以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、本実施形態では、予め光学設計が施された凸面を有するレンズブランク(セミフィニッシュレンズ)の反対側の面を切削研磨して製造される眼鏡レンズについて説明しているが、両面とも光学設計が施されていないレンズブランクの両面を切削研磨して製造される眼鏡レンズにも適用可能である。さらに、レンズブランクと固定治具の接着方法もアロイを使用した方法について説明しているが、アロイ以外の方法、例えば、接合材として紫外線硬化樹脂を用い、レンズ面と固定治具とブロッキングリングの間に形成された空間に紫外線硬化樹脂を充填し、紫外線を照射することにより接着させる方法でもよい。なお、図面においては、実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現することがある。
レンズブランクは一般的に外径がφ70〜85mm程度の円形形状で、かなりの厚みを有するレンズとして成形されたものである。レンズブランクを切削研磨する場合、φ70〜85mm程度の円形形状のまま加工される場合もあるが、より小さな円形形状もしくは楕円形状の中間レンズにカットされた後、切削研磨される場合がある。中間レンズの研磨を行う際、レンズの縁厚が薄くなりすぎると研磨パッドに傷をつけやすくなり、結果として研磨パッドの寿命が短くなってしまう。そこで、研磨パッドの負担を軽減するため、一定量のレンズの縁厚の確保が必要である。処方レンズがプラスレンズの場合、レンズブランクを直接研削研磨すると、φ70〜85mmの外径で一定量の縁厚を確保する必要があるため、最終的に眼鏡フレームに合わせて玉型加工されたレンズの中心厚および縁厚が厚くなってしまう。レンズブランクより小さな円形状、もしくは楕円形状の中間レンズを経ることにより、プラスレンズの厚みをより薄くできる効果がある。したがって、プラスレンズの厚みを薄くするという観点から、中間レンズの径はより小さくすることができる。
一方、アロイの径は、ブロッキングリングの内径に応じて設定される。ブロッキングリングは、予め内径が異なる複数のブロッキングリングが用意されており、この中から適宜選択して用いられる。ブロッキングリングは通常円形状であり、研削研磨の際に固定治具がレンズ面から脱落しないように大きめの内径のブロッキングリングが選択される。
ところで、中間レンズの形状は、フレーム形状およびアロイが充填される円形状を包括するものでなければならない。アロイが中間レンズ形状の外側にはみ出した部分があると、切削研磨時にアロイが加工されてしまい、アロイの再生ができなくなってしまう。従って、従来からの円形のブロッキングリングを使用した場合、中間レンズの形状を小さくするのに限界があり、最終的に玉型加工されたプラスレンズの中心厚、および縁厚が厚くなってしまうという問題がある。
そこで本実施形態では、フレーム形状レンズに対応したブロッキングリングとすることにより、中間レンズが大きくなることを抑制し、フレーム形状レンズの縁部が厚くなることを抑制することが可能なブロッキングリング、ブロッキングリングの製造方法、及び眼鏡レンズの製造方法を提供する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るブロッキングリングの一例を示す図である。図1(A)は平面図、図1(B)は図1(A)におけるA−A線に沿った断面図、図1(C)は斜視図である。
図1(A)〜(C)に示すように、ブロッキングリング100は、円形状のレンズブランクLBまたは楕円形状の中間レンズLB1を加工する際に、中間レンズLB1(またはレンズブランクLB)の一方のレンズ面L1と、加工用の固定治具111との間に接合材としてアロイを注入するために用いられる。なお、以下の説明において、レンズブランクLBは、セミフィニッシュレンズを含む意味で用いている。図1(A)〜(C)には、ブロッキングリング100との間で形状や寸法等を比較するため、ブロッキングリング100に対応する位置に固定治具111、フレーム形状レンズFL、レンズブランクLB、及び中間レンズLB1を一点鎖線で記載している。固定治具111は、いわゆるヤトイなどであり、円錐台形状の部材である。ここでは、固定治具111、フレーム形状レンズFL、及びレンズブランクLBの幾何中心(紙面垂直方向の中心軸)が一致するように配置された場合を一例として示しているが、フレーム形状レンズFLの幾何中心(フレームセンター)は装用者のフィッティング情報、およびフレーム形状情報により、必ずしもレンズブランクLBの幾何中心、あるいは光学中心とは一致しない。
また、レンズブランクLBの光学中心(OC)が幾何中心(GC)から数mm離れた位置に偏心して設計されることがある。このように、レンズブランクLBの幾何中心の位置と光学中心の位置とが異なる場合、固定治具111の幾何中心(中心軸)は、レンズブランクLBの幾何中心(GC)もしくは光学中心(OC)のいずれかと一致するように配置されるのが一般的である。図2は、レンズブランクLBの幾何中心から偏心して、固定治具111の幾何中心をレンズブランクLBの光学中心と一致するように配置する例を示す図である。図2に示すように、フレーム形状レンズFLの光学中心FOC(レンズブランクLBの光学中心(OC)と一致)は、小さいレンズブランク形状でもフレーム形状レンズFLが取れるように、レンズブランクLBの幾何中心GCから意図的に予め数mmズラした位置に設計されていることがある。例えば、図2(A)ではレンズブランクLBの幾何中心GCと光学中心OCとを一致させると、フレーム形状レンズFLが取り切れない箇所が生じている。このような場合、図2(B)に示すように、レンズブランクLBの光学中心OCを幾何中心GCから紙面左方に数mmズラして設計することにより、小さいレンズブランクでもフレーム形状レンズFLを取り切ることが可能となる。なお、このズラして設計したものを偏心レンズと呼ぶ場合がある。
また、固定治具111の幾何中心は、レンズブランクLBの光学中心OCと一致するように配置されることが一般的である。その理由は、加工機で目標とする中間レンズの中心厚にならない場合、アロイと中間レンズLB1の光学中心の位置でのレンズの高さで中心厚の補正量を算出するためである。また、レンズブランクLBの光学中心OCが通常PRP(プリズムリファレンスポイント)になるが、固定治具の幾何中心がレンズブランクLBの光学中心OC上にあるとプリズムを生成しやすくなるためである。
図3は、レンズブランクLBの設計例を示す図である。図3に示すように、レンズブランクLB自体の中心は幾何中心GCであるが、光学中心OCは幾何中心GCから紙面右方に2.5mm離れた位置に設計されている場合を一例として示している。この場合、フレーム形状レンズFLの光学中心FOCをレンズブランクLBの光学中心OCと一致するように重ねて、楕円状の中間レンズLB1を算出するが、楕円の中心はレンズブランクLBの幾何中心GCと同じ位置となる。
図1に戻り、フレーム形状レンズFLは、平面視で眼鏡フレームの形状とほぼ同一形状または近似する形状に形成されたレンズである。フレーム形状レンズFLは、例えばプラスチックやガラスなどによって形成される。図1(A)において、フレーム形状レンズFLの平面形状は、眼鏡フレームの形状に合わせて設定される。例えば、フレームトレーサーで眼鏡フレームの形状の二次元データを取得し、取得した二次元データをフレーム形状レンズFLの平面形状として設定する。なお、フレーム形状レンズFLの平面形状は、図示のような四角形状に近いトラック状であることに限定されず、円形や楕円形、ひし形などの他の平面形状であってもよい。なお、図1(A)には左眼用のフレーム形状レンズFLを示したが、右眼用のフレーム形状レンズについては、左眼用と左右対称的であるので、その説明を省略する。
また、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1は、眼鏡レンズであるフレーム形状レンズFLを形成するために用いられるレンズである。レンズブランクLBまたは中間レンズLB1は、切削研磨などによって、フレーム形状レンズFLへ成形される。レンズブランクLBまたは中間レンズLB1は、上記したフレーム形状レンズFLで述べたように、例えばプラスチックやガラスなどによって形成される。なお、以下の説明において、適宜、フレーム形状レンズFLへ成形される前のレンズブランクLBまたは中間レンズLB1を玉型加工前の眼鏡レンズ(丸玉レンズ)と称す。
図1(A)に示す中間レンズLB1は、平面視で楕円形に形成される。中間レンズLB1は、円形のレンズブランクLBに対して外周を切削加工した状態のものである。中間レンズLB1の楕円形状は、フレーム形状レンズFLの形状と、アロイ(ブロッキングリング100の内周面12)の形状とから算出される。なお、中間レンズは、セミフィニッシュレンズ(本実施形態のレンズブランクLBに相当する)に対して、研削、研磨加工処理されているが、表面処理加工される前の眼鏡レンズである。なお、中間レンズは、より薄いレンズを提供する等の目的で、研削工程において、楕円、その他の形状に加工される場合がある。従って、中間レンズは丸形状に限らず、楕円、その他の形状であってもよい。
図1(A)〜(C)に示すブロッキングリング100は、例えば平面視で環状に形成される。ブロッキングリング100は、幾何中心軸AX1を有し、平面視においてこの幾何中心軸AX1と中間レンズLB1またはレンズブランクLB(フレーム形状レンズFL)の幾何中心とが一致するように配置される。ただし、図2に示すように、固定治具111の幾何中心がレンズブランクLBの光学中心OCに配置される場合、ブロッキングリング100は幾何中心軸AX1からズレた光学中心OCに幾何中心軸AX1を一致させて配置される。ブロッキングリング100は、例えば樹脂材料を用いて形成される。ブロッキングリング100を構成する樹脂材料としては、例えばアロイの溶融温度(50℃〜70℃程度)では溶融しないような材料であり、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1、レンズ面L1に添付される保護フィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アロイ、固定治具111等に密着しない材料が挙げられる。このような樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ABS樹脂、PLA樹脂、特殊フィラメント(XT−コポリエステル、アンフォラ3Dフィラメント)等が挙げられる。
ブロッキングリング100は、樹脂材料以外を用いて形成されてもよい。例えば、ブロッキングリング100は、アルミまたは鉄等の金属や、木材、陶器、磁器などから形成されてもよい。また、ブロッキングリング100は、レンズ面と接触する部分に、剥離を容易にするための表面処理が施されてもよい。
ブロッキングリング100は、外周面11と、内周面12と、下面14と、レンズ当接面13とを備える。外周面11は、ブロッカ(ブロッキングリング内にアロイを充填するための装置であり、以下同様である。)に設置可能な形状に形成される。図1(A)に示す外周面11は、例えば、後述する内周面12と相似形状、あるいはフレーム形状レンズFLと相似形状に形成される。外周面11は、フレーム形状レンズFLよりも大きい寸法に形成されるが、フレーム形状レンズFLと同一の寸法、または小さい寸法に形成されてもよい。
内周面12は、フレーム形状レンズFLの外周に合わせた円形状又は非円形状に形成される。例えば、内周面12は、フレーム形状レンズFLの外周に基づいて円形の一部を変形した形状に形成される。図1に示すブロッキングリング100の内周面12は、例えばフレーム形状レンズFLの外周または外周面11の形状と相似形状に形成される。また、内周面12の形状は、相似形状であることに限定されず、例えば、フレーム形状レンズFLの外周から内側に所定寸法d1以上(例えば1mm〜20mm)をあけて設定されてもよい。また、内周面12は、フレーム形状レンズFLよりも小さい面積に形成される。また、内周面12は、フレーム形状レンズFLの外周と同一形状に形成されてもよい。
図1(A)に示すように、ブロッキングリング100の幾何中心軸AX1とフレーム形状レンズFLの光学中心とを一致させた場合に、内周面12は、フレーム形状レンズFLの内側に収まるように配置される。したがって、ブロッキングリング100は、外周面11と内周面12との間にフレーム形状レンズFLの外周が配置されるように形成されている。また、内周面12は、フレーム形状レンズFLの外周から内側に所定寸法d1以上あけて形成されるが、この所定寸法d1は一定であってもよく、また、フレーム形状レンズFLの外周位置に応じて変更してもよい。
図1(B)及び図1(C)に示すように、レンズ当接面13は、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1のレンズ面L1に当接する。レンズ当接面13は、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1のレンズ面L1の形状に対応した傾斜に形成される。例えば、レンズ当接面13は、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1のレンズ面L1に当接する際に、レンズ面L1との間に隙間が生じないように、レンズ面L1のうち当接部分の形状と同一の形状となるように傾斜あるいは湾曲している。レンズ当接面13は、内側から外側にかけて、幾何中心軸AX1の軸方向の位置が高くなるように傾斜している。したがって、ブロッキングリング100は、外周面11の方が内周面12よりも、幾何中心軸AX1の軸方向の高さが高くなっている。なお、レンズ当接面13は、傾斜していない形状(後述する下面14に平行)であってもよい。
下面14は、図1(B)に示すように、平面状に形成される。下面14は、上記したブロッカに載置する面であり、ブロッカの載置面の形状に応じて形成される。ブロッカの載置面が平面の場合は、図示のように下面14を平面上に形成するが、例えば、ブロッカの載置面が傾斜あるいは湾曲している場合、または突起等がある場合は、これらの形状に合わせて下面14が形成される。
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係るブロッキングリングの一例を示す図である。図4(A)は平面図、図4(B)は図4(A)におけるB−B線に沿った断面図、図4(C)は斜視図である。
図4(A)に示すブロッキングリング200は、第1実施形態と同様に平面視で環状に形成され、外周面21と、内周面22と、レンズ当接面23と、下面24と、を備える。外周面21は、平面視において円形に形成されている。内周面22は、平面視において、フレーム形状レンズFLと相似形状に形成される。内周面22は、フレーム形状レンズFLよりも小さい面積に形成される。図4(A)では、ブロッキングリング200の幾何中心軸AX2がフレーム形状レンズFLの幾何中心に一致する場合が示されている。このような場合に、内周面22は、フレーム形状レンズFLの内側に収まるように配置される。この場合、内周面22は、フレーム形状レンズFLの外周から内側に所定寸法d2以上あけて形成される。
図4において、内周面22の形状は、図1に示す内周面12と同一形状である。なお、図1に示す内周面12と異なる形状であってもよい。また、所定寸法d2は、図1に示す所定寸法d1と同一であるが、所定寸法d1と異なる寸法であってもよい。
図4(B)及び図4(C)に示すように、レンズ当接面23は、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1のレンズ面L1に当接される。レンズ当接面23は、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1のレンズ面L1の形状に対応して形成される。レンズ当接面23は、内側から外側にかけて、幾何中心軸AX2の軸方向の位置が高くなるように傾斜あるいは湾曲している。したがって、ブロッキングリング200は、外周面21の方が内周面22よりも、幾何中心軸AX2の軸方向の高さが高くなっている。
下面24は、第1実施形態と同様に平面状に形成される。また、下面24は、第1実施形態と同様に、ブロッカの載置面に対応して形成される。また、円形状の外周面21は、ブロッカにおいて規格化された載置用の円形凹部に嵌め込むことができる大きさに設定される。これにより、ブロッキングリング200は、既存のブロッカにおいてガタツキ等を防止された状態で設置することができる。また、外周面21の形状は、図示のものに限定されない、例えば、外周面21の下面24側が円形状に形成され、レンズ当接面23に向かうにしたがって内周面22の相似形状となるものでもよい。これにより、円形状の下面24でブロッカに確実に設置され、さらに、レンズ当接面23側は内周面22と相似形状のため、樹脂材料を削減することができる。
<第3実施形態>
図5(A)は、第3実施形態に係るブロッキングリングの一例を示す図である。図5(A)に示すブロッキングリング300は、外周面31と、内周面32と、レンズ当接面33と、下面34と、を備える。外周面31は、第2実施形態と同様に平面視において円形に形成されているが、これに限定されず、例えば、第1実施形態と同様に、フレーム形状レンズFLの外周と相似形状であってもよい。なお、レンズ当接面33及び下面34は、上記した第1及び第2実施形態と同様であるため説明を省略する。
内周面32は、平面視において、楕円形状に形成されている。内周面32の楕円形状は任意に設定可能であり、長軸の長さ及び短軸の長さはフレーム形状レンズFLの外周に合わせて任意に設定できる。また、内周面32は、フレーム形状レンズFLよりも小さい面積に形成される。図5(A)では、ブロッキングリング300の幾何中心軸AX3がフレーム形状レンズFLの幾何中心に一致する場合が示されている。このような場合に、内周面32は、フレーム形状レンズFLの内側に収まるように配置される。また、内周面32は、フレーム形状レンズFLの外周から内側に所定寸法d3以上あけて形成される。所定寸法d3は、フレーム形状レンズFLの外周位置によって異なった寸法となる。
<第4実施形態>
図5(B)は、第4実施形態に係るブロッキングリングの一例を示す図である。図5(B)に示すブロッキングリング400は、外周面41と、内周面42と、レンズ当接面43と、下面44と、を備える。外周面41は、第2実施形態と同様に、平面視において円形に形成されているが、これに限定されず、例えば、第1実施形態と同様に、フレーム形状レンズFLの外周と相似形状であってもよい。なお、レンズ当接面43及び下面44は、上記した第1から第3実施形態と同様であるため説明を省略する。
内周面42は、平面視において長円形状に形成されている。内周面42の長円形状は任意に設定可能であり、横方向の直線部分の長さや、両端の半円形状はフレーム形状レンズFLの外周に合わせて任意に設定できる。また、両端の半円形状は、半楕円形状であってもよい。内周面42は、フレーム形状レンズFLよりも小さい面積に形成される。図5(B)では、ブロッキングリング400の幾何中心軸AX4がフレーム形状レンズFLの幾何中心に一致する場合が示されている。このような場合に、内周面42は、フレーム形状レンズFLの内側に収まるように配置される。また、内周面42は、フレーム形状レンズFLの外周から内側に所定寸法d4以上あけて形成される。所定寸法d4は、フレーム形状レンズFLの外周位置によって異なった寸法となる。
<第5実施形態>
図6(A)は、第5実施形態に係るブロッキングリングの一例を示す図である。図6(A)に示すブロッキングリング500は、外周面51と、内周面52と、レンズ当接面53と、下面54と、を備える。外周面51は、第2実施形態と同様に、平面視において円形に形成されているが、これに限定されず、例えば、第1実施形態と同様に、フレーム形状レンズFLの外周と相似形状であってもよい。なお、レンズ当接面53及び下面54は、上記した第1から第4実施形態と同様であるため説明を省略する。
内周面52は、平面視において、矩形状(四角形状、長方形状)に形成されている。内周面52の矩形状は任意に設定可能であり、横方向の長さや、縦方向の長さはフレーム形状レンズFLの外周に合わせて任意に設定できる。また、内周面42の形状は台形状、平行四辺形状、ひし形であってもよく、3角形状あるいは5角形状以上の多角形状であってもよい。内周面52は、フレーム形状レンズFLよりも小さい面積に形成される。図6(A)では、ブロッキングリング500の幾何中心軸AX5がフレーム形状レンズFLの幾何中心に一致する場合が示されている。このような場合に、内周面52は、フレーム形状レンズFLの内側に収まるように配置される。また、内周面52は、フレーム形状レンズFLの外周から内側に所定寸法d5以上あけて形成される。所定寸法d5は、フレーム形状レンズFLの外周位置によって異なった寸法となる。
<第6実施形態>
図6(B)は、第6実施形態に係るブロッキングリングの一例を示す図である。図6(B)に示すブロッキングリング600は、外周面61と、内周面62と、レンズ当接面63と、下面64と、を備える。外周面61は、第2実施形態と同様に、平面視において円形に形成されているが、これに限定されず、例えば、第1実施形態と同様に、フレーム形状レンズFLの外周と相似形状であってもよい。なお、レンズ当接面63及び下面64は、上記した第1から第5実施形態と同様であるため説明を省略する。
内周面62は、平面視において、矩形状であって各角部が丸みを帯びた形状に形成されている。内周面62は、フレーム形状レンズFLの外周に合わせて設定され、矩形状の他に台形状、平行四辺形状、ひし形であってもよく、3角形状あるいは5角形状以上の多角形状であってもよい。また、各角部の半径は任意に設定可能である。内周面62は、フレーム形状レンズFLよりも小さい面積に形成される。図6(B)では、ブロッキングリング600の幾何中心軸AX6がフレーム形状レンズFLの幾何中心に一致する場合が示されている。このような場合に、内周面62は、フレーム形状レンズFLの内側に収まるように配置される。また、内周面62は、フレーム形状レンズFLの外周から内側に所定寸法d6以上あけて形成される。所定寸法d6は、フレーム形状レンズFLの外周位置によって異なった寸法となる。
<第7実施形態>
図7は、第7実施形態に係るブロッキングリングの一例を示す図である。図7に示すブロッキングリング700は、外周面71と、内周面72と、レンズ当接面73と、下面74と、を備える。レンズ当接面73は、上記した実施形態と同様にレンズブランクLBまたは中間レンズLB1のレンズ面L1に当接する。下面74は、同じく上記した実施形態と同様に平面状に形成される。
図7に示すブロッキングリング700は、レンズ当接面73の高さが異なるように形成される。図7では、左側のレンズ当接面73が右側より高くなるように形成される。レンズ当接面73は、水平面に対して角度θ傾いたレンズ面L1に対応した形状、例えばレンズ面L1に一致する曲面形状に形成される。従って、このレンズ当接面73にレンズブランクLBまたは中間レンズLB1を載置すると、水平面に対して角度θ傾いた状態でレンズブランクLBまたは中間レンズLB1が配置される。このようなブロッキングリング700を用いることにより、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1の光学中心軸に対して固定治具111(図14等参照)を傾けてレンズ面L1に固定することができる。これにより、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1のレンズ面を研磨する際に、従来、加工機(ジェネレータ)で生成していたプリズムを容易に再現することができる。
<第8実施形態>
図8は、第8実施形態に係るブロッキングリングの他の例を示す図である。図8(A)は平面図、図8(B)は図8(A)におけるC−C線に沿った断面図である。図8(A)及び(B)に示すブロッキングリング100Aは、例えば図1に示すブロッキングリング100とほぼ同一の外径形状を有している。ブロッキングリング100Aは、外周面11と、内周面12と、下面14と、レンズ当接面13とを備えており、これらに加えて、2つの貫通孔15を備えている。
貫通孔15は、それぞれ外周面11と内周面12とを貫通(連通)して形成されている。貫通孔15は、内周面12の内側にアロイを充填するための導入路として用いてもよく、また、内周面12の内側にアロイが充填される際、内周面12の内側の空気を外部に逃がすための排気路として用いてもよい。
貫通孔15は、ブロッキングリング100Aのうち、図8(A)の左右方向の両端部に配置されるが、これに限定するものではなく、例えば図8(A)の上下方向の両端部に設けられてもよいし、上下左右のいずれかに設けられてもよい。また、貫通孔15は、2つであることに限定されず、1つまたは3つ以上形成されてもよい。また、貫通孔15の形成位置は任意であり、貫通孔15を複数形成する場合に、互いに近づけて形成されてもよい。なお、貫通孔15の内径は任意に設定できる。なお、上記したブロッキングリング200〜700において、貫通孔15と同様の構成が設けられてもよい。
上記のように構成されたブロッキングリング100、ブロッキングリング200、ブロッキングリング300、ブロッキングリング400、ブロッキングリング500、ブロッキングリング600、ブロッキングリング700、ブロッキングリング100Aによれば、フレーム形状レンズに対応したブロッキングリングとするので、このブロッキングリングを用いることにより中間レンズが大きくなることを抑制することができ、フレーム形状レンズの縁部を薄くすることができる。
<ブロッキングリングの製造方法>
次に、上記のように構成されたブロッキングリング100〜700、100Aの製造方法を説明する。以下、ブロッキングリング100を例に挙げて説明するが、ブロッキングリング200〜700、100Aにおいても同様の説明が可能である。ブロッキングリング100の製造方法は、ブロッキングリング100の内周面12の形状をフレーム形状レンズFLの外周に合わせた円形状又は非円形状に設定することと、設定された形状となるように内周面12を形成することと、を含む。本実施形態では、ブロッキングリング100の内周面12の形状を含む三次元形状データを設定し、設定した三次元形状データに基づいて内周面12を含むブロッキングリング100を形成する、という手順を例に挙げて説明する。
まず、ブロッキングリング100の三次元形状データを設定する手順について説明する。図9、図10(A)及び(B)は、内周面12の形状を含めたブロッキングリング100の三次元形状データを設定する手順を示すフローチャートである。図9は、平面視における内周面12の形状を設定する場合の手順を示す。図10(A)は、平面視における外周面11の形状を設定する場合の手順を示す。図10(B)は、内周面12及び外周面11の三次元形状を設定する場合の手順を示す。以下説明するブロッキングリング100の三次元形状データを設定する手順は、例えばパーソナルコンピュータなどを用いて行うことが可能である。
図9に示すように、内周面12の形状を設定する場合、まず、ブロッキングリング100を当接させる対象となるレンズブランクLBのレンズ面を決定する(ステップS01)。ステップS01では、レンズブランクLBの2つのレンズ面のうち一方のレンズ面を決定する。
次に、平面視においてアロイの最小充填範囲を設定するか否かを判断する(ステップS02)。ステップS02では、例えばフレーム形状レンズFLの厚さ、形状、寸法や、固定治具111の寸法、形状等に応じて、最小限必要なアロイの充填範囲を設定するか否かを判断する。最小充填範囲を設定する場合(ステップS02のYES)、フレーム形状レンズFLのインデックス、カーブ、加入度等の情報に基づいて最小充填範囲を設定する(ステップS03)。最小充填範囲としては、例えば平面視で円形、楕円形等に設定できる。
最小充填範囲を設定しない場合(ステップS02のNO)、又はステップS03を行った後、顧客からフレーム形状が指定されているか否かを判断する(ステップS04)。指定されている場合(ステップS04のYES)、例えば、顧客から指定されたフレーム形状およびフィッティング情報等に基づいてレンズブランク表面上に設定されるフレームの位置および形状を決定し、そのフレーム形状レンズFLの外周から内側に所定寸法をあけて形成される範囲を充填範囲として設定する(ステップS05)。顧客からフレーム形状が指定されていない場合(ステップS04のNO)、顧客から指定された外径(丸玉レンズの指定外径)もしくは処方から予め設定されている標準外径(丸玉レンズの標準外径)に応じて充填範囲を設定する(ステップS06)。すなわち、顧客からの指定にはフレーム形状の情報を含める場合と、フレーム形状の情報を含めずにフレーム形状をカバーする丸玉レンズの外径を含める場合とがある。
ステップS06を行った後、中間レンズLB1の形状に基づいて充填範囲を設定するか否かを判断する(ステップS07)。設定すると判断した場合(ステップS07のYES)、例えば、平面視において中間レンズLB1の外周から内側に所定寸法をあけて形成される範囲を充填範囲として設定する(ステップS08)。なお、中間レンズLB1の形状は、例えば、フレーム形状に基づいて算出される。
中間レンズLB1の形状に基づいて充填範囲を設定しない場合(ステップS07のNO)、又はステップS08を行った後、設定された充填範囲に基づいて、平面視におけるブロッキングリングの内周面12の形状を設定する(ステップS09)。ステップS09では、例えば、ステップS03、ステップS05、ステップS06、及びステップS08で設定される充填範囲を重ね合わせた形状を、平面視における内周面12の形状として設定する。なお、ステップS03において最小充填範囲が設定されている場合、少なくともこの最小充填範囲が内周面12の形状に含まれるように設定する。
次に、図10(A)に示すように、外周面11の形状を設定する。この場合、まず、固定治具111を支持する支持台として、既存のブロッカを用いるか否かを判断する(ステップS11)。既存のブロッカを用いる場合(ステップS11のYES)、既存のブロッキングリングの外周形状として予め設定された形状を外周面11の形状として設定する(ステップS12)。
既存のブロッカを用いない場合(ステップS11のNO)、外周面11の形状として指定された形状があるか否かを判断する(ステップS13)。外周面11の形状は、例えばブロッカの種類等によって制限される場合がある。このため、既存のブロッカを用いない場合、使用するブロッカによって外周面の形状が制限されるか否かを確認する必要がある。指定された形状がある場合(ステップS13のYES)、当該指定された形状を外周面11の形状として設定する(ステップS14)。
指定された形状がない場合(ステップS13のNO)、内周面12からの厚さに応じて外周面11の形状を設定する(ステップS15)。ステップS15では、例えば、平面視において内周面12から外側に所定の寸法(厚さ)を空けた形状を外周面11の形状として設定することができる。このように、外周面11の形状は、ステップS12、ステップS14又はステップS15によって設定される。
次に、図10(B)に示すように、ブロッキングリング100の三次元形状を設定する。まず、内周面12及び外周面11を所定の高さに設定し、その場合の三次元データ(X座標、Y座標、Z座標)を設定する(ステップS21)。ステップS21では、例えばX方向、Y方向及びZ方向のそれぞれについて0.1mm間隔で三次元データを設定する。
次に、レンズ当接面13に傾斜を設けるか否かを判断する(ステップS22)。傾斜を設ける場合(ステップS22のYES)、ステップS21で設定した三次元データを変更する(ステップS23)。ステップS23では、例えば、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1をレンズ当接面13に載置した際、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1が水平面に対して傾斜角度θとなるように、ステップS21で設定したレンズ当接面13の三次元データを変更する。
傾斜を設けない場合(ステップS22のNO)、又はステップS23を行った後、アロイを注入するための注入ノズルのスペースが必要か否かを判断する(ステップS24)。注入ノズルのスペースが必要の場合(ステップS24のYES)、注入ノズルが配置される部分に対応した箇所にスペースが形成されるように、ステップS21又はステップS23で設定された三次元データを変更する(ステップS25)。注入ノズルのスペースが不要の場合(ステップS24のNO)、又はステップS25を行った後、ブロッキングリング100の三次元形状データが完成する(ステップS26)。完成したブロッキングリング100の三次元形状データは、例えばパーソナルコンピュータの記憶部や外部のメモリ等に記憶させておくことができる。
続いて、設定した三次元形状データに基づいて内周面12を含むブロッキングリング100を形成する手順について説明する。本実施形態では、3Dプリンタ等の三次元造形装置を用いてブロッキングリング100を形成する場合を例に挙げて説明する。図11(A)は、ブロッキングリング100を形成する手順を示すフローチャートである。
ブロッキングリング100を形成する場合、図11(A)に示すように、まず、上記のように完成した三次元形状データを三次元造形装置に入力する(ステップS31)。次に、ブロッキングリング100の形成に必要な素材を三次元造形装置に投入する(ステップS32)。続いて、三次元造形装置を作動させてブロッキングリング100を形成する(ステップS33)。ステップS33では、図11(B)に示すように、三次元造形装置のノズル101から液滴状の樹脂を所定の平面上に吐出し、当該樹脂に紫外線等を照射して硬化させることによりブロッキングリング100を形成する。
このような手順により、ブロッキングリング100が製造される。なお、三次元造形装置としては、例えば熱溶解積層型、インクジェット型、光硬化型等、いずれのタイプの装置が用いられてもよい。三次元造形装置を用いることにより、寸法、形状等の誤差が少ないブロッキングリング100を短時間で作製可能である。なお、ブロッキングリング100は、上記した三次元造形装置を用いることに限定されない。例えば、樹脂や金属の塊から上記した三次元形状データに基づいて切削することによりブロッキングリング100を形成してもよい。
<眼鏡レンズの製造方法>
次に、眼鏡レンズの製造方法について説明する。図12は、本実施形態に係る眼鏡レンズの製造方法を示すフローチャートである。図12に示すように、本実施形態に係る眼鏡レンズの製造方法は、レンズブランクLBを製造することと(ステップS41)、ブロッキングリング100を製造することと(ステップS42)、レンズブランクLBのレンズ面L1と固定治具111との間にブロッキングリング100を配置することと(ステップS43)、ブロッキングリング100の内側にアロイを注入して固定治具111をレンズブランクLBに固定することと(ステップS44)、固定治具111を用いてレンズブランクLBを加工することと(ステップS45)、を含む。以下、各ステップについて順に説明する。
ステップS41では、例えばレンズブランクLBがプラスチックレンズである場合を例に説明する。図13(A)は、レンズブランクLBを製造する手順を示すフローチャートである。図13(A)に示すように、まず、レンズ材料を用意する(ステップS51)。ステップS51において、レンズ材料は、例えば紫外線硬化型の樹脂を含んでいてもよいし、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の熱重合性樹脂を含んでいてもよい。また、レンズ材料は、触媒、紫外線吸収剤などを含んでいてもよい。レンズ材料は、調合して準備してもよいし、購入して準備してもよい。
レンズ材料を用意した後、レンズ母型を用意する(ステップS52)。図13(B)は、レンズ母型の断面図である。図13(B)に示すように、レンズ母型105は、例えば、化学強化処理されたガラスなどで形成される。レンズ母型105は、凹形状の面106aを有する第1部材106と、第1部材106の凹形状の面106aに対向して配置される面107aを有する第2部材107と、第1部材106と第2部材107との間の空間を外部から仕切る第3部材108と、を備える。
第1部材106は、いわゆる下型であり、レンズブランクLBのレンズ面L1の形状を定める部分である。第2部材107は、いわゆる上型であり、レンズブランクLBのレンズ面L2の形状を定める部分である。レンズ面L1、L2は、第1部材106の面106a、及び第2部材107の面107aによりそれぞれ形成される。
第3部材108は、いわゆるガスケットであり、第1部材106と第2部材107とのギャップを規定する。第3部材108は、レンズブランクLBの厚みを定める部分である。第3部材108は、互いに対向する第1部材106と第2部材107との間の空間を環状に囲むように設けられる。組み立てられたレンズ母型105の内部には、外部から仕切られた空間SP1が形成される。なお、第3部材108には、空間SP1に通じる注入口(図示略)が設けられている。
レンズ母型105を用意した後、レンズ母型105の内部にレンズ材料を注入する(ステップS53)。ステップS53において、レンズ材料は、例えば空間SP1に通じる注入口を介して空間SP1に充填される。レンズ母型105にレンズ材料を注入した後、レンズ材料を重合(硬化)させる(ステップS54)。ステップS54では、レンズ材料に応じて紫外線硬化あるいは熱硬化により、レンズ材料を硬化させる。ステップS54では、重合に伴う体積変動などに留意しながら、重合を完了させる。重合により固体化することによりレンズブランクLBが完成する。
レンズ材料を重合させた後、レンズブランクLBからレンズ母型105を離型する(ステップS55)。ステップS55においてレンズ母型105から分離されたレンズブランクLBには、重合時に生じた内部ひずみが残留していることがある。そのため、離型を行った後、レンズブランクLBをアニール処理することにより、内部ひずみを取り除く(ステップS56)。
ステップS56の後、レンズ面L1に保護フィルムFを貼り付けてもよい。なお、保護フィルムFとしては、レンズブランクLBのレンズ面L1を保護するもの、アロイなどの接着材との密着性を高めるもの、アロイなどの接着材を除去する際に剥離しやすくするものなどが用いられる。なお、上記したレンズブランクLBはレンズ面L1、L2が凸面となったものを示しているがこれに限定されず、例えば、レンズ面L2が平面または凹面となるものでもよい。
図12に戻り、ステップS42では、上述した手順によってブロッキングリング100を製造する。つまり、上記のステップS01〜ステップS09、ステップS11〜ステップS15、及びステップS21〜ステップS26の各手順により、ブロッキングリング100の三次元形状データを設定する。その後、ステップS31〜ステップS33の各手順により、ブロッキングリング100を形成する。これにより、ブロッキングリング100が製造される。
次に、図12のステップS43を説明する。図14(A)〜(D)は、ステップS43における手順を説明するための図である。まず、図14(A)に示すように、ブロッカ110は、孔部110aと、孔部110aを中心とした環状かつ凹状の載置部110bと、を備えている。次に、図14(B)に示すように、孔部110aに固定治具111が配置される。次に、図14(C)に示すように、載置部110bに、ステップS42で製造したブロッキングリング100が配置される。ブロッキングリング100は、外周面11が載置部110bの内壁に接触することで、ブロッカ110に対して位置決めされる。
次に、図14(D)に示すように、レンズブランクLBを配置する。レンズブランクLBは、レンズ面L1が固定治具111側に向くように配置される。レンズブランクLBは、レンズ面L1の保護フィルムFがブロッキングリング100のレンズ当接面13に接触した状態で載置される。レンズ当接面13がレンズ面L1に対応した形状に形成されているため、レンズ面L1と保護フィルムFとの間に隙間の形成が抑制される。レンズブランクLBが配置されると、レンズブランクLBの保護フィルムFと固定治具111との間の空間SP2が外部から仕切られた状態になる。
次に、図12のステップS44を説明する。図15(A)は、ステップS44の手順を説明するための図である。ステップS44では、図15(A)に示すように、レンズブランクLBを配置することで形成された空間SP2に、加熱して液状となったアロイ(低融点合金)ADを充填する。アロイADの充填後、冷却することによりアロイADの温度が融点未満になって硬化すると、レンズブランクLBと固定治具111とが固体化したアロイADを介して固定される。その後、レンズブランクLBをブロッカから取り出すことにより、ブロッキングリング100がレンズブランクLBから外れ、固定治具111を備えたレンズブランクLBとなる。
本実施形態では、ブロッキングリング100の内周面12がフレーム形状レンズFLの外周に合わせた形状であるため、アロイADの形状は、フレーム形状レンズFLの外周に合わせた形状となる。また、平面視におけるアロイADの外周は、フレーム形状レンズFLの外周部分から内側に所定寸法あけた範囲に配置される。
次に、図12のステップS45を説明する。図15(B)は、レンズブランクLBのレンズ面L2を切削加工する状態を示す図である。ステップS45では、図15(B)に示すように、レンズ面L2を加工する場合、レンズ面L1は、固定治具111及びアロイADを含む支持具115に固定される。加工装置116は、加工工具117および回転機構118を備える。加工工具117は、レンズブランクLBのレンズ面L2の切削加工を行うものや、レンズ面L2の研磨加工を行うものが用いられる。また、加工装置116は、円形のレンズブランクLBから楕円形状の中間レンズLB1を形成するための加工を行うものでもよい。
固定治具111の軸方向の一端は、アロイADを介してレンズブランクLBまたは中間レンズLB1のレンズ面L1と固定されている。また、固定治具111の軸方向の他端は、回転機構118に着脱可能に固定される。回転機構118は、所定の回転軸の周りに回転可能に設けられている。固定治具111は、その中心軸が回転機構118の回転軸と同軸になるように、回転機構118に取り付けられる。回転機構118は、不図示のモータなどの駆動源から供給される駆動力により回転する。
レンズブランクLBまたは中間レンズLB1は、回転機構118の回転により、支持具115を介して回転する。加工工具117は、回転しているレンズブランクLBまたは中間レンズLB1に対して切削加工(ジェネレーティング)を行う。この切削加工では、例えば、度数や累進焦点、非球面の状態などを調整しつつ切削する。
また、レンズブランクLBまたは中間レンズLB1は、研磨加工が施される際、切削加工時と同様に、加工工具117として研磨部材が用いられる。この研磨部材は、例えばスポンジ状に形成され、外部からの圧力によって変形可能に設けられる。研磨部材は、例えばレンズ面L2の全域を覆うように配置される。研磨部材がレンズ面L2に接触した状態で回転機構118によりレンズブランクLBまたは中間レンズLB1を回転させる。レンズブランクLBまたは中間レンズLB1は、研磨部材が押し付けられた状態で回転すると、研磨部材との摩擦により研磨される。切削加工及び研磨加工が終了した後、アロイAD及び保護フィルムFをレンズブランクLBまたは中間レンズLB1から取り外し、固定治具111をレンズブランクLBまたは中間レンズLB1から取り外す。
その後、丸玉レンズ(レンズブランクLBまたは中間レンズLB1)の表面処理が行われる。例えば、丸玉レンズにハードコート膜や反射防止膜等の各種薄膜が形成される。続いて、丸玉レンズの表面にレイアウトマーク等が形成される。
続いて、玉型加工のオーダーがあるものは丸玉レンズに玉型加工を行う。これにより、眼鏡フレームの形状に対応した眼鏡レンズ(玉型レンズ)が製造される。続いて、玉型加工のオーダーがあるものは眼鏡レンズ(玉型レンズ)のレイアウトマークが除去された後、最終出荷検査が行われ、完成品の眼鏡レンズ(玉型レンズ)が出荷される。また、玉型加工のオーダーがないものは、玉型加工を行わずに、レイアウトマークを印刷した後、最終出荷検査が行われ、丸玉でレイアウトマークが印刷された状態の眼鏡レンズ(丸玉レンズ)で出荷される。
以上のように、本実施形態によれば、ブロッキングリング100の内周面12がフレーム形状レンズFLの外周に合わせた形状であるため、アロイADの形状は、フレーム形状レンズFLの外周に合わせた形状となる。これにより中間レンズの楕円形状を小さくすることができ、フレーム形状レンズFLの縁部分を薄く作製することが可能となる。
<眼鏡レンズの製造方法の他の例>
次に、本実施形態に係る眼鏡レンズの製造方法の他の例について説明する。本実施形態では、ブロッキングリング100をブロッカ110において直接形成する点で、上記した実施形態とは異なっている。以下、上記した実施形態との相違点を中心に説明する。図16は、本実施形態に係る眼鏡レンズの製造方法の他の例を示すフローチャートである。図17(A)〜(C)及び図18(A)〜(C)は、それぞれ眼鏡レンズの製造工程を示す図である。
図16に示すように、本実施形態に係る眼鏡レンズの製造方法は、まず、レンズブランクを製造する(ステップS61)。ステップS61においては、上記した実施形態におけるステップS41と同様の手順でレンズブランクLBを製造する。
次に、図16に示すように、固定治具111をブロッカ130に設置する(ステップS62)。ステップS62では、図17(A)に示すように、孔部110a、載置部110b及び複数の支柱120が設けられたブロッカ130が用意される。孔部110a及び載置部110bは、図14に示すブロッカ110と同様である。支柱120は、載置部110bの外側において配置され、それぞれが昇降可能に設けられる。各支柱120の昇降は、不図示の駆動装置によって行ってもよく、または作業者による手作業によって行ってもよい。このブロッカ130において、上記したステップS62により、孔部110aに固定治具111が配置される。
次に、図16に示すように、ブロッカ130から支柱120を上昇させ、ブロッカ130から突出させる(ステップS63)。ステップS63では、図17(B)に示すように、支柱120の上端をブロッカ130の上方に突出させる。各支柱120の上端の高さは等しくなるように調整される。なお、レンズブランクLBを水平面に対して傾いて配置する場合には、レンズブランクLBが傾いた状態を保持するように各支柱120の上端の高さを調整することができる。
次に、図16に示すように、レンズブランクLBを支柱120上に載置する(ステップS64)。ステップS64では、図17(C)に示すように、レンズブランクLBのレンズ面L1(保護フィルムF)が支柱120に当接するように配置する。
次に、図16に示すように、ブロッカ130の所定位置(載置部110b)にブロッキングリング100を形成する(ステップS65)。ステップS65では、図18(A)に示すように、例えば三次元プリンタ等の三次元造形装置のノズル102を用いて、上記実施形態で説明したステップS31〜S33(図11(A)参照)と同一の手順により、載置部110b上にブロッキングリング100を形成する。ノズル102は、例えば支柱120に支持されたレンズブランクLBとブロッカ130との間に挿入される。なお、ステップS65において、支柱120の高さを、ノズル102を挿入可能な高さに調整してもよい。また、ノズル102で製造するブロッキングリング100の形状は、上記した実施形態と同様にして得られた三次元形状データに基づいて設定される。
ブロッカ130の載置部110bでブロッキングリング100を形成することにより、ブロッキングリング100を別の場所で作成することが不要となる。さらに、ブロッカ130との間で位置決めがなされた状態でブロッキングリング100を形成することができる。また、ステップS65において、図18(A)の点線で示すように、例えばレンズブランクLBの位置がずれないように、押さえ部材103によってレンズブランクLBのレンズ面L2を押さえるようにしてもよい。
なお、ステップS65は、支柱120上にレンズブランクLBが配置された状態でなくてもよい。つまり、ブロッカ130上にブロッキングリング100を形成した後、形成されたブロッキングリング100上にレンズブランクLBを載置するようにしてもよい。この場合、レンズブランクLBをブロッキングリング100の上方で支持しておく必要がないため、支柱120は不要であり、例えば、図14に示すブロッカ110等が用いられてもよい。
次に、図16に示すように、支柱120を下降させてブロッカ130内に収容し、レンズブランクLBをブロッキングリング100上に配置させる(ステップS66)。ステップS66では、図18(B)に示すように、レンズブランクLBがレンズ面L1の保護フィルムFがブロッキングリング100のレンズ当接面13に接触した状態で載置される。レンズ当接面13がレンズ面L1に対応した形状に形成されているため、レンズ面L1と保護フィルムFとの間に隙間の形成が抑制される。レンズブランクLBが配置されると、レンズブランクLBの保護フィルムFと固定治具111との間の空間SP2が外部から仕切られた状態になる。
なお、ステップS66において、ノズル102からレンズ当接面13に相当する樹脂を吐出した後、硬化させずに支柱120を下降させて、液状の樹脂をレンズ面L1に接触させてから紫外線等を照射して樹脂を硬化させてもよい。これにより、液状の樹脂がレンズ面L1に接触した状態で硬化するので、レンズ当接面13がレンズ面L1にならって形成され、レンズ面L1とブロッキングリング100との間がより一層密にシールされた状態にすることができる。
次に、図16に示すように、ブロッキングリング100の内側にアロイを注入して固定治具111をレンズブランクLBに固定する(ステップS67)。ステップS67では、上記した実施形態におけるステップS44(図12参照)と同様の手順により、図18(C)に示すように、アロイを介して固定治具111をレンズブランクLBに固定する。
次に、図16に示すように、固定治具111を用いてレンズブランクLBを加工する(ステップS68)。ブロッカ130からレンズブランクLBを取り出すとともに、ブロッキングリング100をレンズブランクLBから取り外した後、ステップS68を行う。ステップS68では、上記した実施形態におけるステップS45(図12参照)と同様の手順により、レンズブランクLBを加工することにより、眼鏡レンズが得られる。
以上のように、本実施形態によれば、上記した実施形態と同様に、ブロッキングリング100の内周面12がフレーム形状レンズFLの外周に合わせた形状であるため、フレーム形状レンズFLの縁部分を薄く作製することが可能となる。また、本実施形態によれば、ブロッカ130の載置部110bにブロッキングリング100を直接形成するため、ブロッキングリング100を別の場所で製造する必要がなく、さらにブロッカ130とブロッキングリング100との位置合わせが容易である。
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、ブロッキングリング100を製造する場所は任意であり、上記では一例としてブロッカ130の載置部110b上を示しているが、これに限定するものではない。例えば、レンズブランクLB上でブロッキングリングを製造してもよい。
図19は、ブロッキングリングの製造方法の他の例を示す図である。図19に示すように、レンズブランクLBのレンズ面L1を上方に向けた状態で、3Dプリンタ等の三次元造形装置のノズル104から液状の樹脂をレンズ面L1(保護フィルムF)上に吐出して硬化させ、ブロッキングリング100を製造してもよい。この場合、レンズ面L1(保護フィルムF)上にブロッキングリング100が形成される。これにより、ブロッキングリング100のレンズ当接面13がレンズ面L1に密着した状態で形成されるため、レンズ面L1に沿ったレンズ当接面13の形状を容易に形成することができる。
また、光硬化型のインクを用いる場合には、例えばレンズブランクLBのレンズ面L2側からインクを硬化させる光を照射することができる。これにより、効率的にブロッキングリング100を製造することができる。
また、上記した各実施形態において、ブロッキングリング100等の内周面12等を非円形状に形成しているが、これに限定されず、内周面を円形に形成してもよい。この場合、内周面の内径は、フレーム形状レンズFLに合わせて適宜設定される。このような内周面が円形のブロッキングリングを用いる場合であっても、フレーム形状レンズFLに合わせてアロイが充填されるため、アロイADの形状は、フレーム形状レンズFLの外周に合わせた形状となる。これにより中間レンズの楕円形状を小さくすることができ、フレーム形状レンズFLの縁部分を薄く作製することが可能となる。
また、ブロッキングリング100等を製造する際に、表面に指標が形成されるようにしてもよい。このような指標としては、例えばレンズブランクLBとの位置を合わせるためのアライメントマークや、製造工程を流れる際の管理上の刻印などが挙げられる。また、ブロッキングリング100等を3Dプリンタ等の三次元造形装置により製造する場合、樹脂に着色することにより、容易に指標を形成することができる。