<第1実施形態>
以下、クラッチを備えたモータの一実施形態について説明する。
図1に示す本実施形態のモータ10は、車両のウインドガラスを電動で昇降させるパワーウインド装置に備えられるものである。モータ10は、回転力を発生するモータ部20と、モータ部20が出力する回転を減速して出力する出力部30とが一体に組み付けられて構成されている。また、モータ10は、モータ部20と出力部30との間の駆動連結部分にクラッチ40を備えている。
本実施形態のモータ部20は直流モータよりなる。モータ部20を構成する有底筒状のヨークハウジング21(以下、ヨーク21とする)の内周面にはマグネット22が固着されるとともに、マグネット22の内側には電機子23が配置されている。電機子23は、ヨーク21の中央部に配置される回転軸24を備えている。回転軸24の基端部(図1において上側の端部)は、ヨーク21の底部中央に設けられた軸受25にて軸支されるとともに、同回転軸24における先端寄りの部位には、円筒状の整流子26が固定されている。また、回転軸24の先端部(図1において下側の端部)には、円柱形状から平行に面取りした二面幅形状をなす連結部24aが設けられている。
ヨーク21の開口部には、外側に向かって延設されたフランジ部21aが形成されるとともに、同ヨーク21の開口部にはブラシホルダ27が嵌合されている。ブラシホルダ27は、ヨーク21の開口部を閉塞する形状をなすホルダ本体27aと、ホルダ本体27aからヨーク21の径方向外側に突出し図示しない外部コネクタが接続されるコネクタ部27bとを有する。ホルダ本体27aは、図示しない配線でコネクタ部27bに電気的に接続され前記整流子26と摺接する給電用の複数のブラシ28を保持している。また、ホルダ本体27aは、その略中央部に軸受29を保持しており、該軸受29は、回転軸24における整流子26と連結部24aとの間の部位を軸支している。そして、コネクタ部27bを介してブラシ28に供給された外部電源が、整流子26を介して電機子23に供給されると、電機子23(回転軸24)が回転駆動、即ちモータ部20が回転駆動されるようになっている。
前記出力部30は、樹脂製のギヤハウジング31内に減速機構32等を収容して形成されている。ギヤハウジング31は、モータ部20と軸方向に対向する部位(図1において上側の端部)に、該ギヤハウジング31をモータ部20に固定するための固定部31aを備えている。固定部31aは、ヨーク21のフランジ部21aの外形と同様の外形を有するとともに、同固定部31aには、ヨーク21の内側に向けて開口した収容凹部31bが形成されている。そして、収容凹部31b内にブラシホルダ27のホルダ本体27aの一部が挿入された状態で、固定部31aに当接したフランジ部21aが螺子33にて固定部31aに固定されることにより、ギヤハウジング31にヨーク21が固定され、モータ部20と出力部30とが一体化されている。なお、ブラシホルダ27は、ヨーク21と固定部31aとの間に挟持されている。
また、ギヤハウジング31には、収容凹部31bの底部中央にクラッチ収容凹部31cが軸方向(回転軸24の軸方向)に凹設されるとともに、該クラッチ収容凹部31cの底部中央から回転軸24の中心軸線L1方向に沿って延びるウォーム軸収容部31dが凹設されている。更に、ギヤハウジング31には、ウォーム軸収容部31dの側方(図1において右側)に、ホイール収容部31eが凹設されている。このホイール収容部31eとウォーム軸収容部31dとは、ウォーム軸収容部31dの軸方向(長手方向)の略中央部で繋がっている。
ウォーム軸収容部31dには、略円柱状のウォーム軸34(従動軸)が収容されている。ウォーム軸34は、金属材料よりなり、その軸方向の中央部に螺子歯状のウォーム部34aが形成されている。そして、ウォーム軸34は、ウォーム軸収容部31dの軸方向の両端部にそれぞれ配置された一対の軸受35,36によってその軸方向の両端部が軸支されている。ウォーム軸収容部31d内に配置されたウォーム軸34は、軸受35,36にて軸支されることにより、前記回転軸24と同軸上に配置、即ち回転軸24の中心軸線L1とウォーム軸34の中心軸線L2とが同一直線上となるように配置されている。
前記ホイール収容部31eには、ウォーム軸34のウォーム部34aと噛合する円板状のウォームホイール37が回転可能に収容されている。ウォームホイール37は、ウォーム軸34と共に減速機構32を構成している。即ち、本実施形態の減速機構32は、ウォーム減速機構(ウォームギヤ)である。また、ウォームホイール37の径方向の中央部には、同ウォームホイール37の軸方向(図1において紙面垂直方向)に延び同ウォームホイール37と一体回転する出力軸38が設けられている。この出力軸38には、図示しないウインドレギュレータを介して車両のウインドガラスが連結される。
また、前記クラッチ収容凹部31c内に、モータ部20の回転軸24と出力部30のウォーム軸34とを連結する前記クラッチ40が収容されている。
図2及び図3に示すように、クラッチ40は、クラッチハウジング41、駆動側回転体42、サポート部材43、転動体44及び従動側回転体45から構成されている。
クラッチハウジング41は、円筒状をなすとともに、同クラッチハウジング41の軸方向の一端部には、径方向外側に延びる鍔状の固定フランジ部41aが形成されている。クラッチハウジング41における円筒状の部位の外径はクラッチ収容凹部31cの内径と略等しく形成されるとともに、固定フランジ部41aの外径はクラッチ収容凹部31cの内径よりも大きく形成されている。また、固定フランジ部41aには、周方向に等角度間隔となる4箇所に、固定凹部41bが形成されている。各固定凹部41bは、固定フランジ部41aを軸方向に貫通するとともに、径方向外側に開口している。
図2に示すように、クラッチハウジング41は、固定フランジ部41aが収容凹部31bの底面に当接するまでクラッチ収容凹部31c内に挿入されるとともに、固定フランジ部41aにおいてギヤハウジング31に対して固定されている。詳述すると、収容凹部31bの底面であってクラッチ収容凹部31cの開口部の外周には、周方向に等角度間隔となる4箇所に、軸方向に突出した固定突起31fが形成されている。これら4つの固定突起31fは、固定フランジ部41aの4つの固定凹部41bに対して軸方向にそれぞれ挿入されており、更に、各固定突起31fの先端部が熱かしめによって加工されている。これにより、クラッチハウジング41は、ギヤハウジング31に対して軸方向に移動不能且つ周方向に回転不能に固定されている。なお、ギヤハウジング31に固定されたクラッチハウジング41は、回転軸24及びウォーム軸34と同軸上に配置されている。
駆動側回転体42は、略円筒状の軸連結部51を有する。軸連結部51の外周面には、径方向外側に向かって延びる円盤状の鍔部52が一体に形成されている。
軸連結部51において、モータ部20側の軸方向端部(図2において上端部)の軸中心には、軸方向に沿って延びる駆動軸挿入孔53が形成されている。駆動軸挿入孔53は、回転軸24の連結部24aの外形形状に対応した二面幅形状をなしている。そして、駆動軸挿入孔53に連結部24aが圧入されることにより、駆動側回転体42は回転軸24と一体回転可能に連結される。なお、回転軸24と、該回転軸24に連結された駆動側回転体42とは、同軸上となる(即ち互いの中心軸線が同一直線上に位置する)。
また、軸連結部51において、出力部30側の軸方向端部(図2において下端部)の軸中心には、軸方向に沿って延びる従動軸挿入孔54が形成されている。この従動軸挿入孔54の中心軸線は、駆動軸挿入孔53の中心軸線と一致している。なお、本実施形態では、駆動軸挿入孔53と従動軸挿入孔54とは互いに連通している。
図6(b)に示すように、従動軸挿入孔54の内周面は、軸方向と平行な平面状をなし互いに平行な一対の駆動側伝達面54aを有する。そして、従動軸挿入孔54は、軸方向から見た形状が、駆動側伝達面54aと平行な方向が長手方向、駆動側伝達面54aと直交する方向が短手方向となる略トラック形状(二面幅形状)をなしている。なお、各駆動側伝達面54aには、ゴム材料等の弾性を有する材料よりなる2つの第1弾性部材55が設けられている。また、軸方向視において従動軸挿入孔54の長手方向の両端部には、ゴム材料等の弾性を有する材料よりなる第2弾性部材56がそれぞれ設けられている。第1及び第2弾性部材55,56は、従動軸挿入孔54の内周面から内側に若干突出している。
また、図3及び図6(a)に示すように、駆動側回転体42は、鍔部52から軸方向に出力部30側(図3において下方側)に延出された一対の転動体解除部57を有する。転動体解除部57は、軸方向視における従動軸挿入孔54の長手方向の両側にそれぞれ設けられている。また、2つの転動体解除部57は、回転方向に180°離間し径方向に対向する位置に設けられている。なお、各転動体解除部57における周方向の両端部は、ゴム材料等の弾性を有する材料よりなる弾性部58にて構成されている。これら各転動体解除部57は、クラッチハウジング41の内側に配置される。
図2及び図3に示すように、サポート部材43は、径方向に対向するクラッチハウジング41と従動側回転体45との間に転動体44を保持するものである。本実施形態のサポート部材43は樹脂製である。
サポート部材43は、回転軸24の中心軸線L1を中心とする円環状をなすリング部61を有する。リング部61の外径は、クラッチハウジング41の内径よりも大きい。そして、リング部61は、クラッチハウジング41の固定フランジ部41aに対してモータ部20側(図2において上側)に配置され、固定フランジ部41aと軸方向に対向している。また、リング部61の下面(固定フランジ部41aと対向する軸方向の端面)には、リング部61の周方向に沿った円環状の突条をなし固定フランジ部41aに軸方向(中心軸線L1方向)から当接する下側突条部61aが形成されている。また、リング部61の上面(駆動側回転体42側の端面)には、軸方向に突出し駆動側回転体42の鍔部52に軸方向から当接する上側突部61bが形成されている。
リング部61の内周側における周方向に離間した2箇所(本実施形態では、180°間隔となる2箇所)には、柱状をなす転動体44をそれぞれ保持する転動体保持部62が形成されている。
図3、図4(a)及び図4(b)に示すように、各前記転動体保持部62は、リング部61から径方向内側に向かって延び転動体44と中心軸線L1方向(即ち駆動側回転体42の回転軸線方向)に対向する軸方向対向部63を有する。また、各転動体保持部62は、軸方向対向部63における駆動側回転体42の回転方向X1の両端部(図4において左右方向の両端部)から中心軸線L1方向に沿ってリング部61と反対側(図4(a)において下方)に延出された一対のローラサポート64a,64b(対向部)を有する。なお、駆動側回転体42の回転方向X1は、回転軸24の周方向及びクラッチ40の周方向と同じであり、以下、回転方向X1とする。各転動体保持部62において、一対のローラサポート64a,64bは、軸方向対向部63から、回転方向X1における転動体44の両側で中心軸線L1方向に突出し同転動体44を回転方向X1の両側から保持する。詳しくは、各転動体保持部62において、対をなすローラサポート64a,64bは、回転方向X1において転動体44の両側に位置し、当該転動体44を当該転動体44の中心軸線L3が中心軸線L1と平行をなすように回転方向X1の両側から保持している。なお、各転動体保持部62の対をなすローラサポート64a,64bについて、クラッチ40をモータ部20側から軸方向に見て(即ち図6(a)に示す状態)、転動体44に対して反時計方向側に位置するローラサポートを第1ローラサポート64aとし、転動体44に対して時計方向側に位置するローラサポートを第2ローラサポート64bとする。
また、サポート部材43において、一方の転動体保持部62の第1ローラサポート64aの先端部と他方の転動体保持部62の第2ローラサポート64bの先端部とは、連結部66によって互いに連結されている。連結部66は、軸方向視で中心軸線L1,L2を中心とする円弧状をなしている。
また、各ローラサポート64a,64bの先端部には、対をなす第1及び第2ローラサポート64a,64b間に配置された転動体44側に突出した保持爪67が設けられている。各保持爪67は、対をなすローラサポート64a,64bの間の転動体44に向かってローラサポート64a,64bの先端面に沿って延びた後に、対をなすローラサポート64a,64bの間で各ローラサポート64a,64bの基端側に向けて曲がり、更に、中心軸線L1に沿って延びている。そして、各保持爪67において、対をなすローラサポート64a,64b間で中心軸線L1方向に延びる部分である係合保持部67aの先端面は、中心軸線L1と直交する平面状をなす当接保持面67bとなっている。当接保持面67bは、軸方向対向部63の方を向いている。また、対をなすローラサポート64a,64bに設けられた保持爪67の係合保持部67aにおいて、回転方向X1に互いに対向する側面は、互いに平行をなし且つ中心軸線L1方向と平行な平面状をなす規制面67cとなっている。
図4(a)及び図4(b)に示すように、各転動体44は、樹脂製であり、略円柱状をなしている。また、各転動体44は、サポート部材43にて保持されることにより、その中心軸線L3が中心軸線L1,L2と平行をなすように配置されている。
各転動体44における中心軸線L3方向の両端部には、対をなす第1及び第2の係合凹部71,72がそれぞれ設けられている。即ち、各転動体44は、2対の第1及び第2の係合凹部71,72を有する。なお、本実施形態では、各転動体44において、第1の係合凹部71は、第1ローラサポート64aと回転方向X1に対向する部分に設けられたものであり、第2の係合凹部72は、第2ローラサポート64bと回転方向X1に対向する部分に設けられたものである。
対をなす第1及び第2の係合凹部71,72は、転動体44の中心軸線L3方向の端部において、中心軸線L3と直交する方向(転動体44の直径方向であって、図4(b)においては左右方向)の両側に凹設されている。そして、第1及び第2の係合凹部71,72は、転動体44の中心軸線L3方向の端部において、転動体44の幅を狭めるように中心軸線L3と直交する方向に凹設されている。また、第1及び第2の係合凹部71,72は、転動体44の中心軸線L3方向の端部において、中心軸線L3と直交する方向の両側で転動体44を同転動体44の直径方向(図4(b)において上下方向)に貫通している。更に、第1及び第2の係合凹部71,72は、転動体44の直径方向の外側、及び中心軸線L3方向の片側(転動体44の中心軸線L3方向の中央部と反対側)に開口している。そして、対をなす第1及び第2の係合凹部71,72は、中心軸線L3を対称軸とする回転対称の関係にある。即ち、各係合凹部71,72は、開口方向は異なるが、同じ形状をなしている。
また、第1の係合凹部71の内周面は、中心軸線L3方向と直交する平面状をなす第1の係止面71aと、中心軸線L3と平行な平面状をなす第1の当接面71bとから構成されている。同様に、第2の係合凹部72の内周面は、中心軸線L3方向と直交する平面状をなす第2の係止面72aと、中心軸線L3と平行な平面状をなす第2の当接面72bとから構成されている。そして、対をなす第1及び第2の係合凹部71,72においては、第1の当接面71bと第2の当接面72bとが平行をなしている。
また、各転動体44において、対をなす第1の係合凹部71と第2の係合凹部72との間の部分(即ち、第1の当接面71bと第2の当接面72bとの間の部分であって、第1及び第2の係止面71a,72aよりも中心軸線L3方向に突出した部分)を、凹部間部73とする。本実施形態では、凹部間部73は、互いに平行をなす一対の第1及び第2の当接面71b,72bを有する二面幅形状をなしている。また、各凹部間部73は、中心軸線L3方向から見ると、長手方向と短手方向とを有する形状をなしている。詳しくは、各凹部間部73は、中心軸線L3方向から見て、第1及び第2の当接面71b,72bと平行な方向が長手方向、第1及び第2の当接面71b,72bと直交する方向が短手方向となっている。そして、図4(b)に示す状態においては、各転動体44は、凹部間部73の長手方向がクラッチ40の径方向に沿うように、且つ、凹部間部73の短手方向がクラッチ40の周方向に沿うように配置されている。また、各転動体44において、その中心軸線L3方向の両端の2つの凹部間部73の間の部分は、凹部間部73の最大外径と等しい外径を有する円柱状をなしている。
対をなすローラサポート64a,64bの間に配置された転動体44は、第1ローラサポート64aの先端側(図4(a)において下側)に位置する第1の係合凹部71に同ローラサポート64aの先端に設けられた保持爪67の係合保持部67aが挿入されている。更に、同転動体44は、第2ローラサポート64bの先端側(図4(a)において下側)に位置する第2の係合凹部72に同ローラサポート64bの先端に設けられた保持爪67の係合保持部67aが挿入されている。即ち、転動体44の第1及び第2の係合凹部71,72と、ローラサポート64a,64bの保持爪67(係合保持部67a)とが凹凸係合している。そして、第1及び第2の係合凹部71に挿入された保持爪67の当接保持面67bが、中心軸線L1方向から第1及び第2の係止面71a,72aに当接することにより、転動体44は、転動体保持部62からの軸方向の脱落が保持爪67によって防止されている。
図2及び図6(a)に示すように、上記構成のサポート部材43によって保持されることにより、2つの転動体44は、回転方向X1において等角度間隔(本実施形態では180°間隔)に配置されている。また、転動体44を保持した各ローラサポート64a,64bは、クラッチハウジング41の内側に挿入されて配置されているため、各転動体44は、クラッチハウジング41の内側で同クラッチハウジング41と径方向に対向する。そして、各転動体44の外周面は、クラッチハウジング41の円筒状の内周面41cと径方向に対向し、対をなすローラサポート64a,64bの間から同内周面41cに接触可能である。また、各転動体44の外周面は、従動側回転体45と径方向に対向し、同従動側回転体45に接触可能である。なお、サポート部材43は、回転方向X1にクラッチハウジング41に対して相対回転可能である。
また、前記駆動側回転体42の各転動体解除部57は、サポート部材43のリング部61の内周側を通ってクラッチハウジング41の内側に挿入されている。更に、各転動体解除部57は、2つの転動体保持部62の間にそれぞれ配置され、各転動体保持部62と周方向に隣り合っている。そのため、各転動体解除部57における回転方向X1の両端部(各弾性部58)は、一方の転動体保持部62の第1ローラサポート64a及び他方の転動体保持部62の第2ローラサポート64bとそれぞれ回転方向X1に対向している。そして、サポート部材43と駆動側回転体42とは回転方向X1に相対回転可能であり、駆動側回転体42が回転すると、各転動体解除部57は、回転方向の前方側に位置する軸方向対向部63及びローラサポート64a,64bに当接するようになっている。
ここで、図5に示すように、各転動体44において、凹部間部73の長手方向の長さ(即ち凹部間部73の最大外径)D1は、対をなすローラサポート64a,64bの2つの保持爪67の規制面67c間の距離D2よりも長い。更に、各転動体44において、凹部間部73の短手方向の長さ(即ち第1の当接面71bと第2の当接面72bとの間の長さ)D3は、回転方向X1に対向する規制面67c間の距離D2よりも短い。そのため、対をなすローラサポート64a,64bの2つの保持爪67と、これら保持爪67の間に配置された転動体44の凹部間部73との間には、中心軸線L3回りの転動体44の回転範囲を決定する許容隙間G1が設けられている。詳しくは、許容隙間G1は、回転方向X1に対向する第1の当接面71bと規制面67cとの間、並びに、回転方向X1に対向する第2の当接面72bと規制面67cとの間の少なくとも一方に存在する。そのため、各転動体44は、許容隙間G1によって許容された分だけ中心軸線L3回りに回転することが可能である。そして、転動体44が中心軸線L3回りに回転することにより第1及び第2の係合凹部71,72が中心軸線回りに回転すると、転動体44が許容隙間G1によって許容された分だけ回転したところで、第1及び第2の当接面71b,72bがそれぞれ保持爪67(係合保持部67a)に回転方向から当接する。これにより、中心軸線L3回りの第1及び第2の係合凹部71,72の回転が制限され、それ以上の転動体44の中心軸線L3回りの回転が阻止される。このようにして、各転動体44は、凹凸係合した保持爪67と第1及び第2の係合凹部71,72とによって中心軸線L3回りの回転が制限される。
そして、出力部30側から軸方向に見て(即ち図5に示す状態)、対をなすローラサポート64a,64bの間で転動体44がその中心軸線L3回りに時計方向に回転すると、一点鎖線で図示したように、同転動体44は、第1の当接面71bが同第1の当接面71bと対向する規制面67cの径方向外側の端部に当接する。更に、同転動体44は、第2の当接面72bが同第2の当接面72bと対向する規制面67cの径方向内側の端部に当接する。一方、出力部30側から軸方向に見て、対をなすローラサポート64a,64bの間で転動体44がその中心軸線L3回りに反時計方向に回転すると、二点鎖線で図示したように、同転動体44は、第1の当接面71bが同第1の当接面71bと対向する規制面67cの径方向内側の端部に当接する。更に、同転動体44は、第2の当接面72bが同第2の当接面72bと対向する規制面67cの径方向外側の端部に当接する。このように、凹凸係合した保持爪67と第1及び第2の係合凹部71,72とによって転動体44の中心軸線L3回りの回転が制限されることにより、転動体44の外周面において、クラッチハウジング41の内周面41cと摺接可能な摺接範囲A1が決定される。そして、転動体44は、その外周面における摺接範囲A1に該当する部分が、対をなすローラサポート64a,64bの間からクラッチハウジング41の内周面41cに接触可能である。
図2及び図3に示すように、前記従動側回転体45は、ウォーム軸34の基端部(図2において上側の端部)に一体に形成されており、金属製である。従動側回転体45は、軸方向に並設された制御部81及び従動側連結部82を備えている。なお、従動側連結部82は、制御部81の基端側(図2において上側)に設けられている。
制御部81は、ウォーム軸34に一体に形成されるとともに、ウォーム軸34の軸方向に延びる柱状をなしている。そして、制御部81は、その中心軸線がウォーム軸34の中心軸線L2と一致しており、ウォーム軸34と同軸上に形成されている。また、図6(a)に示すように、中心軸線L2方向から見ると、制御部81は、ウォーム軸34の中心軸線L2を対称中心とする点対称形状をなしている。
制御部81の外周面には、一対の制御面83が形成されている。各制御面83は、制御部81の外周面において周方向に等角度間隔(本実施形態では180°間隔)となる2箇所に形成されている。そして、各制御面83は、軸方向に平行、且つ、従動側回転体45の径方向に対して直交する平面状をなしている。更に、一対の制御面83は、互いに平行をなすとともに、各制御面83の軸方向の長さは、前記転動体44の軸方向の長さよりも長い。
図2及び図6(b)に示すように、従動側連結部82は、ウォーム軸34の軸方向に延びる柱状をなしている。従動側連結部82の中心軸線はウォーム軸34の中心軸線L2と一致しており、ウォーム軸34と同軸上に形成されている。また、従動側連結部82は、前記従動軸挿入孔54よりも若干細く形成されている。そして、従動側連結部82は、軸方向と直交する断面形状が略楕円形状をなすとともに、その断面形状は軸方向に一定となっている。また、軸方向視において、従動側連結部82の長手方向は、制御面83と平行な方向であるとともに、同従動側連結部82の短手方向は、制御面83と直交する方向となっている(図6(a)も参照)。なお、図6(b)に示すように、中心軸線L2方向から見ると、従動側連結部82は、ウォーム軸34の中心軸線L2を対称中心とする点対称形状をなしている。
従動側連結部82の外周面には、一対の第1従動側伝達面84及び一対の第2従動側伝達面85が形成されている。対をなす2つの第1従動側伝達面84のうち、一方の第1従動側伝達面84は、他方の第1従動側伝達面84に対して180°反対側に形成されている。そして、2つの第1従動側伝達面84は、それぞれ軸方向と平行な平面状をなすとともに、互いに平行をなしている。また、2つの第1従動側伝達面84の間の間隔は、駆動側回転体42の従動軸挿入孔54に設けられた一対の駆動側伝達面54aの間の間隔と等しく形成されている。
第2従動側伝達面85は、2つの第1従動側伝達面84の間にそれぞれ形成されるとともに、一方の第2従動側伝達面85は、他方の第2従動側伝達面85に対して180°反対側に形成されている。2つの第2従動側伝達面85は、それぞれ軸方向と平行な平面状をなすとともに、互いに平行をなしている。また、2つの第2従動側伝達面85の間の間隔は、駆動側回転体42の従動軸挿入孔54に設けられた一対の駆動側伝達面54a間の間隔と等しく形成されている。そして、第1従動側伝達面84及び第2従動側伝達面85は、軸方向には、従動側連結部82の軸方向の一端から他端に亘って形成されている。
図2に示すように、上記のような従動側回転体45は、駆動側回転体42とは反対側からクラッチハウジング41及びサポート部材43の内側に挿入されている。そして、従動側回転体45は、クラッチハウジング41、駆動側回転体42及びサポート部材43と同軸上に配置されている。
また、図6(b)に示すように、従動側連結部82は、駆動側回転体42と一体回転可能に従動軸挿入孔54に遊嵌されている。従動軸挿入孔54に遊嵌された従動側連結部82の外周面と従動軸挿入孔54の内周面との間には、第1及び第2弾性部材55,56が介在されている。詳しくは、一対の第2弾性部材56は、従動側連結部82の軸方向視における長手方向両端部と接触している。また、4つの第1弾性部材55は、2つの第1従動側伝達面84及び2つの第2従動側伝達面85と駆動側伝達面54aとの間にそれぞれ介在されている。
そして、従動側回転体45に対して駆動側回転体42が中心軸線回りに回転すると、駆動側伝達面54aは、第1弾性部材55を弾性変形させつつ、第1及び第2従動側伝達面84,85のいずれかに対して回転方向に当接する。これにより、駆動側回転体42と従動側回転体45とが回転方向に係合されて駆動側回転体42の回転駆動力が従動側回転体45に伝達されるようになる。
また、図6(a)に示すように、従動側回転体45の制御部81は、各制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間にそれぞれ転動体44が介在されるようにサポート部材43の内側に挿入されており、クラッチハウジング41及び各転動体44と径方向に対向している。即ち、サポート部材43は、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45の各制御面83との間に転動体44を保持している。
そして、各制御面83は、クラッチハウジング41の内周面41cとの間の距離(制御面83と直交する方向の間隔)が、従動側回転体45の回転方向に変化する。本実施形態では、制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間の距離は、各制御面83の周方向の中央において最も長く、各制御面83の周方向の中央から周方向の両端に向かうに連れて徐々に短くなる。また、各制御面83の周方向の中央とクラッチハウジング41の内周面41cとの間の距離は、転動体44の最大外径(円柱状の部分の直径)よりも長く、且つ、各制御面83の周方向端部とクラッチハウジング41の内周面41cとの間の距離は、転動体44の最大外径よりも短い。
また、図5に示すように、本実施形態のクラッチ40においては、クラッチハウジング41の内周面41cにグリスGRが塗布されている。グリスGRは、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体44の外周面との間の空間にも充填されるように配置されている。このグリスGRには、回転軸24の非回転駆動時(即ち駆動側回転体42の非回転駆動時)にクラッチハウジング41の内周面41cと転動体44との間の摺動摩擦を増大させる作用がある。なお、図5以外の図においては、グリスGRの図示を省略している。
次に、上記のように構成されたモータ10の動作を、クラッチ40の動作を中心に、その作用とともに説明する。
図2及び図7(a)に示すように、モータ部20に通電されることによりモータ部20が駆動されると、回転軸24と共に駆動側回転体42が回転する。即ち、駆動側回転体42が回転駆動される。なお、図7(a)及び図7(b)は、駆動側回転体42が第1の方向R1に回転駆動される場合を図示している。そして、図7(a)に示すように、駆動側回転体42の第1の方向R1の回転に伴って、同駆動側回転体42の各転動体解除部57における回転方向前方側の周方向端部(弾性部58)が、各転動体保持部62の軸方向対向部63及び第1ローラサポート64aに回転方向に当接して駆動側回転体42の回転駆動力を伝達する。その結果、当該第1ローラサポート64aが転動体44を第1の方向R1に押圧する。これにより、各転動体44が、従動側回転体45の各制御面83の周方向の中央部に配置される。つまり、転動体44が制御面83とクラッチハウジング41との間に挟持されない(即ち従動側回転体45の回転の妨げとならない)ロック解除状態になる。
そして、そのロック解除状態において、図7(b)に示すように、駆動側回転体42の各駆動側伝達面54aが、従動側連結部82の各第2従動側伝達面85に第1の方向R1から当接することで、駆動側回転体42と従動側回転体45とが一体回転可能に回転方向X1に連結される。これにより、駆動側回転体42(回転軸24)の回転駆動力が従動側回転体45(ウォーム軸34)に伝達されて回転軸24とウォーム軸34とが第1の方向R1に一体回転する。
なお、このとき、図5及び図7(a)に示すように、サポート部材43及び各転動体44は、各軸方向対向部63及び各第1ローラサポート64aが各転動体解除部57に第1の方向R1に押されることで、駆動側回転体42及び従動側回転体45と共に駆動側回転体42の回転軸線(中心軸線L1に同じ)回りに回転する。そして、各転動体44は、クラッチハウジング41の内周面41cとの間の摩擦力により、対をなすローラサポート64a,64bの間でサポート部材43の回転方向とは反対方向にその中心軸線L3回りに回転しようとする。各転動体44が、各々を保持するローラサポート64a,64bの保持爪67(係合保持部67a)との間の許容隙間G1によって許容された分だけその中心軸線L3回りに回転すると、各転動体44において中心軸線L3回りに回転した第1及び第2の係合凹部71,72の内周面が保持爪67の係合保持部67aに当接する。本実施形態では、駆動側回転体42が第1の方向R1に回転した場合には、中心軸線L3回りに回転した各転動体44において、第1の当接面71bが同第1の当接面71bと対向する規制面67cの径方向外側の端部に当接するとともに、第2の当接面72bが同第2の当接面72bと対向する規制面67cの径方向内側の端部に当接する。これにより、各転動体44は、凹凸係合した保持爪67(係合保持部67a)と第1及び第2の係合凹部71,72とによって中心軸線L3回りの回転が制限される。そのため、各転動体44は、駆動側回転体42の回転駆動時に駆動側回転体42と共に同駆動側回転体42の回転軸線回りに回転する場合であっても、各転動体44の中心軸線L3回りには、凹凸係合した保持爪67と第1及び第2の係合凹部71,72とによって許容された範囲内でしか回転しない。
そして、図1及び図7(a)に示すように、ウォーム軸34の第1の方向R1の回転は、ウォームホイール37との間で減速されながら出力軸38に伝達されて、同出力軸38から出力される。すると、出力軸38の回転方向に応じて図示しないウインドレギュレータを介して車両のウインドガラスが昇降される。そして、モータ部20への通電が停止されると、回転軸24の回転駆動、即ち駆動側回転体42の回転駆動が停止される。
図8(a)及び図8(b)に示すように、モータ部20の駆動が停止された状態、即ち回転軸24(駆動側回転体42)の非回転駆動時には、負荷側(本実施形態ではウインドレギュレータ側)から出力軸38に荷重がかかると、その荷重により従動側回転体45が回転しようとする。なお、図8(a)及び図8(b)には、従動側回転体45が第2の方向R2に回転しようとした場合を図示している。すると、従動側回転体45の各制御面83が、各制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に配置された転動体44を外周側に押圧する。制御面83に押された転動体44は、対をなすローラサポート64a,64bの間でクラッチハウジング41の内周面41cに当接するとともに、制御面83における同制御面83の周方向の中央よりも周方向の端部(制御面83における第2の方向R2の後方側の端部)寄りの部分に当接する。そして、各転動体44は、制御面83における第2の方向R2の後方側の端部寄りの部分とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に挟持される。これにより、転動体44がくさびとなって、従動側回転体45の回転(第2の方向R2への回転)が阻止(即ちウォーム軸34の回転がロック)される。従って、回転軸24(駆動側回転体42)の非回転駆動時に出力軸38が回転されることが阻止される。なお、従動側回転体45がロック位置(クラッチハウジング41との間に転動体44を挟持する位置)に配置された状態(図8(a)に示す状態)では、図8(b)に示すように、従動側連結部82の各第2従動側伝達面85は、駆動側回転体42の各駆動側伝達面54aに回転方向(第2の方向R2)に接触しないようになっている。
因みに、モータ部20(駆動側回転体42)の非駆動時に、従動側回転体45が第1の方向R1に回転しようとした場合においても同様にして、従動側回転体45の回転が阻止される。即ち、各転動体44が、制御面83における第1の方向R1の後方側の端部寄りの部分とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に挟持されることにより、各転動体44がくさびとなって、従動側回転体45の回転(第1の方向R1への回転)が阻止(即ちウォーム軸34の回転がロック)される。
また、図2、図9(a)及び図9(b)に示すように、モータ部20の駆動により、回転軸24と共に駆動側回転体42が第2の方向R2に回転する場合には、各部材の回転方向は反対となるが、駆動側回転体42が第1の方向R1に回転する場合(図7参照)と同様の動作で、クラッチ40が回転軸24とウォーム軸34とを連結する。即ち、駆動側回転体42の第2の方向R2の回転に伴って、同駆動側回転体42の各転動体解除部57における回転方向前方側の周方向端部(弾性部58)が、各転動体保持部62の軸方向対向部63及び第2ローラサポート64bに回転方向に当接して駆動側回転体42の回転駆動力を伝達する。その結果、当該第2ローラサポート64bが転動体44を第2の方向R2に押圧する。これにより、各転動体44が、従動側回転体45の各制御面83の周方向の中央部に配置され、制御面83とクラッチハウジング41との間に挟持されないロック解除状態とされる。そのロック解除状態において、駆動側回転体42の各駆動側伝達面54aが、従動側連結部82の各第1従動側伝達面84に第2の方向R2から当接することで、駆動側回転体42(回転軸24)の回転駆動力が従動側回転体45(ウォーム軸34)に伝達されて回転軸24とウォーム軸34とが第2の方向R2に一体回転する。
なお、このとき、図5及び図9(a)に示すように、サポート部材43及び各転動体44は、各軸方向対向部63及び各第2ローラサポート64bが各転動体解除部57に第2の方向R2に押されることで、駆動側回転体42及び従動側回転体45と共に駆動側回転体42の回転軸線回りに回転する。そして、各転動体44は、クラッチハウジング41の内周面41cとの間の摩擦力により、対をなすローラサポート64a,64bの間でサポート部材43の回転方向とは反対方向にその中心軸線L3回りに回転しようとする。各転動体44は、各々を保持するローラサポート64a,64bの保持爪67(係合保持部67a)との間の許容隙間G1によって許容された分だけその中心軸線L3回りに回転すると、各転動体44において中心軸線L3回りに回転した第1及び第2の係合凹部71,72の内周面が保持爪67の係合保持部67aに当接する。本実施形態では、駆動側回転体42が第2の方向R2に回転した場合には、中心軸線L3回りに回転した各転動体44において、第1の当接面71bが同第1の当接面71bと対向する規制面67cの径方向内側の端部に当接するとともに、第2の当接面72bが同第2の当接面72bと対向する規制面67cの径方向外側の端部に当接する。これにより、各転動体44は、凹凸係合した保持爪67(係合保持部67a)と第1及び第2の係合凹部71,72とによって中心軸線L3回りの回転が制限される。そのため、各転動体44は、駆動側回転体42の回転駆動時に駆動側回転体42と共に同駆動側回転体42の回転軸線回りに回転する場合であっても、各転動体44の中心軸線L3回りには、凹凸係合した保持爪67と第1及び第2の係合凹部71,72とによって許容された範囲内でしか回転しない。
そして、図2及び図9(a)に示すように、ウォーム軸34の第2の方向R2の回転が出力軸38に伝達されて同出力軸38から出力されると、出力軸38の回転方向に応じて図示しないウインドレギュレータを介して車両のウインドガラスが昇降される。その後、モータ部20への通電が停止されると、回転軸24(駆動側回転体42)の回転駆動が停止される。モータ部20の駆動が停止された後には、上記したように、転動体44がくさびとなって従動側回転体45の回転が阻止(即ちウォーム軸34の回転がロック)されることにより、出力軸38が回転されることが阻止される(図8(a)参照)。
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)転動体44においてローラサポート64a,64bの先端側の軸方向端部に設けられた第1及び第2の係合凹部71,72は、これら第1及び第2の係合凹部71,72と凹凸係合した保持爪67によって、中心軸線L3回りの回転が制限される。即ち、当該第1及び第2の係合凹部71,72と保持爪67とが凹凸係合することにより、転動体44は、保持爪67によって同転動体44の中心軸線L3回りの回転が制限される。そのため、転動体44は当該転動体44の中心軸線L3回りには、保持爪67によって許容された範囲内でしか回転しない。従って、転動体44が同転動体44の中心軸線L3回りに回転することによるグリスGRの飛散が抑制されるため、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体44との間のグリスGRが不足することを抑制することができる。
また、転動体44に設けられた第1及び第2の係合凹部71,72とサポート部材43に設けられた保持爪67との凹凸係合という簡単な構成によって、転動体44の中心軸線L3回りの回転を制限することができる。その結果、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体44との間のグリスGRが不足することを容易に抑制することができる。
(2)第1及び第2の係合凹部71,72の第1及び第2の当接面71b,72bとこれら第1及び第2の当接面71b,72bと対向する保持爪67の規制面67cとの間に設けられた許容隙間G1の分だけ各転動体44が中心軸線L3回りに回転すると、第1及び第2の当接面71b,72bが各転動体44の回転方向から保持爪67に当接する。これにより、各転動体44は、各々の中心軸線L3回りのそれ以上の回転がサポート部材43の保持爪67によって阻止される。即ち、各転動体44は、第1及び第2の係合凹部71,72と保持爪67とが凹凸係合することにより、許容隙間G1によって決定された回転範囲内では各々の中心軸線L3回りに回転することができる。そのため、クラッチハウジング41の内周面41cに対する各転動体44の姿勢を各転動体44の中心軸線L3回りに変化させることができる。そして、回転範囲内での各転動体44の中心軸線L3回りの回転に伴って各転動体44の周囲のグリスGRが移動されるため、各転動体44においてクラッチハウジング41の内周面41cに接触する部分にグリスGRを供給することができる。従って、クラッチハウジング41の内周面41cと各転動体44との間のグリスGRが不足することをより抑制することができる。
(3)各転動体44に凹部状の第1及び第2の係合凹部71,72が設けられることにより、各転動体44を構成する材料を減少させることができる。その結果、転動体44の製造コストを低減させることができる。
(4)第1及び第2の係合凹部71,72は、各転動体44におけるローラサポート64a,64bの先端側の軸方向端部に凹設されている。そのため、各転動体44が駆動側回転体42の回転軸線方向にサポート部材43から脱落することを抑制する保持爪67を、中心軸線L3回りの第1及び第2の係合凹部71,72の回転を制限するサポート部材側係合部として利用することができる。従って、サポート部材43に、別途サポート部材側係合部を設ける場合に比べて、サポート部材43の形状が複雑化されることを抑制できる。
(5)各転動体44は、中心軸線L3方向の各端部において中心軸線L3と直交する方向の両側に凹設された一対の第1及び第2の係合凹部71,72を有する。そして、中心軸線L3方向から見て各転動体44における対の第1及び第2の係合凹部71,72の間の部分(即ち凹部間部73)は、中心軸線L3と平行な平面状をなし且つ互いに平行をなす一対の第1及び第2の当接面71b,72bを有する二面幅形状をなしている。そのため、第1及び第2の係合凹部71,72の形状が複雑になることが抑制される。従って、第1及び第2の係合凹部71,72を設けたことにより各転動体44の形状が複雑化されることを抑制することができる。その結果、転動体44を容易に製造することができる。
(6)転動体44の中心軸線L3方向の両端部のそれぞれに、1対の第1及び第2の係合凹部71,72が設けられている。そのため、対をなすローラサポート64a,64bの間に転動体44を組み付ける際、転動体44における中心軸線L3方向の両端部のうち何れの端部がローラサポート64a,64bの先端側に配置されてもよい。従って、保持爪67と凹凸係合する第1及び第2の係合凹部71,72が転動体44に設けられていても、当該転動体44のサポート部材43への組付けを容易に行うことができる。
(7)モータ10においては、クラッチハウジング41の内周面41cと各転動体44との間のグリスGRが不足することが抑制されたクラッチ40を介して、回転軸24とウォーム軸34とが連結されている。従って、回転軸24の非回転駆動時に、ウォーム軸34側から回転軸24が回転されることがより抑制される。
(8)サポート部材43は、駆動側回転体42と共に同駆動側回転体42の回転軸線回り(即ち中心軸線L1回り)に回転するものである。更に、転動体44は、駆動側回転体42の回転駆動時にはサポート部材43に保持されながら駆動側回転体42と共に駆動側回転体42の回転軸線回りに回転する。そのため、クラッチ40は、駆動側回転体42の回転駆動時に、転動体44が、その中心軸線L3回りに回転しようとする構成となっている。即ち、中心軸線L3回りに転動体が自由に回転した場合にグリスが飛散しやすい構成となっている。しかしながら、転動体44がその中心軸線L3回りに回転しようとする構成のクラッチ40であっても、本実施形態のように凹凸係合した保持爪67と第1及び第2の係合凹部71,72とによって中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限することで、中心軸線L3回りの転動体44の回転に伴うグリスGRの飛散を抑制できる。従って、駆動側回転体42の回転駆動時に転動体44が中心軸線L3回りに回転しようとする構成のクラッチ40において、クラッチハウジング41の内周面41cと各転動体44との間のグリスGRが不足することを効果的に抑制することができる。
<第2実施形態>
次に、クラッチの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に上記実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
図10(a)及び図10(b)に示す本実施形態のサポート部材100及び転動体110は、サポート部材43及び転動体44に代えて上記第1実施形態のクラッチ40に備えられるものである(図3参照)。
サポート部材100の各転動体保持部62の軸方向対向部63には、駆動側回転体42の回転軸線(中心軸線L1に同じ)方向に突出した係合突部101が設けられている。本実施形態の係合突部101は、軸方向対向部63における径方向外側の端部からローラサポート64a,64bの先端側に向かって中心軸線L1方向に突出している。また、各転動体保持部62において、係合突部101は、対をなすローラサポート64a,64b間の中央部に位置する。そして、係合突部101の径方向内側の側面は、リング部61の直径方向と直交する平面状をなす規制面101aとなっている。2つの転動体保持部62に設けられた係合突部101の規制面101aは、中心軸線L1方向と平行をなすとともに、互いに平行をなしている。
上記のサポート部材100にて保持される2つの転動体110は、樹脂製であり、略円柱状をなしている。そして、各転動体110は、サポート部材100にて保持されることにより、その中心軸線L4が中心軸線L1,L2と平行をなすように配置されている。
各転動体110における中心軸線L4方向の両端部には、対をなす第1及び第2の係合凹部111,112がそれぞれ形成されている。即ち、各転動体110は、2対の係合凹部111,112を有する。なお、本実施形態では、各転動体110において、サポート部材100の外周側に第1の係合凹部111が位置し、同サポート部材100の内周側に第2の係合凹部112が位置する。
対をなす第1及び第2の係合凹部111,112は、転動体110の中心軸線L4方向の端部において、中心軸線L4と直交する方向(転動体110の直径方向であって、図10(b)においては左右方向)の両側に凹設されている。そして、第1及び第2の係合凹部111,112は、転動体110の中心軸線L4方向の端部において、転動体110の幅を狭めるように中心軸線L4と直交する方向に凹設されている。また、第1及び第2の係合凹部111,112は、転動体110の中心軸線L4方向の端部において、中心軸線L4と直交する方向の両側で転動体110を同転動体110の直径方向(図10(b)において左右方向)に貫通している。更に、第1及び第2の係合凹部111,112は、転動体110の直径方向の外側、及び中心軸線L4方向の片側(転動体110の中心軸線L4方向の中央部と反対側)に開口している。そして、対をなす第1及び第2の係合凹部111,112は、中心軸線L4を対称軸とする回転対称の関係にある。即ち、各係合凹部111,112は、開口方向は異なるが、同じ形状をなしている。
また、各係合凹部111,112の内周面は、中心軸線L4方向と直交する平面状をなす対向面113aと、中心軸線L4と平行な平面状をなす当接面113bとから構成されている。そして、対をなす第1及び第2の係合凹部111,112においては、互いの当接面113bが平行をなしている。なお、各転動体110において、対をなす第1及び第2の係合凹部111,112の間の部分(即ち、2つの当接面113bの間の部分であって、対向面113aよりも中心軸線L4方向に突出した部分)を、凹部間部114とする。本実施形態では、凹部間部114は、その短手方向の両側に互いに平行をなす2つ当接面113bを有する二面幅形状をなしており、中心軸線L4方向から見て当接面113bと平行な方向が長手方向となっている。そして、図10(b)に示す状態においては、転動体110は、凹部間部114の短手方向がクラッチ40の径方向に沿うように、且つ、凹部間部114の長手方向がサポート部材100の周方向に沿うように配置されている。また、各転動体110において、その中心軸線L4方向の両端の2つの凹部間部114の間の部分は、凹部間部114の最大外径と等しい外径を有する円柱状をなしている。また、各転動体110の中心軸線L4方向の両端面は、中心軸線L4と直交する平面状をなしている。
対をなすローラサポート64a,64bの間に配置された転動体110は、回転方向X1の両側からローラサポート64a,64bによって保持されている。更に、同転動体110におけるローラサポート64a,64bの先端側の軸方向の端面に、保持爪67の当接保持面67bが中心軸線L1方向から当接しており、転動体110は、保持爪67によって転動体保持部62からの軸方向の脱落が防止されている。また、転動体110におけるローラサポート64a,64b基端側の軸方向の端部に設けられた一対の第1及び第2の係合凹部111,112のうち径方向外側に位置する第1の係合凹部111に、係合突部101が挿入されている。即ち、転動体110における軸方向対向部63側の軸方向の端部に設けられた1つの第1の係合凹部111に、係合突部101が凹凸係合している。また、互いに凹凸係合した第1の係合凹部111及び係合突部101においては、当接面113bと規制面101aとがサポート部材100の径方向に対向している。
図10(b)及び図11に示すように、上記構成のサポート部材100によって保持されることにより、2つの転動体110は、回転方向X1において等角度間隔(本実施形態では180°間隔)に配置されている。また、転動体110を保持した各ローラサポート64a,64bは、クラッチハウジング41の内側に挿入されて配置されているため、各転動体110は、クラッチハウジング41の内側で同クラッチハウジング41と径方向に対向する。そして、各転動体110の外周面は、クラッチハウジング41の円筒状の内周面41cと径方向に対向し、対をなすローラサポート64a,64bの間から同内周面41cに接触可能である。更に、各転動体110の外周面は、従動側回転体45の制御面83と径方向に対向し同制御面83に接触可能である。また、サポート部材100は、クラッチハウジング41に対して回転方向X1に相対回転可能である。なお、図11に示すサポート部材100は、図10(a)の断面指示線F10b−F10bにおける断面図である。また、図11には、クラッチハウジング41及び従動側回転体45を二点鎖線で図示している。更に、転動体110における中心軸線L4方向の中央部分(2つの凹部間部114の間の円柱状の部分)の外形を二点鎖線で図示している。
また、図11に示すように、転動体110の第1の係合凹部111の当接面113bと、同第1の係合凹部111に挿入された係合突部101の規制面101aとの間には、中心軸線L4回りの転動体110の回転範囲を決定する許容隙間G2が設けられている。そのため、転動体110は、許容隙間G2によって許容された分だけ中心軸線L4回りに回転することが可能である。そして、出力部30側(転動体保持部62の先端側)から軸方向に見て(図11に示す状態)、対をなすローラサポート64a,64bの間で転動体110がその中心軸線L4回りに時計方向に回転すると、同転動体110の第1の係合凹部111が中心軸線L4回りに時計方向に回転する。転動体110が許容隙間G2によって許容された分だけ回転したところで、一点鎖線で図示したように、第1の係合凹部111の当接面113bが、当該当接面113bと対向する係合突部101の周方向の一端部(図11において右側の端部)に回転方向から当接する。このため、転動体110は、凹凸係合した係合突部101及び第1の係合凹部111によってそれ以上の中心軸線L4回りの時計方向の回転が阻止される。一方、出力部30側から軸方向に見て、対をなすローラサポート64a,64bの間で転動体110がその中心軸線L4回りに反時計方向に回転すると、同転動体110の第1の係合凹部111が中心軸線L4回りに反時計方向に回転する。転動体110が許容隙間G2によって許容された分だけ回転したところで、破線で図示したように、第1の係合凹部111の当接面113bが、当該当接面113bと対向する係合突部101の周方向の他端部(図11において左側の端部)に回転方向から当接する。このため、転動体110は、凹凸係合した係合突部101及び第1の係合凹部111によってそれ以上の中心軸線L4回りの反時計方向の回転が阻止される。このようにして、各転動体110は、凹凸係合した係合突部101及び第1の係合凹部111によって、中心軸線L4回りの回転が制限される。更に、転動体110の中心軸線L4回りの回転が、互いに対向する規制面101aと当接面113bとの間の許容隙間G2にて許容される範囲に制限されることにより、転動体110の外周面において、クラッチハウジング41の内周面41cと摺接可能な摺接範囲A2が決定される。
次に、本実施形態の作用について説明する。
駆動側回転体42が回転駆動されると、上記第1実施形態と同様にして、転動体110が制御面83とクラッチハウジング41との間に挟持されないロック解除状態になる。そして、そのロック解除状態において、駆動側回転体42と従動側回転体45とが一体回転可能に回転方向X1に連結され、これにより、駆動側回転体42(回転軸24)の回転駆動力が従動側回転体45(ウォーム軸34)に伝達されて回転軸24とウォーム軸34とが一体回転する。
このとき、図11に示すように、サポート部材100及び各転動体110は、第1及び第2ローラサポート64a,64bの何れか一方及び各軸方向対向部63が各転動体解除部57に回転方向X1に押されることで、駆動側回転体42及び従動側回転体45と共に駆動側回転体42の回転軸線(中心軸線L1に同じ)回りに回転する。そして、各転動体110は、クラッチハウジング41の内周面41cとの間の摩擦力により、対をなすローラサポート64a,64bの間でサポート部材100の回転方向とは反対方向にその中心軸線L4回りに回転しようとする。各転動体110が、互いに対向する規制面101aと当接面113bとの間の許容隙間G2によって許容された分だけその中心軸線L4回りに回転すると、各転動体110において中心軸線L4回りに回転した第1の係合凹部111の当接面113bが当該係合凹部111に凹凸係合した係合突部101に回転方向から当接する。これにより、各転動体110は、凹凸係合した第1の係合凹部111と係合突部101とによって中心軸線L4回りの回転が制限される。そのため、各転動体110は、駆動側回転体42の回転駆動時に駆動側回転体42と共に同駆動側回転体42の回転軸線回りに回転する場合であっても、各転動体110の中心軸線L4回りには、凹凸係合した係合突部101と第1の係合凹部111とによって許容された範囲内でしか回転しない。
また、駆動側回転体42の非回転駆動時に、従動側回転体45が回転しようとした場合には、上記第1実施形態と同様にして、各転動体110が、制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に挟持されることにより、各転動体110がくさびとなって、従動側回転体45の回転が阻止される。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(2),(3),(5)〜(8)と同様の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
(1)転動体110においてローラサポート64a,64bの基端側の軸方向の端部に設けられた第1の係合凹部111は、第1の係合凹部111と凹凸係合した係合突部101によって、中心軸線L4回りの回転が制限される。即ち、当該第1の係合凹部111と係合突部101とが凹凸係合することにより、転動体110は、係合突部101によって同転動体110の中心軸線L4回りの回転が制限される。そのため、転動体110は当該転動体110の中心軸線L4回りには、係合突部101によって許容された範囲内でしか回転しない。従って、転動体110が同転動体110の中心軸線L4回りに回転することによるグリスGRの飛散が抑制されるため、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体110との間のグリスGRが不足することを抑制することができる。
また、転動体110に設けられた第1の係合凹部111とサポート部材100に設けられた係合突部101との凹凸係合という簡単な構成によって、転動体110の中心軸線L4回りの回転を制限することができる。その結果、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体110との間のグリスGRが不足することを容易に抑制することができる。
(2)駆動側回転体42の回転駆動の開始時には、駆動側回転体42の回転駆動力は、軸方向対向部63からサポート部材100に伝達される。そして、駆動側回転体42の回転駆動力は、軸方向対向部63及びローラサポート64a,64bを介して転動体110に伝達される。また、係合突部101は、軸方向対向部63に設けられているため、転動体110の第1の係合凹部111とサポート部材100の係合突部101とは、駆動側回転体42の回転駆動力が直接伝達される軸方向対向部63の近傍で凹凸係合している。そのため、駆動側回転体42の回転駆動力が、サポート部材100を介して転動体110に伝達されやすくなる。従って、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45とによる転動体110の挟持を解除しやすくなる。
<第3実施形態>
次に、クラッチの第3実施形態について説明する。なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同一の構成及び対応する構成に上記実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
図12(a)及び図12(b)に示す本実施形態のサポート部材120及び転動体130は、サポート部材43及び転動体44に代えて上記第1実施形態のクラッチ40に備えられるものである(図3参照)。
サポート部材120において、各転動体保持部62の軸方向対向部63の先端部(軸方向対向部63におけるリング部61と反対側の軸方向の端部であって図12(a)において下端部)には、係合突部121が設けられている。係合突部121は、軸方向対向部63に一体に設けられており、駆動側回転体42の回転軸線方向(中心軸線L1方向に同じ)にローラサポート64a,64bの先端側(図12(b)において下側)に突出した凸部である。また、本実施形態の係合突部121は、リング部61の径方向に沿って同リング部61の径方向内側に向かうにつれてローラサポート64a,64bの先端側への突出量が徐々に多くなるように形成されている。そして、係合突部121の先端面121aは、中心軸線L1と直交する仮想平面S1に対して傾斜した平面状をなしている。本実施形態では、先端面121aは、同先端面121aにおけるリング部61の径方向外側の端部よりも径方向内側の端部の方がリング部61から中心軸線L1方向に離間した位置に位置するように傾斜している。
上記のサポート部材120にて保持される2つの転動体130は、樹脂製であり、略円柱状をなしている。そして、各転動体130は、サポート部材120にて保持されることにより、その中心軸線L5が中心軸線L1,L2(駆動側回転体42の回転軸線)と平行をなすように配置されている。
各転動体130における中心軸線L5方向の一端部(図12(b)において上側の端部)には、係合凹部131が設けられている。各転動体130において、係合凹部131は、中心軸線L5方向に凹設された凹部であり、中心軸線L5と直交する方に沿って転動体130の一端から他端(転動体130の直径方向の一端から他端)に向かうにつれて中心軸線L5方向の深さが深くなっている。そして、係合凹部131は、中心軸線L5と直交する仮想平面S2に対して傾斜した平面状の傾斜底面131aを有する。なお、本実施形態では、仮想平面S1と仮想平面S2とが平行をなすとともに、傾斜底面131aの仮想平面S2に対する傾斜角度と、前記係合突部121の先端面121aの仮想平面S1に対する傾斜角度とが等しくなっている。なお、各転動体130における中心軸線L5方向の他端面(ローラサポート64a,64bの先端側の端面)は、中心軸線L5と直交する平面状をなしている。更に、各転動体130の外周面は、円筒状をなしている。
また、各転動体130の中心軸線L5方向の最大長さH1は、各転動体保持部62における係合突部121の基端と当接保持面67bとの間の軸方向の距離D5よりも短い。また、各転動体130の中心軸線L5方向の最小長さH2は、各転動体保持部62における係合突部121の先端と当接保持面67bとの間の軸方向の距離D6よりも短い。また、各転動体130の最大長さH1は、各転動体保持部62における距離D6よりも長い。
そして、各転動体130は、係合凹部131が設けられた側の端部がローラサポート64a,64bの基端側に位置するように、対をなすローラサポート64a,64bの間に配置され、回転方向X1の両側からローラサポート64a,64bによって保持されている。なお、図12(a)及び図12(b)には、回転方向X1の図示を省略しているが、回転方向X1は、回転軸線L1回りの方向であって、リング部61の周方向と同方向である。更に、同転動体130におけるローラサポート64a,64bの先端側の軸方向の端面に、保持爪67の当接保持面67bが中心軸線L1方向から当接しており、転動体130は、保持爪67によって転動体保持部62からの軸方向の脱落が防止されている。また、転動体130は、リング部61の直径方向に沿って同リング部61の径方向内側に向かうにつれて係合凹部131の中心軸線L5方向の深さが深くなるように配置されている。そして、転動体130の係合凹部131に、同転動体130と中心軸線L1方向に対向する係合突部121が挿入されている。即ち、係合凹部131と係合突部121とが凹凸係合している。更に、互いに凹凸係合した係合凹部131と係合突部121とにおいては、係合突部121の先端面121aと傾斜底面131aとが駆動側回転体42の回転軸線方向(中心軸線L1方向)に対向している。
上記構成のサポート部材120によって保持されることにより、2つの転動体130は、回転方向X1において等角度間隔(本実施形態では180°間隔)に配置されている。また、転動体130を保持した各ローラサポート64a,64bは、クラッチハウジング41の内側に挿入されて配置されているため、各転動体130は、クラッチハウジング41の内側で同クラッチハウジング41と径方向に対向する。そして、各転動体130の外周面は、クラッチハウジング41の円筒状の内周面41cと径方向に対向し、対をなすローラサポート64a,64bの間から同内周面41cに接触可能である。更に、各転動体130の外周面は、従動側回転体45の制御面83と径方向に対向し同制御面83に接触可能である。また、サポート部材120は、クラッチハウジング41に対して回転方向X1に相対回転可能である。なお、図12(b)には、クラッチハウジング41を二点鎖線で図示している。
また、前述したように、各転動体130の最大長さH1は、各転動体保持部62における係合突部121の基端と当接保持面67bとの間の距離D5よりも短く、各転動体130の最小長さH2は、各転動体保持部62における係合突部121の先端と当接保持面67bとの間の距離D6よりも短い。更に、各転動体130の最大長さH1は、各転動体保持部62における距離D6よりも長い。そのため、転動体保持部62にて保持された転動体130の係合凹部131の傾斜底面131aと、同係合凹部131に挿入された係合突部121の先端面121aとの間には、中心軸線L5回りの転動体130の回転範囲を決定する許容隙間G3が設けられている。従って、転動体130は、許容隙間G3によって許容された分だけ中心軸線L5回りに回転することが可能である。転動体130は、対をなすローラサポート64a,64bの間でその中心軸線L5回りに時計方向及び反時計方向の何れの方向に回転しても、同転動体130の係合凹部131が中心軸線L5回りに回転する。そして、転動体130が許容隙間G3によって許容された分だけ回転したところで、係合凹部131の傾斜底面131aが係合突部121の先端面121aに回転方向から当接する。このため、転動体130は、凹凸係合した係合凹部131及び係合突部121によって一定以上の中心軸線L5回りの回転が阻止される。また、転動体130の中心軸線L5回りの回転が、係合凹部131の傾斜底面131aと係合突部121の先端面121aとの間の許容隙間G3にて許容される範囲に制限されることにより、転動体130の外周面において、クラッチハウジング41の内周面41cと摺接可能な摺接範囲(図示略)が決定される。
次に、本実施形態の作用について説明する。
駆動側回転体42が回転駆動されると、上記第1実施形態と同様にして、転動体130が制御面83とクラッチハウジング41との間に挟持されないロック解除状態になる。そして、そのロック解除状態において、駆動側回転体42と従動側回転体45とが一体回転可能に回転方向X1に連結され、これにより、駆動側回転体42(回転軸24)の回転駆動力が従動側回転体45(ウォーム軸34)に伝達されて回転軸24とウォーム軸34とが一体回転する。
このとき、サポート部材120及び各転動体130は、第1及び第2ローラサポート64a,64bの何れか一方及び各軸方向対向部63が各転動体解除部57に回転方向X1に押されることで、駆動側回転体42及び従動側回転体45と共に駆動側回転体42の回転軸線(中心軸線L1に同じ)回りに回転する。そして、各転動体130は、クラッチハウジング41の内周面41cとの間の摩擦力により、対をなすローラサポート64a,64bの間でサポート部材120の回転方向とは反対方向にその中心軸線L5回りに回転しようとする。各転動体130が、互いに対向する傾斜底面131aと先端面121aとの間の許容隙間G3によって許容された分だけその中心軸線L5回りに回転すると、各転動体130において中心軸線L5回りに回転した係合凹部131の傾斜底面131aが当該係合凹部131に凹凸係合した係合突部121の先端面121aに回転方向から当接する。これにより、各転動体130は、凹凸係合した係合凹部131と係合突部121とによって中心軸線L5回りの回転が制限される。そのため、各転動体130は、駆動側回転体42の回転駆動時に駆動側回転体42と共に同駆動側回転体42の回転軸線回りに回転する場合であっても、各転動体130の中心軸線L5回りには、凹凸係合した係合凹部131と係合突部121とによって許容された範囲内でしか回転しない。
また、駆動側回転体42の非回転駆動時に、従動側回転体45が回転しようとした場合には、上記第1実施形態と同様にして、各転動体130が、制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に挟持されることにより、各転動体130がくさびとなって、従動側回転体45の回転が阻止される。
本実施形態によれば、上記第1実施形態の(2),(3),(7),(8)及び上記第2実施形態の(2)と同様の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
(1)転動体130においてローラサポート64a,64bの基端側の軸方向の端部に設けられた係合凹部131は、係合凹部131と凹凸係合した係合突部121によって、中心軸線L5回りの回転が制限される。即ち、当該係合凹部131と係合突部121とが凹凸係合することにより、転動体130は、係合突部121によって同転動体130の中心軸線L5回りの回転が制限される。そのため、転動体130は当該転動体130の中心軸線L5回りには、係合突部121によって許容された範囲内でしか回転しない。従って、転動体130が同転動体130の中心軸線L5回りに回転することによるグリスGRの飛散が抑制されるため、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体130との間のグリスGRが不足することを抑制することができる。
また、転動体130に設けられた係合凹部131とサポート部材120に設けられた係合突部121との凹凸係合という簡単な構成によって、転動体130の中心軸線L5回りの回転を制限することができる。その結果、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体130との間のグリスGRが不足することを容易に抑制することができる。
(2)係合凹部131の傾斜底面131aは、仮想平面S2に対して傾斜しており、係合凹部131と凹凸係合する係合突部121の先端面121aは、仮想平面S1に対して傾斜している。そして、傾斜底面131aと先端面121aとは、中心軸線L1方向に対向している。そのため、転動体130がその中心軸線L5回りに回転すると、傾斜底面131aが係合突部121の先端面121aに当接する。これにより、係合突部121によってそれ以上の転動体130の中心軸線L5回りの回転が阻止される。このように、簡単な構成の係合凹部131と係合突部121とによって、中心軸線L5回りの転動体130の回転を制限することができる。従って、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体130との間のグリスGRが不足することを容易に抑制することができる。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1実施形態の転動体44は、同転動体44の外周面における摺接範囲A1に開口しグリスGRを収容するグリス収容凹部を有するものであってもよい。なお、グリス収容凹部は、摺接範囲A1において転動体44の外周面が残るように形成されるものであり、摺接範囲A1の全体に亘っては形成されない。
例えば、図13(a)及び図13(b)に示す転動体44は、転動体44の軸方向の一端部(ローラサポート64a,64bの基端側の端部)にグリス収容凹部75を有する。グリス収容凹部75は、転動体44の軸方向の一方側と同転動体44の径方向外側(クラッチハウジング41側)に開口している。なお、図13(b)では、摺接範囲A1にドットを付している。
また例えば、図14(a)及び図14(b)に示す転動体44は、転動体44の軸方向の他端部(ローラサポート64a,64bの先端側の端部)にグリス収容凹部76を有する。グリス収容凹部76は、転動体44の軸方向の他方側と同転動体44の径方向外側(クラッチハウジング41側)に開口している。
そして、図15(a)及び図15(b)に示すように、転動体44は、軸方向の両端部にグリス収容凹部75,76を有するものであってもよい。
また例えば、図16(a)及び図16(b)に示す転動体44は、軸方向の中央部にグリス収容凹部77を有する。グリス収容凹部77は、転動体44の外周面における摺接範囲A1に該当する部分から同転動体44の直径方向に凹設されている。
そして、図17(a)及び図17(b)に示すように、転動体44は、軸方向の両端部にグリス収容凹部75,76を有し、更に、軸方向の中央部にグリス収容凹部77を有するものであってもよい。
なお、図13乃至図17に示す例では、グリス収容凹部75,76,77は、径方向外側から見た形状が矩形状をなしているが、これに限らず、円形状、多角形状等であってもよい。また、転動体44は、摺接範囲A1に開口するグリス収容凹部を4個以上備えていてもよい。
このようにすると、転動体44に設けられたグリス収容凹部75,76,77は、クラッチハウジング41の内周面41cと摺接可能な摺接範囲A1に開口している。そのため、グリス収容凹部75,76,77に収容されたグリスGRが、転動体44の回転に伴ってクラッチハウジング41の内周面41cの方へ引き出されて転動体44とクラッチハウジング41の内周面41cとの間(摺接範囲A1と内周面41cとの間)に供給される。従って、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体44との間のグリスGRが不足することを更に抑制することができる。その結果、駆動側回転体42の回転駆動が停止されたときに、転動体44が、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45の制御面83との間のくさびとなり難くなることを更に抑制することができる。
なお、第2実施形態の転動体110及び第3実施形態の転動体130についても同様に、転動体110,130の外周面における摺接範囲に開口しグリスGRを収容するグリス収容凹部を設けることにより、同様の効果を得ることができる。
・上記第1実施形態の転動体44は、互いに凹凸係合した第1及び第2の係合凹部71,72と保持爪67とによって同転動体44の中心軸線L3回りの回転が制限されるものである。そのため、当該転動体44の外周面において、クラッチハウジング41の内周面41cに接触可能な部分と、従動側回転体45の制御面83に接触可能な部分とを分離することができる。従って、当該転動体44の外周面において、クラッチハウジング41の内周面41cに接触可能な部分と、従動側回転体45の制御面83に接触可能な部分との曲率を異ならせることができる。
例えば、図18に示す例では、転動体44は、同転動体44における回転方向X1の両側に中心軸線L3方向と直交し互いに平行をなす一対の平行面78aを有する。そして、転動体44の外周面においては、一対の平行面78aよりもクラッチハウジング41側に位置する部分がクラッチハウジング41の内周面41cに接触可能な第1の円弧面78bとなり、一対の平行面78aよりも従動側回転体45側に位置する部分が従動側回転体45の制御面83に接触可能な第2の円弧面78cとなっている。更に、中心軸線L3方向から見て、従動側回転体45の制御面83に接触する第2の円弧面78cは、クラッチハウジング41の内周面41cに接触する第1の円弧面78bよりも曲率の小さい円弧状をなしている。
このようにすると、上記第1実施形態のように転動体44の外周面全体が第1の円弧面78bの曲率である場合(即ち円筒状をなす場合)に比べて、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45の制御面83とが転動体44をくさびとして挟持するときのくさび角θ1を小さくすることができる。すると、駆動側回転体42の回転駆動が停止されたときに、クラッチハウジング41の内周面41cと制御面83との間に転動体44を挟持するまでに従動側回転体45が回転する角度である空走角θ2が、転動体44の外周面全体が第1の円弧面78bの曲率である場合に比べて小さくなる。そのため、駆動側回転体42の非回転駆動時に従動側回転体45が回転しようとしたときに、転動体44の外周面全体が第1の円弧面78bの曲率である場合に比べて従動側回転体45の回転速度がより小さい段階で従動側回転体45とクラッチハウジング41とによって転動体44を挟持することができる。従って、従動側回転体45側から回転しようとしたときに、より早い段階で従動側回転体45とクラッチハウジング41とによって転動体44を挟持することができるため、駆動側回転体42の回転駆動が停止されたときに従動側回転体45の回転を素早く阻止することができる。
なお、第2実施形態の転動体110及び第3実施形態の転動体130についても同様に、転動体110,130の外周面において、クラッチハウジング41の内周面41cに接触可能な部分と、従動側回転体45の制御面83に接触可能な部分との曲率を異ならせてもよい。
・図19(a)及び図19(b)に示すように、サポート部材43は、駆動側回転体42の非回転駆動時に、その中心軸線L3回りに回転しようとする転動体44によってローラサポート64a,64bが押圧されることにより径方向外側に移動されてクラッチハウジング41の内周面41cに当接する当接部69を有するものであってもよい。なお、図19(a)及び図19(b)に示す例は、上記第1実施形態のクラッチ40において、サポート部材43に当接部69を設けたものである。
詳述すると、サポート部材43において、転動体保持部62の周方向(回転方向X1)の両側には、連結部66の径方向外側の側面から径方向外側(クラッチハウジング41側)に突出した当接部69がそれぞれ設けられている。当接部69は、転動体44がクラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45の制御面83とによって挟持されていないとき(例えば図19(a)に示す状態のとき)には、クラッチハウジング41の内周面41cから離間した位置に位置する。そして、図19(b)に示すように、駆動側回転体42の非回転駆動時に従動側回転体45が回転しようとすると、従動側回転体45とクラッチハウジング41とによって転動体44が挟持されるまでの間に、従動側回転体45との間の摩擦力により転動体44がその中心軸線L3回りに回転される。図19(b)には、従動側回転体45が第2の方向R2に回転しようとした状態を図示している。ここで、転動体44は、第1の当接面71bと第2の当接面72bとの間の長さ(即ち凹部間部73の長手方向の長さD1)が、当該第1及び第2の当接面71b,72bと対向する保持爪67の規制面67cの間の距離D2よりも長く形成されている(図19(a)参照)。そのため、転動体44は、中心軸線L3回りに回転することで第1及び第2の当接面71b,72bがそれぞれ対向する規制面67cに中心軸線L3回りの回転方向から当接した後、更に、これら規制面67cを互いに離間する方向に押圧することができる。即ち、転動体44は、中心軸線L3回りに回転することで、凹部間部73によって同凹部間部73の両側に位置する2つの保持爪67を互いに離間する方向に押圧することができる。すると、対をなすローラサポート64a,64bが、互いに離間する方向に移動し、その結果、これらローラサポート64a,64bが径方向外側に移動することになる。即ち、ローラサポート64a,64bは、中心軸線L3回りに回転した転動体44に押圧されることにより、径方向外側に移動されることになる。すると、サポート部材43が弾性変形して、ローラサポート64a,64bと一体に設けられた連結部66が径方向外側に移動され、その結果、当接部69が径方向外側に移動されてクラッチハウジング41の内周面41cに当接する。そのため、当接部69とクラッチハウジング41の内周面41cとの間で生じる摩擦力によっても、駆動側回転体42の回転方向X1に転動体44が移動することを抑制できる。従って、従動側回転体45とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に転動体44をより挟持しやすくなるため、駆動側回転体42の非回転駆動時に従動側回転体45の回転をより阻止しやすくなる。また、出力軸38にかかる負荷がより大きくなった場合においても、転動体44とクラッチハウジング41の内周面41cとの間の摩擦力に加えて、当接部69とクラッチハウジング41の内周面41cとの間の摩擦力が従動側回転体45の回転を阻止するように作用するため、従動側回転体45の回転を阻止しやすい。
また、図19(a)及び図19(b)に示した例では、サポート部材43において、中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限するために同転動体44と凹凸係合するサポート部材側係合部である保持爪67が、ローラサポート64a,64bの先端部に設けられている。そのため、サポート部材側係合部がローラサポート64a,64bの基端部や軸方向対向部63に設けられる場合に比べて、駆動側回転体42の非回転駆動時に、中心軸線L3回りに回転した転動体44によってローラサポート64a,64bを径方向外側に移動させやすい。従って、当接部69をクラッチハウジング41の内周面41cに当接させやすい。
なお、駆動側回転体42の回転駆動の開始時に、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45とによる転動体44の挟持が解除されると、サポート部材43は原形に復帰するため、当接部69はクラッチハウジング41の内周面41cから離間する。
図19(a)及び図19(b)に示す例では、当接部69は、サポート部材43の連結部66から径方向外側に突出した形状をなしているが、当接部69の形状はこれに限らない。当接部は、駆動側回転体42の非回転駆動時に、その中心軸線L3回りに回転しようとする転動体44によってローラサポート64a,64bが径方向外側に移動されることにより径方向外側に移動されてクラッチハウジング41の内周面41cに当接するものであればよい。例えば、連結部66の外周面や、ローラサポート64a,64bの径方向外側の側面等が当接部となるように構成してもよい。
また、上記第2実施形態のサポート部材100及び上記第3実施形態のサポート部材120に、同様の当接部を設けてもよい。この場合、転動体110,130は、駆動側回転体42の非回転駆動時に中心軸線L4,L5回りに回転することにより、直接若しくは間接的にローラサポート64a,64bを互いに離間する方向に押圧することができる形状に形成される。例えば、転動体110,130は、駆動側回転体42の回転軸線方向から見て、回転方向X1に沿った方向が短手方向、回転方向X1と直交する方向に沿った方向が長手方向となる形状(例えば、二面幅形状、楕円形状等)に形成される。
・上記第3実施形態では、サポート部材120の各係合突部121は、リング部61の径方向に沿って同リング部61の径方向内側に向かうにつれてローラサポート64a,64bの先端側への突出量が徐々に多くなるように形成されている。そして、各係合突部121の先端面121aは、同先端面121aにおけるリング部61の径方向外側の端部よりも径方向内側の端部の方がリング部61から中心軸線L1方向に離間した位置に位置するように傾斜している。しかしながら、各係合突部121の形状はこれに限らない。各係合突部121は、駆動側回転体42の回転軸線方向に転動体130の係合凹部131の内側に突出した凸部であって、その先端面121aが、仮想平面S1に対して傾斜していればよい。例えば、係合突部121は、その先端面121aにおけるリング部61の径方向内側の端部よりも径方向外側の端部の方がリング部61から中心軸線L1方向に離間した位置に位置するように形成されてもよい。この場合、転動体130は、リング部61の直径方向に沿って同リング部61の径方向外側に向かうにつれて係合凹部131の中心軸線L5方向の深さが深くなるように配置される。
なお、上記第3実施形態では、傾斜底面131aの仮想平面S2に対する傾斜角度と、先端面121aの仮想平面S1に対する傾斜角度とが等しくなっているが、必ずしも等しくなくてもよい。転動体130がその中心軸線L5回りに回転したときに、転動体130の中心軸線L5回りの回転方向から傾斜底面131aが係合突部121に当接可能であればよい。
・上記第3実施形態では、係合凹部131は、転動体130の中心軸線L5方向の両端部のうちローラサポート64a,64bの基端側の端部に設けられている。しかしながら、係合凹部131は、転動体130の中心軸線L5方向の両端部のうちローラサポート64a,64bの先端側の端部に設けられてもよい。この場合、ローラサポート64a,64bの先端側に、駆動側回転体42の回転軸線方向に当該係合凹部131の内側に突出した係合突部が設けられる。そして、この係合突部の先端面は、駆動側回転体42の回転軸線と直交する仮想平面S1に対して傾斜し傾斜底面131aと駆動側回転体42の回転軸線方向に対向する。このようにしても、上記第3実施形態の(1),(2)と同様の効果を得ることができる。
・上記第1実施形態では、転動体44の中心軸線L3方向の端部において、同端部に設けられた対の第1及び第2の係合凹部71,72は、第1の係合凹部71と第2の係合凹部72との間の部分である凹部間部73が二面幅形状をなすように形成されている。しかしながら、中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限するために同転動体44に設けられる係合凹部の形状はこれに限らない。
例えば、図20に示す例では、転動体44には、回転方向X1の両側に開口した軸方向視矩形状の第1及び第2の係合凹部141,142が設けられている。そして、第1ローラサポート64aには、第1の係合凹部141の内側に突出して同第1の係合凹部141と凹凸係合し中心軸線L3回りの第1の係合凹部141の回転を制限する第1の係合突部151が設けられている。また、第2ローラサポート64bには、第2の係合凹部142の内側に突出して同第2の係合凹部142と凹凸係合し中心軸線L3回りの第2の係合凹部142の回転を制限する第2の係合突部152が設けられている。更に、互いに対向する第1の係合凹部141の内周面と第1の係合突部151の外周面との間、並びに、互いに対向する第2の係合凹部142の内周面と第2の係合突部152の外周面との間には、中心軸線L3回りの転動体44の回転範囲を決定する許容隙間G4が設けられている。
そして、駆動側回転体42が第1の方向R1に回転すると、図20に一点鎖線で図示したように、転動体44は、駆動側回転体42の回転方向とは反対方向(図20において反時計方向)に中心軸線L3回りに回転しようとする。許容隙間G4によって許容された分だけ中心軸線L3回りに転動体44が回転すると、転動体44において中心軸線L3回りに回転した第1及び第2の係合凹部141,142の内周面が当該第1及び第2の係合凹部141,142と凹凸係合した第1及び第2の係合突部151,152に回転方向から当接する。また、駆動側回転体42が第2の方向R2に回転すると、図20に二点鎖線で図示したように、転動体44は、駆動側回転体42の回転方向とは反対方向(図20において時計方向)に中心軸線L3回りに回転しようとする。許容隙間G4によって許容された分だけ中心軸線L3回りに転動体44が回転すると、転動体44において中心軸線L3回りに回転した第1及び第2の係合凹部141,142の内周面が当該第1及び第2の係合凹部141,142と凹凸係合した第1及び第2の係合突部151,152に回転方向から当接する。従って、転動体44がその中心軸線L3回りに何れ方向に回転しようとした場合であっても、凹凸係合した第1及び第2の係合凹部141,142と第1及び第2の係合突部151,152とによって、中心軸線L3回りの転動体44の回転が制限される。このようにしても、転動体44が中心軸線L3回りに回転することによるグリスの飛散が抑制されるため、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体44との間のグリスが不足することを抑制することができる。
・上記第1実施形態では、サポート部材43は、ローラサポート64a,64bの先端側にのみ、転動体44の第1及び第2の係合凹部71,72に凹凸係合するサポート部材側係合部としての保持爪67を有する。しかしながら、サポート部材43は、ローラサポート64a,64bの基端側にも、転動体44の第1及び第2の係合凹部71,72に凹凸係合するサポート部材側係合部を備えた構成であってもよい。
また、上記第2実施形態では、サポート部材100は、軸方向対向部63にのみ、転動体110の第1の係合凹部111に凹凸係合するサポート部材側係合部としての係合突部101を有する。しかしながら、サポート部材100は、ローラサポート64a,64bの先端側にも、転動体110の第1の係合凹部111に凹凸係合するサポート部材側係合部としての係合突部を備えた構成であってもよい。また、サポート部材100は、第2の係合凹部112に凹凸係合し中心軸線L4回りの第2の係合凹部112の回転を制限するサポート部材側係合部としての係合突部を備えた構成であってもよい。
・上記第1実施形態では、中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限するために、転動体44の第1及び第2の係合凹部71,72に、サポート部材43の保持爪67がそれぞれ挿入されて凹凸係合している。しかしながら、中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限するために、サポート部材43と転動体44とが凹凸係合する部分(即ちサポート部材側係合部及び転動体側係合部に該当する部分)の形状は、これに限らない。
例えば、図21に示す例では、転動体44は、その直径方向の両側(図21においては回転方向X1の両側)に突出した第1及び第2の係合突部161,162を有する。そして、サポート部材43は、第1ローラサポート64aに、回転方向X1に凹設され第1の係合突部161が凹凸係合される第1の係合凹部171を有するとともに、第2ローラサポート64bに、回転方向X1に凹設され第2の係合突部162が凹凸係合される第2の係合凹部172を有する。また、互いに対向する第1の係合突部161の外周面と第1の係合凹部171の内周面との間、並びに、互いに対向する第2の係合突部162の外周面と第2の係合凹部172の内周面との間には、中心軸線L3回りの転動体44の回転範囲を決定する許容隙間G5が設けられている。
そして、駆動側回転体42が第1の方向R1に回転すると、図21に一点鎖線で図示したように、転動体44は、駆動側回転体42の回転方向とは反対方向(図21において反時計方向)に中心軸線L3回りに回転しようとする。許容隙間G4によって許容された分だけ中心軸線L3回りに転動体44が回転すると、転動体44において中心軸線L3回りに回転した第1及び第2の係合突部161,162が当該第1及び第2の係合突部161,162と凹凸係合した第1及び第2の係合凹部171,172の内周面に回転方向から当接する。また、駆動側回転体42が第2の方向R2に回転すると、図21に破線で図示したように、転動体44は、駆動側回転体42の回転方向とは反対方向(図21において時計方向)に中心軸線L3回りに回転しようとする。許容隙間G4によって許容された分だけ中心軸線L3回りに転動体44が回転すると、転動体44において中心軸線L3回りに回転した第1及び第2の係合突部161,162が当該第1及び第2の係合突部161,162と凹凸係合した第1及び第2の係合凹部171,172の内周面に回転方向から当接する。従って、転動体44がその中心軸線L3回りに何れ方向に回転しようとした場合であっても、凹凸係合した第1及び第2の係合突部161,162と第1及び第2の係合凹部171,172とによって、中心軸線L3回りの転動体44の回転が制限される。このようにしても、転動体44が中心軸線L3回りに回転することによるグリスの飛散が抑制されるため、クラッチハウジング41の内周面41cと転動体44との間のグリスが不足することを抑制することができる。
なお、上記第2実施形態においても、中心軸線L4回りの転動体110の回転を制限するために、サポート部材100と転動体110とが凹凸係合する部分(即ちサポート部材側係合部及び転動体側係合部に該当する部分)の形状を変更してもよい。また、上記第3実施形態においても同様である。
・上記第1実施形態では、転動体44における中心軸線L3方向の端部に第1及び第2の係合凹部71,72が設けられ、これら係合凹部71,72に、サポート部材43においてローラサポート64a,64bの先端部に設けられた保持爪67が凹凸係合することにより、中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限している。しかしながら、中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限するために転動体44に設けられる係合凹部の位置及びサポート部材43に設けられる係合突部の位置はこれに限らない。例えば、転動体44における軸方向対向部63と対向する中心軸線L3方向の端面に係合凹部を設け、サポート部材43には、この係合凹部の内側に突出する係合突部を軸方向対向部63に設けてもよい。また例えば、転動体44の外周面に同転動体44の径方向に凹む係合凹部を設け、サポート部材43には、この係合凹部の内側に突出する係合突部を設けてもよい。なお、転動体44に係合突部が設けられ、サポート部材43に当該係合突部と凹凸係合する係合凹部が設けられる場合についても同様である。また、上記第2及び第3実施形態においても同様に変更してもよい。
・上記第1実施形態では、サポート部材43と各転動体44とは、中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限するために2箇所で凹凸係合している。しかしながら、中心軸線L3回りの転動体44の回転を制限するためにサポート部材43と各転動体44とが凹凸係合する箇所の数は、2箇所に限らず、1箇所若しくは3箇所以上であってもよい。このことは、上記第2実施形態のサポート部材100と各転動体110、上記第3実施形態のサポート部材120と各転動体130においても同様である。
・上記第1実施形態では、転動体44の第1及び第2の当接面71b,72bと、これら第1及び第2の当接面71b,72bと対向する保持爪67の規制面67cとの間に許容隙間G1を設けることにより、転動体44の中心軸線L3回りの回転範囲を制限している。しかしながら、転動体44の中心軸線L3回りの回転が制限されるのであれば、必ずしも互いに対向する第1及び第2の当接面71b,72bと規制面67cとの間に許容隙間G1を設けなくてもよい。例えば、互いに対向する第1の当接面71bと規制面67cとが常に当接し、且つ、互いに対向する第2の当接面72bと規制面67cとが常に当接した構成としてもよい。このようにすると、転動体44は、凹凸係合した第1及び第2の係合凹部71,72と保持爪67とによって、その中心軸線L3回りに回転しないようにその中心軸線L3回りの回転が制限される。このようにしても、転動体44がその中心軸線L3回りに回転することによるグリスGRの飛散が抑制されるため、クラッチハウジング41の内周面41cと各転動体44との間のグリスGRが不足することを抑制することができる。このことは、上記第2及び第3実施形態についても同様である。
・上記各実施形態の転動体44,110,130は、軸方向(駆動側回転体42の中心軸線方向)に延びる柱状をなすものであれば、必ずしも上記各実施形態の形状でなくてもよい。例えば、転動体44,110,130は、軸方向から見て外形が二面幅形状をなすものであってもよい。また例えば、転動体44,110,130は、軸方向から見て外形が楕円状をなすものであってもよい。
・上記各実施形態では、駆動側回転体42の非回転駆動時には、従動側回転体45の制御面83とクラッチハウジング41の内周面41cとの間に転動体44,110,130を挟持することにより、従動側回転体45の回転を阻止する。しかしながら、駆動側回転体42の非回転駆動時に従動側回転体45との間に転動体44,110,130を挟持する挟持部材は、必ずしもクラッチハウジング41でなくてもよい。挟持部材は、従動側回転体45と径方向(駆動側回転体42の中心軸線と直交する方向)に対向し、駆動側回転体42の非回転駆動時に従動側回転体45との間に転動体44,110,130を挟持可能な環状の内周面を有するものであればよい。例えば、クラッチハウジング41を省略し、駆動側回転体42の非回転駆動時には、クラッチ収容凹部31cの内周面と従動側回転体45との間に転動体44,110,130を挟持するようにしてもよい。
・上記各実施形態では、グリスGRは、クラッチハウジング41の内周面41cに塗布されている。しかしながら、グリスGRは、少なくともクラッチハウジング41の内周面41cと転動体44との間に配置されていれば、その配置位置は上記実施形態の位置に限らない。
・上記第1実施形態において、クラッチ40を構成するクラッチハウジング41、駆動側回転体42、サポート部材43、転動体44及び従動側回転体45の形状は、必ずしも上記実施形態の形状でなくてもよい。例えば、駆動側回転体42は、回転軸24と一体に形成されたものであってもよい。また例えば、従動側回転体45は、ウォーム軸34と別体に設けられて、同ウォーム軸34と一体回転可能に組み付けられるものであってもよい。また、転動体44は、2つに限らず、クラッチハウジング41の内周面41cと従動側回転体45との間に少なくとも1つ配置されていればよい。このことは、上記第2及び第3実施形態についても同様である。
・上記各実施形態において、クラッチ40を構成する各部材の材料を変更してもよい。例えば、転動体44,110,130は、金属製であってもよい。また、上記各実施形態において、モータ10を構成する各部材の材料を変更してもよい。例えば、ギヤハウジング31は、金属製であってもよい。
・上記各実施形態では、出力部30が備える減速機構32は、ウォーム軸34とウォームホイール37とから構成されているが、減速機構32が備える歯車の数は、適宜変更してもよい。また、減速機構32は、クラッチ40を介して回転軸24と連結される従動軸を有するのであれば、必ずしもウォーム減速機構でなくてもよい。また、出力部30は、クラッチ40を介して回転軸24と連結される従動軸を有し、回転軸24から伝達された回転を出力可能な構成であれば、必ずしも減速機構32を備えなくてもよい。
・上記各実施形態では、モータ10は、パワーウインド装置の駆動源として用いられているが、他の装置の駆動源に用いられるものであってもよい。
・上記各実施形態では、クラッチ40は、モータ10に備えられ、回転軸24と、減速機構32のウォーム軸34とを連結するものである。しかしながら、クラッチ40は、モータ10以外の装置に備えられ、回転駆動される回転軸と、回転軸の回転駆動力が伝達される従動軸とを連結するものであってもよい。
・上記各実施形態及び上記各変更例を組み合わせて実施してもよい。