JP6825262B2 - 異物識別方法および異物識別装置 - Google Patents

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本発明は、地盤中に存在する異物の種類を識別するための異物識別方法および異物識別方法に用いる異物識別装置に関する。
例えば、有害物質を使用している工場や施設の建替え等を実施する際には、あらかじめ敷地内の土壌が有害物質により汚染されている度合いを把握するべく、土壌汚染調査の実施が義務付けられている。土壌汚染調査としては、一般にボーリング調査が広く知られているが、敷地内には水道管やガス管等供用中のライフライン設備が埋設されているため、ボーリングマシンによる地盤の掘削作業中にこれらを誤って損傷させる虞がある。
このような中、掘削作業中に掘削ビットが異物に当接したことを検知し、その作動を自動停止できるようなドリルやボーリングマシン等の地中削孔機が開発されている。しかし、当接した異物の種類を識別するまでには至っておらず、異物を検知した際には、掘削位置を変更する、もしくは異物がライフライン設備であるのか、または礫であるのか等の識別作業を別途実施する、等の対策を講じている。
異物の種類を識別する方法としては、例えば特許文献1に、弾性波の発振手段と受振手段の両者を地盤中の異物に接触させた状態で弾性波を発振し、弾性波の振動特性から異物の種類を識別する方法が開示されている。
特開平8−105977号公報
しかし、上記の方法では、異物の形状や材質によっては明瞭な振動特性が得られないだけでなく、異物と地盤との接触状態によっても振動特性が変化しやすいため、異物の種類を精度よく識別できないおそれが生じる。
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、簡略な方法で精度よく地盤中に存在する異物の種類を識別することの可能な、異物識別方法および異物識別方法に用いる異物識別装置を提供することである。
かかる目的を達成するため本発明の異物識別方法は、地盤中に存在する異物の種類を識別する異物識別方法であって、既知の地中埋設物各々について、異物の種類を識別するための評価基準となる基準変形係数をあらかじめ設定する第1の工程と、前記異物に到達する削孔にロッドを挿入して先端を前記異物に接触させた後、該ロッドの先端に衝撃荷重を発生させるとともに、これにより生じる前記異物に作用する荷重と前記異物の変位を測定し、該変位と前記荷重とに基づいて、前記異物の実測変形係数を算出する第2の工程と、該実測変形係数と前記基準変形係数とを比較し、前記異物の種類を識別する第3の工程と、を備えることを特徴とする。
上述する本発明の異物識別方法によれば、あらかじめ既知の地中埋設物各々について基準変形係数を算出しておくことにより、現場にて地中に存在する異物の実測変形係数を算出するのみの簡略な方法にて、基準変形係数と実測変形係数との比較から異物の種類を精度よく識別することが可能となる。
したがって、上記の方法を、異物を検知したことにより掘削作業を中断した現場に採用することにより、識別した異物の種類に応じて作業の中止もしく続行等の判断を下すことができるため、異物を識別できないままに作業位置を変更する等の無駄な作業を省略し、効率よく掘削作業を実施することが可能となる。
本発明の異物識別装置は、本発明の異物識別方法に用いる異物識別装置であって、先端が前記異物に接触される前記ロッドと、該ロッドの基端に固定された当接板と、該当接板に向けて自由落下し、前記ロッドの先端に衝撃荷重を発生させる錘体と、該衝撃荷重の発生により生じる前記荷重を測定する荷重計および前記変位を測定する変位計と、を備え、前記荷重計と前記変位計が、前記当接板の上面に配置されていることを特徴とする。
上述する本発明の異物識別装置によれば、異物に接触させたロッドの先端に対して衝撃荷重を発生させることにより生じる異物に作用する荷重と異物の変位を、簡略な設備にて容易に測定することができることから、迅速に実測変形係数を算出して異物の識別作業を効率よく実施することが可能となる。
また、本発明の異物識別装置は、本発明の異物識別方法に用いる異物識別装置であって、先端が前記異物に接触される前記ロッドと、該ロッドの基端に固定された当接板と、該当接板に向けて自由落下し、前記ロッドの先端に衝撃荷重を発生させる錘体と、該衝撃荷重の発生により生じる前記荷重を測定する荷重計および前記変位を測定する変位計と、を備え、前記荷重計と前記変位計が、前記ロッドの先端近傍に内装されることを特徴とする。
上述する本発明の異物識別装置によれば、荷重計と変位計がロッドにおける異物との接触面近傍に設置されるため、削孔内にロッドを配置した際にロッドが孔壁等に接触するような環境にあっても、精度よく荷重および変位を測定することが可能となる。
本発明によれば、衝撃荷重を発生させることにより生じる荷重と変位に基づいて算出した実測変形係数を利用して、地盤中の異物を精度よく識別することが可能となる。
本発明における異物識別装置を示す図である。 本発明における異物識別装置により測定される荷重および変位の波形データを示すグラフである。 本発明における地中埋設物の変形係数を示すグラフである。 本発明における異物識別方法を示す図である。 本発明における異物識別装置の他の実施の形態を示す図である。
本発明の異物識別方法および異物識別装置は、地盤中に異物の存在を検知した際の異物の種類を識別する方法および装置である。本実施の形態では、ボーリング調査時を事例とし、以下に図1〜図5を参照して詳細を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、地盤掘削工事の途中で異物の存在を検知した場合や、既設の地中孔が存在し、その孔底を調査する場合等、いずれの状況に採用するものであってもよい。
図1で示すように、異物識別装置1は、ロッド2、当接板3、衝撃荷重付与装置4、荷重計5および変位計6を備えており、ロッド2は中実の棒材により構成され、その先端には、地盤中の異物9に接触する載荷面21が形成されている。
ロッド2は、図4(b)で示すように、地表面から地盤中の異物9に到達するのに十分な長さを確保する必要があることから、長尺の棒材を採用してもよいし、連結可能な複数の棒状材を採用し、地表面から測定しようとする異物9までの距離に応じて適宜長さを調整できる構成としてもよい。また、ロッド2の断面径は、ロッド2が挿入される削孔10の孔壁に接触しない大きさであればいずれの断面径を有するものであってもよい。そして、ロッド2の基端には、当接板3がロッド2の軸心に対して垂直に固定されている。
当接板3は、図1で示すように、表面が滑らかに成形された円盤状の平板よりなり、その上方には衝撃荷重付与装置4が配置されている。衝撃荷重付与装置4は、断面視リング状の錘体41と錘体41を貫通する棒状のガイド体42とを備えており、錘体41の断面外形は当接板3と同一の形状に形成され、ガイド体42はロッド2と同軸上に配置されている。
衝撃荷重付与装置4のガイド体42は、必ずしも棒状に限定されるものではなく、錘体41を自由落下可能にガイドできる構成であれば、例えば、錘体41を内包する長尺の筒体等、いずれの形状を有するものであってもよい。そして、錘体41が当接板3に向けて自由落下することでロッド2の載荷面21に衝撃荷重が発生した際に生じる、異物9に作用する荷重と異物9の上下方向の変位は、荷重計5および変位計6にて測定される。
荷重計5は、底板と天板を備えたロッド2と同径の円筒体よりなる起歪体51と、起歪体51の内周面に設置されたひずみゲージ52とを備え、起歪体51に作用する圧縮力の荷重をひずみゲージ52により感知し、電気信号に変換する。なお、荷重計5は必ずしも上述するひずみゲージ式に限定するものではなく、荷重を測定できる圧縮型の荷重計であれば一般に用いられているいずれの構造を有するものを採用してもよい。
また、変位計6は、起歪体51内に配置された圧電型の加速度センサを採用しており、圧電素子の伸び縮み等の変化に応じて電荷を出力する。変位計6も、必ずしも圧電型の加速度センサに限定されるものではなく、静電容量型の加速度センサや、加速度センサでなくても変位を測定できるものであれば、いずれを採用してもよい。なお、加速度センサを用いる場合には、測定値を2回積分することにより変位を算出している。
本実施の形態ではこれら荷重計5および変位計6を、当接板3と衝撃荷重付与装置4の間に配置して、当接板3の上面と起歪体51の底板とを面接触させるとともに、衝撃荷重付与装置4の錘体41を、起歪体51の天板上面に自由落下させる構成としている。なお、衝撃荷重付与装置4と荷重計5および変位計6に替えて、地盤の剛性を自動測定する装置として一般に広く知られている小型FWDシステムのFWD本体を採用し、このFWD本体を当接板3の上面に設置してもよい。これら荷重計5および変位計6の出力は、A/D変換器(図示せず)によりデジタル変換され、端末装置7に転送される。
端末装置7は、情報処理装置、入力装置および出力装置を少なくとも備えるいわゆるコンピュータであり、情報処理装置は演算処理装置及び記憶装置等のハードウェアと、該ハードウェア上で動作するソフトウェアとで構成されている。したがって、デジタル変換された荷重計5および変位計6の出力は、端末装置7の情報処理装置にて処理されることにより、図2で示すような荷重および変位の波形データとして出力装置に出力することも可能であるし、記憶装置に格納することも可能である。
また、端末装置7の情報処理装置には、測定した荷重および変位に基づいて応力とひずみの比を表す変形係数Eを把握するための解析を行う計測・処理ソフトウェアが搭載されており、本実施の形態では、(1)式で示すBurmister理論式にて変形係数Eを算出可能な計測・処理ソフトウェアを搭載している。
E=2(1−V2)P/πrD・・・(1)
E:変形係数
P:荷重の最大値(N)
D:変位の最大値(mm)
r:載荷面21の半径(mm)
V:ポアソン比
つまり、図4(b)で示すように、ロッド2の載荷面21を異物9に接触させるとともに、錘体41を荷重計5から所望の距離だけ離間させて固定させた状態でロッド2を鉛直状に立設する。この後、錐体41の固定を解除すると、錘体41がガイド体42に沿って自由落下することで荷重計5を介して当接板3に当接し、ロッド2の載荷面21に衝撃荷重が発生する。1回の衝撃荷重の発生により生じた、異物9に作用する荷重と異物9の変位はそれぞれ、荷重計5と変位計6により測定され、デジタル変換されることにより、図2で示すような横軸を時間軸とする波形データとして出力される。これら波形データのうち荷重および変位それぞれの最大値をとり、(1)式に代入することによって変形係数Eが算出される。
ところで、上述する異物識別装置1を用いて、既知の地中埋設物の中からガス管、電線、塩ビ管を選択し、これらの変形係数Eを算出した。すると、図3で示すように、ガス管で1200MN/m程度、電線で1450MN/m程度、塩ビ管で450MN/m程度と、荷重を異ならせた場合にも、変形係数Eは地中埋設物の種類ごとでその数値に明らかな差異を生じる様子がわかる。
このように、変形係数Eは、測定条件が変わった場合にも異物9の材質や形状等の特徴を的確に捉え、地中埋設物の種類ごとにある一定範囲の数値を示すことのできる固有のものであるとの知見を得たことから、発明者らは変形係数Eを、異物9の種類を識別するための評価値として採用することとした。
これにより、地盤中に存在している可能性のあるライフライン設備等、既知の地中埋設物各々の変形係数Eをあらかじめ把握しておくことで、水道管や下水管等の管路情報図が入手できない場合にも、地盤を大きく掘り起こすことなく、地盤中に存在する異物9の種類を識別できる。そこで、本実施の形態では、あらかじめ算定した既知の地中埋設物の変形係数Eを、基準変形係数E2として端末装置7の記憶装置に格納している。
こうすると、現場において掘削作業中に異物9を検知した場合に、異物識別装置1を利用して荷重および変位を実測し、これに基づいて算出した実測変形係数E1とあらかじめ記憶装置に格納した基準変形係数E2とを端末装置7の演算処理装置にて比較することにより、異物9が既知の地中埋設物のいずれに該当するのか、その種類を自動識別することが可能となる。
上述する異物識別装置1を用いた異物識別方法は、例えば土壌汚染のおそれがある対象地盤に対して汚染の広がりや深さを把握するべくボーリングマシン8を用いて地盤中を掘削する際に適用可能である。
<第1の工程>
具体的には、対象地盤中に存在している可能性のあるライフライン設備等既知の地中埋設物についてあらかじめ、異物識別装置1を用いて変形係数Eを算出し、これを異物9の種類を識別するための評価基準となる基準変形係数E2として設定し端末装置7の記憶装置に格納しておく。
<第2の工程>
図4(a)で示すように、ボーリングマシン8による掘削中であって所望の深度に到達する前にトルク値が急変する等の異変が生じ、地中に異物9の存在を検知したところで、掘削作業を一時中断してボーリングマシン8を引き抜く。このとき、地表面から孔底に位置する異物9までの距離を把握しておく。次に、図4(b)で示すように、異物識別装置1のロッド2を、少なくとも地表面から削孔10の孔底に位置する異物9までの距離よりも長尺となる長さに設定し、ロッド2を削孔10に挿入して載荷面21を異物9に接触させる。
この状態でロッド2が削孔10の孔壁に触れることなく、かつ鉛直状となるよう保持しつつ、衝撃荷重付与装置4の錘体41を自由落下させて、ロッド2の載荷面21に衝撃荷重を発生させる。そして、これにより生じた荷重および変位を荷重計5および変位計6にて測定し、端末装置7に転送する。
<第3の工程>
そして、端末装置7の出力装置に、荷重および変位の波形データ、荷重および変位に基づいて演算処理装置にて算出された実測変形係数E1、および実測変形係数E1と記憶装置に格納した既知の地中埋設物の基準変形係数E2とを演算処理装置にて比較することにより自動識別された、異物9の種類を表示する。
これらの結果から、異物9がガス管や水道管等のライフライン設備と識別された場合には、ボーリングマシン8による掘削作業を取り止め、対象領域内の他の地点で再度掘削を行う。また、異物9がいずれのライフライン設備にも該当しない場合には、岩石や礫層であるものと判断し、掘削作業を再開すればよい。このように、識別した異物9の種類に応じて作業の中止もしく続行等の判断を下すことができるため、効率よく掘削作業を実施することが可能となる。
本発明の異物識別装置1および異物識別方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、荷重計5および変位計6を当接板3と衝撃荷重付与装置4の間に配置したが、必ずしもこれに限定されるものではない。図5で示すように、ロッド2の載荷面21近傍に配置すべくロッド2の一部をなすように設置するとともに、衝撃荷重付与装置4を当接板3に配置して、錘体41を当接板3の上面に直接自由落下させてもよい。こうすると、ロッド2が削孔10の孔壁等に接触するような場合にも、精度よく荷重および変位を測定することが可能となる。
また、本実施の形態では、衝撃荷重付与装置4に錘体41を備える構造とし、これを自由落下させたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ロッド2の載荷面21に衝撃荷重を発生させることのできる構造であれば、電力等の外力を作用させる等いずれの手段を用いる構造であってもよい。
さらに、あらかじめ基準変形係数E2を測定しておく既知の地中埋設物は、必ずしもライフライン設備に限定するものではなく、地中に埋設されている可能性のあるものであれば、岩石やコンクリート片等いずれであってもよい。
1 異物識別装置
2 ロッド
21 載荷面
3 当接板
4 衝撃荷重付与装置
41 錘体
42 ガイド体
5 荷重計
51 起歪体
52 ひずみゲージ
6 変位計
7 端末装置
8 ボーリングマシン
9 異物
10 削孔

Claims (3)

  1. 地盤中に存在する異物の種類を識別する異物識別方法であって、
    既知の地中埋設物各々について、異物の種類を識別するための評価基準となる基準変形係数をあらかじめ設定する第1の工程と、
    前記異物に到達する削孔にロッドを挿入して先端を前記異物に接触させた後、該ロッドの先端に衝撃荷重を発生させるとともに、これにより生じる前記異物に作用する荷重と前記異物の変位を測定し、該変位と前記荷重とに基づいて、前記異物の実測変形係数を算出する第2の工程と、
    該実測変形係数と前記基準変形係数とを比較し、前記異物の種類を識別する第3の工程と、
    を備えることを特徴とする異物識別方法。
  2. 請求項1に記載の異物識別方法に用いる異物識別装置であって、
    先端が前記異物に接触される前記ロッドと、
    該ロッドの基端に固定された当接板と、
    該当接板に向けて自由落下し、前記ロッドの先端に衝撃荷重を発生させる錘体と、
    該衝撃荷重の発生により生じる前記荷重を測定する荷重計および前記変位を測定する変位計と、を備え、
    前記荷重計と前記変位計が、前記当接板の上面に配置されていることを特徴とする異物識別装置。
  3. 請求項1に記載の異物識別方法に用いる異物識別装置であって、
    先端が前記異物に接触される前記ロッドと、
    該ロッドの基端に固定された当接板と、
    該当接板に向けて自由落下し、前記ロッドの先端に衝撃荷重を発生させる錘体と、
    該衝撃荷重の発生により生じる前記荷重を測定する荷重計および前記変位を測定する変位計と、を備え
    前記荷重計と前記変位計が、前記ロッドの先端近傍に内装されることを特徴とする異物識別装置。
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