JP6808366B2 - 焼成鉛筆芯およびその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、焼成鉛筆芯に含まれる黒鉛の結晶子サイズLcが15〜60nmである焼成鉛筆芯が記載されている。この特許文献では、結晶子サイズLcのみに着目して焼成鉛筆芯の改良を検討しているが、焼成鉛筆芯の諸性能のバランスの観点からはさらなる改良の余地があった。
52×D+30≦La≦52×D+60 (1)
30×D+6≦Lc≦30×D+18 (2)
Lc/La≦0.18D+0.40 (3)
を同時に満たすものであることを特徴とするものである。
混合工程で得られた混合物をさらに混合し、細線状に成型する予備成形工程、
前記細線状成形体を粉砕する粉砕工程、
粉砕された混練物を細線状に成形する押出成形工程、
押出成形された混練物を焼成する焼成工程、および
焼成により得られた焼成物に油を含浸させる油浸工程
を含んでなることを特徴とするものである。
L = Kλ/βcosθ
(ここで、
L:結晶子サイズ[nm]
K:シェラー定数
λ:X線波長[nm]
β:半値幅
である)
により求めることができる。
52×D+30≦La≦52×D+60 (1)
30×D+6≦Lc≦30×D+18 (2)
Lc/La≦0.18D+0.40 (3)
を同時に満たすものである。
30×D+8≦Lc≦30×D+16 (2A)
を満たすことが好ましい。
Lc/La≦0.18D+0.38 (3A)
を満たすことが好ましい。
Lc×La≦3100D+700 (4)
ここで、Lc×Laが
Lc×La≦3100D+650 (4A)
を満たすことが好ましい。
52×D+30≦La≦52×D+60 (1)
30×D+6≦Lc≦30×D+18 (2)
Lc×La≦3100D+700 (4)
を同時に満たすものである。
30×D+8≦Lc≦30×D+16 (2A)
を満たすことが好ましく、Lc×Laが
Lc×La≦3100D+650 (4A)
を満たすことが好ましい。
まず、原料を配合し、それを混合および混練する。原料としては、黒鉛と結合材が挙げられる。黒鉛は、結晶子サイズの小さいものが好ましいが、結晶子サイズの小さい黒鉛は入手が困難であり、また製造過程における破砕または粉砕工程によって変化するので、必ずしも限定されない。また、結合材としては、従来公知のものであればいずれも用いることができるが、代表的には各種の樹脂が挙げられる。樹脂としては水溶性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが用いられるが、この他にコールタール、アスファルトなどのピッチ状物質を用いることもできる。また、原料として溶剤や可塑剤などを配合することもできる。
混合工程で得られた混合物をさらに混合し、押出機などにより細線状に予備成形する。このような予備成形、およびその後に引き続いて行う粉砕工程を行うこと、言い換えれば、原料混合物の混合および成形と粉砕とを2回、またはそれ以上行うことによって、より小さい結晶子を含む鉛筆芯の実現が容易となる。ただし、単に混合、成形、および粉砕を2回以上行うだけでなく、各条件の調整や原料の最適化を行うことにより、より優れた特性を有する鉛筆芯を、効率よく製造することが可能となる。例えば、予備成形における圧力の調整により混合物中の黒鉛粒子と結合材との密着性を高めたり、細線状に予備成形する際の絞り率を調整したりすることで、鉛筆芯の緻密度を改善することができる。ここで、絞り率とは、押出機の材料導入部と成形体押出部の直径の比をいう。
予備成形工程で得られた細線状成形体を粉砕する。粉砕後の粒子径は、特に限定されないが、一般にD50で10〜500μmであり、50〜400μmであることが好ましい。組織の細かい緻密構造を形成しやすくするために、粒子は小さいことが好ましい。また、粉砕後の粒子の飛散を防ぎ、取り扱いを容易にするために、また粉砕時間短縮のために、粒子はある程度大きいことが好ましい。なお、粉砕された粒子の大きさや分布は、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布測定機を使用して測定することができる。本発明においては、粒子径は相対粒子数50%に相当する、所謂D50(体積基準で測定したメディアン径)である。尚、粒度分布の測定は乾式、または湿式のいずれであって可能であるが、比較的小さい粒子の大きさを測定する場合には、より簡便な乾式方法で測定することが好ましい。
粉砕された混練物を、必要に応じて加熱して、細線状に押出成形する。押出機は任意のものを用いることができる。このとき混練物の押出速度は、例えば0.1〜15m/秒である。
押出成形工程においては押出成形された混練物を焼成する。焼成の際の雰囲気は酸素含有率が低いことが好ましく、真空または不活性ガス雰囲気下で行われる。焼成温度は特に限定されないが、一般に800〜1500℃、好ましくは1000〜1400℃で行われる。
焼成により得られた焼成体は気孔を含んでおり、この気孔に油を含浸させる。このような操作によって筆記の際の筆記感等を改良することができる。油浸の方法は特に限定されず、一般的に知られている方法で行うことができる。
天然黒鉛 45質量部
酢酸ビニル樹脂 30質量部
石炭ピッチ 15質量部
エタノール 20質量部
上記原料をヘンシェルミキサーを用いて混合し、更に3本ロールを用いて再度、混合、混練した。次いで、単軸押出成形機にて細線状に予備成形し、細線状成形体を得た。得られた成形体をピンミルを用いて微粉化して、D50=100μmの粉砕物を得た。この粉砕物を単軸押出機にて所望の寸法になるように再度細線状に成形した。得られた成形体を、空気中で250℃まで10時間かけて熱処理後、更に非酸化性雰囲気中で最高温度1000℃で熱処理を実施し、冷却して焼成体を得た。得られた焼成体にスピンドル油を100℃で2時間保持の条件で含浸させ、焼成体表面の余分な油を除去した後、60mmの長さに切断して0.57mmのシャープペンシル用硬度HBの焼成鉛筆芯を得た。
天然黒鉛 45質量部
酢酸ビニル樹脂 15質量部
塩化ビニル樹脂 20質量部
石炭ピッチ 10質量部
メチルエチルケトン 15質量部
ジオクチルフタレート 0.5質量部
構成原料を上記の通りに変更した以外は実施例1と同様の方法により、0.57mmのシャープペンシル用硬度HBの鉛筆芯を得た。なお、このとき予備成形後の粉砕物の粒度はD50=130μmであった。
実施例1に対して、粉砕工程を変更したほかは同様にして鉛筆芯を製造した。粉砕工程は、予備成形工程で得られた成形体を、ハンマーミルを用いて粗粉砕したのち、更にパルベライザーを用いて微粉砕してD50=80μmの粉砕物とした。
実施例1に対して、予備成形およびその後の粉砕工程は行わなかった他は同様にして鉛筆芯を製造した。
実施例1に対して、予備成形を行わなかった他は同様にして鉛筆芯を製造した。すなわち、原料を混合、混練したのち、予備成形すること無くハンマーミルを用いて粗粉砕し、更にパルベライザーを用いて微粉砕してD50=80μmの粉砕物とした。この粉砕物を押出成形工程に付した。
参照例として、市販されている0.57mmのシャープペンシル用硬度HBの焼成鉛筆芯ネオックス・グラファイト(登録商標) 0.5mm HB(株式会社パイロットコーポレーション製)を用いた。
参照例1、実施例1〜3、ならびに比較例1および2の鉛筆芯について、特性値および性能を評価した。得られた結果は以下の通りであった。表中の数値に付されたカッコは、その数値が式(1)〜(4)を満たさないことを示している。なお、特性および性能の測定方法または評価方法は文末に示したとおりである。さらに、参照例1および実施例1〜3の鉛筆芯の押出方向に垂直な面を電子顕微鏡で観察した。これらの電子顕微鏡写真は図1に示すとおりであった。
実施例2に対して、熱処理条件を変更して、実施例2とは筆記濃度が異なる鉛筆芯を製造した。この鉛筆芯についても、実施例1と同様の評価を行った。また、このとき、参照例1Hおよび1Bとして、市販されている0.5mmの焼成鉛筆芯ネオックス・グラファイト(登録商標) 0.5mm Hおよび4B(株式会社パイロットコーポレーション製)を用いて評価した。
参照例1H,1、および1B、実施例2H、2、および2Bの鉛筆芯について、特性値および性能を評価した。得られた結果は以下の通りであった
X線回折装置(Bruker AXS社製、商品名:D8 ADVANCE)を用い、試料の結晶子サイズLc(002面)、La(110面)を測定した。測定には、1回の測定につき焼成芯体1本を使用した。X線回折測定には、一般に粉砕された粉末を用いるが、ここでは形状変化を避けるため、今回の評価においては粉砕は行わなかった。測定はゲーベル・ミラーによる平行ビーム法を用いた。Lcの測定は、焼成芯体の押出軸方向に対して平行にX線を照射し、方位角2θを20〜30°の範囲でスキャンした。一方、Laの測定は、焼成芯体の押出軸方向に対して垂直にX線(CuKα線)を照射し、方位角2θを70〜80°の範囲でスキャンした。得られたXRDプロファイルの(002面)又は(110面)に対応する、26.4°付近または77.5°付近の回折線に関して、バックグラウンドを除去し(5次のチェビシェフ多項式を使用)、X線吸収因子を補正し、プロファイル・フィッティング処理を行った後、以下のシェラー式を用いて結晶子サイズを算出した。フィッティング処理及び結晶子サイズの算出には、ファンダメンタル・パラメータ(FP)法を用いた。
L = Kλ/βcosθ
ここで、
L:結晶子サイズ[nm]
K:シェラー定数(K=1を適用)
λ:X線波長[nm]
β:半値幅(ピーク強度の50%に相当する強度における回折線幅)
θ:X線照射角度(ラジアン)
である。
曲げ強度は、JIS S 6005:2007に規定されている方法で、支点間距離20mmで10本について測定した値の平均値とした。
筆記濃度は、JIS S 6005:2007に規定されている方法で筆記した描線を濃度計(サクラ濃度計PDA65(商品名、小西六写真工業株式会社))で測定した。
焼成体の外形容積を1とした場合の、その中に占める気孔部分の容積の百分比を求めた。具体的には、気孔率は、吸収させる液体をベンジルアルコール(密度1.046g/cm3)として、下記式により決定した。
Po=(W3―W1)/(W3―W2)×100
ここで、
Po:見かけの気孔率(%)
W1:液体を吸収させる前の芯の乾燥質量(g)
W2:気孔中に液体を吸収させた芯の液体中に於ける質量(g)
W3:気孔中に液体を吸収させた後の芯の質量(g)
である。
被験者30人において、各鉛筆芯を使用し、市販のキャンパスノートA罫(コクヨ株式会社製)に下敷きを使わない状態で、5ページにわたって同一短文を繰返し筆記し、参照例1の鉛筆芯との相対評価をした。
筆記感は滑らかで書きやすいかどうかを、運筆は引っ掛かりなく滑らかに書けたかどうかを下記基準で評価した。
S:参照例1に対して非常に良い
A:参照例1よりやや良い
B:参照例1と同等
C:参照例1より悪い
Claims (7)
- 黒鉛粉末と結合材とを含んでなる原料配合物混合および混練する混合工程、
混合工程で得られた混合物をさらに混合し、細線状に成型する予備成形工程、
前記細線状成形体を粉砕する粉砕工程、
粉砕された混練物を細線状に成形する押出成形工程、
押出成形された混練物を焼成する焼成工程、および
焼成により得られた焼成物に油を含浸させる油浸工程
を含んでなることを特徴とする、焼成鉛筆芯の製造方法。 - 前記焼成工程における焼成が、真空または不活性ガス雰囲気下、温度800〜1500℃で行われる請求項1に記載の方法。
- 前記原料配合物が、樹脂をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
- 製造される焼成鉛筆芯が、黒鉛を含んでなり、JIS S 6005:2007に規定されている方法で測定した筆記濃度がDであるとき、X線回折測定により定められる前記黒鉛の結晶子のa軸方向のサイズL a (nm)、c軸方向のサイズL c (nm)、および、前記L c とL a との比L c /L a が、下記式(1)、(2)、および(3):
52×D+30≦L a ≦52×D+60 (1)
30×D+6≦L c ≦30×D+18 (2)
L c /L a ≦0.18D+0.4 (3)
を同時に満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 - 前記L c が、下記式(2A):
30×D+8≦L c ≦30×D+16 (2A)
をさらに満たす、請求項4に記載の焼成鉛筆芯。 - 下記式(4):
L c ×L a ≦3100D+700 (4)
をさらに満たす、請求項4または5に記載の焼成鉛筆芯。 - 前記焼成鉛筆芯が気孔を含んでおり、前記焼成芯の気孔率が10〜45%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼成鉛筆芯。
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