JP6809232B2 - インクジェット捺染インク及びインクジェット捺染方法 - Google Patents

インクジェット捺染インク及びインクジェット捺染方法 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット捺染インク及びインクジェット捺染方法に関する。
従来では、捺染方法として、版を用いるスクリーン捺染やローラ捺染が行われていたが、これらの捺染では、染色に先立って版を作製する必要があるため、生産効率が低かった。近年では、版を作製する必要がなく、生産効率が高いことから、インクジェット方式により布帛等の記録媒体への画像形成を行う、所謂、インクジェット捺染が行われている。
インクジェット捺染では、インクの微小液滴をインクジェット記録ヘッドから吐出させ、布帛等の記録媒体に着弾させて画像形成を行う。インクジェット捺染で使用されるインクに含まれる色材の種類には、酸性染料や分散染料、反応染料等がある。セルロースを主成分とする布帛への画像形成には、反応染料が用いられることがある。
反応染料としては、ビニルスルホン型反応染料やモノクロロトリアジン型反応染料が知られている。しかしながら、これらの反応染料を含むインクは、長期保存下において、温度変化や添加剤の影響によりpHや粘度の変動を生じやすく、長期保存安定性が低いという問題があった。
反応染料を含むインクの長期保存安定性を高める方法として、インクに尿素を添加する方法が知られている。例えば、特許文献1では、モノクロロトリアジン型反応染料と、尿素と、2−イミダゾリジノンと、有機系緩衝剤とを含む捺染用インクジェットインクが開示されている。特許文献2では、反応染料と、尿素(ビウレット)と、可溶化剤等の処方化添加剤とを含む水性反応染料組成物(P)と、増粘剤と、pH調整剤とを含むプリンティングペーストが開示されている。
特開2010−116566号公報 特表2002−521549号公報
ところで、ビニルスルホン型反応染料は、アルカリ存在下で、下記式(A)に示される反応を生じることが知られている。
D−SO−CHCH−O−SOM(SES体)
→ D−SOCH=CH(VS体)+HO−SOM・・・(A)
スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物(SES体)は、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性が高いことから、それを含むインクは、低温保存下での染料の結晶析出が少なく、射出安定性も良好である。しかしながら、スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物(SES体)は、アルカリ存在下で上記式(A)に示される反応を生じて酸を生成するため、インクのpHを急激に低下させやすい。
一方、ビニルスルホン基を有する化合物(VS体)は、酸を生成する反応は生じないものの、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性が低いため、それを含むインクは、低温保存下で染料の結晶析出を生じやすく、射出安定性も低いという問題があった。
従って、ビニルスルホン型反応染料を含むインクは、pH安定性と、低温保存安定性及び射出安定性とを高度に両立できることが求められている。
特許文献1は、主にはモノクロロトリアジン型反応染料を含むインクに関するものであることから、ビニルスルホン型反応染料を含むインクに特有のpH安定性と、低温保存安定性及び射出安定性とを両立する課題は示唆されていない。特許文献2は、主にはビニルスルホン型反応染料としてスルホキシエチルスルホニル基を有する化合物を含むものであり、スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物とビニルスルホン基を有する化合物の含有比率を調整することは示唆されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ビニルスルホン型反応染料を含むインクであって、pH安定性と、低温保存安定性及び射出安定性とを両立できるインクジェット捺染インク及びそれを用いたインクジェット捺染方法を提供することを目的とする。
[1] ビニルスルホン型反応染料と、水溶性有機溶剤と、水とを含み、前記ビニルスルホン型反応染料は、スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物と、ビニルスルホン基を有する化合物とを含み、且つ下記式(1)を満たす、インクジェット捺染インク。
式(1):0.20≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.95
(式(1)中、
[VS基]:インク中のビニルスルホン基の含有量(mol)、
[VS基+SES基]:インク中のビニルスルホン基とスルホキシエチルスルホニル基の合計含有量(mol))
[2] 下記式(2)を満たす、[1]に記載のインクジェット捺染インク。
式(2):0.40≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.9
[3] 下記式(3)を満たす、[1]又は[2]に記載のインクジェット捺染インク。
式(3):0.60≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.8
[4] 前記ビニルスルホン型反応染料の含有量が、インクの全質量に対して15〜30質量%である、[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット捺染インク。
[5] 前記水溶性有機溶剤は、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、2,2−チオジエタノール、及びエチレン尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット捺染インク。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット捺染インクの液滴を記録ヘッドから吐出させて、ヒドロキシ基を有する親水性樹脂が付与された布帛に画像を形成する工程と、画像が形成された布帛を加熱して、画像を定着させる工程とを含む、インクジェット捺染方法。
[7] 前記布帛は、セルロース繊維又は蛋白繊維を含む、[6]に記載のインクジェット捺染方法。
本発明によれば、ビニルスルホン型反応染料を含むインクであって、pH安定性と、低温保存安定性及び射出安定性とを両立できるインクジェット捺染インク及びそれを用いたインクジェット捺染方法を提供することができる。
インクジェット捺染装置の構成の一例を示す部分概略図である。
本発明者らは、インクに含まれるビニルスルホン基の含有量を[VS基](単位:mol)、インクに含まれるスルホキシエチルスルホニル基とビニル基の合計含有量を[VS基+SES基](単位:mol)としたとき、下記式(1)を満たすようにインクを調整することで、pH安定性と、射出安定性及び低温保存安定性とを両立できることを見出した。
式(1):0.20≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.95
[VS基]/[VS基+SES基]は、例えばスルホキシエチルスルホニル基を有する化合物とビニルスルホン基を有する化合物の含有比率等によって調整することができる。つまり、インクの低温保存安定性や射出安定性を良好にしうるスルホキシエチルスルホニル基を有する化合物と、インクのpH安定性を良好にしうるビニルスルホン基を有する化合物とを適切な比率で含むことで、インクのpH安定性と、低温保存安定性及び射出安定性とをバランス良く高めることができると考えられる。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
1.インクジェット捺染インクについて
本発明のインクジェット捺染インクは、ビニルスルホン型反応染料と、水とを含む。本発明のインクジェット捺染インクは、必要に応じて水溶性有機溶剤やその他の添加剤等をさらに含んでもよい。
(ビニルスルホン型反応染料)
ビニルスルホン型反応染料は、スルホキシエチルスルホニル基(−SO−CHCH−O−SOM)を有する化合物と、ビニルスルホン基(−SOCH=CH)を有する化合物とを含む。
スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物は、1つ又は2つ以上の布帛と反応する官能基を有し、且つその1つ以上がスルホキシエチルスルホニル基である化合物である。スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物が有する2つ以上の布帛と反応する官能基のうち、1つ以上がスルホキシエチルスルホニル基であればよく、残りはビニルスルホン基やモノクロロトリアジン基等であってもよい。
ビニルスルホン基を有する化合物は、1又は2以上の布帛と反応する官能基を有し、且つそのうちの1以上がビニルスルホン基である化合物である。ビニルスルホン基を有する化合物が有する2つ以上の布帛と反応する官能基のうち、1つ以上がビニルスルホン基であればよく、残りはスルホキシエチルスルホニル基やモノクロロトリアジン基等であってもよい。
スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物とビニルスルホン基を有する化合物の、1分子に含まれる布帛と反応する官能基の合計数は、同じであってもよいし、異なってもよい。
スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物とビニルスルホン基を有する化合物の色素母体は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
そして、ビニルスルホン基を有する化合物のビニル基や、スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物のスルホキシエチルスルホニル基が布帛上で分解されて生成するビニル基が、前処理剤が付与された布帛上のヒドロキシル基に求核付加反応し、布帛と反応する。
スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物やビニルスルホン基を有する化合物が、モノクロロトリアジン基をさらに有する場合、反応染料と布帛との反応は、上記の求核付加反応だけではなく、求核置換反応も生じうる。これは、モノクロロトリアジン基のクロロ基が、布帛のヒドロキシル基に求核置換反応することによって生じる。
前述の通り、スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物は、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性が高いことから、インクの低温保存安定性や射出安定性を高めうるが、アルカリ存在下で前述の式(A)の反応が進むため、インクのpHを急激に低下させやすい。一方、ビニルスルホン基を有する化合物は、そのような反応は生じないものの、水や水溶性有機溶剤に対する溶解性が低いため、インクの低温保存性や射出安定性を低下させやすい。
これに対して、本発明のインクジェット捺染インクは、インクに含まれるビニルスルホン基の含有量を[VS基]、インクに含まれるビニル基とスルホキシエチルスルホニル基の合計含有量を[VS基+SES基]としたとき、下記式(1)を満たすように調整されている。
式(1):0.20≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.95
[VS基]/[VS基+SES基]が0.2以上であると、インクのpH安定性を高めやすく、0.95以下であると、インクの低温保存安定性や射出安定性を高めやすい。つまり、[VS基]/[VS基+SES基]を上記範囲とすることで、pH安定性と、低温保存安定性及び射出安定性とを両立することができる。本発明のインクジェット捺染インクは、式(2):0.40≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.9を満たすことがより好ましく、式(3):0.60≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.8を満たすことがさらに好ましい。
インクの[VS基]/[VS基+SES基]は、スルホニルエチルスルホニル基を有する染料とビニルスルホン基を有する染料を基準として、液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量することにより容易に知ることができる。HPLCのピーク時間から、スルホキシエチルスルホニル基を有する染料に由来するピークと、ビニルスルホン基を有する染料に由来するピークとを判別し、各ピークの面積からインク中のビニルスルホン基の含有量[VS基](単位:mol)と、スルホキシエチルスルホニル基の含有量[SES基](単位:mol)を求める。
2)得られた[VS基]と[SES基]の和を、[VS基+SES基]とする。
3)前記1)で得られた[VS基]を、前記2)で得られた[VS基+SES基]で除して、[VS基]/[VS基+SES基]を算出する。
[VS基]/[VS基+SES基]は、例えばインクにおけるスルホキシエチルスルホニル基を有する化合物とビニルスルホン基を有する化合物の含有比率によって調整することができる。
当該含有比率は、後述するように、1)個別に準備したスルホキシエチルスルホニル基を有する化合物とビニルスルホン基を有する化合物との配合比率によって調整してもよいし;2)スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物の一部を、後述する式(A)に示される反応によりビニルスルホン基を有する化合物に置き換えた染料組成物を用いることによって調整してもよい。
スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物の例には、C.I.リアクティブイエロー15、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.リアクティブイエロー42;C.I.リアクティブオレンジ16、C.I.リアクティブオレンジ78、C.I.リアクティブオレンジ107;C.I.リアクティブレッド23、C.I.リアクティブレッド35、C.I.リアクティブレッド106、C.I.リアクティブレッド180;C.I.リアクティブバイオレット5、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー21、C.I.リアクティブブルー38、C.I.リアクティブブルー229;C.I.リアクティブブラウン18;C.I.リアクティブブラック5、C.I.リアクティブブラック14、C.I.リアクティブブラック31等が含まれる。これらの中でも、C.I.リアクティブブラック5が好ましい。
ビニルスルホン基を有する化合物の例には、スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物の例示化合物において、スルホキシエチルスルホニル基の一部又は全部をビニルスルホン基に置き換えたものが含まれる。
そのような化合物は、例えばスルホキシエチルスルホニル基を有する化合物を含む水溶液中で、アルカリ成分(塩基成分)と下記式(A)のように反応させることによって得ることができる。反応条件は、後述する反応条件と同様としうる。
D−SO−CHCH−O−SO
→ D−SOCH=CH+HO−SOM・・・(A)
[Dは、色素母体を表し;
Mは、1価の金属カチオン(好ましくはNaイオン)を表す]
本発明のインクジェット捺染インクに含まれるビニルスルホン型反応染料の色素母体(式(A)のD)は、一種類であってもよいし、二種類以上を組み合わせたものであってもよい。
ビニルスルホン型反応染料の含有量は、インクの全質量に対して15〜30質量%であることが好ましい。ビニルスルホン型反応染料の含有量がインクの全質量に対して15質量%以上であると、インクを高濃度化しやすく、30質量%以下であると、インクが増粘しにくいので、射出安定性が損なわれにくい。ビニルスルホン型反応染料の含有量は、インクの全質量に対して20〜30質量%であることがより好ましい。
(水溶性有機溶剤)
水溶性有機溶剤は、反応染料を溶解できるものであれば、特に制限されない。
水溶性有機溶剤の例には、
アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール);
多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、2,2−チオジエタノール);
アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン);
アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等);
複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、エチレン尿素等);
スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が含まれる。
中でも、水溶性有機溶剤は、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、2,2−チオジエタノール、及びエチレン尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。これらの溶剤は、インク中の水分をノズル面で揮発させにくくし、インクの射出安定性を一層高める機能を有するからである。それにより、本発明のインクジェット捺染インクは、従来のビニルスルホン型反応染料を含むインクよりもビニルスルホン基を高濃度で含んでいても、射出安定性が損なわれにくい。
2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、2,2−チオジエタノール、及びエチレン尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種類の合計含有量は、インクの全質量に対して3〜20質量%であることが好ましい。これらの溶剤の含有量が3質量%以上であると、インクの射出安定性を高めやすく、20質量%以下であると、プリントヘッド内部の部材の浸食や膨潤が発生しにくく、耐久性が損なわれにくい。これらの溶剤の含有量は、インクの全質量に対して5〜15質量%であることがより好ましい。
(その他の添加剤)
本発明のインクジェット捺染インクは、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤等のその他の添加剤をさらに含んでもよい。
[pH調整剤]
pH調整剤の例には、尿素、水酸化ナトリウム等が含まれる。中でも、尿素は、アルカリ除放性を有しているため、酸除放性を有する反応染料と併用することで、インクのpHを所定の範囲に維持しやすいことから、好ましい。
pH調整剤の含有量は、インクの全質量に対して1〜10質量%であることが好ましい。pH調整剤の含有量が1質量%以上であると、インクのpHを安定化させやすく、10質量%以下であると、例えば尿素を用いた場合に長期保存下での尿素の分解に起因するインクの増粘も生じにくいので、長期保存安定性も損なわれにくい。pH調整剤の含有量は、インクの全質量に対して2〜5質量%であることがより好ましい。
[界面活性剤]
界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、シリコン系界面活性剤、またはフッ素系界面活性剤等が含まれる。これらのなかでも、アセチレングリコール系の界面活性剤は、比較的起泡性が低く、インクの表面張力を調整できる。そのため、インクジェット記録ヘッドからのインクの射出性が高まる。
[防腐剤、防黴剤]
防腐剤、防黴剤の例には、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)等が含まれる。防腐剤、防黴剤はインクの保存安定性を高める。
(インクの物性)
本発明のインクジェット捺染インクのpHは、3.0〜6.0の範囲を満たすことが好ましい。pHが上記範囲内であると、前述のビニルスルホン型反応染料が安定に存在しやすいだけでなく、ノズルの腐食等を抑制できる。インクのpHは、25℃で、東亜ディーケーケー社製、HM−20S型を用いて測定することができる。
本発明のインクジェット捺染インクは、インクジェット記録ヘッドからの射出性の観点から、25℃におけるインク粘度が1〜100mPa・sであることが好ましく、1〜40mPa・sであることがより好ましく、5〜40mPa・sであることがさらに好ましく、5〜20mPa・sであることが特に好ましい。インクの粘度は、コーンプレート型粘度計、例えば東機産業社製TVE−33LT粘度計により測定することができる。
25℃におけるインクの表面張力は、30〜60mN/mであることが好ましい。インクの表面張力が30mN/m以上であると、布帛に対するインクの濡れ性が高くなり過ぎないので、画像の滲みを抑制しやすい。一方、表面張力が60mN/m以下であると、布帛に対するインクの濡れ性が低すぎないので、インクの浸透力が損なわれにくい。
(インクの調製)
本発明のインクジェット捺染インクは、[VS基]/[VS基+SES基]が上記範囲を満たすように、前述のビニルスルホン型反応染料と、水と、必要に応じて他の成分とを混合するステップとを経て製造される。
具体的には、1)スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物と、ビニルスルホン基を有する化合物とをそれぞれ個別に準備しておき、これらの配合比率を調整して、[VS基]/[VS基+SES基]が上記範囲を満たすインクを得てもよいし;2)スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物の一部を、前述の式(A)の反応によりビニルスルホン基を有する化合物に置き換えた染料組成物を用いて、[VS基]/[VS基+SES基]が上記範囲を満たすインクを得てもよい。
2)の場合、前述の式(A)の反応は、スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物を含む水溶液にアルカリ成分を添加した後、加熱することにより生じる。
添加されるアルカリ成分の例には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等が含まれ、好ましくは水酸化ナトリウムである。アルカリ成分の添加量は、スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物1モルに対して0.25〜1.1モルであることが好ましい。
反応温度は、50℃以下であることが好ましい。反応温度が50℃以下であると、生成したビニルスルホン基を有する化合物の加水分解を高度に抑制しやすい。反応温度は、30〜40℃であることがより好ましい。反応時間は、反応温度にもよるが、例えば1〜48時間であることが好ましい。
得られた染料組成物を、例えば濾過等により精製して、余分なアルカリ成分等を除去する。その後、得られた染料組成物と、水と、必要に応じて他の成分とを混合して、本発明のインクジェット捺染インクを得る。
2.インクジェット捺染方法
本発明のインクジェット捺染インクを用いるインクジェット捺染方法は、本発明のインクジェット捺染インクの液滴を記録ヘッドから吐出させて、ヒドロキシ基を有する親水性樹脂が付与された布帛に画像を形成する工程と、画像が形成された布帛を加熱して、画像を布帛に定着させる工程とを含む。ヒドロキシ基を有する親水性樹脂が付与された布帛は、布帛に、ヒドロキシ基を有する親水性樹脂を含む前処理剤を付与して得ることができる。
即ち、本発明のインクジェット捺染方法は、(1)布帛に、ヒドロキシ基を有する親水性樹脂を含む前処理剤を付与する工程(前処理工程)と、(2)前処理剤が付与された布帛に捺染インクの液滴を吐出して画像を形成する工程(インク付与工程)と、(3)画像が形成された布帛を加熱して、画像を布帛に定着させる工程(発色工程)とを含み、必要に応じて(4)インク付与後の布帛を乾燥させる工程(予備乾燥工程)と、(5)布帛へ染着できなかった染料や前処理剤を除去する工程(洗浄工程)と、(6)洗浄された布帛を乾燥する工程(乾燥工程)とをさらに含んでもよい。
(前処理工程)
前処理工程は、布帛に前処理剤を付与する工程である。布帛に前処理剤を付与する方法の例には、パッド法、コーティング法、スプレー法、及びインクジェット法等が含まれる。これらの方法によって、前処理剤を布帛上に付与できる。前処理剤が付与された布帛の例には、特開昭62−53492号公報に記載のインク受容層を有する布帛類、及び特公平3−46589号公報に記載の還元防止剤やアルカリ剤を含有させた布帛等が含まれる。
均一な画像を得る観点から、布帛に前処理剤を塗布する前に、布帛繊維に付着した天然不純物(油脂、ロウ、ペクチン質、天然色素等)、布帛製造過程で用いた薬剤の残留物(のり剤等)、又は布帛に付着した汚れ等を洗浄しておくことが好ましい。布帛を洗浄する洗浄剤には、水酸化ナトリウム、若しくは炭酸ナトリウム等のアルカリ剤、陰イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤、又は酵素等が含まれる。
前処理剤は、少なくとも、樹脂成分、アルカリ剤、及びヒドロトロピー剤を含有することが好ましく、その他に還元防止剤、防腐剤、又はキレート剤等の添加剤をさらに含有してもよい。
樹脂成分は、ヒドロキシ基を有する親水性樹脂を含むことが好ましい。ヒドロキシ基を有する親水性樹脂の例には、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ナトリウム、ふのり等の海草類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム、アルギン誘導体、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊、エマルジョン等が含まれる。
アルカリ剤の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属、モノ,ジ,トリエタノールアミン等のアミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)等の炭酸若しくは重炭酸アルカリ金属塩等、酢酸カルシウム、酢酸バリウム等の有機酸金属塩やアンモニア及びアンモニア化合物等、スチーミング又は乾熱下でアルカリ剤となるトリクロロ酢酸ナトリウム等が含まれる。これらの中でも、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが好ましい。アルカリ剤の付与量は、布帛の全質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。適度なアルカリ剤が布帛に存在することで、反応染料を含む捺染インクを確実に染着させることができる。そのため、布帛にアルカリ剤をあらかじめ含有させることが好ましい。
ヒドロトロピー剤の例には、尿素、エチレン尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等のアルキル尿素等が含まれる。ヒドロトロピー剤の添加により、画像濃度が向上するためである。
前処理剤の付与量(絞り率)、又は前処理剤に含まれる樹脂成分の量は、布帛の種類やその用途に応じて適宜設定される。
前処理剤は、必要に応じて還元防止剤、防腐剤、又はキレート剤をさらに含んでもよい。還元防止剤は、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム等であればよい。防腐剤は、捺染インクの防腐剤として例示した防腐剤であってもよく、また同一であってもよい。キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等であればよい。
布帛に付与された前処理剤は、温風、ホットプレート、又はヒートローラー等を用いて加熱乾燥させることもできる。
布帛を構成する繊維素材は、(前処理剤として)ヒドロキシ基を有する親水性樹脂が付与される限り、特に制限はないが、染着性を高める点では、反応染料で染色可能な繊維;即ち、ヒドロキシ基を有する繊維を含むことが好ましい。ヒドロキシ基を有する繊維の例には、綿等のセルロース繊維、及び絹等の蛋白繊維が含まれる。布帛は、これらの繊維を、織布、不織布、編布等、いずれの形態にしたものであってもよい。また、本発明で使用しうる布帛は、反応染料で染色可能な繊維のみから構成されてもよいが、レーヨン、ポリウレタン、ポリエステル、若しくはアクリル等との混紡織布又は混紡不織布等であってもよい。また、布帛を構成する繊維の太さは、10〜100dの範囲内であることが好ましい。
(インク付与工程)
インク付与工程は、インクジェット記録ヘッドからインクジェット捺染インクの液滴を布帛に向けて吐出して、発色前の画像を形成する工程である。複数のインクジェット記録ヘッドを搭載するヘッドキャリッジに対して、布帛を相対移動させながら、インクジェット捺染インクセットの液滴を吐出し、布帛に着弾させる。インクの液滴が着弾するときの布帛の表面温度は、特に限定されないが、発色前画像の滲み抑制等の観点から、35〜70℃の範囲で加熱されることが好ましい。尚、インク温度の変動起因のインク粘度の変動を抑制する観点から、インク温度を25℃に保温することが好ましい。
(予備乾燥工程)
予備乾燥工程は、インク付与後の布帛を乾燥させる工程である。特に限定されないが、予備乾燥は、150℃以下で0.5〜30分間布帛を乾燥させることが好ましい。乾燥方法の例には、空気対流方式、加熱ロール直付け方式、及び照射方式等が含まれる。具体的には、布帛にインクの付与を行い、その布帛が巻き取られる前に上記の条件及び方法で布帛を乾燥させればよい。
(発色工程)
発色工程とは、インク付与後(予備乾燥工程を含むときは予備乾燥後)の布帛を加熱して布帛中へ十分に染着されていない反応染料を布帛中に染着させて、インク本来の色相を発現させる工程である。
発色温度(加熱温度)は、発色方法(加熱方法)にもよるが、布帛への反応染料の染着を強固にする観点では、95℃以上220℃未満であることが好ましく、95℃以上190℃以下であることがより好ましく、100℃以上180℃以下であることがさらに好ましい。
発色方法(加熱方法)は、従来公知の方法でよく、捺染インクや布帛等により適宜選択される。例えば、蒸気によるスチーミング;乾熱によるベーキング、サーモゾル;過熱蒸気によるHTスチーマー等が含まれる。中でも、高熱の蒸気によりインク中の反応染料を定着させる方式(スチーミング方式)と乾熱方式(ベーキング方式)が好ましい。
高温蒸気を用いるスチーミング方式では、加熱温度が低すぎると、液体の水が多く存在するため、濃色インクや淡色インクに含まれる反応染料は、布帛以外に液体の水と水素結合しやすくなるため、水と共に流されやすくなり、十分には染着できない場合がある。従って、布帛への反応染料の染着を強固にする観点から、加熱温度は、95℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。例えば、セルロース系繊維は、95〜105℃で、5〜15分間処理されることが好ましく;絹や羊毛等のアミド系繊維は、95〜105℃で、20〜40分間処理されることが好ましい。また、インクが付与された布帛は直ちに発色させてもよく、時間が経過してから発色させてもよい。
乾熱によるベーキング方式では、十分な染着性が得られやすく、且つ染料の分解を抑制しやすくする観点から、加熱温度は、150℃以上220℃未満であることが好ましく、150℃以上190℃以下であることがより好ましく、150℃以上180℃以下であることがより好ましい。
(洗浄工程)
洗浄工程は、布帛の発色工程後に布帛へ染着できなかった反応染料や前処理剤を除去する工程である。布帛へ染着できなかった反応染料の除去は、従来公知の洗浄方法を用いることができ、捺染インクや布帛等により適宜選択される。例えば、セルロース繊維は、水洗、湯洗の後に非イオン系洗浄剤を含むソーピング浴で処理後、湯洗、水洗を行なうことが一般的である。未染着の反応染料の除去を行うことで、洗濯堅牢性、耐水堅牢性、耐汗堅牢性等が良好になりやすい。布帛に染着できなかった反応染料があると、洗濯堅牢性、耐水堅牢性、耐汗堅牢性等が得られにくい。
(乾燥工程)
乾燥工程は、前記洗浄工程の後に行われ、洗浄された布帛を乾燥させる工程である。乾燥方法は、特に限定されないが、洗浄された布帛を絞ったり、干したり、乾燥機(ヒートロール、アイロン等)を使用して乾燥させたりする方法であり得る。
(インクジェット捺染装置)
以下において、図面を参照しながらインク付与工程と予備乾燥工程とを行う装置について説明するが、インクジェット捺染装置はこれに限定されない。
図1は、インクジェット捺染装置の構成の一例を示す部分概略図である。インクジェット捺染装置は、布帛Pを搬送する搬送手段2と、布帛Pにインクジェット捺染インクの液滴を吐出する複数のインクジェット記録ヘッド(不図示)を搭載するヘッドキャリッジ5と、布帛Pに温風を付与する温風付与手段6とを有する。
搬送手段2は、粘着性ベルト21と、サポートローラ22と、搬送ローラ23と、ニップローラ24と、を備えている。粘着性ベルト21は、サポートローラ22と搬送ローラ23とに保持され、サポートローラ22と搬送ローラ23との間を周回している。ニップローラ24は、粘着性ベルト21を介して、搬送ローラ23に対向して配置されている。
温風付与手段6及びヘッドキャリッジ5は、布帛Pの上方に配置される。温風付与手段6は、内部に布帛に風を吹きつけるファン6Aと温度制御ができる発熱体6Bとを備えている。一方、ヘッドキャリッジ5は、インクジェット記録ヘッドを備えている。インクジェット記録ヘッドの種類は、特に制限されず、サーマル型、ピエゾ型のいずれであってもよい。インクジェット記録ヘッドのノズル径は、10〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。ノズル径が10μm以上であると、不溶物によるノズル目詰まりが生じにくく、100μm以下であると、形成画像の鮮鋭性が低くなりにくいからである。また、吐出するインクの液滴サイズは、4〜150plであることが好ましく、5〜80plであることがより好ましい。インクの液滴サイズが4pl以上であると、吐出されたインクの液滴がヘッド近傍の気流の影響を受けにくく、150pl以下であると、形成画像の粒状感が目立ちにくいからである。
搬送ローラ23が駆動すると、粘着性ベルト21の上面に配置された布帛Pがニップローラ24下面に搬送される。布帛Pは粘着性ベルト21とニップローラ24により加圧されて、粘着性ベルト21に固定される。粘着性ベルト21に固定された布帛Pは、ヘッドキャリッジ5の下方に搬送される。ヘッドキャリッジ5に搭載される複数のインクジェット記録ヘッドは、インクジェット捺染インクの液滴を吐出し、前処理剤が付与された布帛の一定領域(着弾可能領域)に着弾させ、画像を形成する。次いで、温風付与手段6から温度制御された風又は温風を吹き付けて、布帛Pに形成された画像を乾燥させる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.インクの材料
(1)ビニルスルホン型反応染料の調製
(染料1−1の調製)
C.I.リアクティブブラック5を、染料1−1(スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物)として準備した。染料1−1は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(染料1−2の調製)
C.I.リアクティブブラック5を30.0質量部(スルホキシエチルスルホニル基が0.6mol/L)と、NaOHを0.6質量部(0.15mol/L)と、水を68.8質量部とを混合した。得られた溶液を40℃で24時間放置した。その後、生じた沈殿を濾過して得られた固形物を精製乾燥させて、染料1−2(スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物又はビニルスルホン基を有する化合物)を得た。染料1−2は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(染料1−3の調製)
C.I.リアクティブブラック5を30.0質量部(スルホキシエチルスルホニル基が0.6mol/L)と、NaOHを2.8質量部(0.7mol/L)と、水を67.6質量部とを混合した。得られた溶液を40℃で24時間放置した。その後、生じた沈殿を濾過して得られた固形物を精製乾燥させて、染料1−3(ビニルスルホン基を有する化合物)を得た。染料1−3は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(染料2−1の調製)
C.I.リアクティブイエロー15を、染料2−1(スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物)として準備した。染料2−1は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(染料2−2の調製)
C.I.リアクティブイエロー15を30.0質量部(スルホキシエチルスルホニル基が0.5mol/L)と、NaOHを2.0質量部(0.5mol/L)と、水を68.0質量部とを混合した。得られた溶液を40℃で24時間放置した。その後、生じた沈殿を濾過して得られた固形物を精製乾燥させて、染料2−2(ビニルスルホン基を有する化合物)を得た。染料2−2は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(染料3−1の調製)
C.I.リアクティブオレンジ78を、染料3−1(スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物)として準備した。染料3−1は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(染料3−2の調製)
C.I.リアクティブオレンジ78を30.0質量部(スルホキシエチルスルホニル基が0.5mol/L)と、NaOHを2.0質量部(0.5mol/L)と、水を68.0質量部とを混合した。得られた溶液を40℃で24時間放置した。その後、生じた沈殿を濾過して得られた固形物を精製乾燥させて、染料3−2(ビニルスルホン基を有する化合物)を得た。染料3−2は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(染料4−1の調製)
C.I.リアクティブオレンジ16を、染料4−1(スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物)として準備した。染料4−1は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(染料4−2の調製)
C.I.リアクティブオレンジ16を30.0質量部(スルホキシエチルスルホニル基が0.5mol/L)と、KOHを2.9質量部(0.5mol/L)と、水を68.0質量部とを混合した。得られた溶液を40℃で24時間放置した。その後、生じた沈殿を濾過して得られた固形物を精製乾燥させて、染料4−2(ビニルスルホン基を有する化合物)を得た。染料4−2は、下記構造を有する化合物を主成分として含むものである。
Figure 0006809232
(2)尿素化合物
尿素
(3)水溶性有機溶剤
グリセリン(Gly)
エチレングリコール(EG)
プロピレングリコール(PG)
(4)その他成分
界面活性剤(日信化学工業社製E1010)
防黴剤(ロンザジャパン社製プロキセルGXL(S))
2.インクの調製と評価
(実施例1)
ビニルスルホン型反応染料として、上記調製した染料1−1を20質量部、染料1−3を5.0質量部;尿素化合物として尿素を10質量部;水溶性有機溶剤としてグリセリンを5質量部、エチレングリコールを20質量部、プロピレングリコールを10質量部;界面活性剤として日信化学工業社製E1010を0.1質量部;防黴剤としてプロキセルGXL(S)を0.1質量部混合した。得られた混合物に全量が100質量部となるようにイオン交換水を加えて、インクを調製した。
(実施例2〜27、比較例1〜6)
インク組成を表1〜4に示されるように変更した以外は実施例1と同様にしてインクを調製した。
得られたインクの、[VS基]/[VS基+SES基]、保存安定性(pH安定性)及び低温保存安定性を、それぞれ以下の方法で評価した。
([VS基]/[VS基+SES基])
1)得られたインクを純水にて1000倍に希釈した液を試料液とした。この試料液について、液体クロマトグラフィー(HPLC)測定を以下の条件で行った。
(液体クロマトグラフィーの測定条件)
装置:日立ハイテクサイエンス社製高速液体クロマトグラフL-2000シリーズ
カラム:イナートシルODS−SP(ジーエルサイエンス社製、内径:4mm、長さ:250mm、粒子径:5μm)
移動相(溶離液):水:アセトニトリル=90:10(容積比)から50:50までグラジエント
流速:1.0mL/min
カラムの温度:40℃
検出器:ダイオードアレー検出器、測定波長:254nm
HPLCにおけるビニルスルホン基を有する染料由来のピークとスルホキシエチルスルホニル基を有する染料由来のピークを特定し、それらのピーク面積比から、インク中のビニルスルホン基の含有量[VS基](単位:mol)と、スルホキシエチルスルホニル基の含有量[SES基](単位:mol)を求めた。
2)得られた[VS基]と[SES基]の和を、[VS基+SES基]とした。
3)前記1)で得られた[VS基]を、前記2)で得られた[VS基+SES基]で除して、[VS基]/[VS基+SES基]を算出した。
(保存安定性(pH安定性))
得られたインクの25℃におけるpHを、東亜ディーケーケー社製、HM−20S型を用いて測定した。このインクを25℃で4週間保存した後、同様の方法で、インクのpHを測定した。保存前後のインクのpH変化量ΔpH(=保存前のインクのpH−保存後のインクのpH)を算出し、以下の基準に基づいて評価を行った。
◎:ΔpHが±0.1以下
○:ΔpHが±0.1超±0.3以下
△:ΔpHが±0.3超±0.4以下
△×:ΔpHが±0.4超±0.5以下
×:ΔpHが±0.5超
インクのpH安定性は、△以上であれば、実用上問題ないレベルであり、良好であると判断した。
(低温保存安定性)
得られたインクを−10℃で2週間保存した後、結晶析出の有無を目視観察し、さらに目開き0.45μmのセルロースアセテートのフィルターに通液する際の濾過圧を確認した。そして、以下の基準に基づいて評価を行った。
◎:析出もなく、保存前と比べて濾過圧の上昇もない
△:析出はないが、保存前と比べて濾過圧の上昇がみられる
×:析出があり、保存前と比べて濾過圧の上昇もみられる
さらに、得られたインクを用いて、以下の手順でインクジェット捺染方法により画像を形成した。
<インクジェット捺染方法>
(前処理工程)
100%コットン布帛(綿ブロードシル付、色染社製)を用意し、下記の前処理剤を絞り率80%で付与した後、乾燥させた。
(前処理剤)
アルギン酸ナトリウム(樹脂成分):5質量部
尿素(ヒドロトロピー剤):10質量部
炭酸水素ナトリウム(アルカリ剤):5質量部
イオン交換水:80重量部
(インク付与工程)
得られたインクを、ナッセンジャーV(コニカミノルタ社製)にセットした。主走査540dpi×副走査540dpiにて、得られたインクを用いてベタ画像を形成した。なお、dpiとは、2.54cm当たりのインク液滴(ドット)の数を表す。
(発色工程)
画像が形成された布帛を、相対湿度100%、温度103℃の条件下で8分間スチーム処理して、染料を定着および発色させた。
<画像評価>
そして、射出安定性を以下の方法で評価した。
(射出安定性)
25℃50%RH下で、インクジェットヘッドからのインクを一定時間射出させた。その後、30分放置し、再度インクの射出を行い、そのときの射出性をドロップウォッチャーにて観察した。そして、30分間放置後の再射出性を以下の基準に基づいて評価した。
◎:200発以下の吐き捨て(捨て打ちをすることで、ノズル表面のインクをリフレッシュする操作)で、不良なく再射出可能
○:200発超500発以下の吐き捨てで、不良なく再射出可能
○△:500発超1000発以下の吐き捨てで、不良なく再射出可能
△:メンテナンス(手動でのノズル表面の清掃)で射出不良が回復
×:メンテナンスしても射出不良が残る
実施例1〜10のインクの評価結果を表1に示し;実施例11〜16の評価結果を表2に示し;実施例17〜27の評価結果を表3に示し;比較例1〜6のインクの評価結果を表4に示す。表中の組成欄のうち、[VS基]/[VS基+SES基]以外の数値の単位は、質量部とする。
Figure 0006809232
Figure 0006809232
Figure 0006809232
Figure 0006809232
表1〜3に示されるように、[VS基]/[VS基+SES基]が0.2以上0.95以下である実施例1〜27のインクは、いずれもpH安定性と、低温保存安定性及び射出安定性とを両立できることがわかる。
特に、[VS基]/[VS基+SES基]が0.4以上(実施例1と2の対比、実施例17及び20と21との対比)、好ましくは0.6以上(実施例2と3の対比、実施例21と18及び19との対比)であると、pH安定性が向上することがわかる。[VS基]/[VS基+SES基]が0.9以下(実施例22と23の対比)、好ましくは0.8以下(実施例4と5及び10との対比、実施例19と22の対比等)であると、射出安定性が向上することがわかる。
また、インクが保湿剤をさらに含むことで、インクの射出安定性が高まることがわかる(実施例4と11〜14との対比、実施例23と25〜26との対比)。
これに対し、表4に示されるように、[VS基]/[VS基+SES基]が0.2未満である比較例1、3、及び6のインクは、いずれもpH安定性が低いことがわかる。一方、[VS基]/[VS基+SES基]が0.95を超える比較例2、4、及び5のインクは、いずれも低温保存安定性及び射出安定性が低いことがわかる。
本発明によれば、ビニルスルホン型反応染料を含むインクであって、pH安定性と、低温保存安定性及び射出安定性とを両立できるインクジェット捺染インク及びそれを用いたインクジェット捺染方法を提供することができる。
P 布帛
2 搬送手段
21 粘着性ベルト
22 サポートローラ
23 搬送ローラ
24 ニップローラ
5 ヘッドキャリッジ
6 温風付与手段
6A ファン
6B 発熱体

Claims (7)

  1. ビニルスルホン型反応染料と、水溶性有機溶剤と、水とを含み、
    前記ビニルスルホン型反応染料は、
    スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物と、ビニルスルホン基を有する化合物とを含み、
    前記スルホキシエチルスルホニル基を有する化合物は、C.I.リアクティブイエロー15、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.リアクティブイエロー42、C.I.リアクティブオレンジ16、C.I.リアクティブオレンジ78、C.I.リアクティブオレンジ107、C.I.リアクティブレッド23、C.I.リアクティブレッド35、C.I.リアクティブレッド106、C.I.リアクティブレッド180、C.I.リアクティブバイオレット5、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー21、C.I.リアクティブブルー38、C.I.リアクティブブルー229、C.I.リアクティブブラウン18、C.I.リアクティブブラック5、C.I.リアクティブブラック14、およびC.I.リアクティブブラック31からなる群より選ばれる一以上であり、
    前記ビニルスルホン基を有する化合物は、C.I.リアクティブイエロー15、C.I.リアクティブイエロー37、C.I.リアクティブイエロー42、C.I.リアクティブオレンジ16、C.I.リアクティブオレンジ78、C.I.リアクティブオレンジ107、C.I.リアクティブレッド23、C.I.リアクティブレッド35、C.I.リアクティブレッド106、C.I.リアクティブレッド180、C.I.リアクティブバイオレット5、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー21、C.I.リアクティブブルー38、C.I.リアクティブブルー229、C.I.リアクティブブラウン18、C.I.リアクティブブラック5、C.I.リアクティブブラック14、およびC.I.リアクティブブラック31からなる群より選ばれる一以上の化合物のスルホキシエチルスルホニル基の一部又は全部をビニルスルホン基に置き換えた化合物であり、
    且つ
    下記式(1)を満たす、インクジェット捺染インク。
    式(1):0.20≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.95
    (式(1)中、
    [VS基]:インク中のビニルスルホン基の含有量(mol)、
    [VS基+SES基]:インク中のビニルスルホン基とスルホキシエチルスルホニル基の合計含有量(mol))
  2. 下記式(2)を満たす、
    請求項1に記載のインクジェット捺染インク。
    式(2):0.40≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.9
  3. 下記式(3)を満たす、
    請求項1又は2に記載のインクジェット捺染インク。
    式(3):0.60≦[VS基]/[VS基+SES基]≦0.8
  4. 前記ビニルスルホン型反応染料の含有量が、インクの全質量に対して15〜30質量%である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット捺染インク。
  5. 前記水溶性有機溶剤は、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、2,2−チオジエタノール、及びエチレン尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種類を含む、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染インク。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット捺染インクの液滴を記録ヘッドから吐出させて、ヒドロキシ基を有する親水性樹脂が付与された布帛に画像を形成する工程と、
    画像が形成された布帛を加熱して、画像を定着させる工程と
    を含む、
    インクジェット捺染方法。
  7. 前記布帛は、セルロース繊維又は蛋白繊維を含む、
    請求項6に記載のインクジェット捺染方法。
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