JP6831451B2 - 電解セル及び電解槽 - Google Patents
電解セル及び電解槽 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6831451B2 JP6831451B2 JP2019506051A JP2019506051A JP6831451B2 JP 6831451 B2 JP6831451 B2 JP 6831451B2 JP 2019506051 A JP2019506051 A JP 2019506051A JP 2019506051 A JP2019506051 A JP 2019506051A JP 6831451 B2 JP6831451 B2 JP 6831451B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- reverse current
- cathode
- electrolytic cell
- absorber
- current absorber
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C25—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
- C25B—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
- C25B1/00—Electrolytic production of inorganic compounds or non-metals
- C25B1/01—Products
- C25B1/34—Simultaneous production of alkali metal hydroxides and chlorine, oxyacids or salts of chlorine, e.g. by chlor-alkali electrolysis
- C25B1/46—Simultaneous production of alkali metal hydroxides and chlorine, oxyacids or salts of chlorine, e.g. by chlor-alkali electrolysis in diaphragm cells
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C25—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
- C25B—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
- C25B9/00—Cells or assemblies of cells; Constructional parts of cells; Assemblies of constructional parts, e.g. electrode-diaphragm assemblies; Process-related cell features
- C25B9/17—Cells comprising dimensionally-stable non-movable electrodes; Assemblies of constructional parts thereof
- C25B9/19—Cells comprising dimensionally-stable non-movable electrodes; Assemblies of constructional parts thereof with diaphragms
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C25—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
- C25B—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
- C25B11/00—Electrodes; Manufacture thereof not otherwise provided for
- C25B11/02—Electrodes; Manufacture thereof not otherwise provided for characterised by shape or form
- C25B11/03—Electrodes; Manufacture thereof not otherwise provided for characterised by shape or form perforated or foraminous
- C25B11/031—Porous electrodes
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C25—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
- C25B—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
- C25B11/00—Electrodes; Manufacture thereof not otherwise provided for
- C25B11/04—Electrodes; Manufacture thereof not otherwise provided for characterised by the material
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C25—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
- C25B—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
- C25B11/00—Electrodes; Manufacture thereof not otherwise provided for
- C25B11/04—Electrodes; Manufacture thereof not otherwise provided for characterised by the material
- C25B11/042—Electrodes formed of a single material
- C25B11/046—Alloys
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C25—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
- C25B—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
- C25B15/00—Operating or servicing cells
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C25—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
- C25B—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
- C25B15/00—Operating or servicing cells
- C25B15/02—Process control or regulation
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C25—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES; APPARATUS THEREFOR
- C25B—ELECTROLYTIC OR ELECTROPHORETIC PROCESSES FOR THE PRODUCTION OF COMPOUNDS OR NON-METALS; APPARATUS THEREFOR
- C25B9/00—Cells or assemblies of cells; Constructional parts of cells; Assemblies of constructional parts, e.g. electrode-diaphragm assemblies; Process-related cell features
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01M—PROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
- H01M8/00—Fuel cells; Manufacture thereof
- H01M8/02—Details
- H01M8/0202—Collectors; Separators, e.g. bipolar separators; Interconnectors
- H01M8/023—Porous and characterised by the material
- H01M8/0232—Metals or alloys
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/30—Hydrogen technology
- Y02E60/50—Fuel cells
Description
[1]
陰極と、
前記陰極に対向して配置され、かつ、基材と逆電流吸収体とを有する逆電流吸収部材と、
を含む陰極室を備える電解セルであって、
前記陰極と前記逆電流吸収体とが電気的に接続されており、
前記陰極室の下端の高さを0とし、前記陰極室の上端の高さをhとしたとき、h/2以上h以下の高さに対応する位置Iに存在する逆電流吸収体の面積S3と前記位置Iに対応する前記基材の陰極対向面の面積SAの比が、0.20 ≦ S3/SA< 1.0である、電解セル。
[2]
前記電解セルにおける、0以上1/2h未満の高さに対応する位置IIに存在する逆電流吸収体の面積S4と、前記面積S3の関係がS4<S3である、[1]に記載の電解セル。
[3]
前記逆電流吸収体が、前記陰極の触媒元素よりも酸化還元電位が卑な元素を含む、[1]又は[2]に記載の電解セル。
[4]
前記逆電流吸収体が、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、パラジウム、ルテニウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の電解セル。
[5]
前記逆電流吸収体が、ニッケル元素を含む多孔質体であり、
前記多孔質体を粉末X線回折に供して得られるパターンにおいて、回折角2θ=44.5°におけるNi金属の回折線ピークの半値全幅が、0.6°以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の電解セル。
[6]
前記逆電流吸収体が、Ni又はNiOを含む層である、[1]〜[5]のいずれかに記載の電解セル。
[7]
前記逆電流吸収体が、前記NiOを還元してなる層である、[1]〜[6]のいずれかに記載の電解セル。
[8]
前記陰極が、Ni若しくはNi合金、又はFeにNi若しくはNi合金をメッキしたものからなる陰極基材と、当該陰極基材上に形成され、前記触媒金属を含有する触媒層とを有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の電解セル。
[9]
前記基材が、集電体と、当該集電体を支持する支持体と、隔壁と、バッフル板とを有し、
前記逆電流吸収部材が、金属弾性体をさらに有し、
前記金属弾性体が、前記集電体及び前記陰極の間に配置され、
前記支持体が、前記集電体及び前記隔壁の間に配置され、
前記隔壁、前記支持体、前記集電体、前記金属弾性体及び前記陰極が電気的に接続されている、[1]〜[8]のいずれかに記載の電解セル。
[10]
前記逆電流吸収体が、金属板又は金属多孔板と、当該金属板又は金属多孔板表面の少なくとも一部に形成された逆電流吸収層と、を含み、
前記基材が、集電体と、当該集電体を支持する支持体と、隔壁と、を有し、
前記逆電流吸収部材が、金属弾性体をさらに有し、
前記金属板又は金属多孔板が、前記集電体及び前記陰極の間、並びに、前記集電体及び前記隔壁の間のいずれかに配置され、
前記金属板又は金属多孔板、前記隔壁、前記支持体、前記集電体、前記金属弾性体及び前記陰極が電気的に接続されている、[1]〜[8]のいずれかに記載の電解セル。
[11]
前記金属板又は金属多孔板が、Ni、Ni合金、又は、Ni若しくはNi合金の被覆層を表面に有するFe、Fe合金若しくはステンレス材料である、[10]に記載の電解セル。
[12]
前記逆電流吸収体の少なくとも一部が、前記金属弾性体と前記集電体との間に配置されている、[9]〜[11]のいずれかに記載の電解セル。
[13]
前記逆電流吸収体の少なくとも一部が、前記集電体と前記隔壁との間に配置されている、[9]〜[12]のいずれかに記載の電解セル。
[14]
前記陰極室が、前記基材として、隔壁と、前記陰極を支持する陰極支持体と、を有し、
前記陰極支持体が、前記陰極及び前記隔壁の間に配置され、
前記隔壁、前記陰極支持体及び前記陰極が電気的に接続されている、[1]〜[8]のいずれかに記載の電解セル。
[15]
前記逆電流吸収体の少なくとも一部が、前記陰極及び前記隔壁の間に配置されている、[14]に記載の電解セル。
[16]
前記基材及び/又は前記金属弾性体の少なくとも一部が、立方体、直方体、板状、棒状、網状、円盤状又は球状である、[1]〜[15]に記載の電解セル。
[17]
前記逆電流吸収体の比表面積が0.01〜100m2/gである、[1]〜[16]のいずれかに記載の電解セル。
[18]
前記逆電流吸収体の吸収電気量は、1,000〜2,000,000C/m2である、[1]〜[17]のいずれかに記載の電解セル。
[19]
前記逆電流吸収体の実効表面積の総和は、10〜100,000m2である、[1]〜[18]のいずれかに記載の電解セル。
[20]
[1]〜[19]のいずれかに記載の電解セルを備える、電解槽。
[21]
前記電解槽における陽極と前記逆電流吸収部材との距離が、35mm〜0.1mmである、[20]に記載の電解槽。
[22]
[1]〜[19]のいずれかに記載の電解セルの製造方法であって、
前記基材又は金属弾性体に前記逆電流吸収体を形成して前記逆電流吸収部材を得る形成工程を有し、
前記形成工程後において、前記面積S3と前記面積SAの比が、0.20 ≦ S3/(SA)< 1.0である、電解セルの製造方法。
また、本実施形態の電解槽は、本実施形態の電解セルを備える。本実施形態の電解槽は、このように構成されているため、低いコストで且つ簡便に実現しうるだけでなく、電解の停止時に生ずる逆電流による陰極の劣化、イオン交換膜の損傷及び電圧上昇を抑制できる。
後述する実施例、比較例に示すように、本発明者らが電解停止後、逆電流が流れている間の陰極電位の時間変化を測定したところ、電解セルにおいて、高さ0〜1/2h未満の高さに対応する陰極の電位よりも1/2h〜hの高さに対応する陰極電位の方が早く上昇することを見出した。かかる結果は、逆電流による陰極触媒の溶出は電極面内で均一に起こるのではなく、上部の方が早く溶出し始めることを示している。すなわち、陰極触媒全面を溶出から守るためには、電解セルにおいて、1/2h〜hの高さに対応する位置Iに存在する逆電流吸収体の面積が重要である。
S3/SAが0.20以上の値をとることにより、逆電流吸収体の面積が陰極全面を保護するために十分な値となり、後述する逆電流試験において陰極触媒溶出を90%以上抑制することができる。より好ましくは0.36以上の値であり、この場合は陰極触媒の溶出をほぼ100%抑制できる傾向にある。
一方、逆電流吸収体は電解液の流動抵抗となり得るものであるが、S3/SAが1.0以上の値となる場合、かかる流動抵抗としての影響が顕在化する傾向にあるため、結果として膜損傷の発生につながる傾向にある。電解中に発生したガスは上述した通り、電解セル上部に滞留する傾向にある。電解セルにおける位置Iではガスリッチであり、電解液の供給性が特に低下する傾向にある。このためS3/SAが1.0未満の値をとることで電解液の供給性を維持し、膜損傷の発生頻度を抑制することができる。より好ましくは0.79以下の値で膜損傷の発生頻度を大きく抑制することができる。
なお、陰極面からの距離を考慮し、逆電流吸収体の設置位置が集電体、支持体、隔壁になる順に上記の値はより大きい方が好ましい。例えば、逆電流吸収体を隔壁上に設置する場合には、S3/SAが0.5以上であることがより好ましい。
[電解試験]
チタン基材に陽極触媒を塗布した陽極を有する陽極室と含フッ素系イオン交換膜と前記電解セルとを組み合わせてなる電解槽において、陽極室出口のNaCl濃度を3.5N±0.2、陰極室出口のNaOH濃度を32±1質量%、温度88±1℃とし、塩化ナトリウム電解を行い、電解開始から2時間後、22時間後及び42時間後の各時点で一時的に下記の逆電流を流し、電解開始から110時間後にさらに逆電流を流して電解を終了する。塩化ナトリウム電解開始から22時間までの電流密度は4kA/m2とし、塩化ナトリウム電解開始から22時間以降の電流密度は6kA/m2とする。
(逆電流の条件)
1回あたり、電流密度50A/m2で15分逆電流を流す。
上記のように構成されているため、本実施形態の電解セルによれば、電解の停止時に生ずる逆電流による陰極の劣化を抑制することができる。すなわち、本実施形態の電解セルは、アルカリ塩電解用、水電解用、燃料電池用に好ましく適用することができる。
本実施形態の第1の態様に係る電解セルは、典型例の1つとして、次のような構成とすることができる。すなわち、前記基材が、集電体と、当該集電体を支持する支持体と、隔壁と、バッフル板とを有し、前記逆電流吸収部材が、金属弾性体をさらに有し、前記金属弾性体が、前記集電体及び前記陰極の間に配置され、前記支持体が、前記集電体及び前記隔壁の間に配置され、前記隔壁、前記支持体、前記集電体、前記金属弾性体及び前記陰極が電気的に接続されているものとすることができる。
また、前記逆電流吸収体が、金属板又は金属多孔板と、当該金属板又は金属多孔板表面の少なくとも一部に形成された逆電流吸収層と、を含み、前記基材が、集電体と、当該集電体を支持する支持体と、隔壁と、を有し、前記逆電流吸収部材が、金属弾性体をさらに有し、前記金属板又は金属多孔板が、前記集電体及び前記陰極の間、並びに、前記集電体及び前記隔壁の間のいずれかに配置され、前記金属板又は金属多孔板、前記隔壁、前記支持体、前記集電体、前記金属弾性体及び前記陰極が電気的に接続されているものとすることもできる。
図1は、上記した第1の態様に係る電解セルの一例を断面模式図として示したものである。電解セル1は、陽極室10と、陰極室20と、陽極室10及び陰極室20を隔離する隔壁30と、陽極室10に設置された陽極11と、陰極室20に設置された陰極21と、を備える。さらに、電解セル1は、逆電流吸収体18を陰極室20内に備えている。逆電流吸収体18は、図6に例示するように、金属多孔板18aと当該金属多孔板18a上に形成された逆電流吸収層18bとを有する構成とすることができる。1つの電解セル1に属する陽極11及び陰極21は互いに電気的に接続されている。
金属多孔板18aは、特に限定されないが、Ni、Ni合金、又は、Ni若しくはNi合金の被覆層を表面に有するFe、Fe合金若しくはステンレス材料であることが好ましい。
なお、図1において、逆電流吸収体18は、基材としての集電体23上に形成されている。この例において、逆電流吸収部材は、逆電流吸収体18と集電体23とを含み、当該逆電流吸収部材は、陰極21に対向して配置されている。
対向して配置とは、基材の前記陰極に対向する表面と陰極とが向かいあった状態で配置されていればよく、所定の間隔をあけて配置されている状態でもよく、間隔をあけずに配置されている状態でもよい。また、双方の表面の間に他の部材を介する場合も含む趣旨である。さらに、両平面が互いに平行である必要はなく、傾斜を有して対向させる場合も含まれる。
基材の陰極対向面も、上述した「対向」と同様に解釈することができる。図1に示す隔壁30と支持体24、支持体24と集電体23、集電体23と金属弾性体22がそれぞれ直接取り付けられ、金属弾性体22上に陰極21が積層されている態様を例にすると、「基材の陰極対向面」は集電体23の陰極21側の表面である。このように、本実施形態において、基材の陰極対向面は、好ましくは、集電体の陰極側の表面である。
本明細書において、逆電流吸収体の面積とは、逆電流吸収体の陰極対向面の面積を意味し、逆電流吸収体18が複数ある場合はその合計面積をS3とする。なお、陰極及び逆電流吸収体の形状は特に限定されるものではないが、陰極及び/又は逆電流吸収体の形状が網状等の開孔を有するものである場合であって、(i)開孔率が90%未満である場合は、S3及びSAについては、その開孔部分も面積にカウントするものとし、一方で(ii)開孔率が90%以上である場合は、逆電流吸収体の機能を十分に確保するべく、当該開孔部分を除いた面積でS3及びSAを算出する。ここでいう開孔率は、逆電流吸収体の陰極対向面における開孔部分の合計面積S’を、当該開孔部分を面積にカウントして得られる逆電流吸収体の陰極対向面における面積S’’で割って得られる数値(%;100×S’/S’’)である。
図1に示すように、基材が集電体23と、集電体23を支持する支持体24と、隔壁30と、図示しないバッフル板とを有して構成される場合、基材の陰極対向面は、集電体23の陰極21に対向する表面となる。
図1では逆電流吸収体18が集電体23上にのみ配されている例を示しているが、これに限定されず、さらに隔壁30、支持体24、金属弾性体22、図示しないバッフル板等に配されていてもよい。位置Iにおける複数の逆電流吸収体18が高さとして重複する部分を有している場合(例えば、2つの逆電流吸収体が同じ高さにあり、一方は隔壁上に、他方は集電体上に、それぞれ配されている場合)、面積S3は、電解面から見た時の面積として特定する。すなわち、上述の重複部分は、カウントしない。
また、一つの逆電流吸収体18が位置I及び位置IIの双方に位置するように延在する場合、位置Iに対応する部分の面積のみを面積S3に対応するものとしてカウントする。
電解により発生したガスは電解セルの上方へ移動する。このため、電解中の電解セル内は上部ほどガスリッチな状態になっている。すなわち、電解セルの構造や運転条件にも依存するが、概ね位置Iに発生した泡が滞留する傾向にある。より具体的には、陰極で発生した水素ガスは、陰極と集電体の間を通り、一部は集電体から陰極隔壁側へ抜けながら上方へ移動していく。このため電解セル上部は下部に比べて電解液が滞留しやすい状態になっている。通常、イオン交換膜は所定の苛性濃度範囲で高性能、高耐久性を発現するように設計されており、生成ガスを多く含む電解液が滞留しやすい電解セル上部は性能、耐久性の低下が起こりやすい環境にある。
本実施形態においては、位置Iに存在する逆電流吸収体の面積の方が位置IIに存在する逆電流吸収体の面積よりも大きいことにより、コストを抑えつつ陰極全体を保護することができる傾向にある。例えば、S4/SAの値が同じ電解セルを比較したとき、位置Iにおいて、位置IIよりも面積が大きくなるように逆電流吸収体を集電体上に設置すると(すなわち、S4<S3)、電解セルの上部の方がより陰極損傷が起こりやすいため、陰極全体を保護できる傾向にある。
逆電流が逆電流吸収体18で消費されることにより陰極の劣化が抑制されるメカニズムについては、特許第5670600号公報などに記載されている。
Ruを含む触媒層で表面を被覆されたNi基材を陰極に使用した場合のメカニズムについては特許第5670600号公報などに記載されている。
以上、陰極の触媒層がRuから構成される場合について説明したが、Ru以外の元素を触媒層に用いてもよい。触媒層用の元素としては、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luが挙げられる。これらの元素の酸化還元電位よりも卑な酸化還元電位を持つ材料を逆電流吸収体の材料として選択することにより、Ruの場合と同様の上記効果を得ることができる。Ru以外の上記元素を触媒層に用いた場合も、陰極電位が上昇すると酸化反応が進行し性能低下などが起こってしまう。また、下記反応(1)〜(5)のうち、反応(1)、(2)、(4)、(5)が進行する。
反応(1) H+OH−→H2O+e−
反応(2) Ni+2OH−→Ni(OH)2+2e−
反応(3) RuOxHy+aOH−→RuO4 2−+bH2O+ce−
反応(4) Ni(OH)2+OH−→NiOOH+H2O+e−
反応(5) 4OH−→O2+2H2O+4e−
これらの反応のうち特に反応(4)で生成する3価〜4価のニッケル化合物は、針状、六角形状、六角柱状の構造を有しており、しかも触媒層と陰極基材の界面で生成する。この結果、触媒層の陰極からの剥離が起こり、触媒層の性能低下、耐久性低下につながる。ここで、Niから構成される逆電流吸収層を有する逆電流吸収体を用いることによって、上記と同様の原理により、陰極電位を、陰極の触媒層に含まれる元素の酸化還元電位あるいは反応(4)の電位よりも卑な電位に維持することができるため、触媒層の酸化、陰極における3価〜4価のニッケル化合物の生成を抑制し、触媒層の性能及び耐久性を維持することができる。
陰極室20の枠内には、陰極21が設けられている。陰極21は、ニッケル基材とニッケル基材を被覆する触媒層とを有することが好ましい。ニッケル基材上の触媒層の成分としては、C、Si、P、S、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属及び当該金属の酸化物又は水酸化物が挙げられる。2種類以上の元素を組み合わせでもよい。元素の例としては、ルテニウムのみ、ルテニウム+ニッケル、ルテニウム+セリウム、ルテニウム+ランタン、ルテニウム+ランタン+白金、ルテニウム+ランタン+パラジウム、ルテニウム+プラセオジム、ルテニウム+プラセオジム+白金、ルテニウム+プラセオジム+白金+パラジウム、ルテニウム+ネオジム、ルテニウム+ネオジム+白金、ルテニウム+ネオジム+マンガン、ルテニウム+ネオジム+鉄、ルテニウム+ネオジム+コバルト、ルテニウム+ネオジム+亜鉛、ルテニウム+ネオジム+ガリウム、ルテニウム+ネオジム+硫黄、ルテニウム+ネオジム+鉛、ルテニウム+ネオジム+ニッケル、ルテニウム+ネオジム+銅、ルテニウム+サマリウム、ルテニウム+サマリウム+マンガン、ルテニウム+サマリウム+鉄、ルテニウム+サマリウム+コバルト、ルテニウム+サマリウム+亜鉛、ルテニウム+サマリウム+ガリウム、ルテニウム+サマリウム+硫黄、ルテニウム+サマリウム+鉛、ルテニウム+サマリウム+ニッケル、白金+セリウム、白金+パラジウム+セリウム、白金+パラジウム+ランタン+セリウム、白金+イリジウム、白金+パラジウム、白金+イリジウム+パラジウム、白金+ニッケル+パラジウム、白金とニッケルの合金、白金とコバルトの合金、白金と鉄の合金、白金とニッケルとパラジウムの合金、などが挙げられる。
白金族金属、白金族金属酸化物、白金族金属水酸化物、白金族金属を含む合金を含まない場合、触媒の主成分がニッケル元素であることが好ましい。
ニッケル金属、酸化物、水酸化物のうち少なくとも1種類を含むことが好ましい。
第二成分として、遷移金属を添加してもよい。添加する第二成分としては、チタン、スズ、モリブデン、コバルト、マンガン、鉄、硫黄、亜鉛、銅、炭素のうち少なくとも1種類の元素を含むことが好ましい。
好ましい組み合わせとして、ニッケル+スズ、ニッケル+チタン、ニッケル+モリブデン、ニッケル+コバルトなどが挙げられる。
また、上記の触媒層を第一層として、第一層の上に、第二層を形成さえてもよい。第二層に含まれる元素の好ましい組み合わせの例としては、第一層で挙げた組み合わせなどがある。第一層と第二層の組み合わせは、同じ組成で組成比が異なる組み合わせでもよいし、異なる組成の組み合わせでもよい。
必要に応じ、第1層とニッケル基材の間に、中間層を設けることができる。中間層を設置することにより、陰極の耐久性を向上させることができる。
触媒層の形成方法としては、メッキ、合金めっき、分散・複合めっき、CVD、PVD、熱分解及び溶射が挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。また、必要に応じて陰極21に還元処理を施してもよい。なお、陰極21の基材としては、ニッケル基材以外に、ニッケル合金を用いてもよい。
本実施形態においては、陰極が、Ni若しくはNi合金、又はFeにNi若しくはNi合金をメッキしたものからなる陰極基材と、当該陰極基材上に形成され、前記触媒金属を含有する触媒層とを有することが好ましい。
逆電流吸収体(金属板又は金属多孔板を含む場合は、特に「逆電流吸収層18b」ともいう。以下同じ。)は、陰極に比べて卑な酸化還元電位(低い酸化還元電位)を有する元素を含有することが好ましい。つまり、逆電流吸収体の酸化反応の酸化還元電位は、陰極21の表面を被覆する触媒層の酸化反応の酸化還元電位に比べて卑であることが好ましい。
X線回折については、後述する実施例に記載の方法により行うことができる。また、本実施形態において、例えば、コーティング製作時にかかる熱量を制御する、具体的には熱量を多くすると半値全幅を小さく、熱量を少なくすることにより半値全幅を大きくすることができる。このような方法等により、半値全幅の値を上述した範囲に調整することができる。
逆電流吸収体は、前述したNi以外の元素を有するものであってもよい。例えば、C、Cr、Al、Zr、Ru、Rh、Ag、Re、Os、Ir、Pt、Au、Bi、Cd、Co、Cu、Fe、Hg、Mn、Mo、Pd、Sn、Ti、W、Zn、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luも、これらの元素が水酸化物あるいは酸化物になる反応により逆電流を吸収することができるため、逆電流吸収体は、Ni又はNiOの他に、これらの元素、又は、これらの元素の混合物、合金、複合酸化物を含んでいてもよい。Ni以外の元素を含む場合、逆電流吸収体に含まれる全元素に占めるNiの割合は、10モル%以上100モル%以下であることが好ましい。より好ましくは30モル%以上100モル%以下である。さらに好ましくは50モル%以上100モル%以下である。
使用される環境、コスト等を勘案すると、逆電流吸収体は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、パラジウム、ルテニウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。化合物の形態は酸化物の混合物、複合酸化物、合金であってもよい。
逆電流吸収体の比表面積、細孔径分布曲線、細孔容積は、次のようにして得ることができる。測定試料を専用セルに入れ、加熱真空排気を行うことにより前処理を行い、細孔表面への吸着物を予め取り除く。その後、−196℃で測定サンプルへの窒素吸着の吸脱着等温線を測定する。得られた吸脱着等温線をBET法で解析することにより、測定サンプルの比表面積を求めることができる。また、BJH法で解析することにより、測定サンプルの細孔径分布曲線及び細孔容積を求めることができる。
1つの電解セルが備える全ての逆電流吸収体の実効表面積の総和(総実効表面積)は、窒素吸着法で測定した逆電流吸収体の比表面積(m2/g)に、1つの電解セルが備える全ての逆電流吸収体の量(g)を乗じることで算出される。
逆電流吸収体の酸化還元能及び充放電能の上限は特に限定されない。逆電流吸収体の酸化還元能及び充放電能は、1つの電解セルに設置された全ての逆電流吸収体が吸収できる電気量の総和を、その電解セルの電解面積で除した値で表される。電解セルの電解面積は、電解セル内の全ての陰極又は陽極のいずれか一方の面積の合計に等しい。逆電流吸収体は、電解面積1m2当たり1,000C以上2,000,000C以下の電気量の酸化還元能を有することが好ましい。つまり1つ電解セルが備える全ての逆電流吸収体の吸収電気量は、1,000〜2,000,000[Coulomb/m2]であることが好ましい。前述のとおり、逆電流の電気量を吸収するために充分な電気量を消費する反応を逆電流吸収体で進行させるためには、逆電流電気量に見合うだけの量の逆電流吸収体を導入すればよい。1つの電解セルが備える全ての逆電流吸収体が吸収できる電気量が上記範囲内であれば、逆電流吸収体が逆電流を十分に吸収することができる。これにより、陰極の劣化をより抑制することができる。または、逆電流吸収体は、電解面積1m2当たり2,000,000C以下の電気量の充放電能を有することが好ましく、1,500,000C以下の電気量の充放電能を有することがより好ましく、1,000,000C以下の電気量の充放電能を有することがさらに好ましい。
本実施形態において、例えば、コーティング形成時に加える熱量を制御する、具体的には熱量を多くすると表面積を小さく、熱量を少なくすることにより表面積を大きくすることができる。このような方法等により、逆電流吸収体の比表面積の値を上述した範囲に調整することができる。
また、ニッケル化合物が溶解した溶液を金属多孔板18aに塗布、乾燥、焼成する熱分解法で形成してもよい。熱分解法で逆電流吸収体を形成することにより、逆電流吸収層18bと金属多孔板18aの密着性や、逆電流吸収層18b内のニッケル粒子同士の密着性が適度に向上する傾向にある。また、集電体23上に逆電流吸収層18bを形成する場合、逆電流吸収層18bと集電体23との密着性も適度に向上する。これにより耐久性も向上することができる。
溶射法では、高温プラズマ中で半溶融状態にある金属ニッケル粉、酸化ニッケル粉等の原料粉を、基材へ吹き付けるとよい。原料粉は、10〜100μmの粒子に造粒したものであることが好ましい。これにより、基材と逆電流吸収体との密着性が良くなる傾向にある。また、吹き付けられた半溶融状態の原料粉は、基材への付着と同時に冷えて固まり、適度に結晶性の高い粒子となる傾向にある。このようにして逆電流吸収体中のニッケル金属の結晶性を高めることにより、逆電流吸収体の粉末X線回折パターンにおいて回折角2θ=44.5°におけるNi金属の回折線ピークの半値全幅を0.6°以下にすることができる。
熱分解法では、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、水酸化ニッケル、あるいはヘキサアンミンニッケル等のニッケル錯体を水、アルコール、有機溶媒に溶解させた溶液を基材へ塗布した後、乾燥、焼成させることが好ましい。焼成温度の範囲は200℃から600℃が好ましい。
逆電流吸収体18は、集電体、バッフル板、隔壁及び支持体等の基材や金属弾性体とは別体である。すなわち、逆電流吸収体は、既設の電解槽の陰極室に後から容易に付け足することができる。つまり、独立した逆電流吸収体によれば、既設の電解槽の陰極室に逆電流吸収能力を付与することができる。なお、本明細書において、逆電流吸収部材の一部として含まれていてもよい金属弾性体と、基材とは別体である。逆電流吸収体の数、金属弾性体の数及び基材の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。また、逆電流吸収部材における基材又は金属弾性体の形状は、立方体、直方体、板状、棒状、網状、円盤状又は球状であってもよい。少なくとも一部の逆電流吸収部材における基材が、集電体、バッフル板、隔壁又は支持体であってもよい。すなわち、逆電流吸収体の少なくとも一部は、陰極と金属弾性体の間に配置されていてもよく、金属弾性体と集電体の間に配置されていてもよく、集電体と隔壁の間に設置されていてもよい。
本発明者らが逆電流が流れている間の陰極の電位分布を確認した結果、逆電流吸収体と対向する部分だけでなく、その周囲の陰極電位が貴になることを抑制する効果があることが判明した。
逆電流吸収体が設置された部分の周囲の陰極電位が貴になることを抑制する効果がみられたことから、本発明者らは、短冊状や丸状等の逆電流吸収体を陰極室内に点在させて設置しても上記の効果が得られることを見出した。
図1に示される構成を有する電解セル、すなわち、逆電流吸収体が集電体上に配置されている場合を例にすると、逆電流吸収体の配置密度は、基材の陰極対向面(すなわち集電体の陰極対向面)の面積S1に対する、集電体上における逆電流吸収体の面積の総和S2の比率で表すことができ、S2/S1として、好ましくは0.05〜0.9であり、より好ましくは0.1〜0.8であり、さらに好ましくは、0.2〜0.7である。上述した範囲を満たす場合、少量の逆電流吸収体で十分な逆電流の吸収効果が得られる傾向にある。
更に、本発明者らは、逆電流が流れている間の陰極の電位分布を詳細に確認した結果、陰極の電位は上下左右方向で均一でないことが判明し、特に上下方向で大きな電位分布が生じ、陰極上部ほど貴な電位になりやすいことを見出した。
1枚の陰極内で電位分布が生じる原因については、特定の作用機序に限定する趣旨ではないが、次のとおりであるものと推測される。
イオン交換膜を介して対向する陽極室に設置されている陽極の電位分布を測定すると、陰極と同様に、特に上下方向で大きな電位分布が生じており、一因として、陽極室上部の方が、溶存塩素濃度が高くなっている可能性がある。陰極の上部は貴な電位になりやすく酸化劣化を受けやすい。一方、陰極の下部は貴な電位になりにくく酸化劣化を受けにくいと考えることができる。すなわち、陰極上部に対応する位置において逆電流吸収体の配置密度を高くすることにより、陰極室内全面に対応する位置に逆電流吸収体を設置しなくても、逆電流に起因する陰極の劣化を陰極全体にわたって防止することができる。
さらに、図2に示すように、位置Iに逆電流吸収体の20%以上が存在することが好ましく、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。上述した範囲を満たす場合、特に少量の逆電流吸収体で十分な逆電流の吸収効果が得られる傾向にある。なお、本実施形態の電解セルにおけるhの値としては、特に限定されないが、例えば、95mm〜1600mmとすることができる。また、電解セルの幅としても、特に限定されないが、例えば、110mm〜3800mmのサイズとすることができる。
隔壁30は、セパレータと呼ばれることもあり、陽極室10と陰極室20の間に配置され、陽極室10と陰極室20とを区画するものである。隔壁30としては、電解用のセパレータとして公知のものを使用することができ、例えば、陰極側にニッケル、陽極側にチタンからなる板を溶接した隔壁等が挙げられる。
陽極室10は、陽極11を有する。また、陽極室10は、陽極室10に電解液を供給する陽極側電解液供給部と、陽極側電解液供給部の上方に配置され、隔壁30と略平行あるいは斜めになるように配置されたバッフル板と、バッフル板の上方に配置され、気体が混入した電解液から気体を分離する陽極側気液分離部とを有することが好ましい。
陽極室10の枠内には、陽極11が設けられている。陽極11としては、いわゆるDSA(登録商標:デノラ・ペルメレック株式会社)等の金属電極を用いることができる。DSAとは、ルテニウム、イリジウム、チタンを成分とする酸化物によって表面を被覆されたチタン基材である。
本実施形態において、隔膜として使用するイオン交換膜の損傷の観点から、電解槽における陽極と前記逆電流吸収部材との距離が、35mm〜0.1mmであることが好ましい。
陽極側電解液供給部は、陽極室10に電解液を供給するものであり、電解液供給管に接続される。陽極側電解液供給部は、陽極室10の下方に配置されることが好ましい。陽極側電解液供給部としては、例えば、表面に開口部が形成されたパイプ(分散パイプ)等を用いることができる。かかるパイプは、陽極11の表面に沿って、電解セルの底部に対して平行に配置されていることがより好ましい。なお、図2に示す例において、電解セルの底部は、陽極室の下端19A及び陰極室の下端19Cと一致している。このパイプは、電解セル1内に電解液を供給する電解液供給管(液供給ノズル)に接続される。液供給ノズルから供給された電解液はパイプによって電解セル1内まで搬送され、パイプの表面に設けられた開口部から陽極室10の内部に供給される。パイプを、陽極11の表面に沿って、陽極室の下端19Aに平行に配置することで、陽極室10の内部に均一に電解液を供給することができるため好ましい。
陽極側気液分離部は、バッフル板の上方に配置されることが好ましい。電解中において、陽極側気液分離部は、塩素ガス等の生成ガスと電解液を分離する機能を有する。なお、特に断りがない限り上方とは、図1の電解セル1における上方向を意味し、下方とは、図1の電解セル1における下方向を意味する。
バッフル板は、陽極側電解液供給部の上方に配置され、かつ、隔壁30と略平行あるいは斜めに配置されることが好ましい。バッフル板は、陽極室10の電解液の流れを制御する仕切り板である。バッフル板を設けることで、陽極室10において電解液(塩水等)を内部循環させ、その濃度を均一にすることができる。内部循環を起こすために、バッフル板は、陽極11近傍の空間と隔壁30近傍の空間とを隔てるように配置することが好ましい。かかる観点から、バッフル板は、陽極11及び隔壁30の各表面に対向するように設けられていることが好ましい。バッフル板により仕切られた陽極近傍の空間では、電解が進行することにより電解液濃度(塩水濃度)が下がり、また、塩素ガス等の生成ガスが発生する。これにより、バッフル板により仕切られた陽極11近傍の空間と、隔壁30近傍の空間とで気液の比重差が生まれる。これを利用して、陽極室10における電解液の内部循環を促進させ、陽極室10の電解液の濃度分布をより均一にすることができる。
陰極室20は、陰極21と逆電流吸収体を有し、陰極21と逆電流吸収体は電気的に接続されている。また、陰極室20も陽極室10と同様に、陰極側電解液供給部、陰極側気液分離部、バッフル板を有していることが好ましい。なお、陰極室20を構成する各部位のうち、陽極室10を構成する各部位と同様のものについては説明を省略する。
陰極室20は集電体23を備えることが好ましい。これにより、集電効果が高まる。図1に示す例では、集電体23は板状であり、本実施形態においては、集電体の表面と陰極21の表面とが略平行となるように配置されることが好ましい。このような集電体によれば、後述する金属弾性体のたわみを抑制しつつ集電効果が得られる傾向にある。
集電体23と陰極21との間に金属弾性体22が設置されることにより、直列に接続された複数の電解セル1の各陰極21がイオン交換膜2に押し付けられ、各陽極11と各陰極21との間の距離が短くなり、直列に接続された複数の電解セル1全体に掛かる電圧を下げることができる。電圧が下がることにより、消費電量を下げることができる。このような金属弾性体の構成によれば、電流効率を維持しつつゼロギャップの構成をとることができる。
陰極室20は、集電体23と隔壁30とを電気的に接続する支持体24を備えることが好ましい。これにより、効率よく電流を流すことができる。
バッフル板は、陰極側電解液供給部の上方に配置され、かつ、隔壁30と略平行あるいは斜めに配置されることが好ましい。バッフル板は、陰極室20の電解液の流れを制御する仕切り板である。バッフル板を設けることで、陰極室20において電解液(苛性等)を内部循環させ、その濃度を均一にすることができる。内部循環を起こすために、バッフル板は、陰極21近傍の空間と隔壁30近傍の空間とを隔てるように配置することが好ましい。かかる観点から、バッフル板は、陰極21及び隔壁30の各表面に対向するように設けられていることが好ましい。バッフル板により仕切られた陰極近傍の空間では、電解が進行することにより電解液濃度(苛性濃度)が下がり、また、水素ガス等の生成ガスが発生する。これにより、バッフル板により仕切られた陰極21近傍の空間と、隔壁30近傍の空間とで気液の比重差が生まれる。これを利用して、陰極室20における電解液の内部循環を促進させ、陰極室20の電解液の濃度分布をより均一にすることができる。
陽極側ガスケット51は、陽極室10を構成する枠体表面に配置されることが好ましい。陰極側ガスケット50は、陰極室20を構成する枠体表面に配置されていることが好ましい。1つの電解セルが備える陽極側ガスケット51と、これに隣接する電解セルの陰極側ガスケット50とが、イオン交換膜2を挟持するように、電解セル同士が接続される(図3参照)。これらのガスケットにより、イオン交換膜2を介して複数の電解セル1を直列に接続する際に、接続箇所に気密性を付与することができる。
イオン交換膜は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、塩化アルカリ等の電気分解により塩素とアルカリを製造する場合、耐熱性及び耐薬品性等に優れるという観点から、含フッ素系イオン交換膜が好ましい。含フッ素系イオン交換膜としては、電解時に発生するイオンを選択的に透過する機能を有し、かつイオン交換基を有する含フッ素系重合体を含むもの等が挙げられる。ここでいうイオン交換基を有する含フッ素系重合体とは、イオン交換基、又は、加水分解によりイオン交換基となり得るイオン交換基前駆体、を有する含フッ素系重合体をいう。このような含フッ素系重合体としては例えば、フッ素化炭化水素の主鎖からなり、加水分解等によりイオン交換基に変換可能な官能基をペンダント側鎖として有し、かつ溶融加工が可能な重合体等が挙げられる。
本実施形態の第2の態様に係る電解セルは、下記の相違点を除いて、第1の態様と同様である。以下では、第1の態様と第2の態様との相違点についてのみ説明し、両態様の共通事項についての説明は省略する。第2の態様によれば、第1の態様と同様に、陰極の酸化及び劣化を抑制することが可能となる。
本実施形態の第3の態様に係る電解セルは、下記の相違点を除いて、第1の態様と同様である。以下では、第1の態様と第3実施形態との相違点についてのみ説明し、両態様の共通事項についての説明は省略する。第3の態様によれば、第1の態様と同様に、陰極の酸化及び劣化を抑制することが可能となる。
なお、陰極室内における逆電流吸収体の配置については、第1の態様と同様である。
金属多孔板として、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。板厚が1mmのニッケル板をSW=3、LW=4、送り=1で加工した。加工後の厚みは1.2mmであった。このニッケル製エキスパンドメタルにスチールグリッド(粒番号70番、粒度範囲420μm〜1000μm)でブラスト処理を実施した。
酸化ニッケル粉、アラビアゴム、純水からなる混合液を噴霧乾燥させ、粒径5〜50μmの球状造粒物とした。この造粒物を上記のニッケル製エキスパンドメタル上へ、一次ガスとして窒素、二次ガスとして水素を使用し、プラズマ溶射した。プラズマ溶射後の厚みは1.6mmであった。引き続いて水素雰囲気中(窒素で希釈)、200℃で水素還元処理を実施した。水素還元後も厚みは1.6mmのまま変化がなかった。このようにして逆電流吸収体を作製した。
粉末X線回折パターンの測定は、ニッケル基材から逆電流吸収層を剥がして粉末状に加工した後、ガラス試料板に粉末サンプルを詰めて実施した。X線回折装置は、RINT2000 UltraX18(株式会社リガク)を使用した。X線源としてCuKα線(λ=1.54184Å)を用い、加速電圧50kV、電流200mA、走査軸2θ/θ、ステップ間隔0.02°、スキャンスピード2.0°/min、測定範囲2θ=20〜60°の条件で測定した。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θ=44.5°はNi金属の回折線、回折角2θ=43.28°はNiOの回折線である。Ni金属の回折線ピークの半値全幅の測定結果を表12に示す。半値全幅の測定は下記の手順で実施した。金属多孔板から逆電流吸収層を剥がして粉末状に加工した後、粉末X線回折測定を実施した。得られた結果において、回折角2θ=39.5°から回折角2θ=48.5°の点を直線で結び、ベースラインとした。2θ=44.5°付近に観測されるNi金属の回折ピークのピークトップからベースラインに垂線を下した。ピークトップと、垂線とベースラインの交点の中点で、ベースラインと平行な線を引いた。この線とピークが交差する2点間の距離を測定し、半値全幅とした。半値全幅は0.33°だった。
水素還元処理前後または予備電解前後の酸化度(酸化度X:水素還元処理または予備電解前、酸化度Y:水素還元または予備電解後)を表12に示す。なお、酸化度は次の式により算出した値とした。以下の所定の実施例についても、上記と同様に酸化度を測定した。
酸化度=(NiO回折強度)/(Ni金属回折強度+NiO回折強度)×100
ここで、
NiO回折強度=(NiO回折ピークトップ値)−(バックグラウンド値)
Ni金属回折強度=(Ni金属回折ピークトップ値)−(バックグラウンド値)
バックグラウンド値=(39.5°のカウント+48.5°のカウント)/2
とした。酸化度Xは78%、酸化度Yは3.3%だった。以下の所定の実施例についても、上記と同様にX線回折測定を行った。
逆電流吸収体を3cm×3cmサイズに切り出し、PTFEで被覆したニッケル製の棒にニッケル製のネジで固定した。対極(陽極)には白金網を使用した。
PFA製ビーカーに32重量%水酸化ナトリウム水溶液を入れ90℃に昇温し、逆電流吸収体および白金網を設置した。逆電流吸収体と白金網との間に電流を1時間流し、水酸化ナトリウム水溶液を電解して逆電流吸収体上で水素を発生させた。電解時の電流密度は4kA/m2とした。その後、電流密度250A/m2の逆電流を白金網と逆電流吸収体の間に流しながら逆電流吸収体の電位を測定した。逆電流吸収体の電位とは、Ag|AgCl参照電極に対する逆電流吸収体の電位であり、電位の測定にはルギン管を用いた。逆電流を流し始めた時点から逆電流吸収体がRuの酸化溶出反応の電位(−0.1Vvs.Ag|AgCl)に到達するまでの時間T(秒)を測定した。実施例1の時間Tおよび時間Tと電流密度250A/m2との積によって、白金板と逆電流吸収体の間に流れた電気量(逆電流吸収体の逆電流吸収量,単位:C/m2)を表12に示す。時間Tは2234秒、逆電流吸収量は558500C/m2だった。以下の所定の実施例についても、上記と同様に時間Tと逆電流吸収量を測定した。
実施例の逆電流吸収層の比表面積、細孔径分布曲線、細孔容積を島津製作所製「TriStarII3020(窒素ガス吸着量測定装置)」を用いて測定した。前処理として、圧力200mTorr以下、80℃の条件で2時間真空乾燥した。測定結果を表12に示す。これらの測定は、金属多孔板から逆電流吸収層を剥がして粉末状に加工した逆電流吸収層について行った。結果を表12に示す。比表面積は3.3m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は94%だった。以下の所定の実施例についても、上記と同様に比表面積の測定を行った。
電解実験は、商業プラントに使用されるゼロギャップ電解セルと同型のセルを用いて実施した。本実施例では一例として、特許第4453973号明細書に開示される構造の電解セルを使用した。電解セルは1年間使用したものを用いた。本電解試験では電解セルが直列に10対並んだ電解槽を使用した。電解槽を組んだ時、集電体と陽極の間隔が約4.5mmとなる電解セルを使用した。すなわち、この4.5mmの間隔に、逆電流吸収体、弾性マットレス、陰極、イオン交換膜が挟まれており、陰極と集電体とは同じ面積を有し、かつ並行に対向する構造とした。すなわち、陰極室の上端及び下端の位置と、集電体の上端及び下端の位置とは、それぞれ一致しており、陰極室における高さ(本実施形態における高さ0、高さh、位置I及び位置II)は、集電体(実施例1〜4,4−1、13及び比較例1では縦1150mm×横1190mmサイズを横に2枚並べて設置)における高さで特定した(以下同様)。
電解セルの陰極室中に設置される陰極およびクッションマットを一旦外し、ニッケルエキスパンドメタルからなる集電体の上に、縦230mm、横1190mmサイズの逆電流吸収体2枚をティグ溶接により取り付けた。取り付けは、それぞれ集電体の上辺から0mm、すなわち集電体の上辺と逆電流吸収体の上辺が重なる位置に取り付けた(図8)。その上に外したクッションマット、陰極を再び取り付けた。
クッションマットとして0.1mmのニッケルワイヤーを用いて織物とし、波形加工したものを集電体にスポット溶接して固定した。クッションマットの上に水素発生用陰極として、線形0.15mmで40メッシュの金網に、ルテニウムが主成分として含まれるコーティングを施したものを積層、固定した。
陽極は、チタン基材上にルテニウム、イリジウム、チタンを成分とする酸化物がコーティングされた、いわゆるDSA(登録商標)を使用した。
イオン交換膜には「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成株式会社製)を使用した。
陽極室出口のNaCl濃度が3.5N±0.2N、陰極室出口のNaOH濃度が32重量%±1重量%、温度が88℃±1℃となるように調整しながら、電流密度4kA/m2、で食塩電解を実施した。電解開始から2時間後に一旦停止し、強制的に逆電流を流した。所定の逆電流を流した後、電流密度4kA/m2で食塩電解を再スタートした。再スタートから20時間後に逆電流を流した。同様に再スタートから20時間後に逆電流を流した。その後、6kA/m2で再スタートし、68時間運転した後、逆電流を流した。合計4回の逆電流履歴を与えた。逆電流の条件は下に示す通りとした。
逆電流用整流器の設定電流密度=50A/m2
時間=15分間
逆電流を流している15分間、電流値をモニターし流れた逆電流電気量を算出すると49000C/m2の電気量が流れていた。これは逆電流を流し始めた数分間は、陽極室に多量の塩素が残存しており、電流が安定しないためである。
上記4回の逆電流履歴を与えた後、電解槽を一旦解枠し水素発生陰極のルテニウム残量をハンディー型蛍光X線分析装置(Niton XL3t−800S、Thermo Scientific社)を用いて測定し、電解試験前後でルテニウムの残存率を算出した(測定A)。
コーティング測定実施後、電解槽を組み直し食塩電解を実施した。電流密度4kA/m2で5日間、6kA/m2で18日間、合計23日間連続して電解を行った。その後、電解槽を解枠し水素発生陰極のルテニウム残量をXRF(ハンディー型蛍光X線分析装置、Niton XL3t−800S、Thermo Scientific社)を用いて測定し、食塩電解後のルテニウムの残存率を算出した(測定B)。測定A、Bの残存率は、電解試験前に測定した値を基準に算出した。なお、上記の測定A及びBはいずれも図9に示す30点を測定した。
4回の逆電流を印加するたびに、陰極出口から排出される苛性ソーダ溶液を目視で観察したが、着色等は観察されなかった。測定Aの結果を表1に示す。ほぼすべての測定点で99%以上のルテニウム残存率であった。30点の平均値は98%だった。
次いで、使用したイオン交換膜を取り出し、剥離、発泡、潰れ等の膜損傷の有無を観察した。極軽微なものも含め、すべての箇所を合計した。膜観察結果において、電解性能に置いて問題のないレベルを○、長期的に見た時に問題が発生する可能性のあるレベルを△、問題のあるレベルを×とした。具体的には、合計数が260個以下を○、260を超えて310個以下を△、310個以上を×とした。以下の所定の実施例についても、上記と同様にイオン交換膜の損傷有無を評価した。実施例1では○だった。
実施例1と同じ逆電流吸収体を用い、設置位置を図10のように集電体の上辺から165mmの位置に逆電流吸収体を設置した以外は実施例1と同様に電解試験を実施した。電解試験前後のルテニウムの残存率の測定結果を表3(測定A)、表4(測定B)に示す。ほぼすべての測定点で99%以上のルテニウム残存率であった。また、4回の逆電流を印加するたびに、陰極出口から排出される苛性ソーダ溶液を目視で観察したが、着色等は観察されなかった。いずれの測定でも、30点の平均値は100%だった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例2では○だった。
実施例1と同じ逆電流吸収体を用い、逆電流吸収体の設置位置を図11のように集電体の上辺から265mmの位置に逆電流吸収体を設置した以外は実施例1と同様に電解試験を実施した。電解試験前後のルテニウムの残存率の測定結果を表5(測定A)、表6(測定B)に示す。ほぼすべての測定点で99%以上のルテニウム残存率であった。また、4回の逆電流を印加するたびに、陰極出口から排出される苛性ソーダ溶液を目視で観察したが、着色等は観察されなかった。いずれの測定でも、30点の平均値は100%だった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例3では○だった。
実施例1と同じ逆電流吸収体を用い、逆電流吸収体の設置位置を図12のように集電体の上辺から365mmの位置に逆電流吸収体を設置した以外は実施例1と同様に電解試験を実施した。電解試験前後のルテニウムの残存率の測定結果を表7(測定A)、表8(測定B)に示す。ほぼすべての測定点で99%以上のルテニウム残存率であった。また、4回の逆電流を印加するたびに、陰極出口から排出される苛性ソーダ溶液を目視で観察したが、着色等は観察されなかった。いずれの測定でも、30点の平均値は99%だった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例4では○だった。
実施例1と同じ逆電流吸収体を用い、逆電流吸収体の設置位置を図13のように集電体の上辺から460mmの位置(電解槽のちょうど中央)に逆電流吸収体を設置した以外は実施例1と同様に電解試験を実施した。電解試験前後のルテニウムの残存率の測定結果を表9(測定A)に示す。4回の逆電流を印加するたびに、陰極出口から排出される苛性ソーダ溶液を目視で観察したところ、極わずかに着色が観察された。30点の平均値は90%だった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたところ、実施例4−1では○だった。
逆電流吸収体を設置しなかったこと以外は実施例1と同様に電解試験を実施した。目視で観察したところ、逆電流を印加するたびに、陰極出口から排出される苛性ソーダ溶液はルテニウムが溶出した茶色に着色していることが観察された。逆電流を印加するたびに陰極コーティングが溶出していることがわかった。電解試験前後のルテニウムの残存率の測定結果を表10(測定A)に示す。すべての測定点でルテニウム残存率が大きく低下した。30点の平均値は5%だった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べたが、比較例1では○だった。
金属多孔板として、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。板厚が0.2mmのニッケル板をSW=2、LW=3、送り=0.2で加工したのち、圧延処理を実施し、0.2mmの厚みに調整した。また、縦の長さは230mm、横の長さは1190mmであった。このニッケル製エキスパンドメタルにスチールグリッド(粒番号20番、粒度範囲75μm〜300μm)でブラスト処理を実施した。
酸化ニッケル粉、アラビアゴム、純水からなる混合液を噴霧乾燥させ、粒径5〜50μmの球状造粒物とした。この造粒物を上記のニッケル製エキスパンドメタル上へ、一次ガスとして窒素、二次ガスとして水素を使用し、プラズマ溶射した。プラズマ溶射後の厚みは0.59mmであった。このようにして4枚の逆電流吸収体を作製した。実施例5では実施例1と同様の還元処理を行わず、代わりに予備電解として温度88℃、電流密度4kA/m2で約100時間食塩電解を実施して逆電流吸収体の還元を行った。逆電流吸収体は、集電体とマットレスの間に設置した。すなわち、逆電流吸収体は陰極としては機能していないが、水素発生している還元雰囲気下に曝されていた。その後、実施例1と同様に−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tを測定した結果、871秒、逆電流吸収量は、217750C/m2だった。Ni金属のX線回折半値幅は0.32°だった。また、Ni金属の回折線ピークの半値全幅は0.32°、酸化度Xは80%、酸化度Yは51%、比表面積は1.5m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は90%だった(表12)。
実施例5では、電解槽を組んだ時、集電体と陽極の間隔が約2mmとなる電解セルを使用した。すなわち、この2mmの間隔に、逆電流吸収体、弾性マットレス、陰極、イオン交換膜が挟まれる構造とした。実施例1と同様に1年間使用した電解セルを用いた。実施例5の集電体は、縦1160mm×横1190mmのサイズのものを横に2枚並べて使用した(以下の実施例6,7,8,9,10,11,12及び比較例1−1も同様)。陰極室の上端及び下端の位置と、集電体の上端及び下端の位置とは、それぞれ一致していた。図14のように電解槽の集電体上端から250mmの位置に逆電流吸収体の上辺が来るように4枚の逆電流吸収体を隙間なく並べ、ティグ溶接で固定した。4枚の逆電流吸収部材が設置される面は、縦460mm、横2380mmであった。逆電流吸収体の下辺と集電体の下端の距離は450mmだった。
上述した予備電解の後、実施例1と同様に、電解槽を用いた電解試験を実施し、測定Aを実施した結果30点の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例5では○だった。
金属多孔板として、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。板厚が0.3mmのニッケル板をSW=2、LW=4、送り=0.3で加工したのち、圧延処理を実施し、0.3mmの厚みに調整した。また、幅は230mm、長さは1190mmであった。このニッケル製エキスパンドメタルにスチールグリッド(粒番号20番、粒度範囲75μm〜300μm)でブラスト処理を実施した。
酸化ニッケル粉、アラビアゴム、純水からなる混合液を噴霧乾燥させ、粒径5〜50μmの球状造粒物とした。この造粒物を上記のニッケル製エキスパンドメタル上へ、一次ガスとして窒素、二次ガスとして水素を使用し、プラズマ溶射した。プラズマ溶射後の厚みは0.66mmであった。このようにして4枚の逆電流吸収体を作製した。実施例6では実施例1と同様の還元処理を行わず、代わりに予備電解として温度88℃、電流密度4kA/m2で約100時間食塩電解を実施して逆電流吸収体の還元を行った。逆電流吸収体は、集電体とマットレスの間に設置した。すなわち、逆電流吸収体は陰極としては機能していないが、水素発生している還元雰囲気下に曝されていた。その後、実施例1と同様に−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tを測定した結果、1051秒、逆電流吸収量は、262750C/m2だった。また、Ni金属の回折線ピークの半値全幅は0.32°、酸化度Xは80%、酸化度Yは57%、比表面積は1.7m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は91%だった(表12)。
実施例5と同様に4枚の逆電流吸収体を電解槽に設置した。実施例6では、上述した予備電解の後、実施例1と同様に、電解槽を用いた電解試験を実施し測定Aを実施した結果30点の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例6では○だった。
実施例6で作製した逆電流吸収体を集電体全面に隙間ができないように溶接で取り付けた。実施例1と同様に、電解評価を実施し、測定Aを実施した結果30点の平均値は100%だった。
その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。その結果、比較例1−1では×だった。
金属多孔板として、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。板厚が0.2mmのニッケル板をSW=2、LW=3、送り=0.5で加工したのち、圧延処理を実施し、0.2mmの厚みに調整した。また、幅は230mm、長さは1190mmであった。このニッケル製エキスパンドメタルにスチールグリッド(粒番号20番、粒度範囲75μm〜300μm)でブラスト処理を実施した。
酸化ニッケル粉、アラビアゴム、純水からなる混合液を噴霧乾燥させ、粒径5〜50μmの球状造粒物とした。この造粒物を上記のニッケル製エキスパンドメタル上へ、一次ガスとして窒素、二次ガスとして水素を使用し、プラズマ溶射した。プラズマ溶射後の厚みは0.49mmであった。このようにして4枚の逆電流吸収体を作製した。実施例7では実施例1と同様の還元処理を行わず、代わりに予備電解として温度88℃、電流密度4kA/m2で約100時間食塩電解を実施して逆電流吸収体の還元を行った。逆電流吸収体は、集電体とマットレスの間に設置した。すなわち、逆電流吸収体は陰極としては機能していないが、水素発生している還元雰囲気下に曝されていた。その後、実施例1と同様に−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tを測定した結果、972秒、逆電流吸収量は、243000C/m2だった。また、Ni金属の回折線ピークの半値全幅は0.34°、酸化度Xは80%、酸化度Yは52%、比表面積は1.7m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は91%だった(表12)。
実施例5と同様に4枚の逆電流吸収体を電解槽に設置した。実施例7では、上述した予備電解の後、実施例1と同様に、電解槽を用いた電解評価を実施し、測定Aを実施した結果30点の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例7では○だった。
実施例7と同様に逆電流吸収体を製作した後、予備電解を実施せずに、水素雰囲気中(窒素で希釈)、200℃で水素還元処理を実施した。
−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tは938秒、逆電流吸収量は、234500C/m2だった。また、Ni金属のX線回折半値全幅は0.36°、酸化度Xは80%、酸化度Yは2.5%、比表面積は1.9m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は93%だった。(表12)。
実施例5と同様に4枚の逆電流吸収体を電解槽に設置した。電解試験後、測定Aを実施した結果30点の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例8では○だった。
金属多孔板として、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。板厚が0.2mmのニッケル板をSW=1.8、LW=3、送り=0.5で加工したのち、圧延処理を実施し、0.2mmの厚みに調整した。また、幅は230mm、長さは1190mmであった。このニッケル製エキスパンドメタルにスチールグリッド(粒番号20番、粒度範囲75μm〜300μm)でブラスト処理を実施した。
酸化ニッケル粉、アラビアゴム、純水からなる混合液を噴霧乾燥させ、粒径5〜50μmの球状造粒物とした。この造粒物を上記のニッケル製エキスパンドメタル上へ、一次ガスとして窒素、二次ガスとして水素を使用し、プラズマ溶射した。プラズマ溶射後の厚みは0.47mmであった。このようにして4枚の逆電流吸収体を作製した。実施例9では実施例1と同様の還元処理を行わず、代わりに予備電解として温度88℃、電流密度4kA/m2で約100時間食塩電解を実施して逆電流吸収体の還元を行った。逆電流吸収体は、集電体とマットレスの間に設置した。すなわち、逆電流吸収体は陰極としては機能していないが、水素発生している還元雰囲気下に曝されていた。その後、−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tを測定した結果、1017秒、逆電流吸収量は、254250C/m2だった。また、Ni金属の回折線ピークの半値全幅は0.34°、酸化度Xは81%、酸化度Yは55%、比表面積は1.6m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は90%だった(表12)。
実施例5と同様に4枚の逆電流吸収体を電解槽に設置した。実施例9では、上述した予備電解の後、実施例1と同様に、電解槽を用いた電解試験を実施し、測定Aを実施した結果30点の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例9では○だった。
実施例9と同様に逆電流吸収体を製作した後、予備電解は行わず、水素雰囲気中(窒素で希釈)、200℃で水素還元処理を実施した。
−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tは1032秒、逆電流吸収量は、258000C/m2だった。また、Ni金属のX線回折半値全幅は0.45°、酸化度Xは81%、酸化度Yは2.4%、比表面積は2.0m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は92%だった(表12)。
実施例5と同様に4枚の逆電流吸収体を電解槽に設置した。実施例1と同様の電解試験を実施した後、測定Aを実施した結果30点測定の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例10では○だった。
金属多孔板として、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。板厚が0.2mmのニッケル板をSW=1.6、LW=3、送り=0.5で加工したのち、圧延処理を実施し、0.2mmの厚みに調整した。また、幅は230mm、長さは1190mmであった。このニッケル製エキスパンドメタルにスチールグリッド(粒番号20番、粒度範囲75μm〜300μm)でブラスト処理を実施した。
酸化ニッケル粉、アラビアゴム、純水からなる混合液を噴霧乾燥させ、粒径5〜50μmの球状造粒物とした。この造粒物を上記のニッケル製エキスパンドメタル上へ、一次ガスとして窒素、二次ガスとして水素を使用し、プラズマ溶射した。プラズマ溶射後の厚みは0.45mmであった。このようにして4枚の逆電流吸収体を作製した。実施例11では実施例1と同様の還元処理を行わず、代わりに予備電解として温度88℃、電流密度4kA/m2で約100時間食塩電解を実施して逆電流吸収体の還元を行った。逆電流吸収体は、集電体とマットレスの間に設置した。すなわち、逆電流吸収体は陰極としては機能していないが、水素発生している還元雰囲気下に曝されていた。その後、−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tを測定した結果、751秒、逆電流吸収量は、187750C/m2だった。また、Ni金属の回折線ピークの半値全幅は0.36°、酸化度Xは81%、酸化度Yは56%、比表面積は1.6m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は90%だった(表12)。
実施例5と同様に4枚の逆電流吸収を電解槽に設置した。上述した予備電解の後、実施例1と同様に、電解槽を用いた電解試験を実施し、測定Aを実施した結果30点の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例11では○だった。
実施例11と同様に逆電流吸収体を製作した後、予備電解は行わず、水素雰囲気中(窒素で希釈)、200℃で水素還元処理を実施した。
−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tは1098秒、逆電流吸収量は、274500C/m2だった。また、Ni金属のX線回折半値全幅は0.33°、酸化度Xは81%、酸化度Yは1.8%、比表面積は1.8m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は90%だった(表12)。
その後、実施例5と同様に4枚の逆電流吸収体を電解槽に設置した。実施例1と同様の電解試験を実施した後、測定Aを実施した結果30点測定の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例12では○だった。
実施例1と同じ逆電流吸収体を用いた。すなわち、エキスパンド加工はSW=3、LW=4、送り=1で実施し、プラズマ溶射、水素還元処理後の厚みが1.6mmであるものを使用した。
また、実施例5と同様の電解セルを使用した。すなわち、電解槽を組んだ時、集電体と陽極の間隔が約2mmとなる電解セルを使用し、この2mmの間隔に、逆電流吸収体、弾性マットレス、陰極、イオン交換膜が挟まれる構造とした。実施例13の集電体は、縦1150mm×横1190mmのサイズのものを横に2枚並べて使用した。陰極室の上端及び下端の位置と、集電体の上端及び下端の位置とは、それぞれ一致していた。
実施例13では、集電体の一部分をくりぬき、くりぬいた部分に逆電流吸収体を設置した。具体的には、集電体の上端から365mm〜595mm、幅は2380mmの範囲の集電体をくりぬいた。くりぬいた部分に縦230mm、幅1190mmの逆電流吸収体2枚をはめ込み、スポット溶接でリブ上に固定した。集電体は厚さ1.2mmのニッケル製エキスパンドメタルであるため、逆電流吸収体を設置した部分の陽極との間隔は、約1.6mmであった。実施例1と同様の電解試験を実施した結果、測定Aの30点測定の平均値は100%だった。
また、逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、膜損傷は観察されなかった。その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例13では○だった。
陽極が設置された陽極室を有する陽極セル(陽極ターミナルセル、チタン製)と、陰極が設置された陰極室(陰極ターミナルセル、ニッケル製)を有する陰極セルとを向い合せた。セル間に一対のガスケットを配置し、一対のガスケット間にイオン交換膜を挟んだ。そして、陽極セル、ガスケット、イオン交換膜、ガスケット及び陰極を密着させて、電解セルを得た。
陽極としては、チタン基材上にルテニウム、イリジウム及びチタンを成分とする酸化物が形成された、いわゆるDSA(登録商標)を用いた。陰極としては、ニッケル製の平織り金網に、酸化ルテニウム及び酸化セリウムがコーティングされたものを使用した。縦95mm×横110mmのサイズに切り出した陰極の四辺約2mmを直角に折り曲げた。集電体としては、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。集電体のサイズは縦95mm×横110mmであった。金属弾性体としては、直径0.1mmのニッケル細線で編んだクッションマットを使用した。金属弾性体であるクッションマットを集電体の上に置いた。
実施例6で作製した逆電流吸収体を、縦38mm、横110mmの短冊状に切断し、陰極室の集電体に固定した。逆電流吸収体の上端が集電体上端から10mmの位置になるように溶接固定した。逆電流吸収体は横長の状態で設置した。逆電流吸収体の下端と集電体の下端までの距離は、47mmであった。
次いで、陰極の折り曲げ部を集電体に向けた状態で、陰極を集電体上に被せた。そして、陰極の四隅を、テフロン(登録商標)で作製した紐で集電体に固定した。ガスケットとしては、EPDM(エチレンプロピレンジエン)製のゴムガスケットを使用した。イオン交換膜としては「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成ケミカルズ社製)を使用した。
上記電解セルを用いて食塩の電解を行った。陽極室の塩水濃度(塩化ナトリウム濃度)は205g/Lに調整した。陰極室の水酸化ナトリウム濃度は32wt%に調整した。各電解セル内の温度が90℃になるように、陽極室及び陰極室の各温度を調節した。
電流密度6kA/m2で食塩の電解を2時間行ったのち、電流密度を一気に0kA/m2まで落とした。その後、整流器端子のプラスマイナスを入れ替え、電解とは逆向きの電流(逆電流)を電解セルに流した。逆電流の電流密度は50A/m2に設定し、15分間流した。逆電流を流している間、Ag|AgCl参照電極に対する陰極の電位を、陰極室内に導入したルギン管を用いて測定した。
上記電解試験前後のルテニウム残存率をXRF測定したところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上だった。ここでのXRF測定位置については、図9(縦1150mm×横2380mm)における30点の測定位置に対応するように比例計算を行い、縦95mm、横110mmサイズにおける30点の測定位置を特定した。
その後、電流密度6kA/m2で半年間の電解を実施して膜の損傷を調べた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べた。本実施例で使用した電解セルの電解面積と大型電解槽の電解セルの電解面積の比から、損傷の数を大型サイズに換算したところ、実施例14では△だった。
S3/SAの値が大きくなるにつれて電解試験後の測定Aの値が大きくなることがわかる。S3/SAが0では測定Aの値が5%、S3/SAが0.20では測定Aの値が90%、S3/SAが0.36以上では測定Aの値が98%以上であった。
一方、S3/SAの値が小さくなるにつれて膜損傷の発生頻度が少なくなることがわかる。S3/SAが1.00では膜損傷の頻度が高く(×)、S3/SAが0.79では△、S3/SAが0.36以下では○であった。
コーティングの残存率と膜損傷を両立するために最適なS3/SA値の範囲があることがわかる。
金属多孔板として、ニッケル製エキスパンドメタルを使用した。板厚が1mmのニッケル板をSW=3、LW=4、送り=1で加工した。加工後の厚みは1.2mmであった。このニッケル製エキスパンドメタルにスチールグリッド(粒番号70番、粒度範囲420μm〜1000μm)でブラスト処理を実施した。
塗布液として、硝酸ニッケル(II)六水和物(和光純薬、特級)を純水に溶解させた水溶液を準備した。塗布液中のニッケル元素の濃度は230g/Lであった。この水溶液を刷毛でニッケルエキスパンドメタルに塗布した後、75℃で10分間乾燥させ、500℃で10分間焼成を行った。この塗布、乾燥、焼成の一連の操作を所定のニッケル塗布量になるまで繰り返した。その後、被覆の一部を剥がし、X線回折測定を実施したところ、酸化ニッケルの回折線のみが観測された。すなわち、ニッケルは酸化ニッケルとして塗布されていることを確認した。酸化ニッケルの塗布量は、373g/m2だった。引き続いて水素雰囲気中(窒素で希釈)、200℃で水素還元処理を実施した。
−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tは723秒、逆電流吸収量は、180750C/m2だった。また、Ni金属のX線回折半値幅は0.39°、酸化度Xは99%、酸化度Yは3.8%、比表面積は3.9m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は86%だった(表12)。
実施例14と同様に電解試験を実施した後、電解試験前後のルテニウム残存率をXRF測定した。測定点は図21で示した5点とした(測定C)。陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上だった。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例15では○だった。ニッケルを含む溶液の熱分解法でも逆電流吸収体を作製することができた。
実施例15と同じ基材、硝酸ニッケル塗布液を使用し、塗布を実施した。被覆の一部を剥がし、X線回折測定を実施したところ、酸化ニッケルの回折線のみが観測され、ニッケルは酸化ニッケルとして塗布され、酸化ニッケルの塗布量は852g/m2だった。引き続いて水素雰囲気中(窒素で希釈)、200℃で水素還元処理を実施した。
−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tは1210秒、逆電流吸収量は、302500C/m2だった。また、Ni金属のX線回折半値幅は0.36°、酸化度Xは99%、酸化度Yは1.5%、比表面積は4.2m2/g、細孔径が10nm以上である細孔の細孔容積が全細孔容積に占める割合は85%だった。(表12)。
実施例15と同様に電解試験を実施した後、電解試験前後のルテニウム残存率をXRF測定したところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上だった。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例16では○だった。
ニッケルを含む溶液の熱分解法でも逆電流吸収体を作製することができた。
以上の実施例1,5〜12,15〜16において測定した所定の物性値を、次の表12に併せて示す。
実施例14と同じ電解セルを使用して試験を実施した。実施例15で作製した逆電流吸収体を、縦37mm、横110mmの短冊状に切断し、陰極室の集電体に固定した。逆電流吸収体の上端が集電体上端から20mmの位置になるように溶接固定した。逆電流吸収体は横長の状態で設置した。逆電流吸収体の下端と集電体の下端までの距離は、38mmであった。逆電流吸収体の設置位置の高さは、実施例5と概ね相似形の位置であった。実施例15と同様に電解試験を実施した後、電解試験前後のルテニウム残存率をXRF測定したところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上だった。ニッケルを含む溶液の熱分解法でも逆電流吸収体を作製することができた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例15−1では○だった。
実施例14と同じ電解セルを使用して試験を実施した。実施例16で作製した逆電流吸収体を、縦37mm、横110mmの短冊状に切断し、陰極室の集電体に固定した。逆電流吸収体の上端が集電体上端から20mmの位置になるように溶接固定した。逆電流吸収体は横長の状態で設置した。逆電流吸収体の下端と集電体の下端までの距離は、38mmであった。逆電流吸収体の設置位置の高さは、実施例5と概ね相似形の位置であった。実施例15と同様に電解試験を実施した後、電解試験前後のルテニウム残存率をXRF測定したところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上だった。ニッケルを含む溶液の熱分解法でも逆電流吸収体を作製することができた。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例16−1では○だった。
下記電解実験を実施し、逆電流が流れた時の陰極の上下方向の電位分布を測定した。電解セルの陽極室内、陰極室内を外部から観察するために電解セルを透明なアクリルで製作した。陽極が設置された陽極室を有する陽極セル(陽極ターミナルセル)と、陰極が設置された陰極室(陰極ターミナルセル)を有する陰極セルとを向い合せた。セル間に一対のガスケットを配置し、一対のガスケット間にイオン交換膜を挟んだ。そして、陽極セル、ガスケット、イオン交換膜、ガスケット及び陰極を密着させて、電解セルを得た。なお、陽極及び陰極並びに集電体のサイズは、横の長さ95mm、縦の長さ1160mmであり、これらが平行に対向する構造とした。
陰極室は、集電体の上にクッションマットとして0.1mmのニッケルワイヤーを用いて織物とし、波形加工したものを集電体にスポット溶接して固定した。クッションマットの上に水素発生用陰極として、線形0.15mmで40メッシュの金網に、ルテニウムが主成分として含まれるコーティングを施したものを積層、固定した。
陽極は、チタン基材上にルテニウム、イリジウム、チタンを成分とする酸化物がコーティングされた、いわゆるDSA(登録商標)を使用した。イオン交換膜には「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成株式会社)を使用した。
また、陽極および陰極の電極電位を測定するために、ルギン管を設置した。陽極室には、陽極上端から140mm、578mm、1100mmの3か所に設置した。陰極室には、陰極上端から50mm、200mm、350mm、578mm、870mm、1100mmの6か所に設置した。参照電極には銀−塩化銀電極(飽和KCl)を用いた。電極電位の測定、記録には、スコープコーダ SL1400(横河電気株式会社)を用いた。
陽極室出口のNaCl濃度が3.5N、陰極室出口のNaOH濃度が32重量%となるように調整しながら、電流密度4kA/m2で食塩電解を実施した。電解開始から2時間後に電解を停止し、陽極と陰極を0.5Ωの抵抗器で電気的に短絡させて逆電流を流した。
図15(A)に抵抗器で短絡直後の陽極および陰極の銀−塩化銀電極に対する電位、図15(B)に抵抗器で短絡してから6分後の陽極および陰極の銀−塩化銀電極に対する電位を示した。
これらの図からわかるように、陰極の電位は電解セルの上部ほど早く電位上昇した。すなわち、触媒成分であるルテニウムの溶解電位である−0.1V vs.Ag/AgClにより早く到達し、ルテニウムの酸化溶出が始まることが示唆された。実際に透明なアクリルセルを通して陰極室内を観察したところ、陰極の上部から褐色に呈色し、ルテニウムの溶出が始まっていることが目視で確認できた。抵抗器で短絡した状態を40分間維持した後、電解セルを解枠した。比較例2の試験前後にルテニウム量をハンディー型蛍光X線分析装置(Niton XL3t−800S、Thermo Scientific社)で測定し、ルテニウムの残存率を算出したところ、図16に示すとおり、陰極上部の方がルテニウムの残存率が低くなっていた。
比較例2と同じ電解セルを使用して電解試験を実施した。実施例1と同じ方法で作製し、幅95mm、高さ230mmのサイズに切り出した逆電流吸収体を、逆電流吸収体の上端が、電解セルの陰極室内に設置された集電体の上端から365mmに位置するようにティグ溶接で取り付けた。
比較例2と同じ方法で電解試験を実施した。図17(A)に抵抗器で短絡直後、図17(B)に抵抗器で短絡してから15分後、図18(A)に抵抗器で短絡してから39分後、図18(B)に抵抗器で短絡してから119分後、の陽極および陰極の銀−塩化銀電極に対する電位、の陽極および陰極の銀−塩化銀電極に対する電位を示した。
これらの図からわかるように、陰極の電位は逆電流吸収体を設置した365mm〜595mm付近が極小になった電位曲線を示した。その後、緩やかに陰極全体の電位が上昇しながら、119分後に陰極全体がほぼ同じ電位になり、ルテニウムの溶解電位である−0.1V vs.Ag/AgClに到達した。透明なアクリルセルを通して陰極室内を観察したが、明確なルテニウムの溶出は目視で確認できなかった。抵抗器で短絡した状態を142分間維持した後、電解セルを解枠した。実施例17の試験前後にルテニウム量をハンディー型蛍光X線分析装置(Niton XL3t−800S、Thermo Scientific社)で測定し、ルテニウムの残存率を算出したところ、図19に示すとおり、陰極のコーティング残存率は上下部の偏りなく残存していた。
比較例2と同じ電解セルを使用して電解試験を実施した。実施例1と同じ方法で作製し、幅95mm、高さ230mmのサイズに切り出した逆電流吸収体を、逆電流吸収体の上端が、電解セルの陰極室内に設置された集電体の上端から930mmに位置するようにティグ溶接で取り付けた。すなわち、集電体の下端と逆電吸収体の下端が重なる位置に取り付けた。
比較例2と同じ方法で電解試験を実施した。図20(A)に抵抗器で短絡直後、図20(B)に抵抗器で短絡してから11分後、図20(C)に抵抗器で短絡してから79分後の陽極および陰極の銀−塩化銀電極に対する電位、の陽極および陰極の銀−塩化銀電極に対する電位を示した。
これらの図からわかるように、陰極の電位は逆電流吸収体を設置した930mm〜1160mm付近は、ほとんど陰極電位の上昇が見られず、陰極上部になるにつれ電位の上昇が早く、上部からルテニウムの溶解電位である−0.1V vs.Ag/AgClに到達した。実際に透明なアクリルセルを通して陰極室内を観察したところ、陰極の上部からわずかに褐色に呈色し、ルテニウムの溶出が始まっていることが目視で確認できた。抵抗器で短絡した状態を84分間維持した後、電解セルを解枠した。比較例2と比べて陰極電位が貴になることを抑制できていることがわかる。
実施例14と同様の電解セルを使用して試験を実施した。なお、逆電流吸収体は、実施例12と同じように作製し、縦37mm、横110mmの短冊状に切断したものを用いた。クッションマットの上に逆電吸収体を設置し、逆電流吸収体の上端が集電体上端から20mmの位置に溶接固定した。逆電流吸収体は横長の状態で設置した。逆電流吸収体の下端と集電体の下端までの距離は、38mmであった。逆電流吸収体の設置位置の高さは、実施例5と概ね相似形の位置であった。
本実施例では、逆電流吸収体を、金属弾性体であるクッションマットと陰極の間に設置した。陽極と逆電流吸収体との距離は、0.3mm程度であった。
実施例15と同様に電解試験を実施し、電解試験前後のルテニウム残存率をXRF測定したところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上で、平均値も99%以上だった。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例18では○だった。
逆電流吸収体は、実施例12と同じように作製し、縦17mm、横110mmの短冊状に切断したものを2枚準備した。
実施例14と同じ電解セルを使用し、逆電流吸収体の位置を変更した。逆電流吸収体は陰極室の集電体に固定した。1枚目は集電体の上端から20mmの位置、2枚目を集電体の下端から20mmの位置に固定した。いずれも横長の状態で固定した。
実施例15と同様に電解試験を実施した後、電解試験前後のルテニウム残存率をXRFしたところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上で、平均値も99%以上だった。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例19では○だった。
逆電流吸収体は、実施例12と同じように作製し、縦95mm、横20mmの短冊状に切断したものを2枚準備した。
実施例14と同じ電解セルを使用し、逆電流吸収体の位置を変更した。逆電流吸収体は陰極室の集電体に固定した。1枚目は集電体の左端から20mmの位置、2枚目を集電体の右端から20mmの位置に固定した。いずれも縦長の状態で固定した。
実施例15と同様に電解試験を実施した後、電解試験前後のルテニウム残存率をXRFしたところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上で、平均値も99%以上だった。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例20では○だった。
上述の実施例18と同じ電解セルを使用した。逆電流吸収体を設置しなかったこと、電流密度を4kA/m2としたこと、逆電流を流す時間を変更(8パターン)したこと以外は実施例18と同様に電解試験を実施した。すなわち、電解試験後の電解セルのサンプルを8つ得た。これらのサンプルについて、ルテニウム残存率の5点(図21に示す)の平均値を測定したところ、逆電流を流す時間が短かった順から、それぞれ100%、90%、81%、48%、26%、21%、12%、5%となった。これらの陰極を再び電解セルに取り付け、電流密度は4kA/m2、陽極室の塩水濃度(塩化ナトリウム濃度)は205g/L、陰極室の水酸化ナトリウム濃度は32wt%、電解セル内の温度は90℃となるように調整して電解を実施し、電圧を測定した。このように、電解試験前後におけるルテニウム残存率及び電圧上昇の関係を確認した結果を以下の表13に示す。
なお、電圧上昇は、前記電解試験の前と後で、20分間の平均電圧を測定して比較することで算出した。電圧測定は、データロガー(TRV−1000、株式会社キーエンス製)を用いて5秒ごとに20分間電圧測定し、それらの値の平均値とした。
塗布液として、硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬、特級)を純水に溶解させた水溶液を使用したこと以外は実施例15と同様の熱分解法にて逆電流吸収体を作製した。塗布液中の鉄元素の濃度は230g/Lだった。被覆の一部を剥がし、X線回折測定を実施したところ、酸化鉄の回折線のみが観測された。すなわち、鉄は酸化鉄として塗布されていることがわかる。酸化鉄の塗布量は、411g/m2だった。引き続いて水素雰囲気中(窒素で希釈)、200℃で水素還元処理を実施した。
−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tは72秒、逆電流吸収量は、18000C/m2だった。
実施例14と同じ電解セルを使用して試験を実施した。逆電流吸収体を、縦37mm、横110mmの短冊状に切断し、陰極室の集電体に固定した。逆電流吸収体の上端が集電体上端から20mmの位置になるように溶接固定した。逆電流吸収体は横長の状態で設置した。逆電流吸収体の下端と集電体の下端までの距離は、38mmであった。逆電流吸収体の設置位置の高さは、実施例5と概ね相似形の位置であった。実施例15と同様に電解試験を実施した後、電解試験前後のルテニウム残存率をXRF測定したところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も67%以上だった。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例21では○だった。鉄を含む溶液の熱分解法でも逆電流吸収体を作製することができた。
塗布液として、硝酸コバルト(II)六水和物(和光純薬、特級)を純水に溶解させた水溶液を使用したこと以外は実施例15と同様の熱分解法にて逆電流吸収体を作製した。塗布液中のコバルト元素の濃度は、115g/Lだった。被覆の一部を剥がし、X線回折測定を実施したところ、酸化コバルトの回折線のみが観測された。すなわち、コバルトは酸化コバルトとして塗布されていることを確認した。酸化コバルトの塗布量は、405g/m2だった。引き続いて水素雰囲気中(窒素で希釈)、200℃で水素還元処理を実施した。
−0.1V vs.Ag/AgClへ到達するまでの時間Tは2133秒、逆電流吸収量は、533250C/m2だった。
実施例14と同じ電解セルを使用して試験を実施した。逆電流吸収体を、縦37mm、横110mmの短冊状に切断し、陰極室の集電体に固定した。逆電流吸収体の上端が集電体上端から20mmの位置になるように溶接固定した。逆電流吸収体は横長の状態で設置した。逆電流吸収体の下端と集電体の下端までの距離は、38mmであった。逆電流吸収体の設置位置の高さは、実施例5と概ね相似形の位置であった。実施例15と同様に電解試験を実施した後、電解試験前後のルテニウム残存率をXRF測定したところ、陰極面内いずれの位置のルテニウム残量も99%以上だった。逆電流吸収体を設置した部分に対向する部位およびそれ以外の部位でイオン交換膜の損傷を調べたが、実施例22では○だった。コバルトを含む溶液の熱分解法でも逆電流吸収体を作製することができた。
Claims (21)
- 陰極と、
前記陰極に対向して配置され、かつ、基材と逆電流吸収体とを有する逆電流吸収部材と、
を含む陰極室を備える電解セルであって、
前記陰極と前記逆電流吸収体とが電気的に接続されており、
前記陰極室の下端の高さを0とし、前記陰極室の上端の高さをhとしたとき、h/2以上h以下の高さに対応する位置Iに存在する逆電流吸収体の面積S3と前記位置Iに対応する前記基材の陰極対向面の面積SAの比が、0.20 ≦ S3/SA< 1.0である、電解セル。 - 前記電解セルにおける、0以上1/2h未満の高さに対応する位置IIに存在する逆電流吸収体の面積S4と、前記面積S3の関係がS4<S3である、請求項1に記載の電解セル。
- 前記逆電流吸収体が、前記陰極の触媒元素よりも酸化還元電位が卑な元素を含む、請求項1又は2に記載の電解セル。
- 前記逆電流吸収体が、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、パラジウム、ルテニウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解セル。
- 前記逆電流吸収体が、ニッケル元素を含む多孔質体であり、
前記多孔質体を粉末X線回折に供して得られるパターンにおいて、回折角2θ=44.5°におけるNi金属の回折線ピークの半値全幅が、0.6°以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電解セル。 - 前記逆電流吸収体が、Ni又はNiOを含む層である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電解セル。
- 前記陰極が、Ni若しくはNi合金、又はFeにNi若しくはNi合金をメッキしたものからなる陰極基材と、当該陰極基材上に形成され、前記触媒金属を含有する触媒層とを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電解セル。
- 前記基材が、集電体と、当該集電体を支持する支持体と、隔壁と、バッフル板とを有し、
前記逆電流吸収部材が、金属弾性体をさらに有し、
前記金属弾性体が、前記集電体及び前記陰極の間に配置され、
前記支持体が、前記集電体及び前記隔壁の間に配置され、
前記隔壁、前記支持体、前記集電体、前記金属弾性体及び前記陰極が電気的に接続されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電解セル。 - 前記逆電流吸収体が、金属板又は金属多孔板と、当該金属板又は金属多孔板表面の少なくとも一部に形成された逆電流吸収層と、を含み、
前記基材が、集電体と、当該集電体を支持する支持体と、隔壁と、を有し、
前記逆電流吸収部材が、金属弾性体をさらに有し、
前記金属板又は金属多孔板が、前記集電体及び前記陰極の間、並びに、前記集電体及び前記隔壁の間のいずれかに配置され、
前記金属板又は金属多孔板、前記隔壁、前記支持体、前記集電体、前記金属弾性体及び前記陰極が電気的に接続されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電解セル。 - 前記金属板又は金属多孔板が、Ni、Ni合金、又は、Ni若しくはNi合金の被覆層を表面に有するFe、Fe合金若しくはステンレス材料である、請求項9に記載の電解セル。
- 前記逆電流吸収体の少なくとも一部が、前記金属弾性体と前記集電体との間に配置されている、請求項8〜10のいずれか一項に記載の電解セル。
- 前記逆電流吸収体の少なくとも一部が、前記集電体と前記隔壁との間に配置されている、請求項8〜11のいずれか一項に記載の電解セル。
- 前記陰極室が、前記基材として、隔壁と、前記陰極を支持する陰極支持体と、を有し、
前記陰極支持体が、前記陰極及び前記隔壁の間に配置され、
前記隔壁、前記陰極支持体及び前記陰極が電気的に接続されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電解セル。 - 前記逆電流吸収体の少なくとも一部が、前記陰極及び前記隔壁の間に配置されている、請求項13に記載の電解セル。
- 前記基材及び/又は前記金属弾性体の少なくとも一部が、立方体、直方体、板状、棒状、網状、円盤状又は球状である、請求項1〜14に記載の電解セル。
- 前記逆電流吸収体の比表面積が0.01〜100m2/gである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の電解セル。
- 前記逆電流吸収体の吸収電気量は、1,000〜2,000,000C/m2である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の電解セル。
- 前記逆電流吸収体の実効表面積の総和は、10〜100,000m2である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の電解セル。
- 請求項1〜18のいずれか一項に記載の電解セルを備える、電解槽。
- 前記電解槽における陽極と前記逆電流吸収部材との距離が、35mm〜0.1mmである、請求項19に記載の電解槽。
- 請求項1〜18のいずれか1項に記載の電解セルの製造方法であって、
前記基材又は金属弾性体に前記逆電流吸収体を形成して前記逆電流吸収部材を得る形成工程を有し、
前記形成工程後において、前記面積S3と前記面積SAの比が、0.20 ≦ S3/(SA)< 1.0である、電解セルの製造方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017047272 | 2017-03-13 | ||
JP2017047272 | 2017-03-13 | ||
PCT/JP2018/009771 WO2018168863A1 (ja) | 2017-03-13 | 2018-03-13 | 電解セル及び電解槽 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2018168863A1 JPWO2018168863A1 (ja) | 2019-11-21 |
JP6831451B2 true JP6831451B2 (ja) | 2021-02-17 |
Family
ID=63522332
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019506051A Active JP6831451B2 (ja) | 2017-03-13 | 2018-03-13 | 電解セル及び電解槽 |
Country Status (8)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US11339484B2 (ja) |
EP (1) | EP3597792B9 (ja) |
JP (1) | JP6831451B2 (ja) |
KR (1) | KR102342977B1 (ja) |
CN (1) | CN110291227B (ja) |
ES (1) | ES2947784T3 (ja) |
TW (1) | TWI664319B (ja) |
WO (1) | WO2018168863A1 (ja) |
Families Citing this family (11)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP3854914A4 (en) * | 2018-09-21 | 2021-11-17 | Asahi Kasei Kabushiki Kaisha | METHOD OF MANUFACTURING ELECTROLYTIC CELL, LAMINATE, ELECTROLYTIC CELL AND METHOD OF OPERATING ELECTROLYTIC CELL |
US11142836B2 (en) | 2018-11-29 | 2021-10-12 | Industrial Technology Research Institute | Catalyst material and method for manufacturing the same |
US10914012B2 (en) | 2018-11-30 | 2021-02-09 | Industrial Technology Research Institute | Membrane electrode assembly and method for hydrogen evolution by electrolysis |
TWI659780B (zh) * | 2018-11-30 | 2019-05-21 | 財團法人工業技術研究院 | 氮化物觸媒與其形成方法 |
US10900133B2 (en) | 2018-11-30 | 2021-01-26 | Industrial Technology Research Institute | Nitride catalyst and method for manufacturing the same |
US10914011B2 (en) | 2018-11-30 | 2021-02-09 | Industrial Technology Research Institute | Membrane electrode assembly and method for hydrogen evolution by electrolysis |
JP7244058B2 (ja) * | 2019-02-05 | 2023-03-22 | Leシステム株式会社 | 電解液製造装置及び電解液の製造方法 |
JP7058374B2 (ja) * | 2019-04-01 | 2022-04-21 | 旭化成株式会社 | 電解槽及びその制御方法並びにプログラム |
CN112941550A (zh) * | 2019-11-25 | 2021-06-11 | 蓝星(北京)化工机械有限公司 | 零极距电解槽阴极用阴极底网及其制备方法 |
MX2022013869A (es) * | 2020-07-07 | 2022-11-30 | Bule Star Beijing Chemical Machinery Co Ltd | Celda electrolitica de membrana ionica de distancia polar de membrana. |
JP2024034360A (ja) | 2022-08-31 | 2024-03-13 | 旭化成株式会社 | 測定装置 |
Family Cites Families (14)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5112464A (en) * | 1990-06-15 | 1992-05-12 | The Dow Chemical Company | Apparatus to control reverse current flow in membrane electrolytic cells |
DE10249508A1 (de) | 2002-10-23 | 2004-05-06 | Uhde Gmbh | Elektrolysezelle mit Innenrinne |
CN101220482B (zh) | 2002-11-27 | 2011-02-09 | 旭化成化学株式会社 | 复极式零间距电解池 |
JP2004048643A (ja) | 2002-12-09 | 2004-02-12 | Toyo Commun Equip Co Ltd | 温度補償型圧電発振器 |
TWI432608B (zh) * | 2009-12-25 | 2014-04-01 | Asahi Kasei Chemicals Corp | Cathode, electrolytic cell for electrolysis of alkali metal chloride, and manufacturing method of cathode |
JP4846869B1 (ja) | 2010-09-07 | 2011-12-28 | クロリンエンジニアズ株式会社 | 電解用陰極構造体およびそれを用いた電解槽 |
JP2013034839A (ja) | 2011-07-08 | 2013-02-21 | Sankyo Co Ltd | 遊技機、遊技枠および遊技部品 |
US20130019179A1 (en) | 2011-07-14 | 2013-01-17 | Digilink Software, Inc. | Mobile application enhancements |
ES2593354T3 (es) | 2012-03-19 | 2016-12-07 | Asahi Kasei Kabushiki Kaisha | Celda de electrólisis y cuba electrolítica |
JP5804037B2 (ja) | 2013-12-13 | 2015-11-04 | 株式会社豊田自動織機 | 電流遮断装置を備えた蓄電装置 |
JP6438205B2 (ja) | 2014-03-25 | 2018-12-12 | 旭化成株式会社 | 水電解セル |
CA3017473C (en) | 2016-04-27 | 2020-10-20 | De Nora Permelec Ltd | Electrode for electrolysis coupled to a reverse current absorption body |
CN106011918B (zh) * | 2016-07-11 | 2018-01-23 | 青岛双瑞海洋环境工程股份有限公司 | 用于抗锰污染的电解海水制氯电解槽 |
CN106245057A (zh) * | 2016-09-08 | 2016-12-21 | 中国水利水电科学研究院 | 一种带有极化整流装置的次氯酸钠发生器 |
-
2018
- 2018-03-13 CN CN201880011842.3A patent/CN110291227B/zh active Active
- 2018-03-13 EP EP18766625.0A patent/EP3597792B9/en active Active
- 2018-03-13 KR KR1020197024457A patent/KR102342977B1/ko active IP Right Grant
- 2018-03-13 TW TW107108495A patent/TWI664319B/zh active
- 2018-03-13 JP JP2019506051A patent/JP6831451B2/ja active Active
- 2018-03-13 US US16/493,105 patent/US11339484B2/en active Active
- 2018-03-13 WO PCT/JP2018/009771 patent/WO2018168863A1/ja unknown
- 2018-03-13 ES ES18766625T patent/ES2947784T3/es active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
US20200063274A1 (en) | 2020-02-27 |
WO2018168863A1 (ja) | 2018-09-20 |
EP3597792A4 (en) | 2020-04-15 |
KR20190105088A (ko) | 2019-09-11 |
JPWO2018168863A1 (ja) | 2019-11-21 |
TW201837236A (zh) | 2018-10-16 |
EP3597792B1 (en) | 2023-03-01 |
KR102342977B1 (ko) | 2021-12-24 |
US11339484B2 (en) | 2022-05-24 |
EP3597792A1 (en) | 2020-01-22 |
CN110291227A (zh) | 2019-09-27 |
EP3597792B9 (en) | 2023-06-14 |
ES2947784T3 (es) | 2023-08-18 |
TWI664319B (zh) | 2019-07-01 |
CN110291227B (zh) | 2021-05-14 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6831451B2 (ja) | 電解セル及び電解槽 | |
JP6120804B2 (ja) | 電解セル及び電解槽 | |
JP6397396B2 (ja) | アルカリ水電解方法 | |
JP7323299B2 (ja) | 陰極、その製造方法、およびそれを用いた電解槽、水素製造方法 | |
JP6788378B2 (ja) | 水電解セル及び複極式水電解槽 | |
AU2017257930B2 (en) | Electrolyzer | |
JP2013194296A (ja) | 電解槽の保護部材及びそれを用いた電解槽 | |
JP7170061B2 (ja) | 水素製造方法 | |
JP6837130B2 (ja) | 陽極、複極式電解セル、水素製造方法 | |
RU2575343C1 (ru) | Электролизная ячейка и электролизер | |
WO2023145914A1 (ja) | 水素発生用陰極、アルカリ水電解用陰極、陰極の製造方法、複極式電解セル、アルカリ水電解用電解槽及び水素製造方法 | |
TW202146707A (zh) | 電極總成及電解器 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20190807 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20200902 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20201029 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20210105 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20210128 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6831451 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |