JP6828877B2 - ペーパー状触媒およびその製造方法、ペーパー状触媒配列体並びに炭化水素の改質方法 - Google Patents

ペーパー状触媒およびその製造方法、ペーパー状触媒配列体並びに炭化水素の改質方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭化水素改質等に用いられるペーパー状触媒およびその製造方法、並びにその応用技術に関する。
ペーパー状触媒(Paper-Structured Catalyst、以下、「PSC」と記載する場合がある。)は、無機繊維を不織布状に成形した、繊維ネットワーク積層構造からなるペーパー状多孔質支持基体にNi等の触媒金属種を担持した構造体であり、従来の粒状の炭化水素の改質触媒と比較して、優れた実用性能を発揮する触媒構造体として注目されている。
ペーパー状触媒(PSC)の利点として、PSC特有の繊維ネットワーク積層構造(以下、「ペーパー状構造」という場合がある。)が好適な触媒反応場を与え、触媒反応が高効率化されること、ペーパー状構造に由来するフレキシブルな構造のため、炭化水素の改質に伴う急激な温度低下に起因するサーマルショックによる触媒構造の破壊が起こらないこと等が挙げられる。
これまでもペーパー状触媒として様々な報告がなされており、その用途としては、窒素酸化物の分解除去、炭化水素の水蒸気改質反応による水素の製造など、ガス改質反応全般において利用できることが示唆されている(例えば、特許文献1、2)。
また、特許文献3には、ペーパー状多孔質支持基体の表面に分散担持された炭化水素に対する改質活性を有する金属触媒を含み、ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維の少なくとも一部がイオン伝導性酸化物繊維であるペーパー状触媒が開示されており、ペーパー状多孔質支持基体に含まれるイオン伝導性酸化物繊維が助触媒として機能して炭化水素改質の触媒活性を向上させることが報告されている。
また、より炭化水素に対する触媒活性を高めたペーパー状触媒として、当該無機繊維上に触媒金属種を担持したペーパー状触媒、ペーパー状多孔質支持基体の繊維ネットワーク内に分散したハイドロタルサイト(MgとAlを含む層状複水酸化物:HT)に対し、触媒金属種を選択的に担持したペーパー状触媒が開示されている(特許文献4、非特許文献1,2)。このようなペーパー状触媒では、バイオディーゼル燃料の模擬ガスの水蒸気改質反応に対して優れた転化率を示すこと(非特許文献1)、バイオガスからの水素製造を想定した条件でのメタンドライリフォーミング反応に対しては、従来のHT分散無しのペーパー状触媒に比較して高い改質活性を有するだけでなく、極めて高い耐硫黄被毒性を示すこと(非特許文献2)が報告されている。
特開2008−307471号公報 特開2012−143714号公報 WO2014/021385 WO2015/050106
Journal Power Sources 283(2015)320-327 International Journal of Hydrogen Energy 40(2015)10807-10815
ところで、ペーパー状触媒を用いて、炭化水素の改質を行う場合の課題として、原料ガスの組成や温度によっては、ペーパー状触媒の触媒金属(典型的にはNi)から副反応生成物である炭素(特にはファイバー状炭素)が析出し、長時間使用時には、蓄積した炭素により触媒作用が低下したり、触媒構造自体が破壊されるという問題がある。炭素析出が起こりやすい条件、例えば、バイオガスからドライリフォーミングにより水素と一酸化炭素に改質する場合には、析出した炭素によりペーパー状触媒が改質触媒として十分に機能しなくなるおそれがある。
上記特許文献3のペーパー状触媒では、Niに塩基性のMgOを複合化させた触媒金属を使用して析出炭素の発生の抑制を行っているが、析出炭素の発生が起こりやすいバイオガスやバイオディーゼル等の原料ガスを使用した場合においては炭素が析出する場合もあり改善の余地があった。また、特許文献4のペーパー状触媒は、炭化水素の改質触媒活性に優れ、極めて高い耐硫黄被毒性を示すが、バイオガスやバイオディーゼル等を原料ガスとした場合における炭素析出の抑制の面では改善の余地が残されていた。
このようにペーパー状触媒は、原料ガスの組成や使用温度によって、触媒金属から炭素が析出する場合があり、長時間使用時には、蓄積した炭素によりデバイスが機能しなくなることも考慮に入れて運転条件を設定する必要がある。したがって、炭素析出を著しく抑制したペーパー状触媒の開発が望まれている。
かかる状況下、本発明の目的は、副生成物である炭素の析出の起こりやすい条件下においても、優れた炭化水素の改質触媒活性を有し、かつ、炭素析出が抑制されるペーパー状触媒を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 無機繊維を不織布状に成形したペーパー状多孔質支持基体と、該ペーパー状多孔質支持基体の表面に存在するCeO2-ZrO2複合酸化物担体と、前記CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散されたNi系金属触媒粒子と、を含むペーパー状触媒。
<2> 前記CeO2-ZrO2複合酸化物担体が、粒子状担体であって、当該粒子状担体が前記ペーパー状多孔質支持基体に分散して担持された、<1>に記載のペーパー状触媒。
<3> 前記CeO2-ZrO2複合酸化物担体における、CeO2/ZrO2重量比が、0.7〜1.8である、<1>または<2>に記載のペーパー状触媒。
<4> 前記Ni系金属触媒粒子が、Ni前駆体化合物をNaBH4によって還元して生成したNiを含む、<1>から<3>のいずれかに記載のペーパー状触媒。
<5> 前記ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維が、シリカ−アルミナ複合酸化物、CeO2-ZrO2複合酸化物から選択される1種以上を含む、<1>から<4>のいずれかに記載のペーパー状触媒。
<6> 前記ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維が、低結晶性繊維を含む、<1>から<5>のいずれかに記載のペーパー状触媒。
<7> ペーパー状触媒を複数枚配列したペーパー状触媒配列体であって、当該ペーパー状触媒配列体を構成するペーパー状触媒の少なくとも一部が、<1>から<6>のいずれかに記載のペーパー状触媒である、ペーパー状触媒配列体。
<8> 炭化水素を含む原料ガスと水蒸気又は二酸化炭素との混合ガスを、<1>から<6>のいずれかに記載のペーパー状触媒、又は<7>に記載のペーパー状触媒配列体に供給し、改質する炭化水素の改質方法。
<9> 前記炭化水素を含む原料ガスが、バイオガス又はバイオディーゼルである、<7>に記載の炭化水素の改質方法。
<10> <1>から<6>のいずれかに記載のペーパー状触媒の製造方法であって、
無機繊維、Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物を含むスラリーにアルカリを添加してCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を析出させた後に湿式抄紙法によって、無機繊維及びCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を含むシート状成形体とする工程(1)と、
得られたシート状成形体を熱処理し、ペーパー状多孔質支持基体と、その表面に固定化されたCeO2-ZrO2複合酸化物と、該CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散したNi系金属触媒粒子又はその前駆体粒子とを生成する工程(2)と、
還元雰囲気で熱処理することによりNi系金属触媒粒子を活性化する工程(3)と、を含む製造方法。
<11> 工程(1)において、前記Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物を還元剤により処理し、Niの少なくとも一部を還元する工程を有する、<10>に記載の製造方法。
<12> 還元剤がNaBH4である、<11>に記載の製造方法。
本発明によれば、炭素析出の起こりやすい条件下においても、優れた炭化水素の改質触媒活性を有するペーパー状触媒が提供される。
本発明のペーパー状触媒の概念図である。 本発明のペーパー状触媒配列体の概念図であり、(a)は積層型、(b)は平面配列型である。 本発明の第1の実施形態である、ペーパー状触媒配列体(積層型)を備えた改質反応装置の概念図である。 実施例のペーパー状触媒(PSC)の製造手順を示すフロー図である。 実施例1のペーパー状触媒のFE−SEM/EDXである。 比較例Aのペーパー状触媒のFE−SEM/EDXである。 比較例1のペーパー状触媒のFE−SEM/EDXである。 参考例1のペーパー状触媒のFE−SEMである。 実施例1のペーパー状触媒のTEM/EDXである。 実施例1、比較例A、比較例1及び参考例1のペーパー状触媒による改質試験(CH4/CO2=1、750℃、GHSV3500H-1)のメタン転化率の評価結果である。 改質試験(15時間)後の実施例1および参考例1のペーパー状触媒を、昇温酸化法で評価した結果である。 実施例1および比較例1のペーパー状触媒(還元処理後)のXRDプロファイルである。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「〜」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。
<1.ペーパー状触媒>
本発明は、無機繊維を不織布状に成形したペーパー状多孔質支持基体と、該ペーパー状多孔質支持基体の表面に存在するCeO2-ZrO2複合酸化物担体(以下、単に「複合酸化物担体」、又は「CeO2-ZrO2固溶体担体」と称す場合がある。)と、前記複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散されたNi系金属触媒粒子(以下、「改質触媒」と称す場合がある。)と、を含むペーパー状触媒(以下、「本発明のペーパー状触媒」と記載する。)に関する。図1に本発明のペーパー状触媒の概念図を示す。
本発明のペーパー状触媒は、支持基体として無機繊維を骨格とするペーパー状多孔質支持基体が使用されるため、ペーパー状触媒における空隙を大きくすることができる。そのため、本発明のペーパー状触媒は、炭化水素燃料の改質反応に伴う熱応力破壊に対する優れた耐性を有する。
そして、無機繊維を骨格の表面にCeO2-ZrO2複合酸化物担体が存在し、当該複合酸化物担体が有する酸素吸蔵放出能(Oxygen Storage Capacity, 以下、「OSC」と記載する場合がある。)によって格子酸素がNi系触媒粒子近傍に供給されることにより、炭化水素改質反応が促進されると共に、副反応生成物である炭素の生成が著しく抑制される。
以下、本発明のペーパー状触媒の構成要素を詳細に説明する。
<1−1.ペーパー状多孔質支持基体>
ペーパー状多孔質支持基体は、ペーパー状触媒の支持基体であり、その表面にCeO2-ZrO2複合酸化物担体を担う役割を有する。ペーパー状多孔質支持基体は、無機繊維を不織布状(ペーパー状)に成形してなり、無機繊維同士が絡み合うように接合したものであり、当該無機繊維の隙間からなる空隙は連通しており通気性を有する。
ペーパー状多孔質支持基体の空隙率は、機械的強度が保たれる範囲で決定され、ペーパー状多孔質支持基体の空隙率が小さすぎると燃料ガスの流通が抑制され、閉塞しやすくなり、空隙率が大きすぎると、機械的強度が不足して破損しやすくなる。本発明のペーパー状触媒において、ペーパー状多孔質支持基体の空隙率は、好適には75体積%以上95体積%以下である。なお、ペーパー状多孔質支持基体の空隙率は、水銀圧入法で測定することができる。
水銀圧入法は、粉体試料の細孔に水銀を浸入させるために圧力を加え、水銀に加えた圧力と水銀圧入量との関係を表す水銀圧入曲線を得て、該水銀圧入曲線に基づいて、細孔分布曲線、細孔容積、比表面積などを求める方法である。なお、水銀圧入法による測定は、水銀ポロシメータにより行うことができる。
また、ペーパー状多孔質支持基体において、水銀圧入法から求めた細孔容積は、好ましくは1.5〜3cm3/gであり、比表面積は、好ましくは3〜10m2/gであり、第1モード径は好ましくは、10〜30μmである。
ペーパー状多孔質支持基体は、特開2005−89206号公報や、On-paper Synthesis of Silver Nanoparticles for Antibacterial Applications(ISBN:978-953-307-028-5)等で開示された湿式抄紙法に準じる方法で作製することができる。
簡単に説明すると、まず、所定量の無機繊維、及び必要に応じてバインダー成分や他の成分(気孔量調製剤、分散剤等)を所定量の溶媒にいれて、均一になるまで分散させたスラリーを作製する。次いで、スラリーに所定の凝集剤を順次添加してフロックを生成し、そのフロックに水力学的せん断力を加えて崩壊させると同時に200メッシュの抄き網を用いて脱水・抄造し、加圧処理を行い均質なシート状の成形体を得る。得られたシート状成形体を乾燥し、所定の熱処理行うことにより、均一な厚さのペーパー状(不織布状)の多孔質担体を得る。
なお、後述するように、無機繊維と共に、CeO2-ZrO2複合酸化物担体、金属触媒(改質触媒)の前駆体を添加したスラリーを使用して、ペーパー状多孔質支持基体の形成と、CeO2-ZrO2複合酸化物担体の形成、Ni触媒(又はその前駆体)の担持とを同時に行うことが好ましい。具体的な方法は、本発明の実施例にて後述する。
本発明に係るペーパー状多孔質支持基体における無機繊維としては、本発明のペーパー状触媒の使用条件(例えば、600℃以上、炭化水素存在雰囲気)での熱的安定性、化学的安定性が高い無機物からなる繊維を用いることができる。無機物としては金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物等が挙げられ、通常、金属酸化物である。また、これらを任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
無機繊維として使用される金属酸化物を例示すると、アルミナ(Al23)やシリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコニア(ZrO2)系酸化物、セリア(CeO2)系酸化物、ペロブスカイト系酸化物(例えば、BaTiO3、SrTiO3、LaAlO3)等が挙げられる。また、これらの金属酸化物は、複合酸化物であってもよく、ドーパントを含んでいてもよい。例えば、アルミナとシリカを主成分とする複合酸化物(シリカ−アルミナ複合酸化物)は、フレキシブルであり、機械的強度に優れるため、無機繊維として使用される好適な複合酸化物のひとつである。シリカ−アルミナ複合酸化物におけるSiO2とAl23の重量比は任意であるが、SiO2/Al23で0.25〜3が好ましい。
また、無機繊維としてCeO2-ZrO2複合酸化物を使用すれば、無機繊維自体をCeO2-ZrO2複合酸化物担体として使用することができる。
また、無機繊維として使用される金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化チタン(TiC)等が挙げられる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si34)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化チタン(TiN)、窒化ニオブ(NbN)等が挙げられる。
また、ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維は、低結晶性繊維を含むことが好ましい。低結晶性繊維を含むことにより、ペーパー状多孔質支持基体は高い機械的強度と靱性を備える。低結晶性繊維としては、例えば、アルミナとシリカを主成分とする繊維体であって非晶質のリフラクトリーセラミックファイバー(例えば、イビデン株式会社製IBI WOOL(登録商標)、イソライト工業株式会社製イソウール(登録商標))や低結晶性のアルミナファイバー(例えば、電気化学工業株式会社製デンカアルセン(登録商標) B80L)等が挙げられる。
ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維の長さ及び太さは、ペーパー状多孔質支持基体を形成できる範囲であればよく、本発明のペーパー状触媒の用途等を考慮して適宜決定される。通常、全長30μm〜6mm、好ましくは50μm〜3mm、直径が2μm〜20μmである。2種類以上の無機繊維を使用する場合は、それぞれ異なる太さ、長さのものを使用してもよい。なお、無機繊維の長さ、太さは、走査型電子顕微鏡(SEM)で確認することができる。
ペーパー状多孔質支持基体の大きさ(ペーパー状触媒の大きさも実質同じ)は、使用される無機繊維の種類や量、本発明のペーパー状触媒の用途等を考慮して適宜決定される。厚みは使用するペーパー状多孔質支持基体の成形加工性や強度を考慮して通常0.5〜3mm程度である。
<1−2.CeO2-ZrO2複合酸化物担体>
CeO2-ZrO2複合酸化物担体は、ペーパー状多孔質支持基体の表面に存在し、その表面及び/又は内部にNi系金属触媒粒子を固定する。
「(CeO2-ZrO2複合酸化物担体が)ペーパー状多孔質支持基体の表面に存在する」とは、具体的には以下の態様が含まれる。なお、図1は以下の(a)の態様を例示している。
(a)CeO2-ZrO2複合酸化物担体が、粒子状又は塊状であって、ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維の表面に分散して担持されている態様
(b)CeO2-ZrO2複合酸化物担体が、膜状であって、ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維の表面の全部または一部を被覆するように担持されている態様
(c)ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維が、CeO2-ZrO2複合酸化物からなる態様
(d)上記(a),(b)及び(c)の態様が2以上組み合わされた態様
CeO2-ZrO2複合酸化物担体の大きさや量は、本発明のペーパー状触媒が、その目的とする用途で十分な改質性能を有する量のNi系金属粒子を担持できるのであれば、特に制限はなく、粒子状又は塊状、膜状等の形態に応じて適宜選択される。
CeO2-ZrO2複合酸化物担体は、酸化雰囲気下では酸素を取り込み、還元雰囲気下では酸素を供給する酸素吸蔵放出能(OSC)を有する。そのため、CeO2-ZrO2複合酸化物担体によって酸素がNi系触媒粒子近傍に供給されることにより、炭化水素改質反応が促進されると共に、副反応生成物である炭素の生成が著しく抑制される。
CeO2-ZrO2複合酸化物担体の組成は制限されないが、CeO2/ZrO2重量比が通常0.5〜2.0の範囲で選択され、より炭素生成が抑制される点で0.7〜1.8が好適である。また、OSCの観点からCeO2-ZrO2複合酸化物は結晶性が高い方が好ましい。CeO2/ZrO2重量比はEDXにより求めることができる。
CeO2-ZrO2複合酸化物担体は、CeO2-ZrO2のみからなることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で他の酸化物(Y23等)を含んでいてもよい。
CeO2-ZrO2複合酸化物担体は、好適にはCe前駆体化合物、Zr前駆体化合物を含む溶液(スラリー状であるもの含む)にアルカリを添加して複合化合物を共沈させた後に酸化雰囲気で熱処理して製造する。特にCe前駆体化合物、Zr前駆体化合物をさらにNi前駆体化合物と共に共沈させ、Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物を析出させたのちに熱処理して製造することが好ましい。詳細は本発明のペーパー状触媒の製造方法にて後述する。
<1−3.Ni系金属触媒>
本発明のペーパー状触媒において、金属触媒として、Ni系金属触媒(以下、単に「金属触媒」と記載する場合がある。)が使用される。Ni系金属触媒とは、Ni金属及びNiを含む金属からなる触媒であり、Ni以外の金属種は炭化水素に対する改質活性を著しく阻害しないものであれば特に制限はないが、本発明のペーパー状触媒の好適な使用温度(600℃〜900℃)での耐熱性と、触媒活性を併せもつという点で、Co、Fe、Ru、Rh、Pt、Pd及びこれらの合金が挙げられる。これらの金属種は、本発明のペーパー状触媒の用途や、原料ガスの組成、反応条件などに応じて適宜選択される。なお、金属触媒は、通常、その前駆体化合物(例えば、酸化物)を還元して製造するが、炭化水素に対する改質活性があれば、完全に金属まで還元されずに、一部が前駆体化合物の状態であってもよい。
Niは貴金属に比べて低コストであり、改質触媒性に優れるが、熱分解炭素の生成が起こりやすい金属種である。本発明のペーパー状触媒では、OSCを有するCeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散されていることにより、CeO2-ZrO2複合酸化物担体から供給される格子酸素により熱分解炭素の生成が抑制される。そのため、本発明のペーパー状触媒は、炭素析出が起こりやすい、バイオガスさらにはBDF等の高級炭化水素を含む原料ガスの改質に好適である。
前記Ni系金属触媒粒子が、Ni前駆体化合物をNaBH4によって還元して生成したNiを含むことが好ましい。このようなNi前駆体化合物(硝酸塩等の金属塩)をNaBH4によって還元して生成したNiが、CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散されたNi系金属触媒粒子として含まれることにより、NaBH4処理がない場合と比較して炭化水素の改質作用が大幅に向上し、優れた転化率(特にはメタンドライリフォーミング時のメタン転化率)を示す。
この理由について明らかでない点もあるが、後述する製造方法で詳述する通り、Ni,Ce,Zrそれぞれの前駆体化合物(通常、金属塩)を含むスラリーをアルカリ処理することにより、共沈物であるCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を含むシート状成形体を成形し、これをNaBH4で処理してNi成分の一部を還元して生成する。なお、アルカリは金属塩から共沈物を生成させる作用以外に、NaBH4を安定化してその還元力を抑制するため、Niが一気に還元されて凝集することが回避されることや、共沈物に取り込まれずに残存したスラリー中のNi2+もNaBH4によって還元され、CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面に担持されることからNi担持量の向上に寄与していることが推測される。
金属触媒の大きさは、その製造方法にも依存するが、表面性が増加し改質反応を促進できることから、好ましくは100nm以下である。その下限は触媒活性が発現できる大きさであればよく、通常、平均粒径1nm以上である。好適な粒径の範囲は、例えば、20〜50nmである。
金属触媒の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)にて、50個ずつ粒子を任意に抽出して、それぞれにつき粒径(直径)を測定して、50個の粒径の平均値として算出した値である。また、金属触媒の形状が、球形以外の場合は、顕微鏡像における粒子の周囲長を解析ソフトで測定し、該周囲長を円周としたときの直径を粒径とする。
金属触媒の担持量は、ペーパー状触媒の用途、原料ガスの組成などに応じて適宜選択され、ペーパー状触媒が十分な改質性能を有し、炭素析出が生じない範囲で設定されるが、CeO2-ZrO2複合酸化物を100重量%とした時に、通常、10〜200重量%、好適には50〜150重量%の範囲である。
CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面に、金属触媒を分散担持する方法としては特に制限はない。また、ペーパー状多孔質支持基体がCeO2-ZrO2複合酸化物からなり、これ自体を担体とする場合には、例えば、金属触媒の前駆体を含む溶液にペーパー状多孔質支持基体を含浸させた後に、乾燥、焼成、還元処理等によって、粒子状の金属触媒をペーパー状多孔質支持基体の表面に生成させればよい。なお、金属触媒の前駆体は、熱処理や還元処理等の方法により、粒子状の金属触媒に転化するものであればよく、それぞれの金属種の硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩等を適宜選択して使用すればよい。
<1−4.他の成分>
本発明のペーパー状触媒は、ペーパー状多孔質支持基体及びこれに担持された金属触媒を基本構成とするが、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。例えば、より触媒活性を高めるための助触媒成分や、ペーパー状触媒を他の部材に接合させるためのバインダー等が挙げられる。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)は炭素析出の抑制効果が高く、他の成分として好適な一例である。
<1−4.ペーパー状触媒の製造方法>
本発明のペーパー状触媒は、上述した特徴を有するペーパー状触媒が得られるのであればあらゆる製造方法が採用できる。例えば、ペーパー状多孔質支持基体を成形した後に、CeO2-ZrO2複合酸化物担体やNi系金属触媒(改質触媒)を担持する方法でもよいが、以下に説明する製造方法(以下、「本発明のペーパー状触媒の製造方法」又は「本発明の製造方法」と記載する場合がある。)によって好適に製造できる。この方法では、無機繊維と共に、CeO2-ZrO2複合酸化物担体、Ni系金属触媒(改質触媒)の前駆体を添加したスラリーを使用して得られるシート状成形体を熱処理して、ペーパー状多孔質支持基体の形成と、CeO2-ZrO2複合酸化物担体の形成、Ni触媒(又はその前駆体)の担持とを同時に行う。
すなわち、本発明のペーパー状触媒の製造方法は、無機繊維、Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物を含むスラリーにアルカリを添加してCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を析出させた後に湿式抄紙法によって、無機繊維及びCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を含むシート状成形体とする工程(1)と、得られたシート状成形体を熱処理し、ペーパー状多孔質支持基体と、その表面に固定化されたCeO2-ZrO2複合酸化物と、該CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散したNi系金属触媒粒子又はその前駆体粒子とを生成する工程(2)と、還元雰囲気で熱処理することによりNi系金属触媒粒子を活性化する工程(3)と、を含む製造方法である。
以下、本発明のペーパー状触媒の製造方法における各工程について詳述する。
<工程(1)>
工程(1)は、無機繊維、Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物を含むスラリーにアルカリを添加してCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を析出させた後に湿式抄紙法によって、無機繊維及びCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を含むシート状成形体とする工程である。
まず、無機繊維、Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物、及び必要に応じて他の成分(気孔量調整剤、分散剤等)を溶媒に入れ、均一になるまで混合してスラリーを得る。
スラリーの溶媒としては、添加される成分が分散、溶解するものであればよく、水、アルコール類、水溶性ケトン類又はこれらの混合物が用いられ、通常、水または水を主体とする溶媒(水50重量%以上)が用いられる。
無機繊維は金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物が使用でき、上述した通りであるためその種類等についての説明を省略する。無機繊維の長さ及び太さはシート状成形体を成形できる範囲であればよく、最終的に得られる本発明のペーパー状触媒の使用用途等を考慮して適宜選択される。通常、平均全長30μm〜6mm(好適には50μm〜3mm)、平均直径が1〜20μm(好適には4〜10μm)で、最低繊維径が3.0μm以上である。なお、無機繊維の長さ及び太さは走査型電子顕微鏡(SEM)により確認できる。
また、シート状成形体の製造に好適に使用される、無機繊維としては、低結晶性繊維である、アルミナとシリカを主成分とする繊維体であって非晶質のリフラクトリーセラミックファイバー(例えば、イビデン株式会社製IBI WOOL(登録商標)、イソライト工業株式会社製イソウール(登録商標))や低結晶性のアルミナファイバー(例えば、電気化学工業株式会社製デンカアルセン(登録商標) B80L)等が挙げられる。また、ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維のうち、低結晶性繊維の割合は30重量%以上であることが好ましい。
本発明の製造方法の特徴の一つは、無機繊維と共に、Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物を含むスラリーを使用し、アルカリを添加してCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を析出させることにある。使用する前駆体化合物にもよるが、アルカリ添加によりpHをアルカリ(好適にはpH10以上)とすることにより、溶液中のCe、Zr,Niの各元素のイオンが水酸化物として共沈し、Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物が析出する。析出したCe−Zr−Ni前駆体複合化合物が、アルカリ処理時や湿式抄紙法での処理時に無機繊維の表面に固定化される。なお、使用するアルカリの種類は本願発明の作用効果を損なわない限り制限はなく、例えば、NaOHが用いられる。
また、Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物はバインダーとしても作用するため、バインダー成分を別途添加しなくとも、湿式抄紙法で成形することにより、無機繊維同士が決着し、シート状成形体に成形することができる。
なお、必要に応じてバインダー成分を添加することもできる。バインダー成分としてはZrO2ゾルやCeO2ゾル等が挙げられる。
スラリー中の無機繊維、Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物の濃度は、湿式抄紙法によって、Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物を含むシート状成形体が成形できる濃度(粘度)となる範囲で適宜選択される。
Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物としては、特に制限はなく、Ce、Zr,Niの硝酸塩、硫酸塩、オキシ硝酸塩、オキシ硫酸塩、酢酸塩、塩化物、リン酸塩、カルボン酸塩などを使用することができる。この中でも、硝酸塩が好適な前駆体である。
スラリー中のCe前駆体化合物、Zr前駆体化合物の仕込み量は、目的とするCeO2/ZrO2重量比と同じなるように設定すればよい。具体的には、CeO2/ZrO2換算重量比で、0.5〜2.0、好ましくは0.7〜1.8である。
スラリー中のNi前駆体化合物の仕込み量は、CeO2-ZrO2複合酸化物担体に対して目的とする量となるように設定される。スラリー中のNi濃度(Ni2+濃度)は、通常、10mM〜500mMの範囲である。これに対応するようにCe前駆体化合物、Zr前駆体化合物も設定される。
工程(1)において、前記Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物を還元剤により処理し、Niの少なくとも一部を還元することが好ましい。湿式抄紙法によりシート状成形体にする際にスラリーをろ過するとNiがNi2+として流出することがあるが、還元剤によりNi成分を還元処理することにより、Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物に含まれるNiが還元され流出が抑制され、共沈物に取り込まれずに残存したスラリー中のNi2+もNaBH4によって還元され、CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面に担持される。この結果、Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物の内部や表面にNiが分散し、ペーパー状触媒に含まれるNi量を多くすることができる。
還元剤として特に制限はないが、好適な還元剤としてはNaBH4が挙げられる。NaBH4は強い還元作用を有するが、工程(1)におけるアルカリ共存下で、NaBH4を還元剤として使用するとNaBH4を安定化し、その還元力を抑制し適度に制御するため、Niが一気に還元されて凝集することが回避され、ペーパー状触媒の改質活性がより向上する傾向にある
スラリーには、抄紙後の湿潤状態の強度を確保し、ろ過用メッシュからのシート状成形体の脱離を容易にするため、パルプを加えることが好ましい。パルプは工程(2)の熱処理により焼失し、空孔形成に寄与する。
スラリーにはイオン性ポリマー等の凝集剤を添加してフロックを生成し、フロックに水力学的な剪断力を加えて崩壊させると共に、200メッシュ程度の抄網を用いて、加圧して脱水し、均質なシート状成形体を得る。得られたシート状成形体は乾燥して、次工程(工程(2))に供される。また、加圧処理を行うことで、均一な厚みの平坦なペーパー状触媒(還元前)を得ることができる。
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得られたシート状成形体を熱処理し、ペーパー状多孔質支持基体と、その表面に固定化されたCeO2-ZrO2複合酸化物と、該CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散したNi系金属触媒粒子又はその前駆体粒子とを生成する工程である。
熱処理により、Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物が分解し、CeO2-ZrO2複合酸化物(CeO2-ZrO2固溶体)を形成するとともに、Ni成分が分離し、CeO2-ZrO2複合酸化物の表面及び/又は内部に分散したNi系金属触媒粒子又はその前駆体粒子が形成される。なお、熱処理条件(特に雰囲気)にもよるが、形成されるNi成分は通常、Ni酸化物粒子である。
熱処理は、含酸素雰囲気、通常は大気雰囲気で行われる。熱処理温度はCe−Zr−Ni前駆体複合化合物が分解し、CeO2-ZrO2複合酸化物(CeO2-ZrO2固溶体)を形成する温度であればよく、前駆体化合物の種類にもよるが、通常、550℃以上、好ましくは600℃以上であり、950℃以下、好ましくは900℃以下である。熱処理時間はCeO2-ZrO2複合酸化物が形成できる範囲で適宜決定され、通常、1時間以上である。
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)の後に還元雰囲気で熱処理することによりNi系金属触媒粒子を活性化する工程である。この工程はペーパー状触媒を改質触媒として使用する際に、Ni系金属触媒粒子を活性化し、触媒活性を持たせるために行われる。
還元雰囲気での熱処理は、水素、又は水素含有ガス等であればよく、特に限定されない。熱処理温度は、通常、改質触媒の使用温度と同温度、又はそれより高い温度で行われ、通常、700℃〜950℃である。
<2.本発明のペーパー状触媒の用途>
本発明のペーパー状触媒は、粒状触媒に代えて様々な用途に使用することができ、その用途は限定されないが、従来の改質触媒器用の改質触媒や、内部改質型の固体酸化物形燃料電池用の改質触媒として好適に用いることができる。
なお、本発明のペーパー状触媒は、その目的に応じて、単層で使用してもよいし、所定枚数を配列(積層)させてペーパー状触媒配列体として使用してもよい。積層枚数は目的に応じて適宜選択される。
また、ペーパー状触媒配列体の全てが本発明のペーパー状触媒である必要はなく、目的に応じて他のペーパー状触媒を含んでいてもよい。すなわち、本発明におけるペーパー状触媒配列体は、ペーパー状触媒を複数枚配列したペーパー状触媒配列体であって、当該ペーパー状触媒配列体を構成するペーパー状触媒の少なくとも一部が、上記本発明のペーパー状触媒である。
具体例を挙げると、炭素析出に対する耐性の高い本発明のペーパー状触媒を炭化水素濃度が高く炭素析出が起こりやすい前段に使用し、後段には触媒活性は高いが炭素析出が起こり得るペーパー状触媒(例えば、特許文献3,4で開示されたペーパー状触媒)を使用したペーパー状触媒が挙げられる。
また、熱応力破壊が問題となる系では炭化水素に対する改質能が低いペーパー状触媒から、改質能が高いペーパー状触媒となるように順次配列してもよい。
ペーパー状触媒配列体は、複数のペーパー状触媒を積層して配列した積層型(図2(a)参照、ペーパー状触媒積層体と呼ぶ場合もある。)、複数のペーパー状触媒を平面(水平方向)に配列した平面配列型のいずれでもよい。平面配列型のペーパー状触媒配列体は支持体上にペーパー状触媒を配列してもよい(図2(b)参照)。
なお、内部改質型SOFCに平面配列型のペーパー状触媒配列体を用いる場合には、SOFC自体を支持体としてもよい。積層型のペーパー状触媒配列体の場合には、原料ガスは、ペーパー状触媒配列体のペーパー状触媒それぞれの面に対し、垂直に供給されて改質される。平面配列型のペーパー状触媒配列体の場合には、原料ガスは、ペーパー状触媒配列体のペーパー状触媒それぞれの面に対し、平行に供給される。
なお、炭化水素に対する改質能は、金属触媒の種類や担持量、ペーパー状多孔質支持基体の種類や空隙率等の特性を適宜選択することで設計することができる。
本発明の炭化水素の改質方法は、炭化水素を含む原料ガスと水蒸気又は二酸化炭素との混合ガスを、本発明のペーパー状触媒やペーパー状触媒配列体に供給し、改質することを特徴とする。本発明のペーパー状触媒は、炭素析出が起こりづらいため、長期間安定的に炭化水素の改質を行うことができる。
また、上述のように本発明に係るペーパー状触媒は、炭素析出が起こりやすい炭化水素燃料ガス(例えば、低品位バイオガス(CH4とCO2の混合ガス)や、バイオディーゼル燃料(BDF)等高級炭化水素を含む燃料ガス)の改質に使用する場合でも、炭素析出が抑制され、熱応力破壊が起こりづらいため、本発明のペーパー状触媒および配列体は、バイオガス又はバイオディーゼルを原料ガスとして用いても、長期的に連続して改質を行うことができる。
<3.ペーパー状触媒の実施形態>
以下に、本発明のペーパー状触媒の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態のペーパー状触媒配列体を使用した改質反応装置の概念図である。
本実施形態に係る改質反応装置11は、改質反応部20と、改質反応部20に原料ガスを供給するガス供給部30とを備え、改質反応部20において、ペーパー状触媒を積層した積層型のペーパー状触媒配列体P’を使用したものである。
ペーパー状触媒配列体P’は、上述の本発明のペーパー状触媒を複数枚配列したものであり、本実施形態では、図3の改質部20aの拡大図に示すようにペーパー状触媒P1〜P5の5枚を配列している。なお、本実施形態は、本発明のペーパー状触媒を5枚配列しているが、ペーパー状触媒配列体としては2枚以上を配列させて使用すればよい。なお、本実施形態では、5枚すべてが発明のペーパー状触媒であるが、このうち少なくとも1枚が本発明のペーパー状触媒であればよく、その他は異なるペーパー状触媒を用いてもよい。また、ペーパー状触媒配列体を形成せずに、ペーパー状触媒を1枚で使用することもできる。
図3は、本発明の第1の実施形態のペーパー状触媒を使用した改質反応装置の概念図である。本実施形態に係る改質反応装置11は、改質反応部20と、改質反応部20に原料ガスを供給するガス供給部30とを備えている。
改質反応部20は、所定の位置にペーパー状触媒配列体を配置できる反応管21と、反応管21を所定の温度に加熱する電気炉22とからなる。反応管21は、改質部20aを含み、電気炉22により、所定の温度制御することができる。
反応管21の材質は、本実施形態では、アルミナ管を使用しているが、炭化水素改質反応を行う温度域(800℃程度)で化学的に安定なものであればよい。
ガス供給部30は、原料ガスを供給するための機構であり、炭化水素供給部30A、二酸化炭素供給部30B及び不活性ガス供給部30Cから構成される。これらにより、所定量の炭化水素燃料、不活性ガス(N2)が、流量制御手段30a、30b、30cによって、CH4/CO2=1になるような流量で反応管21の導入口21aから反応管21内に供給され、ペーパー状触媒配列体P’を備える改質部20aへ原料ガスとして供給される。供給された原料ガスは、ペーパー状触媒配列体P’によって改質されたのちに排出口21bから排出されるよう構成されている。
本実施形態では、排出後のガスを分析するために成分分析用のガスクロマトグラフ40を備えており、生成する改質ガスを自動ガスクロマトグラフで分析し、燃料の転化率、改質ガス中の各成分(水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、エチレン等)の濃度を計測することができる。なお、成分分析を行わない場合、ガスクロマトグラフ40は不要である。
なお、本実施形態では、ペーパー状触媒配列体のペーパー状触媒それぞれの面に対し、原料ガスを垂直に供給する垂直供給方式であるが、この方式に限定されず、ペーパー状触媒配列体のペーパー状触媒それぞれの面に対し、原料ガスを平行に供給する平行供給方式でもよい。
また、本実施形態では、バイオガスを想定して、原料ガスとしてメタン、二酸化炭素の混合ガス(CH4/CO2=1)を用いているがあくまで本発明の説明のための例示であり、CH4/CO2の比率を変えてもよい。
原料ガスとして実際のバイオガス(CH4/CO2=1)を用いる場合には、必要に応じて、バイオガスにCH4あるいはCO2を添加して、原料ガス中のCH4/CO2の比率を変えてもよいし、炭素析出が起こらない範囲で、他の炭化水素燃料を添加してもよい。
原料ガスとして、実際のバイオガスを用いてもよいし、メタンに代えて各種炭化水素(例えば、メタン、エタン、プロパン、都市ガス、アルコール、バイオディーゼル等)、改質用ガスとして、二酸化炭素に代えて水蒸気を用いてもよい。なお、改質用ガスが水蒸気の場合には、水を予備加熱して所定の温度の水蒸気としてペーパー状触媒(または配列体)を備える改質部に供される。水蒸気改質の際のSteam/Carbon比(S/C)は、例えば、原料炭化水素がメタン、エタン、プロパン、都市ガスの場合には、S/C=1.0〜3.0程度、原料炭化水素がバイオディーゼルの場合には、S/C=2.0〜3.5程度、原料炭化水素がエタノール等のアルコールの場合には、S/C=0.5〜1.5程度である。
また、ガス流量、温度を初めとする改質条件も、原料ガスに含まれる炭化水素の種類やS/Cの比率等を考慮して、原料ガスの転化率が高く、副生成物(エチレン等)の発生が少ない好適な条件を適宜設定すればよい。
改質温度は、通常、500〜900℃程度であり、接触時間(W/F)は、0.001〜1.5g-cat h mol-1程度である。
本実施形態に係る改質反応装置11は、各種炭化水素改質用の改質反応装置として用いることができる。また、燃料電池システムにおけるプレ改質器としても好適に用いることができる。すなわち、改質反応装置11の後段に燃料電池システム(図示せず)を設け、改質反応装置11から排出される水素リッチの改質ガスを、燃料ガスとして燃料電池システムに供給して、発電を行うことができる。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、無機繊維を「Cf」、CeO2及びZrO2からなる酸化物(複合酸化物(固溶体)を形成していない場合も含む)を、「CeZrO」、ハイドロタルサイトを「HT」と表記する場合がある(図表含む)。
使用した原料
1.無機繊維
・非晶質シリカ-アルミナ(SiO2−Al23)繊維(SiO2: 52.0 %wt, Al2O3: 48.0 %wt、IBI WOOL(登録商標)、イビデン株式会社製)、平均繊維径:2〜5μm、平均繊維長約100μm

2.Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物
Ce前駆体化合物:硝酸セリウム・6水和物(Ce(NO3)3・6H2O)Chameleon Reagent, 98%
Zr前駆体化合物:オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物(ZrO(NO3)2・2H2O)Chameleon Reagent, 99%
Ni前駆体化合物:硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・6H2O Chameleon Reagent, 98%)

3.イオン性ポリマー
・PDADMAC(polydiallyldimethylammonium chloride, Sigma-Adrich LCC, USA)
カチオン性
分子量::約3×105
電荷密度:5.5 meq/g
・ポリアクリルアミド(富士化水工業株式会社製)
アニオン性
1.ペーパー状多孔質担体の作製
(1)実施例1
実施例1のペーパー状触媒(PSC)は以下の手順で製造した(図4参照)。
無機繊維として、非晶質シリカ-アルミナ繊維5.0gを、200〜250mLの脱イオン水に分散して無機繊維(非晶質シリカ-アルミナ繊維)を含むスラリーを得た。
得られたスラリーに対し、1.63gの硝酸ニッケル、2.5gのポリビニルピロリドン(PVP)を加え、次いで、CeO2前駆体として0.42gの硝酸セリウム・6水和物及びZrO2前駆体として0.39gのオキシ硝酸ジルコニウム2水和物を加えた。得られたスラリー(懸濁液)における仕込み量は重量比で、Ni:CeO2=2:1、Ni:ZrO2=2:1、CeO2:ZrO2=1:1に相当する。
次いで、得られたスラリーに1.0gのNaOHを加えて十分に攪拌しCe−Zr−Ni前駆体複合化合物(水酸化物)を析出(共沈)させた後に、さらに2.5gのNaBH4を含む40mLの水溶液を、1時間かけて滴下した。
次いでスターラーで攪拌しながら、カチオン性ポリマーであるPDADMACの水溶液(0.2wt%)を、15.0g加えて攪拌した(約3分間)。
次いで、アニオン性ポリマーであるポリアクリルアミドの水溶液(0.2wt%)を加えて16.25gを加え攪拌した(約3分間)。なお、アニオン性ポリマーを投入したときに、無機繊維等が凝集して玉状になる。
次に市販の10wt%パルプ水分散液2.5g(固形分:0.25g)を解繊してスラリーに加え、3分攪拌した。なお、パルプは、紙抄き後の湿潤状態の強度を確保し、ろ過用メッシュからのシート状成形体の採取を容易にする。また、パルプはシート状成形体の焼成中に焼失し、空隙(拡散パス)を生成する。
得られたスラリーを市販の抄紙装置(熊谷理機工業株式会社製)に注ぎ込み、ろ過用金属網(200メッシュ)に懸濁混合物を脱水により堆積させた。形成された堆積物をメッシュから剥がし取り、350kPaで3分プレスし、105℃で乾燥させることで、シート状成形体を得た。直径は約16cmであった。なお、この方法ではシート状成形体の抄造と、その表面へのCeO2-ZrO2複合酸化物担体の担持、及びCeO2-ZrO2複合酸化物担体へのNi粒子の担持と同時に行われる。
得られたシート状成形体を大気雰囲気下、600℃、1時間焼成することにより、実施例1のペーパー状触媒(Ni/CeZrO-PSC)を得た。厚みは約1mmであった。
(2)比較例A
NaBH4を含む水溶液の滴下を行わなかった以外は、実施例1と同様にして比較例Aのペーパー状触媒(Ni/CeZrO-PSC)を得た。厚みは約1mmであった。
(3)比較例1
Zr前駆体として、オキシ硝酸ジルコニウム2水和物(ZrO(NO3)2・2H2O)に代えて、第一稀元素工業製ZrO2ゾル(品名:ZSL00014、固形分濃度:20.5wt%、粒径D50 12nm)を2.5g(固形分:0.51g)を使用した以外は、実施例1と同様にして
比較例1のペーパー状触媒(Ni/CeZrO-PSC)を得た。厚みは約1mmであった。
(4)参考例1
参考例1のペーパー状触媒は、特許文献4(WO2015/050106)の実施例(実施例1)に準じる方法で行った。簡単に説明すると、実施例1と同様に、非晶質シリカ-アルミナ繊維を使用し、これにハイドロタルサイト(HT、平均粒子径:150nm、Mg/Al比:3)を混合し、これにPDADMACの水溶液、ZrO2ゾル、ポリアクリルアミドの水溶液を加えて攪拌し、抄紙装置にてシート状に成形し(直径約16cm)、これを大気雰囲気下、800℃、5時間焼成することにより、ペーパー状多孔質支持基体を得た。次いで、ペーパー状多孔質支持基体を所定の濃度(0.5M)の硝酸ニッケル水溶液中に1時間含浸した後、800℃、5時間焼成を行い、参考例1のペーパー状触媒を得た。厚みは約1mmであった。
表1に実施例1,2、比較例1及び参考例1のペーパー状触媒の主要な製造条件、物性をまとめて示す。なお、ペーパー状触媒に含まれるNiの量は、粉砕したペーパー状触媒を塩酸‐硝酸混合溶液(HCl:HNO3=3:1(体積比))に溶解させ測定サンプルを調製し、ICPプラズマ発光分析装置(Shimadzu製)を用いて測定した。
2.微細構造評価
実施例1,2、比較例1及び参考例1のペーパー状触媒のFE−SEM像をそれぞれ図5〜図8に示す。また、実施例1のペーパー状触媒のTEM像を図9に示す。図5〜図8に示される通り、幅5μm以下の繊維体が絡み合い、多孔質の支持基体が形成されていることが確認された。EDXにより、それぞれのペーパー状触媒についてAlについての元素分布を確認したところ、繊維体とAlの分布が一致し、FE−SEM像の繊維体が非晶質シリカ-アルミナ繊維であることが確認された。
実施例1,2のペーパー状触媒(図5、図6)のEDXにおいて、繊維体の上におけるZr,Ceの分布がほぼ一致しており、繊維体の表面にCeO2−ZrO2複合酸化物が存在することが確認された。また、Niの分布は、Zr,Ceの分布とほぼ一致していた。図9に示すTEM像(およびEDX)から無機繊維(Cf)の上にCeO2−ZrO2複合酸化物が担持され、該複合酸化物の表面や内部にNiが分布していることが確認された。
なお、表1に示す通り、実施例1,比較例Aのペーパー状触媒に含まれるNi量は、実施例1の方が多い。実施例1ではCe−Zr−Ni前駆体複合化合物をNaBH4処理によりNi成分の還元が行われ、水に溶解しない金属Niが生成する。また、共沈物としてCe−Zr−Ni前駆体複合化合物に取り込まれずに残存したスラリー中のNi2+もNaBH4によって還元され、前駆体複合化合物の表面に担持されることからNi担持量の向上に寄与していることが推測される。一方、比較例AではNaBH4処理が行われずにNiの還元が行われていないため、一部のNiがNi2+として流出していると推測される。
一方、比較例1のペーパー状触媒(図7)では、EDXにおいてZrとCeの分布はあまり重なり合っていないことから、CeO2−ZrO2複合酸化物は生成せず、CeO2、ZrO2がそれぞれ分離した状態であることが確認された。また、Niの分布は一部Ceに重なっていることが認められるが、Zrとの重なりはほとんど認められなかった。
また、ハイドロタルサイト(HT)を使用した参考例1のペーパー状触媒(図8)では、EDX(図示せず)においてNiとMgの分布がほぼ一致したことから、Niは(Mgを含む)ハイドロタルサイト由来の複合酸化物に担持されていることが確認された。なお、Zrの分布はNi,Mgとほとんど一致していなかった。
3.改質試験
図3の構成を有する本発明の第1の実施形態の改質反応装置(触媒活性評価装置)を使用して、メタンガスと炭酸ガスを混合した疑似バイオガスを用い、メタンドライリフォーミングとして、模擬バイオガスの改質に対する実施例1,2、比較例1及び参考例1のペーパー状触媒の触媒性能を評価した。
実施例1のペーパー状触媒(φ20mm)を2枚重ねて改質反応装置にセットし、窒素雰囲気下で750℃まで昇温した後に、750℃、GHSV3500h-1の条件で模擬バイオガス(CH4/CO2=1)を供給し、生成した改質ガスを自動ガスクロマトグラフで分析し、メタン転化率を求めた。比較例A、比較例1及び参考例1のペーパー状触媒についても同様に評価を行った。ただし、参考例1においては750℃で1時間、5%H2/N2で還元処理を行った。結果を図10に示す。
また、触媒活性評価後のそれぞれのペーパー状触媒についてFE−SEM/EDXで析出炭素の確認を行った。
図10からわかるように、実施例1のペーパー状触媒は、測定を開始したバイオガス供給直後から85%以上のメタン転化率を示し、時間と経過してもメタン転化率の減少は小さかった。一方、従来のZrO2ゾルを使用した比較例1のペーパー状触媒では測定開始直後では80%程度あったメタン転化率は徐々に低下し、15時間後には75%以下であった。
さらに測定後(15時間後)のペーパー状触媒をFE−SEM/EDXで評価したところ、実施例1のペーパー状触媒にはほとんど析出炭素が認められなかった。
また、比較例Aのペーパー状触媒の改質試験15時間後のメタン転化率についても、比較例1のペーパー状触媒のメタン転化率を上回り、また、ほとんど析出炭素が認められなかった。
また、参考例1のペーパー状触媒は、メタン転化率80%程度であり、実施例1のペーパー状触媒よりメタン転化率が小さかった。そして、測定後の参考例1のペーパー状触媒にはファイバー状の炭素の生成が認められた。
4.昇温酸化法による析出炭素の評価
改質試験(15時間)後の実施例1、参考例1のペーパー状触媒について、昇温酸化法(TPO)により、析出炭素を燃焼させたときに発生するCO2をモニタリングした。結果を図11に示す。
昇温酸化法(TPO)の条件は以下の通りである。
測定装置:マイクロトラック・ベル株式会社製、BELCAT A
試料量:0.1mg
キャリアガス:Air
昇温速度:5℃/min
図11に示されるように参考例1では450℃付近からCO2が発生したのに対し、実施例1では600℃程度からわずかにCO2が発生した。TPOにおいてシグナルの面積が発生したCO2量、すなわち析出炭素量に相当することから、実施例1のペーパー触媒における析出炭素量は、参考例1よりも著しく少ないことが確認された。
5.XRDによる評価(還元処理試料)
5%H2/N2,800℃、5時間の条件で還元処理した後の実施例1及び比較例1のペーパー触媒についてXRDによる評価を行った。結果を図12に示す。
実施例1および比較例1のいずれの回折パターンにも立方晶ジルコニア(Cubic ZrO2)の回折パターンが現れた。それぞれ、ペーパー触媒内に分散されたオキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2・2H2O)由来およびZrO2ゾル由来のジルコニウム含有酸化物粒子の回折パターンである。結晶径は実施例1が23.2nm、比較例1が26.2nmであった。実施例1のジルコニアの回折ピーク、比較例1のジルコニアの回折ピークのいずれも、立方晶ジルコニアに比較して低角度側にシフトしていた。これは、Zr4+よりイオン半径の大きいCe4+のジルコニア中への固溶を示唆している。この低角度側へのシフトが、実施例1の場合に、より顕著に見られた。これは、ZrO2をゾルとしてではなく、硝酸塩前駆体として導入することで、CeO2−ZrO2複合酸化物((Ce,Zr)O2固溶体)の生成が促進されることを意味している。
以上のように、実施例1,2のペーパー状触媒は、炭素析出が起こりやすい条件である750℃、GHSV3500h-1の条件での模擬バイオガスの改質において炭素の析出がほとんど起こらないことが認められた。
さらには、実施例1のペーパー状触媒では従来高い転化率を有するとされていたハイドロタルサイトを用いた参考例1のペーパー状触媒を上回るメタン転化率を示した。
6.CeO2/ZrO2比と改質活性の関係
実施例1と異なるCeO2/ZrO2比のペーパー触媒(実施例3,4)を製造し、CeO2−ZrO2のCeO2/ZrO2比と改質活性の関係を評価した。なお、Ni量(仕込み量)は、CeO2とZrO2の合計重量に対して一定とし、Ni:(CeO2+ZrO2)=1:1(重量比)とした。
(1)実施例3
CeO2:ZrO2=1:2(重量比)にした以外は、実施例1と同様にして実施例3のペーパー状触媒(Ni/CeZrO-PSC)を得た。
(2)実施例4
CeO2:ZrO2=2:1(重量比)にした以外は、実施例1と同様にして実施例4のペーパー状触媒(Ni/CeZrO-PSC)を得た。
実施例3,4について、上記「3.改質試験」と同条件で改質試験を行った。結果を表2に示す。なお、表2における「Ni量」はペーパー状触媒に含まれるNiの量をICP発光分析で測定した値である。
また、改質試験(15時間)後においてCeO2:ZrO2=1:1(重量比)の実施例1が最も改質活性が高いことが認められた。また、改質試験(15時間)後の実施例3のペーパー状触媒についてFE−SEM/EDXで析出炭素の有無を評価したところ、実施例3には析出炭素が認められなかった。一方、実施例4のペーパー状触媒には析出炭素が若干認められたが、参考例1と比較すると少なかった。
本発明のペーパー状触媒は、炭化水素の改質活性が高く、熱応力破壊に強く、所定の大きさ・形状に成型が容易で、触媒配列時の自由度が高いことに加え、副生成物である炭素の析出が抑制されるため、炭化水素の改質器のさらなる高性能化・小型化に寄与するなど工業的に有望である。
P1〜P9 ペーパー状触媒
P’ ペーパー状触媒配列体(積層型)
11 改質反応装置(第1の実施形態)
20 改質反応部
20a 改質部
21 反応管
21a 導入口
21b 排出口
22 電気炉
30 ガス供給部
30A 炭化水素供給部
30B 不活性ガス供給部
30C 二酸化炭素供給部
30a,30b,30c 流量制御手段
40 ガスクロマトグラフ
41 コールドトラップ

Claims (11)

  1. 無機繊維を不織布状に成形したペーパー状多孔質支持基体と、該ペーパー状多孔質支持基体の表面に存在するCeO2-ZrO2複合酸化物担体と、前記CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散されたNi系金属触媒粒子と、を含み、
    前記Ni系金属触媒粒子が、Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物を還元剤によって還元して生成したNiを含むことを特徴とする、炭化水素改質用のペーパー状触媒。
  2. 前記CeO2-ZrO2複合酸化物担体が、粒子状担体であって、当該粒子状担体が前記ペーパー状多孔質支持基体に分散して担持された請求項1に記載のペーパー状触媒。
  3. 前記CeO2-ZrO2複合酸化物担体における、CeO2/ZrO2重量比が、0.7〜1.8である請求項1または2に記載のペーパー状触媒。
  4. 前記Ni系金属触媒粒子が、Ni前駆体化合物をNaBH4によって還元して生成したNiを含む請求項1から3のいずれかに記載のペーパー状触媒。
  5. 前記ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維が、シリカ−アルミナ複合酸化物、CeO2-ZrO2複合酸化物から選択される1種以上を含む請求項1から4のいずれかに記載のペーパー状触媒。
  6. 前記ペーパー状多孔質支持基体を構成する無機繊維が、低結晶性繊維を含む請求項1から5のいずれかに記載のペーパー状触媒。
  7. ペーパー状触媒を複数枚配列したペーパー状触媒配列体であって、当該ペーパー状触媒配列体を構成するペーパー状触媒の少なくとも一部が、請求項1から6のいずれかに記載のペーパー状触媒であることを特徴とするペーパー状触媒配列体。
  8. 炭化水素を含む原料ガスと水蒸気又は二酸化炭素との混合ガスを、請求項1から6のいずれかに記載のペーパー状触媒、又は請求項7に記載のペーパー状触媒配列体に供給し、改質することを特徴とする炭化水素の改質方法。
  9. 前記炭化水素を含む原料ガスが、バイオガス又はバイオディーゼルである請求項8に記載の炭化水素の改質方法。
  10. 請求項1から6のいずれかに記載のペーパー状触媒の製造方法であって、
    無機繊維、Ce前駆体化合物、Zr前駆体化合物及びNi前駆体化合物を含むスラリーにアルカリを添加してCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を析出させた後に湿式抄紙法によって、無機繊維及びCe−Zr−Ni前駆体複合化合物を含むシート状成形体とする工程(1)と、
    得られたシート状成形体を熱処理し、ペーパー状多孔質支持基体と、その表面に固定化されたCeO2-ZrO2複合酸化物と、該CeO2-ZrO2複合酸化物担体の表面及び/又は内部に分散したNi系金属触媒粒子又はその前駆体粒子とを生成する工程(2)と、
    還元雰囲気で熱処理することによりNi系金属触媒粒子を活性化する工程(3)と、を含み、
    工程(1)において、前記Ce−Zr−Ni前駆体複合化合物を還元剤により処理し、Niの少なくとも一部を還元する工程を有する製造方法。
  11. 還元剤がNaBH4である請求項10に記載の製造方法。
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