JP6828427B2 - 眼科用組成物及びその製造方法 - Google Patents
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[1](A)増粘多糖類と(B)2価の金属塩とを配合してなるゲル微粒子であって、ゲル微粒子中の(A)増粘多糖類の配合量が0.05〜1w/v%であり、(B)2価の金属塩の配合量が0.05〜0.3w/v%であるゲル微粒子を含み、降伏応力が0.5Pa以上、可視光線透過率が70%以上である眼科用組成物。
[2]上記ゲル微粒子が、貯蔵弾性率G'が10Pa以上で、周波数0.01〜1Hzにおいて貯蔵弾性率G'が損失弾性率G”より大きいゲルを破砕したものである[1]記載の眼科用組成物。
[3](A)増粘多糖類が、ジェランガム、アルギン酸もしくはその塩から選ばれる1種以上である[1]又は[2]記載の眼科用組成物。
[4](B)2価の金属塩が、カルシウム塩、マグネシウム塩及び亜鉛塩から選ばれる1種又は2種以上である[1]〜[3]のいずれか1項記載の眼科用組成物。
[5](B)/(A)で表される配合質量比が、0.25〜2である[1]〜[4]のいずれか1項記載の眼科用組成物。
[6]点眼剤又は洗眼剤である[1]〜[5]のいずれか1項記載の眼科用組成物。
[7]チキソトロピー性を有する、[1]〜[6]のいずれか1項記載の眼科用組成物。
[8](A)増粘多糖類と(B)2価の金属塩とを反応させ、貯蔵弾性率G'が10Pa以上で、周波数0.01〜1Hzにおいて貯蔵弾性率G'が損失弾性率G”より大きいゲルを得た後、当該ゲルを破砕してゲル微粒子を得る工程を含む、[1]記載の眼科用組成物の製造方法。
(A)増粘多糖類としては、アニオン性の化合物を使用することが好ましく、ローカストビーンガム、ペクチン、イオタ−カラギーナン、カッパ−カラギーナン、アルギン酸又はその塩、ジェランガム、キサンタンガム等から選ばれる1種以上を使用することができる。本発明では、特にアルギン酸又はその塩、ジェランガムから選ばれる1種以上を好適に使用することができる。また、上記ジェランガムとしては、ネイティブジェランガム、脱アシル化ジェランガムを使用することができるが、これらの中でも澄明性確保の点から脱アシル化ジェランガムが推奨される。
(B)2価の金属塩としては、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム塩(水和物を含む)、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩(水和物含む)、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛等の亜鉛塩(水和物含む)等が好ましい。本発明では、よりイオン化傾向が低い金属の塩を好適に使用することができ、上記の金属塩の中でもカルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩が好ましく、亜鉛塩が更に好ましい。これらの金属塩は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
本発明のゲル微粒子又は眼科用組成物には、更に薬物を含んでもよい。上記薬物としては、脂溶性薬物、水溶性薬物のいずれも含むことができる。
本発明の眼科用組成物に含まれるゲル微粒子は、上記(A)増粘多糖類及び(B)2価の金属塩、更に必要に応じて(C)薬剤及びその他の成分をそれぞれ精製水等の溶媒に溶解し、ゲル化させた後、得られたゲルをホモジナイザー、ディスパーサー、高圧ホモジナイザー等の適宜な装置を用いて破砕することにより得られる。ゲルを破砕する際の条件は、目的とするゲル微粒子の平均粒子径等の条件により適宜選定される。例えば、卓上ホモジナイザーを用いる場合は、攪拌速度を3,000〜15,000rpmとすることが好ましく、5,000〜10,000rpmとすることがより好ましい。この場合、攪拌時間は、好ましくは5〜60分であり、より好ましくは10〜30分である。
90℃に加温した精製水中にディスパーサーで攪拌しながら所定量の増粘多糖類を添加する。溶け残りが無いことを確認した後、水溶性薬物や等張化剤等の2価の金属塩(架橋剤)以外の成分を添加し、これらが溶解するまで更に攪拌する。次に90℃に加温した精製水に溶解した2価の金属塩をゆっくり添加した後、加温した精製水を加えて所定の量に調整する。その後、得られた溶液を室温環境にて冷却しゲル化させる。そして、得られたゲルをホモジナイザーを用いて所定の粒径になるまで破砕することにより、ゲル微粒子を得ることができる。
90℃に加温した精製水中にディスパーサーで攪拌しながら所定量の増粘多糖類を添加する。溶け残りが無いことを確認した後、等張化剤等の2価の金属塩(架橋剤)以外の成分を添加し、更に攪拌を行う。その後、所定量の界面活性剤と脂溶性薬物の混合物(固化している場合は加温により一液状態にしておく。このとき界面活性剤の助溶媒としてエタノール、多価アルコール、水が含まれていてもよい。)を添加し、攪拌して、乳化させる。次に90℃に加温した精製水に溶解した架橋剤(2価の金属塩)をゆっくり添加した後、加温した精製水を加えて所定の量に調整する。その後、得られた溶液を室温環境にて冷却しゲル化させる。そして、得られたゲルをホモジナイザーを用いて所定の粒径になるまで破砕することにより、ゲル微粒子を得ることができる。
ゲル微粒子又は眼科用組成物の降伏応力は、滞留性の観点から、0.5Pa以上であることが必要である。上記降伏応力は、3Pa以上が好ましく、10Pa以上がより好ましい。また、上記降伏応力は、容器(点眼剤プラスチック容器やチューブ容器等)への充填、吐出性等の観点から、100Pa以下が好ましく、30Pa以下がより好ましく、20Pa以下が更に好ましい。測定は直径4cmのパラレルプレートを用い、25℃、周波数1Hz(角周波数6.28rad/s)、歪量0.1〜100%の条件で行った。貯蔵弾性率G'と損失弾性率G”とが交差し、G'=G”(tanδ=1)となる点において装置にかかる応力値を降伏応力する。なお、パラレルプレートとサンプルステージ間のギャップサイズは1,000μmに設定する。
上記のゲル微粒子は、それ自体を眼科用組成物として好適に使用することができる。また、水、多価アルコールや無機塩類を含む水溶液等の適宜溶媒で希釈して使用することもできる。本発明の眼科用組成物は、点眼剤としての使用のほか、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ保存液、コンタクトレンズケア剤等の用途にも用いることができる。例えば、コンタクトレンズ保存液中に本発明のゲル微粒子を含ませることで、当該保存液から取り出したレンズを装着した際に、レンズと眼との間に本発明のゲル微粒子を介在させることができるようになり、乾き眼の抑制効果が期待できる。また、こすり洗い用のコンタクトレンズケア剤中に本発明のゲル微粒子を含ませることで、柔らかいスクラブ粒子としての更なる効果も期待できる。なお、コンタクトレンズは特に限定されず、ハードコンタクトレンズ(HCL)、ソフトコンタクトレンズ(SCL)等を用いることができる。
90℃に加温した精製水中に、ディスパーサーで攪拌しながら、最終濃度が0.05w/v%となるように(A)ジェランガムを添加した。溶け残りが無いことを確認した後、ホウ酸、ホウ砂を添加し、これらが溶解するまで更に攪拌した。次に90℃に加温した精製水400gに溶解した(B)乳酸亜鉛三水和物を1分かけて添加した後、更に90℃に加温した精製水を加えて、1,000mLとした。その後、得られた溶液を室温環境にて冷却しゲル化させた。更に、上記で得られたゲルを、ホモジナイザーを用いて破砕してゲル微粒子を得た。この際、攪拌速度は5,000rpm、攪拌時間は5分とした。
表1〜6に示した配合で、実施例1と同様の手順により本発明のゲル微粒子を調製した。なお、脂溶性薬物を配合する場合には、上記「b)脂溶性薬物を配合する場合」の調製方法で、脂溶性薬物を配合せずに水溶性薬物や等張化剤等の水溶性成分を配合する場合には、上記「a)水溶性薬物を配合する場合」記載の調製手順に準じてゲル微粒子を得た。各実施例及び比較例において、ゲルの攪拌条件は、攪拌速度5,000rpm、攪拌時間5分とした。
直径4cmのシャーレにゲル化する前の溶液を6.28g分取し、冷却することによりゲル化させ、5,000μm厚の円盤状ゲルとした。当該円盤状ゲルについて貯蔵弾性率G'及び損失弾性率G”を測定した。測定にはティー・エイ・インスツルメント社製ストレス制御式レオメーターAR−2000EXを用い、動的粘弾性測定(周波数依存性測定)を行った。測定は、直径4cmのパラレルプレートを用い、25℃の条件下で周波数0.01〜1Hz(角周波数0.0628〜6.28rad/s)の範囲で行った。なお、サンプルステージとパラレルプレートのギャップサイズは4,500μmとし、ゲルを500μm押した状態で測定を実施した。その結果、実施例は全てG'>G”であった。
ティー・エイ・インスツルメント社製ストレス制御式レオメーターAR−2000EXを用い、動的粘弾性測定(歪み依存性測定)により降伏値及び粘度を求めた。測定は直径4cmのパラレルプレートを用い、25℃、周波数1Hz(角周波数6.28rad/s)、歪量0.1〜100%の条件で行った。貯蔵弾性率G'と損失弾性率G”とが交差し、G'=G”(tanδ=1)となる点において装置にかかる応力値を降伏応力とした。なお、パラレルプレートとサンプルステージ間のギャップサイズは1,000μmに設定した。
ベックマンコールター(株)製のレーザー回折式粒度分布計「LS13 320」を用い、これに湿式用のユニバーサルリキッドモジュールを適用して測定した。測定の際は、分散媒として0.2μmミクロンフィルターでろ過済みの精製水を使用した。なお、水の屈折率は1.333、分散粒子の屈折率は1.6(一般的な有機物の屈折率)として演算を行い、体積分布として粒子の平均径を算出した。なお、ミクロゲルの場合は粒子内外における水の出入りの影響によって粒子径が変動する可能性がある。そこで、粒子径はサンプル投入して1分以内に測定を開始しデータを取得した。
ティー・エイ・インスツルメント社製ストレス制御式レオメーターAR−2000EXを用い、見かけの粘度測定(25℃)を行った。測定は直径4cmのパラレルプレートを用い、25℃でずり速度を0〜30s-1の範囲で1分間線形的に変化させて実施した。評価はずり速度0.5s-1、30s-1の2点で行った。
調製した組成物に蛍光色素フルオレセインナトリウムを0.05質量%添加した後、被験者5名の結膜嚢に20μL点眼した。結膜嚢にフルオレセインナトリウムの蛍光色が確認できなくなるまでの時間の平均値を滞留時間とした。観察にはスリットランプを用いた。判定は以下の基準に基づいて行った。
〈判定基準〉
◎:60分以上
○:30分以上60分未満
△:10分以上30分未満
×:10分未満
(株)島津製作所製紫外可視分光光度計UV−1800を用いて、波長600nmにおける透過率(%)を測定した。判定は以下の基準に基づいて行った。
◎、○、△が眼科用組成物として良好である。
〈判定基準〉
◎:透過率90%以上
○:透過率80%以上
△:透過率70%以上
×:透過率70%未満
10名の被験者(健常な成人男性)の結膜嚢に上記で調製した眼科用組成物を20μL点眼し、「べたつき」及び「ぼやけ」を以下の基準で官能評価した。◎、○、△を合格とする。
〈判定基準〉
点眼後1分以内のべたつき
◎:べたつかない
○:ほとんどべたつかない
△:わずかにべたつきを感じる
×:べたつく
点眼後1分後のぼやけ
◎:ぼやけない
○:ほとんどぼやけない
△:わずかにぼやけを感じる
×:ぼやける
上記で得たゲル微粒子を点眼剤プラスチック容器に30mLテルモシリンジで充填した際に、以下の2点について確認し、以下の基準で評価した。
容器充填性:容器の肩の部分に空隙ができるか否か
吐出性:容器の腹の部分を指で押して薬液が滴下するか否か
〈判定基準〉
◎:点眼剤プラスチック容器充填が容易にできる。
○:点眼剤プラスチック容器への充填障害があるものの障害なく吐出は可能。
△:点眼剤プラスチック容器への充填が難しいが、チューブ容器への充填は可能
なお、上記の判定基準と降伏応力との関係については、概ね、降伏応力が20Pa以下であれば「◎」、30Pa以下であれば「○」、100Pa以下であれば「△」となる。◎、○、△を合格とする。
下記表に示した配合で、上記[実施例2〜31、比較例1〜5]に記載された方法と同様の手順により本発明のゲル微粒子を調製した。なお、各処方例において、ゲルの攪拌条件は、攪拌速度5,000rpm、攪拌時間5分とした。得られた眼科用組成物は、上記実施例と同様の方法で測定した降伏応力は10〜20Paであり、可視光線透過率は75〜85%であった。
Claims (8)
- (A)増粘多糖類と(B)2価の金属塩とを配合してなるゲル微粒子であって、ゲル微粒子中の(A)増粘多糖類の配合量が0.05〜1w/v%であり、(B)2価の金属塩の配合量が0.05〜0.3w/v%であるゲル微粒子を含み、降伏応力が0.5Pa以上、可視光線透過率が70%以上である眼科用組成物。
- 水不溶性又は水難溶性薬物、ならびにミクロゲル及び水溶性のイオン性ポリマーを含有する無菌性水性懸濁製剤を除く、請求項1記載の眼科用組成物。
- (A)増粘多糖類が、ジェランガム、アルギン酸もしくはその塩から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の眼科用組成物。
- (B)2価の金属塩が、カルシウム塩、マグネシウム塩及び亜鉛塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載の眼科用組成物。
- (B)/(A)で表される配合質量比が、0.25〜2である請求項1〜4のいずれか1項記載の眼科用組成物。
- 点眼剤又は洗眼剤である請求項1〜5のいずれか1項記載の眼科用組成物。
- チキソトロピー性を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の眼科用組成物。
- (A)増粘多糖類と(B)2価の金属塩とを反応させ、貯蔵弾性率G'が10Pa以上で、周波数0.01〜1Hzにおいて貯蔵弾性率G'が損失弾性率G”より大きいゲルを得た後、当該ゲルを破砕してゲル微粒子を得る工程を含む、請求項1記載の眼科用組成物の製造方法。
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