JP6828557B2 - 低合金油井用継目無鋼管 - Google Patents

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Description

本発明は、低合金油井用継目無鋼管に関する。
油井用鋼管は、油井やガス井(以下、油井とガス井とを総じて油井と称する。)のケーシングやチュービングとして使用される。近年、石油資源エネルギーの枯渇への懸念から、油井の開発環境は過酷化している。採掘する油井の高深度化のため、758MPa(110ksi)級以上の降伏強度が求められており、さらに寒冷地での使用を考慮して、低温靱性への要求も高まりつつある。
油井用鋼管は、熱間製管後に焼入れ焼戻しによる熱処理を行って製造される。熱処理のパターンとして、オフライン熱処理とインライン熱処理とがある。オフライン熱処理は、熱間製管後に一度室温付近まで冷却した鋼管をオフラインの熱処理炉でAc変態点以上のオーステナイト温度域に再加熱して急冷する再加熱焼入れと、Ac変態点以下での焼戻しと含む。インライン熱処理は、熱間製管後に室温まで冷却せずに、熱間圧延後の鋼管の温度を利用してAr変態点以上の温度から急冷する直接焼入れと、Ac変態点以下での焼戻しと含む。
オフライン熱処理された油井用鋼管は、再加熱時の逆変態によってオーステナイト粒が微細化されるため、インライン熱処理された油井用鋼管と比較して、強度及び靱性の安定性、並びに耐食性に優れている。しかし、オフライン熱処理はリードタイムが長く生産性に問題があるため、インライン熱処理が採用されるケースも多い。特に、硫化水素を含まない環境で使用される油井用鋼管は、インライン熱処理で製造されるのが一般的である。
インライン熱処理では結晶粒の微細化が困難なため、高強度と高靱性とを両立させるためには、介在物の低減が有効である。具体的には、(1)脱硫処理による低S化、及び(2)CaSi添加によるアルミナクラスターの生成抑制等が行われる。
(1)に関連した技術として、特許第3385966号公報には、組織を微細化処理することなく、強度と優れた靱性が得られる鋼材の製造方法が記載されている。同文献には、具体的には、MnSやTiN等の介在物を低減することが記載されている。
(2)に関連した技術として、特開2004−52076号公報には、Al脱酸又はAl−Si脱酸した溶鋼中に希土類元素(REM)を添加することによって、酸化物系介在物の形態を制御して、アルミナクラスターの生成を抑制できることが記載されている。
また、特許第5765497号公報には、介在物の形態を制御して、溶接部の品質を向上させた電縫鋼管が記載されている。具体的には、鋼板の製錬工程において、Caを添加する前にCe及びLaの少なくとも一方を添加することが記載されている。これによって、介在物を硬質かつ微細なものにすることができ、アップセット時に介在物が延伸されることによる靱性の低下を抑制できると記載されている。
特許第3385966号公報 特開2004−52076号公報 特許第5765497号公報
低硫化のための脱硫処理(例えば、S含有量を20ppm以下にするための脱硫処理)では、製錬工程で溶鋼にCaOを投入する。しかし、CaOは高価であり、コスト増加や生産性低下の原因となる。そのため、S含有量の規制を緩和して脱硫工程を減らしても、必要な強度と靱性とを確保できることが好ましい。
本発明の目的は、S含有量の規制を緩和しても、必要な強度と靱性と有する低合金油井用継目無鋼管を提供することである。
本発明の一実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、化学組成が、質量%で、C:0.20〜0.50%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.05〜1.0%、P:0.030%以下、S:0.0025〜0.0060%、Al:0.005〜0.10%、Cr:0.1〜1.2%、Mo:0.25〜1.0%、Ti:0.002〜0.05%、N:0.01%以下、O:0.0030%以下、Ca:0.0010〜0.0030%、REM:0.0010〜0.0040%、V:0〜0.30%、Nb:0〜0.10%、Cu:0〜1.0%、Ni:0〜1.0%、B:0〜0.0040%、残部:Fe及び不純物であり、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径が2.0μm以下、アスペクト比が2.0以下である。
本発明によれば、S含有量の規制を緩和しても、必要な強度と靱性と有する低合金油井用継目無鋼管が得られる。
図1は、硫化物系介在物の無害化のメカニズムを説明するための図である。 図2は、硫化物系介在物の無害化のメカニズムを説明するための図である。 図3は、硫化物系介在物の無害化のメカニズムを説明するための図である。 図4は、複合介在物の顕微鏡写真である。 図5は、硫化物系介在物の顕微鏡写真である。
本発明者らは、上記課題を解決するための手段を検討した。その結果、精錬工程において、溶鋼にREMを添加し、さらにCaを添加することで、以下の(A)〜(C)の効果が得られることを知見した。
(A)Alは、FeO、FeO・Al等の低融点の介在物がバインダーとして作用することで結合し、アルミナクラスターを形成する(図1を参照)。粗大なアルミナクラスターは、鋼の靱性を低下させる。REMを添加することで、FeOが還元されて、アルミナクラスターはAlとX及び/又はXOS(XはREM)とになる(図2を参照)。これによって、粗大なアルミナクラスターの生成を抑制することができる。
(B)このとき、MnS等の硫化物は、生成した非延伸性のX及び/又はXOSを核として晶出し、複合介在物となる(図3を参照)。X及び/又はXOSは、硬質かつ微細な酸化物であり、複合するMnS等の軟質な硫化物系介在物の延伸も抑制する。これによって、硫化物系介在物を無害化することができる。
(C)REMを単独で添加した場合、鋳造の際ノズルが閉塞しやすくなる。REM添加後、さらにCaを添加することで、ノズルの閉塞を抑制することができる。Caはまた、介在物を球状化する作用もある。そのため、MnSのさらなる改質にも寄与する。
REM及びCaの添加量を適正に制御することで、特に上記(B)の効果により、S含有量の規制を緩和して脱硫工程を減らしても、鋼中Sの多くは複合介在物として生成されることで無害化される。そのため、靱性に影響する有害Sの量を低硫鋼と同等にすることができる。これによって、コストの削減や生産性の向上が図れる。
以上の知見に基づいて、本発明は完成された。以下、本発明の一実施形態による低合金油井用継目無鋼管を詳述する。
[化学組成]
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、以下に説明する化学組成を有する。以下の説明において、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。
C:0.20〜0.50%
炭素(C)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。C含有量が0.20%未満では、この効果が十分に得られない。一方、C含有量が0.50%を超えると、鋼の焼割れ感受性が高くなる。したがって、C含有量は、0.20〜0.50%である。C含有量の下限は、好ましくは0.22%である。C含有量の上限は、好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。
Si:0.05〜0.50%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が0.05%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Si含有量が0.50%を超えると、鋼の靱性が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜0.50%である。Si含有量の下限は、好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.20%である。Si含有量の上限は、好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
Mn:0.05〜1.0%
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する。Mn含有量が0.05%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が1.0%を超えると、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Mn含有量は0.05〜1.0%である。Mn含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.2%である。Mn含有量の上限は、好ましくは0.8%であり、さらに好ましくは0.6%である。
P:0.030%以下
燐(P)は不純物である。Pは粒界に偏析して、鋼の靱性を低下させる。したがって、P含有量は0.030%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量は、好ましくは0.020%以下である。
S:0.0025〜0.0060%
硫黄(S)は不純物である。Sは、Mn等と結合して軟質な硫化物系介在物や酸硫化物系介在物を形成し、鋼の靱性を低下させる。一方、生産性やコストの観点からは、脱硫工程を減らすことが好ましい。本実施形態では、S含有量を0.0025〜0.0060%とする。S含有量の下限は、好ましくは0.0030%である。S含有量の上限は、好ましくは0.0055%であり、さらに好ましくは0.0050%である。
Al:0.005〜0.10%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有量が0.005%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Al含有量が0.10%を超えると、介在物が粗大化して鋼の靱性が低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.10%である。Al含有量の下限は、好ましくは0.01%である。Al含有量の上限は、好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.06%である。本明細書におけるAl含有量は、酸可溶Al(いわゆるSol.Al)の含有量を意味する。
Cr:0.1〜1.2%
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する。Cr含有量が0.1%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が1.2%を超えると、鋼の靱性が低下する。したがって、Cr含有量は0.1〜1.2%である。Cr含有量の下限は、好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.4%である。Cr含有量の上限は、好ましくは1.0%であり、さらに好ましくは0.8%である。
Mo:0.25〜1.0%
モリブデン(Mo)は、変態強化と固溶強化とによって鋼の強度を向上させる。Mo含有量が0.25%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が1.0%を超えると、鋼の靱性が低下する。したがって、Mo含有量は0.25〜1.0%である。Mo含有量の下限は、好ましくは0.27%であり、さらに好ましくは0.3%である。Mo含有量の上限は、好ましくは0.8%であり、さらに好ましくは0.6%である。
Ti:0.002〜0.05%
チタン(Ti)は、ビレットの割れを抑制する。Ti含有量が0.002%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Ti含有量が0.05%を超えると、炭化物(TiC)を生成して鋼の靱性を低下させる。したがって、Ti含有量は0.002〜0.05%である。Ti含有量の下限は、好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Ti含有量の上限は、好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.02%である。
N:0.01%以下
窒素(N)は不純物である。Nは窒化物系介在物を形成し、鋼の靱性を低下させる。したがって、N含有量は0.01%以下である。N含有量はなるべく少ない方が好ましい。N含有量の上限は、好ましくは0.008%であり、さらに好ましくは0.006%である。コストの観点から、N含有量の下限は、好ましくは0.001%である。
O:0.0030%以下
酸素(O)は不純物である。Oは酸化物を形成して鋼の靱性を低下させる。したがって、O含有量は0.0030%以下である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。O含有量は、好ましくは0.0025%以下であり、さらに好ましくは0.0020%以下である。
Ca:0.0010〜0.0030%
カルシウム(Ca)は、鋳造時のノズルの閉塞を抑制する。Caはまた、介在物を球状化することで、靱性の向上にも寄与する。Ca含有量が0.0010%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、Ca含有量が0.0030%を超えると、粗大な酸化物系介在物が生成され、鋼の靱性が低下する。したがって、Ca含有量は0.0010〜0.0030%である。Ca含有量の下限は、好ましくは0.0015%であり、さらに好ましくは0.0020%である。Ca含有量の上限は、好ましくは0.0028%である。
REM:0.0010〜0.0040%
希土類元素(REM)は、FeOを還元して、アルミナクラスターの生成を抑制する。REMはまた、非延伸性の酸化物及び/又は酸硫化物を形成し、有害Sをトラップして無害化する。REM含有量が0.0010%未満では、これらの効果が十分に得られない。一方、REM含有量が0.0040%を超えると、粗大な酸化物系介在物が生成され、鋼の靱性が低下する。また、溶鋼の流動性が低下し、鋳造時にノズルが閉塞しやすくなる。したがって、REM含有量は0.0010〜0.0040%である。REM含有量の下限は、好ましくは0.0012%であり、さらに好ましくは0.0015%である。REM含有量の上限は、好ましくは0.0035%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
なお、REMとは、ランタノイドの15元素にY及びScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素のうちの1種以上を含有させることができる。REM含有量はこれらの元素の含有量の合計を意味する。REMのなかでも、La及びCeが好ましい。
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここでいう不純物は、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップから混入される元素、あるいは製造過程の環境等から混入される元素をいう。
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管の化学組成は、Feの一部に代えて、以下に説明する元素を含有してもよい。以下に説明する元素は、すべて選択元素である。すなわち、本実施形態による低合金油井用継目無鋼管の化学組成は、以下の元素の一部又は全部を含有していなくてもよい。
V :0〜0.30%
Nb:0〜0.10%
バナジウム(V)及びニオブ(Nb)は、炭化物を形成し、鋼の強度を高める。これらの元素が少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、これらの元素の含有量が過剰になると、靱性が低下する。したがって、V含有量は0〜0.30%であり、Nb含有量は0〜0.10%である。V含有量の下限は、好ましくは0.01%である。V含有量の上限は、好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.15%である。Nb含有量の下限は、好ましくは0.002%である。Nb含有量の上限は、好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.05%である。
Cu:0〜1.0%
Ni:0〜1.0%
B:0〜0.0040%以下
銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びボロン(B)は、鋼の焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する。これらの元素が少しでも含有されていれば、この効果が得られる。一方、これらの元素の含有量が過剰になると、靱性が低下する。したがって、Cu及びNiの各々の含有量は0〜1.0%であり、B含有量は0〜0.0040%である。Cu及びNiの各々の含有量の下限は、好ましくは0.01%である。Cu及びNiの各々の含有量の上限は、好ましくは0.5%であり、さらに好ましくは0.2%である。B含有量の下限は、好ましくは0.0001%である。B含有量の上限は、好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管の化学組成は、好ましくは、下記の式(1)を満たす。
(Ca/O+Ca/S+0.285×REM/O+0.285×REM/S)×(Al/Ca)>20 式(1)
式(1)のCa、O、S、REM、Alには、各元素の含有量が質量%で代入される。
式(1)のうち、(Ca/O+Ca/S+0.285×REM/O+0.285×REM/S)は、Ca及びREMが、OやSをトラップする能力の指標である。係数0.285は、CaとLaとの原子量の比0.289、CaとCeとの原子量の比0.286に近い数値で、計算の便宜のために丸めたものである。また、(Al/Ca)は、CaOとAlの組成比であり、介在物の融点の指標である。式(1)の左辺(Ca/O+Ca/S+0.285×REM/O+0.285×REM/S)×(Al/Ca)が小さければ、介在物が延伸されやすくなる。
式(1)の左辺を20よりも大きくすれば、介在物の延伸が抑制されやすくなり、介在物のアスペクト比をより安定して小さくすることができる。式(1)の左辺は、より好ましくは25よりも大きく、さらに好ましくは30よりも大きい。
[介在物]
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径が2.0μm以下、アスペクト比が2.0以下である。
硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径及びアスペクト比は、具体的には次のように測定する。低合金油井用継目無鋼管から、観察面が圧延方向と平行になるように観察用試験片を採取する。観察面を研磨し、粒子解析機能を有する走査電子顕微鏡(SEM)によって、倍率500倍、1視野の面積を0.236mm×0.184mmとして100視野(合計4.35mm)を観察する。測定の際の加速電圧は15kVとする。介在物の観察には、ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、例えば、日本電子株式会社製「JSM−7800F」)を用いることができる。
100視野で観察されたデータから、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物だけを抽出する。具体的には、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)によって組成分析を行い、S含有量が10質量%以上のものを抽出する。抽出した介在物の大きさを、画像処理によって算出する。具体的は、楕円近似によって介在物の長径及び短径を測定し、長径及び短径から算出した面積に基づいて円相当径を求める。長径/短径をその介在物のアスペクト比とする。このとき、円相当径が0.5〜100μmのものを計算に使用し、この範囲外のものは無視する。データ収集及び解析には例えば、AMETEK社製「GENESIS Particle Analysis,Version 5.10」を用いることができる。
これらの介在物の円相当径の平均値を、低合金油井用継目無鋼管の硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径とする。同様に、これらの介在物のアスペクト比の平均値を、低合金油井用継目無鋼管の硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物のアスペクト比とする。
硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径が2.0μmよりも大きい場合、又は硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物のアスペクト比が2.0よりも大きい場合、優れた靱性を得ることができない。硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径は、好ましくは1.8μm以下であり、より好ましくは1.7μm以下である。硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物のアスペクト比は、好ましくは1.95以下であり、さらに好ましくは1.9以下である。
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、好ましくは、焼戻しマルテンサイトを主相とする組織を有する。本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、より好ましくは、焼戻しマルテンサイトの体積分率が95%以上である。
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、これに限定されないが、旧オーステナイト粒の大きさが、ASTM E112−13に準拠した結晶粒度番号で5.5以下の場合に特に好適である。結晶粒度番号が5.5以下の粗粒の組織の場合、細粒化による靱性向上の効果が十分に得られず、介在物の制御による靱性の向上がより重要になるためである。結晶粒度番号が5.0以下の場合、さらに好適である。結晶粒度番号の下限は、好ましくは4.0である。
旧オーステナイト粒の結晶粒度番号は、圧延方向と垂直な断面が被検面になるように、各鋼管から試験片を切り出して樹脂に埋め込み、ピクリン酸飽和水溶液で腐食するBechet-Beaujard法によって旧オーステナイト粒界を現出させ、ASTM E112−13に準じて測定する。
旧オーステナイト粒の結晶粒度番号は、焼入れ後、焼戻し前の鋼材(いわゆる焼入れまま材)を用いて測定してもよいし、焼戻しされた鋼材を用いて測定してもよい。いずれの鋼材を用いても、旧オーステナイト粒の結晶粒度番号はほとんど変わらない。
なお、焼戻し後の鋼材に対しては、電子線後方散乱回折法(EBSD)等の方法を用いて、結晶の方位関係から旧オーステナイト結晶粒のASTM粒度番号を求めることもできる。この場合、焼戻し後の継目無鋼管の金属組織をEBSDによって、次のように測定する。焼戻し後の継目無鋼管の横断面(圧延方向と垂直な断面)の肉厚中央位置からサンプルを採取する。採取したサンプルを用いて500×500μmの観察範囲でEBSDによって結晶方位解析を行い、Misorientation Angleが15〜51°の範囲にある粒同士の境界を旧オーステナイト粒界と定義して、線描画させ、その描画図を元に、ASTM E112−13に準拠して結晶粒度番号を求める。
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、好ましくは758MPa(110ksi)以上の降伏強度を有する。低合金油井用継目無鋼管の降伏強度は、より好ましくは827MPa(120ksi)以上であり、さらに好ましくは896MPa(130ksi)以上である。
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、優れた低温靱性を有する。本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、好ましくは、ASTM E23に準拠した0℃でのシャルピー衝撃試験により得られる吸収エネルギーが55J以上である。低合金油井用継目無鋼管の吸収エネルギーは、より好ましくは65J以上であり、さらに好ましくは75J以上である。
[製造方法]
以下、本実施形態による低合金油井用継目無鋼管の製造方法の一例を説明する。この製造方法はあくまでも一例であり、本実施形態による低合金油井用継目無鋼管の製造方法は、これに限定されない。
精錬工程において、REM及びCaを除く溶鋼の化学組成を、上述した範囲に調整する。その後、REMの少なくとも一つの元素を添加し、その後、Caを添加する。Caを先に添加すると、介在物としてカルシウムアルミネート(mCaO・nAl、m及びnは自然数)が形成され、REMを含有する微細な介在物(XCaAlOS、XはREM)として分散させることができなくなる。
溶鋼を鋳造してビレットにする。あるいは、スラブ、ブルーム、インゴット等を製造し、これらを熱間加工によってビレットにしてもよい。
製造したビレットを加熱して炭化物を十分に固溶させ、結晶粒の粗大化を防止する。加熱温度は例えば、1000〜1300℃である。
加熱したビレットを熱間加工して、所定の形状・寸法の素管にする。熱間加工は例えば、マンネスマン−マンドレルミル方式、マンネスマン−プラグミル方式である。熱間加工の最終仕上げ温度は、結晶粒の粗大化防止等を考慮して、900〜1100℃にすることが好ましい。
製造された素管に、焼入れ焼戻しの熱処理を行う。より具体的には、素管をオーステナイト温度域から急冷する焼入れと、Ac変態点以下の温度に加熱して所定時間保持する焼戻しとを行う。以上の工程によって、低合金油井用継目無鋼管が製造される。
本実施形態による低合金油井用継目無鋼管は、これに限定されないが、インライン熱処理で製造する場合に特に好適である。インライン熱処理では、オフライン熱処理と比較して、結晶粒が微細化されにくく、細粒化による靱性向上の効果が十分に得られない。そのため、インライン熱処理では、介在物の制御による靱性の向上がより重要になる。
以上、本実施形態による低合金油井用継目無鋼管を説明した。本実施形態によれば、S含有量の規制を緩和しても、必要な強度と靱性と有する低合金油井用継目無鋼管が得られる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
表1に示す化学組成を有する鋼を真空溶解炉で溶解し、さらにRH脱ガス処理を施した後、連続鋳造法によって径が360mmのビレットを製造した。REMを非添加とした鋼D1、鋼D2、及び鋼D5を除き、精錬工程においてREM及びCaをこの順番で投入した。なお、鋼D1は比較のための低硫鋼であり、CaOを投入してS含有量を20ppm未満に低減したものである。
製造されたビレットを熱間圧延によって外径346.08mm、肉厚15.88mmの素管にした。その後、表2に示す温度で、熱間製管後に直ちに焼入れ焼戻し処理を行うインライン熱処理を行い、継目無鋼管を製造した。なお、表2において、Qは焼入れ温度であり、Tは焼戻し温度である。
[ノズル閉塞有無]
連続鋳造時、鋳型への流入量と鋳型からの流出量の差が所定の範囲内となるように、スライディングノズルの開口面積を自動制御した。スライディングノズルの開口面積の経時変化を調べ、開口面積がゼロになったときにノズル閉塞が発生したと判断した。結果を表2の「ノズル閉塞有無」の欄に示す。同欄の「○」はノズル閉塞が発生しなかったことを示し、「×」はノズル閉塞が発生したことを示す。
[結晶粒度番号]
焼入れ後、焼戻し前の各継目無鋼管に対して、実施形態で説明したBechet−Beaujard法を適用して旧オーステナイト粒を現出させ、ASTM E112−13に準じて粒度番号を測定した。測定結果を表2の「旧γ粒度」の欄に示す。
[介在物測定]
焼戻し後の継目無鋼管を切断し、介在物を観察した。実施例で説明した方法によって、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径及びアスペクト比を測定した。介在物の観察にはショットキー電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社製「JSM−7800F」)を用い、データ収集及び解析にはAMETEK社製「GENESIS Particle Analysis,Version 5.10」を用いた。代表的介在物の種類、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径及びアスペクト比を、表2の該当する欄にそれぞれ示す。
[引張試験]
焼戻し後の継目無鋼管から、試験片の長手方向が継目無鋼管の圧延方向と平行になるように、ASTM E8に準拠した弧状引張試験(平行部幅38.1mm、G.L.50.8mm)を採取した。この試験片を用いて、常温(25℃)、大気中で引張試験を実施した。引張試験で得られた0.6%伸び時の応力を、継目無鋼管の降伏強度とし、一様伸び中の最大応力を継目無鋼管の引張強度とした。測定した降伏強度及び引張強度を表2の「YS」及び「TS」の欄にそれぞれ示す。
[シャルピー衝撃試験]
焼戻し後の継目無鋼管から、試験片の長さ方向が継目無鋼管の圧延方向と垂直になるようにASTM E23に準拠したフルサイズ試験片(寸法:幅10mm×高さ10mm×長さ55mm)を採取した。この試験片を用いて、0℃において3本/セットでシャルピー衝撃試験を実施して吸収エネルギーを測定した。結果を表2に示す。3本の試験片の平均吸収エネルギー(以下、単に「平均吸収エネルギー」と呼ぶ。)が55J以上であれば、靱性に優れると評価した。
[試験結果]
表2に示すとおり、鋼A1〜A10、鋼B1〜B10、及び鋼C1〜C4から製造された継目無鋼管はいずれも、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径が2.0μm以下であり、アスペクト比が2.0以下であった。これらの継目無鋼管の平均吸収エネルギーは、いずれも55J以上であり、低硫鋼(鋼D1)の平均吸収エネルギーと同程度の値の値が得られた。
鋼D2〜D5から製造された継目無鋼管は、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径が2.0μmよりも大きく、また、アスペクト比も2.0よりも大きかった。これらの鋼から製造された継目無鋼管は、平均吸収エネルギーが55J未満であった。
鋼D2は、REMを含有せず、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物が改質されなかったと考えられる。鋼D3は、Ca含有量が少なすぎ、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の改質が不十分であったと考えられる。鋼D4は、REM含有量が多すぎ、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物が粗大化したと考えられる。鋼D5は、S含有量が多すぎ、さらにCa含有量及びREM含有量が少なすぎたため、延伸された硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の影響によって靱性が低下したと考えられる。
また、鋼D4では、ノズルの閉塞も観測された。これは、REM含有量が多すぎたため、REMを含有する酸硫化物が粗大化し、溶鋼中の流動性が悪化したためと推察される。
鋼D6から製造された継目無鋼管は、硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物のアスペクト比が2.0よりも大きかった。鋼D6から製造された継目無鋼管は、平均吸収エネルギーが55J未満であった。また、鋼D6では、ノズルの閉塞も観測された。これは、鋼D6のO含有量が多すぎたためと考えられる。
図4は、鋼A1〜A10、鋼B1〜B10、及び鋼C1〜C4で観測された、複合型介在物の顕微鏡写真の一例である。図4に示すように、CeOSとAlの複合介在物に、Mn(Ca,S)が付着している。
図5は、鋼D2〜D5で観測された、硫化物系介在物(MnS)の顕微鏡写真の一例である。図5に示すように、この介在物は、圧延方向(図5の左右方向)に延伸された形状を有している。
図4と図5との比較から、硫化物系介在物を非延伸性のX及び/又はXOSに付着させることで、硫化物系介在物の延伸を抑制できることがわかる。これによって、硫化物系介在物を無害化することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明した。上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。

Claims (3)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.20〜0.50%、
    Si:0.05〜0.50%、
    Mn:0.05〜1.0%、
    P :0.030%以下、
    S :0.0038〜0.0060%、
    Al:0.005〜0.10%、
    Cr:0.1〜1.2%、
    Mo:0.25〜1.0%、
    Ti:0.002〜0.05%、
    N :0.01%以下、
    O :0.0030%以下、
    Ca:0.0010〜0.0030%、
    REM:0.0010〜0.0040%、
    V :0〜0.30%、
    Nb:0〜0.10%、
    Cu:0〜1.0%、
    Ni:0〜1.0%、
    B :0〜0.0040%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    硫化物系介在物及び酸硫化物系介在物の平均粒径が2.0μm以下、アスペクト比が2.0以下である、低合金油井用継目無鋼管。
  2. 請求項1に記載の低合金油井用継目無鋼管であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    V :0.01〜0.30%、及び
    Nb:0.002〜0.10%、
    からなる群から選択される1種又は2種を含有する、低合金油井用継目無鋼管。
  3. 請求項1又は2に記載の低合金油井用継目無鋼管であって、
    前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Ni:0.01〜1.0%、及び
    B :0.0001〜0.0040%、
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、低合金油井用継目無鋼管。
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