JP4932363B2 - 高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。特に本発明は、従来と比較して高い疲労耐久性を安定して得ることができる高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。
耐食性の良好なめっき鋼板として合金化溶融亜鉛めっき鋼板がある。この合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、鋼板を脱脂後、無酸化炉または直化炉にて予熱し、表面の清浄化および材質確保のために還元炉にて還元焼鈍を行い、溶融亜鉛浴に浸漬し、溶融亜鉛の付着量を制御した後、合金化を行うことによって製造される。この鋼板は、耐食性およびめっき密着性等に優れることから、自動車、建材用途等を中心として広く使用されている。
特に近年、自動車分野においては衝突時に乗員を保護するような機能の確保、及び燃費向上を目的とした軽量化を両立させるために、めっき鋼板の高強度化が必要とされてきている。しかしながら、高強度化は一般的に加工性の劣化を招くことから、加工性を維持しつつ高強度化を図る方法の確立が望まれてきた。
加工性を維持しつつ高強度化を図る方法としては、例えば特許文献1及び2に記載の方法がある。この方法は、鋼中に残留オーステナイトを分散させ、加工時に残留オーステナイトが応力及び加工誘起を起こすことを利用することで、高強度化及び高い加工性を同時に得るものである。特許文献1及び2に記載の鋼板は、C、Si、及びMnを基本的な合金元素としており、二相域で焼鈍後、300〜450℃程度の温度域で熱処理を行うことによりベイナイト変態を利用し、室温でも残留オーステナイトを得ている。しかしながら、300〜450℃での熱処理中にセメンタイト等の炭化物が出やすく、オーステナイトが分解してしまうことから、SiあるいはAlを添加する必要がある。
しかしながら、Si及びAlはFeより酸化しやすいため、上記した鋼板では表面にSiやAlを含有する酸化物が形成されやすい。これら酸化物は、溶融Znとの濡れ性が悪い。このため、Si又はAlを添加した鋼板では、不めっき部分が形成されやすいという問題がある。また上記した酸化物はZnとFeの合金化反応を遅延させる。このため、Si又はAlを添加した鋼板では、軟鋼板と比較して高温長時間の合金化処理が必要となり、生産性の低下を招くばかりではなく、高温長時間の処理によりオーステナイトがパーライトや炭化物を含むベイナイト組織へ分解してしまい、優れた加工性が得られない。
これらの課題を解決する方法として、特許文献3に記載の方法がある。この方法は溶融Zn中に適切な濃度のAlを添加することにより、鋼板と溶融Znの濡れ性を改善し、かつ合金化反応の促進を図るものである。
しかし、上記したいずれの技術においても、疲労耐久性を改善することは考慮されていない。疲労耐久性とは、引張最大強度に対して十分低い応力が繰り返し加えられた場合の変形特性であり、自動車、建機、建材など繰り返し応力を受ける構造部材にとっては必要不可欠な特性である。繰返し応力を受けると、応力の大きさが降伏応力未満であっても鋼板内部では微細な変形が生じ、これが積み重なることにより、鋼板は破断に至ってしまう。この破断は、表面に亀裂が形成され、この亀裂が内部に伝播することにより生じる。
このことから疲労耐久性を向上させるためには、疲労亀裂亀裂の形成抑制、あるいは、亀裂伝播を抑制することが重要となる。
組織強化は、軟質なフェライトを硬質なマルテンサイトや残留オーステナイトなどの硬質組織で強化することから、軟質なフェライト中を伝播する疲労亀裂の伝播を、硬質組織にて抑制することから、一定の硬質相分率までは疲労耐久性の向上にも寄与する。しかし疲労亀裂は軟質組織を伝播することから、硬質組織分率増加のみでは、疲労限は増加し難いという問題を有する。この結果、硬質組織の分率が一定以上になると、鋼板強度は増加するものの、疲労限は増加しなくなることから、高強度化と疲労耐久性の両立を図ることは困難であった。(例えば非特許文献1参照)。
一方、自動車や建機に使用される薄鋼板は、板厚が薄いことから、疲労亀裂が形成されると、すぐに板厚を貫通し、破断に至ってしまう場合がある。このことから、疲労亀裂形成の抑制が特に重要である。
また、自動車部材への適用を考えた場合、微小な亀裂であっても、車体の衝突時に、破壊の起点となる懸念があり、所定の衝突安全性が得られない懸念があることから、衝突特性向上のためにも重要と考えられる。
このため、表面の亀裂形成を抑制することが、疲労耐久性を向上させる上で特に重要になる。
疲労耐久性を向上させる一般的な技術としては、析出硬化を利用する方法がある(例えば特許文献4参照)。しかし、析出硬化を利用するためには、鋼板を析出物(例えばNbやTiの炭窒化物)が溶融する程度の高温に加熱した後冷却する必要があるため、熱延鋼板では適用できるが冷延鋼板へは適用し難い。
また、特許文献5には、硬質第二相中に軟質相(フェライト)を孤立分散させ、かつ硬質相の厚さを軟質相の粒径により定められる値より大きくすることにより、疲労特性を向上させる技術が記載されている。しかし、この技術は表面に形成された亀裂が内部に伝播することを抑制するものであり、表面の亀裂形成を抑制するものではない。このため、本技術では十分に鋼板の疲労耐久性を向上させることは難しい。
また、特許文献6には、めっき層/鋼板の界面における粒界酸化物深さを0.5μm以下にすることにより、疲労耐久性を向上させる技術が記載されている。疲労耐久性が向上するのは、粒界酸化物深さを小さくすることによりめっき層/鋼板界面への応力集中が抑制されるためと考えられる。
しかし、この技術によっても表面の亀裂形成を十分に抑制することは難しかった。
横幕俊典、外3名、日本金属学会第40期学術講演会前刷、1991年、p16 特開平05−70886号公報 特開平05−195143号公報 特開2003−105516号公報 特開2006−57120号公報 特開2005−194586号公報 特開2003−171752号公報
上記したように、鋼板の疲労耐久特性を向上させるためには、表面の亀裂形成を抑制する必要があるが、従来の技術では表面の亀裂形成を安定して抑制することは難しかった。本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、表面の亀裂形成を安定して抑制することにより、高い疲労耐久性を安定して得ることができる高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、
C:0.07〜0.25%、
Si:0.8〜2.0%、
Mn:1.1〜2.5%、
Al:0.001〜2.0%、
N:0.01%以下、
S:0.01%以下、
O:0.01%以下
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる高強度鋼板の上に、Feを含有する合金化溶融亜鉛めっき層を有する高強度合金化溶融亜鉛鋼板であって、
前記高強度鋼板は、残留オーステナイトの体積率が5%以上であり、かつベイナイトとマルテンサイトの体積率が合計で10%以上であり、
前記合金化溶融亜鉛めっき層及び前記高強度鋼板の界面において、GDSによるFe濃度が20〜90%となる領域の厚みが1.2μm以上であることを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(2)前記合金化溶融亜鉛めっき層または鋼板のいずれか一方、または、両方にFeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、及びMn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物が存在し、かつ前記めっき層または鋼板のいずれか一方、または、両方にSiO2が存在し、前記Si酸化物の濃度分布のピークが、前記SiO2の濃度分布のピークより前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面側に位置することを特徴とする(1)に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(3)前記高強度鋼板は、さらに質量%で
Ni:0.05〜2.0%、
Cu:0.05〜2.0%、
Cr:0.05〜2.0%、
Mo:0.05〜2.0%、
B:0.0001〜0.002%、
Ti:0.001〜0.1%、
Nb:0.001〜0.1%、
V:0.001〜0.1%、
REM:0.0001〜0.1%、
Ca:0.0001〜0.1%
の一種以上を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(4)前記合金化溶融亜鉛めっき層は、更にAlを含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(5)平行部が30mm、板厚2mm、曲率半径が100mmであるJIS Z 2275に規定の1号試験片に対してJIS Z 2275に準拠した疲労試験を行うことにより求められる2×10回時間強さを引張最大強度で除した値である疲労限度比が、0.55以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(6)引張最大強度(Ts)と伸び(EI)の積が21000(MPa・%)以上であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(7)質量%で、
C:0.07〜0.25%、
Si:0.8〜2.0%、
Mn:1.1〜2.5%、
Al:0.001〜2.0%、
N:0.001〜0.1%
S:0.0001〜0.1%、
O:0.0001〜0.1%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる高強度鋼板を還元帯に通すことにより還元し、その後めっき浴に浸漬して引き上げ、その後合金化処理を行うことにより、連続的に溶融亜鉛めっきを施す高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
前記還元帯の雰囲気として、H2を1〜60体積%含有し、残部がN2、H2O、O2、CO2、COの1種又は2種以上並びに不可避的不純物からなり、その雰囲気中の酸素分圧の対数logPO2
−0.000034T2+0.105T−0.2〔Si%〕2+2.1〔Si%〕−98.8≦logPO2≦−0.000038T2+0.107T−90.4…(1)
923≦T≦1173 ・・・(2)
T:鋼板の最高到達温度(K)、〔Si%〕:鋼板中のSi含有量(mass%)
に制御した雰囲気で還元を行い、
前記高強度鋼板を前記めっき浴に浸漬させる際に、前記めっき浴内の溶融亜鉛を、前記高強度鋼板の板幅方向に流動させることを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。

(8)前記めっき液の流動速度を0.5〜2.5m/秒にすることを特徴とする上記(7)に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(9)前記合金化処理を480℃以下の温度で行うことを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(10)前記高強度鋼板は、
鋳造スラブを加熱し、前記加熱された鋳造スラブをAr3変態点以上で熱間圧延した後、630℃以下の温度域において巻き取り、その後、酸洗後に圧下率40〜70%で冷間圧延することにより形成され、
前記高強度鋼板を還元する際に、
前記還元帯において750℃以上900℃以下で焼鈍処理し、その後650℃まで0.1〜200℃/秒で冷却し、その後650℃〜500℃の間の平均冷却速度が3〜200℃/秒となるように、(前記めっき液の温度−40)〜(前記めっき液の温度+50)℃まで冷却することを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれかに記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、表面の亀裂形成を安定して抑制することにより、高い疲労耐久性を安定して得ることができる。また、高強度及び高加工性も同時に得ることができる。
発明者らは、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板において疲労耐久性を向上させることを目的として鋭意検討を行った。その結果、フェライトからなる軟質相、並びに残留オーステナイト、マルテンサイト、及びベイナイトからなる硬質相の双方を含む鋼板においては、めっき層/鋼板の界面部分に形成される合金層の厚みを厚くすることにより、表面の亀裂形成を安定して抑制でき、その結果、鋼板の高強度及び高加工性を維持しつつ疲労耐久性を向上できることを見出した。ここで言う合金層とは、Fe濃度が20〜90%の領域を意味する。
この理由は、合金層(ビッカース硬度がHV300〜330程度)は鋼板の軟質相(ビッカース硬度がHV150〜200程度)と比較して高硬度であるため、合金層が存在することにより表面の亀裂形成が抑制されること、及び、一般に鋼板表面は凹凸が形成されているが、合金層の厚みをこの凹凸以上にすることにより亀裂形成を抑制できるためと考えられる。特に、軟質なフェライトと硬質なベイナイト組織、残留オーステナイト及びマルテンサイト組織(ビッカース硬度がHV300〜500程度)の硬度差は大きく、繰り返し変形を受けると両組織の界面に変形が集中し、疲労亀裂の形成の起点となる。しかし、鋼板表面に軟質層より硬質な合金層を付与することで、繰り返し変形時の軟質層の変形を抑制することが可能である。この結果、軟質組織と硬質組織の界面への応力集中を緩和することが可能となり、疲労耐久性が向上するものと考えられる。
具体的には、めっき層/鋼板の界面において、GDSによるFe濃度が20〜90%となる領域の厚みが1.2μm以上にすると、後述する成分系の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、疲労耐久性を向上させることができる。上限は特に定めることなく本発明の効果であるめっき性や優れた疲労耐久性は発揮されるが、厚みを10μm以上とすることは経済上好ましくないことからこれが実質的な上限である。
この効果は、硬質相の体積率が15%以上の高強度鋼板において、特に顕著になる。これは、硬質相の体積率が高いほど鋼板は高強度になる一方、疲労特性が劣化するためである。ここで言う硬質相とは、ベイナイト組織、マルテンサイト組織、パーライト組織のことである。ただし、本鋼では、セメンタイト等の炭化物形成を抑制のため、SiやAlを添加しており、ベイナイト組織中にセメンタイトが含まれない、あるいは、含まれたとしても極少量の場合があるが、これもベイナイト組織として分類した。
なお、硬質相は、例えば残留オーステナイトの体積率が5%以上であり、かつベイナイトとマルテンサイトの体積率が合計で10%以上とする。残留オーステナイトの体積率が多いほど強度と延性のバランスが良く、加工性に優れる。ただし、本発明は、めっき性、疲労耐久性及び加工性に優れた鋼板として、残留体積率5%以上としたが、加工性の向上を考慮しないのであれば、残留オーステナイトを含まないフェライト及びマルテンサイト鋼、フェライト及びベイナイト鋼へも、本法である合金層厚み制御による疲労耐久性向上は適用可能である。
なお、残留オーステナイトの体積率は、めっき層/鋼板の合金化温度が高いほど、残留オーステナイトの分解が促進されるため、少なくなる。合金化温度が高くなって残留オーステナイトの分解が進むと、疲労耐久性、強度及び延性が低下する。このため、本発明に係る鋼板の製造方法において、合金化温度は480℃以下であるのが好ましい。
また本発明者らは、めっき層形成前に行う高強度鋼板の焼鈍処理において、還元帯の酸素ポテンシャルを、焼鈍時の最高到達温度及び鋼板中のSi濃度によって定められる所定の範囲内に収めることにより、上記した合金層の厚みを厚くできること、また、めっき浴中の溶融Znに鋼板の板幅方向の流動を与えつつめっきを行うことにより、上記した合金層の厚みを厚くできることを見出した。
具体的には、還元帯の雰囲気として、H2を1〜60体積%含有し、残部N2、H2O、O2、CO2、COの1種又は2種以上並びに不可避的不純物からなり、その雰囲気中の酸素分圧の対数logPO2を下記(1)式に制御し、かつ鋼板の最高到達温度T(K)を下記式(2)に制御する。なお、本発明においては、対数は全て常用対数で示す。
−0.000034T2+0.105T−0.2〔Si%〕2+2.1〔Si%〕−98.8≦logPO2≦−0.000038T2+0.107T−90.4…(1)
923≦T≦1173 ・・・(2)
〔Si%〕:鋼板中のSi含有量(mass%)
酸素ポテンシャルの制御によって合金層の厚みを厚くできるのは、以下の理由による。すなわち鋼板中には、FeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物と、SiO2が存在する。logPO2が−0.000034T2+0.105T−0.2〔Si%〕2+2.1〔Si%〕−98.8未満では、鋼板内に含まれるSiが鋼板表面へと拡散し、鋼板表面にSiO2を形成する。SiO2は、溶融亜鉛との濡れ性が悪いことから不めっきの原因となる。このことから鋼板表面へのSiO2の形成は好ましくない。
一方、logPO2が−0.000034T2+0.105T−0.2〔Si%〕2+2.1〔Si%〕−98.8以上の場合は、SiやMnといったFeに比較し酸化し易い元素が鋼板表層に拡散することなく、鋼板内部で酸化物を形成する。特に、雰囲気を上記範囲に制御することで、SiO2の濃度分布のピークをSi酸化物の濃度分布のピークの内側に位置させることが可能となる。この結果、溶融亜鉛との濡れ性が特に悪いSiO2の鋼板表面への形成を抑制することが可能となる。この結果、めっき性が改善され、かつZnとFeが相互に拡散しやすくなって合金層が厚くなる。また、合金化を阻害するSi及びMnが酸化物として固定されるため、合金化が促進され、合金層が厚くなる。
また、変形時には、鋼板内部に形成させたSi酸化物やSiO2の周囲にも応力が集中し、この結果、表面への応力集中が緩和されて亀裂の発生が抑制可能である。特に、還元帯の雰囲気を上記範囲内に制御することで、SiO2をより鋼板内部に形成させることが可能である。このことから、SiO2の濃度ピークをSi酸化物の濃度ピークの内側にすることで、鋼板表面への応力集中が緩和でき、疲労耐久性向上の観点からはより効果的である。
ただし、当然のことながら、Si酸化物やSiO2が混在する領域が存在するが、SiO2の濃度分布のピークをSi酸化物の濃度分布のピークの内側に位置させることで、本発明の効果である優れためっき性と疲労耐久性の確保が可能となる。
また、条件によっては、SiO2の分率が非常に小さくなる場合があるが、本発明の条件の効果である優れためっき性や疲労耐久性は確保される。
また、logPO2を−0.000038T2+0.107T−90.4以下に限定する理由は、還元帯において鉄の酸化物を還元するためである。logPO2が−0.000038T2+0.107T−90.4を超えると鉄の酸化領域にはいるため、鋼板表面に鉄の酸化膜が生成し、ブルーイングとなる。
なお、還元帯の酸素ポテンシャルは、PH2O/PH2で管理される場合が多いが、上記したように本発明では酸素ポテンシャルを直接管理する。酸素ポテンシャルを管理するのは、以下の理由による。
FeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4は、SiO2よりも酸素ポテンシャルが高い領域で安定であるため、鋼板表面または表面側にFeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物の濃度ピークが存在し、鋼板内面側にSiO2の濃度ピークが存在する状態とするためには、還元帯の酸素ポテンシャルすなわち鋼板表面の酸素ポテンシャルをSiO2が単独で内部酸化する値より大きくする必要がある。
詳細には、鋼中の酸素ポテンシャルは鋼板表面から内部に向かって減少するため、鋼板表面または表面側にFeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物が生成するように鋼板表面の酸素ポテンシャルを制御すると、鋼板表面または表面側にFeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物が生成し、酸素ポテンシャルが減少した鋼板内面側にSiO2が生成する。
一方、雰囲気中のガスがH2、H2O、O2、残部N2の場合、下記平衡反応が起こると考えられ、PH2O/PH2はPO2の1/2乗と平衡定数1/Kに比例する。
O=H+1/2O:K=P(H)・P(O)1/2/P(HO)
ただし、平衡定数Kは温度に依存する変数であるため、温度が変化した場合、PH2O/PH2とPO2は別々に変化する。即ち、ある温度域でSiの内部酸化領域の酸素ポテンシャルにあたる水分圧と水素分圧の比の領域であっても、別の温度域では鉄が酸化する領域の酸素ポテンシャルに対応したり、Siの外部酸化領域の酸素ポテンシャルに対応したりするためである。
従って、PH2O/PH2を管理しても本発明で規定した酸化物を生成させることができず、本発明で規定した酸化物を所望の条件で生成させるためには、雰囲気中のPO2を直接管理する必要がある。
また、H2を1〜60体積%に限定する理由は、1%未満では鋼板表面に生成した酸化膜を十分還元できず、めっき濡れ性が確保できないためであり、60%を超えると、還元作用の向上が見られず、コストが増加するためである。
また、Tを923K以上に限定する理由は、Tが923K未満ではSiが外部酸化する酸素ポテンシャルが小さく、このため工業的に操業できる範囲の酸素ポテンシャルでは鉄の酸化域となるため、鋼板表面にSiO2が生成し塗装後耐食性を劣化させることがないためである。一方、Tを1173K以下に限定する理由は、1173Kを超える温度で焼鈍するのは多大のエネルギーを要して不経済であるためである。鋼板の機械特性を得る目的であれば、後に記すように最高到達板温は1153K以下で十分である。
また、炉内の雰囲気温度は高いほど鋼板の板温を上げ易くなるため有利であるが、雰囲気温度が高すぎると炉内の耐火物の寿命が短くなり、コストがかかるため1273K以下が望ましい。
本発明において、PO2はH2O、O2、CO2、COの1種または2種以上を導入することにより操作する。前述した平衡反応式において、温度が決まれば平衡定数が決定し、その平衡定数に基づいて酸素分圧、即ち酸素ポテンシャルが決定する。雰囲気温度773Kから1273Kにおいては、気体の反応は短時間で平衡状態に達するため、PO2は炉内のPH2、PH2O、PCO2、PCOと雰囲気温度が決まると決定する。
2とCOは意識的に導入する必要はないが、本焼鈍温度でH2を1体積%以上含有する炉内にH2O、CO2を導入した場合、その一部とHとの平衡反応により、O2、COが生成する。H2O、CO2は必要な量導入できればよく、その導入方法は特に限定しないが、例えば、COとH2を混合した気体を燃焼させ、発生したH2O、CO2を導入する方法や、CH4、C26、C38等の炭化水素の気体や、LNG等の炭化水素の混合物を燃焼させ、発生したH2O、CO2を導入する方法、ガソリンや軽油、重油等、液体の炭化水素の混合物を燃焼させ、発生したH2O、CO2を導入する方法、CH3OH、C25OH等のアルコール類やその混合物、各種の有機溶剤を燃焼させ、発生したH2O、CO2を導入する方法等が挙げられる。
COのみ燃焼させ、発生したCO2を導入する方法も考えられるが、本焼鈍温度、雰囲気の炉内にCO2を導入した場合、その一部がH2により還元され、COとH2Oが生成するため、H2O、CO2を導入した場合と本質的に差はない。
また、燃焼により発生したH2O、CO2を導入する方法以外にも、COとH2を混合した気体、CH4、C26、C38等の炭化水素の気体や、LNG等の炭化水素の混合物、ガソリンや軽油、重油等、液体の炭化水素の混合物、CH3OH、C25OH等のアルコール類やその混合物、各種の有機溶剤等を酸素と同時に焼鈍炉内に導入し、炉内で燃焼させてH2O、CO2を発生させる方法も使用できる。
こうした方法は、水蒸気を飽和させたN2や露点を上げたN2を利用して水蒸気を供給する方法に比べ、簡便で制御性が優れる。また、配管内で結露したりする心配もないため、配管の断熱を行う手間なども省くことができる。
本発明において、請求項に規定したPO2と温度における還元時間は特に規定しないが、望ましくは10秒以上30分以下である。還元炉内においてPO2を大きくすると、昇温過程において、logPO2が−0.000038T+0.107T−90.4を超える領域を通過した後、−0.000038T+0.107T−90.4以下の領域で還元されるため、最初に生成した鉄の酸化膜を還元し、目的とした鋼板表面または表面側にFeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物の濃度ピークが存在し、鋼板内面側にSiO2の濃度ピークが存在する鋼板を得るためには、10秒以上保持することが望ましい。ただし、30分を超える保持は、経済上好ましくない。
ただし、上記条件が満たされるのであれば、炉内雰囲気の全部を−0.000034T2+0.105T−0.2〔Si%〕2+2.1〔Si%〕−98.8≦logPO2の範囲とする必要はない。上記雰囲気とする目的は、SiO2やSi酸化物を鋼板内部に形成させることにある。形成したSiO2やSi酸化物は、還元帯の雰囲気では、還元され難いことから、SiやMn等のFeより酸化し易い元素を、一旦鋼板内部でSiO2やSi酸化物としてしまえば、鋼板表層にSiO2やSi酸化物を形成することがなくなる。このことから、炉内雰囲気の全部を上記範囲に制御する必要はない。同様に、鋼板表面に一旦SiO2やSi酸化物ができると還元し難いことから、加熱時の炉内雰囲気は上記範囲内とすることが重要である。
また、還元雰囲気のPO2と温度が本発明範囲内であれば、通常の無酸化炉方式の溶融めっき法やオールラジアントチューブ方式の焼鈍炉を使用した溶融めっき法を使用できる。特開昭55−122865号公報に記されたように予め鋼板表面に酸化膜を生成させた後、焼鈍及び前記鉄酸化膜の還元を行う方法も使用可能である。
鉄酸化膜を形成させる方法としては、例えば酸化帯において燃焼空気比を0.8〜1.2に制御し鉄酸化膜を形成させる方法や酸化帯の露点を273K以上に制御し鉄酸化膜を形成させる方法が使用できる。
燃焼空気比を0.8〜1.2の範囲に調節する理由は、Siの外部酸化を抑制するのに十分な鉄酸化膜を生成するために0.8以上の燃焼空気比が必要であり、0.8未満の場合は十分な鉄酸化膜を形成せしめることができないためである。又、燃焼空気比が1.2を超えると酸化帯内で形成される鉄酸化膜厚が厚すぎて、剥離した酸化物がロールに付着し外観疵を発生させるためである。
また、酸化帯の露点を273K以上に制御する理由は、Siの外部酸化を抑制するのに十分な鉄酸化膜を生成するために273K以上の露点が必要であり、273K未満の場合は十分な鉄酸化膜を形成せしめることができないためである。露点の上限は特に規定しないが、設備の劣化などへの影響を考慮し、373K以下が望ましい。
酸化膜の厚みは、燃焼空気比、露点のみではなく、ライン速度、到達板温等も影響するため、これらを適切に制御し、酸化膜の厚みが20〜200nmになるような条件で通板することが望ましい。
ただし、生成した鉄の酸化膜の還元を終了させるため、請求項に規定したPO2と温度における還元時間は、20秒以上とすることが望ましい。
上記製造方法は,連続溶融めっき設備に,CO2を1〜100体積%含有し,残部N2,H2O,O2,COおよび不可避的不純物からからなる気体を導入する装置を還元炉に配設することや,還元炉中でCOまたは炭化水素を燃焼させ,CO2を1〜100体積%含有し,残部N2,H2O,O2,COおよび不可避的不純物からからなる気体を発生させる装置を配設することにより可能となる。
なお、鋼板表面または表面側にFeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物が生成した鋼板に亜鉛めっきを行い、合金化することによって、めっき層中へFeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、Mn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物を含むめっき層をつくることが可能である。
めっき浴内の溶融Znには、幅方向の流動を与える必要がある。Fe濃度勾配は、酸素ポテンシャルを条件の範囲内に制御することと流動を与えることで疲労特性が改善される値になる。めっき浴中ではZnが鋼板表面から拡散する。酸素ポテンシャルの制御を行うと鋼板内の表面近傍にシリケートが生成するので、この際に酸化物の体積膨張が発生する。このことでメッキ前の鋼板表面には微細な凹凸が生成すると考えられる。この為にZnが拡散する際の界面積が増加することでZnの拡散が促進される。更に、めっき浴中で流動が有るとメッキ浴から鋼板への熱伝達係数が上がるので、拡散界面温度が高くなりZnの拡散係数が大きくなることで拡散が促進される。これらが複合することでめっき浴中で既に拡散が進行するのでFe濃度勾配がある範囲が大きくなる。一方、SiやMnが高い本発明の鋼板では合金化処理中でのめっき層中へのFeの拡散はIF鋼の様に大きくは無く、強度-延性バランスに対する影響を無視して合金処理温度を高くしてもFe濃度勾配がある範囲はさほど大きくならない。
この様に、酸素ポテンシャルを制御した後にめっき浴内で流動を与えるとFe濃度勾配がある範囲が大きくと共に、同時に、幅方向にも均一な合金層を形成することが可能となる。幅方向の流動は、スナウト内で鋼板が浸漬する際に、メタルポンプを用いて横方向の流動を発生させる。本方法はIF鋼やアルミキルド鋼では生成したアルミドロスの付着防止の為に、0.5m/sから1m/s程度の流動をさせることが知られている。本発明ではめっき浴中のAlはIF鋼よりも低いので、アルミドロスの生成は少ないので、通常はメタルポンプを使用していなかった。幅方向の流動を0.5m/秒以上としたのは、流動がこれよりも小さいと、界面でのFeとZnの拡散を十分に促進することが出来きず、合金層厚みを1.2μm以上とすることが出来ないためである。一方、2.5m/秒を越える速度で、流動を与えたとしても、その効果は飽和するばかりでなく、大幅な設備投資を招くことから好ましくない。ただし、この値を超える流速での流動を行ったとしも、本発明の効果である疲労耐久性の向上は得られる。また、流動は大きい方が良いので、好適な範囲は1.5m/s〜2.5m/sである。
また、Zn及びFeの厚さ方向の濃度勾配が緩やかになると、硬度の勾配が緩やかになるため、めっき層と鋼板の界面に集中する応力が小さくなる。この結果、繰り返し応力が加えられて弾性変形が行われる際にめっき層が剥離することが抑制される。同時に、鋼板表層に存在する合金層は、繰り返し変形時の軟質なフェライトの変形も抑制することから、フェライトと硬質組織の界面への変形の集中と、これに伴う疲労亀裂の形成を抑制することが可能であり、疲労耐久性の向上に大きく寄与する。
以上をまとめると、表1のようになる。特にlogPO2を上記した範囲に制御し、めっき浴中の溶融Znに鋼板の板幅方向の流動を与え、かつ合金化温度を480℃以下にすると、平行部が30mm、板厚2mm、曲率半径が100mmであるJIS Z 2275に規定の1号試験片に対してJIS Z 2275に準拠した疲労試験を行うことにより求められる2×10回時間強さを引張最大強度で除した値である疲労限度比を、安定して0.55以上にすることができる。また、引張最大強度(Ts)と伸び(EI)の積が21000(MPa・%)以上にすることができる。
疲労試験片の形状を平行部が30mm、板厚2mm、曲率半径が100mmとしたのは、曲率半径が大きいと応力集中係数が大きく、容易の疲労亀裂の形成が起こる。このことから、本発明の効果である疲労亀裂形成の抑制による疲労耐久性向上効果の評価に適さないためである。
Figure 0004932363
次に、高強度鋼板中の成分の限定理由について説明する。以下、質量%を単に%と記載する。
Cはマルテンサイトや残留オーステナイトによる組織強化で鋼板を高強度化しようとする場合に必須の元素である。Cの含有量を0.07%以上とする理由は、Cが0.07%未満では、高強度化と延性の向上に必要な残留オーステナイト体積率を5%以上とすることが困難なためである。一方、Cの含有量を0.25%以下とする理由は、Cが0.25%を超えると、スポット溶接部の強度を確保することが困難となるためである。ただし、かしめやボルトによる機械的な締結を行うのであれば、0.25%を超えてCを含有したとしても本発明の効果であるめっき性、疲労耐久性及び強度-延性バランスに優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
Siは鋼板の加工性、特に伸びを大きく損なうことなく強度を増す元素として0.8〜2.0%添加する。Siの含有量を0.8%以上とする理由は、Siが0.8%未満では必要とする引張強さの確保が困難であるためであり、かつ、めっき直後に行う合金化処理のための再加熱において炭化物の形成を著しく遅滞させ、室温まで冷却した後でも、上記した体積率のマルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイトがフェライト中に混在するようにするためである。ここで述べる炭化物とは、セメンタイトやパーライト組織のことを指し示す。これらが多量に存在するとオーステナイトが分解してしまうことから、5%以上の残留オーステナイト体積率を確保できなくなるためである。また、Siの含有量を2.0%以下とする理由は、Siが2.0%を超えると強度を増す効果が飽和すると共に延性及び溶接性の低下が起こり、かつめっき濡れ性を損なうためである。また、Siは固溶強化によりフェライトを高強度化することから、繰り返し変形時のフェライトへの変形の集中を抑制することから、疲労耐久性の向上の観点からも添加する必要がある。
Mn:Mnは、強化元素であり、鋼板の強度を上昇させることに有効である。また、パーライト変態を抑制することから、残留オーステナイトの確保にも重要な役割を果たす。しかしながら、2.5%超となると鋼板の成形性が低下することからその上限を2.5%とした。1.1%未満になると、パーライト変態の抑制やめっき浴浸漬及び引き続いて行われる合金化処理時の炭化物形成の抑制が困難となることから、その下限値を1.1%とした。
Al:AlはSiと同様に、めっき直後に行う合金化処理のための再加熱において炭化物の形成を著しく遅滞させることから、残留オーステナイトの確保に有効であることから添加しても良い。また、脱酸材としても活用可能である。加えて、Alは、フェライト形成を促進し、延性を向上させるので添加しても良い。ただし、2.0%を超えるとコスト高となるばかりか、表面性状を劣化させ、かつ溶接性及びめっき濡れ性を損なうため、その含有量は2.0%以下とする。一方、Al含有量を0.001%未満とすることは、大幅なコスト増を招くことから経済上好ましくない。
Nは、粗大な窒化物を形成して曲げ性や穴拡げ性を劣化させ、かつ溶接時のブローホール発生の原因になることから、含有量を0.01%以下に抑制する必要がある。一方、N含有量の下限は特に定める必要はないが、N含有量を極端に低下させることは多大なコストが必要になるため、経済性の観点から0.0005%が実質的な下限になる。
Sは溶接性並びに鋳造時及び熱延時の製造性に悪影響を及ぼすことから、含有量を0.01%以下に抑制する必要がある。一方、S含有量の下限は特に定める必要はないが、S含有量を極端に低下させることは多大なコストが必要になるため、経済性の観点から0.001%が実質的な上限になる。
Oは酸化物を形成し、成形性を劣化させることから、含有量を0.01%以下に抑制する必要がある。一方、O含有量の下限は特に定める必要はないが、O含有量を極端に低下させることは多大なコストが必要になるため、経済性の観点から0.001%が実質的な上限になる。なお、ここでいうO含有量とは、鋼板表層に含まれる内部酸化物、及びめっき層中に含まれる酸化物を除去した後の鋼板中に含まれるOの含有量を指す。本発明の鋼板は鋼板表層及びめっき層中のいずれか一方又は双方に酸化物を含むことから、表層のO含有量は鋼板内部に比較して高くなる。しかし、これら酸化物はめっき層中や鋼板表層に存在するため、成形性に悪影響を及ぼさない。
また、これらを主成分とする鋼にNi、Cu、Cr、Mo、B、Ti、Nb、V、REM(例えばLa,Ce)、Caの一種以上を添加しても良い。これらを含有しても本発明の効果を損なわず、その量によっては耐食性や加工性が改善される等好ましい場合もある。具体的には、Ni:0.05〜2.0%、Cu:0.05〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、Mo:0.05〜2.0%、B:0.0001〜0.002%、Ti:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、V:0.001〜0.1%、REM:0.0001〜0.1%、Ca:0.0001〜0.1%である。
次に、合金化溶融亜鉛めっき層について述べる。本発明において、合金化溶融亜鉛めっき層とは、合金化反応によってZnめっき中に鋼中のFeが拡散しできたFe−Zn合金を主体としためっき層のことである。Feの含有率は特に限定しないが、めっき中のFe含有率7質量%未満ではめっき表面に柔らかいZn−Fe合金が形成されプレス成形性を劣化させ、Fe含有率15質量%を超えると地鉄界面に脆い合金層が発達し過ぎてめっき密着性が劣化するため、7〜15質量%が適切である。
また、溶融亜鉛めっきを施す際、めっき浴中での合金化反応を制御する目的でめっき浴にAlを添加するため、めっき中には0.05〜0.5質量%のAlが含まれる。また、合金化の過程ではFeの拡散と同時に鋼中に添加した元素も拡散するため、めっき中にはこれらの元素も含まれる。
本発明鋼板は、溶融亜鉛めっき浴中あるいは亜鉛めっき中にPb、Sb、Si、Sn、Mg、Mn、Ni、Cr、Co、Ca、Cu、Li、Ti、Be、Bi、希土類元素の1種または2種以上を含有、あるいは混入してあっても本発明の効果を損なわず、その量によっては耐食性や加工性が改善される等好ましい場合もある。合金化溶融亜鉛めっきの付着量については特に制約は設けないが、耐食性の観点から20g/m2以上、経済性の観点から150g/m2以下であることが望ましい。
次に、製造条件の限定理由について述べる。熱間圧延に供するスラブは特に限定するものではなく、連続鋳造スラブや薄スラブキャスター等で製造したものであればよい。また鋳造後直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直送圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。
熱間圧延の仕上温度は鋼板のプレス成形性を確保するという観点からAr3点以上とする必要がある。熱延後の冷却条件は特に限定しないが、巻き取り温度は630℃以下とすることが望ましい。630℃を超える温度で巻き取ることは、鋼板表面に形成する酸化物の厚さを過度に増大させるため、酸洗性が劣るので好ましくない。下限については特に定めることなく本発明の効果は発揮されるが、室温以下の温度で巻き取ることは技術的に難しいので、これが実質の下限となる。なお、熱延時に粗圧延板同士を接合して連続的に仕上げ圧延を行っても良い。また、粗圧延板を一旦巻き取っても構わない。
このようにして製造した熱延鋼板に、酸洗を行う。酸洗は鋼板表面の酸化物の除去が可能であることから、めっき性向上のためには重要である。また、一回の酸洗を行っても良いし、複数回に分けて酸洗を行っても良い。次いで、酸洗した熱延鋼板を圧下率40〜70%で冷間圧延して、連続焼鈍ラインあるいは連続溶融亜鉛めっきラインを通板する。圧下率が40%未満では、形状を平坦に保つことが困難である。また、最終製品の延性が劣悪となるのでこれを下限とする。一方、70%を越える冷延は、冷延荷重が大きくなりすぎてしまい冷延が困難となることから、これを上限とする。45〜65%がより好ましい範囲である。圧延パスの回数、各パス毎の圧下率については特に規定することなく本発明の効果は発揮される。
なお、熱延板に直接めっきを行う場合は、冷間圧延を行わなくても良い。あるいは、箱焼鈍や連続焼鈍ラインを通板後、めっきを行っても構わない。
ライン内焼鈍方式の連続溶融亜鉛めっき設備の還元帯で焼鈍する際、その焼鈍温度は750℃以上900℃以下のフェライト、オーステナイト二相共存域とする。焼鈍温度が750℃未満では熱延の巻き取り時に形成した炭化物の溶解に時間がかかりすぎてしまい十分な量のオーステナイトを確保することが出来ない。900℃を超すような温度で焼鈍することは鋼帯表面にSiやMnの酸化物層の成長が著しく、めっき不良が起こりやすくなるため好ましくない。また、過度の高温加熱は、コストの上昇を招くことから経済的に好ましくないばかりでなく、高温通板時の板形状が劣悪になったり、ロールの寿命を低下させたりとトラブルを誘発することから、最高加熱温度の上限を900℃とする。
鋼帯は焼鈍後、引き続きめっき浴へ浸漬する過程で冷却されるが、この場合の冷却速度はその最高到達温度から650℃までを平均0.1〜200℃/秒で、引き続いて650℃から500℃までの平均冷却速度を1〜200℃/秒とする。650℃までを平均0.1〜200℃/秒とするのは加工性を改善するためにフェライトの体積率を増すと同時に、オーステナイトのC濃度を増すことにより、その生成自由エネルギーを下げ、マルテンサイト変態の開始する温度をめっき浴温度以下とすることを目的とする。650℃までの平均冷却速度を0.1℃/秒未満とするためには連続溶融亜鉛めっき設備のライン長を長くする必要がありコスト高となるため、650℃までの平均冷却速度は0.1℃/秒以上とする。
一方、650℃までの平均冷却速度200℃/秒を超えて冷却速度を上げる事は、大幅な設備投資を必要とし、製造コスト高を招くこととなるので、上限を200℃/秒とすることが好ましい。
650℃からめっき浴までの平均冷却速度を1〜200℃/秒とするのは、その冷却途上でオーステナイトがパーライトに変態するのを避けるためであり、その冷却速度が1℃/秒未満では本発明で規定する温度で焼鈍し、また650℃まで冷却したとしてもパーライトの生成を避けられない。一方、650℃からめっき浴までを平均冷却速度200℃/秒を超えて冷却速度を上げる事は、製造コスト高を招くこととなるので、上限を200℃/秒とすることが好ましい。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造において、用いる溶融亜鉛めっき浴はAl濃度が浴中有効Al濃度で0.01〜0.5mass%に調整する。更に合金化温度が低い場合にはAl濃度が0.05〜0.09%の範囲にすることが好ましい。ここでめっき浴中の有効Al濃度とは、浴中Al濃度から浴中Fe濃度を差し引いた値である。
浴中有効Al濃度では、0.01質量%未満では、めっき初期の合金化バリアとなるFe−Al−Zn相の形成が不十分であってめっき処理時にめっき鋼板界面に脆いΓ相が厚くできるため、加工時のめっき皮膜密着力が劣る合金化溶融亜鉛めっき鋼板しか得られないため好ましくない。0.5質量%を超えてAlを添加すると合金化反応を著しく抑制してしまい、高温長時間の合金化が必要となり、鋼中に残存していたオーステナイトがパーライトに変態するため、高強度、疲労耐久性及び加工性の両立が困難となるためである。
また、得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板にスキンパス圧延を施しても構わない。
なお、合金処理時の合金化温度については、上記したように480℃以下にするのが好ましい。
めっき鋼板のめっき密着性をさらに向上させるために、焼鈍前に鋼板に、Ni、Cu、Co、Feの単独あるいは複数より成るめっきを施しても本発明を逸脱するものではない。
また、本発明の溶接部の耐水素脆性に優れる高強度鋼板の素材は、通常の製鉄工程である精錬、製鋼、鋳造、熱延、冷延工程を経て製造されることを原則とするが、その一部あるいは全部を省略して製造されるものでも、本発明に係わる条件を満足する限り、本発明の効果を得ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
表2の組成からなるスラブを準備し、Ar3変態点以上で熱間圧延を行い板厚を4mmとし、630℃以下の温度域において巻き取り、その後、酸洗後に圧下率50%で冷間圧延することにより、厚さ2mmの高強度鋼板を形成した。その後、ライン内焼鈍方式の連続溶融亜鉛めっき設備を用いて表3に示す条件でめっき処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。連続溶融亜鉛めっき設備は、無酸化炉による加熱後、還元帯で還元・焼鈍を行う方式を使用した。無酸化炉の燃焼空気比は1.0に調節し、酸化帯として使用した。還元帯はCOとH2を混合した気体を燃焼させ発生したH2O、CO2を導入する装置を取り付け、H2を10体積%含むN2ガスにH2OとCO2を導入した。最後に、得られた鋼板について0.6%の圧下率でスキンパス圧延を行った。
Figure 0004932363
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表4にめっき性の評価結果を、表5にめっき層及び鋼板に含まれる酸化物の評価結果を、表6に後半のミクロ組織の評価結果を、表7に鋼板の機械的特性の評価結果を、それぞれ示す。
Figure 0004932363
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Figure 0004932363
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還元炉内のPO2は、炉内の水素濃度、水蒸気濃度、CO2濃度、CO濃度、雰囲気温度の測定値と平衡反応H2O=H2+1/2O2,CO2=CO+1/2O2の平衡定数K1、K2を使用して求めた。
めっきの付着量は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、重量法により測定した。めっき中のFe%は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、ICPにより測定して求めた。また、めっき層及び高強度鋼板の界面においてFe濃度が20〜90%となる領域の厚みは、GDS(グロー放電分光分析 RSV社製 Analymat 2504型)によって測定した。各試料とも異なる位置を合計5回測定し、その平均値をFe濃度が20〜90%となる領域の厚みとして求めた。めっき浴内で流動を行わなかったものは、流動を行わなかったものに比較して、その値がばらつく傾向があった。
めっき外観は通板したコイル全長を目視で観察し、不めっき面積率を以下に示す基準で判定した。
○:不めっき部分なし
△:不めっき部分若干あり
×:不めっき部分多数あり
鋼板内部の酸化物の種類、めっき層中の酸化物の種類、及び不めっき部の酸化物の種類は、抽出レプリカ試料を作成してTEM、EPMAを用いることにより特定した。抽出レプリカ試料は、酸化物を含む層を溶解させて酸化物を露出させ、露出面にカーボン膜を蒸着し、この蒸着膜を酸化物とともに剥離することにより、試料を作成する方法である。SiやMnを単独あるいは複合で含む酸化物は、他の原子を含む複合酸化物であったり、欠陥を多く含む場合があるが、元素分析及び構造同定からもっとも近いものを見つけて判別した。
本鋼及びめっき層中に含まれる酸化物の同定を行ったところ、これらの酸化物は、MnSiO、MnSiO、SiO及びAl、あるいは前記した酸化物においてMnの代わりに一部Feを含有するものであった。これら酸化物の分布はGDSあるいはCMAを用いて測定可能である。前述のようにSi酸化物は、Mnを含む複合酸化物として存在している場合が多い。このことから、めっき層、鋼板表層のSi、Mn、Oの元素分布を、例えばGDS又はCMAにより測定することで酸化物の分布を求めることが出来る。
GDSを用いた測定を行うのであれば、Mn、Si及びOの濃度分布を測定し、Mn濃度のピークが、Si濃度のピークより表面側にある場合を、Si酸化物(MnSiOもしくはMnSiO)が表面側に存在しているとした。本発明の製造条件を満たす場合、具体的には還元帯の雰囲気においてlogPO2及び温度を上記(1)式及び(2)式で示す範囲にした場合、Mn濃度のピークが鋼板表面側に存在しており、Si酸化物がSiOに対して表面側に存在していた。一方、本発明の条件を満たさない場合、Si濃度のピークがMn濃度のピークと同位置もしくは表面側に存在する、あるいは、Mn濃度のピークが測定できないことから、SiOの方が表面側に存在していた。尚、ここで言うSi,あるいはMnのピークとは、例えば図1に示すように、鋼板内のSiやMnの成分検出値を除いた部分でのピークを示す。
CMAを用いた測定を行うのであれば、めっき層、鋼板表面のSi、Mn、Oの元素マッピングを行うことで酸化物の分布を測定できる。具体的には、Si、Mn、Oの元素マッピングを行い、Si、Mn、Oの存在位置が重なるものを、Si酸化物(MnSiOもしくはMnSiO)、SiとOの存在位置のみが重なるものをSiOとする。これにより、酸化物の分布を求めることが可能である。GDSもしくはCMAのいずれの方法を用いて測定しても構わないが、GDSの方が簡便である。
なお、当然のことながらSi酸化物とSiOが混在する領域があるが、Si酸化物の方が表面側に観察されるのであれば、Si酸化物が表面側に存在しているものとみなした。
鋼板内部の酸化物層厚みはSEMを用いて測定した。また酸化物の平均含有率は、酸化物を含有する層を溶解させ、溶け残った酸化物の重量を測定することにより特定した。
鋼板のミクロ組織の種類及び体積率は、ナイタール試薬及び特開59−219473号公報に開示された試薬により鋼板圧延方向断面又は圧延方向直角方向断面を腐食して、1000倍の光学顕微鏡並びに1000〜10000倍のSEM及びTEMにより測定した。各試料において20視野以上の観察を行った。また体積率は、ポイントカウント法や画像解析により各組織の面積率を求めることにより、特定した。
降伏応力(YS)、引張強さ(TS)、伸び(El)は、得られた溶融亜鉛めっき鋼板から、圧延方向に直角方向にJIS5号試験片を切り出し、常温での試験を行うことにより求めた。なお、降伏応力は0.2%オフセット法により測定した。引張強さと伸びの積である強度-延性バランス(TS×El)が、21000(MPa×%)以上となるものを加工性に優れた鋼板とした。
疲労耐久性については、疲労限度比で評価した。本明細書において疲労限度比は、平行部が30mm、板厚2mm、曲率半径が100mmであるJIS Z 2275に規定の1号試験片に対してJIS Z 2275に準拠した疲労試験を行うことにより求められる2×10回時間強さを引張最大強度で除した値である。
鋼板番号A1〜A3、B1〜B3、C1、D1〜D3、E1〜E3、F1〜F3、G1、H1、及びI1は、鋼板の化学的成分が本発明で規定する範囲内にあり、かつ鋼板の製造条件も本発明で規定する範囲内にある。この結果、表4に示すように、鋼板とめっき層の界面においてFe濃度が20〜90%となる領域の厚みが1.2μm以上となった。まためっき性も良好であり、かつめっき層に含まれるFe濃度も7〜15質量%と良好である。また、表5に示すように、鋼板内部及びめっき層中それぞれにMnSiO3、Mn2SiO4、及びSiO2が観察されたが、MnSiO3及びMn2SiO4の濃度のピークはSiO2の濃度のピークよりめっき層表面側に位置していた。また、表6に示すように、鋼板において残留オーステナイトの体積率が5%以上かつベイナイト+マルテンサイトの体積率が10%以上となった。
この結果、これらの鋼板は表7に示すように、降伏応力が380MPa以上であり、引張り強さが600MPaであり、強度-延性バランスが21000(MPa×%)以上となり、高強度かつ高い加工性を示した。また、疲労限度比が0.60以上となり、高い疲労耐久性を示した。
一方、鋼板番号J1及びK1は、製造条件は本発明で規定する範囲内であったが鋼板の化学的成分が本発明で規定する範囲外であった。このためめっき性が悪くなった。また鋼板番号K1については引張最大強度と伸びの積も本発明で規定する範囲外になった。
また、鋼板番号A5、B4、C2、D5、E4、及びF5はめっき浴中に板幅方向の流れを設けなかったため、Fe濃度が20〜90%となる領域の厚みが1.0μm未満になった。その結果、表7に示すように疲労限度比が0.54以下と低い値を示した。
また、鋼板番号A9、D9、及びF9は還元帯の酸素ポテンシャルが本発明で規定した範囲より低かった。このため、鋼板表面にSiO2が形成され、めっき性が低下し、かつFe濃度が20〜90%となる領域の厚みが0.2μmと低い値になった。その結果、表7に示すように疲労限度比が0.53以下と低い値を示した。
また、鋼板番号A−10、D−10、及びF10は還元帯の酸素ポテンシャルが本発明で規定した範囲より低かった。このため、鋼板表面にSiO2が形成され、めっき性が低下した。また、めっき浴中に板幅方向の流れを設けなかった。以上のことから、Fe濃度が20〜90%となる領域の厚みが0.3μmと低い値になった。その結果、表7に示すように疲労限度比が0.52以下と低い値を示した。
また、鋼板番号A8、D8、及びF8は還元帯の酸素ポテンシャルが本発明で規定した範囲より低かった。このため、鋼板表面にSiO2が形成され、めっき性が低下し、かつFe濃度が20〜90%となる領域の厚みが0.7μm以下になった。また、合金化温度が高かったため、表6に示すように、残留オーステナイトがパーライトや炭化物を含むベイナイト組織へ分解した。その結果、表7に示すように疲労限度比が0.49以下と低い値を示した。また引張最大強度と伸びの積も本発明で規定する範囲外になった。
また、鋼板番号A7、B6、D7、及びF4は還元帯の酸素ポテンシャルが本発明で規定した範囲より低かった。このため、鋼板表面にSiO2が形成され、めっき性が低下した。また、めっき浴中に板幅方向の流れを設けなかった。以上のことから、Fe濃度が20〜90%となる領域の厚みが0.6μmと低い値になった。また、合金化温度が高かったため、表6に示すように、残留オーステナイトがパーライトや炭化物を含むベイナイト組織へ分解した。その結果、表7に示すように疲労限度比が0.49以下と低い値を示した。また引張最大強度と伸びの積も本発明で規定する範囲外になった。
また、鋼板番号A4、D4、及びF4は合金化温度が高かったため、表6に示すように、残留オーステナイトがパーライトや炭化物を含むベイナイト組織へ分解した。このため、Fe濃度が20〜90%となる領域の厚みが2.7μm以上と十分であるにもかかわらず、表7に示すように疲労限度比が0.49以下と低い値を示した。また引張最大強度と伸びの積も本発明で規定する範囲外になった。
また、鋼板番号A6、B5、C3、D6、E5、F6、G2、H2、I2、J2、及びK2は、酸素ポテンシャルが本発明で規定する範囲より高かった。このため、表5に示すように鋼板表面にFeOが形成され、めっき性が低下し、かつFe濃度が20〜90%となる領域の厚みが0.5μm以下と低い値になった。その結果、表7に示すように疲労限度比が0.54以下と低い値を示した。また、鋼板番号C3、G2、I2、J2及びK2については、引張最大強度と伸びの積も本発明で規定する範囲外になった。
GDSを用いたFe、Zn、Mn、及びSiの深さ方向の濃度分布を示すチャート。

Claims (10)

  1. 質量%で、
    C:0.07〜0.25%、
    Si:0.8〜2.0%、
    Mn:1.1〜2.5%、
    Al:0.001〜2.0%、
    N:0.01%以下、
    S:0.01%以下、
    O:0.01%以下
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる高強度鋼板の上に、Feを含有する合金化溶融亜鉛めっき層を有する高強度合金化溶融亜鉛鋼板であって、
    前記高強度鋼板は、残留オーステナイトの体積率が5%以上であり、かつベイナイトとマルテンサイトの体積率が合計で10%以上であり、
    前記合金化溶融亜鉛めっき層及び前記高強度鋼板の界面において、GDSによるFe濃度が20〜90%となる領域の厚みが1.2μm以上であることを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記合金化溶融亜鉛めっき層または鋼板のいずれか一方、または、両方にFeSiO3、Fe2SiO4、MnSiO3、及びMn2SiO4から選ばれた1種以上のSi酸化物が存在し、かつ前記めっき層または鋼板のいずれか一方、または、両方にSiO2が存在し、前記Si酸化物の濃度分布のピークが、前記SiO2の濃度分布のピークより前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面側に位置することを特徴とする請求項1に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記高強度鋼板は、さらに質量%で
    Ni:0.05〜2.0%、
    Cu:0.05〜2.0%、
    Cr:0.05〜2.0%、
    Mo:0.05〜2.0%、
    B:0.0001〜0.002%、
    Ti:0.001〜0.1%、
    Nb:0.001〜0.1%、
    V:0.001〜0.1%、
    REM:0.0001〜0.1%、
    Ca:0.0001〜0.1%
    の一種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記合金化溶融亜鉛めっき層は、更にAlを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 平行部が30mm、板厚2mm、曲率半径が100mmであるJIS Z 2275に規定の1号試験片に対してJIS Z 2275に準拠した疲労試験を行うことにより求められる2×10回時間強さを引張最大強度で除した値である疲労限度比が、0.55以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 前記鋼板の引張最大強度(Ts)と伸び(EI)の積が21000(MPa・%)以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  7. 質量%で、
    C:0.07〜0.25%、
    Si:0.8〜2.0%、
    Mn:1.1〜2.5%、
    Al:0.001〜2.0%、
    N:0.001〜0.1%
    S:0.0001〜0.1%、
    O:0.0001〜0.1%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる高強度鋼板を還元帯に通すことにより還元し、その後めっき浴に浸漬して引き上げ、その後合金化処理を行うことにより、連続的に溶融亜鉛めっきを施す高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    前記還元帯の雰囲気として、H2を1〜60体積%含有し、残部がN2、H2O、O2、CO2、COの1種又は2種以上並びに不可避的不純物からなり、その雰囲気中の酸素分圧の対数logPO2
    −0.000034T2+0.105T−0.2〔Si%〕2+2.1〔Si%〕−98.8≦logPO2≦−0.000038T2+0.107T−90.4…(1)
    923≦T≦1173 ・・・(2)
    T:鋼板の最高到達温度(K)、〔Si%〕:鋼板中のSi含有量(mass%)
    に制御した雰囲気で還元を行い、
    前記高強度鋼板を前記めっき浴に浸漬させる際に、前記めっき浴内のめっき液を、前記高強度鋼板の板幅方向に流動させることを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  8. 前記めっき液の流動速度を0.5〜2.5m/秒にすることを特徴とする請求項7に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  9. 前記合金化処理を480℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項7又は8に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  10. 前記高強度鋼板は、鋳造スラブを加熱し、前記加熱された鋳造スラブをAr3変態点以上で熱間圧延した後、630℃以下の温度域において巻き取り、その後、酸洗後に圧下率40〜70%で冷間圧延することにより形成され、
    前記高強度鋼板を還元する際に、
    前記還元帯において750℃以上900℃以下で焼鈍処理し、その後650℃まで0.1〜200℃/秒で冷却し、その後650℃〜500℃の間の平均冷却速度が1〜200℃/秒となるように、(前記めっき液の温度−40)〜(前記めっき液の温度+50)℃まで冷却することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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