JP6825682B1 - モルタル・コンクリート用混和材、水硬性組成物、セメント組成物及びコンクリート - Google Patents

モルタル・コンクリート用混和材、水硬性組成物、セメント組成物及びコンクリート Download PDF

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Abstract

【課題】圧縮強度やフレッシュ性状などの基礎的な性能を損なうことなく、塩化物浸透抵抗性に優れるモルタル・コンクリートを得ることが可能な、モルタル・コンクリート用混和材を提供すること。【解決手段】シリカフューム、メタカオリン及び水酸化カルシウムを含むモルタル・コンクリート用混和材であって、モルタル・コンクリート用混和材100質量部中の、シリカフュームの含有量が20〜50質量部であり、メタカオリンの含有量が20〜50質量部であり、水酸化カルシウムの含有量が5〜35質量部であり、メタカオリン100質量部中の非晶質の含有量が80質量部以上である、モルタル・コンクリート用混和材。【選択図】なし

Description

本発明は、モルタル・コンクリート用混和材に関する。また本発明は、該混和材を含む水硬性組成物、セメント組成物及びコンクリートに関する。
近年、国や地方自治体の財政逼迫、インフラの安定的な供用などの観点から、鉄筋コンクリート(RC)構造物の長寿命化の必要性が高まっている。RC構造物の経年劣化の主たる要因の一つとして、塩害が挙げられる。塩害による劣化は、劣化因子である塩化物イオンがコンクリート中に浸透し、鉄筋腐食を促進させることでRC構造物の性能を低下させるものである。
塩化物イオンの浸透に対する抵抗性の高い、高耐久のコンクリートを製造するためには、混和材を添加する方法がよく知られている。一般的には、ポゾラン反応性を有するもの、潜在水硬性を有するもの等が選択されており、具体的には高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、火山灰、珪酸白土等が挙げられる。上記以外の混和材としては、例えばシリカフュームが挙げられる。シリカフュームはSiOを主成分とする微粒子である。
その他の混和材としては、例えばメタカオリンが挙げられる。メタカオリンはSiOやAlを主成分とする微粒子である。非特許文献1では、流動性の高い高強度コンクリートにシリカフューム及びメタカオリンを適用し、流動性や圧縮強度特性について検討を行っている。同文献は、メタカオリンのX回折分析を行った結果、鉱物としてクオーツ(Quartz)とマイカ(Mica)が含まれていることを報告している。非特許文献2では、メタカオリンを含有する人工ポゾランを高炉スラグ微粉末と併用した場合に、高炉セメントと比べ、塩化物浸透抵抗性や圧縮強度の向上がみられることが報告されており、そのメカニズムは、コンクリート組成物が緻密化するためとされている。
ポゾラン反応性を有する混和材をコンクリートに使用すると、混和材中に含まれる可溶性のシリカがセメント水和物である水酸化カルシウムと反応して、ケイ酸カルシウム水和物を生成することが知られている。例えば、ポゾラン反応性を有するフライアッシュの場合、ポゾラン反応が進行することによって長期強度が増進し、水密性が向上する。
また、特許文献1には、混和材としてシリカフュームとメタカオリンとを組み合わせて使用した場合、それぞれを単独で等量使用する場合よりも塩化物浸透抵抗性が高くなることが記載されている。
特開2016−88777号公報
安台浩、金炳基、「高性能減水剤によるメタカオリンコンクリートの特性」、コンクリート工学年次論文集、Vol.28、No.1、pp.191−196、2006 江口康平、武若耕司、山口明伸、久徳貢大、「高炉セメントコンクリートの高耐久化を目指した人工ポゾランの品質改善効果」、コンクリート工学年次論文集、Vol.33、No.1、pp.761−766、2011
しかしながら、RC構造物の長寿命化によるライフサイクルコストの更なる低減を目指すためには、圧縮強度等の基礎的な性能を損なわずに、塩化物浸透抵抗性を更に向上させる最適な組み合わせで混和材を用いることが必要とされる。
本発明は、圧縮強度やフレッシュ性状などの基礎的な性能を損なうことなく、塩化物浸透抵抗性に優れるモルタル・コンクリートを得ることが可能な、モルタル・コンクリート用混和材を提供することを目的とする。本発明はまた、該混和材を含む水硬性組成物、セメント組成物及びコンクリートを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、セメントの一部を置換する混和材として、少なくともシリカフューム、メタカオリン及び水酸化カルシウムを組み合わせて用いることが上記目的の達成に有用であることを見出した。その上で、特定の鉱物組成を有するメタカオリンを使用し、さらに各成分を特定の混合比率で混合することで、従来技術よりも優れた性能を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シリカフューム、メタカオリン及び水酸化カルシウムを含むモルタル・コンクリート用混和材であって、モルタル・コンクリート用混和材100質量部中の、シリカフュームの含有量が20〜50質量部であり、メタカオリンの含有量が20〜50質量部であり、水酸化カルシウムの含有量が5〜35質量部であり、メタカオリン100質量部中の非晶質の含有量が80質量部以上である、モルタル・コンクリート用混和材を提供する。このような混和材をセメントの一部に置換して使用することで、圧縮強度やフレッシュ性状などの基礎的な性能を損なうことなく、塩化物浸透抵抗性に非常に優れたセメント組成物及びコンクリートを得ることができる。
本発明は、また、上記のモルタル・コンクリート用混和材及び結合材を含む水硬性組成物であって、結合材がセメントを含み、結合材100質量部に対して、シリカフュームを1〜12質量部含み、メタカオリンを1〜12質量部含み、且つ水酸化カルシウムを0.2〜9質量部含む、水硬性組成物を提供する。
本発明は、また、塩化物浸透抵抗性に優れるセメント組成物を提供する。すなわち、本発明は、上記の水硬性組成物、水、細骨材、減水剤及び消泡剤を含み、減水剤の含有量が水硬性組成物100質量部に対して0.5〜2.0質量部であり、消泡剤の含有量が水硬性組成物100質量部に対して0.002〜0.050質量部である、セメント組成物を提供する。
本発明は、また、塩化物浸透抵抗性に優れるコンクリートを提供する。すなわち、本発明は、上記のセメント組成物及び粗骨材を含むコンクリートであって、コンクリート1m中に、結合材を200〜700kg、水を130〜200kg、シリカフュームを5〜35kg、メタカオリンを5〜35kg、水酸化カルシウムを2〜25kg、減水剤を1〜8kg、消泡剤を0.01〜0.3kg、細骨材を500〜1500kg、及び粗骨材を500〜1500kg含む、コンクリートを提供する。
本発明によれば、圧縮強度やフレッシュ性状などの基礎的な性能を損なうことなく、塩化物浸透抵抗性に優れるモルタル・コンクリートを得ることが可能な、モルタル・コンクリート用混和材を提供することができる。また、本発明によれば、該混和材を含む水硬性組成物、セメント組成物及びコンクリートを提供することができる。本発明のモルタル・コンクリート用混和材を用いることで、圧縮強度発現性及び塩化物浸透抵抗性を高水準に達成できるセメント組成物及びコンクリートが提供される。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<モルタル・コンクリート用混和材>
本実施形態に係るモルタル・コンクリート用混和材は、シリカフュームと、メタカオリンと、水酸化カルシウムとを含む。
(シリカフューム)
シリカフュームは、金属シリコン、フェロシリコン、電融ジルコニア等を製造する際に発生する、排ガス中のダストを集塵して得られる副産物である。シリカフュームの主成分は、アルカリ溶液中で溶解する非晶質のSiOであり、その含有率は90〜98質量%程度である。このようなシリカフュームを用いることで、モルタル及びコンクリートにおける高い圧縮強度、高い引張強度及び高い流動性を確保できる。
シリカフュームのブレーン比表面積を特に限定するものではないが、マイクロフィラー効果及び反応性向上と、流動性確保の観点から、好ましくは10000〜30000cm/gであり、より好ましくは11000〜28000cm/gであり、更に好ましくは12000〜26000cm/gであり、特に好ましくは13000〜24000cm/gである。同様の観点から、シリカフュームのBET比表面積は、好ましくは50000〜250000cm/gであり、より好ましくは100000〜240000cm/gであり、更に好ましくは120000〜230000cm/gであり、特に好ましくは140000〜220000cm/gである。
(メタカオリン)
メタカオリンは、カオリン鉱物をか焼することによって得られる非晶質性の粉末である。メタカオリンの主成分は、SiO及びAlである。メタカオリンにおけるSiOの含有率を特に限定するものではないが、好ましくは40〜60質量%であり、より好ましくは49〜54質量%である。メタカオリンにおけるAlの含有率は好ましくは40〜50質量%であり、より好ましくは42〜47質量%である。メタカオリンはSiO及びAl以外の成分として、微量のFe、TiOなどの微量成分を含有する。このようなメタカオリンを用いることで、モルタル及びコンクリートにおける高い圧縮強度、高い引張強度及び高い流動性を確保できる。
メタカオリンのブレーン比表面積を特に限定するものではないが、マイクロフィラー効果及び反応性向上と、流動性確保の観点から、好ましくは15000〜40000cm/gであり、より好ましくは19000〜38000cm/gであり、更に好ましくは23000〜35000cm/gであり、特に好ましくは25000〜33000cm/gである。同様の観点から、メタカオリンのBET比表面積は、好ましくは50000〜250000cm/gであり、より好ましくは80000〜200000cm/gであり、更に好ましくは100000〜180000cm/gであり、特に好ましくは120000〜170000cm/gである。
(メタカオリン中の鉱物)
メタカオリン中に含まれる結晶質鉱物としては、ムライト(Mullite)、カオリナイト(Kaolinite)、ルチル(Rutile)、クオーツ(Quartz)、γ−アルミナ(Alumina gamma)、マスコバイト(Muscovite)、アナターゼ(Anatase)等が挙げられる。塩化物浸透抵抗性の観点から、メタカオリン100質量部中のそれぞれの鉱物の量は、特に限定するものではないが以下のとおりとすることができる。
ムライト:好ましくは5.0質量部以下であり、より好ましくは0〜4.0質量部であり、更に好ましくは0.1〜3.0質量部であり、特に好ましくは0.2〜2.0質量部である。
カオリナイト:好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.02〜0.5質量部であり、更に好ましくは0.03〜0.3質量部であり、特に好ましくは0.04〜0.1質量部である。
ルチル:好ましくは0.05〜0.5質量部であり、より好ましくは0.1〜0.4質量部であり、更に好ましくは0.15〜0.3質量部である。
クオーツ:好ましくは0.3〜2.0質量部であり、より好ましくは0.45〜1.5質量部であり、更に好ましくは0.5〜1.3質量部である。
γ−アルミナ:好ましくは0〜5.0質量部であり、より好ましくは0〜3.0質量部であり、更に好ましくは0〜2.0質量部である。
マスコバイト:好ましくは0.3〜5.0質量部であり、より好ましくは0.5〜3.5質量部であり、更に好ましくは0.5〜2.3質量部である。
アナターゼ:好ましくは0.3〜2.0質量部であり、より好ましくは0.5〜1.5質量部であり、更に好ましくは0.6〜1.0質量部である。
(非晶質)
非晶質とは、結晶のように原子や分子が規則正しい構造をもたず、不規則な配列をしている固体であり、アモルファスとも呼ばれる。一般に結晶性の高い物質は安定しており、化学反応性が低い。非晶質量が多ければ反応性が高く、硬化物の緻密化に貢献するため、優れた塩化物浸透抵抗性を得るためにはメタカオリン中の非晶質量が多いことが効果的である。メタカオリン100質量部中の非晶質の量は、80質量部以上であり、好ましくは85〜99質量部であり、より好ましくは90〜98質量部であり、更に好ましくは94〜97質量部である。
(水酸化カルシウム)
水酸化カルシウムは、セメントの水和反応により生成する水和物の1つである。生成する水酸化カルシウム量は、セメントの鉱物組成や反応率などに依存する。また、水酸化カルシウムは消石灰とも呼ばれ、工業農業分野で広く取り扱われている。コンクリートに添加する場合、例えばJIS R 9001に規定される工業用消石灰を使用することができる。
本実施形態に係るモルタル・コンクリート用混和材において、混和材中に含まれる反応性の高いSiO、Al及びCaOの量的なバランスをとる観点から、モルタル・コンクリート用混和材100質量部中の、シリカフューム、メタカオリン及び水酸化カルシウムの含有量はそれぞれ以下のように調整される。
シリカフュームの含有量は20〜50質量部であるが、好ましくは30〜48質量部であり、より好ましくは35〜47質量部であり、更に好ましくは40〜46質量部であり、特に好ましくは42〜46質量部である。
メタカオリンの含有量は20〜50質量部であるが、好ましくは30〜48質量部であり、より好ましくは35〜47質量部であり、更に好ましくは40〜46質量部であり、特に好ましくは42〜46質量部である。
水酸化カルシウムの含有量は5〜35質量部であるが、好ましくは7〜33質量部であり、より好ましくは8〜30質量部であり、更に好ましくは9〜20質量部であり、特に好ましくは10〜15質量部である。
<水硬性組成物>
本実施形態に係る水硬性組成物は、上記のモルタル・コンクリート用混和材と、結合材とを含む。
(結合材)
結合材はセメントを含む。セメントとしては、ポルトランドセメント及び高炉セメントが挙げられる。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメントが挙げられる。これらのうち一種を単独で使用してもよく二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末等を適時セメントに加えて使用しても良い。
ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、好ましくは2500〜4800cm/g、より好ましくは2800〜4000cm/g、更に好ましくは3000〜3600cm/g、特に好ましくは3200〜3500cm/gである。ポルトランドセメントのブレーン比表面積が2500cm/g未満では、モルタル硬化物及びコンクリート硬化物の強度が低くなる傾向にあり、4800cm/gを超えると低水セメント比での流動性が低下する傾向にある。
本実施形態に係る水硬性組成物において、上記結合材100質量部に対するシリカフュームの量及びメタカオリンの量は、それぞれ1〜12質量部であり、好ましくは2〜11質量部であり、より好ましくは3〜10質量部であり、更に好ましくは3〜7質量部である。シリカフュームの含有量及びメタカオリンの含有量がそれぞれ1質量部未満であると、塩化物浸透抵抗性及び圧縮強度の向上効果が弱まる傾向にあり、含有量がそれぞれ12質量部を超えると、所定のフレッシュ性状の確保(流動性、空気量等)が難しくなる傾向にある。
本実施形態に係る水硬性組成物において、上記結合材100質量部に対する水酸化カルシウムの量は、それぞれ0.2〜9質量部であり、好ましくは0.3〜8質量部であり、より好ましくは0.4〜7質量部であり、更に好ましくは0.5〜6質量部である。膨張材の含有量が0.2質量部未満の場合又は9質量部を超える場合、塩化物浸透抵抗性の向上効果が弱まる傾向にある。
<セメント組成物>
本実施形態に係るセメント組成物は、上記の水硬性組成物と、水と、細骨材と、化学混和剤とを含む。
(水)
水として、水道水、蒸留水又は脱イオン水などを使用すればよい。水と結合材の質量比(水/結合材)は好ましくは0.21〜0.70であり、より好ましくは0.23〜0.68であり、更に好ましくは0.25〜0.66であり、特に好ましくは0.27〜0.63である。この質量比が0.21未満であると、所定のフレッシュ性状(流動性、空気量等)や成形性の確保が難しくなる傾向にあり、0.70を超えると、圧縮強度や耐久性が低下する傾向にある。
本実施形態に係るセメント組成物において、水と水硬性組成物の質量比(水/水硬性組成物)は好ましくは0.30〜0.65であり、より好ましくは0.30〜0.63であり、更に好ましくは0.30〜0.60であり、特に好ましくは0.30〜0.55である。この比が0.65を超えると、圧縮強度や耐久性が低下する傾向にある。
(細骨材)
細骨材として、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、石灰石骨材、高炉スラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等を併用することができる。細骨材は、モルタルスラリーの流動性の観点から、粒径0.15mm以下の粒群を、好ましくは70〜98質量%、より好ましくは72〜97質量%、更に好ましくは75〜96質量%含む。細骨材は、粒径0.15mm以下の粒群を上記範囲で含むとともに、粒径0.075mm以下の粒群を、好ましくは16〜80質量%、より好ましくは20〜75質量%、更に好ましくは25〜70質量%含む。なお、微粒分の調製方法は、特に限定されないが、例えば、2種類以上の粒度の異なる細骨材を混ぜ合わせることによって調製可能である。
(化学混和剤)
化学混和剤としては、減水剤、AE剤、空気量調整剤(消泡剤)、収縮低減剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤などが挙げられる。求められる性能に応じてこれらのうち、一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
上記減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等を使用することができる。低水セメント比での流動性確保の観点から、減水剤として、ポリカルボン酸系の減水剤、高性能減水剤又は高性能AE減水剤を用いることが好ましく、ポリカルボン酸系の高性能減水剤を用いることがより好ましい。本実施形態に係るセメント組成物における減水剤の含有量は、水硬性組成物100質量部に対して好ましくは0.5〜2.0質量部、より好ましくは0.5〜1.5質量部、更に好ましくは0.5〜1.0質量部である。
上記空気量調整剤(消泡剤)としては、特殊非イオン配合型界面活性剤、ポリアルキレングリコール誘導体、疎水性シリカ、ポリエーテル系等が挙げられる。本実施形態に係るセメント組成物における消泡剤の含有量は、水硬性組成物100質量部に対して好ましくは0.002〜0.050質量部、より好ましくは0.006〜0.045質量部、更に好ましくは0.010〜0.040質量部、特に好ましくは0.015〜0.035質量部である。
上記の組成からなるセメント組成物は、建築材料としてそのまま好適に使用でき、またセメント組成物と粗骨材とを混合してなるコンクリートとしても好適に使用できる。以下、かかるコンクリートについて説明する。
<コンクリート>
本実施形態に係るコンクリートは、上記のセメント組成物と、粗骨材を含む。上記本実施形態に係るセメント組成物に、粗骨材を適量組み合わせることにより、コンクリートを調製することできる。組み合わせる粗骨材の量及び水の量は、目標圧縮強度、じん性、及び目標スランプに応じて適宜変えればよい。
(粗骨材)
粗骨材としては、例えば、砂利、砕石、石灰石骨材、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材等を使用することができる。また、上記粗骨材は、5mmの篩いに85質量%以上残留する粒径を有することがより好ましい。
所望の効果を得る観点から、コンクリートを構成する各成分の単位量(コンクリート1m中に含まれる成分量)は以下の範囲とすることが好ましい。
・結合材(好適にはポルトランドセメント):200〜700kg/m
・水:130〜200kg/m
・シリカフューム:5〜35kg/m
・メタカオリン:5〜35kg/m
・水酸化カルシウム:2〜25kg/m
・減水剤を1〜8kg/m
・消泡剤を0.01〜0.3kg/m
・細骨材:500〜1500kg/m
・粗骨材:500〜1500kg/m
結合材の単位量は上記のとおり好ましくは200〜700kg/mであり、より好ましくは200〜650kg/mであり、更に好ましくは250〜625kg/mであり、特に好ましくは300〜600kg/mである。
水の単位量は上記のとおり好ましくは130〜200kg/mであり、より好ましくは140〜190kg/mであり、更に好ましくは145〜185kg/mであり、特に好ましくは150〜180kg/mである。
シリカフュームの単位量は上記のとおり好ましくは5〜35kg/mであり、より好ましくは8〜32kg/mであり、更に好ましくは10〜30kg/mであり、特に好ましくは12〜25kg/mである。シリカフュームの単位量が5kg/m未満であると、塩化物浸透抵抗性及び圧縮強度の向上効果が得難くなる傾向にあり、35kg/mを超えると、所定のフレッシュ性状の確保(流動性、空気量等)が難しくなる傾向にある。
メタカオリンの単位量は、上記のとおり好ましくは5〜35kg/mであり、より好ましくは8〜32kg/mであり、更に好ましくは10〜30kg/mであり、特に好ましくは12〜25kg/mである。メタカオリンの単位量が5kg/m未満であると、塩化物浸透抵抗性及び圧縮強度の向上効果が得難くなる傾向にあり、35kg/mを超えると、所定のフレッシュ性状の確保(流動性、空気量等)が難しくなる傾向にある。
水酸化カルシウムの単位量は、上記のとおり好ましくは2〜25kg/mであり、より好ましくは2.3〜23kg/mであり、更に好ましくは2.6〜21kg/mであり、特に好ましくは3〜18kg/mである。水酸化カルシウムの単位量が2kg/m未満の場合又は25kg/mを超える場合、塩化物浸透抵抗性の向上効果が小さくなる傾向にある。
減水剤の単位量は、上記のとおり好ましくは1〜8kg/mであり、より好ましくは1.3〜7kg/mであり、更に好ましくは1.6〜6kg/mであり、特に好ましくは2〜5kg/mである。減水剤の単位量が1kg/m未満であると、所定のフレッシュ性状の確保(流動性、空気量等)が難しくなる傾向にあり、8kg/mを超えると、凝結遅延が生じる可能性がある。
消泡剤の単位量は、上記のとおり好ましくは0.01〜0.3kg/mであり、より好ましくは0.02〜0.25kg/mであり、更に好ましくは0.03〜0.2kg/mであり、特に好ましくは0.04〜0.15kg/mである。消泡剤の単位量が0.01kg/m未満の場合又は0.3kg/mを超える場合、所定のフレッシュ性状の確保(流動性、空気量等)が難しくなる傾向にある。
細骨材の単位量は、上記のとおり好ましくは500〜1500kg/mであり、より好ましくは530〜1300kg/mであり、更に好ましくは560〜1100kg/mであり、特に好ましくは600〜1000kg/mである。
粗骨材の単位量は上記のとおり好ましくは500〜1500kg/mであり、より好ましくは600〜1400kg/mであり、更に好ましくは700〜1300kg/mであり、特に好ましくは800〜1200kg/mである。
本実施形態に係るモルタル・コンクリート用混和材を、例えば結合材、水、細骨材及び化学混和剤と混合することで、塩化物浸透抵抗性及び圧縮強度発現性に優れるセメント組成物を容易に得ることができる。また、この混和材を、例えば結合材、水、細骨材、粗骨材及び化学混和剤と混合することで、塩化物浸透抵抗性及び圧縮強度発現性に優れるコンクリートを容易に得ることができる。
実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[1.使用材料]
以下の表1及び表2に示す材料を使用した。
[2.使用材料の分析試験]
(1)粉末X線回折分析
表2に示したメタカオリンについて、粉末X線回折分析により鉱物組成を測定した。X線回折装置は、ブルカージャパン社製D2 PHASER 2nd Genを使用した。X線の測定条件は管電圧30kV、管電流10mA、ステップ間隔0.02°、計測時間0.5sとした。測定材料に対して内部標準物質(Al)を9:1の割合で混合して、振動ミルにかけた試料について、リートベルト解析ソフトMDI JADE 6を用いて、検出物の定量を行った。結果を表3に示す。
[3.コンクリートの配合]
上記材料を用いた、コンクリートの配合を以下の表4に示す。シリカフューム、メタカオリン及び水酸化カルシウムの合計量に対する水酸化カルシウムの比は0〜50質量%とし、シリカフュームとメタカオリンの量比は1:1とした。目標空気量は、2.0%以下とした。目標空気量が得られるよう、空気量調整剤(消泡剤)の量を調整した。
[4.コンクリートの調製及び試験方法]
(1)コンクリートの練り混ぜ
表4に示した配合のコンクリートの練り混ぜは次の手順で行った。すなわち、水平二軸強制練りミキサ内に、細骨材、粗骨材、セメント及び混和材を投入して30秒間空練りした後、水(混和剤を含む)を加えて120秒間練り混ぜた。
(2)コンクリートのフレッシュ性状
フレッシュコンクリートの性状試験として、スランプ及び空気量を測定した。スランプ試験はJIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」、空気量の測定はJIS A 1128「コンクリートの空気量の圧力による試験方法―空気室圧力方法」に準じて実施した。
(3)コンクリート供試体の養生
コンクリート供試体の養生は、材齢初期に蒸気養生にて実施した。20℃で4時間の前置きの後、昇温速度10℃/hrにて昇温、60℃で3時間保持し、降温速度10℃/hrにて降温させた。材齢1日以降は20℃の恒温室で気中養生した。
(4)拡散係数測定試験
塩化物イオンの実効拡散係数の測定は、土木学会規準JSCE−G571−2010「電気泳動によるコンクリート中の塩化物イオンの実効拡散係数試験方法(案)」に準拠して行った。直径10cm、高さ20cmの円柱供試体の中央部から5.0cmの円盤型供試体を切り出し、円周面をエポキシ樹脂でシーリングした後、真空飽和処理を行い、供試体を水で飽和させた。電気泳動セルに供試体を設置して直流定電圧15Vを電極間に印加し、陽極側(0.5mol/L・NaCl水溶液)および陰極側(0.3mol/L・NaOH水溶液)の塩化物イオン濃度等を経時的に測定して、実効拡散係数を算出した。
(5)圧縮強度試験
JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて行い、材齢28日での圧縮強度を測定した。
[5.試験結果]
コンクリートのフレッシュ性状、材齢28日での圧縮強度及び塩化物イオン実効拡散係数を以下の表5に示す。塩化物イオン実効拡散係数の評価の基準は以下のとおりとした。
〇:塩化物イオン実効拡散係数が0.10(cm/年)を下回る
×:塩化物イオン実効拡散係数が0.10(cm/年)を上回る
[6.評価]
拡散係数測定試験の結果、No.2、3についてフレッシュ性状、圧縮強度を大きく損なうことなく、塩化物イオン実効拡散係数が水酸化カルシウムを使用しないNo.1の0.10(cm/年)を下回ることが分かった。
一方で、No.4については実効拡散係数がNo.1の0.10(cm/年)を上回っており、水酸化カルシウムを多量に添加した場合、塩化物浸透抵抗性が低下する懸念がある。すなわち、シリカフュームと特定のメタカオリンとを使用し、且つ水酸化カルシウムを一定量使用すると、優れた塩化物浸透抵抗性を付与したコンクリートを得ることが可能である。
以上より、本実施例の混和材を使用したコンクリートは、塩化物浸透抵抗性に優れるコンクリートであることが確認された。

Claims (5)

  1. シリカフュームと、メタカオリン及び水酸化カルシウムを含むモルタル・コンクリート用混和材であって、
    前記モルタル・コンクリート用混和材100質量部中の、前記シリカフュームの含有量が30〜50質量部であり、前記メタカオリンの含有量が20〜50質量部であり、前記水酸化カルシウムの含有量が5〜35質量部であり、
    前記メタカオリンは結晶性鉱物を含有し、前記メタカオリン100質量部中の非晶質の含有量が80質量部以上である、モルタル・コンクリート用混和材。
  2. 前記モルタル・コンクリート用混和材100質量部中の、前記シリカフュームの含有量が35〜47質量部であり、前記メタカオリンの含有量が35〜47質量部であり、前記水酸化カルシウムの含有量が8〜30質量部である、請求項1に記載のモルタル・コンクリート用混和材。
  3. 請求項1又は2に記載のモルタル・コンクリート用混和材及び結合材を含む水硬性組成物であって、前記結合材がセメントを含み、
    前記結合材100質量部に対して、前記シリカフュームを1〜12質量部含み、前記メタカオリンを1〜12質量部含み、且つ前記水酸化カルシウムを0.2〜9質量部含む、水硬性組成物。
  4. 請求項に記載の水硬性組成物、水、細骨材、減水剤及び消泡剤を含み、
    前記水と前記水硬性組成物の質量比(水/水硬性組成物)が0.30〜0.65であり、
    前記減水剤の含有量が、前記水硬性組成物100質量部に対して0.5〜2.0質量部であり、
    前記消泡剤の含有量が、前記水硬性組成物100質量部に対して0.002〜0.050質量部である、セメント組成物。
  5. 請求項に記載のセメント組成物及び粗骨材を含むコンクリートであって、
    前記コンクリート1m中に、
    前記結合材を200〜700kg、
    前記水を130〜200kg、
    前記シリカフュームを5〜35kg、
    前記メタカオリンを5〜35kg、
    前記水酸化カルシウムを2〜25kg、
    前記減水剤を1〜8kg、
    前記消泡剤を0.01〜0.3kg、
    前記細骨材を500〜1500kg、及び
    前記粗骨材を500〜1500kg含む、コンクリート。
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