JP6809576B2 - アレーアンテナ - Google Patents

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Description

本発明は、複数の給電素子と、給電素子に装荷された複数の無給電素子とを有するアレーアンテナに関する。
一般的なパッチアンテナは、基板に構成するのに便利であり、かつ高利得が得られるというメリットを有する。ところが、パッチアンテナの帯域幅は狭く、広帯域化に適していない。パッチアンテナの給電素子に無給電素子(寄生素子)を装荷して複共振を生じさせることにより、広帯域化を図ることが可能である。
下記の特許文献1にスロットアンテナが開示されている。両面プリント基板の一方の面に設けられたグランド板に複数のスリットが設けられている。他方の面に、マイクロストリップラインが配置されている。複数のスリットのうち所望のスリットが給電スリットとなり、残余のスリットが無給電スリットとなる。この両面プリント基板からある間隔を隔てて導体板が配置されている。給電スリットから放射された放射電波と、導体板で反射された反射波とが、給電スリットの位置で増強される。さらに、反射波は、無給電スリットの位置で共振し、再放射される。無給電スリットは、アンテナの高利得化に寄与している。
下記の特許文献2に、給電素子と、その両側に配置された2つの無給電素子とを含むパッチアンテナが開示されている。この無給電素子に伝送線路が接続されている。伝送線路の途中に高周波スイッチが設けられており、高周波スイッチのオン状態及びオフ状態の一方の状態において、無給電素子が導波器として作用する。これにより、放射パターンを容易に制御することができる。
下記の特許文献3に、広角アンテナを一列に並べたアレーアンテナが開示されている。広角アンテナの各々は、給電素子と、給電素子の励振方向と直交する方向に配置された無給電素子とを有する。広角アンテナの配列方向は、給電素子の励振方向と平行である。すなわち、給電素子が並んでいる列の両側に、無給電素子が配置されている。
特開2002−330024号公報 特開2008−48109号公報 特開2013−168875号公報
基板面内において給電素子の両側に無給電素子を配置したパッチアンテナをアレー状に配置することによりアレーアンテナが実現される。給電素子と無給電素子とが並ぶ方向にパッチアンテナを配列する場合、隣り合うパッチアンテナの給電素子の間に2つのパッチアンテナの各々の無給電素子が配置される。このため、給電素子同士を近づけることが困難であり、アレーサイズが大きくなってしまう。さらに、パッチアンテナの配列の周期が長くなってしまうため、位相制御によるビーム走査角が小さくなってしまう。
特許文献1に開示されたスロットアンテナでは、反射板として動作する導体板を、スロットが配置されるグランド板から間隔を隔てて配置しなければならない。このため、このスロットアンテナはアンテナの薄型化には適さない。また、無給電スリットがアンテナの高利得化に寄与しているが、アンテナの動作帯域幅を広くしているわけではないため、十分な広帯域化が図れているとはいえない。
特許文献2に開示されたパッチアンテナでは、高周波スイッチのオンオフにより放射パターンを制御することができる。ところが、このパッチアンテナでは、フェーズドアレーアンテナとは異なり、複数の給電素子に与える信号に位相差を設けることによるビームフォーミングを行うことができない。
特許文献3に開示されたアレーアンテナでは、1つの給電素子に対して2つの無給電素子が装荷される。このため、アレーアンテナを構成する単位素子の個数の3倍の導体パターンを配置しなければならない。このため、アレーアンテナの面積の小型化を図ることが困難である。
本発明の目的は、小型化に適し、かつビーム走査角を大きくすることが可能なアレーアンテナを提供することである。
本発明の一観点によるアレーアンテナは、
基板に配置され、前記基板の面内の第1の方向に並ぶ複数の給電素子と、
前記複数の給電素子の各々を前記第1の方向に挟むように配置され、前記複数の給電素子に装荷された複数の無給電素子と
を有し、
前記第1の方向に並ぶ前記給電素子の間には、1つの前記無給電素子が配置されており、前記無給電素子の各々は前記第1の方向に隣り合う2つの前記給電素子で共用されており、
前記給電素子と前記無給電素子とは複共振し、
さらに、前記第1の方向に隣り合う2つの給電素子に、位相差を持つ高周波信号を与え
る構成を有する。
1つの無給電素子が2つの給電素子で共用されるため、給電素子及び無給電素子の合計の個数を少なくすることができる。これにより、アレーアンテナの小型化を図ることができる。給電素子の間に1つの無給電素子を配置すればよいため、2つの給電素子の間に、給電素子にそれぞれ装荷された2つの無給電素子を配置する構成と比べて、給電素子の間隔を狭めることができる。その結果、フェーズドアレーアンテナとして動作させる場合に、ビーム走査角を大きくすることができる。
図1は、実施例によるアレーアンテナの平面図である。 図2A及び図2Bは、それぞれ図1の一点鎖線2A−2A、及び一点鎖線2B−2Bにおける断面図である。 図3は、シミュレーション対象の参考例1によるパッチアンテナの平面図である。 図4Aは、シミュレーションで用いられる極角の符号の定義を説明するための座標系を示す斜視図であり、図4B及び図4Cは、それぞれ参考例1によるパッチアンテナのリターンロス及び放射パターンのシミュレーション結果を示すグラフである。 図5は、シミュレーション対象の参考例2によるパッチアンテナの平面図である。 図6Aは、シミュレーションで用いられる極角の符号の定義を説明するための座標系を示す斜視図であり、図6B及び図6Cは、それぞれ参考例2によるパッチアンテナのリターンロス及び放射パターンのシミュレーション結果を示すグラフである。 図7は、シミュレーション対象の参考例3によるパッチアンテナの平面図である。 図8Aは、シミュレーションで用いられる極角の符号の定義を説明するための座標系を示す斜視図であり、図8B及び図8Cは、それぞれ参考例3によるパッチアンテナのリターンロス及び放射パターンのシミュレーション結果を示すグラフである。 図9は、シミュレーション対象の実施例によるパッチアンテナの平面図である。 図10Aは、シミュレーションで用いられる極角の符号の定義を説明するための座標系を示す斜視図であり、図10B及び図10Cは、それぞれ実施例によるパッチアンテナのリターンロス及び放射パターンのシミュレーション結果を示すグラフである。 図11Aから図11Dは、給電素子及び無給電素子に発生する電流の分布のシミュレーション結果を示す図である。 図12は、他の実施例によるアレーアンテナの平面図である。
図1、図2A及び図2Bを参照して、実施例によるアレーアンテナの構造について説明する。
図1に、実施例によるアレーアンテナの平面図を示す。基板10に、複数の給電素子11が配置されている。図1では、給電素子11の個数を4個の例を示しているが、給電素子11の個数は、2個または3個でもよいし、5個以上でもよい。複数の給電素子11は、基板10の面内の第1の方向に並んでいる。第1の方向をx方向、基板10の法線方向をz方向とするxyz直交座標系を定義する。
複数の給電素子11の各々に対して2つの無給電素子12が装荷されている。この2つの無給電素子12は、装荷対象の給電素子11をx方向に挟むように配置されている。給電素子11及び無給電素子12の各々は、1つの導体パターンで構成される。x方向に並ぶ複数の給電素子11の間には、1つの無給電素子12が配置されている。この無給電素子12は、x方向に隣り合う2つの給電素子11で共用されている。言い換えると、無給電素子12の各々は、x方向の正の側の給電素子11と、x方向の負の側の給電素子11との双方に装荷される。
1つの給電素子11と、そのx方向の正の側及び負の側に配置された2つの無給電素子12とを、単体のパッチアンテナと考えることができる。複数のパッチアンテナがx方向に並び、無給電素子12が2つのパッチアンテナで共用されていると考えられる。
複数の給電素子11の各々に対応して給電線13が配置されている。給電線13は、給電点14において、対応する給電素子11に接続されている。給電線13は、給電点14からy軸の負の方向に延びている。給電線13を通して給電素子11に給電が行われる。図1に示した例では、給電点14は、給電素子11の中心からy方向にずれた位置に配置されている。この構成においては、給電素子11はy方向に励振される。
図2A及び図2Bに、それぞれ図1の一点鎖線2A−2A、及び一点鎖線2B−2Bにおける断面図を示す。誘電体からなる基板10の表面及び内部に、4層の導体層が配置されている。最も下の導体層L1は、基板10の底面に配置され、最も上の導体層L4は、基板10の上面に配置され、下から2層目の導体層L2及び3層目の導体層L3は、基板10の内部に配置されている。
最も下の導体層L1に、グランド導体21が配置されている。2層目の導体層L2に給電線13が配置されている。y方向に延びる給電線13の両側(x方向の正の側及び負の側)に、グランド導体22が配置されている。
3層目の導体層L3に、グランド導体23が配置されている。給電線13の先端と給電素子11の給電点14とが、層間接続導体24で接続されている。層間接続導体24は、グランド導体23に設けられた開口25を通過することにより、グランド導体23から絶縁されている。導体層L2とL3との間に配置された導体ポスト、導体層L3に配置されたランド、及び導体層L3とL4との間に配置された導体ポストによって、層間接続導体24が構成される。
平面視において、給電線13が導体壁26で囲まれている。導体壁26は、導体層L1とL2との間に配置された複数の導体ポスト、及び導体層L2とL3との間に配置された複数の導体ポストにより構成される。導体壁26は、複数の給電線13の相互干渉を防止する。最も下のグランド導体21と給電線13とにより、特性インピーダンス50Ωのマイクロストリップラインが形成される。3層目のグランド導体23は、給電線13と給電素子11との間の電磁気的結合を低減させる。
次に、実施例によるアレーアンテナを60GHz帯で動作させる場合の各部の寸法及び材料の一例について説明する。各導体層L1、L2、L3、L4に配置される導体部分には銅が用いられる。基板10には、例えば比誘電率が3.5程度のセラミックが用いられる。
各導体層L1、L2、L3、L4に配置される導体部分の厚さは、約0.015mmである。最も下の導体層L1と2層目の導体層L2との間の誘電体層の厚さは0.06mmである。2層目の導体層L2と3層目の導体層L3との間の誘電体層の厚さは0.12mmである。3層目の導体層L3と最も上の導体層L4との間の誘電体層の厚さは0.15mmである。給電線13とグランド導体22との間隔、及び給電線13の幅は、共に0.05mmである。
給電素子11及び無給電素子12の平面的な寸法及び相対位置は、複数の給電素子11の各々と、当該給電素子11の両側の無給電素子12とが複共振することによって、動作帯域幅が、給電素子11単体の動作帯域幅よりも広帯域化されるように設計されている。
次に、上記実施例によるアレーアンテナの優れた効果について説明する。実施例においては、各給電素子11に無給電素子12が装荷されており、給電素子11と無給電素子12とで複共振を生じさせることにより、広帯域化を図ることができる。1つの無給電素子12が2つの給電素子11で共用されているため、無給電素子12の個数を削減することができる。その結果、アレーアンテナの小型化を図ることが可能になる。
無給電素子12を2つの給電素子11で共用しない場合には、2つの給電素子11の間に、一方の給電素子11に装荷する無給電素子12と、他方の給電素子11に装荷する無給電素子12とを別々に配置しなければならない。給電素子11の間に2つの無給電素子12が配置されるため、アレーアンテナの端から端までの長さが長くなってしまう。これに対し、実施例の構成を採用すると、アレーアンテナの長さを短くすることが可能である。
さらに、実施例においては、複数の給電素子11の間隔を狭くすることができる。素子間隔が狭くなると、アレーアンテナをフェーズドアレーアンテナとして動作させる場合、ビーム走査角を大きくすることができる。
上記実施例によるアレーアンテナの優れた特性を確認するために、種々の参考例によるアンテナ、及び実施例によるアレーアンテナについてアンテナ特性のシミュレーションを行った。図3から図10Cまでの図面を参照して、このシミュレーション結果について説明する。シミュレーション対象となる参考例及び実施例によるアンテナの層構造は、図2A及び図2Bに示した実施例によるアレーアンテナの層構造と同一である。
図3に、参考例1によるパッチアンテナの平面図を示す。基板10の表面に1つの給電素子11が配置されている。給電素子11に無給電素子は装荷されていない。図3では、最も上の導体層L4(図2A、図2B)と、給電線13のみを示しているが、基板10内にグランド導体21、22、23、導体壁26(図2A、図2B)が配置されている。
給電素子11及び基板10の平面形状は正方形であり、正方形の1つの辺がx方向と平行である。給電素子11のx方向の寸法Px及びy方向の寸法Pyはともに1.21mmである。基板10の平面形状も正方形であり、給電素子11の縁から基板10の縁までの距離gは0.46mmである。給電点14が、給電素子11の中心からy軸の負の方向にずれた位置に配置されている。給電線13が、給電点14からy軸の負の方向に引き出されている。給電素子11のy軸の負側の縁から給電点14までの距離qは0.46mmである。これらの寸法は、共振周波数が60GHzになるように決められている。
図4Aに、シミュレーションで用いられる座標系を示す。基板10の法線方向がz方向に対応し、法線方向からx軸の正の向き及びy軸の正の向きに倒れた方向の極角Φを正と定義し、x軸の負の向き及びy軸の負の向きに倒れた方向の極角Φを負と定義する。
図4Bに、参考例1によるパッチアンテナのリターンロスのシミュレーション結果を示す。横軸は周波数を単位「GHz」で表し、縦軸はリターンロスS11を単位「dB」で表す。リターンロスS11が−10dB以下となる帯域幅は約2.22GHzである。中心周波数が60GHzであるため、比帯域幅は3.7%である。
図4Cに、放射パターンのシミュレーション結果を示す。横軸は極角Φを単位「度」で表し、縦軸はゲインを単位「dBi」で表す。図4Cの実線は、法線方向からy軸の正及び負の向きに倒れた方向のゲインを示し、破線は、法線方向からx軸の正及び負の向きに倒れた方向のゲインを示す。パッチアンテナの正面方向(基板10の法線方向)に対して5dBi以上のゲインが得られている。
図5に、参考例2によるパッチアンテナの平面図を示す。以下、図3に示した参考例1との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。給電素子11のx方向の正の側及び負の側に、それぞれ無給電素子12が配置されている。給電素子11、無給電素子12、及び基板10の平面形状は、1つの辺がx方向と平行な長方形である。
給電素子11のx方向の寸法Pxは1.05mmであり、y方向の寸法Pyは1.25mmである。無給電素子12の各々のx方向の寸法PWは0.8mmであり、y方向の寸法PLは1.2mmである。給電素子11と無給電素子12との間隔Sは0.2mmである。給電素子11のy軸の負側の縁から給電点14までの距離qは0.37mmである。給電素子11のx方向に平行な縁から基板10の縁までの距離g、及び無給電素子12のy方向に平行な縁から基板10の縁までの距離gは2.0mmである。これらの寸法は、共振周波数が60GHzになるように決められている。
図6Aに、シミュレーションで用いられる座標系を示す。極角Φの符号の定義は、図4Aに示した参考例1の場合と同様である。
図6Bに、参考例2によるパッチアンテナのリターンロスのシミュレーション結果を示す。横軸は周波数を単位「GHz」で表し、縦軸はリターンロスS11を単位「dB」で表す。リターンロスS11が−10dB以下となる帯域幅は約6.48GHzである。中心周波数が60GHzであるため、比帯域幅は10.8%である。図4Bに示した参考例1のパッチアンテナと比べて、広帯域化が実現されていることが分かる。広帯域化は、給電素子11と無給電素子12との複共振現象によって実現されている。
図6Cに、放射パターンのシミュレーション結果を示す。横軸は極角Φを単位「度」で表し、縦軸はゲインを単位「dBi」で表す。図6Cの実線は、法線方向からy軸の正及び負の向きに倒れた方向のゲインを示し、破線は、法線方向からx軸の正及び負の向きに倒れた方向のゲインを示す。パッチアンテナの正面方向(基板10の法線方向)に対して5dBi以上のゲインが得られている。
図7に、参考例3によるパッチアンテナアレーの平面図を示す。以下、図5に示した参考例2との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。参考例3では、単体のパッチアンテナ30がx方向に3個並んでいる。各パッチアンテナ30は、図5に示した参考例2によるパッチアンテナと同一の構成を有し、一部の寸法のみが異なる。
給電素子11のx方向の寸法Px、y方向の寸法Py、給電素子11と無給電素子12との間隔Sは、図5に示した参考例2のパッチアンテナと同一である。給電素子11のy軸の負側の縁から給電点14までの距離qは0.4mmである。無給電素子12の各々のx方向の寸法PWは0.70mmであり、y方向の寸法PLは1.18mmである。隣り合う2つの無給電素子12の間隔S2は0.45mmである。
図8Aに、シミュレーションで用いられる座標系を示す。基板の法線方向からx軸の正の向きに倒れた方向の極角Φの符号を正と定義し、負の向きに倒れた方向の極角Φを負と定義する。
図8Bに、参考例3によるパッチアンテナアレーのリターンロスのシミュレーション結果を示す。横軸は周波数を単位「GHz」で表し、縦軸はリターンロスS11を単位「dB」で表す。リターンロスS11が−10dB以下となる帯域幅は約6.42GHzである。中心周波数が60GHzであるため、比帯域幅は10.7%である。図6Bに示した参考例2のパッチアンテナと同等の広帯域化が実現されていることが分かる。
図8Cに、放射パターンのシミュレーション結果を示す。横軸は極角Φを単位「度」で表し、縦軸はゲインを単位「dBi」で表す。シミュレーションにおいては、中心の給電素子11に与える高周波信号の位相θを基準として、x軸の正の側に配置された給電素子11に与える高周波信号の位相をΔθだけ早め、x軸の負の側に配置された給電素子11に与える高周波信号の位相をΔθだけ遅らせた。図8Cに示した複数の曲線は、それぞれ位相差Δθが0°、30°、60°、90°、及び120°の場合のゲインを示す。高周波信号の位相差を120°にしたときのメインビームの振れ角が約26°である。
図9に、実施例によるパッチアンテナアレーの平面図を示す。以下、図7に示した参考例3との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。実施例においても、単体のパッチアンテナ30がx方向に3個並んでいる。実施例においては、無給電素子12が2つのパッチアンテナ30で共有されている。
給電素子11のx方向の寸法Pxは0.9mmであり、y方向の寸法Pyは1.26mmである。無給電素子12の各々のx方向の寸法PWは0.87mmであり、y方向の寸法PLは1.21mmである。給電素子11と無給電素子12との間隔Sは0.27mmである。給電素子11のy軸の負側の縁から給電点14までの距離qは0.44mmである。これらの寸法は、共振周波数が60GHzになるように決められている。
図10Aに、シミュレーションで用いられる座標系を示す。極角Φの符号の定義は、図8Aに示した参考例3の場合と同一である。
図10Bに、実施例によるパッチアンテナアレーのリターンロスのシミュレーション結果を示す。横軸は周波数を単位「GHz」で表し、縦軸はリターンロスS11を単位「dB」で表す。リターンロスS11が−10dB以下となる帯域幅は約6.72GHzである。中心周波数が60GHzであるため、比帯域幅は11.2%である。図8Bに示した参考例3のパッチアンテナと同等の広帯域化が実現されていることが分かる。
図10Cに、放射パターンのシミュレーション結果を示す。横軸は極角Φを単位「度」で表し、縦軸はゲインを単位「dBi」で表す。3つの給電素子11に与える高周波信号の位相関係は、図8Cに示したシミュレーション結果と同一である。図10Cに示した各曲線は、それぞれ位相差Δθが0°、30°、60°、90°、及び120°の場合のゲインを示す。高周波信号の位相差を120°にしたときのメインビームの振れ角が約32°である。
図8Cと図10Cとを比較すると、実施例によるアレーアンテナにおけるメインビームの振れ角の方が、参考例3によるアレーアンテナにおけるメインビームの振れ角より大きいことがわかる。これは、給電素子11の間隔を狭めたことにより得られる効果である。
さらに、参考例3によるアレーアンテナ(図7)のx方向の端から端までの寸法は9.45mmである。これに対し、実施例によるアレーアンテナ(図9)のx方向の端から端までの寸法は7.8mmである。このように、実施例の構成を採用することにより、アレーアンテナの小型化が実現されている。
次に、図11Aから図11Dまでの図面を参照して、実施例によるアレーアンテナの無給電素子12(図1)が、隣り合う2つの給電素子11によって共有されていると考えられる根拠について説明する。
図11Aから図11Dまでの図面は、給電素子11及び無給電素子12に発生する電流の分布のシミュレーション結果を示す。シミュレーション対象としたアレーアンテナは、図9に示したアレーアンテナと同一の構成を有する。図の濃淡は電流の大きさを表し、色の淡い領域ほど、より大きな電流が流れていることを示している。
図11Aは、中央の給電素子11のみに高周波信号を与えた場合の電流分布を示す。図11Bは、左側の給電素子11のみに高周波信号を与えた場合の電流分布を示す。図11Cは、左側及び中央の給電素子11に同位相の高周波信号を与えた場合の電流分布を示す。図11Dは、左側及び中央の給電素子11に90°の位相差で高周波信号を与えた場合の電流分布を示す。より具体的には、左側の給電素子11に与える高周波信号の位相が、中央の給電素子11に与える高周波信号の位相より90°遅れている。
中央の給電素子11に高周波信号を与えた場合(図11A)には、左側の給電素子11と中央の給電素子11との間の無給電素子12(以下、「着目する無給電素子12」という。)に発生する電流の強度が、中央の給電素子11に発生する電流の強度の約90%である。左側の給電素子11に高周波信号を与えた場合(図11B)には、着目する無給電素子12に発生する電流の強度が、左側の給電素子11に発生する電流の強度の約70%である。
中央の給電素子11に高周波信号を与えた場合と、左側の給電素子11に高周波信号を与えた場合とのいずれにおいても、着目する無給電素子12が励振されていることが確認された。すなわち、着目する無給電素子12は、中央の給電素子11に装荷されているとともに、左側の給電素子11にも装荷されているということができる。
中央の給電素子11と左側の給電素子11との両方に同位相の高周波信号を与えた場合(図11C)には、1つの給電素子11のみに高周波信号を与えた場合(図11A、図11B)よりも、着目する無給電素子12に、より大きな電流が発生する。これらのシミュレーション結果から、着目する無給電素子12は、中央の給電素子11と左側の給電素子11とで共用されていることが確認された。
中央の給電素子11と左側の給電素子11との両方に与える高周波信号に位相差をつけた場合(図11D)には、同位相の高周波信号を与えた場合(図11C)と比べて、着目する無給電素子12に発生する電流強度が低下することがわかる。これは、中央の給電素子11により無給電素子12に発生する電流と、左側の給電素子11により無給電素子12に発生する電流とが打ち消し合うためである。このように、2つの給電素子11で共用される無給電素子12は、2つの給電素子11に位相差を持つ高周波信号を与えた場合にも、それぞれの給電素子11に装荷された無給電素子12として動作することがわかる。
次に、図12を参照して、他の実施例によるアレーアンテナについて説明する。以下、図1、図2A、及び図2Bに示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
図12に、本実施例によるアレーアンテナの平面図を示す。複数の給電素子11が、x方向のみならずy方向にも並んでおり、全体として行列状に配置されている。x方向に並ぶ給電素子11の間のみならず、y方向に並ぶ給電素子11の間にも、1つの無給電素子12が配置されている。無給電素子12の各々は、y方向に隣り合う2つの給電素子11で共用されている。
給電素子11の各々に、2つの給電点14A及び14Bが設けられている。一方の給電点14Aは、給電素子11の中心からy方向にずれた位置に配置され、他方の給電点14Bは、給電素子11の中心からx方向にずれた位置に配置されている。2つの給電点14A、14Bに与える高周波信号の位相を調整することにより、放射される電波の偏波状態を変えることができる。
図12に示した実施例においても、図1、図2A及び図2Bに示した実施例と同様に、アレーアンテナの小型化を図ることが可能である。小型化の効果は、x方向及びy方向の2方向で現れる。さらに、フェーズドアレーアンテナとして動作させることにより、メインビームをx方向及びy方向に振り、かつ振り角を大きくすることができる。
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
10 基板
11 給電素子
12 無給電素子
13 給電線
14、14A、14B 給電点
21、22、23 グランド導体
24 層間接続導体
25 開口
26 導体壁
30 パッチアンテナ
L1、L2、L3、L4 導体層

Claims (1)

  1. 基板に配置され、前記基板の面内の第1の方向に並ぶ複数の給電素子と、
    前記複数の給電素子の各々を前記第1の方向に挟むように配置され、前記複数の給電素子に装荷された複数の無給電素子と
    を有し、
    前記第1の方向に並ぶ前記給電素子の間には、1つの前記無給電素子が配置されており、前記無給電素子の各々は前記第1の方向に隣り合う2つの前記給電素子で共用されており、
    前記給電素子と前記無給電素子とは複共振し、
    さらに、前記第1の方向に隣り合う2つの給電素子に、位相差を持つ高周波信号を与え
    る構成を有するアレーアンテナ。
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