JP6832746B2 - 回転電機、スロット絶縁紙、回転電機の固定子の製造方法、及びスロット絶縁紙の製造方法 - Google Patents

回転電機、スロット絶縁紙、回転電機の固定子の製造方法、及びスロット絶縁紙の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、固定子鉄心のスロットにスロット絶縁紙を介して固定子巻線が挿入されている回転電機、その固定子の製造方法、鉄心のスロットに挿入されるスロット絶縁紙、及びその製造方法に関するものである。
従来の回転電機の固定子では、固定子鉄心に複数のスロットが設けられている。各スロットには、固定子巻線が挿入されている。各固定子巻線と固定子鉄心との間には、絶縁紙が介在している。絶縁紙は、一対のティース側絶縁シート部と、ヨーク側絶縁シート部とを有している(例えば、特許文献1参照)。
特開2015−109738号公報
上記のような従来の回転電機では、一方のティース側絶縁シート部と固定子鉄心との間の摩擦力と、他方のティース側絶縁シート部と固定子鉄心との間の摩擦力との僅かな違いにより、絶縁紙をスロットに挿入する際に絶縁紙がスロット内で回転してしまうことがある。このため、挿入後の絶縁紙の両端の径方向位置にばらつきが生じ、絶縁品質が低下する。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、スロット内へのスロット絶縁紙の挿入位置を安定させ、絶縁品質の向上を図ることができる回転電機、スロット絶縁紙、回転電機の固定子の製造方法、及びスロット絶縁紙の製造方法を得ることを目的とする。
この発明に係る回転電機は、スロットが設けられている固定子鉄心と、スロットに設けられている固定子巻線と、スロット内で固定子鉄心と固定子巻線との間に介在しているスロット絶縁紙とを有している固定子を備え、スロット絶縁紙は、固定子鉄心の周方向の固定子巻線の両端面に接する一対の周方向絶縁部と、スロットの底部で一対の周方向絶縁部を繋いでいる径方向絶縁部とを有しており、径方向絶縁部には、径方向絶縁部の厚さ方向へ突出した突起部が設けられている。
この発明の回転電機は、径方向絶縁部の厚さ方向へ突出した突起部が径方向絶縁部に設けられているので、スロット絶縁紙のスロットへの挿入時に左右の周方向絶縁部が受ける摩擦力に差が生じても、スロット絶縁紙にずれが生じにくく、スロット内へのスロット絶縁紙の挿入位置を安定させ、絶縁品質の向上を図ることができる。
この発明の実施の形態1による回転電機100を模式的に示す断面図である。 図1のII−II線に沿う断面図である。 図2の固定子鉄心の一部を拡大して示す断面図である。 図2の固定子の一部を拡大して示す断面図である。 図4のV−V線に沿う断面図である。 図5のスロット絶縁紙を示す斜視図である。 図6のスロット絶縁紙を矢印VIIに沿って見た正面図である。 図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。 図8の径方向スロット収納部の断面形状の第1の変形例を示す断面図である。 図8の径方向スロット収納部の断面形状の第2の変形例を示す断面図である。 図8の径方向スロット収納部の断面形状の第3の変形例を示す断面図である。 図4のスロット絶縁紙のスロットへの挿入途中の状態を模式的に示す断面図である。 図12のスロット絶縁紙をスロットにさらに挿入した状態を模式的に示す断面図である。 図13のスロットに固定子巻線を挿入した状態を模式的に示す断面図である。 図4の固定子巻線のスロットへの挿入直前の状態を示す断面図である。 突起部のないスロット絶縁紙をスロットに挿入する場合の比較例を示す断面図である。 図16のスロット絶縁紙をスロットにさらに挿入した状態を示す断面図である。 この発明の実施の形態2による回転電機の要部断面図である。 図18の固定子巻線及びスロット絶縁紙のスロットへの挿入直前の状態を示す断面図である。 図19の固定子巻線及びスロット絶縁紙のスロットへの挿入後の状態を示す断面図である。 図18の固定子巻線及びスロット絶縁紙のスロットへの挿入直前の状態を模式的に示す断面図である。 図21の固定子巻線及びスロット絶縁紙をスロットに挿入した状態を模式的に示す断面図である。 図22の固定子巻線及びスロット絶縁紙をスロットにさらに押し込んだ状態を模式的に示す断面図である。 この発明の実施の形態3による回転電機の要部断面図である。 突起部の形状の第1の変形例を示す斜視図である。 突起部の形状の第2の変形例を示す斜視図である。
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、実施の形態において、特に断り無く、軸方向、周方向、径方向、内周側、外周側、内側、外側と記載しているときは、いずれも固定子の軸方向、周方向、径方向、内周側、外周側、内側、外側を意味するものとする。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による回転電機100を模式的に示す断面図であり、回転中心に沿った断面を示している。図2は図1のII−II線に沿う断面図であり、回転中心に直交する断面を示している。
図において、回転電機100は、3相あるいはそれ以上の相数のブラシレスモータである。また、回転電機100は、フレーム2、固定子3、回転子4、回転軸5、ベアリングホルダ6、第1の軸受7、及び第2の軸受8を有している。
なお、回転電機100において、回転軸5の出力端5a側をフロント側、その反対側をリヤ側と称する。
<回転子>
回転子4は、回転電機100の界磁である。また、回転子4は、略円筒形の回転子鉄心40と、複数の永久磁石41とを有している。回転子鉄心40は、鉄等の強磁性体により構成されている。永久磁石41は、回転子鉄心40の外周面に貼り付けられている。回転子鉄心40の中心には、回転軸5が固定されている。
ベアリングホルダ6は、フレーム2のフロント側端部に固定されている。第1の軸受7は、ベアリングホルダ6に保持されている。第2の軸受8は、フレーム2のリヤ側端部に保持されている。回転軸5は、第1及び第2の軸受7,8により回転可能に保持されている。
<固定子>
固定子3は、回転電機100の電機子である。また、固定子3は、回転子4の外周側に一定の空隙を介して配置されている。さらに、固定子3は、固定子鉄心30と、複数の固定子巻線35とを有している。
固定子鉄心30は、フレーム2の内周面に固定されている。また、固定子鉄心30は、複数枚の薄板を回転電機の軸方向に積層して構成されている。薄板としては、鋼板又は電磁鋼板が用いられている。また、薄板の表面には、薄い絶縁被膜が設けられている。
さらに、固定子鉄心30は、バックヨーク部である円環状の外周側鉄心30aと、外周側鉄心30aの径方向内側に設けられている内周側鉄心30bとを有している。内周側鉄心30bは、放射状に配置された複数のティース31を有している。固定子3の周方向に隣り合うティース31は、固定子3の径方向内側の先端部で互いに連結されている。
固定子3の周方向に隣り合うティース31間には、それぞれスロット36が設けられている。各固定子巻線35は、スロット36内に配置されている。固定子巻線35を組み込んだ内周側鉄心30bの外周側に外周側鉄心30aが圧入され、固定子3が構成されている。
回転電機100では、インバータ回路(図示せず)を用いて、各相の固定子巻線35に通電する電流を回転子4の位相に合わせて切り替えることにより、回転子4の回転速度及びトルクが所望の値に制御される。そのため、回転軸5のリヤ側端部には、回転子4の位相を検出するための回転角度センサ(図示せず)が設けられている。
<ティース先端部形状>
図3は図2の固定子鉄心30の一部を拡大して示す断面図であり、固定子巻線35が取り除かれた状態を示している。外周側鉄心30aの内周部には、ティース31と同数の切欠37が設けられている。各切欠37の断面形状は、固定子鉄心30の径方向内側へ向けて広がったV字形である。
固定子鉄心30の径方向外側の各ティース31の端部には、切欠37に嵌合する三角部38が設けられている。内周側鉄心30bに外周側鉄心30aを圧入する際には、切欠37と三角部38とが嵌合する。その際、嵌合面が2つの斜面で構成されているため、周方向、即ち回転方向の位置決めが容易である。また、圧入代分の変位が固定子鉄心30の径方向内側又は径方向外側に逃げるため、圧入に要する力が過度に高くならない。
<コイル形状>
図4は図2の固定子3の一部を拡大して示す断面図である。各スロット36の断面形状は、長方形である。固定子巻線35のスロット36に挿入されている部分であるスロット挿入部51の占積率を高くするため、断面が長方形のコイル導体51a,51b,51c,51dが用いられている。
コイル導体51a,51b,51c,51dの表面は、樹脂からなる絶縁被膜で覆われている。但し、絶縁被膜の機械的強度が高くないため、固定子鉄心30と固定子巻線35との間の絶縁を保証するには、絶縁被膜だけでは不十分である。
このため、スロット挿入部51と固定子鉄心30との間には、スロット絶縁紙9と外周絶縁物91とが配置されている。これにより、回転電機100に加わる振動及び温度変化に対して、十分な絶縁耐圧が確保されている。
固定子3の軸方向に直角な各スロット36の断面において、固定子鉄心30の周方向のスロット挿入部51の両側面と、固定子3の径方向内側のスロット挿入部51の端面との合計3面が1枚のスロット絶縁紙9によりカバーされている。また、固定子鉄心30の径方向外側のスロット挿入部51の端面が、外周絶縁物91によりカバーされている。
<スロット絶縁紙形状>
本実施の形態のスロット絶縁紙9は、2枚の不織布間に樹脂フィルムを挟み込んだ3層構造のシートにより構成されている。また、本実施の形態のスロット絶縁紙9の厚さ寸法は、0.15mmである。但し、スロット絶縁紙9の材料及び厚さ寸法はこれに限定されない。
各スロット絶縁紙9は、上記のような矩形のシートをコ字形に折り曲げ加工して形成されている。これにより、各スロット絶縁紙9は、互いに対向する一対の周方向絶縁部92と、径方向絶縁部93とを有している。
周方向絶縁部92は、固定子鉄心30の周方向の固定子巻線35の両端面に接している。即ち、周方向絶縁部92は、スロット挿入部51の両側のティース31の側面とスロット挿入部51の両側面との間を絶縁している。
径方向絶縁部93は、スロット36の底部で一対の周方向絶縁部92を繋いでいる。即ち、径方向絶縁部93は、固定子鉄心30の径方向内側のスロット挿入部51の端面とスロット36の底面との間を絶縁している。
図5は図4のV−V線に沿う断面図、図6は図5のスロット絶縁紙9を示す斜視図である。スロット絶縁紙9は、固定子鉄心30の軸方向範囲内に位置しスロット36に収納されているスロット収納部9aと、固定子鉄心30の軸方向両端部から飛び出している一対のスロット突出部9bとを有している。
図6の破線は、固定子鉄心30の軸方向端部の位置を示している。図6において、周方向絶縁部92のスロット収納部9aを周方向スロット収納部92aとし、周方向絶縁部92のスロット突出部9bを周方向スロット突出部92bとする。また、径方向絶縁部93のスロット収納部9aを径方向スロット収納部93aとし、径方向絶縁部93のスロット突出部9bを径方向スロット突出部93bとする。
径方向スロット収納部93aには、径方向絶縁部93の厚さ方向へ突出した複数の突起部93a1が設けられている。径方向スロット突出部93bには、突起部93a1が設けられていない。
突起部93a1は、図4に示すように、スロット絶縁紙9と固定子巻線35のスロット挿入部51とがスロット36内に完全に挿入された状態では、スロット36の底部とスロット挿入部51との間で潰されている。また、各突起部93a1は、スロット36への挿入途中の状態では、稜線が固定子鉄心30の軸方向の端面に平行な山状である。
さらに、径方向絶縁部93の形状は長方形であり、全ての突起部93a1は、径方向絶縁部93の長辺に平行な方向に互いに間隔をおいて配置されている。さらにまた、各突起部93a1の稜線は、径方向絶縁部93の短辺に平行である。
図7は図6のスロット絶縁紙9を矢印VIIに沿って見た正面図、図8は図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。径方向スロット収納部93aの断面形状は、波形となっている。これにより、突起部93a1は、固定子巻線35側とスロット36の底面側とに交互に突起している。
スロット36の底面側へ突起した突起部93a1は、径方向絶縁部93を周方向絶縁部92とは反対側から見て凸部93a1aを形成している。固定子巻線35側へ突起した突起部93a1は、径方向絶縁部93を周方向絶縁部92とは反対側から見て凹部93a1bを形成している。
突起部93a1が設けられていることにより、径方向スロット収納部93aの厚さ寸法T2は、径方向スロット突出部93b及び周方向絶縁部92の厚さ寸法T1よりも大きくなっている(T2>T1)。
なお、径方向スロット収納部93aの断面形状は波形に限ったものではなく、例えば図9〜11に示すような形状であってもよい。図9では、各突起部93a1の断面が三角形となっている。図10では、全ての突起部93a1が凸部93a1aとなっている。図11では、全ての突起部93a1が凹部93a1bとなっている。それぞれの突起部93a1は、図6のように固定子鉄心30の端面と平行な形状を有している。
また、1つの径方向スロット収納部93aに2種類以上の断面形状の突起部93a1を組み合わせて形成してもよい。
<スロット絶縁紙の挿入方法>
次に、スロット絶縁紙9のスロット36への挿入方法について説明する。スロット絶縁紙9をスロット36に挿入する場合、まずスロット絶縁紙9をスロット36の入口に配置する。そして、図12に示すように、板状の挿入治具94でスロット絶縁紙9の径方向絶縁部93を内周方向に押す。これにより、図13に示すように、スロット絶縁紙9がスロット36内に挿入される。
スロット絶縁紙9の挿入後、スロット36内には、図14に示すように、固定子巻線35のスロット挿入部51が挿入される。突起部93a1は、スロット絶縁紙9の挿入時に挿入治具94により、又は固定子巻線35の挿入時にスロット挿入部51により、スロット36の底部に押し付けられて潰される。
<固定子巻線の挿入方法>
次に、固定子巻線35のスロット36への挿入方法について説明する。固定子巻線35をスロット36に挿入する場合、図15に示すように、内周側鉄心30bの外周部に、内周側鉄心30bの周方向への固定子巻線35の位置を規制する複数の規制治具53を装着する。このとき、規制治具53をティース31の先端に嵌合させる。
この後、隣り合う規制治具53間に固定子巻線35をセットする。そして、規制治具53間にセットされた固定子巻線35を外周側からスロット36へ向けて押し込んでいく。
固定子巻線35をスロット36内に押し込んだ後、外周絶縁物91を外周から挿入する。そして、図4に示したように、内周側鉄心30bの外周に外周側鉄心30aを圧入する。外周絶縁物91の取り付け方法としては、外周から挿入して固定子巻線35の背面に接着する方法、外周側鉄心30aのスロット外周に予め接着しておく方法などがある。
外周側鉄心30aの圧入後、各固定子巻線35の端末線の結線処理をして固定子3が完成する。
<スロット絶縁紙の製造方法>
スロット絶縁紙9を製造する場合、矩形のシートを折り曲げることにより、互いに対向する一対の周方向絶縁部92と、周方向絶縁部92の端部間を繋いでいる径方向絶縁部93とを形成する。そして、径方向絶縁部93を金型でプレスすることにより、径方向スロット収納部93aに突起部93a1を形成する。
また、加工前のシートの径方向スロット収納部93aとなる予定の部分を金型でプレスすることにより突起部93a1を形成した後、折り曲げ加工を施して周方向絶縁部92と径方向絶縁部93とを形成してもよい。
このような回転電機では、スロット絶縁紙9の径方向スロット収納部93aに突起部93a1が設けられているため、径方向スロット収納部93aの厚さ寸法T2が他の部分の厚さ寸法T1よりも大きくなっている。このため、スロット絶縁紙9のスロット36への挿入時に、左右の周方向絶縁部92が受ける摩擦力の差が生じても、一方の周方向絶縁部92が接しているティース31と挿入治具94との間に径方向絶縁部93が引き込まれることがない。
これにより、スロット36内でのスロット絶縁紙9の回転が防止され、図14に示すように、スロット絶縁紙9のスロット36への挿入後の左右の周方向絶縁部92の径方向端部921L,921Rの径方向位置のずれがなくなる。従って、絶縁品質の悪化を防止することができる。
これに対して、突起部93a1が設けられていないスロット絶縁紙9をスロット36に挿入する場合の比較例を図16、17に示す。図16では、挿入治具94が左側に偏っているため、左側の周方向絶縁部92が左側のティース31から受ける摩擦力が右側の周方向絶縁部92が右側のティース31から受ける摩擦力よりも大きくなっている。
このため、スロット絶縁紙9には、スロット36内で矢印C方向へ回転させようとする力が作用する。このとき、径方向スロット収納部93aの厚さ寸法が他の部分と同一である場合、径方向スロット収納部93aが左側のティース31と挿入治具94との間に引き込まれることがある。
そして、図17に示すように、スロット絶縁紙9のスロット36への挿入後の左右の周方向絶縁部92の径方向端部921L,921Rの径方向位置にずれが生じる。これにより、ティース31の側面にスロット絶縁紙9が配置されていない領域が生じ、絶縁品質が悪化する。
このような左右の摩擦力の違いは、左右のティース31の面粗さの違いによっても生じる。
本実施の形態のスロット絶縁紙9では、径方向スロット収納部93aに突起部93a1が設けられているため、スロット絶縁紙9を回転させようとする力が生じても、径方向スロット収納部93aの厚さ寸法が他の部分の厚さ寸法よりも大きいため、スロット絶縁紙9がずれるのが防止される。従って、スロット36内へのスロット絶縁紙9の挿入位置を安定させ、絶縁品質の向上を図ることができる。
また、突起部93a1は金型でプレスすることにより形成されているので、別部品を追加する必要がなく、製造コストの上昇を抑えることができる。
さらに、突起部93a1を潰すことにより、径方向スロット収納部93aの厚さ寸法を最終的に小さくすることができるため、固定子巻線35の占積率の低下を防止することができる。
さらにまた、突起部93a1は、稜線が固定子鉄心30の軸方向の端面に平行な山状であるため、スロット絶縁紙9のずれをより確実に防止することができる。
また、複数の突起部93a1が径方向絶縁部93の長辺に平行な方向に互いに間隔をおいて配置されているため、スロット絶縁紙9のずれをより確実に防止することができる。
実施の形態2.
次に、図18はこの発明の実施の形態2による回転電機の要部断面図である。
<スロット絶縁紙形状>
実施の形態2のスロット絶縁紙9は、一対の周方向絶縁部92及び径方向絶縁部93に加えて、開口絶縁部95をさらに有している。開口絶縁部95は、一方の周方向絶縁部92の径方向絶縁部93とは反対側の端部から、他方の周方向絶縁部92へ向けて突出している。
固定子巻線35のスロット挿入部51は、固定子鉄心30の軸線に直交する断面を見たとき、スロット絶縁紙9により、4面、即ち全周を覆われている。他の構成は、実施の形態1と同様であり、径方向絶縁部93には突起部93a1が設けられている。
なお、図18では、開口絶縁部95が、左側の周方向絶縁部92から右側の周方向絶縁部92へ向けて突出しているが、右側の周方向絶縁部92から左側の周方向絶縁部92へ向けて突出させても、両方の周方向絶縁部92から開口絶縁部95を突出させてもよい。
<固定子巻線35の挿入方法>
次に、固定子巻線35のスロット36への挿入方法について説明する。固定子巻線35をスロット36に挿入する場合、図19に示すように、内周側鉄心30bの外周部に、内周側鉄心30bの周方向への固定子巻線35の位置を規制する複数の規制治具53を装着する。このとき、規制治具53をティース31の先端に嵌合させる。
この後、隣り合う規制治具53間に固定子巻線35をセットする。固定子巻線35のスロット挿入部51には、予めスロット絶縁紙9を巻き付けておく。そして、図20に示すように、規制治具53間にセットされた固定子巻線35を、スロット絶縁紙9とともに、外周側からスロット36へ向けて押し込んでいく。
このように、スロット絶縁紙9に開口絶縁部95を設けた場合でも、径方向スロット収納部93aに突起部93a1を設けることにより、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
図21に示すように、スロット36に挿入される前の固定子巻線35は、規制治具53により、スロット幅よりも大きく周方向へずれることが規制されている。しかし、図22に示すように、スロット36内では、スロット幅の範囲内で各コイル導体51a〜51dが周方向にばらつく。
そして、コイル導体51a〜51dの周方向位置のばらつきにより、左右の周方向絶縁部92が受ける摩擦力の差が生じる。しかし、スロット絶縁紙9の径方向スロット収納部93aに突起部93a1が設けられているため、スロット絶縁紙9がスロット36内で回転することがない。
従って、スロット絶縁紙9のスロット36への挿入後の開口絶縁部95の端部951と、開口絶縁部95が設けられていない方の周方向絶縁部92の径方向端部921Rとの位置ずれがなくなる。これにより、絶縁品質の悪化を防止することができる。
さらに、図23に示すように、固定子巻線35をスロット36内に押し込んで突起部93a1を潰すことにより、径方向スロット収納部93aの厚さ寸法を最終的に小さくすることができ、固定子巻線35の占積率の低下を防止することができる。
さらにまた、スロット絶縁紙9に開口絶縁部95が設けられているため、外周絶縁物91を省略して、部品点数及び組立工程数を削減することができる。
実施の形態3.
次に、図24はこの発明の実施の形態3による回転電機の要部断面図である。固定子鉄心30は、複数の薄板301を積層して構成されている。この例では、薄板301として電磁鋼板が用いられている。突起部93a1は、スロット36の底面側へ突出した位置ずれ防止突起部としての複数の凸部93a1aを含んでいる。
凸部93a1aは、薄板301の厚さ寸法の正の整数倍の間隔Xで配置されている。この例では、固定子鉄心30の軸方向への凸部93a1aの配置ピッチは、薄板301の厚さ寸法の2倍である。
薄板301は、金型のプレスにより打ち抜かれたものであるため、薄板301の断面にはダレがある。このため、スロット36の内面は滑らかではなく、スロット36の内面の薄板301間の部分には窪み302が生じている。そして、凸部93a1aは、窪み302に入っている。他の構成は、実施の形態1又は2と同様である。
このような回転電機では、実施の形態1又は2と同様の効果に加えて、スロット36内でのスロット絶縁紙9のずれを防止できるという効果が得られる。即ち、スロット絶縁紙9がスロット36内で固定子鉄心30の軸方向へずれようとすると、凸部93a1aが窪み302に引っ掛かり、ずれが阻止される。
従って、製造コストを上昇させることなく、スロット絶縁紙9のスロット36への挿入後の工程において、スロット絶縁紙9が軸方向にずれることがなく、絶縁品質の悪化を防止することができる。
なお、凸部93a1aの間に凹部93a1bが配置されていてもよい。
また、位置ずれ防止突起部は、必ずしも等間隔で配置する必要はなく、1つ1つの間隔が薄板301の板厚の正の整数倍になっていればよい。
さらに、実施の形態1〜3では、突起部93a1の形状を、稜線が固定子鉄心30の軸方向の端面に平行、即ち固定子鉄心30の軸方向に直交する方向に平行な山状としたが、突起部は他の形状であってもよい。例えば、図25に示すような円柱形の突起部93a1、又は図26に示すような四角柱形の突起部93a1を用いてもよい。その他、突起部の正面形状は、楕円形、長円形、三角形、又は5つ以上の角を有する多角形などであってもよい。
さらにまた、突起部の個数は特に限定されない。
また、図3では、各スロット36内に4本のコイル導体51a,51b,51c,51dが配置されているが、各スロット36内に挿入されるコイル導体の数はこれに限定されない。
さらに、上記の例では、スロット形状が長方形であるため、断面が長方形のコイル導体を用いたが、コイル導体の断面形状はこれに限定されない。例えば、スロット形状が台形であれば、コイル導体の断面を台形としてもよい。その場合、台形断面のコイル導体は、一般的な丸断面又は長方形断面のコイル導体を塑性変形させて製作することができる。
さらにまた、上記の例では、回転子鉄心40の表面に永久磁石41を貼り付けた表面磁石型の回転子4を示したが、回転子鉄心の内部に磁石埋め込み用の穴を設け、回転子鉄心内に磁石を埋め込んだ磁石埋め込み型回転子であってもよい。
また、上記の例では、固定子鉄心30が外周側鉄心30aと内周側鉄心30bとに分割されており、内周側鉄心30bの径方向外側にスロット36の開口が設けられているが、固定子鉄心の構造はこれに限定されない。例えば、スロットの開口が径方向内側にあり、固定子巻線が径方向外側へ向けてスロット内に挿入されるタイプの固定子鉄心であってもよい。
さらに、この発明は、スロット絶縁紙を用いる種々のタイプの回転電機に適用できる。
3 固定子、9 スロット絶縁紙、30 固定子鉄心、35 固定子巻線、36 スロット、92 周方向絶縁部、93 径方向絶縁部、93a1 突起部、93a1a 凸部(位置ずれ防止突起部)、95 開口絶縁部、100 回転電機、301 薄板。

Claims (12)

  1. スロットが設けられている固定子鉄心と、前記スロットに設けられている固定子巻線と、前記スロット内で前記固定子鉄心と前記固定子巻線との間に介在しているスロット絶縁紙とを有している固定子を備え、
    前記スロット絶縁紙は、
    前記固定子鉄心の周方向の前記固定子巻線の両端面に接する一対の周方向絶縁部と、
    前記スロットの底部で前記一対の周方向絶縁部を繋いでいる径方向絶縁部と
    を有しており、
    前記径方向絶縁部には、前記径方向絶縁部の厚さ方向へ突出した突起部が設けられており、
    前記径方向絶縁部の厚さ寸法が前記周方向絶縁部の厚さ寸法よりも大きい回転電機。
  2. 前記スロットの底部は、前記スロットにおいて前記固定子に対向する回転子側の底部である請求項1記載の回転電機。
  3. 前記突起部は、前記スロットの底部と前記固定子巻線との間で潰されている請求項1又は請求項2に記載の回転電機。
  4. 前記突起部は、稜線が前記固定子鉄心の軸方向の端面に平行な山状である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の回転電機。
  5. 前記スロット絶縁紙は、一方の前記周方向絶縁部の前記径方向絶縁部とは反対側の端部から他方の前記周方向絶縁部へ向けて突出した開口絶縁部をさらに有している請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の回転電機。
  6. 前記固定子鉄心は、複数の薄板を積層して構成されており、
    前記突起部は、前記スロットの底面側へ突出した複数の位置ずれ防止突起部を含み、
    前記位置ずれ防止突起部は、前記薄板の厚さ寸法の正の整数倍の間隔で配置されている請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の回転電機。
  7. 固定子鉄心のスロット内で前記固定子鉄心と固定子巻線との間に介在するスロット絶縁紙であって、
    互いに対向する一対の周方向絶縁部と、
    前記一対の周方向絶縁部の端部間を繋いでいる径方向絶縁部と
    を備え、
    前記径方向絶縁部には、前記径方向絶縁部の厚さ方向に突出した突起部が設けられており、
    前記径方向絶縁部の厚さ寸法が前記周方向絶縁部の厚さ寸法よりも大きいスロット絶縁紙。
  8. 一方の前記周方向絶縁部の前記径方向絶縁部とは反対側の端部から他方の前記周方向絶縁部へ向けて突出した開口絶縁部をさらに備えている請求項記載のスロット絶縁紙。
  9. 前記径方向絶縁部の形状は長方形であり、
    2つ以上の前記突起部が前記径方向絶縁部の長辺に平行な方向に互いに間隔をおいて配置されている請求項又は請求項に記載のスロット絶縁紙。
  10. 互いに対向する一対の周方向絶縁部と、前記一対の周方向絶縁部の端部間を繋いでいる径方向絶縁部とを有しており、前記径方向絶縁部に前記径方向絶縁部の厚さ方向に突出した突起部が設けられており、前記径方向絶縁部の厚さ寸法が前記周方向絶縁部の厚さ寸法よりも大きいスロット絶縁紙を、固定子鉄心のスロット内に挿入するとともに、固定子巻線を前記スロット内に挿入して、前記固定子鉄心と前記固定子巻線との間に介在させる回転電機の固定子の製造方法。
  11. 前記スロット絶縁紙を前記スロット内に挿入する際に、前記径方向絶縁部を前記スロットの底部に押し付けて前記突起部を潰す請求項10記載の回転電機の固定子の製造方法。
  12. シートを折り曲げることにより、互いに対向する一対の周方向絶縁部と、前記一対の周方向絶縁部の端部間を繋いでいる径方向絶縁部とを形成するとともに、前記径方向絶縁部を金型でプレスすることにより、前記径方向絶縁部の厚さ方向に突出した突起部を前記径方向絶縁部に形成し、前記径方向絶縁部の厚さ寸法を前記周方向絶縁部の厚さ寸法よりも大きくするスロット絶縁紙の製造方法。
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