JP6807574B2 - 濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離性向上剤およびそれを用いるケーキの剥離方法 - Google Patents
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Description
固液分離用濾過布(「濾布」ともいう)は、固液分離装置において最も重要な役割を担う部材であり、高捕集性、耐目詰り性、ケーキ剥離性、機械的強度・物理化学的安定性、寸法安定性などの性能が要求される。技術分野を問わず、濾布に対する共通する課題は、濾過初期の濾布の目詰まりまたは濾布上のケーキ薄層付着によるケーキ剥離困難による濾過サイクルの障害である。すなわち、濾布が操業から早期に使用不能になり、その結果、濾布洗浄の頻度が高くなり、洗浄に要する多大な手間と時間が問題視されている。
第1に、濾布の織構造の改良やその表面改質、濾布を構成する糸自体の表面改質の技術が挙げられる。例えば、実開平7−21114号公報(特許文献1)には、ポリエステルマルチフィラメントからなる経糸と、ポリエステルマルチフィラメントのバルキー加工糸が撚糸の表面の大部分を占めるようにされた緯糸とで製織し、得られた織布に、ポリエチレングリコール・カルバメートなどのポリエステルに対して強固に結合して親水性を発揮する薬剤で親水加工を施し、織布の表面層と裏面層との間に瀘液の保持空間を形成した酒もろみ瀘過用フィルタ−クロスが開示されている。
さらに、固液分離の対象液の懸濁成分を凝集剤でフロック化する特許文献3の技術では、固体成分をケーキ状にしても濾布への貼り付きや濾布の目詰まりなどの問題が残る。
しかしながら、この技術は、抄紙機の高速運転に伴う抄紙工程水中に含まれるスライム、ピッチおよびスケールなどが絡みあったデポジットが起因の紙切れを防止するために、抄紙機のプレスパート部の紙が直接接触するロールの表面から紙が速やかに離れることを促進する紙離れ促進剤およびこれを用いた紙切れ防止方法であり、本発明とは技術分野が異なり、発明の課題が異なる技術である。
(1)剥離性向上剤が、水溶液の形態にある。
(2)ポリジアリルジメチルアンモニウム塩がポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドであり、かつ界面活性剤がアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルアミン・エチレンオキサイド付加物またはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインである。
(3)界面活性剤が、ノニオン界面活性剤である。
(4)剥離性向上剤が、有効成分としてホスホン酸化合物をさらに含有する。
(5)上記のホスホン酸化合物が、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸である。
(6)濾布を用いる圧搾式脱水装置の処理対象が、凝集剤を含有する汚泥である。
(7)剥離性向上剤を濾布の洗浄水に添加して散布する。
本発明の濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離性向上剤(以下、「剥離性向上剤」ともいう)は、分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩と、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選択される1種以上の界面活性剤とを有効成分として含有することを特徴とする。
本発明において用いられる分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、一般式(I):
ポリジアリルジメチルアンモニウム塩の分子量は、剥離性向上効果の点で20,000〜100,000が好ましく、30,000〜80,000が特に好ましい。
上記のポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、カチオン界面活性剤として用いられる化合物であり、市販のものを使用することができる。
本発明において用いられる界面活性剤は、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選択される1種以上である。
前述のようにポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、カチオン界面活性剤としても用いられる化合物であり、アニオン界面活性剤との共存下では凝集により製剤化ができず、アニオン界面活性剤は、本発明の界面活性剤の選択肢から除外される。
本発明において用いられるカチオン界面活性剤としては、例えば、炭素数12〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩のような4級アンモニウム化合物が挙げられる。
具体的には、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドおよびオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイドなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、剥離性向上効果の点で、炭素数12〜16のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの混合物が特に好ましい。
上記の4級アンモニウム化合物は、いずれも公知のカチオン界面活性剤であり、市販のものを使用することができる。
本発明において用いられるノニオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加物が挙げられる。特に、炭素数10〜20の飽和または不飽和の脂肪族アミンに、エチレンオキサイドを15〜30モル付加させたもの、プロピレンオキサイドを0〜15モル付加させたものが、剥離性向上効果の点で好ましく、エチレンオキサイドを15〜20モル付加させたもの、プロピレンオキサイドを0〜5モル付加させたものがさらに好ましい。
本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
具体的には、ステアリルアミン・エチレンオキサイド20モル付加物および牛脂アミン・エチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加比85/15(エチレンオキサイド31モルプロピレンオキサイド4モル付加物)が挙げられ、これらは、剥離性向上効果の点で特に好ましい。
上記の付加物は、いずれも公知のノニオン界面活性剤であり、市販のものを使用することができる。
本発明において用いられる両性界面活性剤としては、例えば、炭素数10〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。
具体例としては、デシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、テトラデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヘキサデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オクタデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、剥離性向上効果の点で、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが特に好ましい。
上記のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインは、いずれも公知のノニオン界面活性剤であり、市販のものを使用することができる。
また、本発明の剥離性向上剤は、剥離性向上効果の点で、界面活性剤がノニオン界面活性剤であるのが好ましい。
本発明の剥離性向上剤におけるポリジアリルジメチルアンモニウム塩と界面活性剤との好ましい配合割合は、それらの化合物の種類や添加対象の性状により異なるが、通常、それらの重量比で1:9〜9:1程度である。
界面活性剤がポリジアリルジメチルアンモニウム塩に対して10重量%未満である場合には、十分な剥離効果が得られないことがある。一方、界面活性剤がポリジアリルジメチルアンモニウム塩に対して90重量%を超える場合には、十分な剥離効果が得られないことがある。
より好ましい配合割合は、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩と界面活性剤との重量比で1:3〜5:1である。
本発明の剥離性向上剤は、水溶液の形態にあるのが好ましく、具体的には、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩と界面活性剤との水に溶解した液剤形態で製剤化して用いるのが好ましい。
一液製剤の場合、両成分の合計濃度は、溶解度やpHなどに左右され特に限定されるものではないが、通常1〜50重量%程度であり、製剤安定性や経済性の点で5〜40重量%程度が特に好ましい。
本発明の剥離性向上剤は、有効成分としてホスホン酸化合物をさらに含有するのが、剥離性向上効果の点で特に好ましい
本発明において用いられるホスホン酸化合物としては、例えば、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、トリメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、ジエチレントリアミン(ペンタメチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、1−アミノプロパン−1,1−ジホスホン酸および1,2,4−トリカルボキシブタン−2−ホスホン酸ならびにそれらのアルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩などが挙げられる。本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、剥離性向上効果の点で、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸および1,2,4−トリカルボキシブタン−2−ホスホン酸が好ましく、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸が特に好ましい。
本発明の剥離性向上剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の機能を有する薬剤を含有していてもよく、例えば、殺菌剤、防カビ剤、防食剤およびスケール分散剤などが挙げられる。
本発明においては、これら他の機能を有する薬剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
これらの薬剤の配合割合は、処理対象やその性状などにより適宜設定すればよく、例えば、剥離性向上の有効成分1重量部に対して、0.1〜2重量部程度である。
本発明の剥離性向上剤は、例えば、製紙パルプの蒸解薬液の回収工程、顔料の製造工程、油脂の精製工程、浄水場での汚泥の脱水工程などの各種工業分野の固液分離工程に用いられる濾布を用いる圧搾式脱水装置に適用される。具体的には、濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布に塗布や散布することにより適用される。
濾布を用いる圧搾式脱水装置としては、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機(加圧脱水機)、真空脱水機、遠心脱水機および水平ベルトフィルター型脱水機などが挙げられ、これらの中でも、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機が好ましく、ベルトプレス型脱水機が特に好ましい。
また、本発明の剥離性向上剤は、濾布を用いる圧搾式脱水装置の対象水が凝集剤を含有する汚泥である場合に、凝集剤のみの添加では得られない特に優れた効果を発揮する。
本発明の濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離方法(以下、「剥離方法」ともいう)は、本発明の剥離性向上剤を、前記濾布を用いる圧搾式脱水装置のケーキが直接接触する濾布の表面に散布することを特徴とする。
本発明の剥離性向上剤の好適な使用場面としては、「濾布を用いる圧搾式脱水装置のケーキが直接接触する濾布」が挙げられる。
例えば、ベルトプレス型脱水機およびフィルタープレス型脱水機について説明する。
ベルトプレスは、濾布上に対象物を載置して重力により固液分離する重力脱水と、2枚の濾布で対象物を挟み込み、濾布の張力により生じる面圧を徐々に高くして対象物中の液体成分を搾り出す圧搾脱水とを連続して行う脱水方式であり、例えば、図5に示されるような汚泥の脱水処理が挙げられる。
まず、凝集反応槽の第1槽および第2槽に汚泥が投入され、モータMで撹拌下の汚泥に凝集剤が添加され、フロックが形成される。次に、凝集処理された汚泥が、ベルトプレス型脱水機の濾布A上に送られ、重力脱水に付される。次に、濾布上の汚泥が、濾布Aと、加圧ベルトにより張力を与えられた、もう1つの濾布Bとに挟まれ、圧搾脱水に付される。その後、脱水された汚泥が脱水ケーキとしてスクレーパーAにより掻き取られて回収される。
なお、凝集反応槽の第1槽および第2槽にはバルブを介して排水の設備、洗浄水タンクにはバルブを介して補給水および排水の設備が付帯する。
また、剥離性向上剤の濾布への散布は連続的であっても、間欠的であってもよいが、剥離性向上効果の点で、連続的であるのが好ましい。
また、剥離性向上剤を洗浄水に添加して散布する場合には、剥離性向上剤の有効成分の濃度が洗浄水中で100〜10,000mg/L、好ましくは150〜5,000mg/Lとなるように添加すればよい。
剥離性向上剤の有効成分の濃度が洗浄水中で100mg/L未満では、汚泥の剥離効果が十分に得られないことがある。一方、剥離性向上剤の有効成分の濃度が洗浄水中で10,000mg/Lを超えると、経済的な損失が生まれることがある。
したがって、本発明の剥離方法としては、例えば、本発明の剥離性向上剤を添加した洗浄液で濾布を洗浄する方法、本発明の剥離性向上剤の希釈液を洗浄後の濾布に塗布もしくは散布する方法が挙げられる。その他の条件については、ベルトプレスに準ずる。
なお、下記の製剤例1、4および6ならびに実施例3および4は参考例である。
[ポリジアリルジメチルアンモニウム塩]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PdAdMAC)
(分子量5万〜7万、センカ株式会社製、製品名:ユニセンスFPA100L)
[カチオン界面活性剤]
炭素数12〜16のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの混合物
(和光純薬工業株式会社製、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)50%w/w水溶液)
「ノニオン界面活性剤]
ステアリルアミン・エチレンオキサイド20モル付加物(ポリオキシエチレンステアリルアミン)
※以下、エチレンオキサイドを「EO」と略す。
(青木油脂工業株式会社製、製品名:ブラウノンS220)
牛脂アミン・エチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加比85/15(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン牛脂アミン)
※以下、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドを「EOPO」と略す
(青木油脂工業株式会社製、製品名:ブラウノンSAP−3004)
[両性界面活性剤]
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
(第一工業製薬株式会社製、製品名:アモーゲンS−H)
1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
(キシダ化学株式会社製、特級試薬)
「アニオン界面活性剤]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム
(花王株式会社製、製品名:ペレックスNBL)
[公知の凝集剤]
ポリマー系凝集剤
(株式会社片山化学工業研究所製、製品名:フロクランC1430)
ポリ塩化アルミニウム(PAC)
(多木化学株式会社製、製品名:ポリ塩化アルミニウム)
ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)
(多木化学株式会社製、製品名:ダンパワー)
[水]
大阪市水
(製剤例1:カチオン界面活性剤)
PdAdMAC 5%
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 13.5%
(製剤例2:ノニオン界面活性剤)
PdAdMAC 5%
ステアリルアミンEO20モル付加物 13.5%
(製剤例3:ノニオン界面活性剤)
PdAdMAC 5%
牛脂アミンEOPO付加比85/15 13.5%
PdAdMAC 5%
ラウリルジメチルアミン酢酸ベタイン 13.5%
(製剤例5:ノニオン界面活性剤+ホスホン酸化合物)
PdAdMAC 5%
ステアリルアミンEO20モル付加物 13.5%
HEDP 5%
(製剤例6:カチオン界面活性剤+ホスホン酸化合物)
PdAdMAC 5%
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 13.5%
HEDP 5%
(比較製剤例1:アニオン界面活性剤)
PdAdMAC 5%
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 13.5%
某食品工場の汚泥廃水から採取した、ベルトプレス型脱水機で処理される汚泥濃度20g/Lの汚泥を汚泥サンプルとして使用した。
容量500mLのシリンダーに汚泥200mLを入れ、ポリマー系凝集剤を、汚泥に対して300ppm加えた。凝集剤の添加濃度は、汚泥の汚泥濃度などの影響を受けるため、予めその濃度から最適な添加濃度を設定しておいた。
次いで、シリンダーの開放口を密閉し、シリンダーの長尺方向の天地が逆になるように10回動作してシリンダーの内容物を撹拌し、汚泥のフロックを形成させた。その後、プラスチック樹脂製漏斗(内径130mm)の上に濾布(汚泥を採取した実機のベルトプレス型脱水機用濾布、株式会社相模商会製、品番:SF600、厚さ1.2mm)を置き、さらにその上に60meshの金網ふるい(内径80mm)を置いた中に汚泥を流し入れて汚泥ケーキ(乾燥重量で約4g)を得た。
図4に示すように、手絞りジューサーの持ち手にステンレス製寸切りボルトを貫通させて装着し、濾布剥離性向上剤無添加時の汚泥ケーキの含水率が実機と同程度になるように、ナットの位置を設定した。すなわち、図4に示すように、手絞りジューサー内にケーキを設置して、その上部の持ち手を下部の持ち手に下降したときに、ナットがストッパーになり、ケーキに掛かる圧力が一定になるようにした。
得られた水溶液に、ケーキ圧搾機に合わせて外径85mmに切断しておいた上記の実機用濾布2枚を30分間浸漬した。
次いで、図4に示すように、2枚の濾布でケーキを挟み込み(a)、ケーキ圧搾機に設置し(b)、ケーキ圧搾機の上部の持ち手をナットの位置まで下降させ1分間保持して、ケーキを圧搾した(c)。ケーキの挟み込みでは、1枚の濾布上の略中心に、プラスチック製円筒(外径約20mm×高さ約15mm×厚さ約2mm)を設置し、この円筒に摺切り一杯になるように汚泥ケーキを充填し、円筒を除いてもう1枚の濾布浸漬用水溶液に浸漬した濾布で汚泥ケーキを挟んだ圧搾後、濾布からケーキを剥離し(d)、濾布のケーキとの接触面の光学写真を撮った。
比較例1(ブランク):濾布を水に浸漬
比較例2:濾布をPdAdMAC1850mg/L水溶液に浸漬
比較例3:濾布をノニオン界面活性剤1850mg/L水溶液に浸漬
比較例4:濾布をPAC1850mg/L水溶液に浸漬
比較例5:濾布をポリ鉄1850mg/L水溶液に浸漬
試験例1の卓上試験では、ケーキの圧搾条件がベルトプレス型脱水機の実機とは異なるため、ケーキの上側の濾布表面に付着する傾向にあり、剥離性の評価においては、剥離性の向上効果が顕著に表れるケーキの上側の濾布を用いて評価した。
得られた写真から、濾布をケーキの濾布への貼り付き面積を計測し、圧搾により広がった剥離前のケーキの付着面積を基準として、ケーキの濾布への貼り付き面積の割合を求め、下記の基準で剥離性を評価した。
濾布への貼り付き面積の割合
◎:十分な剥離性 0%以上10%未満
○:貼り付き僅かで、実用可 10%以上30%未満
×:貼り付きが多く、実用不可 30%以上100%未満
得られた結果を、使用化合物とその含有量と共に表1に示す。
乾燥前後の濾布とケーキとの合計重量の差から含水率を求めた。
得られた結果を、使用化合物とその含有量と共に表1に示す。
・剥離性については、PdAdMACとノニオン界面活性剤(実施例1および2)、PdAdMACとカチオン界面活性剤(実施例3)、PdAdMACと両性界面活性剤(実施例4)のいずれの組み合わせとも十分にケーキが剥離され、良好であり、これらの中でもノニオン界面活性剤を配合した実施例1および2が特に良好であること
・含水率についても同様の傾向が見られ、実施例1〜4では良好な結果が得られ、PdAdMACとノニオン界面活性剤にさらにHEDPを配合した実施例2では剥離性および含水率が共に最も良好な結果が得られること
某食品工場において稼働する濾布を用いる圧搾式脱水装置(図5に示されるベルトプレス型脱水機)および供試薬剤として試験例1の実施例2の薬剤(PdAdMAC5%+ステアリルアミンEO20モル付加物13.5%+HEDP3%の水溶液)を用いて実機試験を実施した。
具体的には、まず、図5に示されるベルトプレス型脱水機において、濾布の洗浄用に設置されている洗浄シャワーの配管の下流側に配管を設置して薬剤添加ラインとした。薬剤添加ライン中の水中の供試薬剤の有効成分濃度が215mg/L、161mg/Lおよび107mg/Lになるように、添加ライン水に供試薬剤を添加した(濾布単位面積あたりの添加量で、それぞれ0.6g/m2、0.5g/m2および0.3g/m2)。
濾布の目視観察は、図5の濾布Bについて実施した。
汚泥剥離状況を濾布への汚泥ケーキの貼り付き状態により下記の基準で評価した。
○:貼り付きが観察されない
△:濾布面積の30〜60%程度で濾布にしみついたように貼り付きが観察される
×:濾布のほぼ全面で貼り付きが観察される
得られた結果を、薬剤有効成分濃度とその濾布単位面積あたりの添加量と共に表2に示す。
表中の濾布単位面積あたりの添加量(g/m2)は、希釈前薬剤量(g)を2回転分の濾布面積、すなわち濾布の面積の2倍(m2)で除することにより求めた。
・薬剤有効成分濃度215mg/Lの添加で汚泥処理開始から40分間、薬剤有効成分濃度161mg/Lの添加で汚泥処理開始から30分間、薬剤有効成分濃度107mg/Lの添加で、汚泥処理開始から10分間、濾布の剥離性向上効果が得られること。
・圧搾式脱水装置の機構や規模、連続運転(操業)条件、脱水処理対象の汚泥の性状、脱水処理されたケーキの付着し易さなどにより、薬剤の添加濃度やその添加頻度を適宜設定する必要があり、試験例2の場合には、濾布の剥離性向上効果を得るためには、通常161mg/L以上の薬剤有効成分濃度が必要であること
・試験例2では、薬剤添加(濾布への薬剤接触)と汚泥の脱水処理とを段階的に実施したが、薬剤有効成分濃度を適宜設定して、それらを同時に実施することにより、連続的な濾布の剥離性向上効果が期待できること
Claims (7)
- 分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドと、ノニオン界面活性剤とを有効成分として含有し、水溶液の形態にあり、かつ濾布を用いる圧搾式脱水装置のケーキが直接接触する濾布の表面への散布用であることを特徴とする濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離性向上剤。
- 前記界面活性剤が、ステアリルアミン・エチレンオキサイド付加物である請求項1に記載の剥離性向上剤。
- 前記剥離性向上剤が、有効成分としてホスホン酸化合物をさらに含有する請求項1または2に記載の剥離性向上剤。
- 前記ホスホン酸化合物が、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸である請求項3に記載の剥離性向上剤。
- 前記濾布を用いる圧搾式脱水装置の処理対象が、凝集剤を含有する汚泥である請求項1〜4のいずれか1つに記載の剥離性向上剤
- 請求項1〜5のいずれか1つに記載の剥離性向上剤を、前記濾布を用いる圧搾式脱水装置のケーキが直接接触する濾布の表面に散布することを特徴とする濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離方法。
- 前記剥離性向上剤を前記濾布の洗浄水に添加して散布する請求項6に記載のケーキの剥離方法。
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