JP6811066B2 - リスク評価装置、リスク変化量の評価方法及びプログラム - Google Patents
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Description
以下、本発明の一実施形態によるリスク評価装置を図1〜図8を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態におけるプラントとリスク評価装置の概略図である。
図1に示すリスク評価装置10は、プラント100から、プラント機器の運転データやプラント機器の冗長性、プラント機器の稼働状態などを含むプラント運転情報や、冗長化されたプラント機器に対する待機除外設定情報など、プラントの状態を示すプラント状態情報を取得し、そのプラント状態情報が示すプラントのリスク評価を行う。例えば、リスク評価装置10とプラント100とは通信可能に接続されており、リスク評価装置10は、プラント100からリアルタイムにプラント状態情報を取得する。あるいは、プラントの管理者等が、プラント状態情報をリスク評価装置10に入力してもよい。リスク評価装置10は、これらのプラント状態情報を入力パラメータとし、確率論的安全評価(PSA:Probabilistic Safety Assessment)等の手法によって、プラント状態に対応するリスクを定量化する。
外部からの電力供給が停止した状況で、発電機システム1が稼働せず、プラント100への電力供給が停止・不足等すると、原子炉の炉心損傷リスクが高まる。リスク評価装置10は、発電機システム1のプラント状態情報を入力して、発電機システム1の稼働状態に対する炉心損傷リスク(CDF)を評価する。
図7は、従来のリスク評価方法を示す第一の図である。
図7に発電機システム1の故障を判定する相関モデル(フォルトツリー)を示す。図7の相関モデルは、発電機システム1の故障が、発電機Aの故障と発電機Bの故障との論理積(AND)として表されることを示している。つまり、発電機Aと発電機Bが共に故障している場合に発電機システム1は故障しているとみなされる。また、図中、「DGab」が記載された丸印は、発電機Aの故障と発電機Bの故障が完全相関する事象であることを示している。完全相関とは、発電機Aが故障すると必ず発電機Bも故障することを意味する。図7の相関モデルにおいては、発電機Aの故障と発電機Bの故障とが共に事象「DGab」によって生じるとして設定されている。例えば、発電機Aが故障する場合、事象「DGab」が生じているので、発電機Bも故障する(完全相関)。すると、発電機Aと発電機Bが両方故障することになり、発電機システム1は故障していることになる。つまり、図7の相関モデルを適用してリスク評価を行う場合、一方の発電機(発電機Aまたは発電機B)が故障すると、他方の発電機(発電機Bまたは発電機A)も故障し、その結果、発電機システム1が故障することになる。
次に図7に示す相関モデルを用いて評価されたCDFについて説明する。
図8に図7の相関モデルによって発電機システム1の状態を判定した場合の、地震発生時の発電機システム1の状態変化とCDFとの関係を示す。図8(a)は、従来のリスク評価方法による地震発生時の発電機システム1の状態変化とCDFの関係を示す図である。図8(a)のグラフの縦軸はCDF、横軸は時間経過を示す。後述するように図8(a)のグラフは、図8(b)のグラフと図8(c)のグラフを加算(合計)したものである。図8(a)に示す「DG1台待機除外」とは、地震発生時に1台の発電機(例えば発電機A)が故障やメンテナンスなどによって、稼働可能な状態から除外された状態になることをいう。「DG1台待機除外」の前後を比べると、待機除外後のCDFは、待機除外前のCDFに比べ上昇していることが分かる。待機除外前後のCDFの変化を理解するために、CDFを構成する成分を「地震損傷(地震による損傷)」に関して評価されるCDFと、地震に関係なく生じる「ランダム故障」に関して評価されるCDFとに分解して考える。
図2に示すリスク評価装置10は、例えば、1台または複数台のサーバ端末装置やPC(personal computer)などのコンピュータによって構成される。図2に示すようにリスク評価装置10は、入力部11と、出力部12と、リスク評価部13と、記憶部14とを備える。また、入力部11は、プラント運転情報取得部111と、待機除外設定取得部112とを備え、リスク評価部13は、第一リスク評価部131と、第二リスク評価部132と、第三リスク評価部133と、相関モデル切替部134とを備える。
相関モデル切替部134は、待機除外設定が入力された場合に、冗長機器の故障を判定する相関モデルを、完全相関モデルから相関係数kの値が1より低い他の相関モデルに変更する。
なお、リスク評価部13は、リスク評価装置10が備えるCPU(Central Processing Unit)が記憶部14からプログラムを読み出し実行することで備わる機能である。
次に相関モデル切替部134による相関モデルの切り替え処理の一例について説明する。
図3に、待機除外後のリスク増加量を算出する際の相関モデルの切り替え例を示す。図3の左図は、図7で説明したものと同じ発電機Aと発電機Bの故障が完全相関すると仮定した場合の相関モデルである。本実施形態では、従来のリスク評価方法と同様に、発電機Aと発電機Bとがどちらも稼働可能な状態にある状況で、地震が原因で発電機システム1が故障し、それによって炉心損傷が生じるリスクを評価する場合、発電機Aと発電機Bの故障が完全相関することを示す相関モデルを採用する。発電機Aと発電機Bの故障が完全相関すると仮定しておけば、最大のリスクを想定することになり、より保守的なリスク評価値が得られる。
次にあるタイミングで、発電機Aまたは発電機Bが何らかの要因による故障または計画的保守により待機除外の状態となる。このとき、完全相関の相関モデルを用いて待機除外前後のリスク評価を行うならば、図7、図8を用いて説明したように発電機の冗長性が失われた(または冗長構成の多重度が低下した)ことによる待機除外後のリスク増加量が0となってしまう。
そこで、本実施形態では相関モデル切替部134が、待機除外となる前のタイミングで発電機システム1の故障を判定する相関モデルを、完全相関から完全独立に切り替える処理を行う。
図中、「DGa」が記載された丸印は、発電機Aが地震によって故障した事象を示している。また、「DGb」が記載された丸印は、発電機Bが地震によって故障した事象を示している。つまり、図3右図の相関モデルにおいては、発電機Aの故障は事象「DGa」によって生じ、発電機Bの故障は事象「DGb」によって生じるとして設定されている。従って、図3右図の相関モデルでは、発電機Aの故障と発電機Bの故障が完全に独立しており、地震発生によって発電機Aが故障したとしても、相関関係による共通要因で発電機Bが同時に故障するとは考えない。同様に発電機Bが地震によって故障したとしても、相関関係による共通要因で発電機Aが同時に故障するとは考えない。
相関モデル切替部134は、ユーザが待機除外の設定入力をリスク評価装置10に対して行うと、発電機システム1の故障を判定する相関モデルを、図3の左図に示す完全相関に基づく相関モデルから、図3の右図に示す完全独立に基づく相関モデルへ切り替える。次に切替後の相関モデルを用いたときの待機除外後のリスク増加量の評価方法について説明する。
図4に、図3で例示した相関モデルによって評価した場合の、地震発生時の発電機システム1の状態変化とCDFとの関係を示す。図4のグラフの縦軸はCDF、横軸は時間経過を示す。図中、「Model1」で示すCDFの値は、リスク評価部13が備える第一リスク評価部131が算出したリスク評価値である。第一リスク評価部131は、発電機システム1の地震による故障を、冗長機器の故障が完全相関すると仮定した相関モデルによって評価する。第一リスク評価部131は、地震による発電機システム1の故障の評価値(どの程度故障しやすいか)に基づいて地震によって生じるCDFを算出する。また、発電機システム1のランダム故障による故障の評価値を、2重に冗長化された発電機A、Bについて予め定められた相関係数k1に基づく相関モデルによって評価する。第一リスク評価部131は、ランダム故障による発電機システム1の故障の評価値に基づいて、ランダム故障によって生じるCDFを算出する。第一リスク評価部131は、地震によるCDFとランダム故障によるCDFとを合計して「Model1」で示すCDFの値を算出する。
なお、例えば、記憶部14には、発電機システム1の故障の評価値に基づくCDFを算出に用いる評価モデルが記録されていて、第一リスク評価部131等は、この評価モデルに基づいてCDFを算出する。
図5を用いて、図4の説明を補足する。図5のグラフの縦軸はCDF、横軸は時間経過を示す。図5のCDF(d)は、発電機Aおよび発電機Bの故障が完全相関(相関係数k=1)すると仮定した場合のCDFである。また、CDF(i)は、発電機Aおよび発電機Bの故障が完全独立(相関係数k=0)すると仮定した場合のCDFである。また、CDF(a)は、発電機Aの故障と発電機Bの故障との相関に実際の相関係数(0≦相関係数k≦1)を仮定した場合のCDFである。図5に示すように、待機除外前の状態において、CDF(i)<CDF(a)<CDF(d)が成立する。また、待機除外後のリスク増加量について、ΔCDF2=CDF(d)−CDF(i)、ΔCDF1=CDF(d)−CDF(a)としたとき、ΔCDF2>ΔCDF1が成立する。このことから、本実施形態のように、待機除外前に完全独立と仮定した相関モデルに切り替えてCDFを算出することで、最も大きなリスクを想定した最も保守的なリスク増加量(ΔCDF)を算出できることがわかる。
図6を用いて、図1、図2の構成を例に、図4で例示したCDF及び待機除外後のリスク増加量の算出処理の流れについて説明する。
前提としてリスク評価部13は、地震発生時の発電機システム1の故障に対するCDFを評価する。
まず、プラント運転情報取得部111が、プラント運転情報を取得する(ステップS11)。プラント運転情報には、発電機システム1の冗長度や稼働可能な発電機の台数などの情報が含まれている。プラント運転情報取得部111は、取得したプラント運転情報をリスク評価部13に出力する。次にリスク評価部13が、完全相関に基づくリスク評価値を算出する(ステップS12)。具体的には、プラント運転情報に含まれる発電機Aおよび発電機Bが稼働可能な状態であるという情報に基づいて、リスク評価部13が第一リスク評価部131にリスク評価の指示を行う。第一リスク評価部131は、完全相関することを示す相関モデルに基づいて、待機除外前の地震によるCDFを算出する。また、第一リスク評価部131は、所定の相関係数k1に基づく相関モデルによって、待機除外前のランダム故障によるCDFを算出する。第一リスク評価部131は、地震によるCDFとランダム故障によるCDFを合計して、待機除外前における完全相関に基づくリスク評価値を算出する。第一リスク評価部131は、算出した完全相関に基づくリスク評価値(図4の「Model1」が示すCDFの値)を記憶部14に記録する。
待機除外後のリスク増加量 = (リスク評価値A − リスク評価値B)+
(リスク評価値C − リスク評価値A)
リスク評価部13は、算出した待機除外後のリスク増加量を記憶部14に記録する。
出力部12は、例えば、リスク評価値Cと待機除外後のリスク増加量とを記憶部14から読み出して、ディスプレイ等に表示する。これにより、ユーザ(プラント管理者)は地震発生時のCDFの最大値と待機除外後のリスク増加量とを把握することができる。
また、上記例では、発電機システム1の冗長度(多重度)が2台であったが、冗長システムの冗長度は3台や4台、あるいはそれ以上であってもよい。例えば、発電機システム1が3台の発電機A、発電機B、発電機Cによって構成され、何れか1台の発電機が稼働すれば発電機システム1が稼働しているとみなせる場合、待機除外後の最も保守的なリスク増加量は、完全独立による相関モデルを適用して得られる3台が稼働可能な状態(待機除外前)におけるCDFと、完全相関による相関モデルを適用して得られる待機除外前におけるCDFとの差となる。
10・・・リスク評価装置
11・・・入力部
12・・・出力部
13・・・リスク評価部
14・・・記憶部
111・・・プラント運転情報取得部
112・・・待機除外設定取得部
131・・・第一リスク評価部
132・・・第二リスク評価部
133・・・第三リスク評価部
134・・・相関モデル切替部
A、B・・・発電機
100・・・プラント
Claims (9)
- プラントが備える冗長化された機器群に生じる故障の相関を示す相関モデルについて、前記機器群の故障が完全相関することを示す第1の前記相関モデルに基づいて前記プラントに生じるリスク評価値の算出を行うリスク評価部と、
前記冗長化された機器群のうちの一部が待機除外となった場合の前記待機除外の前後におけるリスク変化量を算出するにあたり、前記待機除外の前に第1の前記相関モデルを、前記相関の度合いがより低い第2の前記相関モデルに切り替える相関モデル切替部と、
を備えるリスク評価装置。 - 前記相関モデル切替部は、前記リスク変化量の算出にあたって、前記待機除外の前に前記機器群の故障が完全独立することを示す第2の前記相関モデルに切り替える、
請求項1に記載のリスク評価装置。 - 前記リスク評価部は、前記待機除外の前後におけるリスク変化量を、前記機器群の故障が完全相関することを示す第1の前記相関モデルに基づくリスク評価値と、前記待機除外の前に前記相関モデル切替部が切り替えた第2の前記相関モデルに基づくリスク評価値との差によって算出する、
請求項1または請求項2に記載のリスク評価装置。 - 前記リスク評価部は、所定の要因の発生によって生じる前記機器群における故障の相関が不明な場合に、第1の前記相関モデルとして前記完全相関することを示す相関モデルを用いてリスク評価を行う、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のリスク評価装置。 - 前記所定の要因は地震である、
請求項4に記載のリスク評価装置。 - 前記リスク評価部は、所定の要因の発生時のリスクを算出するにあたり、前記待機除外前について、前記完全相関することを示す第1の前記相関モデルに基づく第一リスク評価値を算出し、前記待機除外後について、前記完全相関することを示す第3の前記相関モデルに基づく第二リスク評価値を算出し、
さらに、前記所定の要因の発生時に、前記所定の要因の発生とは関係なく生じる前記機器群における故障について、前記待機除外前における第三リスク評価値と、前記待機除外後における第四リスク評価値とをそれぞれ算出し、
前記所定の要因の発生時における前記待機除外前の前記プラントに生じるリスクについて、前記第一リスク評価値と前記第三リスク評価値とを合計して算出し、前記所定の要因の発生時における前記待機除外後の前記プラントに生じるリスクについて、前記第二リスク評価値と前記第四リスク評価値を合計して算出する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のリスク評価装置。 - 前記リスク評価部は、前記待機除外前における第2の前記相関モデルに基づく第五リスク評価値をさらに算出し、
前記所定の要因の発生時における前記待機除外後のリスクの増加量を、前記第一リスク評価値から前記第五リスク評価値を減じた値と、前記第二リスク評価値と前記第四リスク評価値を合計した値から前記第一リスク評価値と前記第三リスク評価値を合計した値を減じた値と、の合計によって算出する、
請求項6に記載のリスク評価装置。 - プラントが備える冗長化された機器群に生じる故障の相関を示す相関モデルについて、前記機器群の故障が完全相関することを示す第1の前記相関モデルに基づいて前記プラントに生じるリスク評価値の算出を行うリスク評価装置が、前記冗長化された機器群のうちの一部が待機除外となった場合の前記待機除外の前後におけるリスク変化量を算出するにあたり、前記待機除外の前に第1の前記相関モデルを前記相関の度合いがより低い第2の前記相関モデルに切り替える、
リスク変化量の評価方法。 - リスク評価装置のコンピュータを、
プラントが備える冗長化された機器群に生じる故障の相関を示す相関モデルについて、前記機器群の故障が完全相関することを示す第1の前記相関モデルに基づいて前記プラントに生じるリスク評価値の算出を行う手段、
前記冗長化された機器群のうちの一部が待機除外となった場合の前記待機除外の前後におけるリスク変化量を算出するにあたり、前記待機除外の前に第1の前記相関モデルを前記相関の度合いがより低い第2の前記相関モデルに切り替える手段、
として機能させるためのプログラム。
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