以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るクラッチ制御装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1は、本発明の第1実施形態に係るクラッチ制御装置を備えるクラッチシステムの模式的な構成図である。
クラッチシステム1は、クラッチ装置10と、クラッチアクチュエータ20と、クラッチ制御装置2と、ストロークセンサ18と、を備える。
クラッチ装置10は、フライホイール12と、クラッチディスク13と、プレッシャープレート14と、クラッチカバー15と、ダイヤフラムスプリング16と、レリーズベアリング17とを備える。
フライホイール12は、図示しないエンジンの駆動力が伝達されるクランクシャフト11に一体回転可能に接続されている。フライホイール12の外周縁のクランクシャフト11と反対側には、クラッチカバー15が固定されている。
クラッチディスク13は、クランクシャフト11と同軸に配置された、図示しない変速機のインプットシャフト31に、軸方向移動可能且つ一体回転可能にスプライン嵌合された取付部13Aと、取付部13Aの外周部に固定された円環状のディスク本体部13Bと、ディスク本体部13Bの外縁部の両面に固定された摩擦板13Cとを有する。
プレッシャープレート14は、クラッチディスク13のフライホイール12と反対側に摩擦板13Cと接触可能に配置されている。プレッシャープレート14のフライホイール12と反対側の面には、ダイヤフラムスプリング16の外縁部が接触可能に配置されており、ダイヤフラムスプリング16により押圧されると、クラッチディスク13をフライホイール12に圧接可能となっている。なお、ダイヤフラムスプリング16により押圧されていない場合には、図示しないスプリングにより、フライホイール12と反対側に移動して、クラッチディスク13をフライホイール12に圧接しないようになっている。
ダイヤフラムスプリング16は、無負荷の状態においては略円錐状のばね部材であり、内縁部分と外縁部分との中間部分が、クラッチカバー15に取り付けられている。ダイヤフラムスプリング16の外縁部は、プレッシャープレート14のフライホイール12と反対側に接触するように配置され、ダイヤフラムスプリング16の内縁部は、レリーズベアリング17のフライホイール12側の面に接触するように配置されている。
本実施形態では、レリーズベアリング17がダイヤフラムスプリング16の内縁部をフライホイール12側に押圧していない場合には、ダイヤフラムスプリング16の外縁部がプレッシャープレート14をフライホイール12側に押圧し、クラッチディスク13をフライホイール12に圧接するように、すなわち、クラッチ装置10を接状態とするようになっている。一方、レリーズベアリング17がダイヤフラムスプリング16の内縁部をフライホイール12側に押圧している場合には、ダイヤフラムスプリング16の外縁部がフライホイール12と反対側に移動し、ダイヤフラムスプリング16の外縁部がプレッシャープレート14を押圧しないようになり、クラッチディスク13をフライホイール12に圧接しないように、すなわち、クラッチ装置10を断状態とするようになっている。
レリーズベアリング17は、内輪のフライホイール12側がダイヤフラムスプリング16の内縁部に接触するようになっているとともに、外輪のフライホイール12と反対側がクラッチアクチュエータ20の後述するピストン22に接続されており、ダイヤフラムスプリング16とピストン22とを相対回転可能とするとともに、ピストン22の軸方向の移動に伴ってインプットシャフト31の軸方向に移動可能となっている。
クラッチアクチュエータ20は、インプットシャフト31の周囲に相対回転可能に配置されたシリンダ21と、シリンダ21内に軸方向に移動可能なピストン22とを有する。ピストン22のフライホイール12と反対側の面と、シリンダ21の内壁とにより圧力室23が形成されるとともに、ピストン22の外周面と、フライホイール12側の面と、シリンダ21の内壁とにより開放室24が形成されている。
シリンダ21には、圧力室23内に空気(作動流体の一例)を供給するための給気用配管25と、圧力室23内から空気を排出するための排気用配管26とが設けられている。また、シリンダ21には、開放室24を外部(例えば、大気圧となっている外部)と連通させる開放穴21Aが形成されている。
クラッチアクチュエータ20によると、圧力室23内に空気を供給することにより、ピストン22をフライホイール12側に移動させて、クラッチ装置10を断状態にすることができ、圧力室23内から空気を排出することにより、ピストン22をフライホイール12と反対側に移動させて、クラッチ装置10を接状態にすることができる。
クラッチ制御装置2は、空気を供給する給気側と給気用配管25との間に配置されたバルブ(流量調整用バルブ、供給用バルブ)41と、空気を排出する排気側と排気用配管26との間に配置されたバルブ(流量調整バルブ、排出用バルブ)42と、バルブ41,42を制御する電子制御ユニット(ECU)50とを有する。
バルブ41は、給気側と圧力室23とを連通させて空気を供給する状態(供給状態)と、給気側と圧力室23とを遮断させて空気の供給を停止する状態(供給停止状態)とに切り替えることができる。本実施形態では、バルブ41は、ECU50の制御により、供給状態と供給停止状態とを切り替えることができるようになっており、1周期の全時間にしめる供給状態となっている時間の割合(Duty比)を変更することにより、空気の供給量を調整できるようになっている。
バルブ42は、排気側と圧力室23とを連通させて空気を排出する状態(排出状態)と、排気側と圧力室23とを遮断させて空気の排出を停止する状態(排出停止状態)とに切り替えることができる。本実施形態では、バルブ42は、ECU50の制御により、排出状態と排出停止状態とを切り替えることができるようになっており、1周期の全時間にしめる排出状態となっている時間の割合(Duty比)を変更することにより、空気の排出量を調整できるようになっている。
ストロークセンサ18は、クラッチアクチュエータ20のピストン22の所定の基準位置からの移動量(ストローク量)を検出する。ストロークセンサ18は、検出したストローク量をECU50に通知する。
次に、ECU50について詳細に説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係るECUの機能構成図である。
ECU50は、クラッチ装置10の断接の制御等を行うものであり、公知のCPU、ROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備える。
ECU50は、クラッチ動作判定部51と、制御決定部52と、フィードバック制御部53とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、一体のハードウエアであるECU50に含まれるものとして説明するが、これらの何れか一部を別体のハードウエアに設けることもできる。
クラッチ動作判定部51は、図示しない車速センサからの車速、アクセル開度センサからのアクセル開度等に基づいて、クラッチ断動作を開始する必要があるか否かを判定し、クラッチ断動作の開始が必要である場合には、その旨を制御決定部52に通知する。また、クラッチ動作判定部51は、クラッチ接動作を開始する必要があるか否か(例えば、変速機の変速が完了したか否か)を判定し、クラッチ接動作の開始が必要である場合には、その旨を制御決定部52に通知する。
制御決定部52は、クラッチ動作判定部51からの通知に基づいて、制御対象とするバルブを決定し、フィードバック制御部53に、制御対象とするバルブを通知する。
本実施形態では、クラッチの断動作を行う際において、制御決定部52は、バルブ41を制御対象と決定し、フィードバック制御部53に制御対象がバルブ41であることを通知する。また、クラッチの接動作を行う際において、制御決定部52は、バルブ42を制御対象と決定し、フィードバック制御部53に制御対象がバルブ42であることを通知する。
また、制御決定部52は、圧力室23に空気を供給する時(本実施形態では、クラッチの断動作を行う時)において、ピストン22のストローク量が所定の閾値(ストローク閾値)より大きいか否かを判定し、判定結果を後述するゲイン調整部66に通知する。ここで、ストローク閾値については後述する。
フィードバック制御部53は、制御決定部52から通知された制御対象のバルブに対して、フィードバック制御を実行する。フィードバック制御部53は、ピストン22のストロークの目標値Xtrgtを設定する目標値設定部61と、目標値Xtrgtと実際のストローク量Xとの差を算出する演算部62と、演算部62により算出された差を入力としてPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)を実行して、Duty比を算出するPID制御手段の一例としてのPID制御部63と、算出されたDuty比で動作させる制御信号を制御対象のバルブに出力する制御出力手段の一例としての出力部64と、圧力室23内の圧力値を特定する圧力特定手段の一例としての圧力推定部65と、PID制御部63で使用する比例ゲインを調整するゲイン調整手段及び圧力判定手段の一例としてのゲイン調整部66と、を備える。
圧力推定部65は、ストロークセンサ18により検出されたピストン22の移動量に基づいて、圧力室23内の圧力値を推定する。ここで、ピストン22の移動量から圧力室23内の圧力値を推定する方法としては、ピストン22の移動量から圧力室23内の圧力値を推定するためのカルマンフィルタのような状態推定器を用意しておき、その状態推定器にピストン22の移動量や圧力室23から排出する調整流量を通すことにより、圧力値を求める方法を用いてもよい。
ゲイン調整部66は、圧力室23への空気供給時においては、制御決定部52からピストン22のストローク量が所定の閾値(ストローク閾値)よりも大きくないとの判定結果を受けた場合には、PID制御部63で使用する比例ゲインを比較的大きい給気用第1比例ゲインに設定する一方、制御決定部52からピストン22のストローク量が所定の閾値よりも大きいとの判定結果を受けた場合には、PID制御部63で使用する比例ゲインを給気用第1比例ゲインよりも小さい給気用第2比例ゲインに設定する。
また、ゲイン調整部66は、圧力室23からの空気排出時においては、圧力推定部65により推定された圧力室23内の圧力値が所定の閾値(圧力閾値)よりも小さいか否かを判定し、圧力室23内の圧力値が所定の閾値よりも小さい場合には、PID制御部63で使用する比例ゲインを比較的大きい排気用第1比例ゲインに設定する一方、圧力室23内の圧力値が所定の閾値よりも小さくない場合には、PID制御部63で使用する比例ゲインを排気用第1比例ゲインよりも小さい排気用第2比例ゲインに設定する。
ここで、比例ゲインの調整を圧力室23内の圧力値に基づいて行うのは、圧力室23からの空気排出時におけるバルブ42による排出量は、圧力室23内の圧力の影響を大きく受け、圧力室23内の圧力が低くなればなるほど、バルブ42のデューティー比の変化に対する空気の排出量の変化が小さくなってしまうという状況に適切に対応するためであり、上記したように圧力室23内の圧力が閾値よりも小さい場合に、比較的大きい排気用第1比例ゲインに設定することにより、圧力室23内からのバルブ42による空気の排出量を増加させることが可能となり、クラッチアクチュエータ20の応答性を向上することができる。ここで、圧力閾値としては、デューティー比の変化に対する、圧力室23からの空気の排出量の変化の割合が所定以下となる場合における圧力室23内の圧力に相当する圧力値としてもよく、また、圧力閾値の候補として複数の圧力値を用いてクラッチ動作を実験的に行うことにより、オーバーシュートを発生させることなく、且つ早期にクラッチ動作を完了させるために適切な圧力値を特定し、その特定した圧力値としてもよい。
次に、クラッチ装置10を動作させる際のクラッチアクチュエータ20の特性について詳細に説明する。
まず、クラッチアクチュエータ20のピストン22のストロークと、レリーズ荷重との関係について説明する。
図3(A)は、本発明の第1実施形態に係るクラッチアクチュエータにおけるストロークと、レリーズ荷重との関係を示す図である。図3(A)において、縦軸は、ピストン22に加えた荷重(レリーズ荷重)を示し、横軸は、ピストン22のストローク量を示している。なお、図3(A)のストローク量が0の位置は、例えば、開放室24及び圧力室23の圧力がともに大気圧のときの位置である。
図3(A)に示すように、ピストン22のストローク量が小さい場合においては、ストローク量が大きい場合と比較して、荷重の変化に対するストローク量の変化の割合が低くなっている。また、ピストン22のストローク量は、荷重に対して非線形となっていることがわかる。
次に、クラッチアクチュエータ20のピストン22のストロークと、クラッチアクチュエータ20の圧力室23に対する空気の供給量との関係について説明する。
図3(B)は、本発明の第1実施形態に係るクラッチアクチュエータにおけるストロークと、空気供給量との関係を示す図である。図3(B)において、縦軸は、圧力室23に対して供給した空気供給量を示し、横軸は、ピストン22のストローク量を示している。なお、図3(B)のストローク量が0の位置は、ピストン22が、所定の初期位置(セット位置)にある場合の位置を示している。また、横軸の左側は、クラッチが接となる側、本実施形態では、圧力室23から排気した際にピストン22が移動する方向であり、右側は、クラッチが断となる側、本実施形態では、圧力室23に給気した際にピストンが移動する方向である。
図3(B)に示すように、ピストン22のストローク量が小さい範囲においては、ストローク量が大きい範囲と比較して、空気供給量の変化に対するストローク量の変化の割合が低くなっている。また、ピストン22のストローク量は、空気供給量に対して非線形となっていることがわかる。
本実施形態においては、空気供給時において、ピストン22のストローク量が、空気供給量の変化に対するストローク量の変化の割合が低い範囲(第1範囲)にある場合においては、PID制御部63の比例ゲインを給気用第1比例ゲインとし、供給可能な空気供給量を増加させて、応答性を向上するようにしている。また、空気供給時において、ピストン22のストローク量が、空気供給量の変化に対するストローク量の変化の割合が高い範囲(第2範囲)にある場合においては、PID制御部63の比例ゲインを給気用第1比例ゲインより小さい給気用第2比例ゲインとし、空気供給量の制御を詳細に行うことができ、オーバーシュートの発生を防止するようにしている。
本実施形態では、制御決定部52は、ピストン22のストローク量と、第1範囲と第2範囲との境界におけるストローク量を示す閾値(ストローク閾値)との比較を行うことにより、空気供給量の変化に対するストローク量の変化の割合が低い範囲と、空気供給量の変化に対するストローク量の変化の割合が高い範囲とのいずれにあるのかを判定するようにしている。ここで、ストローク閾値は、空気供給量の変化に対するストローク量の変化の割合が所定以下となる位置に対応するストローク量としてもよいし、クラッチ動作を実験的に行うことにより検出された、オーバーシュートを発生させることなく、且つ早期にクラッチ動作が完了するような位置に対応するストローク量としてもよい。
次に、第1実施形態に係るクラッチシステム1における処理動作について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係るクラッチ断処理のフローチャートである。
クラッチ断処理は、例えば、車両の電源ON(イグニッションスイッチのキースイッチON)となった場合に開始される。
クラッチ動作判定部51は、図示しない車速センサからの車速、アクセル開度センサからのアクセル開度等に基づいて、変速機による変速を行うためにクラッチ断を開始する必要があるか否かを判定し(ステップS11)、クラッチ断を開始する必要がない場合(ステップS11:NO)には、処理をステップS11に進める。
一方、クラッチ断を開始する必要がある場合(ステップS11:YES)には、クラッチ動作判定部51は、クラッチ断が完了しているか否かを判定する(ステップS12)。
この結果、クラッチ断が完了していない場合(ステップS12:NO)には、クラッチ動作判定部51は、クラッチ断動作を実行させる旨の通知を制御決定部52に通知し、通知を受けた制御決定部52は、制御対象とするバルブ(ここでは、バルブ41)を決定し、フィードバック制御部53に制御対象とするバルブを通知し、ストロークセンサ18からのピストン22のストローク量が所定の閾値(ストローク閾値)を超えているか否かを判定する(ステップS13)。
この結果、ピストン22のストローク量が所定の閾値を超えていない場合(ステップS13:NO)には、制御決定部52は、ストローク量が所定値を超えていない旨をゲイン調整部66に通知し、通知を受けたゲイン調整部66は、PID制御部63の比例ゲインを給気用第1比例ゲインに設定し(ステップS14)、処理をステップS16に進める。
一方、ピストン22のストローク量が所定の閾値を超えている場合(ステップS13:YES)には、制御決定部52は、ストローク量が所定値を超えている旨をゲイン調整部66に通知し、通知を受けたゲイン調整部66は、PID制御部63の比例ゲインを給気用第2比例ゲインに設定し(ステップS15)、処理をステップS16に進める。
ステップS16では、フィードバック制御部53は、制御決定部52から通知されたバルブを制御対象としてフィードバック制御を実行し、制御信号を出力して、バルブ42を駆動させ、処理をステップS12に進める。ここで、フィードバック制御部53のPID制御部63では、ゲイン調整部66により設定された比例ゲインを用いてPID制御を行う。
一方、クラッチ断が完了している場合(ステップS12:YES)には、クラッチ動作判定部51は、クラッチ動作を停止させる旨の通知を制御決定部52に通知し、通知を受けた制御決定部52は、フィードバック制御部53の動作を停止させることにより、給気側の使用しているバルブ(ここでは、バルブ41)を停止させ(ステップS17)、処理をステップS11に進める。
図5は、本発明の第1実施形態に係るクラッチ接処理のフローチャートである。
クラッチ接処理は、例えば、車両の電源ON(イグニッションスイッチのキースイッチON)となった場合に開始される。
クラッチ動作判定部51は、変速機による変速が終了等して、クラッチ接を開始する必要があるか否かを判定し(ステップS21)、クラッチ接を開始する必要がない場合(ステップS21:NO)には、処理をステップS21に進める。
一方、クラッチ接を開始する必要がある場合(ステップS21:YES)には、クラッチ動作判定部51は、クラッチ接が完了しているか否かを判定する(ステップS22)。
この結果、クラッチ接が完了していない場合(ステップS22:NO)には、クラッチ動作判定部51は、クラッチ接動作を実行させる旨の通知を制御決定部52に通知し、通知を受けた制御決定部52は、制御対象とするバルブ(ここでは、バルブ42)を決定し、フィードバック制御部53に制御対象とするバルブを通知する。通知を受けたフィードバック制御部53のゲイン調整部66は、圧力推定部65により推定された圧力室23内の圧力の値(圧力室圧力値)が所定の圧力閾値よりも低いか否かを判定する(ステップS23)。
この結果、圧力室圧力値が所定の圧力閾値よりも低い場合(ステップS23:YES)には、ゲイン調整部66は、PID制御部63の比例ゲインを排気用第1比例ゲインに設定し(ステップS24)、処理をステップS26に進める。
一方、圧力室圧力値が所定の圧力閾値よりも低くない場合(ステップS23:NO)には、ゲイン調整部66は、PID制御部63の比例ゲインを排気用第2比例ゲインに設定し(ステップS25)、処理をステップS26に進める。
ステップS26では、フィードバック制御部53は、制御決定部52から通知されたバルブを制御対象としてフィードバック制御を実行し、制御信号を出力して、バルブ42を駆動させ、処理をステップS22に進める。ここで、フィードバック制御部53のPID制御部63では、ゲイン調整部66により設定された比例ゲインを用いてPID制御を行う。
一方、クラッチ断が完了している場合(ステップS22:YES)には、クラッチ動作判定部51は、クラッチ動作を停止させる旨の通知を制御決定部52に通知し、通知を受けた制御決定部52は、フィードバック制御部53の動作を停止させることにより、排気側の使用しているバルブ(ここでは、バルブ42)を停止させ(ステップS27)、処理をステップS21に進める。
以上説明したように、本実施形態に係るクラッチ制御装置2によると、クラッチアクチュエータ20の圧力室23と空気の排出側との間に配置されたバルブ42を備え、圧力推定部65が圧力室23内の圧力を推定し、圧力室23内の空気排出時に、ゲイン調整部66が圧力推定部65に推定された圧力室23内の圧力がより低くなった場合に、PID制御部63のPID制御における比例ゲインを大きくするようにしたので、圧力室23内の圧力が低下した場合において、バルブ42により排出可能な排出量を増加させることができ、クラッチ装置10の応答性を向上することができる。
次に、第2実施形態に係るクラッチシステムについて説明する。なお、第1実施形態に係るクラッチシステムと同様な部分には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同様である。
図6は、本発明の第2実施形態に係るクラッチ制御装置を備えるクラッチシステムの模式的な構成図である。
第2実施形態に係るクラッチシステムは、第1実施形態に係るクラッチシステムとは、主に、クラッチアクチュエータ70の配置及び構成が異なる。
クラッチアクチュエータ70は、インプットシャフト31を取り囲む位置ではなく、インプットシャフト31から離れた位置に配置されている。クラッチアクチュエータ70は、シリンダ71と、シリンダ71内に収容され、インプットシャフト31の軸方向に移動可能なピストン72と、ピストン72のフライホイール12と反対側の面に接続されたピストンロッド73と、インプットシャフト31の周囲にインプットシャフト31の軸方向に移動可能に配置され、レリーズベアリング12の外輪のフライホイール12と反対側に接続されたベアリング保持部32と、一端がピストンロッド73に連結され、他端がベアリング保持部32のフライホイール12と反対側の面に連結され、所定の支軸34を中心に回動可能なクラッチレバー33と、を備える。
クラッチアクチュエータ70では、ピストン72のフライホイール12側の面と、シリンダ71の内壁とにより圧力室74が形成されるとともに、ピストン72のフライホイール12と反対側の面と、シリンダ71の内壁とにより開放室75が形成されている。
シリンダ71には、圧力室74内に空気(作動流体の一例)を供給するための給気用配管25と、圧力室74内から空気を排出するための排気用配管26とが設けられている。また、シリンダ71には、開放室75を外部(例えば、大気圧となっている外部)と連通させる開放穴71Aが形成されている。
クラッチアクチュエータ70によると、圧力室74内に空気を供給することにより、ピストン72をフライホイール12と反対側に移動可能である。ピストン72がフライホイール12と反対側に移動すると、ピストンロッド73、クラッチレバー33、ベアリング保持部32を介して、レリーズベアリング17がフライホイール12側に移動し、ダイヤフラムスプリング16の内縁部を押圧することとなるので、ダイヤフラムスプリング16の外縁部がプレッシャープレート14を押圧しないようになり、クラッチ装置10が断状態となる。
一方、圧力室74内から空気を排出することにより、ピストン72をフライホイール12側に移動可能である。ピストン72がフライホイール12側に移動すると、ピストンロッド73、クラッチレバー33、ベアリング保持部32を介して、レリーズベアリング17がフライホイール12と反対側に移動し、ダイヤフラムスプリング16の内縁部を押圧しなくなるので、ダイヤフラムスプリング16の外縁部がプレッシャープレート14を押圧するようになり、クラッチ装置10が接状態となる。
この第2実施形態に係るクラッチシステムにおいても、クラッチ制御装置2による制御により、第1実施形態に係るクラッチシステムと同様な効果が得られる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、ゲイン調整部66は、PID制御部63で使用する比例ゲインのみを変更するようにしていたが、本発明はこれに限られず、比例ゲインだけでなく、積分ゲイン又は微分ゲインの少なくとも一方についても変更するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、1つの圧力閾値を基準に2つの比例ゲインの間で変更するようにしていたが、本発明はこれに限られず、複数の圧力閾値を用意し、その圧力閾値との関係で、3以上の比例ゲインの中から変更するようにしてもよく、また、圧力室内の圧力が低くなるほど、比例ゲインを徐々に増加させるように調整してもよい。
また、上記実施形態では、圧力室23内の圧力を推定することにより、圧力室23内の圧力を特定するようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、圧力室23内の圧力を測定する圧力センサを備えるようにし、圧力センサによるセンサ値により圧力を特定するようにしてもよい。また、圧力値を、予め実験等によりクラッチストロークから求められるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、クラッチアクチュエータ20(70)のシリンダ21(71)の圧力室23(74)に、給気することによりクラッチ装置10を断状態とし、排気することによりクラッチ装置10を接状態とするようにクラッチシステムを構成していたが、本発明はこれに限られず、クラッチアクチュエータのシリンダの圧力室に、給気することによりクラッチ装置を接状態とし、排気することによりクラッチ装置を断状態とするようにクラッチシステムを構成してもよい。
また、上記実施形態では、ダイヤフラムスプリングを利用したクラッチ装置を例に説明していたが、本発明はこれに限られず、コイルスプリングを利用したクラッチ装置であってもよい。
また、上記実施形態では、作動流体として空気を用いた例を示していたが、本発明はこれに限られず、作動流体として作動油を用いるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、比例ゲインを変化させるようにしていたが、本発明はこれに限られず、積分ゲイン又は微分ゲインを変化させるようにしてもよい。