JP6808389B2 - リンフタロシアニン化合物 - Google Patents

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本発明は、可視光透明性に優れるリンナフタロシアニン化合物に関する。
詳しくは近赤外線領域に強い吸収を有し、可視光領域の吸収が小さいので着色が少なく、光や熱に対する耐久性が高く、有機溶剤や樹脂に対する溶解性が良好なため、近赤外線吸収材料に広く利用可能なリンフタロシアニン化合物に関する。
フタロシアニン化合物の、ある種のものは近赤外線吸収能力に優れるため、光カード、近赤外線吸収フィルタ、熱線遮蔽フィルム、保護眼鏡、レーザーダイレクト製版、レーザー熱転写記録、レーザー感熱記録、レーザープリンターの有機光導電体などへの応用が提案されている。
特許文献1には、フタロシアニン化合物を含有する近赤外線吸収材料が開示されているが、近赤外領域だけでなく可視光領域にも吸収を有することから、使用できる用途が限定される場合があった。
一方、近年、近赤外線カットフィルタには、特に可視光領域の吸収が小さい近赤外線吸収材料が求められている。
例えば、特許文献2〜4には、可視光領域の吸収が小さいということから、シアニン系色素、ジインモニウム塩系色素、ジチオールニッケル錯体が用いられている。しかしながら、シアニン系色素は近赤外線吸収能力が高いものの、耐久性が低く、溶解する有機溶剤も極性溶媒に限定されるという問題がある。ジインモニウム塩系色素は近赤外線吸収能力、耐久性共に低く、溶解する有機溶剤も極性溶媒に限定されるという問題がある。また、ジチオールニッケル錯体も同様な問題が指摘されており、またその安全性についても問題がある。
これに対して、フタロシアニン化合物も、近赤外線を吸収する能力が高い事から上記した目的の近赤外線吸収材料として種々検討が行われてきた。
特許文献5には、樹脂中の会合性を抑制したフタロシアニン化合物が提案されているが、極性溶剤溶解性、樹脂相溶性という点でさらなる改善が望まれている。
特許文献6には、本発明に類似したリンフタロシアニン化合物も提案されているが、極性溶剤溶解性、樹脂相溶性、可視光領域の吸収については未だ不十分であり、近赤外領域に大きな吸収を有しながら可視光領域(特に500〜600nm)の吸収が非常に小さいフタロシアニン化合物が要望されている。
特開平08−60008号公報 特開2015−34260号公報 特開2002−226827号公報 特開2009−144053号公報 特開2013−218312号公報 特開平2−138382号公報
本発明の課題は、近赤外線領域に強い吸収を有し、可視光領域の吸収が非常に小さく、耐久性が高く、有機溶剤溶解性や樹脂に対する溶解性が良好なリンフタロシアニン化合物を提供することである。
本発明者等は、前記課題について鋭意検討した結果、特定構造のリンフタロシアニン化合物が上記した特性を満足することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(i) 下記一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物、
Figure 0006808389
[式(1)中、R〜Rは直鎖又は分岐のアルキル基を表し、Xは1価のアニオンを表す]
さらに、
(ii)Rが炭素数4〜12の直鎖又は分岐アルキル基である(i)のリンフタロシアニン化合物。
(iii)Rが炭素数1〜12の直鎖又は分岐アルキル基である(i)又は(ii)のリンフタロシアニン化合物。
本発明により、近赤外線領域に強い吸収を有し、可視光領域の吸収が非常に小さく、耐久性が高く、有機溶剤溶解性や樹脂に対する溶解性が良好なリンフタロシアニン化合物が提供される。
実施例1で製造した化合物(1−14)の吸収スペクトル図である。
以下、本発明に関し詳細に説明する。
[リンフタロシアニン化合物]
本発明は、下記一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物である。
Figure 0006808389
[式(1)中、R〜Rは直鎖又は分岐のアルキル基を表し、Xは1価のアニオンを表す]
一般式(1)において、Rが直鎖又は分岐のアルキル基であるものとしては、炭素数4〜20の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数4〜12の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。
が直鎖又は分岐のアルキル基であるものとしては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基がより好ましい。
直鎖又は分岐のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso-プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、3−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチルブチル基、1,2,2−トリメチルブチル基、1,1,2−トリメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、cyclo−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリエチルペンチル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,2,4−トリメチルペンチル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、4−エチル−4,5−ジメチルヘキシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラメチルオクチル基、4−ブチルオクチル基、6,6−ジエチルオクチル基、n−トリデシル基、6−メチル−4−ブチルオクチル基、6,6−ジエチルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、3,5−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、2,4−ジメチルヘプチル基、2,2,5,5−テトラメチルヘキシル基が挙げられる。
一般式(1)において、Xは1価のアニオンを表し、有機酸アニオン、又は無機アニオンである。
Xで表される有機酸アニオンとしては、例えば、有機カルボン酸イオンとしては、酢酸イオン、乳酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、及びステアリン酸イオン。有機スルホン酸イオンとしては、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ナフタレンモノスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン、クロロベンゼンスルホン酸イオン、ニトロベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン及びビストリフルオロメタンスルホン酸イオン。有機ホウ酸イオンとしては、テトラフェニルホウ酸イオン、ブチルトリフェニルホウ酸イオン等が挙げられる。
Xで表される無機アニオンとしては、例えば、ハロゲンイオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、及びヨウ素イオン。さらに、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、硝酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、バナジン酸イオン、リン酸イオン及びホウ酸イオン等が挙げられる。
一般式(1)において、Xは、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビストリフルオロメタンスルホン酸イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンがより好ましく、ビストリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、が特に好ましい
一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
Figure 0006808389
Figure 0006808389
[リンフタロシアニン化合物の製造方法]
一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物は、公知の方法で製造した一般式
(2)で表されるマグネシウムフタロシアニン化合物を<工程A>、酸にて脱マグネシウムした一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物<工程B>を用いて合成<工程C>する。
<工程A>
一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物は、最初の工程として、一般式(2)で表されるマグネシウムフタロシアニン化合物を合成する。
Figure 0006808389
[式(2)中、Rは前記一般式(1)におけるものと同義である。]
一般式(2)で表されるマグネシウムフタロシアニン化合物は、一般式(3)で表されるフタロニトリル化合物及び一般式(4)で表される1,3−ジイミノイソインドリン化合物から選ばれる少なくとも1種と、マグネシウム或いはマグネシウム誘導体を反応させて製造することができる。
Figure 0006808389
[式(3)及び(4)中、Rは前記一般式(1)におけるものと同義である。]
マグネシウム又はマグネシム誘導体としては塩化マグネシム、フッ化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、酢酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトネート、マグネシムエトキサイド等が挙げられ、塩化マグネシム、酢酸マグネシウム、マグネシウムエトキサイドが特に好ましく用いられる。
マグネシウム又はマグネシム誘導体の使用量は、一般式(3)のフタロニトリル化合物1モル、或いは一般式(4)の1,3−ジイミノベンゾインドリン化合物1モルに対し、0.1倍モル〜0.6倍モル、好ましくは0.2倍モル〜0.5倍モルである。反応温度は60〜300℃、好ましくは100〜220℃である。
反応時間は30分〜72時間、好ましくは1時間〜48時間である。
反応においては、溶媒を使用することが好ましい。反応に使用される溶媒としては沸点60℃以上、好ましくは80℃以上の有機溶媒が好ましい。
例としてメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ドデカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ジメチルエタノール、ジエチルエタノール等のアルコール溶媒、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、スルフォラン、ニトロベンゼン、キノリン、DMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、尿素等の高沸点溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量は一般式(3)のフタロニトリル化合物或いは一般式(4)の1,3−ジイミノベンゾインドリン化合物の0.5〜50倍容量、好ましくは1〜15倍容量である。
反応は触媒の存在下或いは非存在下に行われるが、触媒存在下の方が好ましい。触媒としてはモリブデン酸アンモニウム等の無機触媒、或いはDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)等の塩基性有機触媒が使用できる。使用量は一般式(3)のフタロニトリル化合物1モル或いは一般式(4)の1,3−ジイミノイソンドリン化合物1モルに対して0.01〜10倍モル、好ましくは1〜2倍モルである。
反応終了後、溶媒を留去するか、又は反応液を、目的の一般式(2)で表されるマグネシウムフタロシアニン化合物に対する貧溶媒に排出することにより一般式(2)のマグネシウムフタロシアニン化合物を得ることが出来る。
<工程B>
次の工程では、一般式(2)のマグネシウムフタロシアニン化合物を有機溶剤中、酸で脱マグネシウムすることにより、下記一般式(5)で表される無金属フタロシアニン化合物を合成する。
Figure 0006808389
[式(5)中、Rは前記一般式(1)におけるものと同義である。]
酸としては硫酸、塩酸、酢酸等の無機酸が用いられる。使用量は前記一般式(2)のマグネシウムフタロシアニン化合物1モルに対し、10倍モル〜200倍モル、好ましくは30倍モル〜100倍モルである。反応温度は20〜300℃、好ましくは50〜120℃である。 反応時間は30分〜72時間、好ましくは1時間〜48時間である。
反応においては、溶媒を使用することが好ましい。反応に使用される溶媒としては沸点30℃以上、好ましくは60℃以上の有機溶媒が好ましい。
例としてベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プソイドクメンが挙げられる。
溶媒の使用量は一般式(2)のマグネシウムフタロシアニン化合物の0.5〜100倍容量、好ましくは5〜50倍容量である。
<工程C>
最後の工程では、前記一般式(5)の無金属フタロシアニン化合物にオキシハロゲン化リンを反応した後、次いで一般式(6)で表されるアルコールと反応し、最後に、アルカリ金属塩と反応することにより、前記一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物を製造する。
Figure 0006808389
[式(6)中、Rは前記一般式(1)におけるものと同義である。]
オキシハロゲン化リンとしてオキシ塩化リン、オキシ臭化リンが挙げられる。
オキシハロゲン化リンの使用量は、一般式(5)の無金属フタロシアニン化合物1モルに対し、1倍モル〜50倍モル、好ましくは5倍モル〜30倍モルである。
反応温度は0〜120℃、好ましくは30〜60℃である。 反応時間は10分〜20時間、好ましくは1時間〜5時間である。
反応においては、溶媒を使用することが好ましい。反応に使用される溶媒としてはピリジン、キノリン、トリエチルアミン、DMAC、DMF、DMI、DMSO等が挙げられる。
溶媒の使用量は一般式(5)の無金属フタロシアニン化合物の1〜200倍容量、好ましくは10〜100倍容量である。
一般式(6)で表されるアルコールの使用量は一般式(5)の無金属フタロシアニン化合物1モルに対し、5倍モル〜5000倍モル、好ましくは10倍モル〜3000倍モルである。反応温度は0〜65℃、好ましくは10〜40℃である。
反応時間は5分〜10時間、好ましくは15分〜2時間である。
反応においては、溶媒を使用することが好ましい。反応に使用される溶媒としてはジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、或いはベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量は一般式(5)の無金属フタロシアニン化合物の1〜300倍容量、好ましくは5〜200倍容量である。
アルカリ金属塩の使用量は一般式(5)の無金属フタロシアニン化合物1モルに対し、1倍モル〜10倍モル、好ましくは1倍モル〜5倍モルである。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜40℃である。 反応時間は5分〜24時間、好ましくは1時間〜10時間である。
本発明の一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物は、溶剤に対する溶解性が高く、特に、芳香族系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等)に対する溶解度が高く、また極性溶媒(アセトン、酢酸エチル、炭酸プロピレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等)に対する溶解度が高い。 さらに、光安定性が良好であり、可視領域の吸収が小さく、750nm〜1000nmの近赤外域の吸収能に優れている。
本発明の一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物は、そのまま、或いはバインダーや添加物とともに、紙、プラスチックシート、プラスチック、フィルム、ガラス、樹脂等に塗布又は混練したり、ハードコートしたり、モノマーとの混合物を重合させることにより、近赤外線吸収材料としての種々の用途に使用できる。
例として、近赤外線吸収材料を使用した光学フィルタについて説明する。光学フィルタには、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物を少なくとも1種含有してなるものである。なお、本明細書において、含有とは、各種部材または膜などから成る各層、あるいは透明粘着材の内部に含有されることは勿論、部材または各層の表面に、塗布された状態を包含するものである。
一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物を、本発明のフィルタに含有させる方法としては、例えば、以下の(ア)〜(エ)の方法がある。
(ア)透明粘着材に添加して、透明粘着層に含有させる方法、
(イ)高分子樹脂に混練して含有させる方法、
(ウ)高分子樹脂または樹脂モノマーを含む有機溶媒に、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物を、分散または溶解させ、各種部材、各層上に、例えば、キャスティングする方法、
(エ)バインダー樹脂を含む有機溶媒に、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物を加え、塗料として各種部材、各層上にコーティングする方法がある。
一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物は、耐熱性に優れており、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリブチラールを使用して、200〜350℃で、射出成形、押出成形のような方法でも成形することができる。
光学フィルタに含有される一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物の量に関しては、特に制限するものではなく、フィルタの使用する目的に応じて、所望の量を使用することができる。
例えば、上記(ア)の方法においては、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物の含有量は、特に限定するものではないが、一般に透明粘着材に対して10ppm〜30質量%、好ましくは10ppm〜20質量%である。
また、(イ)および(ウ)の方法においては、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物の含有量は、特に限定するものではないが、一般に、高分子樹脂または樹脂モノマーに対して10ppm〜30質量%、好ましくは10ppm〜20質量%である。
また、(エ)の方法においては、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物の含有量は、特に限定するものではないが、一般に、バインダー樹脂に対して、10ppm〜30質量%、好ましくは10ppm〜20質量%である。
また、バインダー樹脂濃度は、塗料全体に対して、一般に、1〜50質量%である。
また、光学フィルタの形状に関しては、特に制限するものではなく、例えば、平板状やフィルム状、波板状、球面状、ドーム状など様々な形状のものを包含するものである。
光学フィルタには、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物以外に、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、光吸収化合物を1種以上併用することができる。係る光吸収化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、可視領域、または近赤外領域に所望の吸収を有する化合物を挙げることができ、例えば、公知のアントラキノン化合物、メチン化合物、アゾメチン化合物、オキサジン化合物、アゾ化合物、スチリル化合物、クマリン化合物、ポルフィリン化合物、テトラアザポルフィリン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジケトピロロピロール化合物、ローダミン化合物、キサンテン化合物、ピロメテン化合物などの可視領域に吸収を有する化合物、
例えば、公知のフタロシアニン化合物(例えば、金属フタロシアニン錯体)、ナフタロシアニン化合物(例えば、金属ナフタロシアニン錯体)、シアニン化合物、アントラキノン化合物、ジチオール化合物(例えば、ニッケルジチオール錯体)、ジイモニウム化合物、さらに、例えば、酸化タングステン系化合物(例えば、セシウム酸化タングステン)などの金属酸化物などの一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物以外の近赤外領域に吸収を有する化合物を挙げることができる。
これら光吸収化合物の使用量は、該化合物の吸収波長、吸光係数、さらには、所望の光学特性(例えば、色、透過特性、視野、コントラスト)を考慮し任意に設定することができる。例えば、他の近赤外領域に吸収を有する化合物の使用量は、特に制限するものではないが、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物に対して、好ましくは、80質量%以下であり、より好ましくは、60質量%以下であり、さらに好ましくは、40質量%以下である。
また、光学フィルタは、所望に応じて、さらに紫外線吸収剤、酸化防止剤を含んでもよい。係る紫外線吸収剤としては、特に限定するものではなく、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤を挙げることができる。酸化防止剤としては、特に限定するものではなく、例えば、フェノール系の酸化防止剤を挙げることができる。
光学フィルタは、一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物を少なくとも1種含有することによって、近赤外領域の光を遮蔽し、且つ可視領域での優れた透過特性を有することから、熱線遮蔽(近赤外線遮蔽)フィルタとして機能する。
係る熱線遮蔽フィルタは、例えば、建物の窓、車、飛行機、電車などの輸送機の窓(外気側、または内気側)に装着して使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[合成例:マグネシウムフタロシアニン化合物]
100mL−四つ口フラスコ中、4,7−n−ヘキシル−1,3−ジイミノイソインドリン10g、塩化マグネシム1.5g、DBU 7.3g及びn−ヘキサノール50mLを加え、内温100〜105℃にて5時間撹拌した。
反応液を冷却後、メタノール300mLを添加し、析出物を取り出し得られた粉末を乾燥させて、下記式(2−1)で表される深緑色粉末6.5gを得た。
Figure 0006808389

得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
MS:(EI)m/z 1209.9(M+)
元素分析値:実測値(C:79.44%、H:9.30%、N:9.28%);
理論値(C:79.40%、H:9.33%、N:9.26%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は703nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は1.25×10g/mL・cmであった。
[合成例:無金属フタロシアニン化合物]
300mL−四つ口フラスコに、前記式(2−1)で表されるマグネシウムフタロシアニン化合物6g、45%硫酸60g及びトルエン130mLを加え、内温60〜65℃にて30分間撹拌した。
反応液を湯洗後、トルエンを減圧濃縮して、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン)で精製して、下記式(5−1)で表される深緑色粉末3.9gを得た
Figure 0006808389
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
MS:(EI)m/z 1186.9(M+)
元素分析値:実測値(C:80.87%、H:9.63%、N:9.47%);
理論値(C:80.89%、H:9.67%、N:9.43%)
このようにして得られた化合物のトルエン溶液は729nmと697nmに極大吸収を示し、それぞれのグラム吸光係数は1.06×10g/mL・cmと8.96×10g/mL・cmであった。
[実施例1]リンフタロシアニン化合物(化合物:1−14)の製造
200mL−四つ口フラスコに、前記式(5−1)の無金属フタロシアニン化合物1g、オキシ臭化リン5.10g及びピリジン100mLを加え、内温50〜55℃にて1時間撹拌した。反応液をエバポレーターにて濃縮し、残渣に塩化メチレン100mLとメタノール100mLを添加し、内温25〜30℃にて15分間撹拌した。
反応液を分液ロートに移し、水200mLで洗浄を3回行った後、有機層を分離した。
次いで、500mL−四つ口フラスコに有機層を移し、さらにヘキサフルオロリン酸カリウム0.56gを添加し、内温25〜30℃にて15時間撹拌した。反応液を濾過し、ろ液をエバポレーターにて濃縮し紫味黒色の固形残渣を得た。この残渣にメタノール100mLを添加し、内温25〜30℃にて1時間撹拌した。メタノール液を濾過し、ろ液をエバポレーターにて濃縮して、化合物(1−14)で表される深緑色粉末0.7gを得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
ESI−MS:(ポジ)m/z 1277.9(M+)フタロシアニン母核
ESI−MS:(ネガ)m/z 145.0(PF6)カウンターイオン
元素分析値:実測値(C:69.21%、H:8.37%、N:7.85%);
理論値(C:69.17%、H:8.35%、N:7.87%)
このようにして得られた化合物のクロロホルム溶液は792nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は7.56×10g/mL・cmであった。この吸収スペクトルチャートを図1に示す。
<溶解度の評価>
化合物(1−14)約1gに、総重量が約10gになるようにメタノールを加え、超音波を約30分照射した。その後、室温で二時間撹拌して、約10wt%の分散を調製した。 この分散液をメンブランフィルタ(0.2μm)で濾過したが、フィルタに濾物が残余しなかった。フィルタに濾物が残余しなかった場合は、溶解性が優れていることを示すものであり、溶解度は10wt%以上といえる。なお、濾物があった場合は、得られた濾物を60℃の乾燥器で1時間乾燥後、濾物の重量を測定し、リンフタロシアニン化合物の溶剤に対する溶解度を、以下の式で表した。
溶解度(wt%)=(P0−P1)/P0
なお、「P0」は、処理前のフタロシアニン化合物の正確な重量を表し、
「P1」は、乾燥後の濾物(フタロシアニン化合物の溶解残分)の重量である。
<強い吸収の評価>
吸収極大波長(L1)における吸収極大の吸光度を1.0とした場合における、吸光度が0.3となる場合の吸収波長(L0)の差を求めた結果、13nmであった。
この差が小さいほど、吸収スペクトルがシャープであることを示し、40nm以下になることが好ましい
<耐光・耐熱性>
化合物(1−14)0.1g、クロロホルム95.0g及び旭化成ケミカルズ(株)社製メタクリル樹脂デルペット(登録商標)5 .0gを加え、混合、溶解して色素樹脂溶液を調製した。この色素樹脂溶液を、スピンコーターを用いて、ガラス基板上に色素濃度20wt%、乾燥膜厚2μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥した。
このようにして得られたコーティングガラス板の吸収スペクトルを分光光度(日立製作所(株)製: Spectrophotometer U-3500)で測定し、これを試験前スペクトルとした。
次に、試験前スペクトルを測定した塗膜ガラス板を、キセノン耐光性試験機を用い550W/hの光を200時間照射した。この光照射した塗膜ガラス板の吸収スペクトルを分光光度計にて測定し、耐光性試験後スペクトルとした。
耐熱性試験は試験前スペクトルを測定した塗膜ガラス板を恒温器で温度100℃にて200時間加熱処理した。この加熱処理した塗膜ガラス板の吸収スペクトルを分光光度計にて測定し、耐熱性試験後のスペクトルとした。このようにして測定した耐熱性・耐光性試験前後の各スペクトルにおいて、400〜900nmの範囲の吸光度値を積分し、耐光・耐熱試験前後でその値の差を算出した。
耐光・耐熱試験前後での吸光度の差ΔE を、下記の式で表した。
ΔΕ(%)={Σ(E1の400〜900nm)−Σ(E2の400〜900nm)}
/Σ( E 1の4 0 0〜9 0 0nm ) ×1 0 0
なお、E1:試験前スペクトル、E2:試験後スペクトル、Σ:吸光度値の積分である。ΔΕの値が小さいほど、耐光・耐熱試験前後でのスペクトル変化が小さく耐光性、耐熱性に優れていることを表し、化合物(1−14)は非常に高い耐光性、耐熱性を示した。
<可視光透過率>
100mLメスフラスコに、化合物(1−14)約1.0mgとクロロホルム約90mLを入れ、超音波を30分間照射した後、室温で2時間静置した。その後、メスフラスコの標線と一致するように、クロロホルムを添加してメスアップし、10mg/Lのナフタロシアニン溶液を調製した。このように調製した溶液を 1cm角のパイレックス(登録商標)製セルに入れ、分光光度計を用いて、スペクトルを測定した。このようにして得られた化合物のクロロホルム溶液は792nmに極大吸収を示し、グラム吸光係数は7.56×10g/mL・cmであった。この吸収スペクトルチャートを図1に示す。
次に、吸収極大波長における吸光度が1.0、すなわち透過率が10%となるように換算をおこない透過スペクトルを得た。この透過スペクトルの460nmにおける透過率を求めた。透過率の値が100%に近いほど、可視光透過率が優れていることを表し、化合物(1−14)は非常に高い可視光透過率を示した。
[実施例2−12]
実施例1と同様にして後記の表2にあげた実施例2〜12に記載の化合物を製造した。
得られた各実施例の化合物を前記の測定方法により評価した。結果を表2に示した。
[比較例1]銅フタロシアニン化合物(化合物:10−1)の製造
100mL−四つ口フラスコに、4,7−n−ヘキシル−1,3−ジイミノイソインドリン10g、塩化第一銅1.58g、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン65mLを加え、内温100〜105℃にて4時間撹拌した。反応液を冷却後、メタノール110mLを添加し、析出物を濾取、乾燥して下記式(10−1)で表される緑色粉末9.5gを得た。
Figure 0006808389

得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS:(EI)m/z 1248.8(M+)
・元素分析値:実測値(C:76.94%、H:9.09%、N:8.95%)
理論値(C:76.91%、H:9.04%、N:8.97%)
[比較例2]銅フタロシアニン化合物(化合物:10−2)の製造
100mL−四つ口フラスコに、5−tert−ブチル−1,3−ジイミノイソインドリン10g、塩化第一銅1.58g、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン65mLを加え、内温100〜105℃にて6時間撹拌した。反応液を冷却後、メタノール110mLを添加し、析出物を濾取、乾燥して下記式(10−2)で表される緑色粉末8.5gを得た。
Figure 0006808389
比較例にて得られた各化合物についても前記の測定方法により評価し、その結果をつぎの表2に示した。
Figure 0006808389
実施例の化合物はいずれも、比較例の化合物と比較して近赤外領域に強い吸収を有し、可視光領域の吸収が小さく、有機溶剤に対する溶解性が良好であり、また耐光性、耐熱性に高い耐久性を有する。
本発明のリンフタロシアニン化合物は、近赤外領域に強い吸収を有し、可視光領域の吸収が小さく、有機溶剤や樹脂に対する溶解性が良好であり、また耐光性、耐熱性に高い耐久性を有する。そのため、近赤外線吸収材料に広く利用することができる。

Claims (1)

  1. 一般式(1)で表されるリンフタロシアニン化合物。
    Figure 0006808389
    [式(1)中、R は炭素数4〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R は炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、Xは1価のアニオンを表す]
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