《実施例1》
[画像形成装置]
図2は本実施例における画像形成装置の構成模式図である。この画像形成装置100は、装置本体101の上部にリーダ部102が搭載されている、タンデム方式−中間転写方式のフルカラー電子写真複写機である。
リーダ部102は原稿台ガラス103と、これに載置された原稿を走査して画像を光電読取りするCCDセンサユニット104を有している。このユニット104により得られた画像信号はリーダ画像処理部201からプリンタ制御部200に送られ、装置本体101側の画像形成部に合わせた画像処理がなされる。制御部200には操作部202からも各種の情報が入力される。
装置本体101は、それぞれ、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(Bk)色のトナー像を形成する4つの作像部UY、UM、UC、UBkを有する。各作像部は、それぞれ、感光ドラム105、帯電器106、レーザスキャナ107、現像器108、一次転写ローラ109、ドラムクリーナ110を有する。なお、図の煩雑を避けるため作像部UY以外の作像部UM、UC、UBkにおけるこれらの機器に対する符号の記入は省略した。また、これら作像部の電子写真プロセスや作像動作は公知であるからその説明は割愛する。
各作像部のドラム105から回動する中間転写ベルト111に対して各色のトナー像が所定に重畳されて一次転写される。これによりベルト111上に4色重畳のトナー像が形成される。
一方、用紙を載置する載置部としての給紙カセット112又は113、もしくは手差しトレー122から記録材(シート:以下、用紙あるいは紙と記す)Pが一枚宛給送される。その用紙Pが搬送路(シートパス)114を通ってレジストローラ対115により所定の制御タイミングでベルト111と二次転写ローラ116との圧接部である二次転写ニップ部に導入される。これにより、用紙Pの一面に対してベルト111上の4色重畳のトナー像が一括して二次転写される。本実施例の画像形成装置においては上記の装置構成部が載置部より搬送されてきた用紙にトナー像を形成する画像形成部である。を有する。
その用紙Pが画像加熱装置である定着装置(定着部)300に導入されて加熱・加圧されることで未定着のトナー像が溶融軟化して固着像として定着(熱定着:画像加熱処理)される。そして、画像形成ジョブが片面モードの指定である場合には、定着装置300を出た、一面に対する画像形成済の用紙Pが排出トレー117上に排出される。
また、画像形成ジョブが自動両面モードの指定である場合には、定着装置300を出た一面目画像形成済みの用紙が反転フラッパー118により進路切り替えされて反転搬送路(スイッチバックシートパス)119に送り込まれる。そして、その用紙がスイッチバック搬送され、両面フラッパー120により両面搬送路121に送り込まれる。この自動両面機構により用紙は表裏反転された状態となって搬送路114を再び通って二次転写ニップ部に導入されて、用紙の二面目に対するトナー像の転写がなされる。その用紙が定着装置300を再度通過して両面画像形成済みの用紙が排出トレー117上に排出される。
本実施例の画像形成装置においては、用紙の坪量が大きく剛度が高い用紙Pを両面で画像形成する手差し両面形態の画像形成モード(以下、手差し両面モードと記す)を有する。手差し両面モードは、一度、一面目画像を出力したあとにユーザにその用紙(一面側に素で未定着済みのトナー像を有する記録材)Pの表裏を逆にして給紙カセット112又は113あるいは手差しトレー122にセットして、二面目画像を形成するモードである。この手差し両面モードについは後述する。
なお、本実施例の画像形成装置100においては大小各種幅サイズの用紙の搬送は用紙幅中心の所謂中央基準にてなされるが、所謂片側基準にてなされてもよい。
[定着装置]
ここで、以下で説明する定着装置(定着部)300に関し、正面とは装置を用紙入口側からみた面、背面とはその反対側の面(用紙出口側)、左右とは装置を正面から見て左または右である。本実施例においては右側を一端側R、左側を他端側Fとする。上下とは重力方向において上または下である。上流側と下流側とは用紙搬送方向(記録材搬送方向)に関して上流側と下流側である。また、定着装置またはこれを構成している部材の長手方向(もしくは幅方向)とは用紙搬送路面内において用紙搬送方向に直交する方向である。短手方向とは用紙搬送方向に平行な方向である。
図3は本実施例の定着装置300の要部の横断右側面模式図である。図4は同装置300の要部の正面模式図である。この定着装置300は、IH(誘導加熱)方式−ベルト加熱方式の画像加熱装置であり、大別して、下記のような部材や機構を有している。
a:用紙Pに形成されたトナー像tをニップ部Nにて加熱する第1の回転体(加熱回転体)としての可撓性を有する無端状ベルト(エンドレスベルト:以下、定着ベルトあるいはベルトと記す)11を有するベルトユニット1
b:ベルト11を加熱するための加熱器(加熱手段)としてのコイルユニット(誘導加熱装置、磁束発生手段)2
c:ベルト11との間でニップ部Nを形成する第2の回転体(加圧回転体)としての弾性を有する加圧ローラ3
d:加圧ローラ3との当接により加圧ローラ3から吸熱する第3の回転体としての吸熱回転体(加圧ローラ3を冷却するための冷却手段(冷却部):以下、均熱ローラと記す)41を有する均熱ローラユニット4
e:均熱ローラ41の表面を清掃するクリーニング機構5
f:加圧ローラ3及び均熱ローラ41の異常昇温を低減させるための冷却手段(冷却部)としての冷却ファン(シロッコファン)Fa・Fb・Fc
g:上記の部材や機構を収容している装置枠体(シャーシ、ハウジング)6
(1)ベルトユニット1
ベルトユニット1は、磁束が通過することにより発熱する金属層を有するベルト11の内部に内部アセンブリを有する。このアセンブリは、定着パッド12を有する圧力付与部材としてのパッド部材13、該パッド部材13を保持する横断面下向きコの字形の金属製のステー14、該ステー14を覆う内コア(磁性体コア)15等の組み立て体である。図5の(b)はこの内部アセンブリの斜視模式図である。
パッド12、パッド部材13、ステー14、内側コア15は何れもベルト11の長手方向(幅方向)に長い部材である。ステー14は一端部と他端部がそれぞれベルト11の両端部から外方に突出しており、その突出部に対してそれぞれ一端側と他端側のフランジ部材16R・16Fが嵌着されている(図4)。図6の(a)と(b)はそれぞれ一端側と他端側のフランジ部材16R・16Fおよびこれらが嵌着されるステー14の一端部と他端部の斜視図である。ベルト11はこの両フランジ部材16R・16Fのフランジ面16a・16a間において内部アセンブリ12〜15の外側にルーズに外嵌されている。
パッド部材13の内側(パッド12の側とは反対側)においてパッド部材13の長手中央部と一端部側と他端部側にはそれぞれ温度センサ取り付け部(不図示)が配設されている。その各取り付け部にそれぞれ弾性支持部材17を介して中央部温度センサTHaと、一端部温度センサTHbと、他端部温度センサTHcが設けられている。
各温度センサの支持部材17はステー14の上面の長手中央部と両端部側にそれぞれ設けられている透穴14a・14b・14cとこの各透穴に対応する内コア位置に設けられている透穴15a・15b・15cを通って内コア15の外側に突き出ている。そして、各支持部材17の先端部に支持された各温度センサTHa・THb・THcがベルト11の長手中央部、一端部側、他端部側の各内面に対して弾性的に当接している。
これにより、回転されるベルト11のセンサ当接面が波打つなどの位置変動が生じたとしても各温度センサTHa・THb・THcがこれに追従してベルト11の内面との良好な接触状態が維持される。
ベルト11について図7を用いて説明する。本実施例において、ベルト11は内径が30mm、長さ390mmで、電気鋳造法によって製造したニッケルの基層(磁束が通過することにより発熱する金属層)11aを有している。基層11aの厚みは40μmである。ベルト11の長さ(幅)L11(図9)はこの基層11aの長さ390mmに対応している。
基層11aの外周には弾性層11bとして耐熱性シリコーンゴム層が設けられている。シリコーンゴム層の厚さは100〜1000μmの範囲内で設定するのが好ましい。本実施例では、ベルト11の熱容量を小さくしてウォーミングアップタイムを短縮し、かつカラー画像を定着するときに好適な定着画像を得ることを考慮して、シリコーンゴム層11bの厚みは300μmとされている。このシリコーンゴムは、JIS−A20度の硬度を持ち、熱伝導率は0.8W/mKである。
弾性層11bの外周には、表面離型層11cとしてフッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられている。基層11aの内面側には、ベルト内面と前記温度センサTHa・THb・THcとの摺動摩擦を低下させるために、フッ素樹脂やポリイミドなどの樹脂層(滑性層)11dを10〜50μm設けても良い。本実施例では、この層11dとしてポリイミドを20μm設けた。
なお、ベルト11の基層11aとしては、ニッケルのほかに鉄合金や銅、銀などを適宜選択可能である。また、樹脂基層にそれら金属を積層させるなどの構成でも良い。基層11aの厚みは、後述するコイルユニット2の励磁コイル21に流す高周波電流の周波数と金属層11aの透磁率・導電率に応じて調整して良く、5〜200μm程度の間で設定すると良い。
パッド12を有するパッド部材13がベルト11と加圧ローラ3との間に押圧力を作用させてニップ部Nを形成する。パッド12はステンレスなどの金属やセラミックス等の硬度の高い材質からなり、厚さ1mm程度で長手方向に伸びた形状である。パッド部材13の材質はPPSやLCP等の耐熱性の樹脂からなる。
パッド部材13を保持するステー14はニップ部Nに圧力を加えるために剛性が必要であるため金属製の剛性部材である。ステー14の材質としては、コイルユニット2によってベルト11のみが発熱することが望ましく、誘導加熱の影響を受けにくいステンレス等の非磁性の材質が望ましい。
ステー14のコイルユニット2側には、誘導加熱をより効果的に行うために内コア15が設けられている。内コア15は、図5の(b)に示すように、長手方向に複数に分割して、コイルユニット2の後述する励磁コイル21との距離を漸次変化させるように配置されている。内コア15はコイル21に高周波電流を印加することにより発生した磁束がより効率的にベルト11の加熱に用いられるように、磁束を遮蔽するフェライト等の高透磁率の材質からできている。
ベルトユニット1は一端側と他端側のフランジ部材16R・16Fをそれぞれ装置枠体6の一端側と他端側の側板61R・61Fに形成されている縦方向のガイドスリット部(不図示)に係合させて配設されている。これにより、ベルトユニット1は全体に側板16R・16F間においてガイドスリット部に沿って上下方向に所定の範囲で移動可能な自由度を有する。
(2)加圧ローラ
本実施例における加圧ローラ3は、長手中央部の径が20mmで両端部の径が19mmである鉄合金製の芯金に、弾性層としてシリコーンゴム層を設けた、外径が30mmの弾性ローラである。弾性層の長さは370mmとしてある。この弾性層の長さ部分が加圧ローラ3の長さ(幅)L3(図9)である。弾性層の表面には、離型層としてフッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられる。加圧ローラ3の長手中央部における硬度は、ASK−C70℃である。
加圧ローラ3は、図8に誇張して示すように、端部の外径が中央の外径より大きい、逆クラウン形状としている。クラウン量は加圧ローラ3の中央と端部で200μmとしている。なお、加圧ローラ3の外径形状は、このような逆クラウン形状以外に、例えば、中央と端部との径がほぼ同じとなるストレート形状としても良い。
加圧ローラ3はユニット1の下側において、軸線方向をベルトユニット1の長手方向にほぼ平行にして、芯金の一端側と他端側をそれぞれ装置枠体6の一端側と他端側の側板61R・61F間にそれぞれ軸受(不図示)を介して回転可能に配設されている。
加圧ローラ3は、制御部200の駆動制御部207(図10)で制御される加圧ローラ駆動機構208により回転駆動される。駆動機構208の具体的な構成は図には省略したけれども、モータとギアトレーンなどにより構成されている。
(3)圧力付与機構(加圧機構)
ベルトユニット1の一端側と他端側のフランジ部材16R・16Fはそれぞれ装置枠体6の一端側と他端側の側板61R・61Fに対して加圧ローラ3に対して近寄る方向と遠のく方向とにスライド移動可能に係合されている。
そして、図4のように、一端側のフランジ部材16Rにおけるバネ受け部16bと装置枠体6の一端側のバネ受け部材62Rとの間には加圧バネ63Rが縮設されている。同様に、他端側のフランジ部材16Fにおけるバネ受け部16bと装置枠体6の他端側のバネ受け部材62Fとの間には加圧バネ63Fが縮設されている。
上記の加圧バネ63R・63Fの縮設反力によりベルトユニット1のステー14の一端側と他端側にフランジ部材16R・16Fを介してそれぞれ所定の同等の押し下げ力が作用している。これにより、パッド12を有するパッド部材13と加圧ローラ3とがベルト11を挟んで所定の加圧力をもって圧接して、ベルト11と加圧ローラ3との間に用紙搬送方向aに関して所定幅のニップ部Nが形成される。パッド部材13は、長手中央が端部よりも加圧ローラ3側に突出するようなクラウンが付けてあり、クラウン量はパッド部材13の長手中央と端部で1.4mmとしている。
また、具体的な機構構成は図には省略したけれども上記圧力付与機構によるニップ部Nの加圧力を解除するための加圧解除機構209(図10)が配設されている。加圧解除機構209は例えばモータとカムとレーバー等から構成され、制御部200の駆動制御部207により圧力付与機構に対する非作用動作状態と作用動作状態とに制御される。
加圧解除機構209が非作用動作状態に制御されることで、圧力付与機構の加圧動作によりベルト11と加圧ローラ3との間に所定幅のニップ部Nが形成される。加圧解除機構209が作用動作状態に制御されることで、圧力付与機構における加圧バネ63R・63Fのフランジ部材16R・16Fに対する押し下げ力が解除された状態になされる。すなわち、ニップ部Nの加圧力が解除される(ニップ解除状態)。
制御部200は画像形成装置のスタンバイ時等の非画像形成時には加圧解除機構209を作用動作状態に制御して定着装置300をニップ解除状態にしている。これにより、加圧ローラ3に対するニップ跡の発生を抑制できる。画像形成時には非作用動作状態に制御してニップ部Nを加圧状態にする。
(4)コイルユニット
コイルユニット2は、ベルトユニット1の上側に配設されている。なお、図4においては、便宜上、コイルユニット2は省かれている。コイルユニット2はベルト11の長手方向に沿って長いハウジング23の内部に励磁コイル(磁束を生ずるコイル)21、外コア(外側磁性体コア)22等を組み付けたものである。図5の(a)はコイルユニット2の斜視模式図である。
ハウジング23は横長箱型で耐熱樹脂製の成型品である。ハウジング23の底板23a側がベルト11に対する対向面である。底板23aは横断面においてベルト11の外周面の略半周範囲に沿うようにハウジング23の内側に湾曲している。
コイルユニット2はハウジング23の両端部がベルトユニット1の一端側と他端側のフランジ部材16R・16Fに受け止められている。これにより、ハウジング23の底板23aがベルト11の上面に対して所定のギャップ(隙間)αを存して対面している。コイルユニット2はハウジング23の一端側と他端側の側板がそれぞれの側のフランジ部材16R・16Fにワイヤーバネ(不図示)で括りつけられている。つまり、コイルユニット2はベルトユニット1と一体化されている。
コイル21は、電線として例えばリッツ線を用い、これを横長・船底状にしてベルト11の周面と側面の一部に対向するように巻回してなる。そして、ハウジング内側に湾曲している底板23aの内面に当てがわれてハウジング内部に収められている。コイル21には、制御部200の駆動制御部207により制御される電源装置(励磁回路)211(図10)から20〜50kHzの高周波電流が印加される。この電流印加によりコイル21によって発生した磁界によりベルト11の金属層(導電層)11aが誘導発熱する。
外コア22は、コイル21によって発生した磁界がベルト11の金属層以外に実質漏れないようにコイル21を覆わせた外側の磁性体コアである。そして、外コア22は、図5の(a)のように、長手方向に沿って複数に分割されて並んで配置されている。
ベルト11とコイルユニット2の励磁コイル21は、0.5mmのモールドにより電気絶縁の状態を保ち、ベルト11と励磁コイル21との間隔は1.5mm(モールド表面とベルト表面の距離は1.0mm)で一定であり、ベルト11は均一に加熱される。前述したように、励磁コイル21には、20〜50kHzの高周波電流が印加されて、ベルト11の基層11aが誘導発熱する。そして、立ち上げ時のベルト11の目標温度である180℃で一定になるように、温度センサTHaの検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させて励磁コイル21に入力する電力を制御して温度調節される。
励磁コイル21を含むコイルユニット2は、高温になるベルト11の内部ではなく外部に配置されているので、励磁コイル21の温度が高温になりにくい。また、電気抵抗も上昇せず高周波電流を流してもジュール発熱による損失を軽減する事が可能となり、また励磁コイル21を外部に配置したことでベルト11の小径化(低熱容量化)にも寄与しており、ひいては省エネルギー性にも優れていると言える。
本実施例の定着装置のウォーミングアップタイムは、非常に熱容量が低い構成である。このため、例えば励磁コイル21に1200W入力すると約15秒で目標温度である180℃に到達でき、スタンバイ中の加熱動作が不要であるため、電力消費量を非常に低く抑える事が可能である。
(5)均熱ローラ
均熱ローラ41は加圧ローラ3との当接により加圧ローラ3から吸熱する吸熱回転体である。均熱ローラ41は支持枠体42に回転可能に保持されている。均熱ローラ41と支持枠体42により均熱ローラユニット4が構成されている。均熱ローラユニット4は均熱ローラ41を加圧ローラ3に対して平行に対向させて支持枠体42を装置枠体6の一端側と他端側の側板61R・61Fに対し加圧ローラ3に近づく方向と遠のく方向とにスライド移動可能に支持させて配設されている。
ユニット4は駆動制御部207により制御される接離機構210により、均熱ローラ41が加圧ローラ3に所定に当接した状態となる着位置A(図3の実線示位置)と加圧ローラ3から所定に離間した状態となる脱位置B(2点鎖示位置)とに移動制御される。つまり、制御部200は接離機構210を均熱ローラ41が加圧ローラ3に当接する方向と加圧ローラ3から離間させる方向とに動作制御する。即ち、均熱ローラ41は加圧ローラ3に対して接離可能(着脱可能)に配設されている。
接離機構210の具体的な構成は図には省略したけれども、モータとカムを有するシフト機構、ソレノイドトレーバーを有するシフト機構などの適宜な移動機構を用い得る。
均熱ローラ41は、ベルト11の通紙部以外の異常昇温を加圧ローラ3で吸熱し、その吸熱した加圧ローラ3の熱を分散し、ベルト11の異常昇温(ベルトの過昇温)を抑制するために備えられている。即ち、均熱ローラ41は加圧ローラ3における熱の移動を促進させる機能を有する。
このような均熱ローラ41は、熱伝導率が100〜250℃で100W/m・K以上であり、且つ熱容量が100〜250℃で3.0kJ/m3・K以下の材料からなることが好ましい。前記材料はアルミニウム及び銅などであることが好ましい。均熱ローラ41の軸径は8[mm]であり、均熱ローラ41の直径はφ20[mm]、長さL4(図9)は380[mm]、前記材料で内部が埋まっている中実構成である。
また、均熱ローラ41の表面層には、ごみや加圧ローラ3からのオフセットトナー、紙粉等の異物付着を防止する目的で10〜20μmのフッ素コート層を設けたり、PFA層を設けても良い。
均熱ローラ41は、定着装置300の立ち上げ(定着装置が十分に常温状態である時)当初から加圧ローラ3に当接してしまうと、加圧ローラ3を経由してベルト21の熱を奪ってしまい、定着装置300の高速ウォームアップを阻害する要因となる。
そのため、定着装置300が通紙によりある程度蓄熱されるまで、加圧ローラ3からは離間させている。本実施例では、制御部200に定着蓄熱カウンタ205(図10)を設けている。定着蓄熱カウンタ205は、定着装置300を用紙Pが通過するごとにカウントアップしていく。
より具体的には、本実施例では、ニップ部Nの用紙搬送方向下流側に、定着後センサ30(図3)が配置されている。定着後センサ30を用紙Pの後端が通過した時に、定着装置300を用紙Pが通過したと判断し、カウントアップを行う。用紙搬送方向aの用紙サイズがA4サイズより大きい場合は、用紙一枚につき2カウント、用紙サイズがA4サイズ以下の場合は用紙一枚につき1カウント分だけ定着蓄熱カウンタ205が増加していく。定着蓄熱カウンタ205が25以上になると、均熱ローラ41を加圧ローラ3へ当接させるように制御部200が接離機構210を制御している。
なお、定着蓄熱カウンタ205は通紙が無い場合においては所定時間ごとにカウントした数字を減らすようになっている。具体的には、本実施例では、プリントジョブ(画像形成ジョブ:JOB)が終了してからの経過時間(秒)に0.5を乗じた数値が蓄熱カウンタ206から減算されていく。このため、投入されるジョブの間隔が十分に開いたときには再びゼロからカウントアップを始め、ジョブ間隔が短い場合においては、蓄熱カウンタ206はある程度維持した状態でジョブが開始する。
均熱ローラ41は本実施例においては加圧ローラ3に当接している状態においては回転駆動される加圧ローラ3の表面の摩擦により回転駆動を伝達され、加圧ローラ3に従動回転している。
当接離間検知部220は均熱ローラ41が加圧ローラ3に対して着(当接)しているか脱(離間)しているかを検知する。この当接離間検知部220は適宜の手段構成を採択できる。本実施例においては、接離機構210の動作状態で判定する構成である。即ち、接離機構210に設けられたユニット着脱カム(不図示)の同軸上にフラグを設ける。そして、このフラグと組みとなるフォトインタラプタを設ける。
フラグはユニット4を着位置Aと脱位置Bとに移動させる着脱カムと一緒に回動する。その回動するフラグにより光を遮光/透過するフォトインタラプタを用いて、本実施例では、光が遮光(フォトインタラプタ:OFF)されていれば制御部200はユニット4が着位置Aであると判定する。即ち、均熱ローラ41が加圧ローラ3に対して着している判定する。光が透過(フォトインタラプタ:ON)していれば制御部200はユニット4が脱位置Bであると判定する。即ち、均熱ローラ41が加圧ローラ3に対して脱している判定する。
(6)冷却ファン
冷却ファンFa・Fb・Fcは加圧ローラ3及び均熱ローラ41の異常昇温を低減させるために設けられており、加圧ローラ3よりも用紙搬送方向上流側において、加圧ローラ3及び均熱ローラ41の長手3か所に設配されている。冷却ファンFaは加圧ローラ3と及び均熱ローラ41の長手中央部に送風する。冷却ファンFbとFcは加圧ローラ3と及び均熱ローラ41の一端部側と他端部側に送風する。冷却ファンFa・Fb・Fcは制御部200により所定の制御タイミングでON/OFF制御されて均熱ローラ41と加圧ローラ3を合わせて冷却できるような構成になっている。
(7)クリーニング機構
クリーニング機構5は均熱ローラ41の表面についたトナーや紙粉を清掃する機構であり、定着装置の装置枠体6に配設されている。クリーニング機構5は、ウェブペーパ(清掃部材:ウェブ部材)51と、ウェブペーパ51の繰り出しと巻き取りを行う2本のアルミパイプ製の軸52・53と、スポンジ製ローラのクリーニングローラ54と、ウェブ送り機構212等を有している。
ウェブ送り機構212の具体的な構成は図には省略したけれども、制御部200で制御されるモータとラチェット等を有している。そして、巻き取り軸53を所定の制御タイミングで間欠的に回転させて、繰り出し軸52側に装着されたロール巻きのウェブペーパ51を、クリーニングローラ54を経由させて、巻き取り53側に矢印b方向に逐次に巻き取るウェブ送りを行う。ウェブペーパ51は、具体的にはメタン系アラミド繊維でできた不織布などを用いることができる。
均熱ローラユニット4が着位置Aに移動されることで、均熱ローラ41は加熱ローラ3に当接するとともに、ウェブペーパ51を介してクリーニングローラ54に当接する。また、均熱ローラユニット4が脱位置Bに移動されることで、均熱ローラ41は加熱ローラ3から離間するとともに、ウェブペーパ51が懸け回されているクリーニングローラ54からも離間する。
均熱ローラ41が加圧ローラ3とクリーニングローラ54に当接している場合は、クリーニング機構5は用紙Pが定着装置300のニップ部Nを通過するたびに、所定の量だけウェブペーパ51を送っている。本実施例においては、A4用紙が2枚定着装置を通過するたびにウェブペーパ51を0.02mm送っている。
図9は本実施例の定着装置300の主要構成部材の長さ寸法と温度センサTHa・THb・THcの位置関係を示した図である。L11はベルト11の長さ寸法であり、本実施例においては390mmである。W11はベルト11の最大発熱幅である。最大発熱幅とはトナーが用紙に定着できる温度を保っているベルト幅方向の最大幅のことを意味する。本実施例においてはこの最大発熱幅W11は330mmである。
本実施例の定着装置300では、装置の電源投入時又は画像形成ジョブの開始時で、ニップ部Nに用紙が進入する前に、制御部200は、ベルト11を加熱するべく励磁コイル21に投入する電流を制御する。ベルト11の最大発熱幅では、幅方向の長さが330mmとなる。また、最大発熱幅内の温度差は±15℃以内に収まっている。
L3は加圧ローラ3の長さ寸法であり、本実施例においては370mmである。従って、ベルト11と加圧ローラ3との当接で形成されるニップ部Nの長手幅は加圧ローラ3の長さL3と同じ370mmである。L4は均熱ローラ4の長さ寸法であり、本実施例においては380mmである。Oは用紙搬送の中央基準線(仮想線)である。WPmaxは装置に使用可能な最大幅用紙の通紙幅(最大通紙幅)である。本実施例では装置に使用可能な最大幅用紙の幅寸法は330mmである。
中央部温度センサTHaは用紙搬送の中央基準線Oの位置にほぼ対応して配設されていて、ベルト11の長手中央部の温度を検知する。即ち、中央部温度センサTHaは、大小各種幅サイズの用紙の何れもが通過する通紙部となるベルト部分の温度を検知する。中央部温度センサTHaにより検知された検知温度情報は、制御部200にフィードバックされる。
制御部200は、この温度センサTHaから入力する検知温度が所定の目標温度(定着温度)に維持されるように電源装置211からコイル21に入力する電力を制御している。即ち、ベルト11の検知温度が目標温度に昇温した場合、コイル21への通電が遮断される。本実施例では、電源の立ち上げ中はベルト11の目標温度で一定になるように、中央部温度センサTHaの検出温度に基づいて高周波電流の周波数を変化させてコイル21に入力する電力を制御して温度調節(温調)を行っている。
一端部側と他端部側の端部温度センサTHbとTHcは、それぞれ、ベルト11の長手中央から例えば160mmの位置に配置されている。端部温度センサTHbとTHcは、通紙する最大幅サイズの用紙の端部近傍にあることが望ましく、ベルト11の幅方向中央から150〜165mmの範囲にあることが好ましい。
図10に示した制御系統のブロック図を説明する。制御部200は、CPU(中央演算処理装置)203、メモリ204、定着蓄熱カウンタ205、用紙情報処理部(記録材の種類を判別する記録材情報処理部)206、駆動制御部207を備え、画像形成装置100の全ての機構部を統括的に制御する。
操作部202は制御部200と電気的情報の授受を行うユーザインタフェース(UI:User Interface、入力手段、表示手段)である。この操作部202により制御部200に対してユーザ(操作者、使用者)からの画像形成モード設定及び指示の入力を行う。また、制御部200から操作部202に対してユーザへの装置の状態報知等がなされる。
操作部202は、メインスイッチM−SW、入力部(操作パネル)202A、表示部(選択部:ディスプレイ、UI画面)202Bを有する。入力部202Aには、値数入力を行うためのテンキー群、プリント開始ボタン、ストップキー、節電ボタン等の各種の操作キーが配設されている。表示部202Bはタッチパネル方式の液晶画面であり、使用する用紙の選択が可能な用紙表示などの各種の情報表示がなされると共に、各種の操作ボタンの表示もなされる。表示された操作ボタンによっても画像形成装置が行う動作の各種設定が制御部200に入力される。
図11に表示部202Bに表示される用紙設定画面の一例を示す。薄紙、普通紙、厚紙などの通紙される用紙を選択する部分の他に、両面二面目の用紙であるかを設定する両面二面目ボタン1100がある。
この両面二面目ボタン1100は、一面側に既に定着済みのトナー像を有する用紙Pを用い他面側に対して未定着のトナー像を形成して定着する手差し両面形態の画像形成モードの実行を選択する場合に押下する。ボタンが押下された場合は、図11の普通紙ボタンのようにボタン表示が白黒反転され、選択されたボタンがわかるようになっている。
用紙情報処理部206は、操作部202又はPC等の外部ホスト装置(外部端末)400から、ユーザが出力(使用)する用紙種類(記録材種)の情報(記録材サイズおよび記録材種類)が送られる。
定着蓄熱カウンタ205は、定着装置を通過した用紙枚数をカウントする。駆動制御部207は、各種の機構208〜212、冷却ファンFa・Fb・Fc等の駆動及び非駆動を制御(オン/オフ制御)する。メモリ204には、制御部200が各制御部に指令を送るための各種データが保存されている。
(8)定着動作
画像形成装置100のスタンバイ状態において、定着装置300の加圧ローラ3は回転が停止されている。コイル21に対する通電、冷却ファン5に対する通電はオフにされている。
制御部200は、プリントジョブ開始信号(画像形成ジョブ開始信号)の入力に基づいて画像形成シーケンス制御を行う。定着装置300については、加圧ローラ駆動機構208をオンにして加圧ローラ3を図3の矢印R3の反時計方向に回転駆動させる。
この加圧ローラ3の回転により、ニップ部Nにおける加圧ローラ3の表面とベルト11の表面との摩擦力でベルト11に回転力が作用する。ベルト11はその内面がパッド12に密着して摺動しながら内部アセンブリ12〜15の外周りを図3において矢印R11の時計方向に加圧ローラ3の回転速度と同じ速度で従動回転する。ベルト11の回転に伴うスラスト方向への移動はフランジ部材16R・16Fのフランジ面12a・12aにより規制される。
なお、回転するベルト11は、基層11aが金属で構成されているので、回転状態にあっても幅方向への寄りを規制するための手段としては、ベルト11の端部を単純に受け止めるだけのフランジ部材16R・16Fを設ければ十分である。これにより、定着装置300の構成を簡略化できるという利点がある。
また、制御部200は電源装置211からコイル21に対して高周波電流を印加する。コイル21は高周波電流の供給により交番磁束(磁場)を発生する。その交番磁束がコア22により回転しているベルト11の上面側においてベルト11の金属層11aに導かれる。そうすると、金属層11aに渦電流が発生して、その渦電流によるジュール熱により金属層11aが自己発熱(電磁誘導発熱)してベルト11が昇温していく。
即ち、回転するベルト11はコイルユニット2から発生される磁界が存在する領域を通過したときに金属層11aが電磁誘導発熱して全周的に加熱されて昇温する。このベルト11の温度が温度センサTHaにより検知され、その検知温度情報が制御部200にフィードバックされる。制御部200はこのセンサTHaから入力する検知温度(検知される温度に関する情報)が所定の目標温度(定着温度:所定の温度に対応する情報)に維持されるように電源装置211からコイル21に対する供給電力を制御している。
本実施例では、ベルト11の目標温度である180℃で一定になるように、温度センサTHaの検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させてコイル21に入力する電力を制御して温度調節を行っている。
上記のように加圧ローラ3が駆動され、ベルト11が所定の定着温度に立ち上がって温調された状態において、ニップ部Nに未定着のトナー像tを担持した用紙Pがトナー像担持面側をベルト11側に向けてガイド部材18で案内されて導入される。用紙Pはニップ部Nにおいてベルト11の外周面に密着し、ベルト11と一緒にニップ部Nを挟持搬送されていく。
これにより、主にベルト11の熱が付与され、またニップ部Nの圧力を受けて未定着トナー像tが用紙Pの表面に熱圧定着(熱定着)される。ニップ部Nを通った用紙Pはベルト11の外周面からベルト11の表面がニップ部Nの出口部分の変形によって自己分離(曲率分離)して、更には分離ガイド19aで分離補助を受けて、ガイド部材19bにより定着装置300から排出搬送されていく。本実施例の場合はベルト11の表面回転速度が330mm/secで回転し、カラー画像を1分間にA4サイズ用紙で80枚、A4Rサイズで58枚、定着処理することが可能である。
(9)制御フロー説明
図1に本実施例における制御フローチャートを示す。装置の電源が投入されるか、画像形成ジョブが開始されると、制御部200は、用紙情報処理部206に対する入力情報から、両面二面目が指定された用紙を用いる手差し両面モードでの画像形成ジョブであるかを判断する(S1000)。
両面二面目指定されている場合は、制御部200は、定着装置300については、接離機構210を制御して均熱ローラユニット4を脱位置Bから着位置Aに移動させて均熱ローラ41を加圧ローラ3に対して着させる。かつ、冷却ファンFa〜FcをOFFからONにして均熱ローラ41を冷却する(S1001)。両面二面目指定されていなければ、ステップS1001の制御は行わない。
制御部200は、加圧解除機構209を作用動作状態から非作用動作状態に制御する。これにより加圧解除状態に保持されているベルトユニット1が加圧機構により加圧ローラ3に対して加圧されてニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ駆動機構208を駆動させる。これにより加圧ローラ3が回転駆動されるとともに、ベルト11が従動回転する。加圧ローラ3に対して均熱ローラ41が着していれば均熱ローラ41も従動回転する。
また、電源装置211をONして励磁コイル21に電圧を印加し、ベルト11の温度を所定の温調温度180℃に立ち上げてその温度を保つように温調を開始する(S1002、S1003)。温調温度に達した時点で用紙Pを給紙して定着動作を行う(S1004)。
用紙Pの定着装置通過ごとに蓄熱カウンタ205のカウント値iを1増加させる(S1005)。カウント値iが25より大きくなった場合は、制御部200は当接離間検知部220からの入力検知信号(前述したON/OFF信号)に基づいて均熱ローラ41が加圧ローラ3に対して着しているかどうかを判断する。加圧ローラ3に対して脱している場合は接離機構210を制御して均熱ローラユニット4を脱位置Bから着位置Aに移動させて均熱ローラ41を加圧ローラ3に対して着させる(S1006〜S1008)。
制御装置200はジョブ情報から定着動作を続けるか(S1004)、ジョブを終了して加熱回転を停止するか(S1010)を判断する(S1009)。
本実施例の画像形成装置における自動両面モードにおける用紙の搬送については図2により前述したとおりである。その自動両面モードを実行するための前述の自動両面機構は反転フラッパー118の部分や両面フラッパー120の部分などの用紙屈曲部が多い。そのため、用紙Pの剛性が高い場合は、紙詰まりが発生する。このような問題を回避するために本実施例では、用紙坪量が大きく剛度が高い用紙Pを両面で画像形成する手差し両面モードを有する。
手差し両面モードは、一度、一面目画像を出力したあとにユーザに用紙Pの表裏を逆にして給紙カセット112又は113にセットしてもらい、二面目画像を形成するモードである。
剛度の高い用紙Pは手差しトレー122にセットされる。手差しトレー122から給紙された用紙Pは一面目画像を転写して定着装置300で定着され、反転フラッパー118により搬送路を切り替えられ、一旦排紙トレー117に排出される。ユーザは排出された用紙Pの表裏を逆(この場合、一面目画像面を下)にして手差しトレー122にセットする。
このときユーザは用紙設定時に操作部102の表示部(選択部)102Bに表示させた前述の図11の用紙設定画面において両面二面目ボタン1100を押して用紙Pの二面目を出力することを制御部200に通知する。手差しトレー122にセットされた用紙Pは、二面目画像を転写して、定着装置沿う日300で定着され、反転フラッパー118により搬送路を切り替えられ、一旦排紙トレー224に排出される。このように手差し両面モードを行うことにより、剛度の高い用紙Pを用いた場合でも、用紙の屈曲が少なくなるため両面画像形成が可能になる。
次に本実施例1の構成における効果を図12の(a),(b)を用いて説明する。本実施例1の画像形成装置100において、GF−C300(キヤノン製:A3サイズ 坪量300g/m2紙)を一面目ブルー画像で30枚連続通紙した後に、手差し両面モードで二面目ブルー画像を30枚出力した。
比較例1として、二面目ブルー画像出力時に両面二面目ボタン1100を選択しないで本実施例1と同様に通紙した。
また、実施例1および比較例1の実験は、加圧ローラ3の傷が画像表面に顕在化されるかを確認するために、GF−C081(キヤノン製:A4サイズ 坪量81g/m2紙)を片面縦送りで5000枚通紙したあとに行った。
表1に、このときの結果を示す。実施例1で出力した画像は一面目、二面目ともに画像上の問題はなかった。比較例1で出力したブルー画像1枚目の一面目側に、加圧ローラ3の一周分の光沢段差とGF―C081の通過位置の用紙コバ傷が画像に顕在化していた。光沢段差および用紙コバ傷は、加圧ローラ3の熱量によりブルー画像一面目が再加熱されることにより、トナー表面が再溶融することで発生していることがわかった。
本実施例1と比較例1の二面目ブルー画像定着時のベルト11と加圧ローラ3の温度推移をそれぞれ図12の(a)と(b)に模式的に示す。
実施例1、比較例1共に加圧ローラ3どちらの場合も励磁コイル21により加熱されたベルト11の温度上昇とともに、ニップ部Nを形成している加圧ローラ3の表面温度も上昇していく。このとき、実施例1(図12の(a))のように両面二面目設定で通紙した場合は、均熱ローラ41と冷却ファンFa〜Fcによる冷却効果で、通紙開始時の加圧ローラ3の温度を低くすることが可能である。これにより加圧ローラ3による再加熱による光沢段差や加圧ローラ3表面傷の画像へ顕在化が防止することができる。
上記の実施例1の画像形成装置の特徴的な構成をまとめると次のとおりである。用紙を載置する載置部112、113、122を有する。載置部より搬送されてきた用紙Pにトナー像tを形成する画像形成部を有する。画像形成部により形成されたトナー像tを用紙Pに定着する加熱回転体11及び加圧回転体3を備えた定着部300を有する。
また、載置部に載置され且つ一方の面にトナー像が定着済みの用紙Pに対し、他方の面にトナー像を形成し定着するモードを実行する実行部(制御部)200を有する。実行部200により前記モードを実行するにあたり定着部300の立上げ処理を行うとき加圧回転体3を冷却する冷却部4、F(a〜c)を有する。ここで、定着部300の立上げ処理は、加熱回転体(定着ベルト)11の温度を目標温度に上昇させるためのウォームアップ処理である。
つまり、制御部200は選択部102Bにより手差し両面モードが選択された場合には次の制御を行う。即ち、ベルト11が用紙Pの他面側に形成された未定着のトナー像を定着する定着可能温度に到達するまでの立ち上げ中の、ニップ部Nに用紙が到達する前に、冷却手段による加圧ローラ3の冷却を開始するように制御する。
《実施例2》
本実施例2の画像形成装置は、実施例1の装置動作において、装置立ち上げ時に定着装置300が定着温度に到達した時点で、冷却ファンFa〜FcがONにされていればOFFし、余計な電力消費を抑えたものである。
本実施例2の制御フローチャートを図13示す。実施例2における図1のフロー図におけるステップと同じステップには共通の符号を付して再度の説明を省略する。
S1003において、制御部200は、ベルト11の検知温度が本実施例の温調温度180℃になるまで加熱回転し、温調温度に達した時点で、冷却ファンFa〜FcがONにされていればOFFする(S2000)。その後、用紙Pを給紙して定着動作を行う(S1004)。
次に、本実施例2における動作について説明する。表1の結果から比較例1で冷却ファンFa〜FcをOFFした状態においても、連続通紙二枚目以降は傷や光沢段差などの画像不良は発生していない。これは、図12の(b)のように通紙開始から通過する用紙Pにより、加圧ローラ3の表面から熱が奪われ、温度が低く保たれるためである。これにより加圧ローラ3による再加熱による光沢段差や加圧ローラ3表面傷の画像への顕在化発生しにくくなっている。
本実施例2では、加圧ローラ3の表面温度が上がりやすい立ち上げ時のみ冷却ファンFa〜FcをONし、用紙Pが通過して加圧ローラ3の表面温度が低下する通紙中は冷却ファンFa〜FcをOFFするように構成している。
このようにすることで、通紙中に余計にファンを吹くことによる消費電力UPを防ぐことができる。本実施例2の構成では定着装置300のニップ部Nに用紙Pが突入する直前に冷却ファンFa〜FcをOFFするように構成したが、用紙Pの一枚目が通過中もしくは通過した後に冷却ファンFa〜FcをOFFするように構成してもなんら問題ない。
上記の実施例2における特徴的な制御事項をまとめると次のとおりである。制御部200は選択部102Bにより手差し両面モードが選択された場合には立ち上げ中の、ニップ部Nに用紙が到達する前に、冷却手段による加圧ローラ3の冷却を開始するように制御する。制御部200は、冷却手段による加圧ローラ3の冷却を開始した後に、ニップ部Nの近傍に用紙が到達したところで、冷却手段による加圧ローラ3の冷却を停止する。
《実施例3》
本実施例3の画像形成装置は、実施例2の装置動作において、両面二面目指定された用紙Pのメディア情報により、立ち上げ時に冷却ファンFa〜FcをONするかどうかを判断し、余計な電力消費を抑えたものである。
本実施例3の制御フローチャートを図14示す。実施例2における図13のフロー図におけるステップと同じステップには共通の符号を付して再度の説明を省略する。
画像形成ジョブが開始されると、制御部200は、両面二面目指定されているかを判断する(S1000)。両面二面目指定されている場合は、操作部102から入力された情報から非コート紙かつ坪量が220g/m2以上(所定の閾値以上の坪量)であるかどうかを判断する(S3000)。S3000の条件に当てはまる場合、均熱ローラ41を加圧ローラ3に対して着させ、冷却ファンFa〜FcをONして均熱ローラ41を冷却する(S1001)。
つまり、手差し両面モードの実行において使用される用紙Pが所定の閾値以上の坪量の用紙であるときには前記冷却を行い、所定の閾値未満の坪量の記録材であるときには前記冷却を行なわない。
次に本実施例における動作について説明する。表2に比較例1の構成において各種用紙に対しての傷/光沢ムラの発生状況をまとめた表を示す。実験方法は実施例1で行ったものと同じで方法で用紙Pの種類のみ変更して行っている。傷/光沢ムラが発生したものは×を記載し、問題が無かったものに関しては○で表記してある。
実験結果から、両面一面目の傷/光沢ムラは非コート紙かつ坪量220g/m2以上の場合のみ発生することがわかった。以下、本実施例3の実験結果について説明する。
コート紙は用紙が密になっており、比較的熱伝導率が高いため、加圧ローラ3からの熱が用紙厚み方向に伝熱しやすい。この結果、加圧ローラ3の表面と接する一面目画像上のトナーは再加熱されるが、熱がコート紙表面もしくは厚み方向に拡散していくため、トナー温度が高くならず画像の再溶融を防止することができていると考えられる。
図15に、坪量が小さいとき(a)と、坪量が大きいとき(b)の熱の伝わり方を説明する説明図を示す。坪量が小さいときは図15の(a)のように二面目画像のトナーは、加圧ローラ3側の熱のみではなく、ベルト11側の熱が用紙Pを伝熱して二面目画像の裏側を加熱する。これにより、二面目画像のトナーが上下から十分加熱されるため、用紙の表面性に追従した画像になる。
図15の(b)のように坪量が大きい場合は、ベルト11側かの熱は二面目画像のトナーには伝わらず、加圧ローラ3側からの熱のみで加熱される。これにより、二面目画像表面のみが加熱されて溶融されることにより用紙表面形状にならうことなく、加圧ローラ3の表面形状の凹凸を転写してしまう。この結果、坪量の比較的大きい用紙Pのほうが、加圧ローラ3の表面性を転写しやすく、高光沢になり光沢段差や傷が目立ちやすくなる。
また、表1、図12の(a),(b)の結果から、立ち上げ時に冷却ファンFa〜FcをONする場合、ベルト11の温度上昇も遅くなるため、実施例1の構成では立ち上げ時間が遅くなってしまう。
本実施例3の構成では、両面二面目の限られた用紙種類の場合のみ立ち上げ時に冷却ファンFa〜FcをONする構成としたので、必要以上に立ち上げ時間が遅くなるようなことはない。
以上説明したように、本実施例3の構成では、冷却ファンFa〜FcをOFFにしていても傷/光沢ムラが発生しない用紙Pは、冷却ファンFa〜FcをOFFするように構成している。このようにすることで、通紙中に余計にファンを吹くことによる消費電力UPを防ぎ、必要以上に立ち上げ時間が遅くなることを防止できる。
上記の実施例3における特徴的な制御事項をまとめると次のとおりである。制御部200は用紙の種類を判別する用紙情報処理部206を有する。制御部200は用紙情報処理部206で判別された用紙の種類に応じて、選択部102Bにより手差し両面モードが選択された場合においても冷却手段による加圧ローラ3の冷却を行わない。
《実施例4》
本実施例4の画像形成装置は、実施例3の動作フローにおいて、制御部200が定着動作中に所定時間用紙Pがニップ部Nに来ないと判断した場合、加熱回転動作を停止して再立ち上げ動作を行うようにした構成である。
これにより、画像形成部の画像調整処理や画像データ展開に時間がかかってしまった場合などで、通紙間隔が開いてしまった場合に加圧ローラ3の表面温度が高くなり傷や光沢ムラが発生することを防止するものである。
本実施例4の制御フローチャートを図16示す。実施例3における図14のフロー図におけるステップと同じステップには共通の符号を付して再度の説明を省略する。
S1004において、制御部200は、定着動作中に所定時間の中断処理が入るかどうかを判断する(S4000)。本実施例の場合、20秒以上中断処理が入る場合、ベルト11の摺擦部の耐久性や不必要なエネルギー消費を抑えるため、中断時間から立ち上げに要する時間15秒を差し引いた秒数だけ定着装置300の加熱回転動作を停止する(S4001)。
中断処理としては、たとえば中間調などの濃度を調整するための画像調整処理などがあげられる。再立ち上げの際には、制御部200は、両面二面目指定されているかを判断し(S1000)、S3000の条件に当てはまる場合、均熱ローラ41を加圧ローラ3に対して着させ、冷却ファンFa〜FcをONして均熱ローラ9を冷却する(S1001)。
本実施例4の効果を確認するため、CLC5000用 最厚口用紙(キヤノン製:A3サイズ 坪量250g/m2紙)の全面ブルー画像を自動両面モードで100枚連続通紙した。表3にこのときの結果を示す。
比較のため、実施例4の構成において両面二面目画像の判断により冷却ファンFa〜Fcの動作を行わない構成として(図16のS1000、S1001、S3000の処理を行わない)比較例2の結果も合わせて示す。
自動両面モードでは、給紙カセット112又は113若しくは手差しトレー122から給紙された用紙が定着装置300に到達する一枚目になる。よって、比較例2の構成においても加圧ローラ3の表面温度が高い立ち上げ直後には一面目画像が定着されるので、加圧ローラ3の傷や光沢段差が発生することはない。
実施例4及び比較例2の効果確認を行った際、A3 49枚に一度の頻度で入る画像調整処理(中断時間30秒)のときに、加熱回転が停止され再立ち上げ動作が行われた。再立ち上げ動作後にニップ部Nに突入する用紙が二面目画像であったので、比較例2の構成では中断処理後出力1枚目の画像の一面目にて傷/光沢段差などの光沢ムラが発生した。実施例4の構成においては、再立ち上げ処理後には冷却ファンFa〜Fcによる冷却動作が行われるため、比較例2のような光沢ムラは発生しなかった。
以上説明したように、本実施例4の構成では、定着装置300を再立ち上げするような中断処理が行われた場合においても、傷/光沢段差の発生を防止することができる。
上記の実施例4における特徴的な制御事項をまとめると次のとおりである。制御部200は、定着動作中に所定時間、用紙Pがニップ部Nに来ないと判断した場合、ベルト11の加熱回転動作を所定時間停止してから再立ち上げ動作を行うように制御する。そして、再立ち上げ動作中においても、選択部102Bにより手差し両面モードが選択された場合には次の制御を行う。即ち、ベルト11が用紙Pの他面側に形成された未定着のトナー像を定着する定着可能温度に到達するまでの立ち上げ中の、ニップ部Nに用紙Pが到達する前に、冷却手段による加圧ローラ3の冷却を開始するように制御する。
以上述べた実施の形態によって、加圧ローラ3の放熱による光沢段差や、表面傷の転写等の光沢ムラが発生を防止できる画像形成装置を提供する。また、必要以上に冷却動作を行うことによる余計な消費電力を低減することができる画像形成装置を提供する。
なお、実施の形態で述べた以外の形態においても、光沢ムラを防止する手段が考えられる。例えば本実施例では冷却手段として均熱ローラ41と冷却ファンを併用したが、冷却ファンのみの構成で行う、または水冷ローラを当接する、などが考えられる。
[その他の事項]
1)第1の回転体であるベルト11は複数の張架部材間に懸回張設して循環移動させる可撓性を有するエンドレスベルト部材にすることも出来る。また、回転体であるベルト11をローラ体にすることも出来る。
2)第2の回転体である加圧ローラ3をエンドレスベルト体にした構成にすることも出来る。
3)定着処理(ニップ部を形成する)を行う一対の回転体11と3は共に加熱される回転体とすることも出来る。
4)回転体11、または回転体11と回転体3を加熱する加熱機構としては、上述した電磁誘導加熱機構に限られない。ハロゲンヒータ、赤外線ランプ、セラミックヒータなど他の加熱機構を使用する構成とすることも出来る。
5)本発明に係る定着装置300として、次のような形態としても使用することができる。具体的には、記録材に定着された画像を再加熱することにより画像の光沢度を向上させる光沢付与装置(この場合も定着装置と呼ぶ)としても有効に使用することが出来る。