JP6817161B2 - 研削砥石及び研削砥石の製造方法 - Google Patents
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研削点における被削材温度を低下させる方法として、研削点に向けて注水する方法がある。しかし、砥石表面に形成される連れ回りの空気を突破して十分な水を研削点に供給できない場合がある。
特許文献1には、研削点における冷却効果を高めるために、回転する研削砥石の表面に溝を形成する技術が提案されている。
その一方で、研削砥石の溝を浅く形成した場合、研削砥石がすり減ってしまうと、直ぐに溝が無くなってしまい、研削砥石の寿命が短くなってしまうという課題がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、冷却効果を確保しつつ剛性および寿命を向上することができる研削砥石及び研削砥石の製造方法を提供するものである。
この発明の第一態様によれば、研削砥石は、軸線を中心にして回転可能な円筒状をなし、被削材に接触する使用面が、前記軸線を中心とした径方向で外側を向く外周面となる研削砥石であって、前記軸線を中心とした径方向に積層された円筒状の複数の砥石層を備え、前記砥石層は、前記径方向で隣り合う前記砥石層と異なる方向に延びる複数の溝部をそれぞれ備え、前記砥石層よりも前記径方向の内側に冷媒を収容可能な冷媒空間を備え、前記溝部は、前記径方向の外側から見て、前記軸線に直交する仮想面及び前記軸線に対して傾斜して形成されるとともに、前記砥石層の前記軸線方向における第一縁部から第二縁部に至るように形成され、前記径方向で隣り合う前記砥石層の溝部同士は、前記径方向の外側から見て、互いに交差する部分で前記径方向に連通しており、前記径方向の最も内側に配置された前記砥石層の溝部は、前記冷媒空間に連通している。
このように隣り合う砥石層の各溝部が異なる方向に延びることで、隣り合う砥石層で変形し難い方向を異ならせることができる。そのため、単一の砥石層に深い溝を形成する場合や、複数の砥石層に渡る深い溝を形成する場合等と比較して、複数積層された砥石層全体の剛性を向上することができる。
さらに、使用面に近い側の砥石層が研削により摩耗して無くなった場合に、溝部を有した次の砥石層を使用面に露出させて研削を継続することができる。
つまり、溝部による冷却効果を確保しつつ、砥石層の剛性および寿命を向上することができる。
また、上述した溝部による冷却効果に加えて、空隙率の低い砥石層に対して、冷媒空間から砥石層の表面に至る冷媒流路が形成される。そのため、冷媒による砥石層の冷却を行うことができる。さらに、砥石層の空隙率を低下させて空隙を介して冷媒を砥石層の表面に供給する場合と比較して、砥石層の砥粒に対してバインダー量が低下し過ぎることを抑制できる。そのため、砥石層の寿命を向上させることができる。
この場合、使用面と交差する方向である軸線方向に、複数の砥石層が積層される。そのため、軸線と交差するように広がる側面に使用面を有する研削砥石においても、溝部による冷却効果確保しつつ、砥石層の剛性および寿命を向上することができる。
このようにすることで、上述した溝部による冷却効果に加えて、空隙率の低い砥石層に対して、冷媒空間から砥石層の表面に至る直線状の冷媒流路を形成して、冷媒による砥石層の冷却を行うことができる。そのため、砥石層の空隙率を低下させて空隙を介して冷媒を砥石層の表面に供給する場合と比較して、円滑に冷媒を流すことができる。さらに、砥石層の砥粒に対してバインダー量が低下し過ぎることを抑制できるため、砥石層の寿命を向上させることができる。さらに、意図した場所に貫通孔を形成できるため、冷媒による砥石層の均一な冷却を行うことができる。
このようにすることで、互いに溝部の延びる方向が異なる第一砥石層と第二砥石層とを備える研削砥石を容易に製造することができる。
このようにレーザによって砥石層に貫通孔を形成することで、冷媒空間と外側の空間とを連通する直線状の貫通孔を容易に形成することができる。また、レーザによって貫通孔を形成することで、所望の位置に貫通孔を容易に形成できるため、例えば、研削砥石を均一に冷却可能なように貫通孔を配置することもできる。
この発明の第七態様によれば、前記第一砥石層よりも前記軸線方向の内側に形成されて冷媒を収容可能な冷媒空間と、被削材に接触する使用面よりも外側の空間と、を連通する直線状の貫通孔をレーザにより形成する工程を含む。
このようにレーザによって砥石層に貫通孔を形成することで、冷媒空間と外側の空間とを連通する直線状の貫通孔を容易に形成することができる。また、レーザによって貫通孔を形成することで、所望の位置に貫通孔を容易に形成できるため、例えば、研削砥石を均一に冷却可能なように貫通孔を配置することもできる。
次に、この発明の第一実施形態における研削砥石及び研削砥石の製造方法を図面に基づき説明する。
図1は、この発明の第一実施形態における研削砥石の斜視図である。
図1に示すように、この第一実施形態における研削砥石100は、台金部10と、砥石部11と、を備えている。
図2に示すように、第一砥石層15は、台金部10の砥石固定部12に固定されている。第一砥石層15は、複数の溝部20を備えている。これら溝部20は、軸線Oの延びる方向(以下、単に「軸線方向」と称する)における第一砥石層15の第一縁部15aから第二縁部15bに至るように形成されている。言い換えれば溝部20は、軸線Oに直交する仮想平面Kに対して傾斜角度θ1で交差するように傾斜して形成されている。さらに言い換えれば、溝部20は、軸線Oを中心とした周方向に対して交差する方向に延びている。これら溝部20は、それぞれ同一形状とされ、軸線Oを中心とした周方向(以下、単に「周方向」と称する場合もある)に所定の間隔G1をあけて形成されている。これら溝部20は、第一砥石層15を径方向に貫通するように形成されている。
この第一実施形態における溝部21は、第一砥石層15の溝部20と同一の幅W1を有している。さらに、この第一実施形態における溝部21は、上述した仮想平面Kに対して、溝部20と面対称になるように傾斜角度θ2で傾斜している。つまり、傾斜角度θ2と傾斜角度θ1との合計が180度となる。これら溝部21は、第二砥石層16を径方向に貫通するように形成されている。
図6は、この発明の第一実施形態における積層造形装置の概略構成図である。
図6に示すように、積層造形装置60は、スピンドル51と、材料供給部52と、膜厚調整部53と、ビーム照射部54と、を備えている。
図7は、この発明の第一実施形態における研削砥石の製造方法のフローチャートである。
この第一実施形態における研削砥石の製造方法においては、まず準備工程として、スピンドル51に台金部10を固定する。
次に、この発明の第二実施形態を図面に基づき説明する。この第二実施形態の研削砥石は、上述した第一実施形態と、被削材と接触する使用面が研削砥石の側面である点でのみ異なる。そのため、同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
図8は、この発明の第二実施形態における研削砥石の斜視図である。図9は、この発明の第二実施形態における第一砥石層を軸線方向の第一側から見た平面図である。図10は、この発明の第二実施形態における第二砥石層を軸線方向の第一側から見た平面図である。図11は、この発明の第二実施形態における第三砥石層を軸線方向の第一側から見た平面図である。
図12は、この発明の第二実施形態の変形例における研削砥石の軸線に沿う断面図である。
上述した第二実施形態においては、使用面250が軸線に対して垂直に形成される場合を例示した。しかし、使用面250は、軸線Oに対して垂直なものに限られない。例えば、図12に示す使用面250Aのように、被削材hの傾斜に応じて軸線Oに垂直な面Mに対して傾斜していてもよい。この場合、上述した第一砥石層215、第二砥石層216、第三砥石層217は、それぞれ使用面250と交差する方向に積層すればよい。
次に、この発明の第三実施形態を図面に基づき説明する。
この第三実施形態の研削砥石は、冷却効果を得るために貫通孔を備えている。
図13は、この発明の第三実施形態における研削砥石の斜視図である。図14は、この発明の第三実施形態における研削砥石の断面図である。
台金部310は、被削材を研削する研削装置(図示せず)の回転軸(図示せず)と共に回転する円盤状に形成されている。この第三実施形態における台金部310は、第一実施形態の台金部10と同様に金属製であり、その中心軸が研削装置の回転軸の軸線の延長線上に配置されるようにして回転軸に取り付け可能とされている。台金部10は、その外周面に、砥石部311が固定される砥石固定部312を有している。
図15に示すように、この第三実施形態における研削砥石300は、まず、台金部310の外周面310aに、所定の厚さで砥石部311を形成する(ステップS11)。この際、上述した第一実施形態の積層造形装置を用いても良い。
また、レーザによって貫通孔h1,h2を形成することで、意図した場所に貫通孔を容易に形成できる。そのため、例えば、砥石部311を均一に冷却可能なように貫通孔h1,h2を配置することもできる。
次に、この発明の第四実施形態を図面に基づき説明する。この第四実施形態の研削砥石は、上述した第一実施形態の砥石部11と、第三実施形態の貫通孔h1とを組み合わせたものである。そのため、この第四実施形態の説明において上述した各実施形態と重複する説明については省略する。
図16は、この発明の第四実施形態における研削砥石の斜視図である。
図16に示すように、この第四実施形態における研削砥石400は、台金部410と、砥石部411と、を備えている。
台金部410は、第一実施形態の台金部10及び第三実施形態の台金部310と同様の構成である。
まず、第一実施形態と同様の方法により、台金部410に対して第一砥石層415、第二砥石層416、及び第三砥石層417を積層造形装置により形成する。
次いで、レーザ加工により、砥石部411の外周面411aから冷媒空間Sに至る複数の直線状の貫通孔h1を形成する。これらにより第四実施形態における研削砥石400が完成する。
そのため、単一の砥石層に深い溝を形成する場合や、複数の砥石層に渡る深い溝を形成する場合等と比較して、複数積層された砥石部411全体の剛性を向上することができる。
この発明は上述した各実施形態及び変形例の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した第一実施形態では、砥石部が三つの砥石層である第一砥石層15、第二砥石層16、及び第三砥石層17を有する場合について説明した。しかし、砥石層の数は、三つに限られない。例えば、二つの砥石層(上述した第一砥石層、第二砥石層のみ)を設けたり、四つ以上の砥石層を設けたりしても良い(第二、第四実施形態も同様)。
さらに、第一、第二実施形態においては、冷媒空間Sから溝部20,21,22を介して冷媒を流すことが可能な場合について説明した。しかし、冷媒空間Sは必要に応じて設ければ良く、第一、第二実施形態の研削砥石100,200においては省略するようにしても良い。
11,211,311,411 砥石部
11a 外周面
12,212,312,412 砥石固定部
15,215,415 第一砥石層
15a 第一縁部
15b 第二縁部
15c 外周面
16,216,416 第二砥石層
16a 外周面
17,217,417 第三砥石層
20、220,420 溝部
21,221,421 溝部
22,222、422 溝部
60 積層造形装置
50,250,250A,450 使用面
51 スピンドル
52 材料供給部
53 膜厚調整部
54 ビーム照射部
55 貯留タンク
56 開口部
57 成形材料
58 調整ブレード
58a 下端部
59 ビームノズル
100,200,300,400 研削砥石
211a 側面
215a 内縁部
215b 外縁部
215c 側面
216a 側面
310a 外周面
311a 外周面
311b 側面
411a 外周面
Ac 中心軸
h 被削材
H 法線
h1 貫通孔
h2 貫通孔
K 仮想平面
M 面
O 軸線
S 冷媒空間
Claims (7)
- 軸線を中心にして回転可能な円筒状をなし、被削材に接触する使用面が、前記軸線を中心とした径方向で外側を向く外周面となる研削砥石であって、
前記軸線を中心とした径方向に積層された円筒状の複数の砥石層を備え、
前記砥石層は、前記径方向で隣り合う前記砥石層と異なる方向に延びる複数の溝部をそれぞれ備え、
前記砥石層よりも前記径方向の内側に冷媒を収容可能な冷媒空間を備え、
前記溝部は、前記径方向の外側から見て、前記軸線に直交する仮想面及び前記軸線に対して傾斜して形成されるとともに、前記砥石層の前記軸線方向における第一縁部から第二縁部に至るように形成され、
前記径方向で隣り合う前記砥石層の溝部同士は、前記径方向の外側から見て、互いに交差する部分で前記径方向に連通しており、
前記径方向の最も内側に配置された前記砥石層の溝部は、前記冷媒空間に連通している研削砥石。 - 軸線を中心にして回転可能な円盤状をなし、被削材に接触する使用面が前記軸線方向の外側を向く側面となる研削砥石であって、
前記軸線方向に積層された複数の砥石層を備え、
前記砥石層は、前記軸線方向で隣り合う前記砥石層と異なる方向に延びる複数の溝部をそれぞれ備え、
前記砥石層よりも前記軸線方向の内側に冷媒を収容可能な冷媒空間を備え、
前記軸線方向から見て、前記溝部は、前記円盤状の外縁部の法線に対して傾斜して形成されるとともに、前記砥石層の前記軸線を中心とした径方向の内縁部から外縁部に至るように形成され、
前記軸線方向で隣り合う前記砥石層の溝部同士は、前記軸線方向から見て、互いに交差する部分で前記軸線方向に連通しており、
前記軸線方向の最も内側に配置された前記砥石層の溝部は、前記冷媒空間に連通している研削砥石。 - 前記砥石層は、
前記冷媒空間と前記使用面よりも外側の空間とを連通する直線状の貫通孔を備える請求項1又は2に記載の研削砥石。 - 軸線を中心に回転する円筒状をなし、被削材に接触する使用面が、前記軸線を中心とした径方向で外側を向く外周面となる研削砥石の製造方法であって、
前記径方向の外側から見て前記軸線に直交する仮想平面及び前記軸線に対して傾斜して前記軸線方向における第一縁部から該第一縁部とは反対側の第二縁部に至る第一溝部を複数有した第一砥石層を形成する工程と、
前記径方向の外側から見て前記仮想平面及び前記軸線に対して傾斜し且つ前記第一溝部と交差する方向に延びる第二溝部を複数有した第二砥石層を前記第一砥石層に積層する工程と、を含む研削砥石の製造方法。 - 前記第一砥石層よりも前記径方向の内側に形成されて冷媒を収容可能な冷媒空間と、被削材に接触する使用面よりも外側の空間と、を連通する直線状の貫通孔をレーザにより形成する工程を更に含む請求項4に記載の研削砥石の製造方法。
- 軸線を中心に回転する円盤状をなし、被削材に接触する使用面が、前記軸線方向の外側を向く側面となる研削砥石の製造方法であって、
前記軸線方向から見て前記円盤状の外縁部の法線に対して傾斜して前記軸線を中心とした径方向における内縁部から外縁部に至る第一溝部を複数有した第一砥石層を形成する工程と、
前記軸線方向から見て前記法線に対して傾斜し且つ前記第一溝部と交差する方向に延びる第二溝部を複数有した第二砥石層を前記第一砥石層に積層する工程と、を含む研削砥石の製造方法。 - 前記第一砥石層よりも前記軸線方向の内側に形成されて冷媒を収容可能な冷媒空間と、被削材に接触する使用面よりも外側の空間と、を連通する直線状の貫通孔をレーザにより形成する工程を更に含む請求項6に記載の研削砥石の製造方法。
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