JP6819254B2 - 焼付硬化性に優れる高強度鋼板および製造方法 - Google Patents

焼付硬化性に優れる高強度鋼板および製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、主としてプレス加工されて使用される自動車等の構造部材に好適な、塗装焼付硬化性能に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保護のため、自動車の燃費向上が求められており、自動車鋼板においては、車体の軽量化および安全性確保のため、一層の高強度化が要求されている。一方で、成形性の観点からは、鋼板を高強度化すると延性、曲げ性が低下するため、冷間プレス成形が困難になる。そのため、成形加工時には比較的軟質で成形しやすく、成形加工後、塗装焼付時の焼付硬化量が大きい素材が求められている。
前記焼付硬化は、プレス成形(以下、「予ひずみ」ともいう)によって入る転位に、侵入型元素(炭素や窒素)が固着することで生ずるひずみ時効現象であるため、軟鋼板などのフェライト単相組織においては、固溶炭素および固溶窒素の量で制御できる。
一方、高強度鋼板においては、その多くが硬質組織(マルテンサイトおよびベイナイト)と、軟質相(フェライト)を含有する複合組織である。硬軟質組織が混在することによって、加工性は向上するが、塗装焼付硬化性能が不十分であることが課題であった。
特許文献1には、ベイナイト及びマルテンサイトからなる硬質組織を主な組織とし、フェライトの分率を5%以下に制限することで高い焼付硬化量を確保した冷延鋼板が開示されている。しかし、この焼付硬化値(BH)は1%の予ひずみによって評価されたものであり、実際のプレス加工を模擬していない。硬質組織が多いために、予ひずみが2%以上では、焼付硬化処理後の伸びが悪い。
また、特許文献2には、硬さの比を制御したフェライト/ベイナイト組織を含む鋼板とすることで、高い焼付硬化性を得る技術が開示されている。しかし、最小曲げ半径が0と低いため、衝突時の衝撃を吸収することができず、自動車部品に向いていない。
また、特許文献3には、焼戻しマルテンサイト及び/または焼戻しベイナイトを含む鋼板とすることで加工性および焼付硬化性を向上させる方法が開示されている。しかし、焼戻し温度が400℃と高温であるために、引張強度が1000MPa以下と低く、超ハイテンには不向きである。
このように、焼付硬化性が高いと焼付硬化処理後の伸びや曲げ性が悪く、それらの両立は、依然として解決すべき課題であった。
これまで、焼付硬化性を高めるために、様々な手法による検討がされてきた。例えば、焼戻し熱処理は、固溶炭素量が減るために焼付硬化性が劣化する(非特許文献1)。
複合組織鋼における形態制御は、焼付硬化性の観点からはあまり検討されていないが、硬質組織を微細に分散させると、加工硬化が高まるため、BHは下がる(非特許文献2)。
特開2008−144233号公報 特開2004−263270号公報 特開2003−277884号公報
K. Nakaoka:"Formable HSLA and Dual-Phase steels:Conference Proceedings",Metall. Soc. of AIME,(1977)126. Y.Tomota:Materials Science and Technology,3(1987)415.
焼付硬化性と加工性を両立するためには、転位と固溶炭素量の制御が重要である。しかし、特許文献1及び2及び3では、複合組織中の相分率や、その炭素量で焼付硬化性を高める技術のみを用いており、組織形態を制御して焼付硬化性を高める技術を用いていない。よって、高強度鋼板の焼付硬化量をさらに高めるために、組織の形態を制御することが必要である。組織を適正な温度で焼き戻し、転位と固溶炭素が効果的に相互作用するように活用しなければならない。また、焼付硬化処理後の部品の曲げ性や極限変形能も向上させる必要がある。
したがって、本発明は、形態制御され、低温で焼戻しされた複合組織を有する高強度鋼板において、焼付硬化性に優れる高強度鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、これまで焼付硬化性を劣化させるとされていた焼戻し熱処理と形態制御を組み合わせることによって、焼付硬化性が向上することを見出した。
これは、
(1)組織形態において硬質組織を分散させると、各相の予ひずみ分配が変化し、マルテンサイトに予ひずみが入りやすくなること、
(2)焼戻しマルテンサイトを組織に含めることによって、さらにマルテンサイトに予ひずみが入りやすくなるためである。これにより、硬質組織にも転位が導入されて、焼付硬化するために、全体の焼付硬化性が向上することを見出した。また、焼戻し熱処理をすることによって、焼付硬化後の曲げ性や極限変形能が向上することも見出した。
上記目的を達成し得た本発明の焼付硬化に優れる高強度鋼板は、以下のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:2.0〜4.0%、
P:0.0001〜0.10%、
S:0.0001〜0.01%、
Al:0.001〜2.00%、
N:0.0001〜0.01%、
をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を持ち、組織が面積率で、20%以上70%以下のフェライト、及び、ベイナイトマルテンサイトの1種または2種を含む30%以上の硬質組織とからなり、その硬質組織のうち50%以上が焼戻しマルテンサイトであり、表面から深さ3t/8からt/2位置(t:鋼板の板厚)における、板厚方向に沿った各位置で、板厚方向と垂直方向へ引いた線上の前記硬質組織の線分率の標準偏差が、0.050以下である鋼組織を有し、BHが120MPa以上を示すことを特徴とする焼付硬化性に優れた高強度鋼板である。
(2)前記化学組成が、更に、質量%で、
Ti:0.1%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.1%以下である前記(1)に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
(3)前記化学組成が、更に、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cr:1.0%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%以下である前記(1)又は(2)に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
(4)前記化学組成が、更に、質量%で、
W:0.005%以下、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下
希土類元素(REM):0.01%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.01%以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
(5)前記化学組成が、更に、質量%で、
B:0.003%以下
を含むものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
また、本発明の焼付硬化に優れる高強度鋼板の製造方法は、下記のとおりである。
(6)上記(1)に記載の化学組成を有する鋼スラブを1000℃以上1250℃以下の温度域で、製品時の板幅方向から3%以上50%以下の圧縮変形と、製品時の板幅方向の垂直方向から3%以上50%以下の圧縮変形からなる多軸変形を、1回以上5回以下施す均質化工程と、
前記スラブを熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延した鋼板にAc1以上1000℃以下の温度域で10〜1000秒加熱保持して、10℃〜200℃/秒の平均冷却速度で500℃以下まで冷却する焼鈍工程と、
200℃以上350℃以下の温度域で100秒以上保持後、2℃/秒以上の平均冷却速度で100℃以下まで冷却する焼戻し工程と、を有することを特徴とする、
上記(1)に記載の焼付硬化に優れる高強度鋼板の製造方法。
(7)前記焼鈍工程の後に、スキンパス圧延を行なうことを特徴とする前記(6)に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
(8)前記化学組成が、更に、質量%で、
Ti:0.1%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.1%以下である前記(6)又は(7)に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
(9)前記化学組成が、更に、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cr:1.0%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%以下である前記(6)〜(8)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
(10)前記化学組成が、更に、質量%で、
W:0.005%以下、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下
希土類元素(REM):0.01%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.01%以下である前記(6)〜(9)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
(11)前記化学組成が、更に、質量%で、
B:0.003%以下
を含むものである前記(6)〜(10)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
本発明によれば、組織の形態を制御することにより、予ひずみが硬質組織にも入りやすくなり、焼付硬化性に優れた複合組織を有する高強度鋼板とその製造方法が提供される。 この高強度鋼板は、プレス成形性に優れ、プレス成形後の塗装時に焼付を受けることでさらに高強度化するので、自動車等の分野の構造分野として適している。
(I):化学成分
本発明の実施形態に係る鋼板は、上記のように、製造方法によって組織形態を制御する点に特徴があるが、優れた加工性を備えつつも、焼付硬化性を一層高めた高強度鋼板を得るために、化学成分組成が適切に調整されていることが好ましい。よって、本発明の実施形態に係る鋼板及びその製造に用いるスラブの化学成分組成について説明する。以下の説明において、鋼板及びスラブに含まれる各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
(C:0.05%〜0.30%)
Cは、フェライトの微細化やフェライト以外の第2相の生成を促すことにより強度を高める作用を有する。また、焼付硬化性を高める作用を有する。以上のような作用を有効に発揮させるため、C含有量は0.05%以上とし、好ましくは0.07%以上とする。一方、C含有量が0.30%超では、溶接性が劣化する。従って、C含有量は0.30%以下とし、好ましくは0.20%以下とする。
(Si:0.2%〜2.0%)
Siは炭化物の生成を抑え、焼付硬化に必要な固溶Cを確保するのに必要な元素である。Siは、鋼の延性を向上させ、且つ、フェライトの生成を助長して、硬質組織のバンド状の分布を抑制する。Si含有量が0.2%未満では、十分な作用効果が得られないことがある。よって、Si含有量は0.2%以上とする。また、固溶Cを増加させるために、焼付硬化に優れる鋼板の高強度化に必須である。焼戻しによって、さらにこの効果は顕著になる。この作用を有効に発揮させるために、含有量は0.5%以上とする。従って、Si含有量は好ましくは0.2%以上とし、より好ましくは0.5%以上とする。一方、Si含有量が2.0%超では、表面性状が劣化したり、添加効果が飽和して徒にコストを上昇させたりする。従って、Si含有量は2.0%以下とし、好ましくは1.5%以下とする。
(Mn:2.0%〜4.0%)
Mnは焼き入れ性向上元素であり、焼付硬化に優れる鋼板の高強度化およびフェライト生成を抑制するのに有用である。このような作用を有効に発揮するには、Mn含有量は2.0%以上とし、好ましくは2.3%以上とする。しかし、過剰のMn添加は偏析を助長し、4.0%を超えて添加すると鋳片割れが起きるなどの悪影響が見られる。また、MnはCと相互作用することによって、Cが転位に固着されるのを妨害するため、3.0%より少ない方が良い。従って、Mn含有量は4.0%以下とし、好ましくは3.0%以下とする。
(Al:0.001%〜2.00%)
Alは、脱酸および炭化物形成元素の歩留まり向上に対して効果を有する。以上のような作用を有効に発揮させるため、Al含有量は0.001%以上とし、好ましくは0.01%以上とする。一方、Al含有量が2.00%超では、溶接性が低下したり、酸化物系介在物が増加して表面性状が劣化したりする。また、Al含有量が1.00%以上であると、C拡散の活性化エネルギーを上昇させ、拡散しにくくするため、BHを劣化させる。従って、Al含有量は2.00%以下とし、好ましくは1.00%以下とする。
(P:0.0001%〜0.10%)
Pは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。溶接性の観点から、P含有量は低ければ低いほどよい。特に、P含有量が0.10%超で、溶接性の低下が著しい。従って、P含有量は0.10%以下とし、好ましくは0.03%以下とする。P含有量の低減にはコストがかかり、0.0001%未満まで低減しようとすると、コストが著しく上昇する。このため、P含有量は0.0001%以上としてもよい。Pは強度の向上に寄与するため、P含有量は0.0001%以上としてもよい。
(S:0.0001%〜0.01%)
Sは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。溶接性の観点から、S含有量は低ければ低いほどよい。S含有量が高いほど、MnSの析出量が増加し、低温靭性が低下する。特に、S含有量が0.01%超で、溶接性の低下及び低温靱性の低下が著しい。従って、S含有量は0.01%以下とし、好ましくは0.003%以下とする。S含有量の低減にはコストがかかり、0.0001%未満まで低減しようとすると、コストが著しく上昇する。このため、S含有量は0.0001%以上としてもよい。
(N:0.0001%〜0.01%)
Nは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。溶接性の観点から、N含有量は低ければ低いほどよい。特に、N含有量が0.01%超で、溶接性の低下が著しい。従って、N含有量は0.01%以下とし、好ましくは0.006%以下とする。N含有量の低減にはコストがかかり、0.0001%未満まで低減しようとすると、コストが著しく上昇する。このため、N含有量は0.0001%以上としてもよい。
本発明の鋼の基本成分組成は上記の通りであり、残部は鉄、及び、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避的不純物である。さらに本発明の鋼は、必要に応じて、以下の任意元素を含有していてもよい。
(Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下)
Ti、Nb及びVは強度の向上に寄与する。従って、Ti、Nb若しくはV又はこれらの任意の組み合わせが含有されていてもよい。この効果を十分に得るために、Ti、Nb若しくはVの含有量、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせの合計含有量は、0.003%以上が好ましい。一方、Ti、Nb若しくはVの含有量、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせの合計含有量が0.1%超では、熱間圧延及び冷間圧延が困難になる。従って、Ti含有量、Nb含有量若しくはV含有量、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせの合計含有量は0.1%以下とする。つまり、Ti、Nb、及びVの含有量は、各成分単独の場合、0.003〜0.1%が好ましい範囲であり、これらの2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量においても、0.003%以上0.1%以下が満たされることが好ましい。
(Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:1.0%以下、Cr:1.0%以下)
Cu、Ni、Mo及びCrは強度の向上に寄与する。従って、Cu、Ni、Mo、若しくはCr又はこれらの任意の組み合わせが含有されていてもよい。この効果を十分に得るために、Cu、Ni、Mo及びCrの含有量は、各成分単独の場合、0.005〜1.0%が好ましい範囲であり、これらの2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量においても、0.005%以上1.0%以下が満たされることが好ましい。一方、Cu、Ni、Mo及びCrの含有量、又はこれらの2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%超では、上記作用による効果が飽和して、徒にコストが高くなる。従って、Cu、Ni、Mo及びCrの含有量、又はこれらの2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量の上限は1.0%とする。つまり、Cu:0.005%〜1.0%、Ni:0.005%〜1.0%、Mo:0.005%〜1.0%、及びCr:0.005%〜1.0%とすると共に、これらを任意に組み合わせた場合の合計含有量においても、0.005〜1.0%であることが好ましい。
(W:0.005%以下、Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下、REM:0.01%以下)
W、Ca、Mg及びREMは介在物の微細分散化に寄与し、靭性を高める。従ってW、Ca、Mg若しくはREM又はこれらの任意の組み合わせが含有されていてもよい。この効果を十分に得るために、W、Ca、Mg及びREM、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせの合計含有量は、好ましくは0.0003%以上とする。一方、W、Ca、Mg及びREMの合計含有量が0.01%超では、表面性状が劣化する。従って、W、Ca、Mg及びREMの合計含有量は0.01%以下とする。つまり、W:0.005%以下、Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下、REM:0.01%以下であって、これらの任意の2種以上の合計含有量が0.0003〜0.01%であることが好ましい。
REM(希土類金属)はSc、Y及びランタノイドの合計17種類の元素を指し、「REM含有量」はこれら17種類の元素の合計の含有量を意味する。ランタノイドは、工業的には、例えばミッシュメタルの形で添加される。
(B:0.003%以下)
Bは焼き入れ性向上元素であり、焼付硬化用鋼板の高強度化に有用な元素である。このため、0.0001%以上が好ましい。しかし、0.003%を超えて添加すると上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるため、B含有量は0.003%以下とした。好ましくは0.0025%以下である。
(II):鋼の組織
本発明の実施形態の焼付硬化性に優れた高強度鋼板は、少なくとも2つ以上の相を含有する複合組織を対象とし、その組織形態やその組織を制御することで、予ひずみの分配を変化させ、焼付硬化性が向上することに大きな特徴をもつものである。各組織についてその面積率を規定した理由について説明する。
(フェライト:20%以上70%以下)
フェライトは降伏応力が低く、優れた加工硬化特性を有する組織である。このためフェライト面積率を過度に高めると、焼付硬化処理前の強度が高まり、且つ焼付硬化処理後の降伏応力が低下するため、焼付硬化性が大きく劣化することから、鋼板中のフェライト分率は70%以下とする。焼付硬化性を更に高めるにはフェライト面積率は50%以下とすることが好ましく、45%以下とすることが更に好ましい。一方、フェライト面積率が20%以下では、硬質組織に予ひずみが入りすぎてしまい、逆に焼付硬化性を劣化させてしまう。従って、フェライト面積率は20%以上とし、好ましくは25%以上とする。
(硬質組織:30%以上)
本発明の実施形態では、上記フェライトの他に、硬質組織を30%以上含有させることとする。なお、硬質組織は、ベイナイト、マルテンサイトのうち1種または2種以上含むものとする。この硬質組織はフェライトよりも硬質な変態生成物の総称である。一般的に、フェライトよりも硬質組織の方において炭素濃度が高いため、焼付硬化性は優れている。しかし、複合組織として軟らかいフェライトと硬質組織があった場合、予ひずみはほとんどフェライトが担うため、従来は硬質組織の焼付硬化性を活用できていない。焼付硬化性を上昇させるためには硬質組織に変形を担わせることが重要である。そのため、硬質組織の面積率が80%以上であると、硬質組織に予ひずみが入りすぎてしまい、逆に焼付硬化性を劣化させてしまう。しかし、硬質組織が少なすぎるとフェライトのみが変形を担ってしまうため、30%以上は必要である。よって、硬質組織の面積率は30%以上、好ましくは40%以上80%以下とする。
(硬質組織のうち50%以上が焼戻しマルテンサイト)
本発明の実施形態では、硬質組織のうち50%以上が焼戻しマルテンサイトであることが必要である。上記で述べた通り、焼付硬化性および焼付硬化後の曲げ性や極限変形能を向上させるために、複合組織中の焼き入れままマルテンサイトを焼戻す必要がある。これが50%未満では、焼き入れままマルテンサイトが多いため、予ひずみが入りにくく焼付硬化性を高めることが困難且つ焼付硬化処理後の極限変形能も劣化する。従って、硬質組織のうち焼戻しマルテンサイトの面積率を50%以上とする。
(その他の組織)
本発明の製造方法では、焼戻した際に、マルテンサイトやフェライトからセメンタイト等炭化物が析出する。これは、微細かつ大量に出るために、面積率として測定するのが難しい。よって、炭化物を含む母相として計測する。
フェライトの面積率及び硬質組織の面積率は、次のようにして測定することができる。先ず、鋼板の幅の1/4の位置における幅方向に垂直な断面が露出するように試料を採取し、この断面をレペラーエッチング液により腐食する。次いで、鋼板の表面からの深さが3t/8からt/2までの領域の光学顕微鏡写真を撮影する。このとき、例えば倍率は200倍とする。レペラーエッチング液を用いた腐食により、観察面が概ね黒色部分及び白色部分に区別できる。そして、黒色部分に、フェライト、ベイナイトが含まれ得る。黒色部分のうちで、粒内にラメラ状の組織を含まず、下部組織を含む部分がフェライトに相当する。黒色部分のうちで、輝度が特に低く、直径が1μm〜5μm程度の球状の部分が炭化物に相当する。黒色部分のうちで、粒内に下部組織を含む部分がベイナイトに相当する。従って、黒色部分のうちで、粒内にラメラ状の組織を含まず、下部組織を含む部分の面積率を測定することでフェライトの面積率が得られ、黒色部分のうちで、粒内に下部組織を含む部分の面積率を測定することでベイナイトの面積率が得られる。また、白色部分の面積率は、マルテンサイト及び焼戻しマルテンサイトの面積率である。従って、ベイナイトの面積率並びにマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイトの面積率から硬質組織の面積率が得られる。この光学顕微鏡写真から、下記の硬質組織の線分率の標準偏差の測定に用いる硬質組織の円相当平均直径rを測定することができる。
(厚さ方向に垂直な面内の線上での硬質組織の線分率の標準偏差:鋼板の厚さをtとしたときの表面からの深さが3t/8からt/2までの深さ範囲内で0.050以下)
プレス成形によって入る転位(以下、「予ひずみ」ともいう)の分配が変化し、硬質組織にも転位が導入される。表面からの深さが3t/8からt/2までの深さ範囲内での硬質組織の線分率の標準偏差が大きいことは、厚さ方向での硬質組織の割合の変動が大きいこと、即ち鋼組織がバンド状組織になっていることを意味する。特に硬質組織の線分率の標準偏差が0.050超では、バンド状組織が顕著であり、応力集中箇所の密度が局所的に高い。上記で述べた通り、予ひずみ変形を硬質組織に担わせるためには、バンド状組織ではなく、硬質組織が均一に分散している必要がある。従って、硬質組織の線分率の標準偏差は、表面からの深さが3t/8からt/2までの深さ領域内で0.050以下とし、好ましくは0.040以下とする。
ここで、硬質組織の線分率の標準偏差を測定する方法について説明する。
先ず、面積率の測定と同様にして撮影した光学顕微鏡写真に画像処理を施し、黒色部分と白色部分とに二値化する。次いで、観察対象の画像の深さ3t/8の部分から深さt/2の部分にかけて、r/30毎に線分の起点を設定する(rは、硬質組織の円相当平均直径である)。観察対象の深さ範囲が3t/8からt/2までの厚さt/8の領域であるため、起点の数は15t/4rとなる。その後、各起点から厚さ方向に垂直な方向、例えば圧延方向に延びる長さが50rの線分を設定し、この線分上の硬質組織の線分率を測定する。そして、15t/4r本の線分間の線分率の標準偏差を算出する。
円相当平均直径r、及び鋼板の厚さtは限定されない。例えば、円相当平均直径rは5μm〜15μm、鋼板の厚さtは、1mm〜2mm(1000μm〜2000μm)である。線分の起点を設定する間隔は限定されず、対象とする画像の分解能、画素数及び測定作業時間等に応じて変更してもよい。例えば、間隔をr/10程度としても、r/30とした場合と同等の結果が得られる。
(BH:120MPa以上)
BHについては、2%予ひずみを付加後、170℃で20分の熱処理した試験片を再引張したときの応力から、2%予ひずみ付加時の応力を差し引いた値が120MPa以上とする。これが120MPa未満では、成形しにくく且つ成形後の強度が低いため、優れた焼付硬化性とは言えない。従って、BHは120MPa以上とする。
(III)製造方法
次に、本発明の実施形態に係る鋼板の製造方法について説明する。以下の説明は、本発明の高強度鋼板を製造するための特徴的な方法の例示を意図するものであって、本発明の高強度鋼板を以下に説明するような製造方法によって製造されるものに限定することを意図するものではない。なお、以下の実施形態に係る鋼板の製造方法では、上記の化学組成を有するスラブの多軸圧縮加工、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍及び焼戻し熱処理工程をこの順で行う。
(多軸圧縮加工)
スラブは、例えば、転炉又は電気炉等を用いて上記化学組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法により製造することができる。連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法等を採用してもよい。
スラブは、多軸圧縮加工に供する前に、950℃〜1300℃に加熱する。スラブ加熱温度が低いと、仕上げ圧延温度がAr3変態点を下回ってしまい、フェライト及びオーステナイトの二相域圧延となり、熱延板組織が不均質な混粒組織となり、冷延及び焼鈍工程を経たとしても不均質な組織は解消されず、バンド状組織になってしまうおそれがある。
多軸圧縮加工では、1000℃〜1250℃のスラブに幅方向の圧縮加工及び厚さ方向の圧縮加工を行う。多軸圧縮加工により、スラブ中のMn等の合金元素が濃化した部分が細分化されたり、格子欠陥が導入されたりする。このため、多軸圧縮加工中に合金元素が均等に拡散し、後の工程におけるバンド状組織の形成が抑制され、極めて均質な組織が得られる。特に、幅方向の圧縮加工は効果的である。すなわち、多軸圧縮加工により、幅方向に連結して存在する合金元素の濃化部が微細に分断され、合金元素が均一に分散するようになる。この結果、単なる長時間加熱による合金元素の拡散では実現できない組織の均質化を、短時間で実現することができる。
幅方向の圧縮加工1回あたりの変形率が3%未満では、塑性変形により導入される格子欠陥の量が不十分であり、合金元素の拡散が促進されず、バンド状組織の形成を抑制することができない。従って、幅方向の圧縮加工1回あたりの変形率は3%以上とし、好ましくは10%以上とする。一方、幅方向の圧縮加工1回あたりの変形率が50%超では、スラブ割れが生じたり、スラブの形状が不均一となって熱間圧延で得られる熱延鋼板の寸法精度が低下したりする。従って、幅方向の圧縮加工1回あたりの変形率は50%以下とし、好ましくは40%以下とする。
厚さ方向の圧縮加工1回あたりの変形率が3%未満では、塑性変形により導入される格子欠陥の量が不十分であり、合金元素の拡散が促進されず、バンド状組織の形成を抑制することができない。また、形状不良により、熱間圧延の際にスラブの圧延ロールへの噛み込みが不良になるおそれがある。従って、厚さ方向の圧縮加工1回あたりの変形率は3%以上とし、好ましくは10%以上とする。一方、厚さ方向の圧縮加工1回あたりの変形率が50%超では、スラブ割れが生じたり、スラブの形状が不均一となって熱間圧延で得られる熱延鋼板の寸法精度が低下したりする。従って、厚さ方向の圧縮加工1回あたりの変形率は50%以下とし、好ましくは40%以下とする。
幅方向の圧延量と、厚さ方向の圧延量との差が過度に大きい場合、圧延量が小さい方向に垂直な方向ではMn等の合金元素が十分に拡散せず、バンド状組織の形成を十分に抑制できないことがある。特に圧延量の差が20%超の場合にバンド状組織が形成されやすい。従って、幅方向と厚さ方向との間の圧延量の差は20%以下とすることが好ましい。
多軸圧縮加工を少なくとも1回行えば、バンド状組織の形成を抑制することができる。バンド状組織の形成を抑制する効果は、多軸圧縮加工を繰り返すことで顕著になる。従って、多軸圧縮加工の回数は1回以上とし、好ましくは2回以上とする。2回以上の多軸圧縮加工を行う場合、多軸圧縮加工の間でスラブを再加熱してもよい。一方、多軸圧縮加工の回数が5回超では、徒に製造コストが増加したり、スケールロスが増加して歩留りが低下する。また、スラブの厚さが不均一になって熱間圧延が困難になる場合がある。従って、多軸圧縮加工の回数は好ましくは5回以下とし、より好ましくは4回以下とする。
(熱間圧延、冷間圧延)
熱間圧延、冷間圧延の方法は特に限定するものではなく、通常の方法を採用することができる。例えば熱間圧延は、多軸圧縮加工後のスラブの仕上げ圧延として行い、冷間圧延は、熱延鋼板の酸洗後に行う。
具体的には、上記熱延工程としてはスラブ加熱温度をAr3点以上とし、800℃以上で熱延終了後、総圧下率を50%以下とし、空冷し、約500〜600℃の温度で巻き取る等の条件を採用することができる。
なお、Ar3点は次の式により計算する。
Ar3=901−325×C+33×Si―92×(Mn+Ni/2+Cr/2+Cu/2+Mo/2)+52×Al
上記式において、C、Si、Mn、Ni,Cr、Cu、Mo、Alは各元素の含有量(質量%)である。
冷延工程としては、組織を均質化、微細化する観点から、冷間圧延の圧下率は好ましくは50%以上とする。
(連続焼鈍工程)
そして、上記冷間圧延工程を経て得られた鋼板に、焼鈍処理を施す。焼鈍温度での加熱は、Ac1以上1000℃以下の温度域で、10〜1000秒加熱保持とする。この温度範囲は、フェライトと硬質組織の体積率を決めるためのものである。焼鈍時間は、冷間加工されたフェライトを十分に再結晶させること、及びフェライトと硬質組織の体積率を制御しやすくするために、10秒以上とすることが好ましい。また、焼鈍時間を1000秒を超えると生産性が悪くなる。従って、焼鈍時間は10〜1000秒とする。
なお、Ac1点は次の式により計算する。
Ac1=751−16×C+35×Si―28×Mn−16×Ni+13×Cr−6×Cu+3×Mo
上記式において、C、Si、Mn、Ni,Cr、Cu、Moは各元素の含有量(質量%)である。
焼鈍温度保持後、冷却は10℃〜200℃/秒の平均冷却速度で冷却とする。組織を凍結し、マルテンサイト変態を効率的に引き起こすためには、冷却速度は速いほうがよい。 ただし、10℃未満ではマルテンサイトが十分に生成せず、所望の組織に制御できない。一方で200℃/秒超を超えても、その効果は飽和するため、焼鈍後の冷却速度は、10℃〜200℃/秒とする。冷却温度は500℃以下までとする。これは、焼鈍保持後にマルテンサイトを生成させるためである。このとき、200〜500℃で冷却を停止し、10〜1000秒保持する工程を入れてもよい。
その後、適宜スキンパス圧延を施してもよい。これにより、予ひずみがなくとも、鋼板にひずみが入るので、焼付硬化性を高めることができる。ひずみを鋼板に均一に導入するために、圧下率は0.1%以上とし、板厚制御が困難になるため、5%を上限とする。以上の理由より、好ましくは0.5%以下とする。
その後、加熱により200℃以上350℃以下の温度域で保持される。このとき、好ましくは250℃以上300℃以下とする。保持温度が200℃未満であった場合、マルテンサイトが焼戻されないため、予ひずみ分配が変化しない。350℃超であった場合、全体の固溶炭素量が減ってしまうため、引張強度と焼付硬化性が低下する。一方、硬質組織全体を焼戻すために、保持時間は100秒以上とする。その後、生産性の観点から、2℃/秒以上の平均冷却速度で100℃以下まで冷却する。
以上の方法で製造された冷延鋼板に、最終のスキンパス圧延を施してもよい。その圧下率は、上記と同じく、0.1%以上5%以下とすればよい。
このようにして、本発明の実施形態に係る鋼板を製造することができる。
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1に示す化学組成を有するスラブを製造し、スラブを1250℃に1時間加熱した後、表2に示す条件にて多軸圧縮加工を行った。次いで、1250℃までスラブを再加熱し、表2に示す条件にて熱間圧延を行って熱延鋼板を得た。熱間圧延では、表2に示すAr3点以上までスラブを再加熱し、表2に示す圧下率による熱間圧延を行い、巻き取り後には、巻き取り温度に1時間保持した。表2におけるFTは熱間圧延仕上温度、CTは巻取温度である。その後、熱延鋼板の酸洗を行い、表2に示す圧下率で冷間圧延を行って厚さが1.2mmの冷延鋼板を得た。続いて、表2に示す温度で連続焼鈍を行った。続いて、焼戻し熱処理工程を行った。この前後に適宜調質圧延を行った鋼板もあった。表1、表2中の下線は、その数値が望ましい範囲から外れていることを示す。
Figure 0006819254
Figure 0006819254
そして、得られた冷延鋼板の鋼組織を観察した。鋼組織の観察では、上記の方法により、フェライトの面積率、硬質組織の面積率(ベイナイト、マルテンサイト及び焼戻しマルテンサイトの合計面積率)、並びに硬質組織の線分率の標準偏差を測定した。これらの結果を表3に示す。表3中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
更に、得られた冷延鋼板の引張強度TS、破断伸びEL及びBHを測定した。引張強度TS及び破断伸びEL、焼付硬化値BHの測定では、圧延方向に直角な方向を長手方向とするJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行った。BHは2%予ひずみを付加後、170℃で20分の熱処理した試験片を再引張したときの応力から、2%予ひずみ付加時の応力を差し引いた値である。自動車車体の軽量化の要求を満たすためには引張強度は900MPa以上、好ましくは950MPa以上である。また、成形しやすいために、伸びは10%以上であることは好ましい。また、BHについては、120MPa未満では成形しにくく且つ成形後の強度が低くなるため、優れた焼付硬化性を有するためには、120MPa以上であることが好ましい。
板厚減少率は破断した引張試験片の板厚と元の板厚の比を1より差し引いた値である。これらの結果も表3に示す。ここで、塗装焼付硬化処理後の曲げ性や極限変形能を評価する指標としては、破断後引張試験片の絞りが用いられる。本実施例では、薄鋼板の試験であるため、BH測定後の引張試験片の板厚減少率を指標として用いた。板厚減少率が40%未満であると、塗装焼付硬化処理後の試験片はすぐ破断してしまう場合がある。すなわち、部品としての衝突性能が悪い。従って、BH測定後の引張試験片の板厚減少率は40%以上が好ましい。
Figure 0006819254
[評価結果]
表3に示すように、本発明範囲内にある試料No.2、3、5〜8、10、12、15、17、19〜21、23では、いずれも引張強度が900MPa以上、BHが120MPa以上、板厚減少率が40%以上となり、高強度、且つ、焼付硬化性と焼付硬化後の曲げ性に優れることが示された。
一方、試料No.1では、焼戻し温度が低すぎたために、硬質組織が十分に焼戻されず、BHが低かった。試料No.4では、焼戻し温度が高すぎたために、硬質組織が焼戻されすぎてしまい、BHが低かった。試料No.9は焼戻し温度が高すぎたため、BHが低かった。試料No.11は、焼鈍時の冷却速度が遅すぎたため、BHが低かった。試料No.13は加熱温度が低すぎて、また、No.24では板幅方向からの圧縮変形を実施しなかったために、それぞれ多軸圧延が不十分となって、バンド組織となってしまい、BHが低かった。試料No.14では、Siが少なすぎたために、BHが低かった。試料No.16では、焼鈍時間が少なすぎたために、BHが低かった。試料No.18では、焼戻しの熱処理時間が短すぎたために、BHが低かった。試料No.22では、Cが少なすぎたために、BHが低かった。試料No.25では、焼鈍温度が低すぎたために、硬質組織が少なく、BHが低かった。試料No.26では、Alが多すぎたために、BHが低かった。
本発明の焼付硬化用高強度鋼板は、特に、自動車産業分野として利用することができる。

Claims (11)

  1. 質量%で、
    C:0.05〜0.30%、
    Si:0.2〜2.0%、
    Mn:2.0〜4.0%、
    P:0.0001〜0.10%、
    S:0.0001〜0.01%、
    Al:0.001〜2.00%、
    N:0.0001〜0.01%、
    をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を持ち、組織が面積率で、20%以上70%以下のフェライト、及び、ベイナイトマルテンサイトの1種または2種を含む30%以上の硬質組織とからなり、その硬質組織のうち50%以上が焼戻しマルテンサイトであり、表面から深さ3t/8からt/2位置(t:鋼板の板厚)における、板厚方向に沿った各位置で、板厚方向と垂直方向へ引いた線上の前記硬質組織の線分率の標準偏差が、0.050以下である鋼組織を有し、BHが120MPa以上を示すことを特徴とする焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  2. 前記化学組成が、更に、質量%で、
    Ti:0.1%以下、
    Nb:0.1%以下、
    V:0.1%以下の1種または2種以上
    を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.1%以下である請求項1に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  3. 前記化学組成が、更に、質量%で、
    Cu:1.0%以下、
    Ni:1.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    Cr:1.0%以下の1種または2種以上
    を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%以下である請求項1又は2のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  4. 前記化学組成が、更に、質量%で、
    W:0.005%以下、
    Ca:0.005%以下、
    Mg:0.005%以下
    希土類元素(REM):0.01%以下の1種または2種以上
    を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.01%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  5. 前記化学組成が、更に、質量%で、
    B:0.003%以下
    を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
  6. 請求項1に記載の化学組成を有する鋼スラブを1000℃以上1250℃以下の温度域で、製品時の板幅方向から3%以上50%以下の圧縮変形と、製品時の板幅方向の垂直方向から3%以上50%以下の圧縮変形からなる多軸変形を、1回以上5回以下施す均質化工程と、
    前記スラブを熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延した鋼板にAc1以上1000℃以下の温度域で10〜1000秒加熱保持して、10℃〜200℃/秒の平均冷却速度で500℃以下まで冷却する焼鈍工程と、
    200℃以上350℃以下の温度域で100秒以上保持後、2℃/秒以上の平均冷却速度で100℃以下まで冷却する焼戻し工程と、を有することを特徴とする、
    焼付硬化に優れる請求項1に記載の高強度鋼板の製造方法。
  7. 前記焼鈍工程の後に、スキンパス圧延を行なうことを特徴とする請求項6に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  8. 前記化学組成が、更に、質量%で、
    Ti:0.1%以下、
    Nb:0.1%以下、
    V:0.1%以下の1種または2種以上
    を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.1%以下である請求項6又は7に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  9. 前記化学組成が、更に、質量%で、
    Cu:1.0%以下、
    Ni:1.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    Cr:1.0%以下の1種または2種以上
    を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%以下である請求項6〜8のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  10. 前記化学組成が、更に、質量%で、
    W:0.005%以下、
    Ca:0.005%以下、
    Mg:0.005%以下
    希土類元素(REM):0.01%以下の1種または2種以上
    を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.01%以下である請求項6〜9のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  11. 前記化学組成が、更に、質量%で、
    B:0.003%以下
    を含むものである請求項6〜10のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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