以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1(a)〜図2(b)は、第1の実施形態に係る引き出しの動作機構を有する引き出し付きキャビネットを例示する断面図である。
引き出し付きキャビネット10は、キャビネット(キャビネット本体)100と、引き出し200と、レール300と、動作機構(動作装置)20と、を有する。
図1(a)は、引き出し200がキャビネットに収納された状態を示す。図1(b)は、図1(a)のうち動作機構20の近傍を拡大して表す。
図2(a)は、引き出し200がキャビネットから引き出された状態を示す。図2(b)は、図2(a)のうち動作機構20の近傍を拡大して表す。
キャビネット100は、前方に向けて開放された収納領域101を有する。例えば、キャビネット100は箱状であり、前方に向けて設けられた開口103を有する。
引き出し200は、前板201と、収納部202と、前板201に取り付けられた把手203と、を有する。引き出し200(収納部202)は、開口103からキャビネット100内の収納領域(空間)101に収納される。
なお、本願明細書において、「前方」とは、引き出し200がキャビネット100から引き出される方向をいう。また、「後方」とは、引き出し200がキャビネット100に収納される方向をいう。
レール300は、収納領域101と前方領域102との間において、引き出し200を前後方向に移動させる。すなわち、引き出し200は、レール300によって摺動可能に支持され、収納領域101及び前方領域102内を移動することができる。なお、前方領域102は、収納領域101の前方に位置する空間であり、キャビネット100の外側である。
レール300は、外レール310(固定レール)と内レール320(可動レール)とを有する。外レール310及び内レール320は、それぞれ前後方向に延びている。外レール310は、キャビネット100の内面に固定され、内レール320は、引き出し200の側面に固定される。内レール320は、外レール310に対して前後方向に摺動可能に取り付けられる。これにより、引き出し200は、内レール320と共に、外レール310及びキャビネット100に対して前後方向に移動可能である。
例えば、引き出し200は、後方(閉方向)へ動かされることで、前方領域102から収納領域101に向かって移動し、キャビネット100(収納領域101)に収納される。逆に、引き出し200は、前方(開方向)へ動かされることで、収納領域101から前方領域102に向かって移動し、キャビネット100(収納領域101)から引き出される。
なお、外レール310と内レール320との間に、外レール310に対して前後方向に摺動可能な中レール(可動レール)が設けられてもよい。また、可動レールを外側に設け、固定レールを内側に設けてもよい。
図1(a)では、引き出し200が収納領域101に収納され、全閉位置Paに位置する全閉状態を示している。全閉位置とは、引き出し200が閉まり切ったときのキャビネット100に対する位置である。すなわち、全閉状態において、引き出し200は、キャビネット100に対する可動範囲のうち最も後方に位置する。例えば、全閉状態において、前板201は、キャビネット100に接する。
図2(a)では、引き出し200が収納領域101から引き出され、全開位置Pgに位置する全開状態を示している。全開位置とは、引き出し200が開き切ったときのキャビネット100に対する位置である。すなわち、全開状態において、引き出し200は、キャビネット100に対する可動範囲のうち最も前方に位置する。
なお、図面中では、引き出し200のキャビネット100に対する位置を、前板201の位置を基準として示している。ただし、実施形態において引き出し200のキャビネット100に対する位置の基準は、任意である。
動作機構20は、第1付勢手段(付勢部)410と、第2付勢手段(付勢部)420と、を有する。
第1付勢手段410は、引き出し200を閉方向へ付勢するものである。また、第2付勢手段420は、引き出し200が開方向へ動く際に、引き出し200を開方向へ付勢するものである。
例えば、図1(b)に示すように、この例では、第1付勢手段410に第1ばね412が用いられている。第1ばね412は、例えば引張コイルばねである。引張コイルばねのばね力(弾性力)は、自然長から伸縮した長さに比例する。また、動作機構20は、第1ケース411と、第1トリガ(支持部材)413と、第1ピン414と、を有する。
第1ケース411は、キャビネット100に対して固定される。第1ばね412および第1トリガ413は、第1ケース411に設けられる。
第1ばね412の端部e1(後端、一端)は、第1ケース411に固定される。すなわち、第1ばね412の端部e1の位置は、間接的にキャビネット100に固定される。
第1トリガ413は、例えばフック状の部材であり、第1ばね412の端部e2(前端、他端)に取り付けられる。第1トリガ413は、第1ケース411内において前後方向に移動可能である。なお、本願明細書において「ばねの端部」という範囲は、ばねの端の近傍の領域(例えば、ばねの端からの距離が10mm程度以下の領域)を含む。
第1ピン414は、引き出し200に固定されており、第1トリガ413と係合可能である。第1ピン414と第1トリガ413とが係合した状態では、引き出し200及び第1ピン414が前方へ動くとき、第1トリガ413も前方へ移動し、第1ばね412が伸ばされる。第1ピン414と第1トリガ413とが係合した状態では、引き出し200及び第1ピン414が後方へ動くとき、第1トリガ413も後方へ移動し、第1ばね412は縮まる。
このように、前後方向に移動する引き出し200に連動して、第1ばね412が前後方向に伸び縮みする。第1ばね412が伸びることで、第1ばね412には、ばね力が蓄積される。すなわち、弾性エネルギーが蓄積される。第1ピン414と第1トリガ413とが係合した状態では、第1ばね412のばね力(弾性力)が、第1トリガ413及び第1ピン414を介して引き出し200に伝達される。これにより、第1ばね412は、引き出し200を後方へ付勢し、全閉位置Paへ引き入れる。
また、第1ケース411には、ダンパ416が設けられる。ダンパ416は、引き出し200が全閉位置Paへ移動する際に、引き出し200の速度を減衰させる。第1付勢手段410とダンパ416とによって、引き出し200をゆっくり確実に閉めることができる(オートクローズ)。なお、ダンパ416には、スプリング式やオイル式など任意の方式を用いることができる。
また、例えば図1(b)に示すように、この例では、第2付勢手段420に第2ばね422が用いられている。第2ばね422は、定荷重ばね(定トルクばね、定出力ばね)である。定荷重ばねのばね力は、ばねが伸縮した長さによらず略一定である。なお、第2付勢手段420には、引張コイルばねを用いてもよい。また、動作機構20は、第2ケース421と、第2トリガ(支持部材)423と、第2ピン424と、を有する。
第2ケース421は、キャビネット100に対して固定される。第2ばね422および第2トリガ423は、第2ケース421に設けられる。
第2ばね422の端部e3(前端)は、第2ケース421に固定される。すなわち、第2ばね422の端部e3の位置は、間接的にキャビネット100に固定される。
第2トリガ423は、例えばフック状の部材であり、第2ばね422の端部e4(後端)に取り付けられる。第2トリガ423は、第2ケース421内において前後方向に移動可能である。
第2ピン424は、引き出し200に固定されており、第2トリガ423と係合可能である。第2ピン424と第2トリガ423とが係合した状態では、引き出し200及び第2ピン424が前方へ動くとき、第2トリガ423も前方へ移動し、第2ばね422は縮まる。第2ピン424と第2トリガ423とが係合した状態では、引き出し200及び第2ピン424が後方へ動くとき、第2トリガ423も後方へ移動し、第2ばね422が伸ばされる。
このように、前後方向に移動する引き出し200に連動して、第2ばね424が前後方向に伸び縮みする。第2ばね422が伸びることで、第2ばね422には、ばね力が蓄積される。第2ピン424と第2トリガ423とが係合した状態では、第2ばね422のばね力(弾性力)が、第2トリガ423及び第2ピン424を介して引き出し200に伝達される。これにより、第2ばね422は、引き出し200を前方へ付勢する。
次に、図3(a)〜図3(f)、図4(a)〜図4(h)及び図5を参照して、引き出し200を開閉する際の動作機構20の動作について説明する。
図3(a)〜図3(f)及び図4(a)〜図4(h)は、第1の実施形態に係る引き出しの動作機構を有する引き出し付きキャビネットを例示する断面図である。
図3(a)は、全閉状態を表し、図4(g)は、全開状態を表す。図3(c)、図3(e)、図4(a)、図4(c)、図4(e)は、それぞれ、全閉状態と全開状態との間の状態を表す。
また、図3(b)、図3(d)、図3(f)、図4(b)、図4(d)、図4(f)、図4(h)は、それぞれ、図3(a)、図3(c)、図3(e)、図4(a)、図4(c)、図4(e)、図4(g)に示す動作機構20の近傍を拡大して表す。
図5は、引き出しの移動距離と、引き出しを開くために必要な力と、の関係を例示するグラフ図である。
図5の縦軸は、引き出し200を開くために必要な前向きの力Fを表す。図5の横軸は、引き出しの移動距離(X)、言い換えれば、全閉状態から引き出し200が引き出された距離を表す。移動距離(X)は、例えば、前板201とキャビネット100との間の距離に相当する(例えば図2(a)を参照)。なお、図5は、簡単のため、摩擦力などを省略した模式的なグラフである。
まず、引き出し200を全閉状態から開く(引き出す)場合について説明する。
図3(a)及び図3(b)においては、引き出し200は全閉状態である。すなわち、引き出し200は、全閉位置Paに位置し、移動距離(X)はゼロである。このとき、図3(b)に示すように、第1ピン414と第1トリガ413とは係合している。また、第1ばね412は、自然長よりも伸びた状態である。このため、第1ばね412は、引き出し200に後方へ向かう力f1を作用させる。
一方、全閉状態において、第2トリガ423は、その可動範囲のうちの後方位置Prにロックされている。すなわち、第2トリガ423の位置は、第2ケース421に対して相対的に固定されている。例えば、トリガに金属を用い、マグネットなどによって、トリガの位置をロックすることができる。ただし、実施形態においてトリガをロックする方法は任意であり、例えば、樹脂や金属の弾性などを利用してトリガを所定の位置にロックしてもよい。
また、全閉状態においては、第2ピン424は、第2トリガ423よりも後方に位置し、第2トリガ423と係合していない。このため全閉状態において、第2ばね422は引き出し200を付勢しない。
以上により、図5に示すようにX=0のとき、引き出し200を開くために必要な力Fの大きさは、力f1の大きさとなる。このように引き出し200が全閉位置に位置する状態において、第1ばね412のばね力が引き出し200に掛かっていることにより、収納領域にある引き出し200の前方への移動を抑えることができる。全閉状態の引き出し200を閉方向に付勢させ続けることができ、引き出し付きキャビネット10を持ち運びだした際や、地震が発生した際などに、引き出し200が意図せず開いてしまうことを抑制できる。
なお、実施形態においては、全閉状態(および、移動距離(X)が後述のX2未満の範囲)において、第2ピン424と第2トリガ423とが係合していてもよい。この場合、全閉状態において、第1ばね412は引き出し200を閉方向へ付勢し、第2ばね422は、第1ばね312による閉方向への付勢力よりも小さい付勢力で引き出し200を開方向へ付勢する。この場合にも、全閉状態の引き出し200を閉方向へ付勢させ続けることができ、引き出し付きキャビネット10を持ち運びだした際や、地震が発生した際などに、引き出し200が意図せず開いてしまうことを抑制できる。
図3(c)及び図3(d)のように、引き出し200が前方へ動いて位置Pbへ移動すると、移動距離(X)はX1(>0)となる。このとき、引き出し200には、第1ばね412により力f1が掛かっている。
図3(e)及び図3(f)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて位置Pcへ移動すると、移動距離(X)はX2(>X1)となる。このときも、引き出し200には、第1ばね412により力f1が掛かっている。また、第2ピン424は、第2トリガ423に当接することで、第2トリガ423のロックを解除する。同時に、第2ピン424と第2トリガ423とは係合する。このため、第2ばね422は、引き出し200に前方へ向かう力f2を作用させる。引き出し200には、第1ばね412による引き出し200を閉める方向の力(力f1)と、第2ばね422による引き出し200を開く方向の力(力f2)と、の両方が掛かる。
このため、図5に示すようにX=X2のとき、引き出し200を開くために必要な力Fの大きさは、力f1の大きさと力f2の大きさとの差となる。
図4(a)及び図4(b)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて位置Pdへ移動すると、移動距離(X)はX3(>X2)となる。このとき、引き出し200には、第1ばね412による力f1と、第2ばね422による力f2と、の両方が掛かっている。
図4(c)及び図4(d)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて位置Peへ移動すると、移動距離(X)はX4(>X3)となる。このとき、第1トリガ413は、第1ケース411の形状等のガイドに沿って回転し、第1トリガ413と第1ピン414との係合が解除される。これにより、引き出し200には、第1ばね412による後方への付勢力が作用しなくなる。
また、このとき、第1トリガ413はロックされ、第1トリガ413の位置は第1ケース411に対して相対的に固定される。これにより、図4(d)に示すように第1ばね412の端部e2は、第1位置P1に留まり、第1ばね412のばね力が蓄積された状態が維持される。なお、第1トリガ413をロックする方法は、第2トリガ423をロックする方法と同様である。
同時に、第2トリガ423も第2ケース421の形状等のガイドに沿って回転し、第2トリガ423と第2ピン424との係合が解除される。これにより、引き出し200には、第2ばね422による前方への付勢力が作用しなくなる。また、このとき、第2トリガ423はロックされ、第2トリガ423の位置は、第2ケース421に対して相対的に固定される。
引き出し200がさらに前方へ動いて位置Pfへ移動すると、図4(e)及び図4(f)のように移動距離(X)はX5(>X4)となる。このとき、第1トリガ413及び第2トリガ423は、ロックされたままであり、第1ばね412の端部e2は第1位置P1に留まっている。また、引き出し200には、第1ばね412及び第2ばね422による付勢力が作用しない。このため、図5に示すように、引き出し200を開くために必要な力Fの大きさは、小さい。
その後、図4(g)及び図4(h)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて全開位置Pgへ移動すると、移動距離(X)はX6(>X5)となる。
以上、説明したように、動作機構20は、0<X<X4の範囲において、図3(a)〜図4(b)のように引き出し200が全閉状態から前方(開方向)へ動く際に、第1ばね412の端部e2を引き出し200に連動させて第1位置P1まで移動させる。これにより、第1ばね412のばね力を蓄積する(第1工程)。
第1工程のうち、X2≦X<X4の範囲においては、第1ばね412(第1付勢手段410)が引き出しを閉方向へ付勢しながら、第2ばね422(第2付勢手段420)が引き出し200を開方向へ付勢する。これにより、引き出し200を開く際に、第1ばね412による閉方向への付勢力に対して抗するように、第2ばね422が引き出し200を開方向へ付勢することになるため引き出しを小さい力で開くことができる。すなわち、第1ばね412による付勢力(力f1)と第2ばね422による付勢力(力f2)との合力が小さくなり、引き出し200を小さい力で開くことができる。
また、引き出し200を引き出すため必要な仕事量は、例えば図5に示す領域R1の面積に対応する仕事量となり、領域R2の面積に対応する仕事量が不要になる。これにより、楽に引き出し200を引き出すことができる。
また、第2ばね422が設けられない場合、図5に示すX=X4のときのように、第1ばね412のばね力の蓄積工程が終了すると、ばねの付勢力が引き出し200に急に掛からなくなるため、使用者が違和感を覚えるおそれがある。これに対して、実施形態においては、第1工程が終了する直前において、引き出し200に作用する付勢力(力f1と力f2との合力)が小さいため、使用者の違和感を抑制することができる。
また、第1工程において、第1ばね412による付勢力(力f1)の大きさは、第2ばね422による付勢力(力f2)の大きさよりも大きい。このため、X<X4の範囲において、使用者が力Fの印加を停止すると、引き出し200は自然に閉まることができる。
また、動作機構20は、第1工程の後、X=X4において、図4(c)及び図4(d)のように、引き出し200が前方(開方向)へ動く際に、第1ばね412の端部e2と引き出し200との連動を解除する。これにより、ばね力が蓄積された状態で第1ばね412の端部e2を第1位置P1に留める(第2工程)。
この第2工程において、第2ばね422による引き出し200に作用する前方(開方向)への付勢力(力f2)が解除される。このように、第1ばね412のばね力の蓄積工程が完了した際、第1ばね412による付勢力(力f1)の解除と同時に、第2ばね422による付勢力(力f2)を解除することにより、より滑らかに引き出し200を引き出すことができる。
また、従来、引き出しを閉じるためのばね力を引き出しを閉じる際に蓄積する動作機構も提案されている。しかし、この場合には、引き出しを全閉位置から少し引き出しただけでは、ばね力が蓄積されないため、引き出しを閉めることができないことがある。これに対して、実施形態においては、第1ばね412によって、引き出し200が少しだけ開いた状態においても、引き出し200を後方へ付勢することができる。
次に、引き出し200を全開状態から収納領域101に収納する(閉じる)ときの動作について説明する。
図4(g)及び図4(h)に示す全開状態から引き出し200が後方へ動くと、引き出し付きキャビネット10は、図4(e)及び図4(f)に示す状態となる。このとき、引き出し200には、第1ばね412及び第2ばね422による付勢力(力f1及び力f2)は作用していない。
引き出し200がさらに後方へ動くと、引き出し200の位置は、図4(c)及び図4(d)のように位置Peとなる。そして、引き出し200が位置Peよりも後方へ移動し、移動距離(X)がX4よりも短くなると、引き出し200と共に後方へ移動する第1ピン414は、第1トリガ413に当接する。これにより、第1トリガ413のロックが解除される。すなわち、第1トリガ413及び第1ばね412の端部e2は、引き出し200に連動して、後方に移動可能となる。同時に、第1トリガ413と第1ピン414とが係合する。
引き出し200が全開位置Pgにあるときから、引き出し200が後方へ移動して第1トリガ413のロックが解除されるまでは、第1工程によって蓄積されたばね力が、第1ばね414に維持されている。そして、第1トリガ413と第1ピン414とが係合することにより、蓄積されたばね力によって、第1ばね412は、引き出し200を後方へ付勢する。
また、引き出し200が位置Peよりも後方へ移動し、移動距離(X)がX4よりも短くなると、引き出し200と共に後方へ移動する第2ピン424は、第2トリガ423に当接する。これにより、第2トリガ423と第2ピン424とが係合し、第2ばね422は、引き出し200を前方へ付勢する。
引き出し200は、さらに後方へ動くと、図4(a)及び図4(b)に示す状態を経て、図3(e)及び図3(f)に示す位置Pcに移動する。その間、第2ばね422(端部e4)は、引き出し200に連動して後方へ移動し、第2ばね422にばね力が蓄積される。
引き出し200が位置Pcよりも後方(収納領域101側)へ移動し、移動距離(X)がX2よりも短くなると、図3(d)のように、後方位置Prに達した第2トリガ423は、第2ケース421の形状等のガイドに沿って回転し、第2トリガ423と第2ピン424との係合が解除される。これにより、引き出し200には、第2ばね422による前方への付勢力が作用しなくなる。同時に、第2トリガ423は、第2ばね422を伸ばした状態で、ロックされる。
その後、引き出し200は、第1ばね412による付勢力によって、図3(a)及び図3(b)に示す全閉状態となる。
以上、説明したように、動作機構20は、引き出し200が後方へ動く際に、移動距離(X)がX4よりも短くなると、第1位置P1に留まっていた第1ばね412の端部e2を引き出し200に連動させ、移動可能とする。これにより、動作機構20は、0≦X<X4の範囲において、第1ばね412に蓄積されたばね力によって引き出し200を後方へ付勢する(第3工程)。
そして、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側へ移動したとき、すなわち、移動距離XがX2よりも短くなったとき、動作機構20は、第1ばね412が引き出し200を後方へ付勢している状態で、第2ばね422によって引き出し200に作用する前方への付勢力を解除する。言い換えると、動作機構20は、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側へ移動したとき、すなわち、移動距離XがX2よりも短くなったとき、第1ばね412が引き出し200を後方へ付勢している状態で、第2ばね422によって引き出し200に作用する前方への付勢力を解除する付勢力解除手段を備えている。詳述すると、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側へ移動したとき、第2トリガ423は、第2ケース421の形状等のガイドに沿って回転し、第2ばね422を引っ張る第2ピン424と第2トリガ423との係合が解除される。第2ピン424と第2トリガ423との係合状態が解除されると、第2ばね422によって引き出し200に作用する前方への付勢力が解除される。この状態において、引き出し200は、第1ばね412によって、後方へ付勢されている。これらのことより、引き出し200が所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側において、引き出し200は後方へ付勢されることとなる。このとき、第2ばね422によって引き出し200に作用する開方向への付勢力の大きさは、第1ばね412によって引き出し200に作用する閉方向への付勢力の大きさよりも小さい。
本発明の第1の実施形態においては、動作機構20は、第1ばね412が引き出し200を後方へ付勢している状態で、第2ばね422によって引き出し200に作用する前方への付勢力を解除するものである。しかし、本発明はそれに限らず、動作機構20は、第1ばね412が引き出し200を後方へ付勢している状態で、第1ばね412によって引き出し200に作用する閉方向への付勢力よりも、第2ばね422によって引き出し200に作用する開方向への付勢力を低減しているものであっても良い。言い換えると、動作機構20は、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側へ移動したとき、すなわち、移動距離XがX2よりも短くなったとき、第1ばね412が引き出し200を後方へ付勢している状態で、第1ばね412によって引き出し200に作用する閉方向への付勢力よりも、第2ばね422によって引き出し200に作用する開方向への付勢力を低減する付勢力低減手段を備えている。詳述すると、例えば、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側へ移動したときにも、第2トリガ423は、第2ケース421の形状等のガイドに沿って回転せずに、第2ピン424と第2トリガ423との係合が解除されない動作機構とする。この動作機構において、第2ばね422は、その付勢力が、引き出し200が所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側においても、第1ばね412の付勢力よりも小さいばね特性を有するばねとする。これらのことより、引き出し200が所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側において、引き出し200は後方へ付勢されることとなる。このときも、第2ばね422によって引き出し200に作用する開方向への付勢力の大きさは、第1ばね412によって引き出し200に作用する閉方向への付勢力の大きさよりも小さい。
このことより、所定位置(位置Pc)よりも収納領域101側では、第1ばね412による付勢力によって引き出し200を閉じることができる。例えば、引き出し200が全閉状態となる直前(0<X<X2の範囲)においては、第2ばね422による付勢力が解除された状態で第1ばね412による付勢力が引き出しに作用する、または、第2ばね422による付勢力は、第1ばね412による付勢力よりも低減されている。これにより、第2ばね422が設けられた場合であっても、引き出し200をしっかりと全閉状態とすることができる。
また、第3工程の実行中、X2≦X<X4の範囲において、第2ばね422が引き出し200に連動することで、第2ばね422にばね力が蓄積される。これにより、第2ばね422に蓄積されたばね力によって、第1工程の実行中に引き出し200を前方へ付勢することができる。また、第2ばね422にばね力を蓄積する際には、第1ばね412によって引き出し200に作用する閉方向への付勢力、および、引き出し200に作用している閉方向への慣性力によって、使用者はより小さい力で第2ばね422のばね力を蓄積することができる。
また、第3工程においても、X2≦X<X4の範囲において、第1ばね412による付勢力(力f1)の大きさは、第2ばね422による付勢力(力f2)の大きさよりも大きい。このため、第2ばね422による付勢力に負けずに、第1ばね412によって引き出し200をしっかりと後方へ付勢することができる。したがって、引き出し200をよりしっかりと全閉状態とすることができる。例えば、引き出し200を閉める際の勢いが弱かったとしても、引き出し200が前方へ戻ってくることを防ぐことができる。
また、実施形態においては、第1トリガ413、第2トリガ423、第1ピン414及び第2ピン424は、引き出し200と同じ方向に駆動される。すなわち、これらの部材は、引き出しを開閉するときに水平方向に沿って移動することで、ばねを伸び縮みさせる。ばね力を蓄積するためのカム等の部材が鉛直方向に沿って移動する場合には、ばね力を蓄積する際などに、重力の分だけ大きな力が必要となる場合がある。これに対して、実施形態においては、第1トリガ413、第2トリガ423、第1ピン414及び第2ピン424を重力に逆らって動かす必要がないため、引き出しを開閉しやすい。
なお、第1の実施形態において、X2やX4の値は、引き出し付きキャビネット10のサイズや使用者の使い勝手を考慮して適宜定められる。
(第2の実施形態)
図6(a)〜図7(b)は、第2の実施形態に係る引き出しの動作機構を有する引き出し付きキャビネットを例示する断面図である。
引き出し付きキャビネット10Aは、キャビネット(キャビネット本体)100と、引き出し200と、レール300と、動作機構(動作装置)20Aと、を有する。
キャビネット100、引き出し200及びレール300については、図1(a)〜図2(b)に関する説明と同様である。
図6(a)は、引き出し200が収納領域101に収納され、全閉位置Ptに位置する全閉状態を示している。図6(b)は、図6(a)のうち動作機構20Aの近傍を拡大して表す。
図7(a)は、引き出し200が収納領域101から引き出され、全開位置Pzに位置する全開状態を示している。図7(b)は、図7(a)のうち動作機構20Aの近傍を拡大して表す。
動作機構20Aは、第1付勢手段(付勢部)410Aと、第2付勢手段(付勢部)420Aと、を有する。
第1付勢手段410Aは、引き出し200を閉方向へ付勢するものである。また、第2付勢手段420Aは、引き出し200が開方向へ動く際に、引き出し200を開方向へ付勢するものである。
例えば、図6(b)に示すように、この例では、第1付勢手段410Aに第1ばね412Aが用いられている。第1ばね412Aは、例えば引張コイルばねである。また、動作機構20Aは、第1ケース411Aと、第1トリガ(支持部材)413Aと、第1ピン414Aと、ダンパ416と、を有する。
第1ケース411Aは、キャビネット100に対して固定される。第1ばね412Aおよび第1トリガ413Aは、第1ケース411Aに設けられる。
第1ばね412Aの端部e5(後端、一端)は、第1ケース411Aに固定される。
第1トリガ413Aは、例えばフック状の部材であり、第1ばね412Aの端部e6(前端、他端)に取り付けられる。第1トリガ413Aは、第1ケース411A内において前後方向に移動可能である。
第1ピン414Aは、引き出し200に固定されており、第1トリガ413Aと係合可能である。第1ピン414Aと第1トリガ413Aとが係合した状態では、引き出し200及び第1ピン414Aが前方へ動くとき、第1トリガ413Aも前方へ移動し、第1ばね412Aが伸ばされる。第1ピン414Aと第1トリガ413Aとが係合した状態では、引き出し200及び第1ピン414Aが後方へ動くとき、第1トリガ413Aも後方へ移動し、第1ばね412Aは縮まる。
このように、前後方向に移動する引き出し200に連動して、第1ばね412Aが前後方向に伸び縮みする。第1ばね412Aが伸びることで、第1ばね412Aには、ばね力が蓄積される。第1ピン414Aと第1トリガ413Aとが係合した状態では、第1ばね412Aのばね力(弾性力)が、第1トリガ413A及び第1ピン414Aを介して引き出し200に伝達される。これにより、第1ばね412Aは、引き出し200を後方へ付勢し、全閉位置Ptへ引き入れる。
また、例えば図1(b)に示すように、この例では、第2付勢手段420Aに第2ばね422Aが用いられている。第2ばね422Aは、例えば定荷重ばねである。第2付勢手段420Aには、引張コイルばねを用いてもよい。また、動作機構20Aは、第2ケース421Aと、第2トリガ(支持部材)423Aと、第2ピン424Aと、を有する。
第2ケース421Aは、引き出し200に対して固定される。第2ばね422Aおよび第2トリガ423Aは、第2ケース421Aに設けられる。
第2ばね422Aの端部e7(後端)は、第2ケース421Aに固定される。すなわち、第2ばね422Aの端部e7の位置は、間接的に引き出し200に固定される。
第2トリガ423Aは、例えばフック状の部材であり、第2ばね422Aの端部e8(前端)に取り付けられる。第2トリガ423Aは、第2ケース421A内において前後方向に移動可能である。
第2ピン424Aは、キャビネット100に固定されており、第2トリガ423Aと係合可能である。第2ピン424Aと第2トリガ423Aとが係合した状態では、引き出し200及び第2ケース421Aが前方へ動くとき、第2ピン424A及び第2トリガ423Aは停止しているため、第2ばね422Aは縮まる。第2ピン424Aと第2トリガ423Aとが係合した状態では、引き出し200及び第2ケース421Aが後方へ動くとき、第2ピン424A及び第2トリガ423Aは、停止しているため、第2ばね422Aが伸ばされる。
このように、前後方向に移動する引き出し200に連動して、第2ばね422Aが前後方向に伸び縮みする。第2ばね422Aが伸びることで、第2ばね422Aには、ばね力が蓄積される。第2ピン424Aと第2トリガ423Aとが係合した状態では、第2ばね422Aのばね力(弾性力)が、引き出し200に伝達される。これにより、第2ばね422Aは、引き出し200を前方へ付勢する。
次に、図8(a)〜図8(f)、図9(a)〜図9(h)及び図10を参照して、引き出し200を開閉する際の動作機構20Aの動作について説明する。
図8(a)〜図8(f)及び図9(a)〜図9(h)は、第2の実施形態に係る引き出しの動作機構を有する引き出し付きキャビネットを例示する断面図である。
図8(a)は、全閉状態を表し、図9(g)は、全開状態を表す。図8(c)、図8(e)、図9(a)、図9(c)、図9(e)は、それぞれ、全閉状態と全開状態との間の状態を表す。
また、図8(b)、図8(d)、図8(f)、図9(b)、図9(d)、図9(f)、図9(h)は、それぞれ、図8(a)、図8(c)、図8(e)、図9(a)、図9(c)、図9(e)、図9(g)に示す動作機構20の近傍を拡大して表す。
図10は、引き出しの移動距離と、引き出しを開くために必要な力と、の関係を例示するグラフ図である。
図10の縦軸は、引き出し200を開くために必要な前向きの力Faを表す。図5の横軸は、引き出しの移動距離(X)を表す。なお、図10は、簡単のため、摩擦力などを省略した模式的なグラフである。
まず、引き出し200を全閉状態から開く(引き出す)場合について説明する。
図8(a)及び図8(b)においては、引き出し200は全閉状態である。すなわち、引き出し200は、全閉位置Ptに位置し、移動距離(X)はゼロである。このとき、図8(b)に示すように、第1ピン414Aと第1トリガ413Aとは係合している。また、第1ばね412Aは、自然長よりも伸びた状態である。このため、第1ばね412Aは、引き出し200に後方へ向かう力f1aを作用させる。
一方、全閉状態において、第2トリガ423Aは、第2ケース421Aの前方位置Psにロックされている。すなわち、第2トリガ423Aの位置は、第2ケース421Aに対して相対的に固定されている。第2トリガ423Aをロックする方法は、前述の第2トリガ423をロックする方法と同様である。
また、全閉状態においては、第2トリガ423Aは、第2ピン424Aよりも後方に位置し、第2ピン424Aと係合していない。このため全閉状態において、第2ばね422Aは引き出し200を付勢しない。
以上により、図10に示すようにX=0のとき、引き出し200を開くために必要な力Faの大きさは、力f1aの大きさとなる。このように引き出し200が全閉位置に位置する状態において、第1ばね412Aのばね力が引き出し200に掛かっていることにより、収納領域にある引き出し200の前方への移動を抑えることができる。
図8(c)及び図8(d)のように、引き出し200が前方へ動いて位置Puへ移動すると、移動距離(X)はX7(>0)となる。このとき、引き出し200には、第1ばね412Aにより力f1aが掛かっている。
図8(e)及び図8(f)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて位置Pvへ移動すると、移動距離(X)はX8(>X7)となる。このときも、引き出し200には、第1ばね412Aにより力f1aが掛かっている。また、第2トリガ423Aは、引き出し200及び第2ケース421Aと共に前方へ動き、第2ピン424Aに当接する。これにより、第2トリガ423Aのロックが解除される。同時に、第2ピン424Aと第2トリガ423Aとは係合する。このため、第2ばね422Aは、引き出し200に前方へ向かう力f2aを作用させる。引き出し200には、第1ばね412Aによる引き出し200を閉める方向の力(力f1a)と、第2ばね422Aによる引き出し200を開く方向の力(力f2a)と、の両方が掛かる。
このため、図10に示すようにX=X8のとき、引き出し200を開くために必要な力Faの大きさは、力f1aの大きさと力f2aの大きさとの差となる。
図9(a)及び図9(b)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて位置Pwへ移動すると、移動距離(X)はX9(>X8)となる。このとき、引き出し200には、第1ばね412Aによる力f1aと、第2ばね422Aによる力f2aと、の両方が掛かっている。
図9(c)及び図9(d)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて位置Pxへ移動すると、移動距離(X)はX10(>X9)となる。このとき、第1トリガ413Aは、第1ケース411Aの形状等のガイドに沿って回転し、第1トリガ413Aと第1ピン414Aとの係合が解除される。これにより、引き出し200には、第1ばね412Aによる後方への付勢力が作用しなくなる。
また、このとき、第1トリガ413Aはロックされ、第1トリガ413Aの位置は第1ケース411Aに対して相対的に固定される。これにより、図9(d)に示すように第1ばね412Aの端部e6は、第1位置P1aに留まり、第1ばね412Aのばね力が蓄積された状態が維持される。なお、第1トリガ413Aをロックする方法は、第2トリガ423Aをロックする方法と同様である。
同時に、第2トリガ423Aも第2ケース421Aの形状等のガイドに沿って回転し、第2トリガ423Aと第2ピン424Aとの係合が解除される。これにより、引き出し200には、第2ばね422Aによる前方への付勢力が作用しなくなる。また、このとき、第2トリガ423Aはロックされ、第2トリガ423Aの位置は、第2ケース421Aに対して相対的に固定される。すなわち、第2トリガ423Aは、第2ケース421Aの後部に位置し、引き出し200及び第2ケース421Aと共に動くようになる。
図9(e)及び図9(f)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて位置Pyへ移動すると、移動距離(X)はX11(>X10)である。このとき、第1トリガ413A及び第2トリガ423Aは、ロックされたままであり、第1ばね412Aの端部e6は第1位置P1aに留まっている。また、引き出し200には、第1ばね412A及び第2ばね422Aによる付勢力が作用しない。このため、図10に示すように、引き出し200を開くために必要な力Faの大きさは、小さい。
その後、図9(g)及び図9(h)のように、引き出し200がさらに前方へ動いて全開位置Pzへ移動すると、移動距離(X)はX12(>X11)となる。
以上説明したように、動作機構20Aも、動作機構20と同様に第1工程及び第2工程を実行可能である。
すなわち、動作機構20Aは、0<X<X10の範囲において、図8(a)〜図9(b)のように引き出し200が全閉状態から前方(開方向)へ動く際に、第1ばね412Aの端部e6を引き出し200に連動させて第1位置P1aまで移動させる。これにより、第1ばね412Aのばね力を蓄積する(第1工程)。
また、動作機構20Aは、第1工程の後、X=X10において、図9(c)及び図9(d)のように、引き出し200が前方(開方向)へ動く際に、第1ばね412Aの端部e6と引き出し200との連動を解除する。これにより、ばね力が蓄積された状態で第1ばね412Aの端部e6を第1位置P1aに留める(第2工程)。
第1工程のうち、X8≦X<X10の範囲においては、第1ばね412Aが引き出しを閉方向へ付勢しながら、第2ばね422Aが引き出し200を開方向へ付勢する。これにより、引き出し200を開く際に、第1ばね412Aによる閉方向への付勢力に対して抗するように、第2ばね422Aが引き出し200を開方向へ付勢することになるため、引き出し200を小さい力で開くことができる。
また、引き出し200を引き出すため必要な仕事量は、例えば図10に示す領域R3の面積に対応する仕事量となり、領域R4の面積に対応する仕事量が不要になる。これにより、楽に引き出し200を引き出すことができる。
また、第1工程が終了する直前において、引き出し200に作用する付勢力(力f1aと力f2aとの合力)が小さいため、使用者の違和感を抑制することができる。
また、第1工程において、第1ばね412Aによる付勢力の大きさは、第2ばね422Aによる付勢力の大きさよりも大きい。このため、X<X10の範囲において、使用者が力Faの印加を停止すると、引き出し200は自然に閉まることができる。
また、第2工程において、第2ばね422Aによる引き出し200に作用する前方(開方向)への付勢力(力f2a)が解除される。このように、第1ばね412Aのばね力の蓄積工程が完了した際、第1ばね412Aによる付勢力(力f1a)の解除と同時に、第2ばね422Aによる付勢力(力f2a)を解除することにより、より滑らかに引き出し200を引き出すことができる。
次に、引き出し200を全開状態から収納領域101に収納する(閉じる)ときの動作について説明する。
図9(g)及び図9(h)に示す全開状態から引き出し200が後方へ動くと、引き出し付きキャビネット10Aは、図9(e)及び図9(f)に示す状態となる。このとき、引き出し200には、第1ばね412A及び第2ばね422Aによる付勢力(力f1a及び力f2a)は作用していない。
引き出し200がさらに後方へ動くと、引き出し200の位置は、図4(c)及び図4(d)のように位置Pxとなる。そして、引き出し200が位置Pxよりも後方へ移動し、移動距離(X)がX10よりも短くなると、引き出し200と共に後方へ移動する第1ピン414Aは、第1トリガ413Aに当接する。これにより、第1トリガ413Aのロックが解除される。すなわち、第1トリガ413A及び第1ばね412Aの端部e6は、引き出し200に連動して、後方に移動可能となる。同時に、第1トリガ413Aと第1ピン414Aとが係合する。第1トリガ413Aと第1ピン414Aとが係合することにより、蓄積されたばね力によって、第1ばね412Aは、引き出し200を後方へ付勢する。
また、引き出し200が位置Pxよりも後方へ移動し、移動距離(X)がX10よりも短くなると、引き出し200と共に後方へ移動する第2トリガ423Aは、第2ピン424Aに当接する。これにより、第2トリガ423Aと第2ピン424Aとが係合し、第2ばね422Aは、引き出し200を前方へ付勢する。
引き出し200は、さらに後方へ動くと、図9(a)及び図9(b)に示す状態を経て、図8(e)及び図8(f)に示す位置Pvに移動する。その間、第2トリガ423A及び第2ばね422Aの端部e8は、停止している。一方、第2ばね422Aの端部e7は、引き出し200に連動して後方へ移動する。これにより、第2ばね422Aにばね力が蓄積される。
引き出し200が位置Pvよりも後方へ移動し、移動距離(X)がX8よりも短くなると、図8(d)のように、前方位置Psに達した第2トリガ423Aは、第2ケース421Aの形状等のガイドに沿って回転し、第2トリガ423Aと第2ピン424Aとの係合が解除される。これにより、引き出し200には、第2ばね422Aによる前方への付勢力が作用しなくなる。同時に、第2トリガ423Aは、第2ばね422Aを伸ばした状態で、第2ケース421Aに対してロックされる。
その後、引き出し200は、第1ばね412Aによる付勢力によって、図8(a)及び図8(b)に示す全閉状態となる。
以上、説明したように、動作機構20Aは、引き出し200が後方へ動く際に、移動距離(X)がX10よりも短くなると、第1位置P1aに留まっていた第1ばね412Aの端部e6を引き出し200に連動させ、移動可能とする。これにより、動作機構20Aは、0≦X<X10の範囲において、第1ばね412Aに蓄積されたばね力によって引き出し200を後方へ付勢する(第3工程)。
そして、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pv)よりも収納領域101側へ移動したとき、すなわち、移動距離XがX8よりも短くなったとき、動作機構20Aは、第1ばね412Aが引き出し200を後方へ付勢している状態で、第2ばね422Aによって引き出し200に作用する前方への付勢力を解除する。言い換えると、動作機構20Aは、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pv)よりも収納領域101側へ移動したとき、すなわち、移動距離XがX8よりも短くなったとき、第2ばね422Aによって引き出し200に作用する前方への付勢力を解除する付勢力解除手段を備えている。詳述すると、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pv)よりも収納領域101側へ移動したとき、第2トリガ423Aは、第2ケース421Aの形状等のガイドに沿って回転し、第2ばね422Aを引っ張る第2トリガ423Aと第2ピン424Aとの係合が解除される。第2ピン424Aと第2トリガ423Aとの係合状態が解除されると、第2ばね422Aによって引き出し200に作用する前方への付勢力が解除される。この状態において、引き出し200は、第1ばね412Aによって、後方へ付勢されている。これらのことより、引き出し200が所定位置(位置Pv)よりも収納領域101側において、引き出し200は後方へ付勢されることとなる。このとき、第2ばね422Aによって引き出し200に作用する開方向への付勢力の大きさは、第1ばね412Aによって引き出し200に作用する閉方向への付勢力の大きさよりも小さい。
本発明の第2の実施形態において、動作機構20Aは、第1ばね412Aが引き出し200を後方へ付勢している状態で、第2ばね422Aによって引き出し200に作用する前方への付勢力を解除するものである。しかし、本発明は、それに限らず、動作機構20Aは、第1ばね412Aが引き出し200を後方へ付勢している状態で、第1ばね412Aによって引き出し200に作用する閉方向への付勢力よりも、第2ばね422Aによって引き出し200に作用する開方向への付勢力を低減しているものであっても良い。言い換えると、動作機構20Aは、引き出し200が後方へ動いて所定位置(位置Pv)よりも収納領域101側へ移動したとき、すなわち、移動距離XがX8よりも短くなったとき、第1ばね412Aが引き出し200を後方へ付勢している状態で、第1ばね412Aによって引き出し200に作用する閉方向への付勢力よりも、第2ばね422Aによって引き出し200に作用する開方向への付勢力を低減する付勢力低減手段を備えている。詳述すると、例えば、引き出し200が後方へ動いて所定位置(Pv)よりも収納領域101側へ移動したときにも、第2トリガ423Aは、第2ケース421Aの形状等のガイドに沿って回転せずに、第2ピン424Aと第2トリガ423Aとの係合が解除されない動作機構とする。この動作機構において、第2ばね422Aは、その付勢力が、引き出し200が所定位置(位置Pv)よりも収納領域101側においても、第1ばね412Aの付勢力よりも小さいばね特性を有するばねとする。これらのことより、引き出し200が所定位置(位置Pv)よりも収納領域101側において、引き出し200は後方へ付勢されることとなる。このときも、第2ばね422Aによって引き出し200に作用する開方向への付勢力の大きさは、第1ばね412Aによって引き出し200に作用する閉方向への付勢力の大きさよりも小さい。
これにより、第2ばね422Aが設けられた場合であっても、第1ばね412Aの付勢力によって、引き出し200をしっかりと全閉状態とすることができる。
また、第3工程の実行中、X8≦X<X10の範囲において、第2ばね422Aが引き出し200に連動することで、第2ばね422Aにばね力が蓄積される。これにより、第2ばね422Aに蓄積されたばね力によって、第1工程の実行中に引き出し200を前方へ付勢することができる。
また、第3工程においても、X8≦X<X10の範囲において、第1ばね412Aによる付勢力(力f1a)の大きさは、第2ばね422Aによる付勢力(力f2a)の大きさよりも大きい。このため、第2ばね422Aによる付勢力に負けずに、第1ばね412Aによって引き出し200をしっかりと後方へ付勢することができる。
また、実施形態においては、第1トリガ413A、第2トリガ423A、第1ピン414A及び第2ピン424Aは、引き出し200と同じ方向に駆動される。すなわち、これらの部材は、引き出しを開閉するときに水平方向に沿って移動することで、ばねを伸び縮みさせる。第1トリガ413A、第2トリガ423A、第1ピン414A及び第2ピン424Aを重力に逆らって動かす必要がないため、引き出しを開閉しやすい。
なお、第2の実施形態において、X8やX10の値は、引き出し付きキャビネット10Aのサイズや使用者の使い勝手を考慮して適宜定められる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。