JP6788378B2 - 水電解セル及び複極式水電解槽 - Google Patents

水電解セル及び複極式水電解槽 Download PDF

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Description

本発明は、アルカリ水電解システムに関する。
近年、COによる地球温暖化、化石燃料の埋蔵量の減少等の問題を解決するためのクリーンエネルギーとして、再生可能エネルギーを利用して製造した水素が注目されている。再生可能エネルギーを利用した水素製造においては、化石燃料の改質による従来の水素の製造に匹敵する安価なコストが求められている。そのため、再生可能エネルギーを利用した水素製造には、従来の技術では達成できなかった水準の高いエネルギー効率と安価な設備が求められる。
上記の要求に応え得る水素の製造方法として、水の電気分解(電解)が挙げられる。また、水の電解方法としては、下記の3つの方法が挙げられる。
(1)酸素極及び水素極触媒をコーティングした固体高分子電解質を用いる固体高分子型水電解法
(2)酸素イオン伝導体である固体電解質を用いて、高温・高圧の水蒸気を電解する高温水蒸気電解法
(3)NaOH又はKOH等を含むアルカリ性の水(電解液)を電解するアルカリ水電解法
中でも、アルカリ水電解法は、大規模化が容易であり、他の水の電解方法に比べると装置が安価である特徴がある。また、すでに小規模な商業プラントとして実績があることから、今後はアルカリ水電解法を用いた大規模な水素製造装置の開発が期待されている。例えば、風力又は太陽光等の自然エネルギーにより発電された電気を利用したアルカリ水の電解により、水素を大量に製造し、水素を消費地へ運搬し供給する構想がある。
アルカリ水電解に用いられる電解セルユニット(水電解セル)は、通常、酸素極(酸素極)と酸素極室フレーム、水素極(水素極)と水素極室フレーム、及び酸素極室と水素極室とを隔てるイオン透過性膈膜(隔膜)を備えている。電流を流すことにより酸素極において酸素が発生し、水素極において水素が発生する。アルカリ水電解における主な電力損失の要因としては、酸素極の過電圧、水素極の過電圧、イオン透過性膈膜のオーム損、電解セルユニットを構成する電解セルの構造抵抗によるオーム損等が挙げられる。これらの電力損失を削減することで、水素製造の電力原単位の低減が可能になる。さらに電解槽の電解時の電流密度を高めて、設備を小型化し、設備費を大幅に削減することが可能になる。
一般的なアルカリ水電解における電力損失の中で、酸素極の過電圧による電力損失は、全電力損失の6割程度と大きな割合を占めている。よって、アルカリ水電解装置の電力損失を低減させるために、酸素極の過電圧を下げる手段が注目を集めている。
アルカリ水電解における酸素極として必要な要件には、酸素発生の過電圧が低いこと以外に、NaOH又はKOH等を含む強アルカリ電解液中で、電極の基材及び触媒層の腐食や、電解液への溶解等が起きにくいことも挙げられる。そのため、一般的に酸素極に用いられる導電性基材としてはニッケル、ニッケル合金、ステンレススチール、又は鉄若しくはステンレススチールの表面にニッケルメッキを施したものが使われている。また酸素極に用いられる電極触媒(触媒層)としては、酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金等のニッケル化合物或いはそれらと別の化合物を混合したものの活性が高い。
電極触媒として、前記ニッケル化合物を含む触媒を用いたアルカリ水電解において、電極触媒の表面積を大きくし、酸素過電圧を低下させることで、実電流密度を低く抑える方法が有る。電極触媒の表面積を大きくするために、比表面積が大きい素材であるラネーニッケルを電極が使用されることがある。ラネーニッケルは、ニッケルとアルミニウムからなるラネー合金から、NaOHなどのアルカリによって、アルミニウムのみを溶解除去した後に残存するニッケルである。ラネーニッケルは、アルミが溶解することにより多数の細孔が形成された比表面積の非常に大きい多孔質体であり、極めて反応性が高い。ラネーニッケル電極の作製方法としては、電気メッキやプラズマ溶射等の方法で、ニッケル網等の導電性基材の表面にラネー合金層を形成した後に、ラネー合金層をNaOHなどのアルカリによって展開する方法が提案されている。(下記特許文献1〜3。)
また、特許文献4では、ニッケル化合物を主成分として、ある一定範囲の細孔径と比表面積を持つ第一の細孔のグループとそれと異なる細孔径と比表面積を持つ第二の細孔のグループが組み合わせたアルカリ水電解用酸素極が提案されている。この電極は多孔質でありながら強度が強く、酸素過電圧も低い状態で安定して電解できることが報告されている。
特許文献4に記載のアルカリ水電解用酸素極は、触媒層の細孔径と比表面積がアルカリ水電解にとって、最適な範囲に調節されているため、その酸素発生過電圧が低い。また、このアルカリ水電解用酸素極は、表面積が大きいので、電極の電位変動によって生じる表面の化学種の酸化・還元に対する耐久性に優れている。このように、アルカリ水電解用酸素極の採用により、低いセル電圧での水電解が可能になる。また、再生可能エネルギーのような電力変動が激しい電源を用いたアルカリ水電解においても、酸素極として優れた耐久性が発揮される。
特開昭53−054174号公報 特開昭60−159184号公報 特開昭57−57880号公報 国際公開第2013/191140号 特開2015−183254号公報
しかしながら、ニッケル化合物を触媒層に有する酸素極を、アルカリ水電解槽に使用した場合、長時間の運転、或いは高電流密度での運転を行ううちに、酸素極の酸素過電圧が上昇する結果、セル電圧が継時的に上昇する現象が生じることがある。
上記の酸素極の酸素過電圧上昇の原因は、酸素極表面に高次のニッケル酸化物を有する不活性な被膜の形成であると推察される。ニッケル化合物以外の触媒層を有する酸素極についても、比表面積が大きく、且つ、酸素極表面に不活性な高次酸化物の被膜を形成するものについては、同様に酸素過電圧が上昇する。
高次酸化物の初期の生成速度は、アレニウスの式に従うため、酸素極電位と指数関数的な関係がある。また、酸素極電位は酸素発生の理論電位と酸素過電圧で定まる。酸素過電圧は、電流密度とTafelの関係、即ち対数的な関係がある。また、高次酸化物の生成量は、生成速度と時間の積で表すことが出来る。従って、定性的には、高電流密度が高く、長時間運転すると、高次酸化物の生成量が多くなる傾向がある。
また、表面積が大きい酸素極程、高次酸化物を保有する事が出来る細孔容積が大きく、高次酸化物の保有量は多くなる。
上記の酸化物の被膜の形成を低減させる一般的な対処法としては、長時間の連続運転を行わない、或いは、低電流密度での運転を行う等が挙げられる。しかし、短期間の間欠運転では、停止期間中に水素を製造することが出来ないため、電力損失が生じる。また、低電流密度での運転では、高電流密度時と同じ水素の生産量を実現するためにはその分、装置規模を大きくする必要があり、設備投資費用や設置面積が増大する問題がある。
アルカリ水電解システムの停止時に、酸素極よりも卑な電位にある水素極室側に、電解槽に存在する金属配管や電解液などからなる寄生抵抗経由で漏洩電流が流れる事が知られている。本研究者らは、この現象により、酸素極表面に存在する高次酸化物が還元することで酸素過電圧が若干低減することを見出した。
しかしながら、一般的なアルカリ水電解システムでは、前記の通り、酸素極が高表面積であるため、運転中に酸素極表面に生成する高次酸化物の存在量は非常に多い。一方、水素極表面に存在する水素、水素極触媒の化学種など、酸素極表面の高次酸化物を還元するための還元材(自らが酸化されて酸素極を還元する)として機能する物質の量は少ない。そのため、システムの停止時に高次酸化物が完全には還元されない。少しずつ高次酸化物が酸素極表面に蓄積する。従って、漏洩電流が流れても、酸素過電圧は完全に初期状態まで戻らず、運転と停止を繰り返すうちに段々上昇する。
また、酸素極の還元までの時間を短時間にすることで、還元による酸素極の再活性化に伴う電力損失を低減することが出来る。酸素極の還元速度は、酸素極と水素極間の電位差と比例関係にある。しかし、一般的な水電解システムでは、水素極の起電力の源である、還元材の量が少ないため、酸素極と水素極の電位差を長時間大きく保つことが難しいため、還元に時間がかかる。
即ち、高次酸化物を短時間で、十分に還元させるためには、水素極の還元材の量を十分確保する必要がある。水素極の還元材の量を増やすということは、水素極室側の保有電荷量を大きくすることと等価である。ここで、水素極室側の保有電荷量とは、水素極を陰分極させて、水素発生させるときに水素極室に蓄えられる負の電荷量とする。
特許文献5では、活性溶解から水素極を保護するために、活性水素極よりも漏洩電流を優先的に消費する、かつ表面積が非常に大きな、構造体を水素極の集電体に使用する技術が提案されている。これにより、水素極室に蓄えられる保有電荷量を増大させ、水素極の電位を卑な電位に保持することで、水素極を保護することができる。
しかし、特許文献5の方法を適用すると、水素極の電位が卑な電位に保持される反面、反作用として、酸素極の電位が卑な電位に低下し過ぎてしまう。そのため、酸素極表面が過剰に還元されてしまう。数回〜数10回程度の運転停止、再稼働ならば性能に大きな問題は無い。しかし、再生可能エネルギー由来の電源との組み合わせた構成での、繰返しの運転停止、再稼働を伴う運転条件下では、段々と酸素極の劣化が進行し、アルカリ水電解システム全体の電力損失が増加する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、再生可能エネルギー等の蓄電用として使用する事が出来る、アルカリ水電解システムを提供すること目的とする。具体的には、長時間の連続運転、高電流密度での運転、繰返しの運転停止・再稼働で生じる酸素過電圧の不可逆的な上昇を抑制し、長期間低電圧損失のアルカリ水電解システムを提供する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、水素極室の保有電荷量を、酸素極室の保有電荷量の0.1を超え、0.99倍以下の範囲の大きさに調整したアルカリ水電解槽を考えた。これにより、短時間の電解停止で、酸素極表面の高次酸化物を十分還元出来でき、初期の酸素過電圧まで復元することが出来ることを見出した。更に、繰返しの過剰還元による酸素極の劣化を防止する事も出来る。そのため、再生可能エネルギー等の蓄電用として長時間の連続運転、高電流密度での運転、繰返しの運転停止・再稼働で生じる酸素過電圧の不可逆的な上昇を抑制することが出来る。これにより、長期間低電圧損失のアルカリ水電解槽を発明するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]水素を発生させるための水素極と、
酸素を発生させるための酸素極と、
前記水素極と電解質水溶液を内包する水素極室と、
前記酸素極と電解質水溶液を内容する酸素極室と、
前記水素極室と前記酸素極室を隔てる隔膜と、を備え、
水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量が、酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の
0.1倍を超え、0.99倍以下である、
電解質水溶液を電気分解するための水電解セル。
[2]前記の水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる前記負の保有電荷量が、前記の酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる前記正の保有電荷量の0.1を超え、0.49倍以下である、[1]に記載の水電解セル。
[3]前記の酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる前記正の保有電荷量が、幾何酸素極面積1mあたり、
0.01〜10Fの範囲である[1]又は[2]に記載の水電解セル。
[4]前記の酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる前記正の保有電荷量が、幾何酸素極面積1mあたり、
0.05〜5Fの範囲である[1]〜[3]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[5]前記の水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる前記負の保有電荷量が、幾何水素極面積1mあたり、
0.001〜9.9Fの範囲である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[6]前記の水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる前記負の保有電荷量が、幾何水素極面積1mあたり、
0.005〜4.95Fの範囲である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[7]前記水素極室が、更に還元補助材を内包し、前記還元補助材は前記水素極と電気的に接続していることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[8]前記酸素極が、酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種のニッケル化合物を含む、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[9]前記酸素極の幾何セル面積1m当たりの実電極表面積が、90〜10000mの範囲である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[10]前記酸素極が、導電性基材と、前記導電性基材上に配置された触媒層を有し、
前記触媒層は、ニッケルの金属結晶を含み、且つ、細孔を有し、
前記触媒層の細孔のうち、
孔径が2〜5nmの範囲内である第一細孔の比表面積が0.6〜2.0m/gであり、
前記第一細孔の細孔容積が3×10−4〜9×10−4ml/gであり、
前記細孔のうち、孔径が0.01〜2.00μmの範囲内である第二細孔の比表面積が2.0〜5.0m/gであり、
前記第二細孔の細孔容積が0.04〜0.2ml/gであり、さらに、
前記触媒層の厚みが50〜800μmである、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[11]前記還元補助材が、金属ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種のニッケル化合物を含む、[7]に記載の水電解セル。
[12]前記水素極が、Ru−La−Pt系、Ru−Ce系、Pt−Ce系、及びPt−Ir系、Ir−Pt−Pd系、Pt−Ni系からなる群から選択される少なくとも一種のPt族化合物を含む事を特徴とする[1]〜[11]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[13]前記水素極及び酸素極の構成が、前記導電性基材の表面に触媒層を有するものであり、前記導電性基材が金属ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種のニッケル化合物を含む、[10]に記載の水電解セル。
[14]前記水素極及び酸素極が、メッシュ状の構造である、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[15]前記水素極の基材が、0.05〜0.5mmの範囲の線形を有し、目開きが30メッシュから80メッシュの範囲を有する、[1]〜[14]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[16]前記酸素極の基材が、開口率が20%から60%の範囲を有するメッシュ状の構造である[1]〜[15]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[17]前期還元補助材に蓄えられる負の保有電荷量が、前記水素極室に蓄えられる負の電気容量の0.00025〜0.98倍の範囲である[7]又は[11]に記載の水電解セル。
[18]前記水素極室が、さらに金属製弾性クッション材と集電体を内包しており、前記金属製弾性クッション材が、前記水素極と前記集電体との間で電気的に接続した状態で圧縮収容されており、前記水素極集電体の一部が前記還元補助材で構成されている、[7]、[11]又は[17]のいずれか一項に記載の水電解セル。
[19][1]〜[18]のいずれか一項に記載の水電解セルを単位水電解セルとして、電気的に直列に接続した複極式電解槽。
[20]前記複極式水電解槽が、前記水素極、前記酸素極、イオン透過性隔膜、前記酸素極室と前記水素極室を区画する隔壁及び導電性隔壁を取囲むフランジパンを有する複極式フレームを備え、前記水素極と前記酸素極の間に前記イオン透過性隔膜位置し、前記イオン透過性隔膜は前記水素極及び前記酸素極と接触している事を特徴とする[19]に記載の複極式水電解槽。
[21]少なくとも、[19]又は[20]に記載の複極式水電解槽と、気液分離タンク、電解液循環ポンプ、水投入ポンプ、電気分解用の電力供給用の整流器を具備する、水素製造装置。
[22][21]に記載の水素製造装置を用いて、前記水素極から消費電荷量換算で、1.8kF/m〜1217.7kF/mの水素を連続的に発生させた後に、5〜400分の範囲で、連続的に水素製造を停止する水素製造方法。
本発明によれば、再生可能エネルギー等の蓄電用として、長時間の連続運転、高電流密度での運転、繰返しの運転停止・再稼働で生じる酸素過電圧の不可逆的な上昇を抑制し、長期間低電圧損失のアルカリ水電解槽が提供される。
本発明の一実施形態に係る電解セルの断面の概略である。 図1に示す電解セルを備える電解槽のa−a’部の断面の模式図である。 複極式電解槽A、B、C、D、E、F、G、Hのシャットダウンの回数とセル電圧の上昇量の関係を示すグラフである。 水素極サンプルA、B、C、D、E、F、G、Hの水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量を示すグラフである。 水素極サンプルA、B、C、D、E、F、G、Hの水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量と酸素極サンプルの酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の比(水素極サンプルの負の保有電荷量/酸素極サンプルの正の保有電荷量)を示すグラフである。 水素極サンプルA、B、C、D、E、F、G、Hの水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量と酸素極サンプルの酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の比に関する、シャットダウン回数とセル電圧の関係を示すグラフである。 電解槽Bと40kWの定格電力で発電する発電機とを組み合わせた水素製造システムに関する、所定量の水素を連続的に製造し、300分の間、電解停止する運転方法A、B、C、D、E5、F,G、Hと総水素製造量の関係を示すグラフである。 電解槽Bと40kWの定格電力で発電する発電機とを組み合わせた水素製造システムに関する、50.1kF/mに相当する量の水素を連続的に製造し、所定時間、電解停止する運転方法E1、E2、E3、E4、E5、E6,E7と総水素製造量の関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための一形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態に係る電解セルは、アルカリ水を電気分解し、酸素極で酸素を発生させ、水素極で水素を発生させる。
図1は、電解セルの断面模式図である。電解セル2は、一対の酸素極24と水素極22を有する。1つの電解セル2に属する一対の酸素極24と水素極22とは、電気的に接続されている。電解セル2内において、水素極22を取り付けた水素極室枠と、酸素極24を取り付けた酸素極室枠とが、隔壁25を介して配置されている。つまり、酸素極室23と水素極室21とは隔壁25によって区分されている。また、電解セル2の上部には、生成する気体と液体を分離する気液分離室27がある。電解セル2の枠にはガスケット26が配置されている。
電解液の流れは以下の通りである。酸素極側の電解液である酸素極液は、酸素極液入口(電界セルの側面図である図2の29)から酸素極室23に入り、気液分離室27を通過して、酸素極液出口32(図2)から出る。水素極側の電解液である水素極液は、水素極液入口31(図2)から水素極室21に入り、気液分離室27を通過して、水素極液出口30(図2)から出る。又、還元補助剤33は水素極室と電気的に接続されており、還元補助剤の種類を変更することで、水素極室の保有電荷量を調整することが出来る。
図2は、一対の電解セルの一部断面模式図である。電解セル2、隔膜28、電解セル2がこの順序で直列に並べられている。アルカリ水は、酸素極室23及び水素極室21に供給される。各電解セル2は隔膜28を介して直列に連結され、一方の電解セル2の酸素極室23と他方の電解セル2の水素極室21とが対向し、且つ隔膜28で分離された状態で、電解が行われる。電解において、アルカリ水中のアルカリ金属イオンは、一方の電解セル2の酸素極室23から、隔膜28を通過して、隣の電解セル2の水素極室21へ移動し、OHイオンは電解セル2の水素極室21から隔膜28を通過して酸素極室23へ移動する。よって、電解中の電流は、電解セル2が直列に連結された方向に沿って、流れることになる。つまり、電流は、隔膜28を介して酸素極室23から水素極室21に向かって流れる。アルカリ水の電解に伴い、酸素極23側で酸素ガスが生成し、水素極21側で水素ガスが生成される。
本発明の効果を得るためには、前記電解セルの水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量が、酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の0.1倍を超え、0.99倍以下の範囲に調整しなければならない。これにより、短時間の電解停止で、酸素極表面の高次酸化物を十分還元でき、初期の酸素過電圧まで復元できる。また、長時間での連続運転、高電流密度での運転、繰返しの運転停止・再稼働で生じる酸素過電圧の可逆的な上昇を抑制することができる。さらに、水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量が、酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の0.1倍を超え、0.49倍以下の範囲に調整することがより好ましい。この範囲にする事で、酸素極表面の高次酸化物を効果は充分であり、且つ、酸素極の過剰還元の防止効果をより高く得られる。
前記酸素発生時に酸素極室に蓄えられる正の保有電荷量は、次の方法で求められる。酸素極の電位を、電流密度0.4A/cmにおける水素発生電位(単位:V vs. Ag/AgCl)に設定する。そして、酸素を発生させる場合と逆側に電流を流した場合に、酸素極の電位が0Vになるまでに流した電流を積分することにより求められる。
前記酸素極の正の保有電荷量の範囲が、酸素極面積1mあたり、0.01F以上にすることで、再生可能エネルギー等の出力電力の変動が激しい電力源に対して、耐久性をより高くすることができる。前記酸素極の正の保有電荷量の範囲を、酸素極面積1mあたり、0.05F以上にすることがより好ましく、更に高い耐久性を有する酸素極を得ることができる。
しかしながら、前記酸素極の正の保有電荷量の範囲が、酸素極面積1mあたり、10Fよりも大きくなると、触媒層の構造がもろくなる場合がある。その結果、触媒層の機械的な強度が弱くなるため、物理的衝撃に対する耐久性が低下する恐れがある。そのため、前記酸素極の正の保有電荷量の範囲は、酸素極面積1mあたり、10F以下にすることが好ましく、5F以下にすることが特に好ましい。
水素発生時に水素極室に蓄えられる負の保有電荷量は、水素極の電位を、電流密度0.4A/cmにおける水素発生電位(単位:V vs. Ag/AgCl)に設定し、水素を発生させる場合と逆側に電流を流した場合に、水素極の電位が−0.8Vになるまでに流した電流を積分することにより求められる。前記水素発生時に水素極室に蓄えられる負の保有電荷量を水素極1mあたり、0.001F〜9.9Fの範囲にすることで、再生可能エネルギー等の出力電力の変動が激しい電源に対して、高い耐久性を有する水素極となる。前記水素発生時に水素極室に蓄えられる負の保有電荷量を0.005F〜4.95Fにすることで、更に高い耐久性を有する水素極を得る事が出来る。
<水素極室の保有電荷量の調整方法>
本発明における水素極室の保有電荷量の調整には、還元補助材を使用することが好ましい。前記還元補助材は、保有電荷量を有するコンデンサー或いは、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵することが出来る。つまり、化学電池の負極として機能する漏洩電流を吸収する機能を有する構造体である。具体的な保有電荷量の調整は、水素極室の電位と等しい電位になる位置に、還元補助材を電気的に接続することで行うことが出来る。前記水素極室が、前記還元補助材を内包し、前記還元補助材は前記水素極と電気的に接続していることが好ましい。
<酸素極>
酸素極23は、導電性基材と、導電性基材を被覆する触媒層と、を備え、触媒層は多孔質体であることが好ましい。なお、触媒層は導電性基材の表面全体を被覆していることが好ましい。
前記酸素極の触媒層は元素として、アルカリに対する耐久性と、酸素発生に対する活性が高い点で、ニッケルを含むことが好ましい。触媒層は、酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
酸素極の触媒層の実電極表面積は、90〜10000mの範囲にする事が好ましい。実電極表面が、90m未満の範囲では、触媒層全体の表面積が小さいため、酸素過電圧が高くなることが予想される。また、実電極表面が、10000mを超える範囲では、触媒層が微細な多孔質を含むため非常にもろくなり、耐久性が悪くなることが予想される。
この酸素極の触媒層中の細孔のうち、孔径が2〜5nmの範囲内である第一細孔の比表面積は0.6〜2.0m/gであり、第一細孔の細孔容積は3×10−4〜9×10−4ml/gであることが好ましい。触媒層中の細孔のうち、孔径が0.01〜2.00μmの範囲内である第二細孔の比表面積は2.0〜5.0m/gであり、第二細孔の細孔容積は、0.04〜0.2ml/gであることが好ましい。触媒層の厚みは50〜800μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。
孔径が0.01〜2.00μmの範囲内である第二細孔は、比表面積は小さいが、細孔容量が大きいため、第一細孔は、第二細孔の内壁に存在することになる。第一細孔は、触媒層の表面積を非常に大きくする。第一細孔の表面は、水酸化物イオンの酸化反応(酸素の生成反応)の反応場(反応界面)として機能する。第一細孔の内部では、酸素発生の際に水酸化ニッケルが生成され、そのため細孔を更に小さくすると予想される。しかし、第一細孔は孔径が大きな第二細孔の内部に存在するため、第一細孔内で生成された酸素は第二細孔を通じて触媒層の外へ抜けやすく、電解を阻害しにくい。そのため、本実施形態では電解時に酸素発生過電圧が上昇しにくいと推定される。
第一細孔の比表面積は0.6〜1.5m/gであることが好ましく、0.6〜1.0m/gであることがより好ましい。第一細孔の比表面積は0.62〜0.98m/gであってもよい。一般的には第一細孔の比表面積の増加に伴い、酸素発生電位が低くなると考えられる。ただし、第一細孔が小さすぎると酸素発生時に生成する水酸化ニッケルにより第一細孔が完全に埋まり、第一細孔の実質的な表面積が少なくなる傾向がある。第一細孔の比表面積が減少すると、触媒層全体の表面積も減少する傾向がある。触媒層全体の表面積の減少に伴い、酸素発生電位が上昇する傾向がある。
第一細孔の容積は3.3×10−4〜8.5×10−4ml/gであることが好ましい。第一細孔の容積は3.6×10−4ml/g〜7.9×10−4ml/gであってもよい。第一細孔の細孔容積の増加に伴い、比表面積が減少する傾向がある。第一細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層全体の比表面積が増加する傾向がある。
第二細孔の比表面積は2.3〜4.5m/gであることが好ましい。第二細孔の比表面積は2.5〜4.2m/gであってもよい。第二細孔の比表面積の増加に伴い触媒層全体の細孔容積が減少する傾向がある。また、第二細孔の比表面積の低下に伴い触媒層全体の細孔容積が増加する傾向がある。
第二細孔の容積は0.04〜0.15ml/gであることが好ましく、0.04〜0.1ml/gであることがより好ましい。第二細孔の容積は0.04〜0.09ml/gであってもよい。第二細孔の細孔容積の増加に伴い、触媒層内で発生した酸素ガスが脱泡し易い傾向がある。第二細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層で発生した酸素ガスが脱泡し難くなる傾向があり、酸素発生過電圧が高くなる傾向がある。一方で、第二細孔の細孔容積の減少に伴い、触媒層の機械的強度は高まる傾向がある。
厚みが50μm未満では、触媒層が薄いため、触媒層全体の表面積が小さくなり、酸素過電圧が高くなることが予想される。また、厚みが800μmを越える範囲では触媒層が厚くなりすぎて、剥離等が起こりやすくなる場合があり、さらに酸素極の製作コストが高くなりすぎる場合がある。
触媒層がニッケルの金属結晶を含み、触媒層中のニッケルの金属結晶の(1 1 1)面によって回折されるX線のピーク強度がINiであり、触媒層中のNiOの(0 1 2)面によって回折されるX線のピーク強度がINiOであるとき、[INi/(INi+INiO)]×100の値が75〜100%であることが好ましい。I[INi/(INi+INiO)]×100は90〜100%であることがより好ましく、95〜100%であることが特に好ましい。
[INi/(INi+INiO)]×100が大きいほど、触媒層の電気抵抗が低く、酸素発生を行う際の電圧損失が小さくなる。触媒層中の酸化ニッケルの部分では、導電性が低下するが、酸素発生反応も起き難い。また、酸化ニッケルは比較的、化学的安定性に優れるため、触媒層が酸化ニッケルを含有することは、触媒層の強度を維持するために有効な場合がある。なお、INi及びINiOは、触媒層についてのXRD((X‐Ray Diffraction)の測定結果から求められる。
なお、触媒層には、ニッケルとその他の金属とから構成される合金を含んでもよい。触媒層は、金属ニッケルからなることが特に好ましい。チタン、クロム、モリブデン、コバルト、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族及び希土類元素等からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含んでもよい。また、触媒層の表面が、ロジウム、パラジウム、イリジウム及びルテニウム等からなる群より選ばれる少なくとも一種の触媒で修飾されてもよい。
<アルカリ水電解用酸素極の製造方法>
本実施形態に係るアルカリ水電解用酸素極の製造方法は、特に限定されない。好ましい製造方法として、酸化ニッケルを溶射法によって導電性基材に吹き付ける第一工程(溶射工程)と、導電性基材に吹付けられた酸化ニッケルを還元する第二工程(還元工程)と、を備える方法が挙げられる。
<溶射工程>
前記の製造方法では、触媒層の出発原料として、酸化ニッケルは粉末状であることが好ましい。第一工程に先立ち、平均粒径が1.0〜5.0μmである酸化ニッケル粉末を噴霧乾燥造粒機により造粒し、平均粒径が10〜100μmである酸化ニッケルの粒子を得る。この酸化ニッケルの粒子をプラズマガス等の高温のガス中に吹き込み、溶融させて、導電性基材に吹き付ける。つまり、導電性基材を溶融した酸化ニッケルでコーティングする。造粒する前の酸化ニッケルの粒径が大きすぎても、小さすぎても、電極を形成した際に必要な孔径や比表面積、細孔容量が得られない。造粒前の酸化ニッケルの粉末の平均粒径は1.0〜5.0μmであることが好ましく、1.0〜1.2μmであることがより好ましい。
酸化ニッケル粉末と他の金属の粉末との混合物を溶射法によって導電性基材に吹き付けてもよい。他の金属の粉末としては、金属ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、コバルト、マンガン、鉄、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族及び希土類元素等からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の粉末が挙げられる。さらに、導電性基材に吹き付ける前の酸化ニッケル粉末に、アラビアゴム、カルボキシルメチルセルロース及びラウリル硫酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を混ぜてもよい。
仮にラネーニッケルを溶射法により導電性基材に吹き付けた場合、ラネーニッケルが溶融して、その表面積が小さくなり、上記のような細孔の孔径、比表面積及び細孔容積を有する触媒層を形成することは困難である。ニッケルとアルミニウムとの合金を溶射法により導電性基材に吹き付けた場合、空気中でアルミニウムが酸化する。そのため、触媒層中のアルミニウムをアルカリ水溶液で除去したとしても、大きな表面積を有する触媒層を得難い。ニッケルとアルミニウムの合金を真空中で溶融して導電性基材に吹き付ける方法により酸素極を製造する場合、製造装置が簡便でなく、生産性も低いので、生産コストが高くなり好ましくない。
溶射法としては、アセチレンなどの可燃性ガスと酸素の燃焼熱で溶射用粉末を溶融する方法、溶射法に用いる溶射用粉末(触媒層の原料粉末)を棒状に加工し、可燃性ガスを燃焼した熱で溶融した素材を燃焼ガスで吹き付ける方法、アルゴン、水素、窒素又はヘリウムなどのガスを加熱して得たプラズマガスで溶射用粉末を溶融する方法がある。その中では、窒素又はアルゴンに水素を混ぜたガスをプラズマ化して、プラズマで溶射用粉末を溶融するプラズマ溶射法が好ましい。プラズマ溶射法では、プラズマガスの速度が音速を超える程度に大きく、ガスの温度が5000℃以上である。そのため、融点の高い溶射用粉末を溶融することができ、溶融した溶射用粉末を高速で導電性基材に付着させることができる。その結果、緻密で強度の強いコーティング層(触媒層の前駆体)を形成することが可能になる。プラズマ溶射法を用いた場合、原料粉末のコーティング速度が速いため、10〜1000μmの厚みを有する触媒層を比較的短時間で形成することができる。プラズマ溶射法では、その条件にもよるが、溶融した原料粉末の粒子が基材上に積層する過程で粒子間に形成される細孔が、他の溶射法を用いた場合に比べ緻密になりやすい。水素を含むプラズマガスを用いた溶射法で酸化物を導電性基材に吹き付ける場合、コーティングの一部が還元されやすく、コーティング層の導電性が増し、導電性に優れた酸素極を製造することが可能となる。
プラズマ溶射法による吹き付け時の高温状態と、続く急冷過程と、を経由した酸化ニッケル中には、多数の結晶欠陥が形成される。このような酸化ニッケルを還元することにより、高い活性を有する触媒層を形成することが可能となる。本実施形態の触媒層中に第二細孔がどのように形成されるかは必ずしも明らかではないが、上記のような溶射用粉末の組成(酸化ニッケル)及び溶射方法等が第二細孔の形成に影響していると推定している。
<還元工程>
溶射法によって形成されたコーティング層を、水素気流下で還元することにより、触媒層の第一細孔が形成される。コーティング層を電解によって還元してもよい。例えば、コーティング層が形成された導電性基材を水素極として食塩水の電解を行って水素極で水素を発生させることにより、コーティング層が還元され、所望の触媒層が得られる。または、濃度が32%程度である苛性ソーダ水溶液の電気分解を70℃〜90℃の液温で行ってもよい。電気分解の実施時間は1ヶ月から半年程度であればよい。還元工程として、コーティング層が形成された導電性基材を水素極として水の電解を行ってもよい。還元工程として、コーティング層が形成された導電性基材を水素極として、濃度が10%〜30%であるKOH又はNaOHの水溶液の電気分解(水素極における水素の発生)を半年程度行ってもよい。ただし、これらの方法は、時間がかかる上、生産性も低いという欠点がある。しかし、これらの電解還元によれば、微細な細孔が形成された触媒層(多孔質の触媒層)を得ることができる。この電解還元では、低温で実施されるため、酸化ニッケルの還元に非常に時間を要するが、触媒層の第一細孔の孔径を2〜5nmの範囲に容易に制御することができる。電解還元によって得られる触媒層には、脱泡性及び電子伝導性に優れた骨格が形成される。
溶射法により形成されたコーティング層(酸化ニッケル)を水素で還元する際の温度は重要である。還元の温度が高すぎる場合、還元により生じた細孔が熱によりつぶされて、期待する細孔、比表面積及び細孔容量が得られない場合がある。また還元温度が低すぎると、酸化ニッケルの還元が進まない。そのため、水素によるコーティング層の還元反応の温度としては、180〜300℃が好ましく、180〜250℃が特に好ましい。
上記以外の還元方法には、ヒドラジン、亜硫酸ソーダ又は水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤でコーティング層を常温〜100℃で処理する方法もある。しかし、これらの方法は、コーティング層を還元するために非常に長い時間を要し、コーティング層の還元が進み難い。還元反応を促進するために還元剤を100℃以上に加熱することも考えられるが、還元剤の溶液の蒸発や還元剤の分解が生じるため、好ましくない。
一般的に触媒層の原料として使用される酸化ニッケルは、その組成が化学量論比に近い。このような酸化ニッケルの還元開始温度は300℃以上である。そのため、一般的には、酸化ニッケルを400℃以上の高温に加熱した状態で、水素還元が行われてきた。このような温度条件下では酸化ニッケル中の金属の熱運動が激しくなり、金属の凝集が急激に進むため、孔径が2〜5nmの範囲内になる細孔はほとんど消滅してしまう。
一方、溶射法(特にプラズマ溶射法)によって導電性基材に吹き付けられた酸化ニッケルは、上記のように多くの結晶欠陥を含み、化学量論比から外れた組成を有する。そのため、溶射工程を経た酸化ニッケルは還元され易く、250℃以下の低温でも十分に還元される。そして、250℃以下の低温で水素還元を行うことにより、酸化ニッケル中の金属元素の熱運動が抑制され、金属元素が凝集し難い。その結果、孔径が2〜5nmの範囲内になる第一細孔を触媒層中に容易に形成することができる。
上記の溶射工程及び還元工程によって、本発明に用いるアルカリ水電解用酸素極を得る事ができる。さらに、触媒層の表面を、ロジウム、パラジウム、イリジウム及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の触媒で修飾してもよい。
このようなアルカリ水電解用酸素極をアルカリ水電解槽に用いる事で、電力エネルギーの変換効率が高く、再生可能エネルギーなどの出力電力の変動する電源に対する耐久性の高い、アルカリ水電解システムが得られる。
<水素極>
水素極22としては、特に限定されない。Ru−La−Pt系、Ru−Ce系、Pt−Ce系、及びPt−Ir系、Ir−Pt−Pd系、Pt−Ni系からなる群から選択される少なくとも一種のPt族化合物を含むことが好ましい。また、熱分解型活性水素極であることが好ましい。前記水素極の基材の構造は、担体として比表面積を確保すること、及び、脱泡性を両立する点で、メッシュ構造であることが好ましい。
<導電性基材>
酸素極及び水素極の導電性基材の構造は、担体として比表面積を確保すること、及び、脱泡性を両立する観点で、メッシュ構造であることが好ましい。前記導電性基材の材質は、ニッケル鉄、バナジウム、モリブデン、銅、銀、マンガン、白金族、黒鉛及びクロム等からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。二種以上の金属からなる合金又は、二種以上の導電性物質の混合物を導電性基材に用いてもよい。金属ニッケルを導電性基材に用いるのが好ましい。
特に、水素極の基材が、0.05〜0.5mmの範囲の線形を有し、目開きが30メッシュ〜80メッシュの範囲を有することが好ましい。この範囲にすることで、水素極として、メッシュの機械的強度を保ちつつ、担体として必要な比表面積、脱泡性を発現する事が出来る。酸素極の導電性基材のメッシュの開口率を20%〜60%の範囲にする事で、メッシュの機械的強度を保ちつつ、担体として必要な比表面積、脱泡性を発現する事が出来る。
前記酸素極の導電性基材のメッシュ構造は、特に限定されないが、エキスパンドメタルでも良い。なお、エキスパンドメタルとは、千鳥状の切れ目を入れた金属板を引き伸ばして網目状に加工したものである。導電性基材に表面処理を行ってもよい。ブラスト処理又はエッチング等により、導電性基材の表面に凹凸を設けると、触媒層と導電性基材との密着性が向上する。導電性基材の厚みは、0.5〜2.0mmであることが好ましく、1〜1.3mmであることがより好ましい。
<還元補助材>
前記還元補助材は、アルカリに対する耐久性が高く、且つ、酸素極に対して酸化還元電位が碑であり、電解停止時に酸素極を還元することが出来るという点から、ニッケルを母体に含むことが好ましい。母体に酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
前記還元補助材に蓄えられる負の電荷量は、前記水素極に蓄えられる負の電荷量の0.00025〜0.98倍の範囲である事が好ましい。0.00025未満の場合、実際の運転中に生じる、エロ―ジョン、及び、コロージョンにより、短期間で消耗してしまう場合がある。0.98倍を超える場合、水素極室に占める還元補助材の容積が大きくなりすぎるため、電解液のセル内での分配性が悪くなる場合がある。
前記水素極室が、さらに金属製弾性クッションと集電体を内包しており、前記金属弾性クッション材が、前記水素極室と前記集電体との間で電気的に接続した状態で圧縮収容されており、前記水素極集電体の一部が前記還元補助材で構成されても良い。これにより、前記還元補助材を付加的に取り付けることによる、セルの重量の増加を抑える事が出来る。
還元補助材の表面層は、さらに元素としてニッケルを含むことが好ましい。この表面層は、酸化ニッケル、金属ニッケル(ニッケルの金属結晶)、水酸化ニッケル及びからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。表面層は、ニッケルとその他の金属とから構成される合金を含んでもよい。表面層が金属ニッケルからなることが特に好ましい。なお、表面層は、チタン、クロム、モリブデン、コバルト、タンタル、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、白金族及び希土類元素等からなる群より選ばれる少なくとも一種をさらに含んでもよい。
還元補助材の電気の表面層がニッケルの金属結晶を含み、表面層中のニッケルの金属結晶の(1 1 1)面によって回折されるX線のピーク強度がINiであり、表面層中のNiOの(0 1 2)面によって回折されるX線のピーク強度がINiOであるとき、[INi/(INi+INiO)]×100の値が75〜100%であることが好ましい。I[INi/(INi+INiO)]×100は90〜100%であることがより好ましく、95〜100%であることが特に好ましい。
[INi/(INi+INiO)]×100が大きいほど、還元補助材の単位表面積あたりの保有電荷量が大きくなるため、より少量で漏洩電流を吸収する十分な効果を得る事ができる。また、表面層の酸化ニッケルの部分では、導電性が低下するため、再生可能エネルギーなどの変動が激しい電源を用いてアルカリ水電解を行う場合、還元補助材の表面で生じる充放電反応に伴い流れる電流による、電力損失をより小さくすることができる。なお、INi及びINiOは、触媒層についてのXRD((X‐Ray Diffraction)の測定結果から求められる。
表面層の厚みは50〜800μmであることが好ましく、100〜400μmであることがより好ましい。厚みが50μm未満では、表面層が薄いため、表面層全体の表面積が少なくなり、単位面積当たりの漏洩電流を吸収する能力が低下するために、水素極室内に、還元補助材を設置することが現実できには困難になる。また、厚みが800μmを越えると触媒層が厚くなりすぎて、剥離等が起こりやすくなる場合があり、還元補助材の製作コストが高くなりすぎる場合がある。
<還元補助材の製造方法>
特に限定されないが、酸素極と同様の製造方法が挙げられる。
<複極式電解槽>
電解槽は、イオン透過性隔膜(以下「隔膜」と言う。)を介して直列に連結された複数の前記電解セル(少なくとも一対の電解セル)を有する。なお、「複数の電解セルが直列に連結される」とは、各電解セルが備える酸素極及び負極が所定の方向に沿って交互に並ぶように複数の電解セルが配置されることを意味する。直列に並んだ多数の電解セルを有する電解槽は、一般的に、複極式水電解槽と呼ばれるものである。
前記複極式水電解槽は、前記水素極、前記酸素極、イオン透過性隔膜、前記酸素極室と前期水素極室を区画する隔壁及び導電性隔壁を取囲むフランジパンを有する複極式フレームを備る。前記水素極室が、さらに、金属製弾性クッション材と集電体を内包しており、前記金属弾性クッション材が、前記水素極と前記集電体との間で電気的に接続した状態で圧縮収容されており、前記水素極集電体の一部が前記還元補助材で構成されていてもよい。さらに、前記水素極と前記酸素極の間に前記イオン透過性隔膜位置し、前記イオン透過性隔膜は前記水素極及び前記酸素極と接触していることが好ましい。
<水素製造装置>
前記複極式水電解槽を、水素製造装置として使用することで、電解効率が高い水素製造装置が提供できる。さらに、前記水素製造装置は、少なくとも、気液分離タンク、電解液循環ポンプ、水投入ポンプ、電気分解用の電力供給用の整流器を具備する。
<水素製造方法>
前記水素製造装置を用いて、本発明の効果を最大限に発揮させる上で、運転時間を制御する事が好ましい。具体的には、水素極から消費電荷量換算で、1.8kF/m〜1217.7kF/mの水素を連続的に発生させた後に、5〜400分の範囲で、連続的に水素製造を停止する運転である。これにより、電圧の上昇を低減し、且つ、稼働率を高く保つことができるため、電力を効率的に水素に変化することが出来る。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(酸素極サンプルの作製)
粒径が0.2〜2μmである酸化ニッケル粉末100重量部、アラビアゴム2.25重量部、カルボキシルメチルセルロース0.7重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.001重量部、及び水100重量部を混合・攪拌して、懸濁液を調した。噴霧乾燥造粒機を用いて、懸濁液から、粒径が5〜50μmである造粒物を調製した。
造粒成形物をプラズマ溶射法によって導電性基材の両面に吹き付けた。以上の工程により、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える構造体を得た。
(酸素極サンプルA)
導電性基材としては、予めブラスト処理を施したニッケルエクスパンド基材を用いた。基材の厚みは1mmであった。プラズマ溶射法では、プラズマガスとして、アルゴンと窒素とを1:0.8の割合で混合したガスを用いた。導電性基材の表面を被覆する表面層の前駆体の厚みと、導電性基材の裏面を被覆する表面層の前駆体の厚みが、3:2の割合になるように調整した。導電性基材の表面層の前駆体の重量が、2.0kg/m となるように調整したものを、酸素極サンプルAの前駆体とした。
上記のように作製した酸素極サンプルAの前駆体を、切断加工により、寸法を、縦50cm×横50cmに調整した。この電極を、水素還元用の炉内に差し込んで、炉内を200℃に加熱し、水素気流を5時間供給し続けることにより、触媒層の前駆体を還元した。以上の工程により、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える、酸素極サンプルAを得た。
(還元補助材の作製)
粒径が0.2〜2μmである酸化ニッケル粉末100重量部、アラビアゴム2.25重量部、カルボキシルメチルセルロース0.7重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.001重量部、及び水100重量部を混合・攪拌して、懸濁液を調した。噴霧乾燥造粒機を用いて、懸濁液から、粒径が5〜50μmである造粒物を調製した。
造粒成形物をプラズマ溶射法によって導電性基材の両面に吹き付けた。以上の工程により、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える構造体を得た。
(構造体A)
導電性基材としては、予めブラスト処理を施したニッケルエクスパンド基材を用いた。基材の厚みは1mmであった。プラズマ溶射法では、プラズマガスとして、アルゴンと窒素とを1:0.8の割合で混合したガスを用いた。導電性基材の表面を被覆する表面層の前駆体の厚みと、導電性基材の裏面を被覆する表面層の前駆体の厚みが、3:2の割合になるように調整した。導電性基材の表面層の前駆体の重量が、1.5kg/m となるように調整したものを構造体Aの前駆体とした。
上記のように作製した構造体Aの前駆体を、切断加工により、寸法を、縦50cm×横50cmに調整した。前記構造体Aを、水素還元用の炉内に差し込んで、炉内を200℃に加熱し、水素気流を5時間供給し続けることにより、触媒層の前駆体を還元した。以上の工程により、導電性基材と、導電性基材を被覆する表面層と、を備える、還元補助材として機能する構造体Aを得た。
本発明において使用する電解システムは、少なくとも、水素極を有する水素極室、酸素極を有する酸素極室、前記水素極室と酸素極室とを区画する隔膜、並びに前記水素極室及び酸素極室に充填された電解液を具備する電解セルを備える。前記電解セルは、水素極を有する水素極室、酸素極を有する酸素極室、並びに水素極室と酸素極室とを区画する隔膜を具備する。前記水素極室と前記酸素極室とは、隔膜を介して対向して配置されている。前記水素極室及び酸素極室は、それぞれ、電解液によって充填されている。前記の水素極、酸素極、隔膜、及び電解液としては、それぞれ、水の電気分解において使用される公知の材料を、制限なく使用することができる。具体的に例示すると、例えば以下のとおりである。
(比較例用の電解セルA)
マイクロメッシュ状の活性水素極(Pt系の熱分解活性水素極)を切断加工により、50cm角に調整した水素極サンプルAを10枚用意した。ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。電極面サイズ50cm角用の複極式槽用の複極式エレメントを9枠用意した。複極式電解槽用の水素極ターミナルエレメント、酸素極ターミナルエレメントを1枠ずつ用意した。
前記複極式エレメントの水素極室側に導電性の支持体を介して水素極サンプルAをスポット溶接にて取り付けた。前記複極式エレメントの酸素極室側に導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け、複極式フレームAとした。前記水素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して水素極サンプルAをスポット溶接にて取り付け、複極式水素極ターミナルフレームAとした。前記酸素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け複極式酸素極ターミナルフレームAとした。
前記複極式水素極ターミナルフレームAの水素極室面と、前記複極式フレームAの酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟んだ。前記複極式フレーム9枠を水素極面と、酸素極面とが対向するように直列に並べて、間に隔膜を挟んだ。前記複極式酸素極ターミナルフレームAの水素極室面と、前記複極式フレームAの9枠目の酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟み、プレス機にて締付けたものを複極式電解槽Aとした。
前記複極式電解槽Aの構造中に含まれる、水素極サンプルAと、酸素極サンプルで、隔膜が挟まれた構造を比較例用の電解セルAとした。
(実施例用の電解セルB)
マイクロメッシュ状の活性水素極(Pt系の熱分解活性水素極)を切断加工により、50cm角に調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦50cm×横1.6cmに調整し、前記活性水素極と構造体Aを積層し、水素極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続した水素極サンプルAを10枚用意した。酸素極サンプルを切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。電極面サイズ50cm角用の複極式槽用の複極式エレメントを9枠用意した。複極式電解槽用の水素極ターミナルエレメント、酸素極ターミナルエレメントを1枠ずつ用意した。
前記複極式エレメントの水素極室側に導電性の支持体を介して水素極サンプルBをスポット溶接にて取り付けた。前記複極式エレメントの酸素極室側に導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け、複極式フレームBとした。前記水素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して水素極サンプルBをスポット溶接にて取り付け、複極式水素極ターミナルフレームBとした。前記酸素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け複極式酸素極ターミナルBとした。
前記複極式水素極ターミナルフレームBの水素極室面と、前記複極式フレームBの酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟んだ。前記複極式フレームB9枠を水素極面と、酸素極面とが対向するように直列に並べて、間に隔膜を挟んだ。前記複極式酸素極ターミナルフレームBの水素極室面と、前記複極式フレームBの9枠目の酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟み、プレス機にて締付けたものを複極式電解槽Bとした。
前記複極式電解槽Bの構造中に含まれる、水素極サンプルBと、酸素極サンプルで、隔膜が挟まれた構造を実施例用の電解セルBとした。
(実施例用の電解セルC)
マイクロメッシュ状の活性水素極(Pt系の熱分解活性水素極)を切断加工により、50cm角に調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦50cm×横3.33cmに調整し、前記活性水素極と構造体Aを積層し、水素極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続した水素極サンプルCを10枚用意した。酸素極サンプルを切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。電極面サイズ50cm角用の複極式槽用の複極式エレメントを9枠用意した。複極式電解槽用の水素極ターミナルエレメント、酸素極ターミナルエレメントを1枠ずつ用意した。
前記複極式エレメントの水素極室側に導電性の支持体を介して水素極サンプルCをスポット溶接にて取り付けた。前記複極式エレメントの酸素極室側に導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け、複極式フレームCとした。前記水素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して水素極サンプルCをスポット溶接にて取り付け、複極式水素極ターミナルフレームCとした。前記酸素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け複極式酸素極ターミナルフレームCとした。
前記複極式水素極ターミナルフレームCの水素極室面と、前記複極式フレームCの酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟んだ。前記複極式フレーム9枠を水素極面と、酸素極面とが対向するように直列に並べて、間に隔膜を挟んだ。前記複極式酸素極ターミナルフレームCの水素極室面と、前記複極式フレームCの9枠目の酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟み、プレス機にて締付けたものを複極式電解槽Cとした。
前記複極式電解槽Cの構造中に含まれる、水素極サンプルCと、酸素極サンプルで、隔膜が挟まれた構造を実施例用の電解セルCとした。
(実施例用の電解セルD)
マイクロメッシュ状の活性水素極(Pt系の熱分解活性水素極)を切断加工により、50cm角に調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦50cm×横8.91cmに調整し、前記活性水素極と構造体Aを積層し、水素極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続した水素極サンプルDを10枚用意した。酸素極サンプルを切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。電極面サイズ50cm角用の複極式槽用の複極式エレメントを9枠用意した。複極式電解槽用の水素極ターミナルエレメント、酸素極ターミナルエレメントを1枠ずつ用意した。
前記複極式エレメントの水素極室側に導電性の支持体を介して水素極サンプルDをスポット溶接にて取り付けた。前記複極式エレメントの酸素極室側に導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け、複極式フレームDとした。前記水素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して水素極サンプルDをスポット溶接にて取り付け、複極式水素極ターミナルフレームDとした。前記酸素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け複極式酸素極ターミナルフレームDとした。
前記複極式水素極ターミナルフレームDの水素極室面と、前記複極式フレームDの酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟んだ。前記複極式フレーム9枠を水素極面と、酸素極面とが対向するように直列に並べて、間に隔膜を挟んだ。前記複極式酸素極ターミナルフレームDの水素極室面と、前記複極式フレームDの9枠目の酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟み、プレス機にて締付けたものを複極式電解槽Dとした。
前記複極式電解槽Dの構造中に含まれる、水素極サンプルDと、酸素極サンプルで、隔膜が挟まれた構造を実施例用の電解セルDとした。
(実施例用の電解セルE)
マイクロメッシュ状の活性水素極(Pt系の熱分解活性水素極)を切断加工により、50cm角に調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦50cm×横9.11cmに調整し、前記活性水素極と構造体Aを積層し、水素極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続した水素極サンプルEを10枚用意した。酸素極サンプルを切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。電極面サイズ50cm角用の複極式槽用の複極式エレメントを9枠用意した。複極式電解槽用の水素極ターミナルエレメント、酸素極ターミナルエレメントを1枠ずつ用意した。
前記複極式エレメントの水素極室側に導電性の支持体を介して水素極サンプルEをスポット溶接にて取り付けた。前記複極式エレメントの酸素極室側に導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け、複極式フレームEとした。前記水素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して水素極サンプルEをスポット溶接にて取り付け、複極式水素極ターミナルフレームEとした。前記酸素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け複極式酸素極ターミナルフレームEとした。
前記複極式水素極ターミナルフレームEの水素極室面と、前記複極式フレームEの酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟んだ。前記複極式フレーム9枠を水素極面と、酸素極面とが対向するように直列に並べて、間に隔膜を挟んだ。前記複極式酸素極ターミナルフレームEの水素極室面と、前記複極式フレームEの9枠目の酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟み、プレス機にて締付けたものを複極式電解槽Eとした。
(実施例用の電解セルF)
マイクロメッシュ状の活性水素極(Pt系の熱分解活性水素極)を切断加工により、50cm角に調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦50cm×横14.88cmに調整し、前記活性水素極と構造体Aを積層し、水素極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続した水素極サンプルFを10枚用意した。酸素極サンプルを切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。電極面サイズ50cm角用の複極式槽用の複極式エレメントを9枠用意した。複極式電解槽用の水素極ターミナルエレメント、酸素極ターミナルエレメントを1枠ずつ用意した。
前記複極式エレメントの水素極室側に導電性の支持体を介して水素極サンプルFをスポット溶接にて取り付けた。前記複極式エレメントの酸素極室側に導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け、複極式フレームFとした。前記水素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して水素極サンプルFをスポット溶接にて取り付け、複極式水素極ターミナルフレームFとした。前記酸素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け複極式酸素極ターミナルフレームFとした。
前記複極式水素極ターミナルフレームFの水素極室面と、前記複極式フレームFの酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟んだ。前記複極式フレーム9枠を水素極面と、酸素極面とが対向するように直列に並べて、間に隔膜を挟んだ。前記複極式酸素極ターミナルフレームFの水素極室面と、前記複極式フレームFの9枠目の酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟み、プレス機にて締付けたものを複極式電解槽Fとした。
前記複極式電解槽Fの構造中に含まれる、水素極サンプルFと、酸素極サンプルで、隔膜が挟まれた構造を実施例用の電解セルFとした。
(実施例用の電解セルG)
マイクロメッシュ状の活性水素極(Pt系の熱分解活性水素極)を切断加工により、50cm角に調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦50cm×横18.54cmに調整し、前記活性水素極と構造体Aを積層し、水素極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続した水素極サンプルGを10枚用意した。酸素極サンプルを切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。電極面サイズ50cm角用の複極式槽用の複極式エレメントを9枠用意した。複極式電解槽用の水素極ターミナルエレメント、酸素極ターミナルエレメントを1枠ずつ用意した。
前記複極式エレメントの水素極室側に導電性の支持体を介して水素極サンプルFをスポット溶接にて取り付けた。前記複極式エレメントの酸素極室側に導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け、複極式フレームGとした。前記水素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して水素極サンプルGをスポット溶接にて取り付け、複極式水素極ターミナルフレームGとした。前記酸素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け複極式酸素極ターミナルフレームGとした。
前記複極式水素極ターミナルフレームGの水素極室面と、前記複極式フレームGの酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟んだ。前記複極式フレーム9枠を水素極面と、酸素極面とが対向するように直列に並べて、間に隔膜を挟んだ。前記複極式酸素極ターミナルフレームGの水素極室面と、前記複極式フレームGの9枠目の酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟み、プレス機にて締付けたものを複極式電解槽Gとした。
前記複極式電解槽Gの構造中に含まれる、水素極サンプルGと、酸素極サンプルで、隔膜が挟まれた構造を実施例用の電解セルGとした。
(比較例用の電解セルH)
マイクロメッシュ状の活性水素極(Pt系の熱分解活性水素極)を切断加工により、50cm角に調整した。構造体Aを切断加工により、寸法を、縦50cm×横18.73cmに調整し、前記活性水素極と構造体Aを積層し、水素極電位と構造体Aの電位が等しい電位になるように接続した水素極サンプルHを10枚用意した。酸素極サンプルを切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。ポリスルホン系多孔質膜を切断加工により、50cm角に調整したものを10枚用意した。電極面サイズ50cm角用の複極式槽用の複極式エレメントを9枠用意した。複極式電解槽用の水素極ターミナルエレメント、酸素極ターミナルエレメントを1枠ずつ用意した。
前記複極式エレメントの水素極室側に導電性の支持体を介して水素極サンプルHをスポット溶接にて取り付けた。前記複極式エレメントの酸素極室側に導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け、複極式フレームHとした。前記水素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して水素極サンプルHをスポット溶接にて取り付け、複極式水素極ターミナルフレームHとした。前記酸素極ターミナルエレメントに導電性の支持体を介して酸素極サンプルをスポット溶接にて取り付け複極式酸素極ターミナルフレームHとした。
前記複極式水素極ターミナルフレームHの水素極室面と、前記複極式フレームHの酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟んだ。前記複極式フレーム9枠を水素極面と、酸素極面とが対向するように直列に並べて、間に隔膜を挟んだ。前記複極式酸素極ターミナルフレームHの水素極室面と、前記複極式フレームHの9枠目の酸素極室面を対向させて間に隔膜を挟み、プレス機にて締付けたものを複極式電解槽Hとした。
前記複極式電解槽Hの構造中に含まれる、水素極サンプルHと、酸素極サンプルで、隔膜が挟まれた構造を比較例用の電解セルHとした。
[シャットダウン後のセル電圧上昇量の測定]
前記電解セルA〜Hについて、12kA/mで、7時間通電を行いその間10対全ての電解セルについてセル電圧を測定し、セル電圧の平均値を求めた。その後、電解を停止し、1時間放置する事で電解セルに充電された電荷を自然放電させた。この操作を1、2、3、4、5、100、1000回繰り返した。シャットダウン後のセル電圧から、初期のセル電圧の平均値を引くことにより、上昇量を計算により求めた。
[水素極サンプルの酸化曲線の測定]
前記水素極サンプルA、B、C,D、E、F、G、Hを、各々一枚ずつ用意し、フッ素樹脂製ビーカーを30wt%KOHの電解液で満たした、その中に浸漬させた。KOHの水溶液の温度は90℃に維持した。水素極サンプル、白金金網(対極)及び対極の周りを覆うフッ素樹脂の筒を備え、これらの電気伝導性が確保された装置で、水素極サンプルに対して、0.4A/cmの電流密度の還元電流を流し、30分間、水素を発生させた。その後、0.05A/cmの酸化電流を流し、水素極サンプルの電位の変化を測定した。この電位変化を、流した電流のトータル電荷量に対してプロットして、水素極サンプルの酸化曲線とした。
測定は、対極として、メッシュ状の白金電極を用いて、温度90℃にて行った。フッ素樹脂の筒としては、その周りに多数の1mmφの穴を開けたものを用いた。水素極サンプルの水素極電位は、液抵抗によるオーム損の影響を排除するために、ルギン管を使用する三電極法によって測定した。ルギン管の先端水素極との間隔は、常に0.05mmに固定した。三電極法用の参照極としては、銀−塩化銀(Ag/AgCl)を用いた。
[水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量の測定]
水素極サンプルA、B、C,D、E、F、G、Hについて、測定した水素極サンプルの酸化曲線において、水素極電位が−0.8Vv.s.Ag/AgClになるまで流した電流のトータル電荷量を水素発生時に水素極室に蓄えられる負の保有電荷量とした。
[酸素極サンプルの酸素極電位の測定]
前記酸素極サンプルを一枚用意し、フッ素樹脂製ビーカーを30wt%KOHの電解液で満たした、その中に浸漬させた。KOHの水溶液の温度は90℃に維持した。酸素極サンプル、白金金網(対極)及び対極の周りを覆うフッ素樹脂の筒を備え、これらの電気伝導性が確保された装置で、酸素極サンプルに対して、0.4A/cmの電流密度の酸化電流を流し、30分間、水素を発生させた。その後、0.05A/cmの還元電流を流し、酸素極サンプルの電位の変化を測定した。この電位変化を、流した電流のトータル保有電荷量に対してプロットして、酸素極サンプルの酸化曲線とした。
測定は、対極として、メッシュ状の白金電極を用いて、温度90℃にて行った。フッ素樹脂の筒としては、その周りに多数の1mmφの穴を開けたものを用いた。酸素極サンプルの酸素極電位は、液抵抗によるオーム損の影響を排除するために、ルギン管を使用する三電極法によって測定した。ルギン管の先端と酸素極との間隔は、常に0.05mmに固定した。三電極法用の参照極としては、銀−塩化銀(Ag/AgCl)を用いた。
[酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の測定]
酸素極サンプルAについて測定した、酸素極サンプルの還元曲線において、酸素極電位が0Vv.s.Ag/AgClになるまで流した電流のトータル電荷量を酸素発生時に酸素極室に蓄えられる正の保有電荷量とした。
[連続水素製造時間と総水素製造量の関係の調査方法]
複極式電解槽Bについて、40kWの定格電力が得られる発電機と組み合わせて、所定量の水素を製造し、300分間、電解を停止する運転を繰返した。この運転中に製造される、水素量を測定することで、運転方法と水素製造量の関係を調べた。但し、電解停止時間中も発電機は一定の電力を発電し、水素を製造していない間に発電された電力は全て電力損失と見なした。運転方法は、A〜Hの8水準の条件を採用した。
(比較例用の運転方法A)1.8kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後に、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(実施例用の運転方法B)3.6kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(実施例用の運転方法C)6.9kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(実施例用の運転方法D)7.2kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(実施例用の運転方法E5)50.1kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(実施例用の運転方法F)214.9kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(実施例用の運転方法G)1217.7kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(比較例用の運転方法H)1343.0kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
各運転方法A〜Hによって10000時間の間、製造した水素量を、セル数10で除し、セル一対当たりの総水素製造量に換算した。
[電解停止時間と総水素製造量の関係の調査方法]
複極式電解槽Bについて、40kWの定格電力が得られる発電機と組み合わせて、50.1kF/mの電荷量に相当する水素を製造し、所定時間、電解を停止する運転を繰返した。この運転中に製造される、水素量を測定することで、運転方法と水素製造量の関係を調べた。但し、電解停止時間中も発電機は一定の電力を発電し、水素を製造していない間に発電された電力は全て電力損失と見なした。運転方法は、E1〜E7の7水準の条件を採用した。
(運転方法E1)2984.5kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造し続ける運転方法。
(運転方法E2)50.1kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、5分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(運転方法E3)50.1kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、100分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(運転方法E4)50.1kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、200分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(運転方法E5)50.1kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、300分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(運転方法E6)50.1kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、400分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
(運転方法E7)50.1kF/mの電荷量に相当する水素を連続的に製造した後で、7000分電解を停止する運転を繰返す運転方法。
各運転方法E1〜E7によって10000時間の間、製造した水素量を、電解セル数10で除し、電解セル一対当たりの総水素製造量に換算した。
(試験結果)
酸素極サンプルの酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の電気容量は、1.54F/mだった。
表1に、本発明の一実施形態にかかる電解セル、水素極サイズ、構造体サイズ(横幅)、水素極の保有電荷量、陽極の放電容量、保有電荷量比の関係を示す。
Figure 0006788378
図3に、複極式電解槽A、B、C、D、E、F、G、Hのシャットダウンの回数とセル電圧の上昇量の関係を示す。
図4に、水素極サンプルA、B、C、D、E、F、G、Hの水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量を示す。
図5に、水素極サンプルA、B、C、D、E、F、G、Hの水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量と酸素極サンプルの酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の比(水素極サンプルの負の保有電荷量/酸素極サンプルの正の保有電荷量)を示す。
図6に、水素極サンプルA、B、C、D、E、F、G、Hの水素発生時に水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量と酸素極サンプルの酸素発生時に酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の比に関する、シャットダウン回数とセル電圧の関係を示す。
図6より、前記保有電荷量の比が0.027(水素極A)、1.000(水素極H)に関しては、シャットダウンを100回行ったところ、セル電圧が上昇した。前記保有電荷量の比が0.110(水素極B)、0.200(水素極C)、0.490(水素極D)、0.500(水素極E)、0.800(水素極F)、0.99(水素極G)に関しては、シャットダウンを100回行ったが、セル電圧の上昇は見られなかった。従って、前記保有電荷量の比を0.11〜0.99の範囲にする事で、シャットダウンに対するセル電圧上昇に対する抑制効果が得られると考えられる。更に、前記保有電荷量の比が0.110(水素極B)、0.200(水素極C)、0.490(水素極D)、に関しては、シャットダウンを1000回行ったが、セル電圧の上昇は見られなかった。従って、前記保有電荷量の比を0.11〜0.490の範囲にする事で、シャットダウンに対するセル電圧上昇に対するより高い抑制効果が得られると考えられる。
図7に、電解槽Bと40kWの定格電力で発電する発電機とを組み合わせた水素製造システムに関する、任意の量水素を連続的に製造し、300分間、電解停止する運転方法A、B、C、D、E5、F,G、Hと総水素製造量の関係を示す。
図7より、運転方法B〜Gに関しては、10000時間の間に製造した水素量が、5000Nm/Cell以上であり、充分許容範囲だった。運転方法Aについては、総水素製造量は4560Nm/Cellであり、運転方法B〜Gと比較すると総水素製造量は少なかった。運転方法Aのような運転方法では、通電時間が短いため、低いセル電圧が維持されるが、その分稼働率が低いため、発電量に対する水素製造効率は低いと考えられる。運転方法Hについては、総水素製造量は4907Nm/Cellであり、運転方法B〜Gと比較すると総水素製造量は少なかった。運転方法Hの様な運転方法では、稼働率は高いが、その分セル電圧が上昇するため、発電量に対する水素製造効率は低いと考えられる。
図8に、電解槽Bと40kWの定格電力で発電する発電機とを組み合わせた水素製造システムに関する、50.1kF/mに相当する量水素を連続的に製造し、所定時間、電解停止する運転方法E1、E2、E3、E4、E5、E6,E7と総水素製造量の関係を示す。
図8より、運転方法E2〜E6に関しては、10000時間の間に製造した水素量が、5000Nm/Cell以上であり、充分許容範囲だった。運転方法E1については、総水素製造量は3264Nm/Cellであり、運転方法E2〜E6と比較すると総水素製造量は少なかった。運転方法E1のような運転方法では、稼働率は高いが、その分セル電圧が上昇する。また、電解停止を停止する操作を行わなかったため、セル電圧が回復する事が無い。その結果、発電量に対する水素製造効率が低くなったと考えられる。運転方法E7については、総水素製造量は4812Nm/Cellであり、運転方法E2〜E6と比較すると総水素製造量は少なかった。運転方法E7については、セル電圧が回復するのに十分な電解停止時間を設けたが、その分稼働率が低下したため、発電量に対する水素製造効率は低いと考えられる。
本発明に係るアルカリ水電解用酸素極及び電解槽によれば、NaOH又はKOH等を含むアルカリ性の電解液の電気分解において、酸素極の酸素発生電位を低減し、高いエネルギー変換効率を示すとともに、自然エネルギーを用いた変動の大きな電力を用いても安定して酸素や水素を製造することが可能である。
2 複極式エレメント
21 水素極室
22 水素極
23 酸素極室
24 酸素極
25 隔壁
26 ガスケット
27 気液分離室
28 膈膜
29 酸素極液入口
30 水素極液出口
31 水素極液入口
32 酸素極液出口
33 還元補助

Claims (22)

  1. 水素を発生させるための水素極と、
    酸素を発生させるための酸素極と、
    前記水素極と電解質水溶液を内包する水素極室と、
    前記酸素極と電解質水溶液を内容する酸素極室と、
    前記水素極室と前記酸素極室を隔てる隔膜と、を備え、
    前記水素極が、Pt化合物を含み、
    水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる負の保有電荷量が、酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる正の保有電荷量の
    0.1倍を超え、0.49倍以下である、
    電解質水溶液を電気分解するための水電解セル。
  2. 前記の酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる前記正の保有電荷量が、前記酸素極の面積1mあたり、
    0.01〜10Fの範囲である、請求項に記載の水電解セル。
  3. 前記の酸素発生時に前記酸素極室内に蓄えられる前記正の保有電荷量が、前記酸素極の面積1mあたり、
    0.05〜5Fの範囲である、請求項1又は2に記載の水電解セル。
  4. 前記の水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる前記負の保有電荷量が、前記水素極の面積1mあたり、
    0.001〜9.9Fの範囲である、請求項1〜のいずれか一項に記載の水電解セル。
  5. 前記の水素発生時に前記水素極室内に蓄えられる前記負の保有電荷量が、前記水素極の面積1mあたり、
    0.005〜4.95Fの範囲である、請求項1〜のいずれか一項に記載の水電解セル。
  6. 前記水素極室が、更に還元補助材を内包し、前記還元補助材は前記水素極と電気的に接続している、請求項1〜のいずれか一項に記載の水電解セル。
  7. 前記還元補助材が、金属ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項に記載の水電解セル。
  8. 還元補助材に蓄えられる負の保有電荷量が、前記水素極室に蓄えられる負の電気容
    量の0.00025〜0.98倍の範囲である、請求項又はに記載の水電解セル。
  9. 前記還元補助材に蓄えられる負の保有電荷量が、前記水素極室に蓄えられる負の電気容
    量の0.76〜0.95倍の範囲である、請求項6又は7に記載の水電解セル。
  10. 前記水素極室が、更に金属製弾性クッション材と集電体を内包しており、前記金属製弾性クッション材が、前記水素極と前記集電体との間で電気的に接続した状態で圧縮収容されており、前記集電体の一部が前記還元補助材で構成されている、請求項7〜9のいずれか一項に記載の水電解セル。
  11. 前記酸素極が、導電性基材と、前記導電性基材を被覆する触媒層とを備えている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水電解セル。
  12. 前記触媒層が、酸化ニッケル、金属ニッケル、水酸化ニッケル及びニッケル合金からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項11に記載の水電解セル。
  13. 前記酸素極が、導電性基材と、前記導電性基材を被覆する触媒層とを有し、
    前記触媒層は、ニッケルの金属結晶を含み、
    前記触媒層は、細孔を有し、
    前記触媒層の前記細孔のうち、
    孔径が2〜5nmの範囲内である第一細孔の比表面積が0.6〜2.0m/gであり、
    前記第一細孔の細孔容積が3×10−4〜9×10−4ml/gであり、
    前記触媒層の前記細孔のうち、孔径が0.01〜2.00μmの範囲内である第二細孔の比表面積が2.0〜5.0m/gであり、
    前記第二細孔の細孔容積が0.04〜0.2ml/gであり、さらに、
    前記触媒層の厚みが50〜800μmである、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載の水電解セル。
  14. 前記酸素極の前記触媒層の実電極表面積が、90〜10000mの範囲である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の水電解セル。
  15. 前記水素極が、Ru−La−Pt系、Pt−Ce系、及びPt−Ir系、Ir−Pt−Pd系、Pt−Ni系からなる群から選択される少なくとも一種のPt化合物を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の水電解セル。
  16. 前記水素極及び酸素極が、メッシュ状の構造である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の水電解セル。
  17. 前記水素極の基材が、0.05〜0.5mmの範囲の線形を有し、目開きが30メッシュから80メッシュの範囲を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の水電解セル。
  18. 前記酸素極の基材が、開口率が20%から60%の範囲を有するメッシュ状の構造である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の水電解セル。
  19. 請求項1〜18のいずれか一項に記載の水電解セルを単位水電解セルとして、電気的に直列に接続されている、複極式水電解槽。
  20. 前記複極式水電解槽が、前記水素極、前記酸素極、イオン透過性隔膜、前記酸素極室と前記水素極室を区画する隔壁及び導電性隔壁を取囲むフランジパンを有する複極式フレームを備え、前記水素極と前記酸素極の間に前記イオン透過性隔膜が位置し、前記イオン透過性隔膜は前記水素極及び前記酸素極と接触している、請求項19に記載の複極式水電解槽。
  21. 少なくとも、請求項19又は20に記載の複極式水電解槽、気液分離タンク、電解液循環ポンプ、水投入ポンプ、及び電気分解用の電力供給用の整流器を具備する、水素製造装置。
  22. 請求項21に記載の水素製造装置を用いて、前記水素極から消費電荷量換算で、1.8kF/m〜1217.7kF/mの水素を連続的に発生させた後に、5〜400分の範囲で、連続的に水素製造を停止する、水素製造方法。
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