁被膜表面)が形成された結果、積層した試験片の絶縁被膜間の接触面積が減少したためであると推定される。また、非中空粒子を添加した条件(No.1−9)では、落重高さが40cm以下と小さかったが、占積率が95.8%と低かった。これは、中空粒子と異なり、粒子構造が密であるため、絶縁被膜表面から突出した粒子の頭頂部が削れないためであると推定される。以上の実験結果から、中空粒子を含む処理液を用いて、絶縁被膜中に中空粒子を含有させることで、占積率の悪化を回避するとともに高耐熱性の絶縁被膜を形成できることが分かった。
Figure 0006841296
次に、本発明に関連する各構成について説明する。
〔電磁鋼板〕
本発明で対象とする電磁鋼板は、方向性電磁鋼板に限定されるものではなく、無方向性電磁鋼板にも適用できる。通常、方向性電磁鋼板は、含珪素鋼スラブを、公知の方法で熱間圧延し、1回もしくは中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延により最終板厚に仕上げたのち、一次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を行うことによって製造される。
〔絶縁被膜〕
本発明の処理液で形成される絶縁被膜は、ガラスを主体とすることが好ましい。前記ガラスとしては、特に限定されないが、現在一般的に絶縁被膜として利用されている珪リン酸塩ガラスを用いることが好ましい。また、珪リン酸塩ガラスは大気中で吸湿する性質があるため、これを防止する等の目的で任意の添加剤(例えば、Li、K、Mg、Al、Ca、Ba、Sr、Zn、Ti、Nd、Mo、Cr、B、Ta、CuおよびMnのうちから選ばれる1種以上の元素を含む化合物)を含有することができる。前記ガラスは、後述するように、リン酸塩等の絶縁被膜原料を含む処理液を電磁鋼板の表面に塗布し、焼付け処理することで形成できる。なお、本発明の処理液で形成される絶縁被膜は、クロムを含有してもよいし、クロムを含有しなくても(クロムフリーであっても)よい。
(中空粒子)
本発明の処理液で形成される絶縁被膜は、中空粒子を含有する。中空粒子とは、粒子の内部に空洞がある粒子である。中空粒子の作製方法としては、有機ビーズテンプレート法、W/Oエマルジョン法、噴霧乾燥法、バブルテンプレート法、アルカリ膨潤法などが存在し、その中でも噴霧乾燥法が好ましい。これは、合成時の不純物混入が少なく真球に近い粒子が合成可能で、絶縁被膜への添加に適しているからである。中空粒子の空隙率は、0.10から0.85が好ましい。中空粒子の空隙率が0.10以上であると、絶縁被膜間の接触面積を減少しやすくなり、耐スティッキング性をより高めやすくなる。また、中空粒子の空隙率が0.85以下であると、絶縁被膜中にて中空粒子の形状を保つための強度を確保しやすくなり、細孔を有する絶縁被膜を形成しやすくなる。
ここでいう空隙率は、以下の式により求められる。
空隙率=1−みかけ密度/真密度
ここでいうみかけ密度(g/cm)は、ルシャテリエフラスコの目盛0〜1mLの間まで浸液を満たし、液面の目盛を読み(ルシャテリエフラスコの初めの読み)、次いで前記浸液に中空粒子100gを加え振とうして空気を追い出した後の液面の目盛を読み(ルシャテリエフラスコの終わりの読み)、下記式から求められる(ルシャテリエ比重瓶法。JIS R 5201「セメントの物理試験方法」)。
みかけ密度=W/(Vb−Va)
Va:ルシャテリエフラスコの初めの読み(mL)
Vb:ルシャテリエフラスコの終わりの読み(mL)
W:試料の重さ(100g)
また、ここでいう真密度は、以下の方法で求められる。内部空隙が無くなるように試料である中空粒子を十分に粉砕し、ゲリューサック型比重瓶(以下、比重瓶という)に挿入し、比重瓶と試料の合計質量(比重瓶+試料質量)を測定する。次いで、比重瓶に溶液を加え、試料の空隙を完全に溶液で脱気置換し比重瓶の標線まで溶液を満たし、その時の比重瓶と試料と標線まで満たした溶液の合計質量(比重瓶+試料+標線までの溶液質量)を測定する。そして、別途、比重瓶の質量(比重瓶質量)と、比重瓶の標線まで溶液を満たした時の比重瓶と溶液の合計質量(比重瓶+標線までの溶液質量)を測定し、下記式から真密度(g/cm)を求める(ゲリューサック型比重瓶(ピクノメータ)法)。
真密度={(Wb−Wa)/(Wb−Wa−Wc+Wd)}×(溶液の密度)
Wa:比重瓶質量
Wb:比重瓶+試料質量
Wc:比重瓶+試料+標線までの溶液質量
Wd:比重瓶+標線までの溶液質量
中空粒子の種類(成分)は特に限定されないが、電荷を持たないものの方が凝集しにくいため好ましい。主なものとして、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、ピロリン酸塩、タングステン酸塩等の酸化物、窒化チタン等の窒化物、架橋スチレンなどがあげられる。方向性電磁鋼板の場合は、絶縁被膜に張力を付与するため、絶縁被膜形成時に850℃といった高温で焼付けることから、中空粒子は有機物よりも無機物の方が好ましく、特に酸化物及び/又は窒化物を含む材料で形成された中空粒子が好ましい。
中空粒子の平均粒径は、5000nm以下が好ましく、絶縁被膜の密着性の観点からは2000nm未満がより好ましい。また、絶縁被膜の密着性の観点からは中空粒子の平均粒径は10nm以上が好ましい。なお、中空粒子の平均粒径の測定方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー回折散乱法により測定される粒子径分布における体積基準の累積50%の粒子径(D50)を採用することができる。
また、絶縁被膜としては、絶縁被膜原料(処理液に添加される成分)の全固形分100質量%のうち中空粒子を0.1質量%以上10質量%以下含有する処理液を電磁鋼板の表面に塗布し、焼付けして形成したものが好ましく、絶縁被膜原料の全固形分100質量%のうち中空粒子を0.1質量%以上2.0質量%以下含有する処理液を電磁鋼板の表面に塗布し、焼付けして形成したものがより好ましい。中空粒子の添加量が、上記下限値以上であると耐熱性をより高めやすくなり、上記上限値以下であると絶縁被膜の密着性をより高めやすくなる。
また、中空粒子の25℃から200℃の温度範囲における平均熱膨張係数は、7.5×10−6/K以下が好ましい。中空粒子の平均熱膨張係数が上記上限値以下であると、絶縁被膜の被膜張力をより高めやすくなる。なお、中空粒子の平均熱膨張係数は、TMA(熱機械分析装置)を用いて測定できる。測定条件としては、測定温度範囲を25℃〜200℃、昇温速度を5℃/分とする。
さらに、絶縁被膜は、表面側の領域における中空粒子の含有率が、電磁鋼板側の領域における中空粒子の含有率よりも大きくなるように中空粒子を含有することが好ましい。具体的には、絶縁被膜の膜厚をMとしたとき、電磁鋼板の表面から膜厚M/2までの領域における中空粒子の含有率Bと、膜厚M/2から膜厚Mまでの領域における中空粒子の含有率Aが、A/B>1.0を満たすことが好ましい。A/B>1.0であると、耐熱性がより高められやすくなる。耐熱性、密着性、付与張力をさらに高める点から、より好ましくは、A/B≧2.0である。なお、前記中空粒子の含有率A、Bは、例えば絶縁被膜を焼付けして形成する際の500℃までの昇温速度を変えることで調整できる。
絶縁被膜の状態において、中空粒子を使用していることを判別する方法としては、SEMによる判別が可能である。SEMにより絶縁被膜表面を観察することで、絶縁被膜表面に孔(細孔)が形成されている様子を観察することができる。また、絶縁被膜の断面を観察することで、粒子内部に空洞がある粒子が絶縁被膜内に含有されている様子を観察することができる。
また、上述した中空粒子の含有率Bは、SEMにより絶縁被膜の断面を観察し、絶縁被膜の膜厚をM(μm)としたとき、電磁鋼板の表面から膜厚M/2までの領域に存在する中空粒子の含有率(面積%)を求め、これを前記中空粒子の含有率Bとする。同様に、上述した中空粒子の含有率Aは、膜厚M/2から膜厚M(絶縁被膜の表面)までの領域に存在する中空粒子の含有率(面積%)を求め、これを前記中空粒子の含有率Aとする。
〔絶縁被膜形成用処理液〕
本発明の絶縁被膜形成用処理液は、前記中空粒子を含有する。一例として、前記処理液は、焼付けによりガラスを形成できる成分と、中空粒子を含有する。また、前記処理液は、任意の添加剤を含有してもよい。ただし、良好な均一塗布性が得られ、占積率の上昇や被膜密着性の低下を抑制しやすくなる点からは、前記中空粒子とは異なる形状の添加剤、例えば、セラミックナノファイバー、メソポーラスナノ粒子等の添加剤を含まないことが好ましい。また、処理液中の中空粒子の含有量は、特に限定されないが、中空粒子の固形分換算の含有量が、処理液中の全固形分に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。
前記処理液の一例としては、リン酸、ホウ酸およびケイ酸のLi、K、Mg、Al、Ca、Ba、Sr、Zn、Ti、Nd、Mo、Cr、Ta、Cu、Mnの塩のうちから選ばれる少なくとも1種と、コロイド状シリカと、中空粒子を含む処理液が挙げられる。また、前記処理液には、さらに、任意の添加剤(例えば、Li、K、Mg、Al、Ca、Ba、Sr、Zn、Ti、Nd、Mo、Cr、B、Ta、Cu、Mnのうちから選ばれる1種以上の元素を含む化合物)を添加することができる。前記化合物としては無機化合物が好ましい。
前記処理液は、公知の条件および方法により製造することができる。例えば、前記処理液は、前述したリン酸塩、中空粒子等の絶縁被膜原料を、水を溶媒として混合することで製造できる。
〔絶縁被膜の形成方法〕
(絶縁被膜形成用処理液の塗布方法)
前述した絶縁被膜形成用処理液を電磁鋼板の表面上に塗布する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。前記処理液は、鋼板の少なくとも片面に塗布するが、鋼板の両面に塗布するのが好ましく、焼付後(後述する乾燥を行う場合には、乾燥および焼付後)の目付量が両面で4〜15g/mとなるように塗布することがより好ましい。目付量が、前記下限値以上であると層間抵抗が低下することを抑制しやすくなり、前記上限値以下であると占積率をより高めやすくなる。
(焼付け方法)
次に、前記処理液を塗布し任意で乾燥した電磁鋼板について、焼付けを施し、これにより、絶縁被膜を形成する。このとき、平坦化焼鈍を兼ねるという観点から、800〜1000℃で10〜300秒間の焼付けを施すことが好ましい。焼付温度が低すぎたり焼付時間が短すぎたりすると、平坦化が不十分で、形状不良で歩留りが低下する場合があり、一方で、焼付温度が高すぎたりすると、平坦化焼鈍の効果が強すぎてクリープ変形して磁気特性が劣化しやすくなる場合があるが、上記条件であれば、平坦化焼鈍の効果が、十分かつ適度となる。
また、焼付けを施す際、前記処理液を電磁鋼板の表面に塗布した後、500℃までの温度域の平均昇温速度[V(℃/sec)]を、20℃/sec以上45℃/sec以下(20≦V≦45)とすることが好ましい。前記V(℃/sec)が20℃/sec以上であると、形成される絶縁被膜中において、表面側の領域における中空粒子の含有率を、電磁鋼板側の領域における中空粒子の含有率よりも大きくなるように調整しやすくなり、上記A/B>1.0を満たす絶縁被膜を形成しやすくなる。これは、脱水・縮合反応による脱ガス速度の影響によるものと考えられる。また、前記V(℃/sec)が45℃/sec以下であると、形成された絶縁被膜の被膜張力および密着性をより高めやすくなる。なお、前記処理液を電磁鋼板の表面に塗布する際の温度(加熱開始温度)は、特に限定されないが、通常、常温(25℃)である。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
絶縁被膜形成用処理液として、第一リン酸マグネシウム100質量部に対して、80質量部のコロイド状シリカと、25質量部のCrOの比率で配合した処理液の基本成分系に、平均粒径が90nmのシリカ中空粒子を種々の割合(全固形分、すなわち第一リン酸マグネシウム、コロイド状シリカ、CrOおよびシリカ中空粒子の固形分換算の合計質量を100.0質量%としたときのシリカ中空粒子(固形分換算)の比率が0〜11質量%)で配合したものを用意した。これらの処理液を、フォルステライト被膜を有する二次再結晶焼鈍後の板厚:0.20mmの方向性電磁鋼板に常温(25℃)で塗布した後、500℃までの温度域を表2に示す平均昇温速度V(℃/sec)で昇温し、次いで、850℃の温度で30秒の焼付け処理を施し、方向性電磁鋼板の両面に絶縁被膜が形成された絶縁被膜付き方向性電磁鋼板を作製した。焼付け処理後の絶縁被膜の厚さは、いずれも2μm(片面)とした。焼付雰囲気は窒素雰囲気とした。このようにして作製した絶縁被膜付き方向性電磁鋼板について、前述の方法により、耐熱性、占積率を評価した。また、以下に示す方法により絶縁被膜の密着性、鋼板への付与張力を評価した。さらに、前述の方法により、電磁鋼板の表面から膜厚1μm(膜厚M/2)までの領域における中空粒子の含有率Bと、膜厚1μm(膜厚M/2)から膜厚2μm(膜厚M)までの領域における中空粒子の含有率Aを求め、A/Bを算出した。
密着性は、JIS K 5600−5−6のクロスカット法にて評価した。前記評価における粘着テープとしては、セロテープ(登録商標)CT−18(粘着力:4.01N/10mm)を使用し、2mm角のマス目のうち、剥離したマス目の個数(剥離数)を下記表2に記載した。剥離数が3個以下であれば密着性に優れるものとして評価できる。
絶縁被膜の鋼板への付与張力(被膜張力)は、圧延方向の張力とし、絶縁被膜付き方向性電磁鋼板から作成した圧延方向長さ280mm×圧延直角方向長さ30mmの試験片の一方の面の絶縁被膜が除去されないように粘着テープでマスキングしてから片面の絶縁被膜をアルカリ、酸などを用いて剥離して除去し、次いで前記試験片の片端30mmを固定して試験片250mmの部分を測定長さとしてそり量を測定し、下記式(I)を用いて算出した。
鋼板への付与張力[MPa]=鋼板ヤング率[GPa]×板厚[mm]×そり量[mm]÷(測定長さ[mm])×10・・・式(I)
ただし、鋼板ヤング率は、132GPaとした。
Figure 0006841296
表2から次のことがわかる。まず、歪み取り焼鈍時の耐熱性を想定した落重高さをみると、中空粒子の添加がない条件(No.2−1)では落重高さが120cmと大きいのに対し、中空粒子を0.1質量%添加した条件(No.2−2)では落重高さが40cmと優れていた。さらに中空粒子を0.5質量%以上添加した条件(No.2−3〜2−10)では落重高さがいずれも20cm以下と極めて優れていた。次に、占積率をみると、いずれの条件においても97.3%から97.7%と非常に高い。したがって、中空粒子を含有する処理液を用い、中空粒子を含有する絶縁被膜を形成することで、落重高さの小さい、即ち、歪取焼鈍時の耐熱性に優れることと占積率が高いことを両立できる絶縁被膜付き電磁鋼板を得られることがわかった。
次に、密着性を表している剥離数をみると、中空粒子の配合量が0から10質量%の処理液を用いた条件(No.2−1〜2−9)では3個以下と非常に少ないのに対し、中空粒子の配合量が11質量%の処理液を用いた条件(No.2−10)では4個と若干劣化傾向になった。次に、被膜張力をみると、中空粒子の配合量が0から11質量%の処理液を用いたいずれの条件(No.2−1〜2−10)も、8.4MPa以上と高い値を示した。したがって、中空粒子を含有する処理液を用いて絶縁被膜を形成することで、耐熱性と占積率を両立することができ、さらに、中空粒子の配合量を処理液中の全固形分に対して0.1〜10質量%とした処理液を用いて絶縁被膜を形成することで、優れた密着性と被膜張力を得ることができることが分かった。
(実施例2)
絶縁被膜形成用処理液として、第一リン酸マグネシウム100質量部に対して、80質量部のコロイド状シリカと、25質量部のCrOの比率で配合した処理液の基本成分系に、平均粒径が8nmから8000nmまでのシリカ中空粒子を配合し、全固形分を100.0質量%としたときのシリカ中空粒子の比率が0.5質量%となるようにしたものを用意した。これらの処理液を、フォルステライト被膜を有する二次再結晶焼鈍後の板厚:0.20mmの方向性電磁鋼板に常温(25℃)で塗布した後、500℃までの温度域を表3に示す平均昇温速度V(℃/sec)で昇温し、次いで、850℃の温度で30秒の焼付け処理を施し、方向性電磁鋼板の両面に絶縁被膜が形成された絶縁被膜付き方向性電磁鋼板を作製した。焼付け処理後の絶縁被膜の厚さは、いずれも2μm(片面)とした。焼付雰囲気は窒素雰囲気とした。このようにして作製した絶縁被膜付き方向性電磁鋼板について、前述の方法により、耐熱性、占積率、密着性及び付与張力を評価した。また、前述の方法によりA/Bを算出した。評価結果を表3に示す。
Figure 0006841296
表3に示す通り、歪み取り焼鈍時の耐熱性を想定した落重高さをみると、添加したシリカ中空粒子の平均粒径が10nm以上(No.3−2〜3−11)の条件においては、落重高さが20cm以下で、極めて優れていた。次に、占積率をみると、いずれの条件においても97.4%から97.8%と非常に高かった。また、密着性を表している剥離数をみると、平均粒径が5000nm以下の条件(No.3−1〜3−10)においては3個以下と非常に少なく、平均粒径が8000nmの条件(No.3−11)においては4個と若干劣化傾向となった。次に、被膜張力をみると、平均粒径が5000nm以下の条件(No.3−1〜3−10)においては8.5MPa以上と非常に高い値を示した。平均粒径が8000nmの条件では、8.0MPaと高いレベルではあるものの、若干劣化傾向となった。以上の結果から、平均粒径が10nm以上5000nm以下の中空粒子を添加することで、特に落重高さの小さい、即ち、歪取焼鈍時の耐熱性に優れることと占積率が高いこととを高いレベルで両立でき、さらに、密着性、被膜張力にも優れる絶縁被膜付き電磁鋼板を得られることがわかった。
(実施例3)
絶縁被膜形成用処理液として、第一リン酸マグネシウム100質量部に対して、80質量部のコロイド状シリカと、25質量部のCrOの比率で配合した処理液の基本成分系に、平均粒径が90nmの8種類の各種中空粒子を配合し、全固形分を100.0質量%としたときの各種中空粒子の比率が0.5質量%となるようにしたものを用意した。各中空粒子の材料とその25℃から200℃の温度範囲における平均熱膨張係数は、架橋スチレン:65×10−6/K、窒化チタン:9.35×10−6/K、アルミナ:7.2×10−6/K、ピロリン酸Mg:6.9×10−6/K、ジルコン:4×10−6/K、窒化ケイ素:2.8×10−6/K、シリカ:0.8×10−6/K、ZrW:−8.7×10−6/K、である。これらの処理液を、フォルステライト被膜を有する二次再結晶焼鈍後の板厚:0.20mmの方向性電磁鋼板に常温(25℃)で塗布した後、500℃までの温度域の昇温速度を適宜調整して昇温し、次いで、850℃の温度で30秒の焼付け処理を施し、方向性電磁鋼板の両面に絶縁被膜が形成された絶縁被膜付き方向性電磁鋼板を作製した。焼付け処理後の絶縁被膜の厚さは、いずれも2μm(片面)とした。焼付雰囲気は窒素雰囲気とした。このようにして作製した絶縁被膜付き方向性電磁鋼板について、前述の方法により、耐熱性、占積率及び付与張力を評価した。また、前述の方法によりA/Bを算出した。評価結果を表4に示す。
Figure 0006841296
表4に示す通り、歪み取り焼鈍時の耐熱性を想定した落重高さをみると、酸化物及び/又は窒化物を含む材料で形成されている中空粒子を添加した条件(No.4−2〜4−8)においては0cmと非常に小さく、架橋スチレンを材料とした中空粒子を添加した条件(No.4−1)においては40cmとなった。次に、占積率をみると、いずれの条件においても97.4%から97.8%と非常に高かった。次に、被膜張力を見ると、酸化物及び/又は窒化物を含む材料で形成されている中空粒子を添加した条件(No.4−2〜4−8)においては、9.0MPa以上と高い値を示した。特に、25℃から200℃の温度範囲における平均熱膨張係数が7.5×10−6/K以下の中空粒子を添加した条件(No.4−3〜4−8)においては、10.0MPa以上と非常に高い被膜張力を示した。したがって、酸化物及び/又は窒化物を含む材料で形成されている中空粒子、特にその25℃から200℃の温度範囲における平均熱膨張係数が7.5×10−6/K以下の中空粒子を添加することで、特に落重高さの小さい、即ち、歪取焼鈍時の耐熱性に優れることと占積率が高いこととを両立でき、さらに、被膜張力に優れる絶縁被膜付き電磁鋼板を得られることがわかった。

Claims (6)

  1. 電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成するための絶縁被膜形成用処理液であって、
    中空粒子を含み、
    前記中空粒子が、ジルコニア、チタニア、ピロリン酸塩、タングステン酸塩、窒化チタンのいずれかの材料で形成されていることを特徴とする絶縁被膜形成用処理液。
  2. 前記中空粒子の固形分換算の含有量が、絶縁被膜形成用処理液中の全固形分に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の絶縁被膜形成用処理液。
  3. 前記中空粒子の平均粒径が10nm以上5000nm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の絶縁被膜形成用処理液。
  4. 前記中空粒子の25℃から200℃の温度範囲における平均熱膨張係数が7.5×10−6/K以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の絶縁被膜形成用処理液。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の絶縁被膜形成用処理液を、電磁鋼板の表面に塗布した後、焼付けすることを特徴とする、絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の絶縁被膜形成用処理液を、電磁鋼板の表面に塗布した後、500℃までの温度域を20℃/sec以上45℃/sec以下の平均昇温速度で昇温し、焼付けすることを特徴とする、絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法。
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