JP6820007B2 - 黒糖焼酎製造法 - Google Patents

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本発明は、例えば多様化した風味を有する黒糖焼酎の製造方法に関する。
黒糖焼酎は、年間生産額が76億円を超える奄美の主要な特産物である。甘く黒糖を思わせる香りが特徴で、原料黒糖の品質の違いが酒質に大きく影響していると考えられている。
黒糖の品質は、その製造法に大きく左右される。これまでに、サトウキビ搾汁液に添加する石灰の量を変化させることで、風味や成分が異なる黒糖ができることが明らかになっている(非特許文献1及び2)。しかしながら、石灰の添加量を変化させて製造した黒糖の品質と黒糖焼酎の風味との関係性は明らかにされていない。
ところで、特許文献1は、甜菜を用いた固形黒砂糖の製造方法において、雑味を除くために炭酸カルシウムを加えることを開示する。また、特許文献2は、蒸留酒に使われる樽を利用して醸造酒を製造する際に、香り、色合、風味等の化学反応を促進させるために石灰の成分である水酸化カルシウム、又は炭酸水素ナトリウムを添加することを開示する。
しかしながら、従来において、黒糖製造時における石灰添加量が黒糖焼酎の風味に与える影響については知られていなかった。
特開2007-306819号公報 特開2006-311842号公報
氏原ら, 日作九支報, 2001年, 67:50-51 氏原ら, 日本食品科学工学会誌, 2009年, 56 (6):343-349
本発明は、上述した実情に鑑み、多様化した風味を有する黒糖焼酎の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、サトウキビ搾汁液のpHを6.6〜7.6になるよう、添加する石灰の量を調整することにより製造された黒糖を使用して黒糖焼酎を製造することで、甘い香りが増強した黒糖焼酎を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)サトウキビ搾汁液のpHが6.6〜7.6になるように、水酸化カルシウム溶液をサトウキビ搾汁液に添加して黒糖を製造する工程と、前記工程で製造した黒糖を使用して黒糖焼酎を製造する工程とを含む、黒糖焼酎の製造方法。
(2)製造した黒糖焼酎が15μg/L以上のβ-ダマセノンを含む、(1)記載の方法。
(3)15μg/L以上のβ-ダマセノンを含む黒糖焼酎。
本発明によれば、甘い香りが増強した黒糖焼酎を提供することができる。
黒糖の製造プロセスを示す。 黒糖焼酎の製造プロセスを示す。 実施例において製造した石灰添加量が異なる黒糖の糖組成を示すグラフである。 実施例において製造した石灰添加量が異なる黒糖の5-ヒドロキシメチルフルフラール(5HMF)含量を示すグラフである。 実施例において製造した石灰添加量が異なる黒糖の味の評価を示す(サンプル:黒糖10%水溶液、機器:味認識装置TS5000)。 実施例において製造した焼酎中の酢酸含量を示すグラフである。 実施例において製造した焼酎の官能評価の結果を示す。 実施例において製造した焼酎に含まれるβ-ダマセノン含量を示すグラフである。 実施例において製造した黒糖に含まれるβ-ダマセノン含量を示すグラフである。
本発明に係る黒糖焼酎の製造方法(以下、「本方法」と称する)は、サトウキビ搾汁液のpHが中性付近(例えば、pH6.6〜7.6、好ましくはpH6.9〜7.3)になるように、水酸化カルシウム溶液(石灰)をサトウキビ搾汁液に添加して黒糖を製造する工程と、前記工程で製造した黒糖を使用して黒糖焼酎を製造する工程とを含むものである。本方法によれば、新たな装置の導入を必要とせず、簡便に甘い香りが増強した黒糖焼酎を製造することができる。
本方法では、図1に示す黒糖の製造プロセスに準じて、先ず、サトウキビ搾汁液のpHが中性付近になるようにサトウキビ搾汁液へ石灰を添加して黒糖を製造する。具体的には、原料のサトウキビをローラーで搾り、搾ったサトウキビ搾汁液(キビ汁)を釜に移し、石灰水を添加する。石灰添加の目的はキビ汁のpH調整である。特に、従来の黒糖の製造と比較して、石灰添加後のサトウキビ搾汁液のpHが約7になるように、石灰をサトウキビ搾汁液に添加することで製造した黒糖を用いて製造した黒糖焼酎は、甘い香りを有するβ-ダマセノン含量が高いという特徴を有する。例えば、本方法により製造した黒糖焼酎は、15μg/L以上(好ましくは、20μg/L以上)のβ-ダマセノンを含む。
石灰水添加後、加熱を開始するとアクが出てくるので、メッシュでアクを取り除き、加熱濃縮する。液が粘稠になり、品温が125℃になったタイミングで加熱をやめ、撹拌器に移し替える。撹拌することで冷却し、結晶化させる。このようにして黒糖を製造することができる。図1(A)の写真のように撹拌の初期はつやがある液体であるが、図1(B)の写真に示すように撹拌を進めると白っぽく結晶化し黒糖ができる。
次いで、図2に示す黒糖焼酎の製造プロセスに準じて、得られた黒糖を使用して黒糖焼酎を製造する。先ず、蒸し米に麹菌(例えば白麹菌, Aspergillus luchuensis mut. kawachii)を植菌し、麹をつくる。次いで、できた麹に酵母と水を加えて発酵させる。その後、主原料である黒糖を加えさらに発酵させる。仕込み配合は例えば、表1に示す通りである。この時、黒糖は仕込水に入れて煮沸し溶かし、冷却後に添加する。こうしてできた二次もろみを蒸留することで、黒糖焼酎を製造することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔本方法による黒糖焼酎の製造〕
1.材料及び方法
1−1.石灰添加量の異なる黒糖の製造
2015年4月15日に鹿児島県喜界町にて収穫したサトウキビ(RK97-14)を原料として、ステンレスジューサーを用いて搾汁後冷凍保存し、使用時に適宜解凍し、黒糖製造に用いた。
搾汁液2 kg当たり15%(w/v)水酸化カルシウム溶液(石灰)を3、5、7ml添加し、ライミング後、アクを除去しながら加熱及び濃縮した。液温が125℃から128℃になった時点で加熱を終了し、冷却及び撹拌することで結晶化した。
石灰添加量3、5、7mlの黒糖を、それぞれKokuto A(本発明における黒糖に相当)、Kokuto B、Kokuto Cとし、pH測定、官能評価、成分分析及び味認識装置による味分析に供した。
1−2.石灰添加量の異なる黒糖を用いた黒糖焼酎の製造
得られた黒糖サンプルを用いて黒糖焼酎の小仕込試験を行った。Kokuto A、Kokuto B、Kokuto Cから得られた焼酎をそれぞれShochu A(本発明に係る黒糖焼酎に相当)、Shochu B、Shochu Cとし、一般分析及び官能評価によるグルーピング、並びにGC-MSによる揮発性成分の分析を行った。
2.結果及び考察
2−1.黒糖の分析結果
黒糖の分析結果を表2及び図3〜5に示す。
石灰水添加直後のキビ汁のpHは、7.1、8.5、9.6となり、できた黒糖の10%水溶液のpHはそれぞれ6.1、7.3、7.8となった(表2)。このように石灰の添加量を変えることによりpHが異なる黒糖ができた。なお、市販される黒糖のpHも6〜8程度である。
また、これらの黒糖について、7人で官能評価を行うと、KokutoAは香ばしい、キャラメル;KokutoBは黒糖らしい;KokutoCは穀物様や後に残る、という回答が複数得られた(表2)。このように、石灰の添加量を調整するだけで、風味が異なる黒糖を製造できることを確認した。
甘味に寄与する成分として、黒糖の糖組成を調べた(図3)。石灰の添加量が多いほどスクロース含量が高く、石灰の添加量が少ない方がグルコースやフルクトースの割合が高い傾向にあった。スクロース、グルコース、フルクトースはそれぞれ甘味の強度が違うと言われていることから、これらの組成の違いが甘味の違いに影響したことが考えられた。
また、酸性条件では、スクロースがフルクトースとグルコースに転化することが報告されており(非特許文献1)、同様の結果が得られた。すなわち、pH及びスクロース含量は、石灰添加量に比例して上昇し、石灰添加量が少ないほどグルコース及びフルクトース含量が高かったことから、pHが低いとスクロースの転化が進むことが確認できた(表2及び図3)。
一方、スクロースの減少分が30〜40mmolであるにも関わらず、スクロース分解物であるグルコース、フルクトースは10〜15mmolしか増加しておらず、KokutoAでは、グルコースやフルクトースがさらに他の化合物へ分解してしまっていることが考えられた。
そこで、フルクトースやグルコースの熱分解で生成する5-ヒドロキシメチルフルフラール(5HMF)と呼ばれる化合物を分析した。5HMFは、加熱した蜂蜜やコーヒーに含まれる一種のメイラード反応生成物である。強い香りを有する訳ではないが、パン様、キャラメル様の香りを有する成分とされている(D. saison et. al, Food chemistry, 114,1206-1215, 2009)。
HPLCによる分析の結果、KokutoAには他の黒糖に比べ多くの5HMFが含まれることが分かった(図4)。よって、HMFのようなメイラード反応生成物が黒糖の風味の違いに寄与している可能性が示された。
さらに味認識装置の結果においても違いが見られ、石灰添加量を変化させることで風味の異なる黒糖が得られることが分かった(図5)。具体的には、塩味、甘味及び旨味に関しては石灰の添加量が多くなるほど高くなる傾向があった。塩味については最も顕著な差が見られ、石灰の添加が黒糖の塩味を増強することが示唆された。
一方、酸味、苦味雑味及び渋味刺激については、石灰添加量が低い黒糖の方が強い傾向があった。酸味はpHと相関があると言われていることから、黒糖溶液のpHの違いが酸味の強度に影響していると考えられた。
2−2.黒糖焼酎の分析結果
黒糖焼酎の分析結果を表3〜5及び図6〜8に示す。
仕込配合は表3に示す通りであり、蒸気吹き込み式による常圧蒸留により蒸留した。二次仕込に用いた黒糖溶液のpHも石灰添加量に比例して高くなる傾向があった(表3)。しかしながら、この液を一次もろみに混合し、二次もろみとすると差はそれほど大きくならないことが分かった(表4)。
二次もろみ及び焼酎の分析結果を表4に示す。
pHは大きく変わらなかったものの、もろみ酸度は石灰添加量が低い方が高い傾向があり、黒糖液のpHがもろみの酸度に影響していることが考えられた。
また、揮発酸度においても石灰添加量が低い方が高い傾向があった。揮発酸度に影響を与えるとされる酢酸の濃度を測定したところ、図6に示すようにshochu Aに酢酸がより多く含まれることが分かった。
アルコールの収量については、石灰添加量が低い方が低い傾向にあった。これは、黒糖の項で述べた通り、石灰添加が少ない黒糖の場合、糖の一部が分解してしまっていたからだと考えられた。しかしながら、全ての黒糖焼酎において、試留アルコール16%以上、残糖も1%以下となり概ね順調に発酵したといえた。このように、黒糖焼酎の小仕込試験においては、石灰添加による発酵への影響は見られず、いずれも順調にアルコール発酵したと判断した。
どの黒糖を使用しても焼酎ができることが分かったので、これらの官能評価を行った。パネラー10名を対象に、別々に仕込んだ2連のshochu A、shochu B、shochu Cを用いた。方法としては6つの焼酎の香りを評価し、類似しているものを自由にグループ分けしてもらった。結果を表5に示す。
表5において、A、B、Cは、それぞれShochu A、Shochu B、Shochu Cを示し、A-1やB-1等の数字は、それぞれ同条件で別々に作製した黒糖から作った焼酎の番号を示す。各カラムの数字は、それぞれ同じグループと評価したパネラーの数を示している。
この結果を見ると、ShochuAとShochuCを同じグループに分類したパネラーは1人しかいなかったのに対し、C-1、C-2を同じグループにしたパネラーは8人となり、shochuCはその他の焼酎とは明らかに異なる酒質であることが示された。一方A-1とB-2、A-2とB-1を同じグループにした人は10人中5人に上り、AとBは酒質が類似していることが示された。
そこで差が明らかであったShochu AとShochu Cについて、8つの評価項目を設定し、あてはまるものに○をつけてもらった。その結果、図7のような結果が得られ、Shochu AはCに比べて甘香や花様といった香りが強いことが示唆された。
次に、この違いがどのような成分に由来するのかについても調べた。GC-MS分析の結果、ShochuAはShochu B、Cに比べて、香気成分β-ダマセノンが多い傾向が見られた(図8)。β-ダマセノンは甘いリンゴ様の香りを有する成分であり、香りの閾値が低く、焼酎をはじめとした食品の香気に強く影響する成分である。よってダマセノンなどの揮発性成分の違いが焼酎の風味に寄与していることが考えられた。本実施例により製糖時の石灰添加量を抑えることで、甘香や花様といった香りが増強される可能性が示され、石灰添加量の調節は焼酎の酒質多様化に貢献できることが示唆された。
さらに焼酎中のダマセノン含量に違いが見られたので、黒糖中にもダマセノンが含まれるのかを確認した。
その結果、石灰添加量が少ないKokuto Aに最も多くのダマセノンが含まれていることが明らかとなり(図9)、黒糖中のダマセノン含量が焼酎のダマセノンに影響していることが示唆された。

Claims (2)

  1. サトウキビ搾汁液のpHが6.9〜7.3になるように、水酸化カルシウム溶液をサトウキビ搾汁液に添加し、サトウキビ搾汁液を加熱濃縮に供し、その後冷却することにより黒糖を製造する工程と、
    蒸し米に麹菌を植菌して麹を作製し、作製した麹に酵母及び前記工程で製造した黒糖を添加して発酵させ、得られたもろみを蒸留することにより黒糖焼酎を製造する工程と、
    を含み、製造した黒糖焼酎が15μg/L以上のβ-ダマセノンを含む、黒糖焼酎の製造方法。
  2. 製造した黒糖焼酎が20μg/L以上のβ-ダマセノンを含む、請求項1記載の方法。
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