JP6832617B2 - 溶融塩無添加チーズおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加圧加熱湿熱条件下でも耐熱保形性を有するプロセスチーズ様食品、およびその製造法に関する。
プロセスチーズやチーズフード、乳主原などのプロセスチーズ様食品は、種々のナチュラルチーズを原料とし、それぞれの風味的特徴や物理化学的特徴を活かしながら、溶融塩と呼ばれる乳化剤を用いて加熱溶融することで均一な組織を作り上げ、その後冷却して固めることによって、ナチュラルチーズでは困難な充填容器にあわせた様々な形状の製品を製造することができる。一般的に、溶融塩を添加せずにチーズを加熱溶融すると油相分離や離水がみられ、プロセスチーズ様の均一な組織を得ることができない。プロセスチーズ類の製造に用いられる溶融塩としては、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、カリウム塩などがあげられる。溶融乳化作用は溶融塩の種類によって異なるため、用いる原料チーズの種類や溶融塩の種類、それらの使用量や配合、配合比率、乳化条件などによって、最終製品に好ましい特徴を付与しており、風味発現性の制御や、加熱溶融性、糸曳き性、耐熱保形性などの機能性を付与した様々なプロセスチーズ類が提供されている。中でも耐熱保形性は様々な調理や業務用加工食品にプロセスチーズ類を使用する上で、重要な機能の一つとなっている。
耐熱保形性が求められる用途として、例えば、製菓、製パン材料としてオーブンでの焼成や、長期保存などを目的としたレトルト(加圧加熱)殺菌処理、また、チーズまん等の蒸し焼きなどが挙げられ、前述のような工程を経ても形の変化が少ないことが望まれる。また、それぞれの加熱条件により、求められる耐熱保形性を有するチーズを得る難易度も異なる。オーブンなどでの焼成は200℃を超えることもあり高温ではあるものの、加熱空気による加温であるため、用いる素材の水分含量は基本的には低下し乾燥するため硬くなる。一方、レトルト殺菌処理や蒸し焼きは、蒸気や熱水による加温であるため、いわゆる湿熱環境下であり、用いる素材の水分含量は基本的には上昇し乾燥せず軟らかくなる。そのため加熱空気による加温と、蒸気や熱水による加温を比較した場合、後者の条件ほうがプロセスチーズ様食品に耐熱保形性を付与することは困難である。また常圧下での蒸気や熱水による加温と比較して、加圧下での蒸気や熱水による加温は、より高い温度での処理であるため、加圧加熱湿熱条件下における耐熱保形性の付与は、より困難である。
耐熱保形性を有するチーズ類を製造する方法として、溶融塩に高分子ポリリン酸塩などを用いて、乳化後に所定時間撹拌し続けるクリーミングなどの処理を行うことがある。これは、溶融塩の作用によりナチュラルチーズ中のカゼインの構造が変化し乳化剤としての作用を発揮するため、チーズ中の水と脂肪が安定な状態となりプロセスチーズ類が調製可能である。またクリーミングにより、一度構造変化したカゼインが再重合し新たな構造を形成することで、原料ナチュラルチーズには無い耐熱保形性を付与することができると考えられる。また上述のように、溶融塩を添加せずにチーズを調製した場合、カゼインによる乳化剤としての作用がないため、加熱溶融時に油相分離や離水を抑制できないため、プロセスチーズ様の均一な組織を得ることは困難である。
そこで、溶融塩を添加しないプロセスチーズ類の製造方法の開発が試みられている。溶融塩を添加せずにプロセスチーズ様食品を製造する方法としては、蛋白質あたりのカルシウム含量を低減させたチーズ及び/又はカゼイン素材を配合して原料チーズとし、溶融塩を添加しないで加熱混合してなる溶融塩無添加のプロセスチーズ様食品を得る方法(例えば、特許文献1)や、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムを使用する方法(例えば、特許文献2)が知られている。また、チーズ類に耐熱性を付与する方法としては、pH6.0に調整した濃度1.0%水溶液の濁度が2.0以上である縮合リン酸塩を配合する方法(例えば、特許文献3)や、タピオカ加工澱粉を添加し乳脂肪/乳タンパク質の比率を3.0以上とする方法(例えば、特許文献4)などが知られている。
特開2005-80577号公報 特開平11-169072号公報 特開2014-23436号公報 特開2014-113126号公報
特許文献1の方法によって得られるプロセスチーズ様食品は、溶融塩無添加でありながらプロセスチーズ様の組織を実現してはいるが、リン酸カルシウム架橋に必要であるカルシウム含量の少ないナチュラルチーズを用いているため、耐熱保形性を有していない。特許文献2の方法によって得られる溶融塩無添加のチーズフードは、溶融性と曳糸性に優れるチーズフードであるため、耐熱保形性はない。また特許文献3の方法ではプロセスチーズ類に耐熱保形性を付与することはできるが依然として溶融塩を使用しており、特許文献4の方法では、デンプンの添加により耐熱保形性の付与は実現しているものの糸引き性との両立のため、また想定用途が加熱空気による加温であるオーブンを用いる製菓、製パンであるため、より厳しい条件である、加圧下での蒸気や熱水による加温は想定しておらず耐熱保形性は十分でなく、また加熱乳化には依然として溶融塩を使用している。
このように、従来技術で製造されたプロセスチーズ様食品は、溶融塩無添加で製造した場合は溶融塩によるチーズタンパク質の構造形成が成されないため耐熱性を付与することができず、耐熱保形性を付与するためには加熱乳化時に溶融塩の添加が必要であった。また、耐熱保形性についても、加圧下での蒸気や熱水による加温などの、より厳しい条件は想定されていなかった。
本発明は、従来技術にみられる課題点に鑑みなされたものであって、溶融塩無添加でありながら、加圧加熱湿熱条件下であっても十分な耐熱保形性を有するプロセスチーズ様食品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行ったところ、原料チーズに架橋処理デンプンを配合することで、溶融塩無添加でありながら加圧加熱湿熱条件下であっても耐熱保形性を有するプロセスチーズ様食品が得られることを見出した。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)架橋処理デンプンを4.0〜15.0重量%、無脂固形分あたりのデンプン含量であるstarch/SNFが20%以上、乳脂肪/乳タンパク質の比率が2.5以下、乳タンパク質が3.0重量%以上、水分含量が45.0〜62.0重量%であることを特徴とする溶融塩無添加プロセスチーズ様食品。
(2)以下の条件で耐熱試験を行った場合の、以下の式であらわされる耐熱保形性が70%以上であることを特徴とする上記(1)に記載の溶融塩無添加プロセスチーズ様食品。
耐熱試験の条件:プロセスチーズ様食品を121℃のオートクレーブ(加圧加熱湿熱条件)内で15分間加熱する。
耐熱保形性(%)=[耐熱試験加熱後のプロセスチーズ様食品の高さ(mm)/耐熱試験加熱前のプロセスチーズ様食品の高さ(mm)]×100
(3)原料チーズにデンプンを4.0〜15.0重量%配合する工程と、
溶融塩を添加せずに、前記原料チーズと前記デンプンを加熱混合する工程と、
前記加熱混合した混合物を冷却する工程と
を有することを特徴とする溶融塩無添加プロセスチーズ様食品の製造方法。
(4)前記デンプンが、架橋処理デンプンのうち少なくともいずれか1つを含む加工デンプンであることを特徴とする上記(3)に記載の溶融塩無添加プロセスチーズ様食品の製造方法。
(5)前記デンプンの添加量が、無脂固形分あたりのデンプン含量であるStarch/SNFが20%以上であることを特徴とする上記(3)または(4)に記載の溶融塩無添加プロセスチーズ様食品の製造方法。
本発明によれば、溶融塩無添加でありながら加熱溶融時や保存中に離水や油相分離がみられず、加圧加熱湿熱条件下であっても耐熱保形性を有する溶融塩無添加プロセスチーズ様食品を得ることができる。
本発明のチーズは、チーズ原料にデンプンを配合した後、溶融塩無添加で加熱混合してなる、加圧加熱湿熱条件下であっても耐熱保形性を有することを特徴とする溶融塩無添加プロセスチーズ様食品である。
本発明では、通常のプロセスチーズ類の加熱乳化時に使用されるリン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、およびカリウム塩などの溶融塩を添加せずにデンプンを配合する。そのため、溶融塩由来であるリン含量を低減できる。その場合、最終製品中の乳タンパク質1gあたりのリン含量が40mg以下であることが望ましい。プロセスチーズ様食品におけるリン含量が所定の範囲内であれば、その他の副原料の添加については、特に制限はない。
本発明で使用される原料チーズは、ハードチーズ、セミハードチーズ、フレッシュチーズなど各種のチーズを使用することが出来る。例えば、グラナチーズやチェダーチーズ、ゴーダチーズ、エメンタールチーズ、モツァレラチーズ、クリームチーズなどを使用することができるが、最終製品における乳脂肪と乳タンパク質の比率(乳脂肪/乳タンパク質)は2.5以下とすることが望ましい。乳脂肪と乳タンパク質の比率を2.5以下とすることによって、プロセスチーズ様の組織と風味を得ることができる。乳脂肪と乳タンパク質の測定は、通常の方法で行うことができる。例えば、乳脂肪は、レーゼゴットリーブ法、タンパク質は、ケルダール法で測定することができる。
また本発明では、これらの原料チーズを最終製品であるチーズ類に対して、20重量%以上、乳タンパク質を3重量%以上含有することが望ましい。原料チーズが20重量%未満、乳タンパク質が3重量%未満の場合には、プロセスチーズ様の組織や風味に乏しくなる。また、原料チーズの熟度指標は以下の方法で計算することができる。
試料チーズ10gを秤量し、0.5Mクエン酸ナトリウム溶液40ml、温湯40mlを加え、均質化した。得られた溶液を200mlに定容したものを試料チーズ溶液とした。全窒素量については上記試料溶液をそのまま10mlを採取、可溶性窒素量については、上記試料溶液100mlを採取、1.41N塩酸10ml、水15mlを加えpH4.4とし、カゼインを沈殿させた上澄みをろ過し、ろ液10mlを試料溶液とし、それぞれケルダール法を用いて窒素量を定量した。
熟度指標(%)=(可溶性窒素量/全窒素量)×100
本発明に用いる加工デンプンの原料となる天然デンプンについては、馬鈴薯、コーン、小麦、タピオカ由来等のものを例示することができ、天然のデンプン源とすることができるものであれば特に限定されるものではない。本発明に用いる加工デンプンの種類としては、加工として架橋処理が施された架橋処理デンプン、例えばアセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプンを用いることができる。本発明では、これら架橋処理を施した加工デンプンを最終製品であるプロセスチーズ様食品に対して、4.0〜15.0重量%含有し、無脂固形分あたりのデンプン含量であるstarch/SNFを20%以上にする。好ましくは5〜12重量%、さらに好ましくは6〜10重量%含有させる。前述の加工処理デンプン以外の加工処理澱粉を用いた場合、また4重量%未満、starch/SNFが20%未満では、加工デンプンによる組織形成が十分でないため、加圧加熱湿熱条件下での耐熱保形性を十分に付与することができず、またデンプンの添加量が15重量%を超えると、デンプンによる影響が大きくなるため、プロセスチーズ様の組織、風味が劣るため好ましくない。
本発明において耐熱保形性を有するとは、耐熱性試験を行った場合の耐熱保形性が70%以上であることをいう。なお、耐熱性試験は、プロセスチーズ様食品を121℃のオートクレーブ内で15分間加熱し、加熱前後のプロセスチーズ様食品の高さを比較した。耐熱保形成は、以下の式により求めた。
耐熱保形性(%)=[加熱後のプロセスチーズ様食品の高さ(mm)/加熱前のプロセスチーズ様食品の高さ(mm)]×100
また本発明のプロセスチーズ様食品の水分含量は45〜62重量%である。水分が45重量%未満になったり、62重量%を超えると十分な耐熱保形性を有さないか、プロセスチーズ様の組織や風味に乏しくなる。また本発明のプロセスチーズ様食品のpHは4.5〜6.5である。pHは、5.0〜6.2に調整することが好ましい。pHが4.5未満の場合、6.5より大きい場合には、プロセスチーズ様の組織や風味に乏しくなる。
本発明のプロセスチーズ様食品の製造方法について以下に説明する。本発明のプロセスチーズ様食品の製造方法は、原料チーズにデンプンを4.0〜15.0重量%配合する工程と、溶融塩を添加せずに、前記配合した原材料を加熱混合する工程と、前記加熱溶融した原材料を冷却する工程を有する。
原材料を配合する工程、調整する工程では、原料チーズに、架橋処理デンプンから選ばれる少なくともいずれか1つを含む加工デンプンを4.0〜15.0重量%、無脂固形分あたりのデンプン含量であるStarch/SNFが20%以上となるよう配合し、その後前記配合した原材料を混合し、原材料の水分含量を45.0〜62.0重量%、pHを4.5〜6.5、乳脂肪/乳タンパク質の比率を2.5以下に調整する。その後、前記水分含量、pH、乳脂肪/乳タンパク質を調整した原材料を、リン酸塩やクエン酸塩、酒石酸塩、およびカリウム塩など、キレート作用を持つ溶融塩を添加せずに加熱溶融、冷却してプロセスチーズ様食品を製造する。
加熱溶融する工程としては、特に限定はなく、乳化機の外套部に蒸気又は熱水を導入する間接加熱方法、蒸気吹込みによる直接加熱方法又はその複合方式等が挙げられるが、デンプンの糊化、保水のため、加熱混合時の温度は60℃以上、好ましくは70℃以上とすることが望ましい。また混合は、乳化機を使用して行うことが好ましく、乳化機としては、チーズ類の製造に通常用いられるものであれば、いずれの乳化機も使用することができる。例えば、低速で撹拌するケトル乳化機を用いて50〜200rpmの低速で撹拌することや、高速で撹拌するステファン乳化機を用いて、400〜2000rpmの中速から高速で撹拌すること等が挙げられる。次の冷却する工程においては、このように加熱乳化された乳化物を目的の型に充填し、冷却する。冷却温度やスピードについては特に限定はないが、通常のチーズ同様に速やかに10℃以下まで冷却保存することが望ましい。
本発明により製造されたプロセスチーズ様食品は、溶融塩無添加でありながら離水や油相分離がみられず、加圧加熱湿熱条件下であっても耐熱保形性を有するものである。
以下本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1](デンプンの添加量とstarch/SNFの影響)
熟度指標20%のゴーダチーズ(オーストラリア産)5kgと熟度指標24%のチェダーチーズ(オーストラリア産)5kgを破砕・混合した混合チーズ10.0kgを原料ナチュラルチーズ(熟度22.0%)として用いた。原料チーズに、コーンスターチ原料でヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンであるファリネックスVA-70C(松谷化学工業社)を2.0〜20.0重量%(300〜4600g)、Starch/SNFが11.3〜72%となるよう配合し、高速せん断機であるステファン乳化釜(ニチラク機械社製)に投入した。その後、pH調整剤として重曹を添加して原材料のpHを約5.8、最終水分含量が55重量%となるように水を添加し、乳化機の撹拌羽根の回転数を1500rpmとし、ジャケットに蒸気を吹き込みながら85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で30秒間撹拌保持した。これを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズ様食品を調製した。プロセスチーズ様食品の乳タンパク質1gあたりのリン含量は20mg、乳脂肪/乳タンパク質は1.45であった。
[試験例1]
実施例1で得られたプロセスチーズ様食品の油分分離及び離水に関しては、加熱溶融後、冷却後、および保存中に目視にて以下の基準で評価を行った。
「○」:油分分離および離水がまったく認められず、好ましい。
「×」:油分分離または離水が認められ、好ましくない。
[試験例2]
実施例1で得られたプロセスチーズ様食品のリン含量を以下に述べる方法で測定した。
まず、プロセスチーズ様食品3gをルツボにとり、電気炉内で250℃に加熱して灰化した。次に、得られた灰分を塩酸に溶解した後、プラズマ発光分光分析法による分析を行い、プロセスチーズ様食品のリン含量を算出した。
[試験例3]
実施例1で得られたプロセスチーズ様食品の組織に関しては、特別に訓練された官能パネラー1 0人による官能検査により評価した。評価は国産のプロセスチーズとの比較において行った。ここでプロセスチーズ様の組織とは、ザラツキがなく均一で滑らかな舌触り、やや弾力性のある歯ごたえ等、プロセスチーズのもつ特有の良好な食感をもつ組織のことを言う。官能検査は次の4段階で評価し、10人の官能評価結果のうちもっとも評価者数の多かったものを各プロセスチーズ様食品に対する結果とした。
◎:プロセスチーズ様の組織と風味を有し、非常になめらかな食感を持つ。
○:プロセスチーズ様の組織と風味を有し、プロセスチーズ様の食感を持つ。
△:プロセスチーズ様の組織を有するが、風味や食感はプロセスチーズに劣る。
×:プロセスチーズ様の組織と風味を有さない、または官能評価に供することが困難である。
[試験例4]
実施例1で得られたプロセスチーズ様食品の耐熱保形性は以下の手順で測定した。
1)サンプルリング(内径25 mm、高さ15 mm)を適度に並べる。(2×2ヶないしは2×3ヶ)
2)サンプルリング内にプロセスチーズ様食品を充填する。この時、できる限りプロセスチーズ様食品の内部に空洞ができないようにする。
3)ステンレスバットに下敷きごと入れ、上部をラップする。
4)冷凍庫(-18℃)でサンプルを固める。固まり具合を見ながら押し抜ける固さを判断(完全に冷凍されていないが保形されている状態)し、サンプルリング内径に合わせた円柱型のサンプル抜きで押し抜く。
5)ろ紙にサンプルを置き、高さを測定する(加熱前のプロセスチーズ様食品の高さ)。
6)シャーレ(大)にろ紙ごとサンプルを置き、シャーレを閉める。
7)オートクレーブにて加圧加熱湿熱条件(121℃、15分間)で加熱する。
8)サンプルを取り出し、高さを測定する(加熱後のプロセスチーズ様食品の高さ)。
9)以下の計算式で耐熱保形性を算出する。
耐熱保形性(%)= [加熱後のプロセスチーズ様食品の高さ(mm)/加熱前のプロセスチーズ様食品の高さ(mm)]×100
(評価基準)
上記で求めた耐熱保形性が70%以上のサンプルを「耐熱性アリ」、70%未満のサンプルを「耐熱性ナシ」、油相分離や離水により耐熱保形性の評価に供せなかったサンプルを「測定不可」と評価した。
試験例1〜4の結果を表1に示した。デンプン含量4.0〜15.0重量%、starch/SNFを20%以上に調整することによって、油相分離や離水がみられず、プロセスチーズ様の組織と加圧加熱湿熱条件下であっても耐熱保形性を有する溶融塩無添加プロセスチーズ様食品を得ることができた。
[実施例2](溶融塩とデンプン種類の影響)
熟度指標22%のゴーダチーズ(オーストラリア産)5kgと熟度指標18%のチェダーチーズ(オーストラリア産)5kgを破砕・混合した混合チーズ10.0kgを原料ナチュラルチーズ(熟度20.0%)として用いた。この原料チーズに、植物油脂を5kg、ワキシーコーンスターチ原料でヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンであるファリネックスVA-70WM(松谷化学工業社)を8.0重量%(2400g)配合し、高速せん断機であるステファン乳化釜(ニチラク機械社製)に投入した。その後、pH調整剤として重曹を添加して原材料のpHを約6.0、最終水分含量が55重量%となるように水を添加し、乳化機の撹拌羽根の回転数を1500rpmとし、ジャケットに蒸気を吹き込みながら85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で30秒間撹拌保持した。これを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズ様食品を調製した。また、ファリネックスVA-70WMの代わりにオクテニルコハク酸デンプンナトリウム、リン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンをそれぞれ8.0重量%(2400g)配合したプロセスチーズ様食品、溶融塩としてポリリン酸塩であるJOHA C new (BK Giulini Corp.)を1.0重量%(250g)配合したプロセスチーズ様食品、溶融塩およびデンプンを添加しないプロセスチーズ様食品をそれぞれ調製した。プロセスチーズ様食品において、Starch/SNFは53.5%、乳脂肪/乳タンパク質は1.45であった。
実施例2で得られたプロセスチーズ様食品について試験例1〜4と同じ試験を行った結果を表2に示した。溶融塩とデンプンのいずれも添加しなかったサンプル、またオクテニルコハク酸デンプンナトリウムを添加したサンプルでは乳化直後に離水や油層分離がみられプロセスチーズ様食品を調製不可能であった。またポリリン酸塩を添加した場合、プロセスチーズ様の組織と風味を有するプロセスチーズ様食品が得られたものの耐熱保形性はなく、乳タンパク質1gあたりのリン含量が40mg以上となってしまった。一方、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプンを添加した場合は、プロセスチーズ様の組織と風味、耐熱保形性を有する溶融塩無添加プロセスチーズ様食品を得ることができた。
[実施例3](乳タンパク質とチーズ含量の影響)
熟度指標20%のチェダーチーズ(オーストラリア産)10kgを、原料ナチュラルチーズとして用い粉砕し、最終製品中のチーズ含量が11.0〜46.0重量%となるように、植物油脂の添加量を1〜25kgで調整して重量調整を行った。次に、コーンスターチ原料でヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンであるファリネックスVA-70C(松谷化学工業社)を8.0重量%(1750〜7200g)配合し、高速せん断機であるステファン乳化釜(ニチラク機械社製)に投入した。その後、pH調整剤として重曹を添加して原材料のpHを約5.8、最終水分含量が58重量%となるように水を添加し、乳化機の撹拌羽根の回転数を1500rpmとし、ジャケットに蒸気を吹き込みながら85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で30秒間撹拌保持した。これを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、プロセスチーズ様食品を調製した。プロセスチーズ様食品において、乳タンパク質1gあたりのリン含量は22mg、乳脂肪/乳タンパク質は1.56であった。
実施例3で得られたプロセスチーズ様食品について試験例1〜4と同じ試験を行った結果を表3に示した。その結果、乳タンパク質が3%以上、チーズ含量が20%以上でプロセスチーズ様の風味と組織、加圧加熱湿熱下であっても耐熱保形性を有する溶融塩無添加プロセスチーズ様食品を得ることができた。
[実施例4](水分含量の影響)
熟度指標20%のチェダーチーズ(オーストラリア産)10kgを、原料ナチュラルチーズとして用い粉砕し、ここにコーンスターチ由来ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンであるファリネックスVA-70C(松谷化学工業社)を8.0重量%(1000g〜1900g)となるよう配合し、高速せん断機であるステファン乳化釜(ニチラク機械社製)に投入した。その後、pH調整剤として重曹を添加して原材料のpHを約5.8、最終水分含量が40.0〜65.0重量%となるように水を添加し、乳化機の撹拌羽根の回転数を1500rpmとし、ジャケットに蒸気を吹き込みながら85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で30秒間撹拌保持した。これを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、チーズを調製した。このとき、乳タンパク質1gあたりのリン含量は22mg、乳脂肪/乳タンパク質は1.56であった。
実施例4で得られたプロセスチーズ様食品について試験例1〜4と同じ試験を行った結果を表4に示した。水分含量が45重量%〜62.0重量%で油相分離や離水がみられず、また加圧加熱湿熱条件下においても耐熱保形性とプロセスチーズ様の組織と風味を有する溶融塩無添加プロセスチーズ様食品を得ることができた。
[実施例5](pHの影響)
熟度指標22%のゴーダチーズ(オーストラリア産)10kgを原料ナチュラルチーズとして用い粉砕した。次に、ワキシーコーンスターチ原料でヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンであるファリネックスファリネックスVA-70WM(松谷化学工業社) を6.0重量%(2500g)と油脂を10kg配合し、高速せん断機であるステファン乳化釜(ニチラク機械社製)に投入した。その後、pH調整剤として重曹とクエン酸を添加して原材料のpHを約4.0〜7.0、最終水分含量が55重量%となるように水を添加し、乳化機の撹拌羽根の回転数を1500rpmとし、ジャケットに蒸気を吹き込みながら85℃まで加熱溶融した。85℃に到達後、そのままの回転数で30秒間撹拌保持した。これを充填し、5℃冷蔵庫で24時間以上冷却し、チーズを調製した。またそのとき、Starch/SNFは55%、乳タンパク質は5.5%、乳タンパク質1gあたりのリン量は22mg、乳脂肪/乳タンパク質は1.56であった。
実施例5で得られたプロセスチーズ様食品について試験例1〜4と同じ試験を行った結果を表5に示した。その結果、pH4.5〜6.5において油相分離や離水がみられず、また加圧加熱湿熱条件下においても耐熱保形性とプロセスチーズ様の組織と風味を有する溶融塩無添加プロセスチーズ様食品を得ることができた。
本発明により製造された溶融塩無添加プロセスチーズ様食品は、従来提供することができなかった、溶融塩無添加でありながら加圧加熱湿熱条件下であっても耐熱保形性を有する溶融塩無添加プロセスチーズ様食品、およびその製造方法を提供することができるので、家庭用、業務用を問わず様々な用途の溶融塩無添加プロセスチーズ様食品の製品とすることができる。

Claims (3)

  1. 原料チーズを20重量%以上含有し、架橋処理デンプンを4.0〜15.0重量%、無脂固形分あたりのデンプン含量であるstarch/SNFが21.4%以上、乳脂肪/乳タンパク質の比率が2.5以下、乳タンパク質が3.0重量%以上、水分含量が45.0〜62.0重量%、pHが4.5〜6.5の範囲であることを特徴とする溶融塩無添加プロセスチーズ様食品。
  2. 以下の条件で耐熱試験を行った場合の、以下の式であらわされる耐熱保形性が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の溶融塩無添加プロセスチーズ様食品。
    耐熱試験の条件:プロセスチーズ様食品を121℃のオートクレーブ(加圧加熱湿熱条件)内で15分間加熱する。
    耐熱保形性(%)=[耐熱試験加熱後のプロセスチーズ様食品の高さ(mm)/耐熱試験加熱前のプロセスチーズ様食品の高さ(mm)]×100
  3. 原料チーズを20重量%以上含有し、原料チーズに架橋処理デンプンを4.0〜15.0重量%、デンプンの添加量が無脂固形分あたりのデンプン含量であるStarch/SNFが21.4%以上となるように配合する工程と、
    前記配合した原材料を混合して水分含量を45.0〜62.0重量%、pHを4.5〜6.5の範囲に調整する工程と、
    溶融塩を添加せずに、前記原料チーズと前記デンプンを加熱混合する工程と、
    前記加熱混合した混合物を冷却する工程と
    を有することを特徴とする溶融塩無添加プロセスチーズ様食品の製造方法。
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