JP6816550B2 - 曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高耐食性が要求される用途で、かつ、主に曲げ加工が施されて使用される部材や鋼管の素材に適した、引張強度780MPa以上の曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板に関するものである。
近年、環境問題に対する関心が一層高まっており、自動車用部材をはじめとして、種々の加工品において、高強度−薄肉化による軽量化が求められている。また、プレス加工、伸びフランジ加工など、様々な変形様式の加工が施される場合には、素材鋼板には、強度に加えて延性や高い穴広げ性等が要求される。そのため、高価な合金元素の添加に加え複雑な熱処理を組み合わせて、金属組織を緻密に制御した発明が多くなされている。これらの発明ではさらに、長寿命化や後めっき等の省略の点から高強度防錆鋼板が必要とされている場合も多い。
特許文献1〜3には、曲げ加工性に優れる高強度冷延鋼板、めっき鋼板およびその製造方法が開示されている。しかしながら、いずれも変態強化で高強度化を図るとともに残留オーステナイトを活用して高強度化と加工性の両立を図ったもので、Si、Mn等の高価な合金元素を多量に添加する必要があるため、製造コストが高くなる。また、変態強化では、硬質相と軟質相の大きな強度差に起因して、安定的に良好な曲げ性を確保するのは非常に困難である。特許文献4には、マルテンサイトや残留オーステナイトを利用せず、フェライト組織をベースに微細析出物および転位強化を活用した高比例源かつ曲げ加工性に優れる冷延鋼板を開示している。しかしながら、C含有量が高く曲げ加工性のレベルは、必ずしも十分ではないことがわかった。
一方、本発明者らは、マルテンサイトや残留オーステナイトを用いずにフェライトまたはベイナイト組織をベースとしてTi等の微細析出物を用いて析出強化するとともに、粗大な硬質第2相やセメンタイトの析出を抑制することで高強度化と局部延性の指標となる穴広げ性を向上させた熱延めっき鋼板を特許文献5に開示している。しかし、特許文献5では非常に良好な曲げ加工性が得られるものの、必ずしも十分な強度が得られない。
更に、この種のめっき鋼板では、めっき原板に高張力鋼を使用した場合、めっきラインで不可避的に鋼中に侵入する水素に起因して、いわゆる水素脆化を起こしやすく、用途によっては問題となる。一般的な溶融Zn系めっきラインでは、めっき原板である基材鋼板は、めっき浴の直前で、水素ガスを含む還元性雰囲気中での加熱処理を受ける。この加熱雰囲気中の水素が基材鋼板中に侵入し、水素脆化の原因となる。また、めっき前に行われる電解脱脂等の湿式工程でも水素の侵入が考えられ、めっき鋼板の水素脆化の要因となり得る。
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の水素脆化は、通常、980MPa級以上の高張力鋼をめっき原板に使用したときに問題となりやすいとされる。ところが780MPa級、あるいは更に590MPa級といった比較的低強度レベルの高張力鋼を使用しても、非常に厳しい加工を施すと脆性的破壊が生じることがある。発明者らの詳細な調査によれば、この種の脆性的破壊も、めっきラインで侵入した水素に起因する事象であることがわかってきた。従って、溶融Zn−Al−Mg系めっきを施した高強度鋼板の加工に対する信頼性レベルを向上させるためには、当該鋼板の水素脆化を抑止する技術の確立が望まれる。
鋼板の水素脆化対策の手法として、特許文献6には、鋼の化学組成および金属組織を適正化することにより、大気環境下の腐食反応で発生する水素が鋼板中に入ることを抑制する技術が開示されている。特許文献7には表面の孔食深さより深い位置におけるMnのミクロ偏析を低減させることにより、環境から侵入した水素に起因する水素脆化を抑制する技術が開示されている。これらの技術は鋼板を腐食環境で使用する際の水素侵入に対する対策であり、溶融めっきラインで既に侵入してしまった水素に対しては有効でない。
鋼材中に侵入した水素を、鋼材の外部へ放出させるための処理として、ベーキング処理が知られている。ベーキング処理は、水素が侵入した鋼材を200℃前後の温度で加熱することにより、鋼材中に侵入した水素を拡散させて鋼材表面から追い出す処理である。ただし、ベーキング処理では一般的に鋼材表面(めっき後の鋼材ではめっき層の表面)に酸化に起因する変色が生じやすい。水素を使用するような還元性雰囲気では鋼中の水素を除去することが困難であることから、ベーキング時の変色を完全に防止しようとすると真空炉での処理が必要となる。そのような処理はコスト増大を招くため、加工後の高強度部品に対する処理としては実用的な面もあるが、加工用素材としてのめっき鋼板に対しては採用し難い。とくに鋼板の場合は表面の変色むらが目立ちやすい。そのため、ベーキング処理によって意匠性に優れる鋼板素材を実現することは一般に容易でない。
一方、特許文献8には、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の後処理として、水蒸気雰囲気中で加熱することによりZnの黒色酸化物に起因する黒色皮膜を形成する技術が開示されている。しかし、高張力鋼をめっき原板に適用した例は示されていない。
特開2009−270126号公報 特開2013−117042号公報 特開2015−193897号公報 特開2015−147959号公報 国際公開第2015/093596号 特開平7−150241号公報 特開2012−172247号公報 特許第5097305号公報
本発明は、上述の問題に鑑み、780MPa以上の引張強度を有し、製造コストの過大な上昇を抑制しつつ強度と曲げ加工性を同時に向上させた、耐食性に優れる黒色表面被覆溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下の構成を有するめっき鋼板が上記課題を解決できることを見出した。
具体的に、本発明は、素材鋼板の表面にZn−Al−Mg系被覆層を有するめっき鋼板であって、素材鋼板が、質量%で、C:0.01〜0.08%、Si:0.8%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.2%、B:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、転位密度が1.8×1014/m〜5.7×1014/m以上である、ベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれかの単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とし、硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出しており、かつ拡散性水素濃度が0.30ppm以下であり、該Zn−Al−Mg系被覆層が、質量%で、Al:1.0〜22.0%、Mg:1.3〜10.0%、Si:0〜2.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Fe:2.0%以下、残部Znおよび不可避的不純物からなり、該Zn−Al−Mg系被覆層中にZnの黒色酸化物が分布し、かつ、その表面の明度Lが60以下である、引張強度が780〜1100MPaで、曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を提供する。
さらにTとCの関係において、下記(1)式で表されるTi/C当量比が0.4〜1.5に制御されていることを条件とする。
Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)・・・(1)
ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。
上記素材鋼板が、さらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下の1種以上を含有してもよい。
上記めっき鋼板は、Zn−Al−Mg系被覆層の表面上にさらに無機系皮膜又は有機系皮膜を有してもよい。
上記溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法は、例えば、上記組成を有する素材鋼板を、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続溶融めっきラインでの焼鈍、溶融Zn−Al−Mg系めっき及びベーキング処理を順次行うことを含む。
上記熱間圧延での巻取温度を500℃から650℃とする。上記冷間圧延での冷間圧延率を30%〜60%とする。
その後、素材鋼板は、連続溶融めっきラインで、焼鈍温度を550℃から750℃で加熱された後、溶融めっき浴に浸漬される。このときのめっき浴のめっきの組成は、質量%でAl:1.0〜22.0%、Mg:1.3〜10.0%、Si:0〜2.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Fe:2.0%以下、残部がZnおよび不可避的不純物からなる。
上記ベーキング処理では、めっきされた素材鋼板を、水蒸気雰囲気中で70〜250℃に加熱保持して、めっき層表面を水蒸気に接触させることにより、該素材鋼板中の拡散性水素濃度を0.30ppm以下に低減する。
本発明は、製造コストが抑えられ、十分な強度を有し、曲げ加工性に優れた溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板およびその製造方法を提供することができる。特に、本発明の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、先端R:0.5mm、135°曲げが可能であり、優れた加工性を有する。
ボス溶接試験材の形状を説明する斜視図である。 ボス溶接試験材を作製する手順を説明する断面図である。 本発明の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法の溶融めっき工程の一例を示した図である。
以下、本発明の成分、金属組織および製造方法について詳細に説明する。鋼組成及びめっき組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
<C:0.01〜0.08%>
Cは、Tiを含む炭化物を形成し、ベイニティックフェライトまたはフェライト組織中に微細析出し、高強度化に有効な元素である。C含有量が0.01%未満では780MPa以上の強度を得るのが困難であり、0.08%を越えて添加すると析出物の粗大化やセメンタイトの形成により、曲げ加工性が低下する。また、好ましくは、0.01〜0.06%、さらに好ましくは0.01〜0.04%である。
<Si:0.8%以下>
Siは、固溶強化に有効な元素である。しかし、過剰に添加すると、溶融めっきラインでの加熱時に鋼板表面に酸化物を形成し、めっき性を阻害するとともに製造コストの上昇を招くので、添加量の上限を0.8%とする。また、好ましくは、0.4%以下、さらに好ましくは0.2%以下である。
<Mn:0.5〜1.8%>
Mnは、高強度化に有効な元素である。0.5%未満では780MPa以上の強度を得るのが難しく、1.8%を超えて添加すると、偏析が生じやすくなり、曲げ加工性が低下する。また、製造コストの上昇を招く。したがって、添加量の上限を1.8%とする。また、好ましくは、1.0〜1.7%、さらに好ましくは、1.0〜1.5%である。
<P:0.05%以下>
Pは固溶強化に有効な元素であるが、0.05%を超えて添加すると、偏析が生じやすくなり、曲げ加工性が低下する。したがって、添加量の上限を0.05%とする。また、好ましくは、0.03%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。なお、Pの含有量は0を含まない。
<S:0.005%以下>
SはMnと硫化物を形成し曲げ加工性を始めとする局部延性を劣化させる。このため、Sは極力低減すべき元素であるが、0.005%までは許容できるので、含有量の上限を0.005%に限定する。また、好ましくは、0.003%以下、さらに好ましくは0.002%以下である。なお、Sは不可避不純物であり、その含有量は0を含まない。
<N:0.001〜0.005%>
Nは、鋼中に固溶Nとして残存するとBNを生成し、耐溶融金属脆化割れ性に有効なB量の減少につながる。検討の結果、N含有量は0.005%以下に制限されるが、通常は0.001%程度のNが存在していても問題ない。N含有量の範囲は、好ましくは、0.001〜0.004%である。
<Ti:0.02〜0.2%>
TiはCと結合して、微細なTiの炭化物として析出し、高強度化とセメンタイトの析出抑制に有効な元素である。また、TiはNとの親和性が高く、鋼中のNをTiNとして固定するため、Tiを添加することは耐溶融金属脆化割れ性を高めるB量を確保する上で極めて有効である。これらの作用を十分得るためには0.02%以上の添加が必要である。一方、0.2%を超えて添加してもその効果は飽和するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、0.02から0.20%の範囲に限定する。Ti含有量は好ましくは、0.05〜0.20%、さらに好ましくは、0.08〜0.20%である。
<B:0.0005〜0.010%>
Bは結晶粒界に偏析して原子間結合力を高め、溶融金属脆化割れの抑制に有効な元素である。また、Bは粒界に偏析して変態を抑制し、ベイニティックフェライト組織を通じた高強度化に有効な元素である。0.0005%未満ではこれらの効果が無く、0.01%を超えて添加してもその効果は飽和するとともに製造コストの上昇を招く。そのため、添加範囲を0.0005%から0.010%に限定する。
<Al:0.005〜0.1%以下>
Alは、製鋼時に脱酸材として添加される。その効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要である。一方、0.1%を超えて添加してもその効果は飽和するとともにかえって製造コストの上昇を招く。
<V:1.0%以下、Nb:0.1%以下の1種以上>
Nb、Vは加熱および熱延中のγ粒の粗大化を防止し、フェライト粒の微細化に有効である。また、Tiと同様にCを含む複合炭化物を形成し、強度上昇にも寄与する。このため必要に応じてこれらの元素の1種以上を含有することができる。
<Ti/C当量比:0.4〜1.5>
Ti/C当量比は、曲げ加工性を向上させるのに重要な値である。Ti/C当量比は、(1)式によって定義される。
Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)・・・(1)
ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。
Ti/C当量比が0.4未満では、硬質第2相やセメンタイト量が増加するため、曲げ加工性が低下する。一方、Ti/C当量比が1.5を超え手添加してもその効果が飽和するとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、0.4〜1.5の範囲に限定する。
<引張強度>
本発明では、建築用構造部材および自動車部品等に使用される高強度鋼板に関するものであり、780MPa以上の引張強度の鋼板を対象としている。しかしながら、引張強度が1100MPaを超えると135°曲げにて割れを生じる。したがって、引張強度の範囲は780〜1100MPaの範囲に規定する。
<金属組織>
本発明に関わる高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板のミクロ組織は、転位密度が1.8×1014/m〜5.7×1014/mであるベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれかの単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とするとともに、硬質第2相及びセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出していることとしている。以下、これらについて説明する。
転位密度が1.8×1014/m〜5.7×1014/mであるベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれかの単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とするとともに、硬質第2相及びセメンタイトの面積率が3%以下としたのは、780MPa以上の引張強度と良好な曲げ加工性を両立させるためである。
即ち硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下のフェライト及び/又はベイナイト組織とすることで、先端R:0.5mmの135°曲げで割れを生じない良好な曲げ加工性が得られ、転位密度を1.8×1014/m〜5.7×1014/mとすることで、780MPa以上の引張強度を確保可能となる。セメンタイトは曲げ加工の際にフェライト相またはベイナイト相との界面で微笑亀裂を生じ易く、曲げ割れの起点となるため曲げ加工性が大きく低下する。面積率で3%までは許容できるため、上限を3%以下とした。
なお、「主相」とは、本発明の鋼板の金属組織において、硬質第2相およびセメンタイトを除いた残りの相を意味する。
Tiを含む炭化物の平均粒径を20nm以下にしたのは、Tiを含む炭化物は熱間圧延時に析出し、その析出強化作用により強度が上昇する。また、曲げ加工性の向上には微細析出することが有効である。種々検討の結果、ベイニティックフェライト相及び/又はフェライト相中に分散している炭化物の平均粒子径が20nm以下であることが極めて有効で20nmを超えると良好な曲げ加工性が得られなくなる。なお、Tiを含む炭化物とは、Nb、V等の炭化物も含んでいる。
<Zn−Al−Mg系被覆層>
上記の化学組成を有する基材鋼板の表面には、Zn−Al−Mg系被覆層を有している必要がある。その被覆層は、溶融Zn−Al−Mg系めっきにより形成されためっき層中のZnの一部が黒色酸化物として分布する構造を有する。この黒色酸化物は後述のベーキング処理によって生成する。本明細書では、ベーキング処理によって生成した黒色酸化物を含んだ、溶融Zn−Al−Mg系めっき層に由来する被覆層を「Zn−Al−Mg系被覆層」と称する。
この被覆層は、溶融Zn−Al−Mg系めっき層中に存在していたZn相の一部が酸化された構造を有しているが、その化学組成は、金属元素の組成比で見ると、元の溶融Zn−Al−Mg系めっき層の組成をほぼ維持している。元の溶融Zn−Al−Mg系めっき層自体は、従来、高防錆性のZn系めっき鋼板に利用されているものが適用できる。すなわち、Zn−Al−Mg系被覆層の化学組成は、金属元素の組成比が質量%で、Al:1.0〜22.0%、Mg:1.3〜10.0%、Si:0〜2.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Fe:2.0%以下、残部Znおよび不可避的不純物と規定する。Znの一部が黒色酸化物に変化していても、上記組成範囲において優れた防錆効果が得られることが確認された。
この防錆効果を長期にわたって十分に得るために、Zn−Al−Mg系被覆層の平均厚さは3μm以上であることが好ましい。また、通常、Zn−Al−Mg系被覆層の平均厚さは100μm以下の範囲とすればよい。過剰に厚く形成することは不経済であり、また被覆層自体の加工性低下にもつながる。ここで、当該被覆層の平均厚さは、板厚方向に平行な断面の観察によって求めることができる。
Zn−Al−Mg系被覆層中のZnの黒色酸化物は、後述のベーキング処理時に、溶融Zn−Al−Mg系めっき層の表面が雰囲気ガスである水蒸気と接触することにより生成する。従って、Znの黒色酸化物はZn−Al−Mg系被覆層の上層部に比較的多く分布し、黒色調の表面外観を与える効果を呈する。種々検討の結果、Zn−Al−Mg系被覆層の表面の明度Lが60以下であるZnの黒色酸化物が形成されている場合に、ベーキング処理に伴う変色むらが目立ちにくい意匠性に優れた黒色外観を呈することがわかった。明度Lが40以下となるように調整すると、より深みのある黒色外観を呈する。Znの黒色酸化物に起因する黒色外観は、鋼中の拡散性水素濃度を0.30ppm以下に低減させるためのベーキング処理条件範囲内で実現できる。
<基材鋼板中の拡散性水素濃度>
水素脆化の要因となる基材鋼板中の水素濃度は、拡散性水素濃度を測定することによって評価することができる。拡散性水素濃度は、大気圧イオン化質量分析装置で、常温から300℃まで5℃/minの昇温速度で加熱した際に放出される水素量を測定することによって求めることができる。測定試料としては、Zn−Al−Mg系被覆層を研磨紙により除去した基材鋼板のみからなる試料を使用することができる。
通常、上記組成範囲の高張力鋼をめっき原板に用いて連続溶融めっきラインで製造した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の場合、ベーキング処理前の基材鋼板中の拡散性水素濃度は0.35ppm以上となる。発明者らの検討によれば、基材鋼板中の拡散性水素濃度をベーキング処理によって0.30ppm以下に低減すると、980MPa級以上の高張力鋼を基材鋼板とする溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板で問題となりやすい水素脆化の現象のみならず、780MPa級あるいは590MPa級の比較的強度レベルの低い高張力鋼を基材鋼板とする溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板でも非常に厳しい加工を施した際に顕在化し得る水素脆化の現象が、顕著に抑制されることがわかった。従って、本発明では基材鋼板中の拡散性水素濃度を0.30ppm以下に規定する。0.20ppm以下であることがより好ましい。
・製造方法
上記加工性に優れた高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、例えば成分調整された鋼材(連続鋳造スラブなど)に、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続溶融めっきラインでの焼鈍、溶融Zn−Al−Mg系めっき及びベーキング処理を順次行う工程により製造することができる。以下、その場合の製造条件を例示する。
上記の成分組成を満たす鋼スラブを1150〜1300℃の加熱温度で加熱し、850〜950℃の仕上温度で熱間圧延後、下記の巻取温度で巻き取る。以降、下記の巻取温度で熱延鋼帯を得る。さらに、この鋼帯を酸洗後、下記の条件で冷間圧延し、連続溶融めっきラインでめっき工程に付する。
<熱間圧延での巻取温度を500℃から650℃>
巻取温度が500℃未満では、Tiを含む炭化物の析出量が不十分となり強度が低下する。一方、巻取温度が650℃を超えるとTiを含む炭化物の粗大化が起こり、強度低下および曲げ加工性が低下する。
<冷間圧延率:30〜60%>
熱間圧延後は、連続酸洗ラインを通板して、表面のスケールを除去し、冷間圧延を施す。その際、冷間圧延の圧延率が30%未満では、連続溶融めっきラインでの焼鈍後の転位密度が1.8×1014/m未満となり、780MPa以上の引張強度が得られなくなる場合がある。一方、60%を越えると転位密度が5.7×1014/mを越えて延性の低下が大きくなり、曲げ加工性が劣化する場合がある。したがって、冷間圧延率は30%〜50%以下の範囲が好ましい。
<溶融めっき>
従来一般的な手法で溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を製造ればよい。大量生産現場における連続溶融めっきラインを使用することができる。具体的には、溶融めっき直前に施される表面還元処理を兼ねた熱処理は、水素と窒素の混合ガス中で550〜750℃に加熱することによって行う。加熱温度が550℃未満では鋼板表面が十分に還元せずめっき性が低下する。一方、焼鈍温度が750℃を超えると再結晶を生じて転位密度が1.8×1014/m未満となり、強度低下を招く。すなわち、本発明は再結晶焼鈍以下の温度で焼鈍を施して、高い転位密度を維持することを特徴とするものであり、母材の金属組織は、熱延終了後時点の組織を基本としている。
上記混合ガスに占める水素ガスの割合は25〜35体積%とすることが望ましい。材料温度が上記温度範囲にある時間は例えば20〜200秒の範囲で調整することが望ましい。このようにして水素と窒素の混合ガス中で基材鋼板を加熱すると、鋼中に水素が侵入する。その水素の鋼中濃度は、後述のベーキング処理によって大幅に低減することができる。基材鋼板の板厚は例えば0.8〜4.5mmである。この熱処理後は、大気に触れることなく、溶融めっき浴中へ浸漬させる。
本発明の溶融めっき方法の一例として、その概略を図3に示した。素材鋼板10は還元炉20で表面の酸化皮膜等が除去された後、スナウト30を経てめっき槽40に収容されている溶融めっき浴50に導入される。素材鋼板10は、溶融めっき浴50に浸漬されているシンクロール60を周回した後、溶融めっき浴から引き上げられる。
スナウト30は、還元炉20から送り出される素材鋼板10と大気との接触を防止する作用を呈し、素材鋼板10を取り囲む筒状で還元炉20と溶融めっき浴50との間に設けられている。そして、スナウト30の下端は、めっき浴50中に若干浸漬されている。スナウト30内には、還元性ガスが充満されている。
溶融めっき浴の組成は、質量%でAl:1.0〜22.0%、Mg:1.3〜10.0%、Si:0〜2.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Fe:2.0%以下、残部がZnおよび不可避的不純物とする。得られるめっき鋼板のめっき層組成は、ほぼめっき浴組成を反映したものとなる。めっき浴から引き上げられた鋼板は、ガスワイピング法などでめっき付着量を調整した後、常法により冷却される。めっき付着量は片面当たりのめっき層平均厚さで3〜100μmとすることが好ましい。
<ベーキング処理>
ベーキング処理は、鋼材中に侵入した水素を外部に放出させることによって、鋼中水素濃度を減少させるための加熱処理である。ここでは、水蒸気雰囲気中でベーキング処理を行う。具体的には、前記の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を、大気から遮蔽された空間内において、水蒸気雰囲気中で70〜250℃に加熱保持する。水蒸気雰囲気中における不純物ガス成分(水蒸気以外のガス成分)の含有量は5体積%以下とすることが望ましい。
溶融Zn−Al−Mg系めっき層を上記温度の水蒸気に接触させると、めっき層中のZnが優先的に酸化して黒色のZn酸化物が形成される。この黒変化を利用することによって、鋼板素材をベーキング処理する際に問題となる色むらが非常に目立ちにくくなり、意匠性の高い明度Lが60以下の黒色調の表面外観が得られる。水蒸気の分圧については、相対湿度(その温度における飽和水蒸気圧に対する、実際に雰囲気中に存在する水蒸気の分圧)が70〜100%となるように調整すればよい。相対湿度が70%を下回るとZnの黒色酸化物の生成速度が遅く、鋼中水素の放出が十分達成される時間では着色むらが生じやすい。
ベーキング処理の温度は、鋼中に存在する拡散性水素の放出に大きく影響する。種々検討の結果、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を上記水蒸気雰囲気中に保持する温度が70℃未満であると、基材鋼板中の拡散性水素濃度を0.30ppm以下にまで安定して低減することが難しくなる。また、明度Lが60以下の黒色外観も得られにくくなる。従ってベーキング処理温度は70℃以上とする。100℃以上とすることがより好ましい。一方、ベーキング処理温度が250℃を超えると黒色酸化物の形成速度が速くなり、均一性の高い黒色調に制御することが困難となる。従って、ベーキング処理温度は250℃以下とする。210℃以下とすることがより好ましい。
ベーキング処理の時間、すなわち、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を70〜250℃の範囲内に設定した所定温度に保持する時間は、結果的に基材鋼板中の拡散性水素濃度を0.30ppm以下、あるいは0.20ppm以下といった目標レベルに低減可能な時間に設定する。溶融めっき条件、ベーキング処理の雰囲気ガス条件、ベーキング処理温度に応じて、予め予備実験を行うことにより、適正処理時間を定めればよい。通常、1〜50時間の範囲で良好な結果が得られる処理時間を設定することができる。2〜36時間の範囲とすることがより好ましい。なお、明度Lが40以下の深みのある黒色外観を得たい場合は、あまり短時間では黒色化が不十分となるので、比較的入念に処理時間を確保することが望ましい。
ベーキング処理は、大気から遮断された炉内で行う。密閉性の高い容器を炉体に用いることが望ましい。炉内に溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を収容する際、めっき層表面が雰囲気ガスと接触するように配慮する。窒素置換や真空引きなどによって炉内の空気を排除し、その後、水蒸気を導入して、炉内雰囲気を水蒸気雰囲気とし、所定の温度まで昇温し、その温度で保持することによりベーキング処理を行う。ベーキング処理中も所定のガス組成が維持されるように炉内雰囲気を管理する。
<無機系皮膜の形成>
上記のベーキング処理によって改質されたZn−Al−Mg系被覆層の表面上に、無機系皮膜を形成させることができる。無機系皮膜としては溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板に従来から適用されている公知のものが種々適用可能である。なかでも、バルブメタルの酸化物、バルブメタルの酸素酸塩、バルブメタルの水酸化物、バルブメタルのリン酸塩およびバルブメタルのフッ化物からなる群から選ばれる1種類または2種類以上の化合物(以下「バルブメタル化合物」ともいう)を含むものが好適な対象として挙げられる。バルブメタルとしては、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、Si、Alなどが例示できる。上記バルブメタル化合物は、これらのバルブメタルの1種以上を含有するものを適用することが望ましい。無機系皮膜は、公知の方法で形成させることができる。例えば、バルブメタル化合物などを含有する無機系塗料を、Zn−Al−Mg系被覆層の表面上にロールコート法、スピンコート法、スプレー法などで塗布する方法が採用できる。
<有機系皮膜の形成>
上記のベーキング処理によって改質されたZn−Al−Mg系被覆層の表面上に、有機系皮膜を形成させることもできる。有機系樹脂皮膜も、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板に従来から適用されている公知のものが種々適用可能である。例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、またはこれらの樹脂の組み合わせ、あるいはこれらの樹脂の共重合体または変性物などを含有する皮膜が挙げられる。有機系皮膜も、公知の方法で形成させることができる。例えば、上記の樹脂成分を含有する有機系塗料を、Zn−Al−Mg系被覆層の表面上にロールコート法、スピンコート法、スプレー法などで塗布する方法が採用できる。
表1に組成を示す各鋼を溶製し、そのスラブを1250℃に加熱した後、仕上げ圧延温度880℃、巻取温度520〜680℃で熱間圧延し、板厚2.6mmの熱延鋼帯を得た。各熱延鋼帯の巻取温度は表2、3中にそれぞれ示してある。
Figure 0006816550
熱延鋼帯を酸洗して30%および50%の冷延率で冷間圧延を施した後、連続溶融めっきラインにて、水素30体積%−窒素70体積%である混合ガス中500〜790℃で焼鈍行い、約420℃まで平均冷却速度5℃/secで冷却して素材鋼板(めっき原板)とし、その後、鋼板表面が大気に触れない状態のまま下記のめっき浴組成を有する溶融Zn−Al−Mg系めっき浴中に浸漬した後引き上げ、ガスワイピング法にてめっき付着量を片面あたり約90g/mに調整した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を得た。めっき浴温は約410℃であった。各鋼の冷延率、焼鈍温度も、表2、3に併せて示してある。
各溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板について、ベーキング処理を施した。溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を加熱炉内に入れ、めっき層表面が雰囲気ガスに接触するように置いた。その後、炉内を密閉し、真空ポンプにて真空引き後、ガス導入管から水蒸気を導入し、相対湿度が100%となるように炉内圧力をコントロールしながら炉内温度を所定のベーキング処理温度まで昇温し、その温度で所定時間の保持を行ったのち降温し、炉内を大気に開放した。ベーキング処理中の雰囲気ガスは、水蒸気100体積%、相対湿度100%とした(各例共通)。
ベーキング処理後の鋼板からサンプルを採取し、引張試験、曲げ試験、耐用湯金属脆化試験、基材鋼板中の拡散性水素濃度、およびZn−Al−Mg系被覆層表面の明度Lの測定等など各種特性を調べ、表3に示した。比較のため、ベーキング処理前の各種特性調査結果を表2に示す。なお、ベーキング処理を施しても、素材のミクロ組織には変化は認められなかったため、表3へのミクロ組織の記載は省略した。
〔めっき浴組成(質量%)〕
Al:6.0%、Mg:3.0%、Ti:0.002%、B:0.0005%、Si:0.01%、Fe:0.1%、Zn:残部
〔Ti含有炭化物の平均粒子径〕
採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから作製した薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、Ti含有炭化物が30個以上含まれる一定の領域内の当該炭化物の粒子径(長径)を測定し、その平均値をTi含有炭化物の平均粒子径とした。
〔転位密度〕
採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから切出した試料の表層部から板厚の1/4まで機械研磨後、化学研磨を施して加工歪を除去し、X線解析により転位密度を計算により求めた。X線回折には、Co管球のKα1線を用い、<110>、<211>、<220>の3つの回折ピークの半価幅から局所歪ηを求め、次式を用いて転位密度を計算した。
ρ=14.4×η2/b2
ここで、ρが転位密度でbはバーガースベクトル(0.25nm)である。なお、転位密度の計算は、Modified Williamson−Hall/Warren−Averbach法を用いた。計算した転位密度は表2に併記する。
〔セメンタイトの面積率〕
硬質第2相およびセメンタイトの面積率は、採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから切出した試料を圧延方向断面に研磨し、ピクラール試薬にてエッチングしてSEM観察し、観察された組織から画像解析によって算出した。測定された硬質第2相及びセメンタイトの面積率を表2に併記する。
〔引張特性〕
試験片の長手方向が素材鋼板の圧延方向に対し直角になるように採取したJIS5号試験片を用い、JISZ2241に準拠して引張強さTS、全伸びT.Elを求めた。
〔曲げ加工性〕
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から圧延方向と直角方向に20×50mmのサンプルを採取し、これを135°曲げ試験に供した。即ち、採取したサンプルの長手方向の中央部で圧延方向が曲げの軸となるように先端R1.0mm、0.5mm、先端角度45°のV型パンチ、ダイスを用いて、20kNの押し付け力で曲げ加工を施し、曲げ加工部先端の外表面における割れの発生有無を○×で評価した。
〔溶融金属脆化割れ性の評価〕
溶融金属脆化特性は、次の手順により溶接試験を行って評価した。
溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から100mm×75mmのサンプルを切り出し、これを溶融金属脆化に起因する最大割れ深さを評価するための試験片とした。溶接試験は、図1に示す外観のボス溶接材を作成する「ボス溶接」を行い、その溶接部断面を観察して割れの発生状況を調べた。すなわち、試験片3の板面中央部に直径20mm×長さ25mmの棒鋼(JISに規定されるSS400材)からなるボス(突起)1を垂直に立て、このボス1を試験片3にアーク溶接にて接合した。溶接ワイヤーはYGW12を用い、溶接開始点から溶接ビード6がボスの周囲を1周し、溶接始点を過ぎた後もさらに少し溶接を進めて溶接開始点を過ぎて溶接ビードの重なり部分8ができたところで溶接を終了とした。溶接条件は、190A,23V,溶接速度0.3m/min、シールドガス:Ar−20vol.%CO、シールドガス流量:20L/minとした。
なお、溶接に際しては、図2に示すように、あらかじめ試験片3を拘束板4と接合しておいたものを用いた。接合体は、まず120mm×95mm×板厚4mmの拘束板4(JISに規定されるSS400材)を用意し、この板面中央部に試験片3を置き、その後、試験片3の全周を拘束板4に溶接したものである。上記のボス溶接材の作製は、この接合体(試験片3と拘束板4)を水平な実験台5の上にクランプ2にて固定し、この状態でボス溶接を行ったものである。
ボス溶接後、ボス1の中心軸を通り、かつ前記のビードの重なり合う部分8を通る切断面9で、ボス1/試験片3/拘束板4の接合体を切断し、その切断面9について顕微鏡観察を行い、試験片3に観察された割れの最大深さを測定し、これを最大母材割れ深さとした。この割れは溶融金属脆化割れに該当するものである。最大母材割れ深さが0.1mm以下を合格、0.1mmを超えるものを不合格として評価した。
〔拡散性水素濃度の測定〕
鋼板サンプル表層のZn−Al−Mg系被覆層を研磨紙で除去することによって、基材鋼板のみからなる試料を作製した。拡散性水素濃度の測定条件を以下に示す。
・試料加熱部:赤外線ゴールドイメージ炉(アルバック理工社製 RHL−E410P)
・分析計:APS−MS/大気圧イオン化質量分析装置(日本エイピーアイ社製 FLEX−MS400)
・分析試料:10mm×3mm寸法に切断したもの3枚を分析
・測定温度:常温〜300℃
・昇温速度:5℃/min
・測定雰囲気:Ar(1000mL/min)
〔明度L値の測定〕
分光型色差計(有限会社東京電色製;TC−1800)を用いて、JIS K5600に準拠した分光反射測定法で明度L値を測定した。測定条件を以下に示す。
・光学条件:d/8°法(ダブルビーム光学系)
・視野:2度視野
・測定方法:反射光測定
・標準光:C
・表色系:CIELAB
・測定波長:380〜780nm
・測定波長間隔:5nm
・分光器:回折格子 1200/mm
・照明:ハロゲンランプ(電圧12V、電力50W、定格寿命2000時間)
・測定面積:7.25mmφ
・検出素子:光電子増倍管(R928;浜松ホトニクス株式会社)
・反射率:0−150%
・測定温度:23℃
・標準板:白色
Figure 0006816550
※ BF:ベイニティックフェライト F:フェライト P:パーライト
Figure 0006816550
表2において、No.1〜15は、転位密度が(1.8×1014/m〜5.7×1014/mで引張強度が780〜1100MPaであるとともに、先端曲げR1.0mmの135°曲げが可能な高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板である。一方、表3において、本発明範囲であるNo.1〜15は、適正な条件でベーキング処理が施されていれば、素材鋼板中の拡散性水素濃度および表面の明度は低く良好な値となるため、先端R0.5mmの135°曲げ加工も可能な良好な曲げ加工性を有する。
1 ボス
2 クランプ
3 試験片
4 拘束板
5 実験台
6 溶接ビード
7 試験片全周溶接部の溶接ビード
8 溶接ビードの重なり部分
9 切断面
10 素材鋼板
20 還元炉
30 スナウト
40 めっき槽
50 溶融めっき浴
60 シンクロール

Claims (8)

  1. 素材鋼板の表面にZn−Al−Mg系被覆層を有するめっき鋼板であって、
    素材鋼板が、質量%で、C:0.01〜0.08%、Si:0.8%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.2%、B:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、下記(1)式で表されるTi/C当量比が0.4〜1.5であり、転位密度が1.8×1014/m〜5.7×1014/mである、ベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれかの単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とし、硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出しており、かつ拡散性水素濃度が0.30ppm以下であり、
    該Zn−Al−Mg系被覆層が、質量%で、Al:1.0〜22.0%、Mg:1.3〜10.0%、Si:0〜2.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Fe:2.0%以下、残部Znおよび不可避的不純物からなり、該Zn−Al−Mg系被覆層中にZnの黒色酸化物が分布し、かつ、その表面の明度Lが60以下である、
    引張強度が780〜1100MPaで、曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。
    Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)・・・(1)
    ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 素材鋼板が、さらに、質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項1に記載の、引張強度が780〜1100MPaの曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。
  3. 前記Zn−Al−Mg系被覆層の表面上にさらに無機系皮膜を有する、請求項1または2に記載の引張強度が780〜1100MPaの曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。
  4. 前記Zn−Al−Mg系被覆層の表面上にさらに有機系皮膜を有する請求項1または2に記載の引張強度が780〜1100MPaの曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。
  5. 素材鋼板を、熱間圧延、酸洗、冷間圧延、連続溶融めっきラインでの焼鈍、溶融Zn−Al−Mg系めっき及びベーキング処理を順次行う、引張強度が780〜1100MPaで曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法であって、
    該素材鋼板が、質量で、C:0.01〜0.08%、Si:0.8%以下、Mn:0.5〜1.8%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.2%、B:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、下記(1)式で表されるTi/C当量比が0.4から1.5であり、
    該熱間圧延での巻取温度を500℃から650℃とし、該冷間圧延での冷間圧延率を30%〜60%とし、
    該素材鋼板は、連続溶融めっきラインで、焼鈍温度を550℃から750℃で加熱された後、溶融めっき浴に浸漬され、
    該溶融めっき浴のめっきの組成が、質量%でAl:1.0〜22.0%、Mg:1.3〜10.0%、Si:0〜2.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Fe:2.0%以下、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、
    該ベーキング処理では、めっきされた素材鋼板を、水蒸気雰囲気中で70〜250℃に加熱保持して、めっき層表面を水蒸気に接触させることにより、該素材鋼板中の拡散性水素濃度を0.30ppm以下に低減することを含
    溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、転位密度が1.8×10 14 /m 〜5.7×10 14 /m である、ベイニティックフェライト相もしくはフェライト相のいずれかの単相またはベイニティックフェライト相とフェライト相を含む相を主相とし、硬質第2相およびセメンタイトの面積率が3%以下であり、平均粒子径20nm以下のTiを含む炭化物が分散析出した金属組織を有する、
    引張強度が780〜1100MPaで曲げ加工性に優れた黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。
    Ti/C当量比=(Ti/48)/(C/12)・・・(1)
    ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。
  6. 素材鋼板が、さらに質量%で、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下の1種以上を含有する、請求項5に記載の引張強度が780〜1100MPaで曲げ加工性に優れる黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。
  7. 前記ベーキング工程において、基材鋼板中の拡散性水素濃度を0.20ppm以下に低減する、請求項5または6に記載の引張強度が780〜1100MPaで曲げ加工性に優れる黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。
  8. 前記ベーキング処理工程に供するめっき鋼板の基材鋼板中の拡散性水素濃度が0.35ppm以上である請求項5または6に記載の引張強度が780〜1100MPaで曲げ加工性に優れる黒色表面被覆高強度溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。
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