JP6809400B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1の方法では、石英坩堝における底部の肉厚に対し、シリコン融液の対流との接触部分である開口部の肉厚を厚くして、当該接触部分の内壁の温度をシリコン融液の再結晶温度よりも高く、かつ、接触部分以外の温度よりも低くする。これにより、石英坩堝内壁からの対流によるシリコン融液への酸素の溶け込み抑制し、シリコン単結晶の酸素濃度を低くしている。
しかしながら、育成条件を同じにしても、シリコン単結晶の酸素濃度が狙い値から大きく外れてしまうことがあり、酸素濃度の狙い値からの乖離を抑制するために育成条件の大幅な調整が必要であった。
これらのことから、石英坩堝から溶出する酸素が対流によってシリコン単結晶の固液界面に運ばれたときに、対流の発生状態の差異によって、単位時間当たりに固液界面に運ばれる酸素量が異なってしまい、その結果、同じ育成条件でシリコン単結晶を育成しても、酸素濃度の狙い値からの乖離が大きくなってしまう場合があると考えられる。
ホットゾーンの条件が異なると、全く同じ形状の石英坩堝を用いてほぼ同じ育成条件でシリコン単結晶を育成しても、シリコン融液の加熱状態が異なってしまうため、シリコン融液における対流の発生状態も異なってしまう。
なお、「ほぼ同じ育成条件」とは、育成条件が許容範囲内で異なっていることを意味し、例えば、シリコン単結晶育成時におけるヒータの温度プロファイル、坩堝22の回転速度、チャンバ内の圧力、チャンバ内のアルゴンガスなどの不活性ガス流量が、基準値に対して±10%の範囲内で異なることを言う。
本発明によれば、所定の引き上げ装置に対して適切な内径を有する石英坩堝が選定されるため、この選定された複数の石英坩堝を用いたシリコン単結晶の育成に際し、同じ育成条件を適用した場合、各石英坩堝における側部からの酸素の溶出量をほぼ同じにすることができる。その結果、複数の石英坩堝で育成されたシリコン単結晶における酸素濃度の狙い値からの乖離を、容易に抑制できる。
また、ほぼ同じ育成条件を用いた場合に、側部からの酸素の溶出量が所定量になるようなホットゾーンを有する引き上げ装置を、複数の引き上げ装置の中から選定することで、複数の引き上げ装置間での育成条件を大幅に変更することなく、シリコン単結晶における酸素濃度の狙い値からの乖離を最小限に抑制できる。
本発明によれば、所定の引き上げ装置に対して適切なR部の肉厚を有する石英坩堝が選定されるため、複数の石英坩堝を用いた育成に際し、同じ育成条件を適用した場合、各石英坩堝における側部からの酸素の溶出量をほぼ同じにすることができ、複数の石英坩堝で育成されたシリコン単結晶における酸素濃度の狙い値からの乖離を、容易に抑制できる。
また、ほぼ同じ育成条件を用いた場合に、R部からの酸素の溶出量が所定量になるようなホットゾーンを有する引き上げ装置を、複数の引き上げ装置の中から選定することで、複数の引き上げ装置間での育成条件を大幅に変更することなく、シリコン単結晶における酸素濃度の狙い値からの乖離を最小限に抑制できる。
本発明によれば、R部における複数箇所の肉厚のばらつきに基づいて、所定の引き上げ装置に配置する石英坩堝を選定するため、この選定された複数の石英坩堝を用いたシリコン単結晶の育成に際し、同じ育成条件を適用した場合、各石英坩堝におけるシリコン融液の対流の発生状態をほぼ同じにすることができる。その結果、複数の石英坩堝で育成されたシリコン単結晶における酸素濃度の狙い値からの乖離を、容易に抑制できる。
また、ほぼ同じ育成条件を用いた場合に、対流が所定の発生状態になるようなホットゾーンを有する引き上げ装置を、複数の引き上げ装置の中から選定することで、複数の引き上げ装置間での育成条件を大幅に変更することなく、シリコン単結晶における酸素濃度の狙い値からの乖離を最小限に抑制できる。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
〔単結晶引き上げ装置の構成〕
図1に示すように、単結晶引き上げ装置(引き上げ装置)1は、CZ法(チョクラルスキー法)に用いられる装置であって、チャンバ21と、このチャンバ21内に配置された坩堝22と、この坩堝22を加熱するヒータ23と、引き上げ部24と、熱遮蔽体25と、断熱材26を備えている。なお、二点鎖線で示すように、一対の電磁コイル28をチャンバ21の外側において坩堝22を挟んで対向するように配置してもよい。
引き上げ部24は、一端に種結晶SCが取り付けられる引き上げケーブル241と、この引き上げケーブル241を昇降および回転させる引き上げ駆動部242とを備えている。
熱遮蔽体25は、シリコン単結晶SMを囲むように設けられ、ヒータ23から上方に向かって放射される輻射熱を遮断する。
なお、本実施形態におけるホットゾーンは、チャンバ21、坩堝22、ヒータ23、引き上げケーブル241、熱遮蔽体25、断熱材26、支持軸27、シリコン融液M、シリコン単結晶SMなどである。
次に、石英坩堝221の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、石英坩堝221は、円筒状の側部221Aと、当該側部221Aの下端に連続する曲面状の底部221Bとを備えている。底部221Bの縦断面視における水平方向両端に位置する曲面状の部分は、R部221Cを構成している。
次に、本発明のシリコン単結晶の製造方法として、複数の引き上げ装置を用いたシリコン単結晶の製造方法について説明する。
複数の引き上げ装置1は、同じ型式の場合、通常、同じ仕様に基づき製造されるが、ホットゾーンの構成部材の形状や配置の公差、使用期間の長さなどによって、全く同じ形状の石英坩堝221を用いてほぼ同じ育成条件でシリコン単結晶SMを育成しても、シリコン融液Mの加熱状態が異なってしまう場合がある。シリコン融液Mの加熱状態が異なると、シリコン融液M内の対流の発生状態や、当該シリコン融液Mに溶け込む酸素量が異なってしまい、その結果、各引き上げ装置1で育成されたシリコン単結晶SM間の酸素濃度が大きくばらついてしまう。
そこで、まず、各引き上げ装置1のホットゾーンに応じた適切な重量、側部221Aの内径D(図2参照)、R部221Cの肉厚TR(図2参照)、R部221Cの肉厚TRのばらつきを有する石英坩堝221を選定する。
後述するステップS2〜S4の処理において、さらに異なる条件で選定が行われることから、当該ステップS1の処理では、各区分に対して複数の石英坩堝221を選定することが好ましい。
なお、ステップS1〜S4で用いる重量、内径D、肉厚TR、肉厚TRのばらつきは、引き上げ装置1の作業者が測定してもよいし、石英坩堝221の製造者が測定してもよい。
石英坩堝221の肉厚TRの測定方法としては、例えば、レーザ変位計を用い、非接触にて石英坩堝221の外周面における任意の点と、当該任意の点の反対側に位置する内周面上の点とを測定して算出する方法が例示できる。
また、上述の重量範囲、内径範囲、肉厚範囲、ばらつき範囲は、予め準備した複数の石英坩堝221の重量、内径D、肉厚TR、肉厚TRのばらつきの平均値に基づいて設定してもよいし、平均値とは関係ない所定の値に基づいて設定してもよい。
そして、各引き上げ装置1において、育成条件をほぼ同じにしてシリコン単結晶SMの育成を行う(ステップS6:育成工程)。ステップS6においてほぼ同じにする育成条件としては、シリコン単結晶SMの酸素濃度を所定の狙い値にするための条件であって、シリコン単結晶SMの引き上げ速度や回転速度、石英坩堝221の上昇速度や回転速度、ヒータ23の設定パワー、チャンバ21の雰囲気、シリコン融液Mの量などが例示できる。
その後、1本のシリコン単結晶SMを育成するごとに、石英坩堝221を各区分に対応するものに交換して、育成条件を変更せずに従前と同じ育成条件でシリコン単結晶SMを育成する。
上記実施形態によれば、第1〜第N区分の重量に該当する石英坩堝221を選定することで、各区分の引き上げ装置1のホットゾーンに応じて、適切な内壁形状を有する石英坩堝221を配置することができる。このため、各引き上げ装置1においてほぼ同じ育成条件でシリコン単結晶SMを育成した場合に、シリコン融液Mの対流の発生状態を各引き上げ装置1においてほぼ同じにすることができる。したがって、各引き上げ装置1および複数の製造バッチで育成されるシリコン単結晶SMにおける酸素濃度の狙い値からの乖離を最小限に抑制できる上、複数の引き上げ装置1を用いて、同じような酸素濃度のシリコン単結晶SMを製造できるため、生産能力を向上できる。
また、それぞれの引き上げ装置1においては、複数の石英坩堝221の使用時において同じ育成条件を用い、各引き上げ装置1間においては、ほぼ同じ育成条件を用いるため、育成条件の大幅な調整を行うことなく、酸素濃度の狙い値からの乖離を容易に抑制できる。
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しな
い範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
本発明の選定工程は、ステップS1〜S4の工程のうち、少なくともステップS1の工程を含んでいればよい。
まず、同じ仕様で製造された155個の石英坩堝221を準備した。そして、各石英坩堝221の重量、側部221Aの内径Dおよび肉厚TS(図2参照)、底部221BにおけるR部221Cの肉厚TR、底部221Bにおける最底部221Fの肉厚TB(図2参照)、石英坩堝221の内部高さH(図2参照)を測定した。
そして、1基の引き上げ装置1に対して、石英坩堝221を順次配置し、各石英坩堝221について1本ずつのシリコン単結晶SMを同じ育成条件で育成した。この育成条件は、シリコン単結晶SMの酸素濃度が所定の狙い値となるような条件である。
この後、各シリコン単結晶SMにおける固化率16%の位置の酸素濃度を測定した。固化率とは、シリコン単結晶を引き上げる前のシリコン融液の総重量に対する固化した重量の割合を意味する。
以上のことから、石英坩堝221の重量、側部221Aの内径D、R部221Cの肉厚TRに基づいて、引き上げ装置1のホットゾーンに応じて適切な石英坩堝221を選定することで、酸素濃度の狙い値からの乖離が最小限に抑制されたシリコン単結晶SMを育成できることが確認できた。また、内径D、肉厚TRについては、酸素濃度との関係において、測定位置にかかわらず同じ傾向があると考えられるため、任意の測定位置を決めて内径D、肉厚TRを測定し、その測定結果を石英坩堝221の選定に利用すればよい。
また、石英坩堝221における側部221Aの内径D、R部221Cの肉厚TRにも、それぞれ酸素濃度との間に負の相関性がある。このため、内径Dが大きいあるいは肉厚TRが厚い石英坩堝221を、酸素濃度が高くなる傾向にある引き上げ装置に割り当て、逆に、内径Dが小さいあるいは肉厚TRが薄い石英坩堝221を、酸素濃度が低くなる傾向にある引き上げ装置に割り当てればよい。
このように石英坩堝221を引き上げ装置に割り当てることにより、複数の引き上げ装置を用いて製造されるシリコン単結晶間の酸素濃度のばらつきを抑制し、かつ、各引き上げ装置を用いて製造される全てのシリコン単結晶における酸素濃度が狙い値から乖離することを極力抑制することができると考えられる。
〔実施例〕
まず、同じ仕様で製造された複数の石英坩堝221を準備した。そして、各石英坩堝221の重量、側部221Aの内径D、R部221Cにおける境界Pの肉厚TRを測定した。肉厚TRについては、1個の石英坩堝221について8箇所測定した。測定位置は、境界Pと同じ高さ位置であって、石英坩堝221の周方向に等間隔で離れた8箇所とした。
また、全ての石英坩堝221の重量の平均値に基づいて、以下の表2に示す7つの区分を設定した。
側部内径の平均値からの乖離が−0.8mm以上、+0.8mm以下の範囲を側部221Aの内径Dに基づく選定範囲とした場合、図5に示す枠E1〜E7内の特性を有する石英坩堝221が、それぞれ第1〜第7区分のものとして選定される。
各区分におけるR部肉厚の平均値からの乖離の平均値を求め、当該平均値との差が−0.45mm以上、+0.45mm以下の範囲を、R部221Cの肉厚TRに基づく選定範囲とした場合、図6に示す枠F1〜F7内の特性を有する石英坩堝221が、それぞれ第1〜第7区分のものとして選定される。
第1〜第7区分の引き上げ装置1で育成されたシリコン単結晶SMにおける酸素濃度の狙い値からの乖離(「測定結果」−「狙い値」))を、図8〜図14に示す。
まず、上記実施例と同じ仕様で製造された複数の石英坩堝221を準備した。そして、任意に選択した石英坩堝221を各区分の引き上げ装置1に配置して、全区分の引き上げ装置1間において、および、各引き上げ装置1における複数の石英坩堝221の使用時において、それぞれ実施例と同じ育成条件でシリコン単結晶SMを育成した。各石英坩堝221について1本ずつシリコン単結晶SMを育成し、実施例と同じ位置の酸素濃度を測定した。なお、酸素濃度の狙い値は実施例と同じである。
第1〜第7区分の引き上げ装置1で育成されたシリコン単結晶SMにおける酸素濃度の狙い値からの乖離を、図8〜図14に示す。
図8〜図14において、各区分の実施例および比較例のそれぞれにおける酸素濃度の狙い値からの乖離の平均値を直線Lで結んだ。図8〜図14に示すように、全ての区分の引き上げ装置1において、酸素濃度の狙い値からの乖離の平均値は、実施例の方が比較例よりも小さかった。
このことから、石英坩堝221の重量、側部221Aの内径D、R部221Cの肉厚TR、複数箇所における肉厚TPのばらつきに基づいて、各区分に対応する石英坩堝221を選定して、各区分の引き上げ装置1に配置することで、全区分の引き上げ装置1においてほぼ同じ育成条件でシリコン単結晶SMを育成した場合に、各シリコン単結晶SMにおける酸素濃度の狙い値からの乖離を小さくできることが確認できた。
このことから、各引き上げ装置1単位で考えると、石英坩堝221の重量、側部221Aの内径D、R部221Cの肉厚TR、複数箇所における肉厚TPのばらつきに基づいて、各区分に対応する石英坩堝221を選定することで、複数の石英坩堝221の使用時において同じ育成条件を適用しても、酸素濃度の狙い値からの乖離を小さくできることが確認できた。
Claims (5)
- 単結晶引き上げ装置を用いたチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法であって、
円筒状の側部および当該側部の下端に連続する底部を有する石英坩堝の重量に基づいて、前記単結晶引き上げ装置に配置する石英坩堝を選定する選定工程であって、重量が大きい前記石英坩堝を酸素濃度が高くなる傾向にある前記単結晶引き上げ装置に配置し、重量が小さい前記石英坩堝を酸素濃度が低くなる傾向にある前記単結晶引き上げ装置に配置する選定工程と、
前記選定工程で選定された前記石英坩堝が配置された前記単結晶引き上げ装置を用いて、シリコン単結晶を育成する育成工程とを備えていることを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記選定工程は、前記石英坩堝の重量に基づいて、複数の単結晶引き上げ装置のそれぞれに対して配置する石英坩堝を選定し、
前記育成工程は、前記選定工程で選定された前記石英坩堝が配置された前記複数の単結晶引き上げ装置を用いて、前記シリコン単結晶を育成することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記選定工程は、さらに前記側部の内径に基づいて、前記石英坩堝を選定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記選定工程は、さらに前記底部における曲面状のR部の肉厚に基づいて、前記石英坩堝を選定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法において、
前記選定工程は、さらに前記底部の曲面状のR部における前記石英坩堝の周方向に沿う複数箇所の肉厚のばらつきに基づいて、前記石英坩堝を選定することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
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