JP6819254B2 - 焼付硬化性に優れる高強度鋼板および製造方法 - Google Patents
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Description
これまで、焼付硬化性を高めるために、様々な手法による検討がされてきた。例えば、焼戻し熱処理は、固溶炭素量が減るために焼付硬化性が劣化する(非特許文献1)。
複合組織鋼における形態制御は、焼付硬化性の観点からはあまり検討されていないが、硬質組織を微細に分散させると、加工硬化が高まるため、BHは下がる(非特許文献2)。
これは、
(1)組織形態において硬質組織を分散させると、各相の予ひずみ分配が変化し、マルテンサイトに予ひずみが入りやすくなること、
(2)焼戻しマルテンサイトを組織に含めることによって、さらにマルテンサイトに予ひずみが入りやすくなるためである。これにより、硬質組織にも転位が導入されて、焼付硬化するために、全体の焼付硬化性が向上することを見出した。また、焼戻し熱処理をすることによって、焼付硬化後の曲げ性や極限変形能が向上することも見出した。
(1)質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:2.0〜4.0%、
P:0.0001〜0.10%、
S:0.0001〜0.01%、
Al:0.001〜2.00%、
N:0.0001〜0.01%、
をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を持ち、組織が面積率で、20%以上70%以下のフェライト、及び、ベイナイトとマルテンサイトの1種または2種を含む30%以上の硬質組織とからなり、その硬質組織のうち50%以上が焼戻しマルテンサイトであり、表面から深さ3t/8からt/2位置(t:鋼板の板厚)における、板厚方向に沿った各位置で、板厚方向と垂直方向へ引いた線上の前記硬質組織の線分率の標準偏差が、0.050以下である鋼組織を有し、BHが120MPa以上を示すことを特徴とする焼付硬化性に優れた高強度鋼板である。
Ti:0.1%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.1%以下である前記(1)に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cr:1.0%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%以下である前記(1)又は(2)に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
W:0.005%以下、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下
希土類元素(REM):0.01%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.01%以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
B:0.003%以下
を含むものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。
前記スラブを熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延した鋼板にAc1以上1000℃以下の温度域で10〜1000秒加熱保持して、10℃〜200℃/秒の平均冷却速度で500℃以下まで冷却する焼鈍工程と、
200℃以上350℃以下の温度域で100秒以上保持後、2℃/秒以上の平均冷却速度で100℃以下まで冷却する焼戻し工程と、を有することを特徴とする、
上記(1)に記載の焼付硬化に優れる高強度鋼板の製造方法。
Ti:0.1%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.1%以下である前記(6)又は(7)に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cr:1.0%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%以下である前記(6)〜(8)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
W:0.005%以下、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下
希土類元素(REM):0.01%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.01%以下である前記(6)〜(9)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
B:0.003%以下
を含むものである前記(6)〜(10)のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
本発明の実施形態に係る鋼板は、上記のように、製造方法によって組織形態を制御する点に特徴があるが、優れた加工性を備えつつも、焼付硬化性を一層高めた高強度鋼板を得るために、化学成分組成が適切に調整されていることが好ましい。よって、本発明の実施形態に係る鋼板及びその製造に用いるスラブの化学成分組成について説明する。以下の説明において、鋼板及びスラブに含まれる各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。
Cは、フェライトの微細化やフェライト以外の第2相の生成を促すことにより強度を高める作用を有する。また、焼付硬化性を高める作用を有する。以上のような作用を有効に発揮させるため、C含有量は0.05%以上とし、好ましくは0.07%以上とする。一方、C含有量が0.30%超では、溶接性が劣化する。従って、C含有量は0.30%以下とし、好ましくは0.20%以下とする。
Siは炭化物の生成を抑え、焼付硬化に必要な固溶Cを確保するのに必要な元素である。Siは、鋼の延性を向上させ、且つ、フェライトの生成を助長して、硬質組織のバンド状の分布を抑制する。Si含有量が0.2%未満では、十分な作用効果が得られないことがある。よって、Si含有量は0.2%以上とする。また、固溶Cを増加させるために、焼付硬化に優れる鋼板の高強度化に必須である。焼戻しによって、さらにこの効果は顕著になる。この作用を有効に発揮させるために、含有量は0.5%以上とする。従って、Si含有量は好ましくは0.2%以上とし、より好ましくは0.5%以上とする。一方、Si含有量が2.0%超では、表面性状が劣化したり、添加効果が飽和して徒にコストを上昇させたりする。従って、Si含有量は2.0%以下とし、好ましくは1.5%以下とする。
Mnは焼き入れ性向上元素であり、焼付硬化に優れる鋼板の高強度化およびフェライト生成を抑制するのに有用である。このような作用を有効に発揮するには、Mn含有量は2.0%以上とし、好ましくは2.3%以上とする。しかし、過剰のMn添加は偏析を助長し、4.0%を超えて添加すると鋳片割れが起きるなどの悪影響が見られる。また、MnはCと相互作用することによって、Cが転位に固着されるのを妨害するため、3.0%より少ない方が良い。従って、Mn含有量は4.0%以下とし、好ましくは3.0%以下とする。
Alは、脱酸および炭化物形成元素の歩留まり向上に対して効果を有する。以上のような作用を有効に発揮させるため、Al含有量は0.001%以上とし、好ましくは0.01%以上とする。一方、Al含有量が2.00%超では、溶接性が低下したり、酸化物系介在物が増加して表面性状が劣化したりする。また、Al含有量が1.00%以上であると、C拡散の活性化エネルギーを上昇させ、拡散しにくくするため、BHを劣化させる。従って、Al含有量は2.00%以下とし、好ましくは1.00%以下とする。
Pは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。溶接性の観点から、P含有量は低ければ低いほどよい。特に、P含有量が0.10%超で、溶接性の低下が著しい。従って、P含有量は0.10%以下とし、好ましくは0.03%以下とする。P含有量の低減にはコストがかかり、0.0001%未満まで低減しようとすると、コストが著しく上昇する。このため、P含有量は0.0001%以上としてもよい。Pは強度の向上に寄与するため、P含有量は0.0001%以上としてもよい。
Sは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。溶接性の観点から、S含有量は低ければ低いほどよい。S含有量が高いほど、MnSの析出量が増加し、低温靭性が低下する。特に、S含有量が0.01%超で、溶接性の低下及び低温靱性の低下が著しい。従って、S含有量は0.01%以下とし、好ましくは0.003%以下とする。S含有量の低減にはコストがかかり、0.0001%未満まで低減しようとすると、コストが著しく上昇する。このため、S含有量は0.0001%以上としてもよい。
Nは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。溶接性の観点から、N含有量は低ければ低いほどよい。特に、N含有量が0.01%超で、溶接性の低下が著しい。従って、N含有量は0.01%以下とし、好ましくは0.006%以下とする。N含有量の低減にはコストがかかり、0.0001%未満まで低減しようとすると、コストが著しく上昇する。このため、N含有量は0.0001%以上としてもよい。
Ti、Nb及びVは強度の向上に寄与する。従って、Ti、Nb若しくはV又はこれらの任意の組み合わせが含有されていてもよい。この効果を十分に得るために、Ti、Nb若しくはVの含有量、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせの合計含有量は、0.003%以上が好ましい。一方、Ti、Nb若しくはVの含有量、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせの合計含有量が0.1%超では、熱間圧延及び冷間圧延が困難になる。従って、Ti含有量、Nb含有量若しくはV含有量、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせの合計含有量は0.1%以下とする。つまり、Ti、Nb、及びVの含有量は、各成分単独の場合、0.003〜0.1%が好ましい範囲であり、これらの2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量においても、0.003%以上0.1%以下が満たされることが好ましい。
Cu、Ni、Mo及びCrは強度の向上に寄与する。従って、Cu、Ni、Mo、若しくはCr又はこれらの任意の組み合わせが含有されていてもよい。この効果を十分に得るために、Cu、Ni、Mo及びCrの含有量は、各成分単独の場合、0.005〜1.0%が好ましい範囲であり、これらの2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量においても、0.005%以上1.0%以下が満たされることが好ましい。一方、Cu、Ni、Mo及びCrの含有量、又はこれらの2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%超では、上記作用による効果が飽和して、徒にコストが高くなる。従って、Cu、Ni、Mo及びCrの含有量、又はこれらの2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量の上限は1.0%とする。つまり、Cu:0.005%〜1.0%、Ni:0.005%〜1.0%、Mo:0.005%〜1.0%、及びCr:0.005%〜1.0%とすると共に、これらを任意に組み合わせた場合の合計含有量においても、0.005〜1.0%であることが好ましい。
W、Ca、Mg及びREMは介在物の微細分散化に寄与し、靭性を高める。従ってW、Ca、Mg若しくはREM又はこれらの任意の組み合わせが含有されていてもよい。この効果を十分に得るために、W、Ca、Mg及びREM、又はこれらの2種以上の任意の組み合わせの合計含有量は、好ましくは0.0003%以上とする。一方、W、Ca、Mg及びREMの合計含有量が0.01%超では、表面性状が劣化する。従って、W、Ca、Mg及びREMの合計含有量は0.01%以下とする。つまり、W:0.005%以下、Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下、REM:0.01%以下であって、これらの任意の2種以上の合計含有量が0.0003〜0.01%であることが好ましい。
Bは焼き入れ性向上元素であり、焼付硬化用鋼板の高強度化に有用な元素である。このため、0.0001%以上が好ましい。しかし、0.003%を超えて添加すると上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるため、B含有量は0.003%以下とした。好ましくは0.0025%以下である。
本発明の実施形態の焼付硬化性に優れた高強度鋼板は、少なくとも2つ以上の相を含有する複合組織を対象とし、その組織形態やその組織を制御することで、予ひずみの分配を変化させ、焼付硬化性が向上することに大きな特徴をもつものである。各組織についてその面積率を規定した理由について説明する。
フェライトは降伏応力が低く、優れた加工硬化特性を有する組織である。このためフェライト面積率を過度に高めると、焼付硬化処理前の強度が高まり、且つ焼付硬化処理後の降伏応力が低下するため、焼付硬化性が大きく劣化することから、鋼板中のフェライト分率は70%以下とする。焼付硬化性を更に高めるにはフェライト面積率は50%以下とすることが好ましく、45%以下とすることが更に好ましい。一方、フェライト面積率が20%以下では、硬質組織に予ひずみが入りすぎてしまい、逆に焼付硬化性を劣化させてしまう。従って、フェライト面積率は20%以上とし、好ましくは25%以上とする。
本発明の実施形態では、上記フェライトの他に、硬質組織を30%以上含有させることとする。なお、硬質組織は、ベイナイト、マルテンサイトのうち1種または2種以上含むものとする。この硬質組織はフェライトよりも硬質な変態生成物の総称である。一般的に、フェライトよりも硬質組織の方において炭素濃度が高いため、焼付硬化性は優れている。しかし、複合組織として軟らかいフェライトと硬質組織があった場合、予ひずみはほとんどフェライトが担うため、従来は硬質組織の焼付硬化性を活用できていない。焼付硬化性を上昇させるためには硬質組織に変形を担わせることが重要である。そのため、硬質組織の面積率が80%以上であると、硬質組織に予ひずみが入りすぎてしまい、逆に焼付硬化性を劣化させてしまう。しかし、硬質組織が少なすぎるとフェライトのみが変形を担ってしまうため、30%以上は必要である。よって、硬質組織の面積率は30%以上、好ましくは40%以上80%以下とする。
本発明の実施形態では、硬質組織のうち50%以上が焼戻しマルテンサイトであることが必要である。上記で述べた通り、焼付硬化性および焼付硬化後の曲げ性や極限変形能を向上させるために、複合組織中の焼き入れままマルテンサイトを焼戻す必要がある。これが50%未満では、焼き入れままマルテンサイトが多いため、予ひずみが入りにくく焼付硬化性を高めることが困難且つ焼付硬化処理後の極限変形能も劣化する。従って、硬質組織のうち焼戻しマルテンサイトの面積率を50%以上とする。
本発明の製造方法では、焼戻した際に、マルテンサイトやフェライトからセメンタイト等炭化物が析出する。これは、微細かつ大量に出るために、面積率として測定するのが難しい。よって、炭化物を含む母相として計測する。
プレス成形によって入る転位(以下、「予ひずみ」ともいう)の分配が変化し、硬質組織にも転位が導入される。表面からの深さが3t/8からt/2までの深さ範囲内での硬質組織の線分率の標準偏差が大きいことは、厚さ方向での硬質組織の割合の変動が大きいこと、即ち鋼組織がバンド状組織になっていることを意味する。特に硬質組織の線分率の標準偏差が0.050超では、バンド状組織が顕著であり、応力集中箇所の密度が局所的に高い。上記で述べた通り、予ひずみ変形を硬質組織に担わせるためには、バンド状組織ではなく、硬質組織が均一に分散している必要がある。従って、硬質組織の線分率の標準偏差は、表面からの深さが3t/8からt/2までの深さ領域内で0.050以下とし、好ましくは0.040以下とする。
先ず、面積率の測定と同様にして撮影した光学顕微鏡写真に画像処理を施し、黒色部分と白色部分とに二値化する。次いで、観察対象の画像の深さ3t/8の部分から深さt/2の部分にかけて、r/30毎に線分の起点を設定する(rは、硬質組織の円相当平均直径である)。観察対象の深さ範囲が3t/8からt/2までの厚さt/8の領域であるため、起点の数は15t/4rとなる。その後、各起点から厚さ方向に垂直な方向、例えば圧延方向に延びる長さが50rの線分を設定し、この線分上の硬質組織の線分率を測定する。そして、15t/4r本の線分間の線分率の標準偏差を算出する。
BHについては、2%予ひずみを付加後、170℃で20分の熱処理した試験片を再引張したときの応力から、2%予ひずみ付加時の応力を差し引いた値が120MPa以上とする。これが120MPa未満では、成形しにくく且つ成形後の強度が低いため、優れた焼付硬化性とは言えない。従って、BHは120MPa以上とする。
次に、本発明の実施形態に係る鋼板の製造方法について説明する。以下の説明は、本発明の高強度鋼板を製造するための特徴的な方法の例示を意図するものであって、本発明の高強度鋼板を以下に説明するような製造方法によって製造されるものに限定することを意図するものではない。なお、以下の実施形態に係る鋼板の製造方法では、上記の化学組成を有するスラブの多軸圧縮加工、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍及び焼戻し熱処理工程をこの順で行う。
スラブは、例えば、転炉又は電気炉等を用いて上記化学組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法により製造することができる。連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法等を採用してもよい。
熱間圧延、冷間圧延の方法は特に限定するものではなく、通常の方法を採用することができる。例えば熱間圧延は、多軸圧縮加工後のスラブの仕上げ圧延として行い、冷間圧延は、熱延鋼板の酸洗後に行う。
Ar3=901−325×C+33×Si―92×(Mn+Ni/2+Cr/2+Cu/2+Mo/2)+52×Al
上記式において、C、Si、Mn、Ni,Cr、Cu、Mo、Alは各元素の含有量(質量%)である。
冷延工程としては、組織を均質化、微細化する観点から、冷間圧延の圧下率は好ましくは50%以上とする。
そして、上記冷間圧延工程を経て得られた鋼板に、焼鈍処理を施す。焼鈍温度での加熱は、Ac1以上1000℃以下の温度域で、10〜1000秒加熱保持とする。この温度範囲は、フェライトと硬質組織の体積率を決めるためのものである。焼鈍時間は、冷間加工されたフェライトを十分に再結晶させること、及びフェライトと硬質組織の体積率を制御しやすくするために、10秒以上とすることが好ましい。また、焼鈍時間を1000秒を超えると生産性が悪くなる。従って、焼鈍時間は10〜1000秒とする。
Ac1=751−16×C+35×Si―28×Mn−16×Ni+13×Cr−6×Cu+3×Mo
上記式において、C、Si、Mn、Ni,Cr、Cu、Moは各元素の含有量(質量%)である。
このようにして、本発明の実施形態に係る鋼板を製造することができる。
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
表3に示すように、本発明範囲内にある試料No.2、3、5〜8、10、12、15、17、19〜21、23では、いずれも引張強度が900MPa以上、BHが120MPa以上、板厚減少率が40%以上となり、高強度、且つ、焼付硬化性と焼付硬化後の曲げ性に優れることが示された。
Claims (11)
- 質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0.2〜2.0%、
Mn:2.0〜4.0%、
P:0.0001〜0.10%、
S:0.0001〜0.01%、
Al:0.001〜2.00%、
N:0.0001〜0.01%、
をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を持ち、組織が面積率で、20%以上70%以下のフェライト、及び、ベイナイトとマルテンサイトの1種または2種を含む30%以上の硬質組織とからなり、その硬質組織のうち50%以上が焼戻しマルテンサイトであり、表面から深さ3t/8からt/2位置(t:鋼板の板厚)における、板厚方向に沿った各位置で、板厚方向と垂直方向へ引いた線上の前記硬質組織の線分率の標準偏差が、0.050以下である鋼組織を有し、BHが120MPa以上を示すことを特徴とする焼付硬化性に優れた高強度鋼板。 - 前記化学組成が、更に、質量%で、
Ti:0.1%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.1%以下である請求項1に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。 - 前記化学組成が、更に、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cr:1.0%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%以下である請求項1又は2のいずれかに記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。 - 前記化学組成が、更に、質量%で、
W:0.005%以下、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下
希土類元素(REM):0.01%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.01%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。 - 前記化学組成が、更に、質量%で、
B:0.003%以下
を含むものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板。 - 請求項1に記載の化学組成を有する鋼スラブを1000℃以上1250℃以下の温度域で、製品時の板幅方向から3%以上50%以下の圧縮変形と、製品時の板幅方向の垂直方向から3%以上50%以下の圧縮変形からなる多軸変形を、1回以上5回以下施す均質化工程と、
前記スラブを熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延した鋼板にAc1以上1000℃以下の温度域で10〜1000秒加熱保持して、10℃〜200℃/秒の平均冷却速度で500℃以下まで冷却する焼鈍工程と、
200℃以上350℃以下の温度域で100秒以上保持後、2℃/秒以上の平均冷却速度で100℃以下まで冷却する焼戻し工程と、を有することを特徴とする、
焼付硬化に優れる請求項1に記載の高強度鋼板の製造方法。 - 前記焼鈍工程の後に、スキンパス圧延を行なうことを特徴とする請求項6に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
- 前記化学組成が、更に、質量%で、
Ti:0.1%以下、
Nb:0.1%以下、
V:0.1%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.1%以下である請求項6又は7に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。 - 前記化学組成が、更に、質量%で、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cr:1.0%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が1.0%以下である請求項6〜8のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。 - 前記化学組成が、更に、質量%で、
W:0.005%以下、
Ca:0.005%以下、
Mg:0.005%以下
希土類元素(REM):0.01%以下の1種または2種以上
を含み、2種以上を任意に組み合わせた場合の合計含有量が0.01%以下である請求項6〜9のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。 - 前記化学組成が、更に、質量%で、
B:0.003%以下
を含むものである請求項6〜10のいずれか1項に記載の焼付硬化性に優れた高強度鋼板の製造方法。
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