〔第1実施形態〕
以下に、本開示に係る燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、燃料識別システムが発電プラント1の固体燃料粉砕装置100に適用される場合について説明する。
本実施形態に係る発電プラント1は、固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを備えている。
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、一例として石炭やバイオマス燃料等の固体燃料(炭素含有固体燃料)を粉砕し、微粉燃料を生成してボイラ200のバーナ部(燃焼装置)220へ供給する装置である。図1に示す固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを含む発電プラント1は、1台の固体燃料粉砕装置100を備えるものであるが、1台のボイラ200の複数のバーナ部220のそれぞれに対応する複数台の固体燃料粉砕装置100を備えるシステムとしてもよい。
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、ミル(粉砕部)10と、給炭機(燃料供給機)20と、送風部(搬送用ガス供給部)30と、状態検出部(状態検出装置)40と、制御部(制御装置)60とを備えている。
なお、本実施形態では、上方とは鉛直上側の方向を、上部や上面などの“上”とは鉛直上側の部分を示している。また同様に“下”とは鉛直下側の部分を示している。
ボイラ200に供給する石炭やバイオマス燃料等の固体燃料を微粉状の固体燃料である微粉燃料へと粉砕するミル10は、石炭のみを粉砕する形式であっても良いし、バイオマス燃料のみを粉砕する形式であっても良いし、石炭とともにバイオマス燃料を粉砕する形式であってもよく、固体燃料の種類は限定されない。ここで、バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。バイオマス燃料は、バイオマスの成育過程において二酸化炭素を取り込むことから、地球温暖化ガスとなる二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルとされるため、その利用が種々検討されている。
ミル10は、ハウジング11と、回転テーブル(テーブル)12と、ローラ(粉砕ローラ)13と、駆動部14と、回転式分級機(分級機)16と、燃料供給部17と、回転式分級機16を回転駆動させるモータ18とを備えている。
ハウジング11は、鉛直方向に延びる筒状に形成されるとともに、回転テーブル12とローラ13と回転式分級機16と、燃料供給部17とを収容する筐体である。ハウジング11の天井部42の中央部には、燃料供給部17が取り付けられている。この燃料供給部17は、バンカ21から導かれた固体燃料をハウジング11内に供給するものであり、ハウジング11の中心位置に上下方向に沿って配置され、下端部がハウジング11内部まで延設されている。
ハウジング11の底面部41付近には駆動部14が設置され、この駆動部14から伝達される駆動力により回転する回転テーブル12が回転自在に配置されている。
回転テーブル12は、平面視円形の部材であり、燃料供給部17の下端部が対向するように配置されている。回転テーブル12の上面は、例えば、中心部が低く、外側に向けて高くなるような傾斜形状をなし、外周部が上方に曲折した形状をなしていてもよい。燃料供給部17は、固体燃料(本実施形態では例えば石炭やバイオマス燃料)を上方から下方の回転テーブル12に向けて供給する。回転テーブル12は燃料供給部17から供給された固体燃料をローラ13との間で粉砕するもので、粉砕テーブルとも呼ばれる。
固体燃料が燃料供給部17から回転テーブル12の中央へ向けて投入されると、回転テーブル12の回転による遠心力によって固体燃料は回転テーブル12の外周側へと導かれ、ローラ13との間に挟み込まれて粉砕される。粉砕された固体燃料は、搬送用ガス流路(以降は、一次空気流路と記載する)100aから導かれた搬送用ガス(以降は、一次空気と記載する)によって上方へと吹き上げられ、回転式分級機16へと導かれる。すなわち、回転テーブル12の外周には、一次空気流路100aから流入する一次空気をハウジング11内の回転テーブル12の上方の空間に流出させる吹出口(図示省略)が設けられている。吹出口にはベーン(図示省略)が設置されており、吹出口から吹き出した一次空気に旋回力を与える。ベーンにより旋回力が与えられた一次空気は、旋回する速度成分を有する気流となって、回転テーブル12上で粉砕された固体燃料をハウジング11内の上方の回転式分級機16へと導く。なお、一次空気に混合した固体燃料の粉砕物のうち、所定粒径より大きいものは回転式分級機16により分級されて、または、回転式分級機16まで到達することなく、落下して回転テーブル12に戻されて、再びローラ13との間で粉砕される。
ローラ13は、燃料供給部17から回転テーブル12に供給された固体燃料を粉砕する回転体である。ローラ13は、回転テーブル12の上面に押圧されて回転テーブル12と協働して固体燃料を粉砕する。図1では、ローラ13が代表して1つのみ示されているが、回転テーブル12の上面を押圧するように、周方向に一定の間隔を空けて、複数のローラ13が対向して配置される。例えば、外周部上に120°の角度間隔を空けて、3つのローラ13が周方向に均等な間隔で配置される。この場合、3つのローラ13が回転テーブル12の上面と接する部分(押圧する部分)は、回転テーブル12の回転中心軸からの距離が等距離となる。
ローラ13は、ジャーナルヘッド45によって、上下に揺動可能となっており、回転テーブル12の上面に対して接近離間自在に支持されている。ローラ13は、外周面が回転テーブル12の上面に接触した状態で、回転テーブル12が回転すると、回転テーブル12から回転力を受けて連れ回りするようになっている。燃料供給部17から固体燃料が供給されると、ローラ13と回転テーブル12との間で固体燃料が押圧されて粉砕されて、微粉燃料となる。
ジャーナルヘッド45の支持アーム47は、中間部が水平方向に沿った支持軸48によって、ハウジング11の側面部に支持軸48を中心としてローラ上下方向に揺動可能に支持されている。また、支持アーム47の鉛直上側にある上端部には、押圧装置49が設けられている。押圧装置49は、ハウジング11に固定され、ローラ13を回転テーブル12に押し付けるように、支持アーム47等を介してローラ13に荷重(粉砕荷重)を付与する。
駆動部14は、回転テーブル12に駆動力を伝達し、回転テーブル12を中心軸(回転軸)回りに回転させる装置である。駆動部14は、回転テーブル12を回転させる駆動力を発生する。
回転式分級機16は、ハウジング11の上部に設けられ中空状の略逆円錐形状の外形を有している。回転式分級機16は、その外周位置に上下方向に延在する複数のブレード16aを備えている。各ブレード16aは、回転式分級機16の中心軸線周りに所定の間隔(均等間隔)で設けられている。また、回転式分級機16は、回転数(分級機回転数)により、ローラ13により粉砕された固体燃料を所定粒径(例えば、石炭では70〜100μm)より大きいもの(以下、所定粒径を超える粉砕された固体燃料を「粗粉燃料」という。)と所定粒径以下のもの(以下、所定粒径以下の粉砕された固体燃料を「微粉燃料」という。)に分級する装置である。回転により分級する回転式分級機16は、ロータリセパレータとも呼ばれ、制御部60によって制御されるモータ18により回転駆動力を与えられ、ハウジング11の上下方向に延在する円筒軸(図示省略)を中心に燃料供給部17の周りを回転する。
回転式分級機16に到達した粉砕された固体燃料において、ブレード16aの回転により生じる遠心力と、一次空気の気流による向心力との相対的なバランスにより、大きな径の粗粉燃料は、ブレード16aによって叩き落とされ、回転テーブル12へと戻されて再び粉砕され、微粉燃料はハウジング11の天井部42にある出口19に導かれる。
回転式分級機16によって分級された微粉燃料は、出口19から供給流路100bへ排出され、一次空気とともに後工程へと搬送される。供給流路100bへ流出した微粉燃料は、ボイラ200のバーナ部220へ供給される。
燃料供給部17は、ハウジング11の上端を貫通するように上下方向に沿って下端部がハウジング11内部まで延設されて取り付けられ、燃料供給部17の上部から投入される固体燃料を回転テーブル12の略中央領域に供給する。燃料供給部17は、給炭機20から固体燃料が供給される。
給炭機20は、搬送部22と、モータ23とを備える。搬送部22は、モータ23から与えられる駆動力によってバンカ21の直下にあるダウンスパウト部24の下端部から排出される固体燃料を搬送し、ミル10の燃料供給部17に導かれる。
通常、ミル10の内部には、粉砕した固体燃料である微粉燃料を搬送するための一次空気が制御された風量(一次空気風量)で供給されて、圧力が高くなっている。バンカ21の直下にある上下方向に延在する管であるダウンスパウト部24には内部に燃料が積層状態で保持されていて、ダウンスパウト部24内に積層された固体燃料層により、ミル10側の一次空気と微粉燃料が逆流入しないようなシール性を確保している。
ミル10へ供給する固体燃料の供給量は、搬送部22のベルトコンベアのベルト速度で調整されてもよい。
一方、粉砕前のバイオマス燃料のチップやペレットは、石炭燃料(すなわち粉砕前の石炭の粒径は、例えば、粒径が2〜50mm程度)に比べて、粒径が一定であり(ペレットのサイズは、例えば、直径6〜8mm程度、長さは40mm以下程度)、かつ、軽量である。このため、バイオマス燃料がダウンスパウト部24内に貯留されている場合は、石炭燃料の場合に比べて、各バイオマス燃料間に形成される隙間が大きくなる。
したがって、ダウンスパウト部24内のバイオマス燃料のチップやペレットの間には隙間があることから、ミル10内部から吹き上げる一次空気と微粉燃料が各バイオマス燃料間に形成される隙間を通過して、ミル10内部の圧力が低下する可能性がある。また、一次空気がバンカ21の貯留部へと吹き抜けると、バイオマス燃料の搬送性の悪化や粉塵発生、バンカ21及びダウンスパウト部24の着火や、また、ミル10内部の圧力が低下すると、微粉燃料の搬送量が低下するなど、ミル10の運転に種々の問題が生じる可能性がある。このため、給炭機20から燃料供給部17の途中にロータリバルブ53(図1では省略)を設けて、一次空気と微粉燃料の吹き上げによる逆流を抑制するようにしてもよい。
送風部30は、ローラ13により粉砕された固体燃料を乾燥させるとともに回転式分級機16へ供給するための一次空気をハウジング11の内部へ送風する装置である。
送風部30は、ハウジング11へ送風される一次空気を適切な温度に調整するために、本実施形態では、一次空気通風機(PAF:Primary Air Fan)31と、熱ガス流路30aと、冷ガス流路30bと、熱ガスダンパ30cと、冷ガスダンパ30dとを備えている。
本実施形態では、熱ガス流路30aは、一次空気通風機31から送出された空気(外気)の一部を、例えば空気予熱器などの熱交換器(加熱器)34を通過して加熱せられた熱ガスとして供給する。熱ガス流路30aの下流側には熱ガスダンパ30c(第1送風部)が設けられている。熱ガスダンパ30cの開度は制御部60によって制御される。熱ガスダンパ30cの開度によって熱ガス流路30aから供給する熱ガスの流量が決定する。
冷ガス流路30bは、一次空気通風機31から送出された空気の一部を常温の冷ガスとして供給する。冷ガス流路30bの下流側には冷ガスダンパ(第2送風部)30dが設けられている。冷ガスダンパ30dの開度は制御部60によって制御される。冷ガスダンパ30dの開度によって冷ガス流路30bから供給する冷ガスの流量が決定する。
一次空気の流量は、本実施形態では、熱ガス流路30aから供給する熱ガスの流量と冷ガス流路30bから供給する冷ガスの流量の合計の流量となり、一次空気の温度は、熱ガス流路30aから供給する熱ガスと冷ガス流路30bから供給する冷ガスの混合比率で決まり、制御部60によって制御される。
また、熱ガス流路30aから供給する熱ガスに、図示しないガス再循環通風機を介してボイラ200から排出された燃焼ガスの一部を導き、混合気とすることで、一次空気流路100aから流入する一次空気の酸素濃度を調整してもよい。
本実施形態では、ハウジング11の状態検出部40により、計測または検出したデータを制御部60に送信する。本実施形態の状態検出部40は、例えば、差圧計測手段であり、一次空気流路100aからミル10内部へ一次空気が流入する部分及びミル10内部から供給流路100bへ一次空気及び微粉燃料が排出する出口19との差圧をミル10内の差圧として計測する。例えば、回転式分級機16の分級性能により、ミル10内部を回転式分級機16付近と回転テーブル12付近の間で循環する粉砕された固体燃料の循環量の増減とこれに対するミル10内の差圧の上昇低減が変化する。すなわち、ミル10の内部に供給する固体燃料に対して、出口19から排出させる微粉燃料を調整して管理することができるので、微粉燃料の粒度がバーナ部220の燃焼性に影響しない範囲で、多くの微粉燃料をボイラ200に設けられたバーナ部220に供給することができる。
また、本実施形態の状態検出部40は、例えば、温度計測手段であり、ローラ13により粉砕された固体燃料を回転式分級機16へ吹き上げるためにハウジング11の内部に供給する一次空気の温度と、ハウジング11の内部において出口19までの一次空気の温度を検出して、上限温度を超えないように送風部30を制御する。なお、一次空気は、ハウジング11内において、粉砕物を乾燥しながら搬送することによって冷却されるので、ハウジング11の上部空間から出口19での温度(ミル出口温度)は、例えば約60〜80度程度となる。
ボイラ200は、固体燃料粉砕装置100から供給される微粉燃料を用いて燃焼を行って蒸気を発生させる。このため、ボイラ200は、火炉210とバーナ部220とを備えている。
バーナ部220は、供給流路100bから供給される微粉燃料を含む一次空気と、押込気通風機(FDF:Feed Draft Fan)32から送出される空気(外気)を熱交換器34で加熱して供給される二次空気とを用いて微粉燃料を燃焼させて火炎を形成する装置である。微粉燃料の燃焼は火炉210内で行われ、高温の燃焼ガスは、蒸発器,過熱器,エコノマイザなどの熱交換器(図示省略)を通過した後にボイラ200の外部に排出される。
ボイラ200から排出された燃焼ガスは、環境装置(脱硝装置、電気集塵機などで図示省略)で所定の処理を行うとともに、例えば空気予熱器などの熱交換器34で一次空気通風機31から送出される空気と押込気通風機32から送出される空気との熱交換が行われ、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)33を介して煙突(図示省略)へと導かれて外気へと放出される。熱交換器34において燃焼ガスにより加熱された一次空気通風機31から送出される空気は、前述した熱ガス流路30aに供給される。
ボイラ200の各熱交換器への給水は、エコノマイザ(図示省略)において加熱された後に、蒸発器(図示省略)および過熱器(図示省略)によって更に加熱されて高温高圧の蒸気が生成され、発電部である蒸気タービン(図示省略)へと送られて蒸気タービンを回転駆動し、蒸気タービンに接続した発電機(図示省略)を回転駆動して発電が行われ、発電プラント1を構成する。
図2は、ミル10への燃料供給に係る詳細な構成例を示した図である。図2では、タグ体Tの検出及び回収系統を示している。なお、図2では、ミル10に接続されたバンカ21には、固体燃料として、例えば図2でバンカ21は3基が並列配置されたものを示しており、3基のうち紙面中央に配置したバンカ21には、例えば石炭が蓄積され、その上にバイオマス燃料が蓄積されているものとする。
タグ体Tは、ミル10に供給される固体燃料の状態(例えば固体燃料の種類や種類切替の位置)を表すために、固体燃料に混入される。タグ体Tは、例えば図3のようにケース(カプセル)61の中に発信器62が搭載されている。また、ケース61の中には、例えば温度センサや圧力センサなどの各種センサ(例えば温度センサ)63が搭載されていてもよい。ケース61は電磁波が透過する材料(例えば、電磁波が透過する粗い目の網や電磁波透過性(例えば炭素系材料など)を有する材料で構成されたカプセル)によって構成されている。ケース61の中は、例えば内容物(発信器62や各種センサ63など)を衝撃から保護するために緩衝材等を充填することとしてもよい。また、ケース61は目視等により区別を容易にする等の目的で、着色等により任意の色に彩色されていても良い。なお、図3では、タグ体Tとして、ケース61に発信器62が入っている構成としているが、発信器62と外周材料(ケース61)が一体的に構成されることとしてもよく、図3の構成に限定されない。
発信器62は、例えば非接触式のRFID(Radio Frequency Identification)のタグ(IDタグ)であり、後述する検出部51に対して無線信号を発信する。具体的には、例えば発信器62は、検出部51からの電磁波をアンテナで受けてタグの動作電力を得て、検出部51へ情報信号の送信(返答)を行う。また動作電力はタグ体T内に小型のバッテリを内蔵して直接動作電力を供給しても良い。発信器62は、例えば予め識別情報が設定されており、該識別情報を返答として送信する。本実施形態では、識別情報は、タグ体Tが混入される固体燃料ごとに設定されている。すなわち、例えば、石炭に混入されるタグ体Tには、石炭を示す識別情報が設定されており、バイオマス燃料に混入されるタグ体Tには、バイオマス燃料を示す識別情報が設定されている。石炭を示す識別情報にはさらに炭種を示す情報が設定されてもよい。バイオマス燃料を示す識別情報にはさらにバイオマス燃料の種類を示す情報が設定されてもよい。なお、タグ体Tには、固体燃料の種類を示す情報でなくても、固体燃料の組成情報、発熱量、原産地や輸送ルートなど固有の識別情報を設定することが可能である。
また、本実施形態では、タグ体Tは例えば温度センサ63を有している。このため、タグ体Tは、該温度センサ63で検出した温度を温度情報として発信する。なお、タグ体Tには、他の種類のセンサ(圧力等)を搭載して、検出した情報を送信することとしてもよい。このようにタグ体Tは、識別情報と温度情報とを含んで無線信号を送信し、後述する検出部51で検出する。
タグ体Tは、図3のようにケース61で覆われているが、本実施形態ではタグ体Tのサイズ(大きさ)Sは、固体燃料のサイズに基づいて設定されている。図3のようにタグ体Tが球形の場合には、サイズSは直径となる。具体的には、タグ体TのサイズSは、給炭機20やロータリバルブ53などの燃料供給系統が搬送可能な大きさを上限もしくは下限とし、固体燃料の粒径分布とサイズ差を有しており、メッシュや金網の目開きサイズによる分別などにより固体燃料と分別可能なように設定される。例えば、固体燃料の粒径分布の平均値もしくは中央値をM、標準偏差をσとした場合に、タグ体TのサイズSはM+3σ以上の大きさ(例として固体燃料の粒径が正規分布であった場合、全体の99.87%の固体燃料より大きいサイズ)と設定される。なお、タグ体TのサイズSは、混入された固体燃料の少なくとも一部と分別可能な大きさが設定されていれば、燃料供給系統が搬送可能な大きさを上限もしくは下限として、固体燃料の平均値もしくは中央値と比較して大きくしてもよいし小さくしてもよい。なお、タグ体Tは球形以外の形状としてもよい。タグ体Tが球形以外の形状の場合、タグ体TのサイズSはタグ体Tの最長または最短寸法を用いる。なお、タグ体TのサイズSが固体燃料のサイズの平均値もしくは中央値と比較して大きい場合は最短寸法を、タグ体TのサイズSが固体燃料のサイズの平均値もしくは中央値と比較して小さい場合は最長寸法を用いることが好ましい。本実施形態では、タグ体TのサイズSは、固体燃料と比較して大きく設定した場合について説明する。
そして、タグ体Tは、混入される固体燃料の流動特性に基づいて、比重及び安息角の少なくともいずれか1方が設定されている。具体的には、タグ体Tは固体燃料と比重(かさ比重)及び安息角が同程度となるように設定される。このように、比重と安息角を固体燃料と同程度(所定範囲内で等しいとみなせる)とすることによって、タグ体Tが、搬送される際に混入された固体燃料と同様の挙動を示す。すなわち、固体燃料の搬送工程で、固体燃料と同様にタグ体Tも搬送されることで、固体燃料に混入されたタグ体Tが局所的に集中するなどの偏在を抑制することができる。このため、タグ体Tは、混入される固体燃料と分離しないように、混入される固体燃料の流動特性に基づいて比重と安息角が設定される。例えば、タグ体Tの固体燃料の比重と安息角は、固体燃料の比重と安息角の分布特性の平均値(例えば平均値±5%以内)もしくは、中央値Mや標準偏差σに基づいて(例えばM±標準偏差σ以内)設定される。
タグ体Tは、燃料供給元からミル10までの運搬経路において、固体燃料に混入される。図4は、燃料供給元からミル10までの運搬経路を示す図である。石炭は、燃料供給元である石炭採掘所L1から船により積地港L2から受入港L3へ運ばれ、発電プラント1の燃料受入口L5へ運ばれる。バイオマス燃料は、燃料供給元であるペレット工場L4から発電プラント1の燃料受入口L5へ運ばれる。そして、固体燃料は、貯炭場L6やサイロL7に一旦貯蔵され、共用コンベア54及び振分コンベア55を介して、バンカ21へ運ばれる。タグ体Tについては、図4における燃料供給元(L1やL4)からバンカ21までの運搬経路(燃料供給元(石炭採掘所L1やペレット工場L4)やバンカ21へ運搬した後でも良い)において混入される。なお、タグ体Tの混入位置については限定されない。固体燃料に対して均一に分布するようにタグ体Tが混入されることが好ましい。また、図4のような運搬経路において、各経路位置にタグ体Tから情報を取得可能な受信機Rを設け、運搬中でもタグ体Tから情報を読み取ることが可能としてもよい。また、各受信機(検出部51や受信部71を含む)Rは、互いにインターネット等によって接続され、情報集約等が行われてもよい。受信機Rにより、各搬送経路にある固体燃料の情報を読み取ることが出来るので、運搬状況を的確に判断して、固体燃料の受入れ準備をすることが出来る。
タグ体Tの情報検出や回収を行うために、図2のように、検出部51と、回収部52とが設けられている。すなわち、検出部51と回収部52とにより燃料識別システム(燃料供給状態検出システム)が構成されている。燃料識別システムは、固体燃料粉砕装置100においてミル10へ供給される複数種類の固体燃料の供給状態を検出するシステムである。
検出部51は、固体燃料がミル10へ供給される前において、固体燃料に混入されており固体燃料と分別可能なタグ体Tに予め設定された識別情報を検出する。具体的には、検出部51は、ミル10への固体燃料の供給系統において、燃料供給部17におけるロータリバルブ53の下流側(ミル10の上流側)に設けられている。そして、検出部51は、固体燃料と共に通過するタグ体Tより識別情報を取得する。具体的には、検出部51は、所定の制御周期で電磁波を発信しており、タグ体Tで該電磁波により発信された信号を受信している。このようにして、ミル10へ固体燃料が供給される前に、混入されたタグ体Tの識別情報により、固体燃料の種類を把握することが可能となる。なお、検出部51において、識別情報と併せて各種センサの情報(温度情報や圧力情報など)を検出することとしてもよい。
例えば、検出部51において、石炭を示す識別情報を検出した場合には、燃料供給系統における検出部51の位置で、ミル10へ固体燃料として石炭が供給されることを事前に認識することができる。また、検出部51において、石炭を示す識別情報を検出していた状態から、バイオマス燃料を示す識別情報を検出した場合には、燃料供給系統における検出部51の位置で、固体燃料としてバイオマス燃料が通過しており、所定時間後にはミル10へバイオマス燃料が供給されることを的確に認識することができ、ミル10はバイオマス燃料への運転条件へと変更して、粉砕された微粉燃料の仕様を確保することが出来る。
また、検出部51では、混入された複数のタグ体Tから識別情報を取得するため、検出される情報の強度(タグ体Tのカウント数で、タグ体Tの密度と相関性がある)の情報を利用して、各固体燃料の混合状態を把握することもできる。すなわち、各固体燃料の識別情報の検出量(割合)に応じて、燃料の供給状態(混合状態)を把握することができる。なお、識別情報の検出量とは、検出部51において単位時間当たりに通過する(検出される)タグ体Tの数(検出数)である。このように、検出部51では、タグ体Tを検出することで、検出パターン(例えば、ミル10へ供給される固体燃料の種類が石炭からバイオマス燃料へ完全に切替る場合や、一時的に石炭にバイオマス燃料が混合した場合等)を得ることができる。また、事前に検出パターンを得ておくことで、タグ体Tの検出によってミル10への固体燃料の供給状態を事前に把握することが可能となり、ミル10は固体燃料への運転条件へと変更して、粉砕された微粉燃料の仕様を確保することが出来る。
なお、検出部51の設置位置については、ミル10へ供給される固体燃料に混入されたタグ体Tから情報を検出することができれば、例えばロータリバルブ53の上流側など、図2のようなロータリバルブ53の下流側に限定されない。
回収部52は、固体燃料からタグ体Tを回収する。具体的には、回収部52は、ミル10への固体燃料の供給路(燃料供給系統)に設けられている。図2では、回収部52は、燃料供給部17における検出部51の下流側に設ける例を示している。
回収部52は、タグ体TのサイズSにより、固体燃料からタグ体Tを回収する。このために、回収部52は、大きさによって選択的に物体を通過させることが可能な部材(例えばメッシュ、金網やパンチングメタルなどの目開き(通過サイズ)で分別する網状部材)により構成されている。すなわち、回収部52では、タグ体Tは通過させず、固体燃料は通過させて燃料供給系統の下流側に流す。このため、網状部材の目の大きさは、タグ体TのサイズSよりも小さく且つ固体燃料の標準とするサイズよりも大きく設定されている。回収部52を通過できなかったタグ体Tは、固体燃料と分別されて、燃料供給系統から取り除かれるとともに、タグ体Tのミル10内への入り込みを抑制する。このとき標準サイズより大きな固体燃料がタグ体Tと一緒に分別されるが、標準サイズより大きな固体燃料の数量は少ないため、別途に形状認識センサなど別の手法により容易に分別が可能である。このようにして、固体燃料とタグ体Tとが分別されて回収される。
回収されたタグ体Tは、その後に再利用することとしてもよい。なお、再利用する際には、タグ体Tの動作状態やケース61の状態が正常か否かを確認し、正常でないタグ体Tは除去することが好ましい。
なお、上記ではタグ体TのサイズSによりタグ体Tを固体燃料から分別して回収する場合について説明したが、回収方法については、上述の方法に限定されない。例えば、タグ体Tは、磁性体や常磁性体を含んでいてもよい。すなわち、タグ体Tでは、ケース61の表面の一部や内部において磁性体もしくは常磁性体(マグネット又は鉄片等)を設けて、回収部52は、磁力を利用して固体燃料からタグ体Tを分別して回収することとしてもよい。具体的には、回収部52においても磁性体(マグネット)を設けておき、固体燃料に混入されたタグ体Tを磁力によって吸引して固体燃料から分離させる。また固体燃料中のタグ体Tを画像認識により色、形状等で識別して分別しても良いし、複数の受信機Rを設けてタグ体Tから発せられる電磁波の差からタグ体Tの位置を推定して分別しても良い。
このように、分別の方法については様々な方法を適用することが可能であり、複数の方法を組み合わせて設置してもよい。
制御部60は、固体燃料粉砕装置100の各部を制御する装置である。制御部60は、例えば、駆動部14に駆動指示を伝達することによりミル10の運転に対する回転テーブル12の回転速度を制御してもよい。制御部60は、例えば回転式分級機16のモータ18へ駆動指示を伝達して回転速度を制御することで、分級性能を調整することにより、ミル10内の差圧を所定の範囲に適正化して微粉燃料の供給を安定化させることができる。また、制御部60は、例えば給炭機20のモータ23へ駆動指示を伝達することにより、搬送部22が固体燃料を搬送して燃料供給部17へ供給する固体燃料の供給量を調整することができる。また、制御部60は、開度指示を送風部30に伝達することにより、熱ガスダンパ30cおよび冷ガスダンパ30dの開度を制御して一次空気の流量と温度を制御することができる。また、制御部60は、粉砕荷重指示を押圧装置49に伝達することにより、例えば、固体燃料の供給量や回転式分級機16の回転数に応じて、ローラ13が回転テーブル12に押圧される力(粉砕荷重)を適正化し、安定した固体燃料の粉砕を可能とする。
本実施形態における制御部60は、検出部51で検出したタグ体Tの識別情報に基づいてミル10の運転状態を制御する。すなわち、制御部60は、ミル10へ固体燃料が供給される前に検出部51によって検出した、ミル10へ供給される固体燃料に混入されたタグ体Tの識別情報を用いて、ミル10に供給される固体燃料の種類などを的確に事前に把握してミル10を制御する。このため、ミル10において、固体燃料の性状の変更時点に合わせてミル10の運転条件の設定値を遅延なく変化させて制御を行うことが可能となる(先行制御)。例えば、運転中のミル10の監視情報(ミル出口温度、ミル内の差圧、回転テーブル駆動電流など)から、ミル10の運転状態が変化したことで燃料が切り替わったと運転員などが判断し、ミル運転条件の設定値を変化させる場合では、ミル10の制御遅れが発生していたが、供給前の固体燃料の状態(炭種)を検出することができるため、実際に燃料の種類が切り替わる時点を自動的に把握して遅延なくより確実にミル運転条件を適正化する対応が可能となる。すなわち、制御部60では、タグ体Tから検出した識別情報の検出パターンに基づいて、ミル10に供給される燃料の種類や複数種類の燃料の混合状態を自動で判断して、それぞれの燃料の性状に適したミル10の運転状態とする制御を行う。なお、本実施形態では、タグ体Tに固体燃料の種類ごとに異なる識別情報が設定される場合を説明するが、供給される固体燃料の種類を把握することができればよいため、例えば石炭とバイオマス燃料の両方に対して各々異なる情報を持ったタグ体Tを混合しても良いし、石炭のみ、又は、バイオマス燃料のみ(特定の固体燃料のみ)にタグ体Tを混合することとしても良い。
図5は、本実施形態に係る制御部60のハードウェア構成の一例を示した図である。
図5に示すように、制御部60は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU110と、CPU110が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)120と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)130と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)140と、ネットワーク等に接続するための通信部150とを備えている。これら各部は、バス180を介して接続されている。
また、制御部60は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。
なお、CPU110が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM120に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でHDD140等に記録されており、このプログラムをCPU110がRAM130等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROM120やその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。また、HDD140はソリッドステートディスク(SSD)等で置き換えられてもよい。
具体的には、制御部60は、検出するタグ体Tの識別情報に基づいて、固体燃料の種類などの識別情報を判断して、回転式分級機16の回転数(分級機回転数)、粉砕された固体燃料の搬送ガスの風量(一次空気風量)、ミル10の出口側における搬送ガスの温度(ミル出口温度)、及び固体燃料を粉砕するミル10の粉砕荷重の少なくともいずれか1つに対して、運転制御目標値を満足するようにミル10の運転状態を制御する。なお、運転制御目標値とは、各制御対象の制御目標値であり、固体燃料の性状ごとにそれぞれ予め設定されている。例えば、石炭とバイオマス燃料とでは、粉砕特性が異なることから、それぞれの燃料に対応して固体燃料粉砕装置100を制御する必要がある。具体的には、石炭と比較して、バイオマス燃料は粉砕性が低い(粉砕し難い)ため、石炭と比較して約5から10倍程度大きい粒径となる場合がある。一方でバイオマス燃料は石炭と比較して燃焼性が良く、石炭と比べて粒径の大きい粉砕燃料でもバーナ部で220で燃焼できる。このため、バイオマス燃料は、石炭と比較して粗粒のままミル10から排出することで、ミル10内での粉砕された燃料の滞留による過負荷を防止することができる。また、バイオマス燃料は着火し易い特性を有するため、石炭と比較してボイラ200へ投入する前のバンカ21での貯留中やミル10内の粉砕中などにおける温度状態も適切に管理する必要がある。このように固体燃料の種類で特性が異なることから、ミル10の分級機回転数、一次空気風量、ミル出口温度、及び粉砕荷重を制御対象とすることによって、供給される固体燃料の性質に応じてミル10の運転状態を適切に設定することが可能となる。なお、制御対象は、固体燃料の性状に基づいて必要に応じて、分級機回転数、一次空気風量、ミル出口温度、及び粉砕荷重以外の運転パラメータ(運転状態)を選択してもよい。
本実施形態では、制御部60は、分級機回転数、一次空気風量、ミル出口温度、及び粉砕荷重を運転制御目標値の制御対象とする場合について説明するが、分級機回転数、一次空気風量、ミル出口温度、及び粉砕荷重の少なくともいずれか1つを制御対象とすることとしてもよいし、また、分級機回転数、一次空気風量、ミル出口温度、及び粉砕荷重以外の運転パラメータ(運転状態)を制御対象としてもよい。
図6は、タグ体Tからの識別情報の検出パターンに応じて、各制御対象を制御した場合の例を示している。図6では、固体燃料として石炭とバイオマス燃料を用いる場合を示しており、区間Aでは、例えば一時的に石炭にバイオマス燃料が混合した場合における各制御対象の運転制御目標値の変化を示しており、区間Bでは、例えば石炭からバイオマス燃料へ完全に切替る場合における各制御対象の運転制御目標値の変化を示している。すなわち、図6のように、区間Aでは、石炭に対応した識別情報を持つタグ体Tの検出量が一時的に減少し、バイオマス燃料に対応した識別情報を持つタグ体Tの検出量が一時的に増加することにより、一時的に石炭にバイオマス燃料が混合したことが検出される。そして、区間Bでは、石炭に対応した識別情報を持つタグ体Tの検出量が(所定値よりも)減少して0となり、バイオマス燃料に対応した識別情報を持つタグ体Tの検出量が(所定値よりも)増加することにより、石炭からバイオマス燃料へ完全に切替ることが検出される。なお、区間Aでは、石炭及びバイオマス燃料に対応した識別情報を持つタグ体Tの検出量によって、区間Bのように固体燃料の完全な切り替えでなく、一時的な混合であることを判定することができる。なお、石炭またはバイオマス燃料のいずれか一方のみにタグ体Tを混入させた場合は、タグ体Tの検出量が一時的に増減することによって、一時的に石炭またはバイオマス燃料が混合したことを判定することができる。また、タグ体Tの検出量が(所定値よりも)増減することによって、固体燃料を完全に切り替えたことを判定することができる。
図6の区間Aのように、一時的に石炭にバイオマス燃料が混合したことが検出された場合には、分級機回転数を一時的に低下させる。すなわち、分級機回転数を低下させることで回転式分級機16の分級性能が低下するため、石炭と比較して粉砕性が低いバイオマス燃料を粒径の大きい状態でミル10から排出させることができ、ミル10内での粉砕されたバイオマス燃料の滞留を抑制している。例えば、分級機回転数は、石炭粉砕時で90rpm以上180rpm以下の範囲内とすると、バイオマス燃料も混合して粉砕する場合には10rpm以上150rpm以下の範囲内へ(所定値分だけ)低下される。このように、ミル10へ供給されている固体燃料より粉砕性が低い他の固体燃料が混合される場合には、分級機回転数を低下させることによって、ミル10内での固体燃料の滞留によるミル10の過負荷発生を抑制している。
図6の区間Aのように、一時的に石炭にバイオマス燃料が混合したことが検出された場合には、ミル出口温度を一時的に低下させる。すなわち、ミル出口温度を低下させることで、ミル内でのバイオマス燃料の着火を抑制している。例えば、ミル出口温度は、石炭粉砕時で約80℃とすると、バイオマス燃料も混合して粉砕する場合には約60℃へ(所定値分だけ)低下させる。このように、ミル10へ供給されている固体燃料より着火し易い他の固体燃料が混合される場合には、ミル出口温度を低下させることによって、ミル10内での固体燃料の着火を抑制する。
図6の区間Aのように、一時的に石炭にバイオマス燃料が混合したことが検出された場合には、粉砕荷重を一時的に増加させる。すなわち、粉砕荷重を増加させることで、石炭と比較して粉砕性の低いバイオマス燃料を効果的に粉砕して粒径を小さくすることができ、ミル10から排出されやすくなるため、ミル10内での固体燃料の滞留を抑制している。例えば、粉砕荷重は、石炭粉砕時で約5MPaとすると、バイオマス燃料も混合して粉砕する場合には約6〜7MPaへ(所定値分だけ)増加させる。このように、ミル10へ供給されている固体燃料より粉砕性の低い他の固体燃料が混合される場合には、粉砕荷重を増加させることによって、ミル10内での固体燃料の滞留によるミル10の過負荷発生を抑制している。
なお、図6のAでは、一次空気風量について変更処理を行わない場合を例示しているが、一次空気風量を一時的に増加させて、石炭と比較して粉砕性の低いバイオマス燃料を粒径の大きい状態で排出され易くすることとしてもよい。しかしながら、一時的に複数種類の固体燃料が混合する場合には、一次空気風量については現状値を維持し、回転式分級機16の分級機回転数を調整することが好ましい。これは、分級機回転数及び一次空気風量の2つのパラメータを同時に制御すると、制御が発散し、収束しない可能性があるためである。
図6の区間Bのように、石炭からバイオマス燃料へ完全に切替る場合には、分級機回転数を低下させる。すなわち、分級機回転数を低下させることで回転式分級機16の分級性能が低下するため、石炭と比較して粉砕性の低いバイオマス燃料を粒径の大きい状態でミル10から排出させることができ、ミル10内での固体燃料の滞留を抑制している。例えば、分級機回転数は、石炭粉砕時で90rpm以上180rpm以下の範囲内とすると、バイオマス燃料粉砕時には10rpm以上30rpm以下の範囲内へ(所定値分だけ)低下させる。このように、ミル10へ供給されている固体燃料からより粉砕性の低い他の固体燃料へ切り替わる場合には、分級機回転数を低下させることによって、ミル10内での固体燃料の滞留によるミル10の過負荷発生を抑制している。
図6の区間Bのように、石炭からバイオマス燃料へ完全に切替る場合には、一次空気風量を増加させる。すなわち、一次空気風量を増加させることで、石炭と比較して粉砕性の低いバイオマス燃料を粒径の大きい状態で効果的に排出して、ミル10内でのバイオマス燃料の滞留を抑制している。例えば、一次空気風量は、石炭粉砕時で約25t/hとすると、バイオマス燃料粉砕時には約28〜30t/hへ(所定値分だけ)増加させる。このように、ミル10へ供給されている固体燃料からより粉砕性の低い固体燃料へ切り替わる場合には、一次空気風量を増加させることによって、ミル10内での固体燃料の滞留によるミル10の過負荷発生を抑制している。
図6の区間Bのように、石炭からバイオマス燃料へ完全に切替る場合には、ミル出口温度を低下させる。すなわち、ミル出口温度を低下させることで、ミル10内でのバイオマス燃料の着火を抑制している。例えば、ミル出口温度は、石炭粉砕時で約80℃とすると、バイオマス燃料粉砕時には約60℃へ(所定値分だけ)低下させる。このように、ミル10へ供給されている固体燃料からより着火し易い他の固体燃料へ切り替わる場合には、ミル出口温度を低下させることによって、ミル10内での固体燃料の着火を抑制する。
図6の区間Bのように、石炭からバイオマス燃料へ完全に切替る場合には、粉砕荷重を増加させる。すなわち、粉砕荷重を増加させることで、石炭と比較して粉砕性の低いバイオマス燃料を効果的に粉砕して粒径を小さくすることができ、ミル10から排出されやすくなるため、ミル10内でのバイオマス燃料の滞留を抑制している。例えば、粉砕荷重は、石炭粉砕時で約5MPaとすると、バイオマス燃料粉砕時には約6〜7MPaへ(所定値分だけ)増加させる。このように、ミル10へ供給されている固体燃料からより粉砕性の低い固体燃料へ切り替わる場合には、粉砕荷重を増加させることによって、ミル10内での固体燃料の滞留によるミル10の過負荷発生を抑制している。
このように、供給される固体燃料の特性に合わせて適切に運転制御目標値を切り替えることによって、ミル10の運転を停止させることなく、固体燃料の切換を行うことができる。
なお、図6の例では、分級機回転数を、区間Aの場合と区間Bの場合とで運転制御目標値を変えて制御した。具体的には、検出部51で検出されるタグ体Tの検出量(バイオマス燃料に対応した識別情報を持つタグ体Tの検出量)の変化に応じて、分級機回転数を制御している。このように、識別情報の検出量の変化に応じてミル10の運転状態を制御することによって、より効果的に、ミル10へ供給される各固体燃料に応じた適切な制御を行うことが可能である。他の制御対象(一次空気風量、ミル出口温度、及び粉砕荷重)についても、識別情報の検出量の変化に応じて制御することとしてもよい。
次に、上述の制御部60による制御の一例について図7を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る固体燃料粉砕装置100の制御の手順の一例を示すフローチャートである。図7に示すフローは、例えば、固体燃料粉砕装置100が稼働している場合に、所定の制御周期で繰り返し実行される。
まず、固体燃料に混入されたタグ体Tから識別情報を検出部51で検出する(S101)。タグ体Tには、混入される固体燃料の種類に応じて識別情報が設定されているため、本実施形態では識別情報の検出によって、固体燃料の種類を識別することができる。なお、タグ体Tは、検出部51にて識別情報が検出された後に回収部52により回収されて、固体燃料から分別されるとともに、タグ体Tのミル10への入り込みを抑制する。なお、回収したタグ体Tから識別情報を検出することとしてもよい。
検出した識別情報に基づいて、分級機回転数の運転制御目標値を設定する(S102)。識別情報(固体燃料)に応じて適切な分級機回転数の運転制御目標値が設定されるこことで、安定的に固体燃料粉砕装置100で使用する固体燃料を切り替えることができる。
検出した識別情報に基づいて、一次空気風量の運転制御目標値を設定する(S103)。識別情報(固体燃料)に応じて適切な一次空気風量の運転制御目標値が設定されるこことで、安定的に固体燃料粉砕装置100で使用する固体燃料を切り替えることができる。
検出した識別情報に基づいて、ミル出口温度の運転制御目標値を設定する(S104)。識別情報(固体燃料)に応じて適切なミル出口温度の運転制御目標値が設定されるこことで、安定的に固体燃料粉砕装置100で使用する固体燃料を切り替えることができる。
検出した識別情報に基づいて、粉砕荷重の運転制御目標値を設定する(S105)。識別情報(固体燃料)に応じて適切な粉砕荷重の運転制御目標値が設定されるこことで、安定的に固体燃料粉砕装置100で使用する固体燃料を切り替えることができる。
このように大きく性状の異なる燃料種の切り替えを、ミル10を一旦停止することなく的確に実施することができるため、ミル10の稼働率が向上する。またミル10は切り替えられた固体燃料への運転条件へと変更して、粉砕された微粉燃料の仕様を確保することが出来る。
以上説明したように、本実施形態に係る燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法によれば、固体燃料がミル10へ供給される前において混入されたタグ体Tから識別情報を検出するため、事前にミル10へ供給される固体燃料の情報を得ることができる。そして、タグ体Tは固体燃料と分別可能とされているため、回収部52において、固体燃料からタグ体Tを回収することが可能となる。回収したタグ体Tは再利用することもできる。先行的に(ミル10へ供給される前に)タグ体Tから識別情報を得ることができるため、例えば、供給される固体燃料に対してミル10を先行制御することも可能となる。
混入される固体燃料の流動特性に基づいてタグ体Tの比重及び/または安息角を設定するため、タグ体Tを固体燃料と同様に移動させることができる。すなわち、固体燃料に混入されたタグ体Tが局所的に集中するなどの偏在を抑制することができる。
タグ体TのサイズSを固体燃料の大きさに基づいて設定することにより、固体燃料からタグ体Tを効率的に回収することが可能となる。例えば、タグ体Tは、固体燃料の大きさに対して所定の割合で大きい(少し大きい)または所定の割合で小さい(少し小さい)とすることによって、メッシュや金網の目開きなどで容易に固体燃料と分別することができる。また、タグ体Tが磁性体もしくは常磁性体を含んでいることにより、磁力を利用して固体燃料からタグ体Tを効率的に回収することが可能となる。例えば、磁石を利用してタグ体Tを吸引することによって、容易に固体燃料と分別することができる。また、画像認識や、複数受信機による電磁波発信源の位置特定により、燃料中からタグ体Tを識別することによりよって、容易に固体燃料と分別することができる。
また、ミル10への固体燃料の供給路に回収部52を設けることによって、ミル10に供給される前にタグ体Tを回収することができる。このため、タグ体Tを再利用することも可能となる。
〔第2実施形態〕
次に、本開示の第2実施形態に係る燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法について説明する。
上述した第1実施形態では、混入される固体燃料に応じてタグ体Tの識別情報を設定していたが、本実施形態では、識別情報に境界情報を設定する場合について説明する。以下、本実施形態に係る燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法について、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
図8のように、振分コンベア55を用いて石炭とバイオマス燃料を各バンカ21へ振り分ける場合には、振分コンベア55で運ばれる固体燃料を振分ゲート56によって各バンカ21へ振り分けている。しかしながら、振分ゲート56において固体燃料がリーク(振分ゲート56で他のバンカ21へ切り替え中に別の固体燃料の一部が混入するなど)した場合、固体燃料が輸送先でないバンカ21へ一部流入して輸送されてしまうおそれがある。図8では、バンカB1に石炭が蓄積されており、バンカB2に振分ゲート56によってバイオマス燃料を輸送している状態を示している。しかしながら、振分ゲート56でリークしたバイオマス燃料が、石炭が蓄積しているバンカB1へ輸送されてしまい、石炭の上に若干のバイオマス燃料が堆積してしまう可能性がある。また、振分ゲート56における固体燃料のリークに限らず、各バンカ21への振り分け後に振分コンベア55に付着した固体燃料が異なる固体燃料が蓄積されたバンカ21に薄く堆積し、バンカ21内に異なる固体燃料の層ができる場合もある。このような場合には複数種類の固体燃料が混合された状態でミル10へ供給されるため、ミル10は切り替えられた固体燃料への運転条件へと変更ができなく、ミル10の粉砕性能だけでなく、粉砕された微粉燃料の仕様を確保することが出来ずにミル10後流側のバーナ部220の燃焼性能、ボイラ200の蒸気発生量や各熱交換器の温度分布状態が変動して不安定となり、発電プラント1の安定した運転の継続が困難となる(外乱となる)おそれがある。
このため、本実施形態では、固体燃料の種類が切り替わる位置に混入させたタグ体(境界タグ体)Taに切換ポイントを示す識別情報を設定する。すなわち、供給される固体燃料の種類が切り替わる境界位置に混入される境界タグ体Taに対応して、識別情報に境界情報が設定されており、該境界情報に基づいて、切り替わり後の固体燃料の種類に対応してミル10を制御する。この場合には、例えば図8のように、バンカB1内に石炭の輸送が完了した後にバンカB1内に蓄積した石炭に対して境界情報が設定された境界タグ体Ta(識別情報に境界情報が設定されたタグ体T)が混入(バンカB1内に蓄積した石炭へ散布)される。このため、境界タグ体Taの混入後にバンカB1(石炭の上)に異なる固体燃料であるバイオマス燃料等が輸送されて堆積や蓄積をしてしまったとしても、石炭とバイオマス燃料との境界に境界タグ体Taが混入されることとなる。このため、境界タグ体Taの境界情報を示す識別情報を検出することにより、固体燃料の種類が切り替わることを検出することができる。バンカ21内に蓄積されている固体燃料の蓄積順番がわかっていれば、境界情報によって固体燃料の切り替えを検出することができる。
なお、境界情報が設定された境界タグ体Taを使用する場合には、図2のように、混入される他の固体燃料に対して、該固体燃料に対応した識別情報が設定されたタグ体Tを均一に混入しなくても、境界位置を検出することができる。すなわち、境界タグ体Taを使用する場合には、混入される他の固体燃料にタグ体Tが混入されていてもよいし混入されていなくてもよい。
固体燃料の種類が変化する位置を、燃料供給前に検出することができるため、先行的に、変化後の固体燃料に合わせて固体燃料粉砕装置100を制御することができ、発電プラント1の運転状態を安定化させることが可能となる。
なお、第1実施形態のように、バンカ21に異なる種類の固体燃料を蓄積する場合において、それぞれの固体燃料にタグ体Tを均一に混入している場合であっても、境界位置に境界タグ体Taを混入させてもよい。境界タグ体Taを混入させることによって、固体燃料が実際に切り替わる前に、先行して切り替えを認識することができ、より早い対応を行うことが可能となる。
境界タグ体Taを用いた場合には、境界タグ体Taからの識別情報の検出パターンは、図9のようになる。本実施形態に係るタグ体からの識別情報の検出パターンについて、図6と異なる点について主に説明する。図9のように、バイオマス燃料の検出前に、境界タグ体Taを検出部51で検出することができるため、石炭からバイオマス燃料への切り替えを事前に認識することができる。このため、各固体燃料に合わせて、各制御対象(分級機回転数、一次空気風量、ミル出口温度、及び粉砕荷重)の運転制御目標値をより適切に制御することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法によれば、固体燃料の種類が切り替わる境界位置に混入される境界タグ体Taに対応して境界情報が設定されているため、境界位置を把握して、切り替えられた固体燃料への運転条件へとミル10を制御することが可能となる。すなわち、切り替わり後の固体燃料の種類に対応して、遅滞なくミル10の制御を行うことが可能となる。このため、ミル10を停止することなく、固体燃料の切り替えを行うことも可能となる。すなわち、発電プラント1の安全かつ安定した運転に寄与することができる。
〔第3実施形態〕
次に、本開示の第3実施形態に係る燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法について説明する。
本実施形態では、ミル10へ供給される前段階において蓄積されている固体燃料の状態監視を行う場合について説明する。以下、本実施形態に係る燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法について、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について主に説明する。
ミル10への供給前において、バンカ21に固体燃料を蓄積しているが、蓄積された状態の固体燃料に異常な温度上昇が生じる場合がある。これは、固体燃料は酸素が存在する雰囲気下では自然酸化昇温が穏やかに進行するが、バンカ21内部で固体燃料が密着保管されている状態では周囲への放熱が抑制されるため、固体燃料の自然酸化昇温による発熱が放熱を上回った際に発生するものである。このため、本実施形態では、蓄積された状態において発生した異常な温度上昇を効率的に抑制する。なお、本実施形態では、固体燃料がバンカ21に蓄積されている場合を例として説明するが、固体燃料が蓄積される貯蔵部(貯蔵設備)であれば、例えば、貯炭場やサイロなど、バンカ21に限定されない。
図10は、本実施形態におけるバンカ21における詳細な構成例を示す図である。図10のように、バンカ21には、振分コンベア55によって運ばれた固体燃料が蓄積されている。蓄積している固体燃料にはタグ体Tが混入されている。そして、バンカ21には、受信部71と、散水部72とが設けられている。
受信部71は、蓄積された固体燃料に混入されているタグ体Tから無線信号を受信する。すなわち、受信部71は、検出部51と同様に、タグ体Tからの信号を受信している。受信部71は、固体燃料が蓄積されるバンカ21において蓄積方向に複数設けられている。具体的には、受信部71は、図10のように、固体燃料が蓄積される方向(蓄積方向、図10では紙面上下方向)に、所定の間隔をおいて複数設けられている。蓄積方向は、バンカ21の深さ方向と平行な方向となる。さらに、受信部71は、蓄積方向(深さ方向)において、一定の位置に複数設けられている。すなわち、蓄積方向が一定の位置(蓄積方向と垂直な面内)において、バンカ21外周部(円筒のバンカ21であれば径方向と周方向)に複数の受信部71が設けられている。換言すると、蓄積方向に垂直な複数の層が設けられており、各層には、バンカ21の外周位置に複数の受信部71が所定位置に配置して設けられている。このように受信部71を配置することで、蓄積した固体燃料に混入しているタグ体Tからより所定位置に配置された受信部71付近の固体燃料について、確実に情報を取得することが可能となる。
そして、制御部60では、複数の所定位置に配置した受信部71により受信した情報(無線信号)に基づいて、バンカ21内におけるタグ体Tの位置を推定する。具体的には、タグ体Tには温度センサ63が設けられているため、受信部71では、温度情報も受信している。このため、制御部60では、受信した温度情報によって温度異常が発生しているか否かを判定する。なお、温度異常とは、計測した温度が閾値以上となっている場合である。閾値は、固体燃料に応じて、異常な発熱が発生していると推定される温度の下限値として設定される。なお、タグ体Tにおいて温度異常の判定を行い、温度異常の情報を受信部71へ送信することとしてもよい。
そして、制御部60では、温度異常が発生していると推定されるタグ体Tから受信した複数の受信部71における受信信号に基づいて、該タグ体Tの位置を推定する。例えば、図11は、バンカ21の横断面図であり、タグ体T(P1)で温度異常が検出された場合を示している。すると、タグ体T(P1)から複数の受信部71で信号を受信できるため、それぞれの電波強度の差や受信時刻の電波位相の差から、タグ体T(P1)の位置を推定して特定することができる。すなわち、蓄積された固体燃料において、温度異常が発生している固体燃料の位置を推定して特定することが可能となる。なお、具体的な位置特定の方法については、電波強度の差や受信時刻の電波位相の差に基づく方法に限定されない。
制御部60では、受信した無線信号に基づいて温度異常を検出した場合に、対応するタグ体Tの蓄積位置に対して水(温度上昇を抑制する所定の媒体)を散布する。すなわち、制御部60は、温度異常位置を推定して特定すると、散水部72を制御して、該温度異常位置に対応する位置へ水を散布する。図12は、バンカ21の縦断面図である。例えば、タグ体T(P1)で温度異常が検出された場合には、タグ体T(P1)の周囲の固体燃料で異常な温度上昇が発生していると推定されるため、タグ体T(P1)の蓄積位置に対して水を散布する。具体的には、散布部は、バンカ21の上部に複数設けられており、温度異常のタグ体T(P1)に対して蓄積方向上流側に位置する散水部72が制御されて水が散布される。タグ体T(P1)の周囲の固体燃料で異常な温度上昇の発生が無くなった時点で、タグ体T(P1)の蓄積位置に対する水の散布を終了する。
例えば、温度異常を検出した場合に、位置が特定できないとバンカ21全体に水を散布する必要があるが、固体燃料中の水分が増加してミル10における乾燥性が悪化したり、固体燃料が水分を含むことによる粘結性の上昇によって詰まり等と全体に水を散布したことによる二次的弊害を発生する可能性がある。また、使用する水量も多くなることが想定される。しかしながら、本実施形態では、バンカ21等の貯留された燃料内部の異常な温度上昇を検知した場合に、その部分だけに必要な水量を散水する。このため、水量を抑制し、ミル10における乾燥性の悪化や詰り等を抑制することができる。また、散水による温度上昇の停止、温度の低下も確認でき、散水による効果も可視化することができる。
なお、受信部71の設置位置や、散水部72の設置位置については、図10の構成に限定されない。また、蓄積された固体燃料の温度異常の検出のみでなく、蓄積された固体燃料の温度分布状態を特定することとしてもよい。すなわち、各タグ体Tから温度情報を受信して各タグ体Tの位置を特定し、温度分布状態を模擬的に可視化することとしてもよい。また、温度上昇を抑制する媒体として、水以外の液体や、炭酸カルシウムなどの粉末状の固体(粉末消火剤)、窒素や二酸化炭素などの酸素を含まない気体を用いてもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法によれば、所定位置に配置された受信部71が固体燃料に混入して蓄積されているタグ体Tから無線信号を受信するため、蓄積されたタグ体Tの位置を推定することができる。固体燃料が蓄積されるバンカ21に対して、蓄積方向に複数の受信部71が設けられることによって、より正確にタグ体Tの蓄積位置を推定することが可能となる。タグ体Tが温度センサ63を有することによって無線信号により温度異常を検出することができる。このため、推定した蓄積位置において蓄積された固体燃料が温度異常の状態となっていると想定することができるため、該蓄積位置に水を散布することで温度異常の状態を抑制することができる。また、蓄積位置を推定することができるため、蓄積された固体燃料の全体に水を散布する必要がなく、効率的に水を散布して効果的に温度異常の抑制を行うことが可能となる。また、散水による温度異常を解消する効果も確認することができる。
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。すなわち、上記の第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態については、それぞれ組み合わせることも可能である。
例えば、固体燃料に投入するタグ体Tは、搬送系統により固体燃料と共に搬送が可能な大きさで、固体燃料に混入して搬送しても壊れない強度を持ち、安価、無害かつ、ミル10で粉砕された場合でもスピレージホッパから排出される等、ミル10及び発電プラント1に有害な影響を与えないものが望ましい。また、タグ体Tに識別情報以外の情報(燃料のロット番号や時刻など)を記録しても良い。タグ体Tの持つ識別情報等は使用目的に応じて外部から書き換えられても良い。
また、受信機Rは燃料供給元(採掘所L1、ペレット工場L4等)から、ミル10までの燃料輸送経路上のいずれにいくつ設置しても良く、受信機Rから運搬経路中のタグ体Tから情報を読み取ることで、固体燃料の受け入れ準備を効率化することが可能となる。受信機Rは、設置位置を管理するとともに、輸送経路を通過する燃料に対してより確実にタグ体Tからの発信情報を検出できる形態とすることが好ましい。例えばアンテナを追加して受信範囲と受信性能を向上させても良い。また、受信機R(検出部51等)では、多重化して2 out of 3構成(複数の検出部51が多数決により判断(検出)を行う構成)等としてもよい。そして、受信機R(検出部51や受信部71を含む)は、恒久設置としても、仮設としても良く、メンテナンスの為に着脱可能としてもよく、また例えばドローン等の移動可能体に搭載して、任意場所での検知を行っても良い。
また、検出部51で検出されたタグ体Tの通過信号は、処理装置に送信されて運転条件変更に利用されるが、最終的にオペレータにタグ体Tの通過が通知されてもよい。
また、タグ体Tは燃料中に均一に混入しても良いが、目的に応じ投入量を絞っても良い。例えば燃料種切り替わりの検知を目的とする場合は、燃料の変わり境界に集中的に投入することでタグ体Tの投入量をより節約でき、サイロやバンカ21内の温度検出を目的とする場合は、均一に混ぜる方が好ましい。
また、タグ体Tの投入場所は、貯炭場L6や給炭機20からミル10間に限らずに更に上流側でも良い。検知の目的により、燃料供給元(採掘所、ペレット成型工場等)からミル10までの燃料輸送経路上のいずれでもよい。例えば、貯炭場では搬入時点で各燃料種が一部混合する場合がある。このような場合に対して燃料種変更の検知を行う場合は、発電プラント1の燃料受入口の時点で燃料種毎に異なる識別情報を持ったタグ体Tが既に投入されていることが好ましい。これによれば、受信機Rを燃料輸送経路上に配置しておくことで、どこまでその燃料種が輸送されているのかも把握できる。貯炭場では搬入時点で各燃料種にタグ体Tが混在しているので、各燃料種類を誤認することなく判断し把握することができて、固体燃料の受け入れ準備を効率化することができる。また、仮に一部混合する場合があっても混合した状況を把握することができる。
また、タグ体Tから受信した情報をIoTネットワーク上(ネットワーク上)で集約して、運転状態の分析に活用してもよい。例えば燃料製造工場(採掘所、ペレット成型工場等)にて燃料性状及び識別情報をインターネットを利用して所定サーバに集約しておくことで、プラントの運転中で新規の燃料受入後に、プラントの受信機Rで検出した識別情報から、所定サーバにアクセスすることで、燃料性状を簡易に把握して、燃料種類の切替時期を正確に推定してプラントの運用計画へ活用しても良い。また、現地プラントでのタグ体Tに設けたセンサからの情報をインターネットなどIoT上で所定サーバに集約し、その情報からプラントの各燃料種類に関する運転状態を把握してもよい。また集約した情報をデータベース(図示なし)に蓄積しておき、このデータベースから類似事象を分類しておくことで、故障発生前の前兆傾向の有無を判断して、発電プラント1の故障予知、予防保全等に使用しても良い。具体的には、制御部(または故障傾向判断部)は、無線信号とタグ体の位置を集約したデータベースに基づいて、故障傾向の有無を判断することとしてもよい。すなわち、無線信号とタグ体の位置を集約した情報をデータベースに蓄積し、前記データベースから類似事象を分類して、故障発生前の前兆傾向の有無を予知判断する。例えば、分類した事象と、現状とを比較し、故障が発生した事象に現状が似ているか否かによって故障の傾向を判断する。
以上説明した各実施形態に記載の燃料識別システム、制御システム及び固体燃料粉砕装置、並びに燃料識別方法は例えば以下のように把握される。
本開示に係る燃料識別システムは、固体燃料粉砕装置(100)において粉砕部(10)へ供給される複数種類の固体燃料の燃料識別システムであって、前記固体燃料が前記粉砕部(10)へ供給される前において、前記固体燃料に混入されており前記固体燃料と分別可能なタグ体(T)に予め設定された識別情報を検出する検出部(51)と、前記固体燃料から前記タグ体(T)を回収する回収部(52)と、を備える。
本開示に係る燃料識別システムによれば、固体燃料が粉砕部(10)へ供給される前において固体燃料に混入されたタグ体(T)から識別情報を検出部(51)で検出する。このため、粉砕部(10)へ供給される前に、供給される固体燃料の情報を得ることができる。そして、タグ体(T)は固体燃料と分別可能とされているため、回収部(52)において、固体燃料からタグ体(T)を回収することが可能となる。回収したタグ体(T)は再利用することもできる。先行的に(粉砕部(10)へ供給される前に)タグ体(T)から識別情報を得ることができるため、例えば、供給される固体燃料に対しての情報を得て、固体燃料粉砕装置(100)では先行制御して、固体燃料へ対応する運転条件へと制御することも可能となる。
本開示に係る燃料識別システムは、前記回収部(52)は、前記粉砕部(10)への前記固体燃料の供給路に設けられていることとしてもよい。
本開示に係る燃料識別システムによれば、粉砕部(10)への固体燃料の供給路に回収部(52)を設けることによって、粉砕部(10)に供給される前にタグ体(T)を回収することができる。このため、タグ体(T)を再利用し、またタグ体(T)の粉砕部(10)への入り込みを抑制することも可能となる。
本開示に係る燃料識別システムは、前記タグ体(T)は、混入される前記固体燃料の特性に基づいて、比重及び安息角の少なくともいずれか1方が設定されていることとしてもよい。
本開示に係る燃料識別システムによれば、混入される固体燃料の特性によりタグ体(T)の比重及び/または安息角を設定するため、タグ体(T)を固体燃料と同様に移動させることができる。すなわち、固体燃料に混入されたタグ体(T)が局所的に集中するなどの偏在を抑制することができる。
本開示に係る燃料識別システムは、前記タグ体(T)のサイズは、前記固体燃料のサイズに基づいて設定されており、前記回収部(52)は、前記タグ体(T)のサイズにより前記固体燃料と分別して、前記固体燃料から前記タグ体(T)を回収することとしてもよい。
本開示に係る燃料識別システムによれば、タグ体(T)のサイズを固体燃料のサイズに基づいて設定することにより、固体燃料からタグ体(T)を効率的に回収することが可能となる。例えば、タグ体(T)は、固体燃料のサイズに対して所定の割合で大きい(少し大きい)または所定の割合で小さい(少し小さい)とすることによって、例えばメッシュや金網の目開きなどで容易に固体燃料と分別することができる。
本開示に係る燃料識別システムは、前記タグ体(T)は、磁性体を含んでおり、前記回収部(52)は、磁力を利用して前記固体燃料と分別して、前記固体燃料から前記タグ体(T)を回収することとしてもよい。
本開示に係る燃料識別システムによれば、タグ体(T)が磁性体を含でいることにより、磁力を利用して固体燃料からタグ体(T)を効率的に回収することが可能となる。例えば、磁石を利用してタグ体(T)を吸引することによって、容易に固体燃料と分別することができる。
本開示に係る制御システムは、上記の燃料識別システムと、前記識別情報に基づいて前記固体燃料粉砕装置(100)の運転状態を制御する制御部(60)と、を備える。
本開示に係る制御システムによれば、固体燃料が粉砕部(10)への供給される前において検出された識別情報に基づいて固体燃料粉砕装置(100)の運転状態を制御することが可能となるため、固体燃料粉砕装置(100)を先行制御することが可能となる。例えば、供給される固体燃料の種類の変化に先行対応することができる。
本開示に係る制御システムは、前記識別情報は、前記タグ体(T)が混入される前記固体燃料ごとに設定されており、前記制御部(60)は、前記識別情報に対応して前記固体燃料粉砕装置(100)の運転状態を制御することとしてもよい。
本開示に係る制御システムによれば、タグ体(T)が混入される固体燃料ごとに識別情報が設定されることによって、固体燃料ごとに固体燃料粉砕装置(100)の運転状態の制御を行うことが可能となる。すなわち、固体燃料の種類の変化に対応して遅滞なく固体燃料粉砕装置(100)の制御を行うことが可能となる。このため、固体燃料粉砕装置(100)を停止することなく、固体燃料の切り替えを行うことも可能となる。
本開示に係る制御システムは、前記識別情報には、供給される前記固体燃料の種類が切り替わる境界位置に混入される前記タグ体(T)に対応して境界情報が設定されており、前記制御部(60)は、前記境界情報に基づいて、切り替わり後の前記固体燃料の種類に対応して前記固体燃料粉砕装置(100)の運転状態を制御することとしてもよい。
本開示に係る制御システムによれば、固体燃料の種類が切り替わる境界位置に混入されるタグ体(Ta)に対応して境界情報が設定されているため、境界位置を把握して、固体燃料粉砕装置(100)を制御することが可能となる。すなわち、切り替わり後の固体燃料の種類に対応して、遅滞なく固体燃料粉砕装置(100)の運転状態の制御を行うことが可能となる。このため、固体燃料粉砕装置(100)を停止することなく、固体燃料の切り替えを行うことも可能となる。
本開示に係る制御システムは、前記制御部(60)は、前記識別情報の検出量に応じて前記固体燃料粉砕装置(100)の運転状態を制御することとしてもよい。
本開示に係る制御システムによれば、識別情報の検出量に応じて固体燃料粉砕装置(100)を制御することにより、供給される固体燃料の状態により適切に固体燃料粉砕装置(100)の制御を行うことが可能となる。例えば、複数の種類の固体燃料が混合された状態で供給される場合には、識別情報の検出量として混合度合を認識することができるため、該混合度合に応じて適切に固体燃料粉砕装置(100)の運転状態の制御を行うことが可能となる。なお、識別情報の検出量とは、検出部(51)において単位時間当たりに通過する(検出される)タグ体(T)の数(検出数)である。
本開示に係る制御システムは、前記制御部(60)は、前記識別情報に基づいて、分級機の回転数、粉砕された前記固体燃料の搬送ガスの風量、前記粉砕部(10)の出口側における前記搬送ガスの温度、及び前記固体燃料を粉砕する前記粉砕部(10)の粉砕荷重の少なくともいずれか1つに対して運転制御目標値を制御することとしてもよい。
本開示に係る制御システムによれば、識別情報に基づいて運転制御目標値を制御することによって、固体燃料の種類に対応して適切に固体燃料粉砕装置(100)の運転状態を制御することが可能となる。例えば、分級機の回転数を制御することで、バーナ部(220)での燃焼に適切な粒径範囲の燃料を分級することができる。また、粉砕された固体燃料の搬送ガスの風量を制御することで、粉砕後の燃料の状態(粉砕後の燃料粒子の粒径、粒径分布、質量、質量分布、かさ比重、終末速度等)に適応して運転を行うことができる。また、粉砕部(10)の出口側における搬送ガスの温度を制御することで、粉砕後の燃料(水分含有量等)に適応して運転を行うことができる。また、固体燃料を粉砕する粉砕部(10)の粉砕荷重を制御することで、燃料の粉砕度合を調整することができる。
本開示に係る制御システムは、蓄積された前記固体燃料に混入されている前記タグ体(T)から無線信号を受信する受信部(71)を備え、前記制御部(60)は、前記無線信号に基づいて、蓄積された前記タグ体(T)の位置を推定することとしてもよい。
本開示に係る制御システムによれば、固体燃料に混入して蓄積されているタグ体(T)から無線信号を受信部(71)で受信する。このため、例えば、所定位置に配置された複数の受信部(71)により蓄積されたタグ体(T)の位置を推定することができる。なお、蓄積位置は、例えば電波強度や位相差によって推定できる。
本開示に係る制御システムは、前記受信部(71)は、前記固体燃料が蓄積される貯蔵部において蓄積方向に複数設けられていることとしてもよい。
本開示に係る制御システムによれば、固体燃料が蓄積されるバンカ(21)に対して、蓄積方向に複数の受信部(71)が設けられることによって、より正確にタグ体(T)の蓄積位置を推定することが可能となる。
本開示に係る制御システムは、前記タグ体(T)は、温度センサ(63)を有しており、前記制御部(60)は、受信した前記無線信号に基づいて温度異常を検出した場合に、対応する前記タグ体(T)の蓄積位置に対して媒体を供給することとしてもよい。
本開示に係る制御システムによれば、タグ体(T)が温度センサ(63)を有することによって無線信号により温度異常を検出することができる。このため、推定した蓄積位置において蓄積された固体燃料が異常状態となっていると想定することができるため、該蓄積位置に固体燃料の温度上昇を抑制する媒体を供給することで異常状態を抑制することができる。また、蓄積位置を推定することができるため、蓄積された固体燃料の全体に固体燃料の温度上昇を抑制する媒体を供給する必要がなく、効率的に固体燃料の温度上昇を抑制する媒体を供給して効果的に異常抑制を行うことが可能となる。
本開示に係る制御システムは、前記制御部(60)は、前記無線信号と前記タグ体の位置を集約したデータベースに基づいて、故障傾向の有無を判断することとしてもよい。
本開示に係る制御システムによれば、過去のデータベースに基づいて、故障傾向の有無を判断することが可能となる。
本開示に係る固体燃料粉砕装置(100)は、固体燃料を粉砕する粉砕部(10)と、前記固体燃料を前記粉砕部(10)へ供給する燃料供給機(20)と、上記の制御システムと、を備える固体燃料粉砕装置(100)。
本開示に係る燃料識別方法は、固体燃料粉砕装置(100)において粉砕部(10)へ供給される複数種類の固体燃料の燃料識別方法であって、前記固体燃料が前記粉砕部(10)へ供給される前において、前記固体燃料に混入されており前記固体燃料と分別可能なタグ体(T)に予め設定された識別情報を検出する工程と、前記固体燃料から前記タグ体(T)を回収する工程と、を有する燃料識別方法。