以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<定義>
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
[エアロゲル積層体]
本実施形態のエアロゲル積層体は、基材とエアロゲル層とが、窒素原子を有する樹脂を含む層を介して積層された構造を備える。エアロゲル層を基材に積層させることにより、優れた断熱性を発現することができる。該エアロゲル層は、可とう性に優れており、従来、取扱い性が困難であったエアロゲルのシート化が可能となり、基材と一体化できるため、エアロゲル積層体を断熱材として用いた場合、断熱層を薄型化することができる。また、エアロゲル層は、非熱伝導性の基材に積層することで、熱伝導によって温度が上昇することを防いでいる。そして、樹脂層を基材上に設けることで、基材を保護することができ、特に、基材が金属を含む場合に有効である。
図1は、本実施形態のエアロゲル積層体の断面を模式的に示す図である。図1に示すように、エアロゲル積層体は、基材3とエアロゲル層1とが、窒素原子を含有する樹脂層2を介して積層された構造を有している。このような構造を1つ以上有することで、薄型化可能となり、優れた断熱性及び柔軟性を有するエアロゲル積層体となる。なお、エアロゲル層1は、樹脂層2を介して基材3の両面に積層されていてもよい。
図2は、本実施形態のエアロゲル積層体が複数積層された多層積層体の断面を模式的に示す図である。本実施形態のエアロゲル積層体は、図2に示すように、エアロゲル層1と樹脂層2を設けた基材3とが、交互に複数積層された多層積層体とすることができる。基材3同士、あるいは樹脂層2同士が直接接触しないようにエアロゲル積層体が積層されていれば、多層積層体は、5層以上であってもよく、10層以上であってもよく、20層以上であってもよい。
エアロゲル層1と基材3とが樹脂層2を介して積層された構造を複数層設けることにより、1層のエアロゲル積層体では得られない優れた断熱性能を発現することができる。
<エアロゲル層>
本実施形態に係るエアロゲル層は、エアロゲルにより構成される層である。狭義には、湿潤ゲルに対して超臨界乾燥法を用いて得られた乾燥ゲルをエアロゲル、大気圧下での乾燥により得られた乾燥ゲルをキセロゲル、凍結乾燥により得られた乾燥ゲルをクライオゲルと称するが、本実施形態においては、湿潤ゲルのこれらの乾燥手法によらず、得られた低密度の乾燥ゲルをエアロゲルと称する。すなわち、本実施形態においてエアロゲルとは、広義のエアロゲルである「Gel comprised of a microporous solid in which the dispersed phase is a gas(分散相が気体である微多孔性固体から構成されるゲル)」を意味するものである。一般的にエアロゲルの内部は網目状の微細構造となっており、2〜20nm程度のエアロゲル粒子(エアロゲルを構成する粒子)が結合したクラスター構造を有している。このクラスターにより形成される骨格間には、100nmに満たない細孔がある。これにより、エアロゲルは、三次元的に微細な多孔性の構造をしている。なお、本実施形態におけるエアロゲルは、シリカを主成分とするシリカエアロゲルである。シリカエアロゲルとしては、例えば、有機基(メチル基等)又は有機鎖を導入した、いわゆる有機−無機ハイブリッド化されたシリカエアロゲルが挙げられる。本実施形態に係るエアロゲル層は、ポリシロキサン由来の構造を有するエアロゲルを含有する層であってもよい。
本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲル層は、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得ることができる。これらの態様を採用することにより、エアロゲル層の断熱性と柔軟性とがより向上する。前記縮合物は、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解により得られた加水分解生成物の縮合反応により得られてもよく、加水分解により得られた官能基ではない縮合性の官能基を有するケイ素化合物の縮合反応により得られてもよい。前記ケイ素化合物は、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基の少なくとも一方を有していればよく、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基の双方を有していてもよい。なお、後述する各エアロゲルは、このように、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。
エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよい。すなわち、エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層で構成されていてもよい。
本実施形態に係るエアロゲルは、シロキサン結合(Si−O−Si)を含む主鎖を有するポリシロキサンを含有することができる。エアロゲルは、構造単位として、下記M単位、D単位、T単位又はQ単位を有することができる。
上記式中、Rは、ケイ素原子に結合している原子(水素原子等)又は原子団(アルキル基等)を示す。M単位は、ケイ素原子が1個の酸素原子と結合した一価の基からなる単位である。D単位は、ケイ素原子が2個の酸素原子と結合した二価の基からなる単位である。T単位は、ケイ素原子が3個の酸素原子と結合した三価の基からなる単位である。Q単位は、ケイ素原子が4個の酸素原子と結合した四価の基からなる単位である。これらの単位の含有量に関する情報は、Si−NMRにより得ることができる。
本実施形態のエアロゲルは、シルセスキオキサンを含有していてもよい。シルセスキオキサンは、構造単位として上記T単位を有するポリシロキサンであり、組成式:(RSiO1.5)nを有する。シルセスキオキサンは、カゴ型、ラダー型、ランダム型等の種々の骨格構造を有することができる。
加水分解性の官能基としては、例えば、アルコキシ基が挙げられる。縮合性の官能基(加水分解性の官能基に該当する官能基を除く)としては、例えば、水酸基、シラノール基、カルボキシル基及びフェノール性水酸基が挙げられる。水酸基は、ヒドロキシアルキル基等の水酸基含有基に含まれていてもよい。加水分解性の官能基及び縮合性の官能基のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
ケイ素化合物は、加水分解性の官能基としてアルコキシ基を有するケイ素化合物を含むことが可能であり、また、縮合性の官能基としてヒドロキシアルキル基を有するケイ素化合物を含むことができる。ケイ素化合物は、エアロゲルの柔軟性が更に向上する観点から、アルコキシ基、シラノール基、ヒドロキシアルキル基及びポリエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することができる。ケイ素化合物は、ゾルの相溶性が向上する観点から、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することができる。
ケイ素化合物の反応性の向上とエアロゲルの熱伝導率の低減の観点から、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基のそれぞれの炭素数は、1〜6とすることができ、エアロゲルの柔軟性が更に向上する観点から2〜4であってもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
本実施形態に係るエアロゲルとしては、以下の態様が挙げられる。これらの態様を採用することにより、断熱性と柔軟性とに更に優れ、薄膜化が可能なエアロゲルを得ることが容易となる。各々の態様を採用することで、各々の態様に応じた断熱性及び柔軟性を有し、薄膜化が可能なエアロゲルを得ることができる。
(第一の態様)
本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物(前記加水分解性の官能基が加水分解したポリシロキサン化合物)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(以下、場合により「ポリシロキサン化合物群」という)を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるものであってもよい。なお、後述する各エアロゲルも、このように、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。
エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよい。すなわち、エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層で構成されていてもよい。このようにして得られたエアロゲル積層体は、断熱性と柔軟性とのバランスに優れるものとなる。
加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物は、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基とは異なる反応性基(加水分解性の官能基及び縮合性の官能基に該当しない官能基)を更に有していてもよい。反応性基としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、メルカプト基、グリシドキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びアミノ基が挙げられる。エポキシ基は、グリシドキシ基等のエポキシ基含有基に含まれていてもよい。前記反応性基を有するポリシロキサン化合物は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
官能基として、エアロゲルの柔軟性を向上する観点から、例えば、アルコキシ基、シラノール基、ヒドロキシアルキル基及びポリエーテル基が挙げられる。官能基として、ゾルの相溶性を向上する観点から、例えば、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基が挙げられる。ポリシロキサン化合物の反応性の向上とエアロゲルの熱伝導率の低減の観点から、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基の炭素数は1〜6とすることができ、エアロゲルの柔軟性をより向上する観点から2〜4であってもよい。
ヒドロキシアルキル基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(A)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
式(A)中、R1aはヒドロキシアルキル基を示し、R2aはアルキレン基を示し、R3a及びR4aはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、nは1〜50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。式(A)中、2個のR1aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のR2aは各々同一であっても異なっていてもよい。式(A)中、2個以上のR3aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR4aは各々同一であっても異なっていてもよい。
上記構造のポリシロキサン化合物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルから生成された湿潤ゲル)を用いることにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを更に得易くなる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(A)中、R1aとしては、例えば炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基が挙げられ、具体的には、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基が挙げられる。式(A)中、R2aとしては、例えば炭素数が1〜6のアルキレン基が挙げられ、具体的には、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。式(A)中、R3a及びR4aはそれぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(A)中、nは2〜30とすることができ、5〜20であってもよい。
上記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003等の化合物(いずれも、信越化学工業株式会社製)、及び、XF42−B0970、Fluid OFOH 702−4%等の化合物(いずれも、モメンティブ社製)が挙げられる。
アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(B)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
式(B)中、R1bはアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示し、R2b及びR3bはそれぞれ独立にアルコキシ基を示し、R4b及びR5bはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、mは1〜50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えば、フェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えば、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。なお、式(B)中、2個のR1bは各々同一であっても異なっていてもよく、2個のR2bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のR3bは各々同一であっても異なっていてもよい。式(B)中、mが2以上の整数の場合、2個以上のR4bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR5bは各々同一であっても異なっていてもよい。
上記構造のポリシロキサン化合物又はその加水分解生成物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルから生成された湿潤ゲル)を用いることにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを更に得易くなる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(B)中、R1bとしては、例えば炭素数が1〜6のアルキル基及び炭素数が1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メチル基、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。式(B)中、R2b及びR3bは、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルコキシ基であってもよい。該アルコキシ基としては、例えばメトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。式(B)中、R4b及びR5bは、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(B)中、mは2〜30とすることができ、5〜20であってもよい。
上記一般式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物は、例えば、特開2000−26609号公報、特開2012−233110号公報等にて報告される製造方法を適宜参照して得ることができる。
なお、アルコキシ基は加水分解するため、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物はゾル中にて加水分解生成物として存在する可能性があり、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物と、その加水分解生成物とは混在していてもよい。また、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物において、分子中のアルコキシ基の全てが加水分解されていてもよいし、部分的に加水分解されていてもよい。
加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
良好な反応性を更に得易くなることから、上記ゾルに含まれるポリシロキサン化合物群の含有量(加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物の含有量、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物の含有量の総和)は、ゾルの総量100質量部に対し、1質量部以上とすることができ、3質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。良好な相溶性を更に得易くなることから、ポリシロキサン化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下とすることができ、30質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。すなわち、ポリシロキサン化合物及び該ポリシロキサン化合物の加水分解生成物の含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、5〜50質量部とすることができ、10〜30質量部であってもよく、10〜15質量部であってもよい。
[第二の態様]
加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、ポリシロキサン化合物以外のケイ素化合物(シリコン化合物)を用いてもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(以下、場合により「ケイ素化合物群」という)を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であってもよい。ケイ素化合物における分子内のケイ素数は、1又は2とすることができる。
本実施形態に係るエアロゲルを作製するにあたり、上記のポリシロキサン化合物群を含有するゾルは、ケイ素化合物群を更に含有することができる。
加水分解性の官能基を有するケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルキルケイ素アルコキシドが挙げられる。アルキルケイ素アルコキシドにおいて、耐水性が向上する観点から、加水分解性の官能基の数は、3個以下であってもよく、2〜3個であってもよい。アルキルケイ素アルコキシドとしては、例えば、モノアルキルトリアルコキシシラン、モノアルキルジアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、モノアルキルモノアルコキシシラン、ジアルキルモノアルコキシシラン及びトリアルキルモノアルコキシシランが挙げられる。アルキルケイ素アルコキシドとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びエチルトリメトキシシランが挙げられる。
縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、シランテトラオール、メチルシラントリオール、ジメチルシランジオール、フェニルシラントリオール、フェニルメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、n−プロピルシラントリオール、ヘキシルシラントリオール、オクチルシラントリオール、デシルシラントリオール及びトリフルオロプロピルシラントリオールが挙げられる。
加水分解性の官能基の数が3個以下であり、反応性基を有するケイ素化合物として、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等も用いることができる。
縮合性の官能基を有し、前述の反応性基を有するケイ素化合物として、ビニルシラントリオール、3−グリシドキシプロピルシラントリオール、3−グリシドキシプロピルメチルシランジオール、3−メタクリロキシプロピルシラントリオール、3−メタクリロキシプロピルメチルシランジオール、3−アクリロキシプロピルシラントリオール、3−メルカプトプロピルシラントリオール、3−メルカプトプロピルメチルシランジオール、N−フェニル−3−アミノプロピルシラントリオール、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルシランジオール等も用いることができる。
分子末端の加水分解性の官能基が3個以下のケイ素化合物として、ビストリメトキシシリルメタン、ビストリメトキシシリルエタン、ビストリメトキシシリルヘキサン等も用いることができる。
加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
良好な反応性を更に得易くなることから、上記ゾルに含まれるケイ素化合物群の含有量(加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)の含有量、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物の含有量の総和)は、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上とすることができ、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよい。良好な相溶性を更に得易くなることから、ケイ素化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下とすることができ、30質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよい。すなわち、ケイ素化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、5〜50質量部とすることができ、10〜30質量部であってもよく、15〜25質量部であってもよい。
ポリシロキサン化合物群の含有量及びケイ素化合物群の含有量の総和は、良好な反応性を更に得易くなることから、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上とすることができ、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよい。良好な相溶性を更に得易くなることから、前記含有量の総和は、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下とすることができ、30質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよい。すなわち、前記含有量の総和は、ゾルの総量100質量部に対し、5〜50質量部とすることができ、10〜30質量部であってもよく、15〜30質量部であってもよく、20〜25質量部であってもよい。
前記ポリシロキサン化合物群の含有量と、前記ケイ素化合物群の含有量との比(ポリシロキサン化合物群:ケイ素化合物群)は、1:0.5〜1:4とすることができ、1:1〜1:2であってもよく、1:2〜1:4であってもよく、1:3〜1:4であってもよい。これらの化合物の含有量の比を1:0.5以上とすることにより、良好な相溶性を更に得易くなる。上記含有量の比を1:4以下とすることにより、ゲルの収縮を更に抑制し易くなる。
(第三の態様)
本実施形態に係るエアロゲルは、下記一般式(1)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、式(1)で表される構造を含む構造として、下記一般式(1a)で表される構造を有することができる。上記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、式(1)及び式(1a)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。
式(1)及び式(1a)中、R1及びR2はそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R3及びR4はそれぞれ独立にアルキレン基を示す。ここで、アリール基としては、例えば、フェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えば、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。pは1〜50の整数を示す。式(1a)中、2個以上のR1は各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR2は各々同一であっても異なっていてもよい。式(1a)中、2個のR3は各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のR4は各々同一であっても異なっていてもよい。
上記式(1)又は式(1a)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを容易に得ることができる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(1)及び式(1a)中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(1)及び式(1a)中、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキレン基であってもよい。該アルキレン基は、エチレン基又はプロピレン基であってもよい。式(1a)中、pは2〜30とすることができ、5〜20であってもよい。
(第四の態様)
本実施形態に係るエアロゲルは、支柱部及び橋かけ部を備えるラダー型構造を有するエアロゲルであり、かつ、橋かけ部が下記一般式(2)で表される構造を有するエアロゲルであってもよい。エアロゲルの骨格中にこのようなラダー型構造を導入することにより、耐熱性及び機械的強度を向上させることができる。上記一般式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、一般式(2)で表される構造を有する橋かけ部を含むラダー型構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。なお、本実施形態において「ラダー型構造」とは、2本の支柱部(struts)と支柱部同士を連結する橋かけ部(bridges)とを有するもの(いわゆる「梯子」の形態を有するもの)である。本態様において、エアロゲル骨格がラダー型構造からなっていてもよいが、エアロゲルが部分的にラダー型構造を有していてもよい。
式(2)中、R5及びR6はそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、bは1〜50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えば、フェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えば、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。なお、式(2)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のR5は各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR6は各々同一であっても異なっていてもよい。
上記の構造をエアロゲルの骨格中に導入することにより、例えば、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有する(すなわち、下記一般式(X)で表される構造を有する)エアロゲルよりも優れた柔軟性を有するエアロゲルとなる。なお、下記一般式(X)にて示すように、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有するエアロゲルでは、橋かけ部の構造が−O−であるが、本態様のエアロゲルでは、橋かけ部の構造が上記一般式(2)で表される構造(ポリシロキサン構造)である。
式(X)中、Rはヒドロキシ基、アルキル基又はアリール基を示す。
支柱部となる構造及びその鎖長、並びに橋かけ部となる構造の間隔は特に限定されないが、耐熱性と機械的強度とをより向上させる観点から、ラダー型構造としては、下記一般式(3)で表されるラダー型構造を有していてもよい。
式(3)中、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、a及びcはそれぞれ独立に1〜3000の整数を示し、bは1〜50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えば、フェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えば、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。式(3)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のR5は各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR6は各々同一であっても異なっていてもよい。式(3)中、aが2以上の整数の場合、2個以上のR7は各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、cが2以上の整数の場合、2個以上のR8は各々同一であっても異なっていてもよい。
より優れた柔軟性を得る観点から、式(2)及び式(3)中、R5、R6、R7及びR8(ただし、R7及びR8は式(3)中のみ)は、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(3)中、a及びcは、それぞれ独立に6〜2000とすることができ、10〜1000であってもよい。式(2)及び式(3)中、bは、2〜30とすることができ、5〜20であってもよい。
[第五の態様]
本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有していてもよい。すなわち、エアロゲルを与えるゾルは、シリカ粒子を更に含有していてもよい。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるもの)であってもよい。エアロゲル層は、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよい。すなわち、エアロゲル層は、シリカ粒子を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層で構成されていてもよい。該エアロゲル層は、シリカ粒子が複合化された層である。なお、これまで述べてきたエアロゲルも、このように、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。これにより、更に優れた断熱性及び柔軟性を達成することができる。
本実施形態に係るシリカ粒子を含有するエアロゲルは、下記一般式(4)で表される構造を有することができる。
式(4)中、R9はアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、炭素数が1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基が挙げられる。
本実施形態に係るシリカ粒子を含有するエアロゲルは、下記一般式(5)で表される構造を有することができる。
式(5)中、R10及びR11はそれぞれ独立にアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、炭素数が1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基が挙げられる。
本実施形態に係るシリカ粒子を含有するエアロゲルは、下記一般式(6)で表される構造を有することができる。
式(6)中、R12はアルキレン基を示す。アルキレン基としては、例えば、炭素数が1〜10のアルキレン基が挙げられ、具体的には、エチレン基及びヘキシレン基が挙げられる。
シリカ粒子としては特に制限なく用いることができ、例えば、非晶質シリカ粒子が挙げられる。非晶質シリカ粒子としては、例えば、溶融シリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子及びコロイダルシリカ粒子が挙げられる。これらのうち、コロイダルシリカ粒子は単分散性が高く、ゾル中での凝集を抑制し易い。
シリカ粒子の形状としては、特に制限されず、球状、まゆ型、会合型等が挙げられる。これらのうち、シリカ粒子として球状の粒子を用いることにより、ゾル中での凝集を抑制し易くなる。シリカ粒子の平均一次粒子径は、適度な強度をエアロゲルに付与し易くなり、乾燥時の耐収縮性に優れるエアロゲルが得易くなることから、1nm以上とすることができ、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。一方、シリカ粒子の固体熱伝導を抑制し易くなり、断熱性に優れるエアロゲルが得易くなることから、シリカ粒子の平均一次粒子径は、500nm以下とすることができ、300nm以下であってもよく、250nm以下であってもよい。すなわち、シリカ粒子の平均一次粒子径は、1〜500nmとすることができ、5〜300nmであってもよく、10〜250nmであってもよい。
本実施形態において、シリカ粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(以下「SEM」と略記する。)を用いてエアロゲル層の断面を直接観察することにより得ることができる。例えば、三次元網目骨格からは、その断面の直径に基づきシリカ粒子個々の粒子径を得ることができる。ここでいう直径とは、三次元網目骨格を形成する骨格の断面を円とみなした場合の直径を意味する。また、断面を円とみなした場合の直径とは、断面の面積を同じ面積の円に置き換えたときの当該円の直径のことである。なお、平均粒子径の算出に当たっては、100個の粒子について円の直径を求め、その平均を取るものとする。
また、エアロゲル層を形成する前に原料のシリカ粒子から平均粒子径を測定することが可能である。例えば、二軸平均一次粒子径は、任意の粒子20個をSEMにより観察した結果から、次のようにして算出される。すなわち、通常水に分散している固形分濃度5〜40質量%のコロイダルシリカ粒子を例にすると、コロイダルシリカ粒子の分散液にパターン配線付きウエハを2cm角に切ったチップを約30秒間浸した後、当該チップを純水にて約30秒間すすぎ、窒素ブロー乾燥する。その後、チップをSEM観察用の試料台に載せ、加速電圧10kVを掛け、10万倍の倍率にてシリカ粒子を観察し、画像を撮影する。得られた画像から20個のシリカ粒子を任意に選択し、それらの粒子の粒子径の平均を平均粒子径とする。この際、選択したシリカ粒子が図3に示すような形状であった場合、シリカ粒子Pに外接し、その長辺が最も長くなるように配置した長方形(外接長方形L)を導く。そして、その外接長方形Lの長辺をX、短辺をYとして、(X+Y)/2として二軸平均一次粒子径を算出し、その粒子の粒子径とする。
耐収縮性に優れるエアロゲルを得易くなることから、シリカ粒子の1g当りのシラノール基数は、10×1018個/g以上とすることができ、50×1018個/g以上であってもよく、100×1018個/g以上であってもよい。一方、均質なエアロゲルが得易くなることから、シリカ粒子の1g当りのシラノール基数は、1000×1018個/g以下とすることができ、800×1018個/g以下であってもよく、700×1018個/g以下であってもよい。すなわち、シリカ粒子の1g当りのシラノール基数は、10×1018〜1000×1018個/gとすることができ、50×1018〜800×1018個/gであってもよく、100×1018〜700×1018個/gであってもよい。
適度な強度をエアロゲルに付与し易くなり、乾燥時の耐収縮性に優れるエアロゲルが得易くなることから、上記ゾルに含まれるシリカ粒子の含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、1質量部以上とすることができ、4質量部以上であってもよい。一方、シリカ粒子の固体熱伝導を抑制し易くなり、断熱性に優れるエアロゲルが得易くなることから、上記ゾルに含まれるシリカ粒子の含有量は、20質量部以下とすることができ、15質量部以下であってもよく、12質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよく、8質量部以下であってもよい。すなわち、シリカ粒子の含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、1〜20質量部とすることができ、4〜15質量部であってもよく、4〜12質量部であってもよく、4〜10質量部であってもよく、4〜8質量部であってもよい。
(その他の態様)
本実施形態に係るエアロゲルは、ポリシロキサン由来の構造を有していてもよい。ポリシロキサン由来の構造としては、例えば、上記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)で表される構造が挙げられる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有せずに、上記一般式(4)、(5)及び(6)で表される構造のうち、少なくとも一種を有するものであってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲル層は、ポリシロキサン由来の構造を有するエアロゲルを含有する層で構成されていてもよい。ポリシロキサン由来の構造としては、例えば、上記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)で表される構造が挙げられる。よって、本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有せずに、上記一般式(4)、(5)及び(6)で表される構造のうち、少なくとも一種を有するものであってもよい。
エアロゲル層の厚みは、良好な断熱性を得易くなることから、1μm以上とすることができ、10μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。一方、薄型化の観点から、エアロゲル層の厚みは200μm以下とすることができ、100μm以下であってもよく、80μm以下であってもよい。すなわち、エアロゲル層の厚みは、1〜200μmとすることができ、10〜100μmであってもよく、30〜80μmであってもよい。
より優れた強度及び柔軟性を得る観点から、エアロゲル層の25℃における密度は、0.05g/cm3以上とすることができ、0.1g/cm3以上であってもよく、0.2g/cm3以上であってもよい。一方、より優れた断熱性を得る観点から、エアロゲル層の25℃における密度は、0.3g/cm3以下とすることができ、0.25g/cm3以下であってもよく、0.2g/cm3以下であってもよい。すなわち、エアロゲル層の25℃における密度は0.05〜0.3g/cm3とすることができ、0.1〜0.25g/cm3であってもよく、0.1〜0.2g/cm3であってもよい。
より優れた断熱性を得る観点から、エアロゲル層の25℃における気孔率は、85%以上とすることができ、87%以上であってもよく、より優れた強度及び柔軟性を得る観点から、95%以下とすることができ、93%以下であってもよい。すなわち、エアロゲル層の25℃における気孔率は、85〜95%とすることができ、87〜93%であってもよい。
エアロゲル層の密度及び気孔率は、DIN66133に準じて水銀圧入法により測定することができる。測定装置としては、例えば、オートポアIV9520(株式会社島津製作所製、製品名)を用いることができる。
<樹脂層>
本実施形態に係る樹脂層は、非エアロゲル層であり、分子構造中に窒素原子を有する樹脂を含有する層である。樹脂層は、構成原子として窒素を有する樹脂を含有することで、エアロゲル層との接着性を向上することができる。窒素原子を有する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び、紫外線等の活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることできる。樹脂層は、単層であっても複層であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、N−ビニル樹脂及びポリイミド樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、不飽和炭化水素基等の官能基を有する熱硬化性の化合物と、硬化剤とを反応させた樹脂を用いることができる。硬化剤として、例えば、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、チオール基、イソシアネート基等の官能基を有する化合物、酸無水物、金属塩化物、金属酸化物、過酸化物等を用いることができる。熱硬化性樹脂の硬化反応速度を増加する目的で、触媒を添加してもよい。熱硬化性樹脂として、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、チオウレタン樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、スルホアミド樹脂、アニリン樹脂、シアネート樹脂及びイソシアネート樹脂が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等をベースポリマーとし、ラジカル重合性又はカチオン重合性官能基を付与させた樹脂が挙げられる。ラジカル重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。また、カチオン重合性官能基としては、例えば、エポキシ基、グリシジルエーテル基、グリシジルアミノ基等が挙げられる。具体的な活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
上述した樹脂は、窒素原子を含む官能基を有していてもよい。このような官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、イミド基、ウレタン基、イソシアネート基、カルボジイミド基、アロファネート基、ビウレット基、オキサゾリドン基、スルホアミド基、チオウレタン基及びイソチオシアネート基が挙げられる。
樹脂層とエアロゲル層との接着性を向上する観点から、窒素原子を有する樹脂として、ウレタン結合、アミド結合、ウレア結合、イミド結合、スルホンアミド結合、チオウレタン結合、チオアミド結合、チオウレア結合及びチオイミド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を有する樹脂を用いることができる。窒素原子を有する樹脂が、ウレタン結合を有する樹脂を含有すると、樹脂層とエアロゲル層との接着性により優れるものとなる。
ウレタン結合を有する樹脂としては、例えば、水酸基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物とから合成される樹脂を用いることができる。
水酸基を有する化合物としては、例えば、水酸基を1つ有するモノオール化合物及び水酸基を2つ以上有するポリオール化合物が挙げられる。樹脂層の強度を高くする観点から、ポリオール化合物を用いることができる。水酸基を有する化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びフッ素化ポリオールが挙げられる。樹脂層の柔軟性を向上する観点から、ポリオール化合物は、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール又はフッ素化ポリオールであってもよく、アクリルポリオールであってもよい。
アクリルポリオールとしては、特に限定されず、変性されたものであってもよい。アクリルポリオールとして、例えば、三菱レイヨン株式会社の製品名「ダイヤナールLR−2586」(水酸基価60mgKOH/g、酸価3mgKOH/g、重量平均分子量30000、ガラス転移温度40℃)、株式会社日本触媒の製品名「アクリセット2050−55」、日立化成株式会社の製品名「ヒタロイド3371」等を商業的に入手することができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソシアネート基を1つ有するモノイソシアネート化合物及びイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリオール化合物と良好に反応し、形成される塗膜が高い強度を有することから、ポリイソシアネート化合物を用いることができる。イソシアネート基を有する化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、旭化成株式会社の製品名「デュラネート24A−90PX」(NCO:23.6%)、住友バイエルウレタン株式会社の製品名「スミジュールN−3200−90M」、三井武田ケミカル株式会社の製品名「タケネートD165N−90X」、住友バイエルウレタン株式会社の製品名「スミジュールN−3300」、「スミジュールN−3500」、旭化成株式会社の製品名「デュラネートTHA−100」、「TLA−100」、「TSA−100」、「TPA−100」等を商業的に入手することができる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、DIC株式会社の製品名「バーノックD−750」、「DN−950」、「DN−980」等を商業的に入手することができる。
ウレタン結合を有する樹脂を作製する際のポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基と、ポリオール化合物が有する水酸基との当量比(NCO/OH当量比)は、0.1:1〜10:1とすることができ、0.3:1〜10:1であってよく、0.5:1〜10:1であってよい。イソシアネート基と水酸基との当量比が上記範囲内にあると、塗膜中の架橋反応が進行し易くなり、樹脂層の強度が高くなり、樹脂層の耐久性も高くなる傾向にある。NCO/OH当量比は、ポリオール化合物中の水酸基(OH)に対するポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO)のモル比を示す。
本実施形態に係る樹脂層には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、窒素を含まない樹脂成分又は各種添加剤を更に含んでいてもよい。
窒素を含まない樹脂成分は、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選択される少なくとも1種以上の原子を含む官能基を有していてもよい。このような官能基としては、例えば、水酸基、エーテル基、エポキシ基、カルボキシル基、エステル基、メルカプト基、チオエーテル基、チオエステル基及びスルホニル基が挙げられる。
樹脂層に含まれる窒素を含まない樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。当該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含塩素樹脂、含フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、スチレンアクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ変性ポリエステル、ポリブタジエン(メタ)アクリレート及びアクリル変性ポリエステル等が挙げられる。
樹脂層に含まれる各種添加剤としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、架橋剤、難燃剤、難燃助剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、レベリング剤、滑り賦活剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、核剤、染料、充填剤、分散剤及びカップリング剤が挙げられる。
樹脂層の厚さは、基材及びエアロゲル層と良好な接着性を得る観点から、1nm以上とすることができ、100nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。また、樹脂層の厚さは、エアロゲル積層体の断熱性能を向上する観点から、5μm以下とするができ、3μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。すなわち、樹脂層の厚さは、1nm〜5μmであってもよく、100nm〜3μmであってもよく、500nm〜1μmであってもよい。
<基材>
本実施形態に係る基材は、非エアロゲル層であり、基材の構成としては、特に限定されず、単層でも複層でも構わない。基材の形状としては、エアロゲル積層体に軽量性を付与できることから、フィルム状又は箔状とすることができる。
基材は、熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する層を少なくとも1層有すると、エアロゲル積層体の断熱性をより向上することができる。熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する基材は、輻射体として働き、外部からの熱を遮断する役割を果たすことができる。
熱線反射機能とは、例えば、800〜3000nm程度の近赤外又は赤外領域における光の反射が、光の吸収及び光の透過よりも大きい機能をいう。これに対して、熱線吸収機能とは、例えば、800〜3000nm程度の近赤外又は赤外領域における光の吸収が、光の反射及び光の透過よりも大きい機能をいう。ここで、光の反射には光の散乱が含まれる。
本実施形態に係る基材は、熱線反射機能を有する層及び熱線吸収機能を有する層のうち少なくとも一方から構成されていてもよく、熱線反射機能を有する層のみからなるものでも、熱線吸収機能を有する層のみからなるものでもよい。また、基材は、熱線反射機能を有する層と熱線吸収機能を有する層とが積層されたものであってもよい。さらに、基材は、熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する層と熱線反射機能及び熱線吸収機能を有しない層とが積層されたものでもよい。この場合、熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する層は、熱線反射機能及び熱線吸収機能を有しない層の片面又は両面に形成されていてもよい。
熱線反射機能を有する層は、熱線反射性の材料を含むことができる。熱線反射性の材料としては、近赤外又は赤外領域の光を反射する材料であれば、特に限定されない。熱線反射性の材料として、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、アルミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ハイドロタルサイト等のマグネシウム化合物、銀等の銀化合物、チタン、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等のチタン化合物、銅、青銅等の銅化合物、ステンレス、ニッケル、錫、シラスバルーン等のマイクロバルーン、セラミックバルーン及びパールマイカが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、熱伝導率を低減し易く、廉価性及び取り扱い性に優れる観点から、熱線反射性の材料として、アルミニウム、マグネシウム、銀又はチタンを含む材料を用いることができる。
熱線反射機能を有する層は、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔から構成されていてもよい。また、熱線反射機能を有する層は、アルミニウムペースト又は酸化チタンをポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等の樹脂に混練して作製される樹脂フィルムであってもよい。さらに、熱線反射機能を有する層は、アルミニウム、銀等をスパッタリング、真空蒸着等の物理蒸着又は化学蒸着により、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等の樹脂フィルムへ蒸着した蒸着フィルムであってもよい。
熱線吸収機能を有する層は、熱線吸収性の材料を含むことができる。熱線吸収性の材料としては、近赤外又は赤外領域の光を吸収する物質であれば、特に限定されない。熱線吸収性の材料として、例えば、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛等のカーボングラファイト、カーボンブラックなどの炭素粉末;硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、メルカライト(KHSO4)、ハロトリ石、ミョウバン石、鉄ミョウバン石等の金属硫酸塩;三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、無水酸化アンチモン酸亜鉛等の金属酸化物;アンモニウム系、尿素系、イモニウム系、アミニウム系、シアニン系、ポリメチン系、アントラキノン系、ジチオール系、銅イオン系、フェニレンジアミン系、フタロシアニン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系又はベンゾトリアゾール系の染料又は顔料を挙げることができる。
これらの中でも、熱線吸収性の材料としては、熱伝導率を低減し易く、廉価性及び取扱い性に優れる観点から、カーボングラファイト、カーボンブラック、金属硫酸塩又はアンチモン化合物を含む材料を用いることができる。熱伝導率をより一層低減する観点から、熱線吸収機能を有する層は、カーボンブラック、酸化アンチモン又は硫酸バリウムを混練して作製される樹脂フィルムであってもよい。
断熱性をより向上する観点から、基材は、カーボングラファイト、アルミニウム、マグネシウム、銀、チタン、カーボンブラック、金属硫酸塩及びアンチモン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料から構成される層を有することができる。取扱い性に優れると共に、断熱性を向上する観点から、基材は、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、銀蒸着フィルム又は酸化アンチモン含有フィルムであってもよい。
基材のエアロゲル層が設けられていない側の面には、エアロゲル積層体を複数層重ねた際にエアロゲル層を保護する目的で保護層を有していてもよい。保護層の構成材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、上述した樹脂層と同じ材料であってもよい。これらの樹脂層は、単層であっても複層であってもよい。
基材のエアロゲル層が積層されていない側の面には、離型処理を施してもよい。
基材の厚みは特に限定されないが、ハンドリング性の観点から、3μm以上とすることができ、5μm以上であってもよく、7μm以上であってもよい。一方、断熱性を向上する観点から、基材の厚みは、100μm以下とすることができ、80μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。すなわち、基材の厚みは3〜100μmとすることができ、5〜80μmであってもよく、7〜50μmであってもよい。
<エアロゲル積層体の製造方法>
本実施形態のエアロゲル積層体の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法により製造することができる。
すなわち、本実施形態のエアロゲル積層体は、基材に窒素原子を有する樹脂を含有する樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、エアロゲルを形成するためのゾルを作製するゾル生成工程と、樹脂層を設けた基材にゾル生成工程で得られたゾルを塗布し、乾燥してエアロゲル層を形成する塗工工程と、塗工工程で得られたエアロゲル層を熟成する熟成工程と、熟成したエアロゲル層を洗浄及び溶媒置換する工程と、洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換したエアロゲル層を乾燥する乾燥工程を主に備える製造方法により製造することができる。なお、「ゾル」とは、ゲル化反応が生じる前の状態であって、本実施形態においては上記ケイ素化合物(必要に応じて、更にシリカ粒子)が溶媒中に溶解又は分散している状態を意味する。
以下、本実施形態のエアロゲル積層体の製造方法の各工程について説明する。
(樹脂層形成工程)
樹脂層形成工程は、上述の窒素原子を有する樹脂成分を有機溶媒と混合して得られる樹脂層形成用塗液を、基材に塗布し、乾燥することにより塗液を硬化させて基材の表面に樹脂層を形成する工程である。ただし、この樹脂層は、基材との接着力が確保される状態であることが望ましい。
有機溶媒としては、基材上に良好な塗膜が形成される溶媒であれば特に限定されないが、樹脂層形成用塗液に含まれる樹脂成分と反応しない溶媒を用いることができる。
有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物が挙げられる。
塗布装置としては、ダイコータ、コンマコータ、バーコータ、キスコータ、ロールコータ等を利用でき、樹脂層の厚みによって適宜使用される。塗布後の樹脂層形成用塗液からなる塗膜は、加熱等により乾燥することができる。
乾燥温度は、樹脂層形成用塗液中の溶媒量、溶媒の沸点によっても異なるが、例えば、50〜200℃とすることができ、80〜150℃であってもよい。乾燥温度を50℃以上とすることにより、短時間で樹脂層の乾燥を行うことができ、200℃以下とすることにより、基材との接着性を得易くなる。
乾燥時間は、乾燥温度によって異なるが、例えば、0.2〜10分とすることができ、0.5〜5分であってもよい。乾燥時間を0.2分以上とすることにより、樹脂層が形成し易くなり、10分以下とすることにより、基材との接着性を得易くなる。上記乾燥条件は、予め簡単な実験により適宜設定することができる。
(ゾル生成工程)
ゾル生成工程は、上述のケイ素化合物と、場合によりシリカ粒子を含む溶媒とを混合し、加水分解反応を行った後、ゾルゲル反応を行い、半ゲル化のゾル塗液を得る工程である。本工程においては、加水分解反応を促進させるため、溶媒中にさらに酸触媒を添加してもよい。また、特許第5250900号公報に示されるように、溶媒中に界面活性剤、熱加水分解性化合物等を添加することもできる。さらに、ゲル化反応を促進させるため、塩基触媒を添加してもよい。なお、本工程、後述する塗工工程及び熟成工程における工程時間を短縮し、加熱及び乾燥温度を低温化する観点から、ゾル中にシリカ粒子を含有するとよい。
溶媒としては、後述する塗工工程において、良好な塗膜性が得られれば特に限定されず、例えば、水、又は、水及びアルコールの混合液を用いることができる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール及びt−ブタノールが挙げられる。これらの中でも、表面張力が高く、揮発性が低い点から、水を用いることができる。
酸触媒としては、例えば、フッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、臭素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸等の無機酸類;酸性リン酸アルミニウム、酸性リン酸マグネシウム、酸性リン酸亜鉛等の酸性リン酸塩類;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、アゼライン酸等の有機カルボン酸類が挙げられる。これらの中でも、得られるエアロゲル層の耐水性をより向上する酸触媒として、有機カルボン酸類を用いることができ、具体的には、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸又はマロン酸が挙げられ、酢酸であってもよい。これらは単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
酸触媒を用いることで、ケイ素化合物及びポリシロキサン化合物の加水分解反応を促進させて、より短時間でゾルを得ることができる。
酸触媒の添加量は、ケイ素化合物及びポリシロキサン化合物の総量100質量部に対し、0.001〜0.1質量部とすることができる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等を用いることができる。これらは単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含む化合物、ポリオキシプロピレン等の親水部を含む化合物などを使用できる。ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含む化合物としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシプロピレン等の親水部を含む化合物としては、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体等が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等を用いることができる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム及び塩化セチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。両イオン性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤及びアミンオキシド系界面活性剤が挙げられる。アミノ酸系界面活性剤としては、例えば、アシルグルタミン酸が挙げられる。ベタイン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。アミンオキシド系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
これらの界面活性剤は、後述する塗工工程において、反応系中の溶媒と、成長していくシロキサン重合体との間の化学的親和性の差異を小さくし、相分離を抑制する作用をすると考えられている。
界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、又は、ケイ素化合物(ケイ素化合物群及びポリシロキサン化合物群)の種類並びに量にも左右されるが、例えば、ケイ素化合物の総量100質量部に対し、1〜100質量部とすることができ、5〜60質量部であってもよい。
熱加水分解性化合物は、熱加水分解により塩基触媒を発生して、反応溶液を塩基性とし、ゾルゲル反応を促進すると考えられている。よって、この熱加水分解性化合物としては、加水分解後に反応溶液を塩基性にできる化合物であれば、特に限定されず、例えば、尿素;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の酸アミド;ヘキサメチレンテトラミン等の環状窒素化合物を挙げることができる。これらの中でも、特に尿素は上記促進効果を得られ易い。
熱加水分解性化合物の添加量は、ゾルゲル反応を十分に促進することができる量であれば、特に限定されない。例えば、熱加水分解性化合物として尿素を用いた場合、その添加量は、ケイ素化合物(ケイ素化合物群及びポリシロキサン化合物群)の総量100質量部に対して、1〜200質量部とすることができ、2〜150質量部であってもよい。添加量を1質量部以上とすることにより、良好な反応性を更に得易くなり、また、200質量部以下とすることにより、結晶の析出及びゲル密度の低下を更に抑制し易くなる。
ゾル生成工程の加水分解は、混合液中のケイ素化合物、ポリシロキサン化合物シリカ粒子、酸触媒、界面活性剤等の種類及び量にも左右されるが、例えば20〜60℃の温度環境下で、10分〜24時間行ってもよく、50〜60℃の温度環境下で5分〜8時間行ってもよい。これにより、ケイ素化合物及びポリシロキサン化合物中の加水分解性官能基が十分に加水分解され、ケイ素化合物の加水分解生成物及びポリシロキサン化合物の加水分解生成物をより確実に得ることができる。
溶媒中に熱加水分解性化合物を添加する場合は、ゾル生成工程の温度環境を、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制してゾルのゲル化を抑制する温度に調節してもよい。この時の温度は、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制できる温度であれば、いずれの温度であってもよい。例えば、熱加水分解性化合物として尿素を用いた場合は、ゾル生成工程の温度環境は0〜40℃とすることができ、10〜30℃であってもよい。
塩基触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム化合物;メタ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、ポリ燐酸ナトリウム等の塩基性燐酸ナトリウム塩;アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3−メトキシアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン類;モルホリン、N−メチルモルホリン、2−メチルモルホリン、ピペラジン及びその誘導体、ピペリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体等の含窒素複素環状化合物類などが挙げられる。これらの中でも、水酸化アンモニウム(アンモニア水)は、揮発性が高く、乾燥後のエアロゲル層に残存し難いため耐水性を損ないづらいという点、更には経済性の点で優れている。上記の塩基触媒は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
塩基触媒を用いることで、ゾル中のケイ素化合物(ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群)及びシリカ粒子の脱水縮合反応及び/又は脱アルコール縮合反応を促進することができ、ゾルのゲル化をより短時間で行うことができる。特に、アンモニアは揮発性が高く、エアロゲル層に残留し難いので、塩基触媒としてアンモニアを用いることで、より耐水性の優れたエアロゲル層を得ることができる。
塩基触媒の添加量は、ケイ素化合物(ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群)の総量100質量部に対し、0.5〜5質量部とすることができ、1〜4質量部であってもよい。塩基触媒の添加量を0.5質量部以上とすることにより、ゲル化をより短時間で行うことができ、5質量部以下とすることにより、耐水性の低下をより抑制することができる。
ゾル生成工程におけるゾルゲル反応は、後述する塗工工程において、良好な塗膜性を得る目的から、ゾルを半ゲル化状態にすることが必要である。この反応は、溶媒及び塩基触媒が揮発しないように密閉容器内で行うことが好ましい。ゲル化温度は、ゾル中のケイ素化合物、ポリシロキサン化合物、シリカ粒子、酸触媒、界面活性剤、塩基触媒等の種類及び量にも左右されるが、30〜90℃とすることができるが、40〜80℃であってもよい。ゲル化温度を30℃以上とすることにより、ゲル化をより短時間に行うことができ、ゲル化温度を90℃以下にすることにより、急なゲル化を抑制することができる。
ゾルゲル反応の時間は、ゲル化温度により異なるが、本実施形態においてはゾル中にシリカ粒子を含有する場合は、従来のエアロゲルに適用されるゾルと比較して、ゲル化時間を短縮することができる。この理由は、ゾル中のケイ素化合物(ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群)が有するシラノール基及び/又は反応性基が、シリカ粒子のシラノール基と水素結合及び/又は化学結合を形成するためであると推察する。なお、ゲル化時間は、10〜360分とすることができ、20〜180分であってもよい。ゲル化時間を10分以上とすることにより、ゾルの粘度が向上し、後述する塗工工程において良好な塗工性を得易くなり、360分以下とすることにより、ゾルの完全ゲル化を抑制し、樹脂層との接着性を得易くなる。
(塗工工程)
塗工工程は、上記ゾル生成工程で得られた半ゲル化状態のゾル塗液を、樹脂層が設けられた基材に塗工し、樹脂層上にエアロゲル層を形成する工程である。具体的には、上記ゾル塗液を、樹脂層が設けられた基材に塗布し、乾燥することによりゾル塗液をゲル化させてエアロゲル層を樹脂層の表面に形成する。ただし、このエアロゲル層は、樹脂層との接着力が確保される状態であることが望ましい。本実施形態のエアロゲル積層体は、ロール状に巻き取って貯蔵することができる。
塗工装置としては、ダイコータ、コンマコータ、バーコータ、キスコータ、ロールコータ等が利用でき、エアロゲル層の厚みによって適宜使用される。塗工後のゾル塗液からなる塗膜は、加熱等により乾燥することができる。
ゾル塗液を樹脂層が設けられた基材に塗布した後の乾燥は、例えば、乾燥後のエアロゲル層の含水率が10質量%以上となる条件で行うことができ、50質量%以上となる条件で行ってもよい。エアロゲル層の含水量を10質量%とすることにより、樹脂層との接着性を得易くなる。
乾燥温度は、ゾル塗液中の水分量及び/又は有機溶媒量、有機溶媒の沸点によっても異なるが、例えば、50〜150℃とすることができ、60〜120℃であってもよい。乾燥温度を50℃以上とすることにより、ゲル化をより短時間で行うことができ、150℃以下とすることにより、樹脂層との接着性を得易くなる。
乾燥時間は、乾燥温度によって異なるが、例えば、0.2〜10分とすることができ、0.5〜8分であってもよい。乾燥時間を0.2分以上とすることにより、エアロゲル層が形成し易くなり、10分以下とすることにより、樹脂層との接着性を得易くなる。上記乾燥条件は、予め簡単な実験により適宜設定することができる。
また、エアロゲル層の基材側と反対の面には、セパレーターを更に積層することができる。セパレーターを積層することにより、エアロゲル積層体をロール状に巻き取った際の、上記エアロゲル面の基材の裏面への転写を防止することができる。塗工工程において、セパレーターを積層する場合、例えば、ゾル塗液を塗布した後に積層してもよく、ゾル塗液からなる塗膜を乾燥した後に積層してもよい。セパレーターとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等の樹脂からなる樹脂フィルム、銅箔、アルミニウム箔等の金属箔及び離型紙を挙げることができる。これらの中でも、ゾル塗液を塗布した後にセパレーターを積層する場合は、エアロゲル層の含水率を高く保てる観点から、樹脂フィルムを用いることができる。なお、セパレーターには、マット処理、コロナ処理等の離型処理を施してもよい。
(熟成工程)
熟成工程は、上記塗工工程により形成されたエアロゲル層を、加熱にて熟成させる工程である。本工程において、エアロゲル層の樹脂層に対する接着性の低下を抑制する観点から、エアロゲル層の含水率が10質量%以上となるように熟成させるとよく、50質量%以上となるように熟成させるとよりよい。熟成方法としては、上記範囲を満足すれば特に制限されないが、例えば、エアロゲル積層体を、密閉雰囲気で熟成する方法、及び、加熱による含水率の低下を抑制できる恒湿恒温槽等を用いて熟成する方法が挙げられる。
熟成温度は、例えば、40〜90℃とすることができ、50〜80℃であってもよい。熟成温度を40℃以上とすることにより、熟成時間を短縮できる。熟成温度を90℃以下とすることにより、含水率の低下を抑制できる。
熟成時間は、例えば、1〜48時間とすることができ、3〜24時間であってもよい。熟成時間を1時間以上とすることにより、優れた断熱性を得ることができ、48時間以下にすることにより、樹脂層との高い接着性を得ることができる。
(洗浄及び溶媒置換工程)
洗浄及び溶媒置換工程は、上記熟成工程により得られたエアロゲル積層体を洗浄する工程(洗浄工程)と、後述する乾燥工程に適した溶媒に置換する工程(溶媒置換工程)を有する工程である。洗浄及び溶媒置換手法は特に制限はされない。洗浄及び溶媒置換工程は、エアロゲル積層体を洗浄する工程を行わず、溶媒置換工程のみを行う形態でも実施可能であるが、エアロゲル層中の未反応物、副生成物等の不純物を低減し、より純度の高いエアロゲル積層体の製造を可能にする観点からは、熟成後のエアロゲル層を洗浄してもよい。
洗浄工程では、上記熟成工程で得られたエアロゲル積層体に対し、水又は有機溶媒を用いて、エアロゲル層を繰り返し洗浄してもよい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ギ酸等の各種の有機溶媒を使用することができる。上記の有機溶媒は単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
後述する溶媒置換工程では、乾燥によるエアロゲル層の収縮を抑制するため、低表面張力の溶媒を用いることができる。しかし、低表面張力の溶媒は、一般的に水との相互溶解度が極めて低い。そのため、溶媒置換工程において低表面張力の溶媒を用いる場合、洗浄工程で用いる有機溶媒は、水及び低表面張力の溶媒の双方に対して高い相互溶解性を有する親水性有機溶媒であることが好ましい。なお、洗浄工程において用いられる親水性有機溶媒は、溶媒置換工程のための予備置換の役割を果たすことができる。このことから、上記の有機溶媒の中でも、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等の親水性有機溶媒を用いることができ、さらに経済性の点から、メタノール、エタノール又はメチルエチルケトンを用いてもよい。
洗浄工程に使用される水又は有機溶媒の量としては、エアロゲル層中の溶媒を十分に置換し、洗浄できる量とすることができ、エアロゲル層の容量に対して3〜10倍の量の溶媒を用いることができる。洗浄は、洗浄後のエアロゲル層中の含水率が10質量%以下となるまで繰り返すことができる。
洗浄工程における温度は、洗浄に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができ、例えば、メタノールを用いる場合は、30〜60℃程度とすることができる。
溶媒置換工程では、後述する乾燥工程におけるエアロゲル層の収縮を抑制するため、洗浄したエアロゲル層に含まれる溶媒を所定の置換用溶媒に置き換える。この際、加温することにより置換効率を向上させることができる。置換用溶媒としては、具体的には、乾燥工程において、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥する場合は、後述の低表面張力の溶媒が挙げられる。一方、超臨界乾燥をする場合は、置換用溶媒として、例えば、エタノール、メタノール、2−プロパノール、ジクロロジフルオロメタン又は二酸化炭素を単独で用いてもよく、これらを2種類以上混合した溶媒を用いてもよい。
低表面張力の溶媒としては、例えば、20℃における表面張力が30mN/m以下の溶媒が挙げられる。当該表面張力は、25mN/m以下であってもよく、20mN/m以下であってもよい。低表面張力の溶媒としては、例えば、ペンタン(15.5)、ヘキサン(18.4)、ヘプタン(20.2)、オクタン(21.7)、2−メチルペンタン(17.4)、3−メチルペンタン(18.1)、2−メチルヘキサン(19.3)、シクロペンタン(22.6)、シクロヘキサン(25.2)、1−ペンテン(16.0)等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン(28.9)、トルエン(28.5)、m−キシレン(28.7)、p−キシレン(28.3)等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン(27.9)、クロロホルム(27.2)、四塩化炭素(26.9)、1−クロロプロパン(21.8)、2−クロロプロパン(18.1)等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル(17.1)、プロピルエーテル(20.5)、イソプロピルエーテル(17.7)、ブチルエチルエーテル(20.8)、1,2−ジメトキシエタン(24.6)等のエーテル類;アセトン(23.3)、メチルエチルケトン(24.6)、メチルプロピルケトン(25.1)、ジエチルケトン(25.3)等のケトン類;酢酸メチル(24.8)、酢酸エチル(23.8)、酢酸プロピル(24.3)、酢酸イソプロピル(21.2)、酢酸イソブチル(23.7)、エチルブチレート(24.6)等のエステル類が挙げられる。かっこ内は20℃での表面張力を示し、単位は[mN/m]である。これらの中で、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)は低表面張力でありかつ作業環境性に優れている。また、これらの中でも、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジメトキシエタン等の親水性有機溶媒を用いることで、上記洗浄工程の有機溶媒と兼用することができる。なお、これらの中でも、さらに後述する乾燥工程における乾燥が容易な点で、常圧での沸点が100℃以下の溶媒を用いてもよい。上記の溶媒は単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
溶媒置換工程に使用される溶媒の量としては、洗浄後のエアロゲル層中の溶媒を十分に置換できる量とすることができ、エアロゲル層の容量に対して3〜10倍の量の溶媒を用いることができる。
溶媒置換工程における温度は、置換に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができ、例えば、ヘプタンを用いる場合は、30〜60℃程度とすることができる。
なお、本実施形態においては、ゾルがシリカ粒子を含有している場合は、上述のとおり溶媒置換工程は必ずしも必須ではない。推察されるメカニズムとしては次のとおりである。本実施形態においてはシリカ粒子が三次元網目状のエアロゲル骨格の支持体として機能することにより、当該骨格が支持され、乾燥工程におけるゲルの収縮が抑制される。そのため、洗浄に用いた溶媒を置換せずに、ゲルをそのまま乾燥工程に移すことができると考えられる。このように、本実施形態において、ゾルがシリカ粒子を含有している場合は、洗浄及び溶媒置換工程〜乾燥工程の簡略化が可能である。
また、塗工工程にてセパレーターを積層している場合は、エアロゲル層の洗浄及び溶媒置換の効率を向上させる観点から、洗浄工程前にセパレーターを抜き取り、溶媒置換工程後に再度セパレーターを積層してもよい。
(乾燥工程)
乾燥工程では、上記のとおり洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換したエアロゲル層を乾燥させる。これにより、最終的なエアロゲル積層体を得ることができる。
乾燥の手法としては特に制限されず、公知の常圧乾燥、超臨界乾燥又は凍結乾燥を用いることができる。これらの中で、低密度のエアロゲル層を製造し易い観点から、常圧乾燥又は超臨界乾燥を用いることができる。また、低コストで生産可能な観点からは常圧乾燥を用いることができる。なお、本実施形態において、常圧とは0.1MPa(大気圧)を意味する。
本実施形態のエアロゲル積層体は、洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換したエアロゲル層を、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥することにより得ることができる。乾燥温度は、置換された溶媒(溶媒置換を行わない場合は洗浄に用いられた溶媒)の種類又は基材の耐熱性により異なるが、60〜180℃とすることができ、90〜150℃であってもよい。乾燥時間は、エアロゲル層の容量及び乾燥温度により異なるが、2〜48時間とすることができる。なお、本実施形態において、生産性を阻害しない範囲内において圧力をかけて乾燥を早めることもできる。
また、本実施形態のエアロゲル積層体は、常圧乾燥における乾燥効率を向上させる観点から、乾燥工程の前にプレ乾燥を行ってもよい。プレ乾燥方法としては特に制限されない。プレ乾燥温度は、60〜180℃とすることができ、90〜150℃であってもよい。また、プレ乾燥時間は、1〜30分とすることができる。なお、このようなプレ乾燥により得られたエアロゲル積層体は、更に乾燥工程にて乾燥することができる。
洗浄及び溶媒置換工程にてセパレーターを積層している場合は、乾燥効率と搬送効率の観点から、プレ乾燥前に抜き取り、プレ乾燥後に再度セパレーターを積層することができる。また、洗浄及び溶媒置換工程〜乾燥工程まで連続で行う場合は、洗浄工程前にセパレーターを抜き取り、プレ乾燥後に再度セパレーターを積層することができる。
本実施形態のエアロゲル積層体は、また、洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換したエアロゲル積層体を、超臨界乾燥することによっても得ることができる。超臨界乾燥は、公知の手法にて行うことができる。超臨界乾燥する方法としては、例えば、エアロゲル層に含まれる溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にて溶媒を除去する方法が挙げられる。あるいは、超臨界乾燥する方法としては、エアロゲル層を、液化二酸化炭素中に、例えば、20〜25℃、5〜20MPa程度の条件で浸漬することで、エアロゲル層に含まれる溶媒の全部又は一部を当該溶媒より臨界点の低い二酸化炭素に置換した後、二酸化炭素を単独で、又は二酸化炭素及び溶媒の混合物を除去する方法が挙げられる。
[断熱材]
本実施形態の断熱材は、これまで説明したエアロゲル積層体の少なくとも一つを備えるものであり、高断熱性と優れた柔軟性とを有している。なお、上記エアロゲル積層体の製造方法により得られるエアロゲル積層体をそのまま(必要に応じ所定の形状に加工し)断熱材とすることができる。断熱材は、該エアロゲル積層体が複数層積層されたものであってもよい。
本実施形態のエアロゲル積層体は、厚み方向にエアロゲル層と、樹脂層と、基材とが積層されてなる構造を、少なくとも一つ有するものである。従来では取扱い性が困難であったエアロゲルの薄膜化が可能であるため、本実施形態のエアロゲル積層体は、優れた断熱性と柔軟性を有する断熱材として用いることができ、断熱材の薄型化が可能である。
このような利点から、本実施形態のエアロゲル積層体は、極低温分野(超伝導、極低温容器等)、宇宙分野、建築分野、自動車分野、家電製品、半導体分野、産業用設備等における断熱材としての用途等に適用できる。また、本実施形態のエアロゲル積層体は、断熱材としての用途の他に、撥水シート、吸音シート、静振シート、触媒担持シート等として利用することができる。
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例はいかなる意味においても制限するものではない。
[樹脂層形成用塗液の作製]
(塗液1)
ポリオール化合物である「ヒタロイド3204EB−1」(日立化成株式会社製、水酸基価30KOHmg/g、粘度4030mPa・s、重量平均分子量47000)と、ポリイソシアネート化合物である「デュラネートE405−80T」(旭化成株式会社製、NCO含有率7質量%、粘度252Pa・s)と、トルエンとを、NCO/OH当量比が0.5:1、固形分が1.5質量%になるように配合し、2分間攪拌して塗液1を作製した。
(塗液2)
NCO/OH当量比を1:1に変更した以外は、塗液1の作製と同様にして塗液2を作製した。
(塗液3)
NCO/OH当量比を2:1に変更した以外は、塗液1の作製と同様にして塗液3を作製した。
(塗液4)
NCO/OH当量比を3:1に変更した以外は、塗液1の作製と同様にして塗液4を作製した。
(塗液5)
NCO/OH当量比を9:1に変更した以外は、塗液1の作製と同様にして塗液5を作製した。
(塗液6)
NCO/OH当量比を10:1に変更した以外は、塗液1の作製と同様にして塗液6を作製した。
(塗液7)
エポキシ樹脂である「jER−811」(三菱化学株式会社製)と、硬化剤である「トリエチレンテトラミン」(和光純薬工業株式会社製)と、トルエンとを、エポキシ基/アミノ基当量比が1:1、固形分が1.5質量%になるように配合し、2分間攪拌して塗液7を作製した。
(塗液8)
エポキシ樹脂である「jER−811」と、ポリイソシアネート化合物である「デュラネートE405−80T」と、トルエンとを、エポキシ基/イソシアネート基が当量比1:1、固形分が1.5質量%になるように配合し、2分間攪拌して塗液8を作製した。
(塗液9)
ポリイソシアネート化合物である「デュラネートE405−80T」と、トルエンとを、固形分が1.5質量%になるように配合し、2分間攪拌して塗液9を作製した。
(塗液10)
ポリオール化合物である「ヒタロイド3204EB−1」と、イソシアネート系シランカップリング剤である3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン「KBE−9007」(信越化学工業株式会社製)と、トルエンとを、水酸基/イソシアネート基当量比が1:1、固形分が1.5質量%になるように配合し、2分間攪拌して塗液10を作製した。
(塗液11)
ポリオール化合物である「ヒタロイド3204EB−1」と、トルエンとを、固形分が1.5質量%になるように配合し、2分間攪拌して塗液11を作製した。
(塗液12)
エポキシ樹脂である「jER−811」と、ポリオール化合物である「ヒタロイド3204EB−1」と、トルエンとを、エポキシ基/水酸基当量比が1:1、固形分が1.5質量%になるように配合し、2分間攪拌して塗液12を作製した。
(塗液13)
ポリオール化合物である「ヒタロイド3204EB−1」と、エポキシ系シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」(信越化学工業株式会社製))と、トルエンとを、水酸基/エポキシ基当量比が1:1、固形分が1.5質量%になるように配合し、2分間攪拌して塗液13を作製した。
[エアロゲル層形成用ゾル塗液の作製]
(ポリシロキサン化合物Aの合成)
撹拌機、温度計及びジムロート冷却管を備えた1Lの3つ口フラスコにて、ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサン「XC96−723」(モメンティブ社製、製品名)を100.0質量部、メチルトリメトキシシランを181.3質量部及びt−ブチルアミンを0.50質量部混合し、30℃で5時間反応させた。その後、この反応液を、1.3kPaの減圧下、140℃で2時間加熱し、揮発分を除去することで、上記一般式(B)で表される両末端2官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(ポリシロキサン化合物A)を得た。
(ゾル塗液)
シリカ粒子含有原料としてPL−2L(扶桑化学工業株式会社製、製品名、平均一次粒子径:20nm、固形分:20質量%)を100.0質量部、水を100.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、イオン性界面活性剤としてヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(和光純薬工業株式会社製、以下「CTAB」と略記)を20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにシリコン化合物としてメチルシトリメトキシラン(信越化学工業株式会社製、以下「MTMS」と略記)を60.0質量部及びジメトキシジメチルシラン(東京化成工業株式会社製、以下「DMDMS」と略記)を20.0質量部、並びにポリシロキサン化合物としてポリシロキサン化合物Aを20.0質量部加え、25℃で1時間反応させた。その後、80℃で15分間ゾルゲル反応させてゾル塗液を得た。
(実施例1)
塗液1を、基材である(縦)1500mm×(横)1000mm×(厚)12μmの両面アルミニウム蒸着PETフィルム(日立AIC株式会社製、製品名:VM−PET)に、乾燥後の厚みが1μmとなるようにフィルムアプリケーター(テスター産業株式会社製、製品名:PI−1210)を用いて塗布し、120℃で1分乾燥して、基材上に樹脂層を形成した。
次いで、上記ゾル塗液を、上記基材の樹脂層上にゲル化後の厚みが40μmとなるようにフィルムアプリケーター(テスター産業株式会社製、製品名:PI−1210)を用いて塗布し、90℃で1.5分間乾燥して、ゲル状のエアロゲル層を有するエアロゲル積層体を得た。その後、得られたエアロゲル積層体を密閉容器に移し、60℃で3時間熟成した。
次いで、熟成したエアロゲル積層体を水2000mLで2分間洗浄した後、メタノール2000mLに2分間浸漬して洗浄を行った。この洗浄操作を、新しいメタノールに交換しながら2回行って、洗浄及び溶媒置換されたエアロゲル積層体を120℃で1時間乾燥することで、上記一般式(6)及び(7)で表される構造を有するエアロゲル積層体1を得た。
(実施例2)
塗液2を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体2を得た。
(実施例3)
塗液3を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体3を得た。
(実施例4)
塗液4を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体4を得た。
(実施例5)
塗液5を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体5を得た。
(実施例6)
塗液6を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体6を得た。
(実施例7)
塗液7を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体7を得た。
(実施例8)
塗液8を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体8を得た。
(実施例9)
塗液9を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体9を得た。
(実施例10)
塗液10を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体10を得た。
(比較例1)
上記ゾル塗液を、基材である(縦)1500mm×(横)1000mm×(厚)12μmの両面アルミニウム蒸着PETフィルムに直接塗布してエアロゲル層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体11を得た。
(比較例2)
基材である(縦)1500mm×(横)1000mm×(厚)12μmの両面アルミニウム蒸着PETフィルム(日立AIC株式会社製、製品名:VM−PET)と、断熱層となる(縦)1500mm×(横)1000mm×(厚)42μm(IPCスペック:1078)のEガラスクロス(日東紡績株式会社製)とを積層することで、積層断熱材1を得た。
(比較例3)
塗液11を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体12を得た。
(比較例4)
塗液12を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体13を得た。
(比較例5)
塗液13を用いて樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様にして、エアロゲル積層体14を得た。
[接着性の評価]
樹脂層又は基材への接着性の評価は、テープ剥離試験により行った。具体的には、エアロゲル積層体のエアロゲル層に、セロハンテープ(積水化学工業株式会社製、製品名:セキスイセロテープC40SH02)を指で上から押し付けるようにして密着させた後、引き剥がし速度10mm/秒でセロハンテープを90度方向に引き剥がした。次いで、テープ剥離試験前後の質量減少量を算出し、接触面積で除することで単位面積当たりの脱落量を求めた。
[剥がれの評価]
樹脂層又は基材からのエアロゲル層の剥がれの評価は、上述の熟成工程にてエアロゲル積層体を10cm×10cmに切り出し、上述した水及びメタノールによる洗浄操作を行い、洗浄及び溶媒置換されたエアロゲル積層体を得た後に、目視にて確認した。エアロゲル層に、剥がれがある場合は「有り」、剥がれが無い場合は「無し」とした。
[耐腐食性の評価]
エアロゲル積層体の耐腐食性は、以下の試験にて評価を行った。
まず、評価用に、基材を片面アルミニウム蒸着PETフィルム(日立AIC株式会社製、製品名:VM−PET)に変更した以外は各実施例及び比較例と同様にして、各実施例及び比較例に相当するエアロゲル積層体をそれぞれ作製した。なお、樹脂層及びエアロゲル層はアルミニウム層側に形成した(比較例1相当の条件の場合は、エアロゲル層をアルミニウム層上に直接形成)。次いで、得られたそれぞれのエアロゲル積層体を50mm×50mmに裁断した試験片を、密閉容器に入ったpH9に調整した尿素水溶液に含浸し、容器を60℃で1時間加熱した後、試験片を取り出した。そして、尿素水溶液に含浸後の試験片において、PETフィルムのエアロゲル層側のアルミニウム層の白化又は溶解の有無を、PETフィルム側から目視にて確認した。確認した試験片において、一部でもエアロゲル層側のアルミニウム層が白化又は溶解している場合は、エアロゲル積層体の腐食「有り」(耐腐食性が無い)とし、エアロゲル層側のアルミニウム層の白化又は溶解が無い場合には、エアロゲル積層体の腐食「無し」(耐腐食性が有る)とした。
なお、PETフィルムが透明であるため、PETフィルム側からの目視で確認しているが、エアロゲル層を取り除いて基材のエアロゲル層側の表面を目視で確認してもよい。
[断熱性性能の評価]
実施例及び比較例で得られたエアロゲル積層体並びに比較例で得られた積層断熱材について、以下の条件に従い、測定又は評価をした。
(1)断熱性評価用の液体窒素容器の準備
エアロゲル積層体及び積層断熱材を、(縦)606mm×(横)343mmのシートA、(縦)612mm×(横)362mmのシートB、(縦)618mm×(横)380mmのシートC、(直径)105mmのシートD、(直径)112mmのシートE、(直径)118mmのシートFのサイズにそれぞれ加工した。
次に、液体窒素容器外周用シートとして、エアロゲル層又は断熱層を介して隣接する基材同士が直接接触しないようにシートAを10層積層したシートA10、シートBを10層積層したシートB10、シートCを10層積層したシートC10をそれぞれ作製した。同様にして、液体窒素容器上下用シートとして、シートDを10層積層したシートD10、シートEを10層積層したシートE10及びシートFを10層積層したシートF10をそれぞれ作製した。
高さ600mm、直径100mmの液体窒素容器を準備し、その側面にシートA10を配置し、液体窒素容器の上下にシートD10をそれぞれ配置し、液体窒素容器に巻きつけた。次に、シートA10の上にシートB10を配置し、シートD10の上にシートE10を配置し、さらに、シートB10の上にシートC10を配置し、シートD10の上にシートF10を配置することで、エアロゲル積層体又は積層断熱材が30層積層された断熱性評価用の液体窒素容器を得た。なお、側面のシートと上下のシートの合わせ部は、アルミニウムテープで貼り付けた。
図4は、断熱材10を液体窒素容器12に巻き付けた断熱性評価用の液体窒素容器の構造を模式的に表した断面図である。30層のエアロゲル積層体又は積層断熱材からなる断熱材10は、注入口11を有する液体窒素容器12に外周を覆うように積層されている。
(2)断熱材の厚みの測定
液体窒素容器12の外周に設けられた断熱材10の総厚みD30(mm)を、次式より算出した。
D30=Dc/2―50.0
式中、Dc(mm)は、エアロゲル積層シート又は積層断熱材を30層巻き付けた後の液体窒素容器の直径を示す。
(3)断熱性能(熱流束)
断熱性評価用の液体窒素容器を用いて、断熱性能を測定した。図5に、断熱性能試験装置の概略図を示す。まず、断熱材10が巻き付けられた液体窒素容器12を283Kに設定した恒温槽14に入れ、真空容器16内に設置した。次に、真空容器16内の真空排気をターボ分子ポンプ20で行い、真空容器16内部の真空圧力をピラニー真空計22及びイオン真空計24で計測した。ターボ分子ポンプ20を運転して、ピラニー真空計22が4×10−1Pa以下の真空圧力を示したのを確認後、イオン真空計24で真空圧力を計測し、真空容器16の圧力が1×10−2Pa以下になるまで、7日間真空排気を行った。その後、真空容器16内に設置された液体窒素容器12に液体窒素を注液後、首配管18の温度と蒸発した窒素ガス流量がほぼ一定値であり、定常状態であることを確認したときの、断熱材10を通過する熱流束qを算出した。
液体窒素の蒸発ガス質量流量m(kg/s)は、次式(I)より求めた。
式(I)中、ρ
g,Tは室温のガス密度(kg/m
3)、V
g,Tは室温のガス流量(m
3/s)を示し、湿式流量計26の出力と湿式流量計26内部の温度により計測される値である。
次に、断熱材10を通して入る放射熱量Q
r(W)、及び、フランジ17と液体窒素容器12を接続している首配管18からの伝導熱Q
c(W)の和は、次式(II)より求めた。
式(II)中、Lは液体窒素の蒸発潜熱(J/kg)、ρ
g,Sは大気圧飽和温度における窒素ガス密度(kg/m
3)、ρ
l,Sは液体窒素密度(kg/m
3)を示す。
また、Q
cは、次式(III)より求めた。
式(III)中、( )内は首配管18の伝導熱を示し、A
s(m
2)は、首配管18の断面積、L
c(m)は、首配管18の長さを示し、T
h(K)は、高温温度、T
l(K)は、低温温度を示し、λ
sus(W/(m・K))は、ステンレスの熱伝導率を示す。首配管18の伝導熱は、蒸発ガスの熱伝達によって首配管18の表面から熱を奪うので効率φの係数が関わる。
効率φは、次式(IV)より求めた。
式(IV)中、C
p(J/(kg・K))は、比熱を示す。なお、本評価において、上記A
sの値は、0.243×10
−4(m
2)であり、上記Lの値は、199000(J/kg)である。
エアロゲル積層体及び積層断熱材を通過する熱流束q(W/m
2)は、次式(V)より求めた。熱流束の測定は、3回行い、その平均値を本評価の熱流束とした。
式(V)中、A
r(m
2)は、液体窒素容器の表面積を示し、その値は、0.2041(m
2)である。
各実施例及び比較例で得られたエアロゲル積層体又は積層断熱材の層構成、エアロゲル層の脱落量、耐腐食性及び断熱性の評価結果を表1に示す。
表1から、実施例で作製したエアロゲル積層体は、エアロゲル層と基材とが樹脂層を介して一体化されているため、エアロゲル層の基材からの脱落を低減でき、かつ、断熱材の薄型化が可能となることが確認できる。表1から基材に樹脂層を設けることで、基材の腐食を抑制でき、かつ、エアロゲル層の基材からの脱落を低減できることを確認できる。また、樹脂層を設けたエアロゲル積層体においても、高い断熱性能を有することを確認できる。