JP6806125B2 - 正極および電池 - Google Patents

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Description

本開示は正極および電池に関する。
特開2014−082192号公報(特許文献1)は、電極に保護層を設けることを開示している。保護層は金属酸化物材料を含んでいる。金属酸化物材料は絶縁性を有する。
特開2014−082192号公報
外部入力時の発熱量を小さくすることが求められている。「外部入力」とは、導電性の鋭利物が電池の外装を貫通し、電池内部に侵入する異常モードを示す。電池内部に侵入した鋭利物により、正極と負極とが短絡し、電池が発熱すると考えられる。外部入力は、例えば「釘刺し試験」等により模擬されている。
一般に正極は正極集電体および正極活物質層を含む。正極集電体は、典型的には金属箔(例えばアルミニウム箔等)を含む。正極活物質層は正極集電体の表面を覆っている。しかし外部入力時の衝撃により、正極活物質層が脱落し、正極集電体が正極活物質層から露出することがある。露出した正極集電体と負極とが接触した場合、短絡電流が大きくなると考えられる。正極集電体の電気抵抗が小さいためと考えられる。短絡電流が大きくなることにより、大きいジュール熱が発生すると考えられる。すなわち発熱量が大きくなると考えられる。
正極集電体の露出を抑制するため、中間層を設けることが考えられる。中間層は正極集電体と正極活物質層との間に配置される。中間層の存在により、正極活物質層が脱落しても、正極集電体と負極との直接接触が回避されることが期待される。
中間層の電気抵抗は、正極集電体の電気抵抗よりも大きいことが求められる。中間層と負極とが接触した際の短絡電流を小さくするためである。従来、中間層に所望の電気抵抗を付与するため、絶縁性を有する金属酸化物材料(例えばアルミナ等)が使用されている。すなわち従来、中間層は金属酸化物材料を含む。
金属酸化物材料は、小さい延性を有する傾向がある。そのため中間層の延性が小さくなる傾向がある。他方、正極集電体(金属箔)は、大きい延性を有し得る。
外部入力時、導電性の鋭利物により、中間層および正極集電体に押し込み変形が加わると考えられる。中間層の延性と、正極集電体の延性との差が大きい場合、正極集電体の変形に中間層が追随できず、正極集電体が中間層から露出する可能性がある。中間層から露出した正極集電体が、負極と接触することにより、大きい短絡電流が発生し得る。その結果、発熱量が大きくなる可能性がある。
本開示の目的は外部入力時の発熱量を小さくすることである。
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本開示の作用メカニズムは推定を含んでいる。作用メカニズムの正否により、特許請求の範囲が限定されるべきではない。
〔1〕本開示の正極は、正極集電体、中間層および正極活物質層を含む。中間層は正極集電体と正極活物質層との間に配置されている。中間層は第1粒子群および第2粒子群を少なくとも含む。第1粒子群は金属酸化物材料を含む。金属酸化物材料は絶縁性を有する。第2粒子群は低ヤング率材料を含む。低ヤング率材料のヤング率は、金属酸化物材料のヤング率よりも低い。
図1は本開示の作用メカニズムを図解する断面概念図である。
外部入力時、導電性の鋭利物200(例えば釘のような物)により、中間層13および正極集電体11に押し込み変形が加わると考えられる。中間層13の延性が小さい場合、中間層13の延性と、正極集電体11の延性との差が大きくなると考えられる。その結果、正極集電体11の変形に中間層13が追随できず、正極集電体11が中間層13から露出する可能性がある。露出した正極集電体11が負極20(負極活物質層22および負極集電体21)と接触することにより、大きい短絡電流が発生し得る。これにより大きいジュール熱が発生し、発熱量が大きくなると考えられる。
本開示の中間層13には、第1粒子群および第2粒子群が含まれている。第1粒子群は絶縁性を有する金属酸化物材料を含む。第2粒子群は低ヤング率材料を含む。低ヤング率材料のヤング率は、金属酸化物材料のヤング率よりも低い。中間層13に第2粒子群が含まれていることにより、中間層13の延性が大きくなることが期待される。これにより中間層13の延性と、正極集電体11の延性との差が小さくなり、中間層13が正極集電体11の変形に追随することが期待される。すなわち外部入力時、正極集電体11の露出が抑制されることが期待される。正極集電体11の露出が抑制されることにより、発熱量が小さくなることが期待される。
〔2〕低ヤング率材料のヤング率は、例えば96GPa以下であってもよい。
〔3〕低ヤング率材料は、例えば無機固体電解質材料および樹脂材料からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。これらの材料は、金属酸化物材料よりも低いヤング率を有し得る。
〔4〕固体電解質材料は、例えば硫化物を含んでいてもよい。硫化物を含む固体電解質材料(硫化物系固体電解質材料)は、低いヤング率を有し得る。
〔5〕無機固体電解質材料は、例えばLi3.250.954、Li10GeP212、Li7311およびLi9.54Si1.741.4411.7Cl0.3からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。これらの硫化物系固体電解質材料は、低いヤング率を有し得る。
〔6〕樹脂材料は、例えばポリスチレンを含んでいてもよい。ポリスチレンは低いヤング率を有し得る。
〔7〕本開示の電池は、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の正極と、負極とを少なくとも含む。本開示の電池は、外部入力時の発熱が小さいことが期待される。
図1は本開示の作用メカニズムを図解する断面概念図である。 図2は本実施形態の正極の構成の一例を示す概略図である。 図3は本実施形態の電池の構成の一例を示す概略図である。 図4は本実施形態の電極群の構成の一例を示す概略図である。
以下、本開示の実施形態(本明細書では「本実施形態」と記される)が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。例えば本実施形態では、リチウムイオン電池が説明される。ただしリチウムイオン電池は電池の一例に過ぎない。本実施形態の電池は、例えばナトリウムイオン電池等であってもよい。
<正極>
図2は本実施形態の正極の構成の一例を示す概略図である。
正極10はリチウムイオン電池用である。正極10はシート状の部品である。正極10は正極集電体11、中間層13および正極活物質層12を含む。正極活物質層12および中間層13は、正極集電体11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12および中間層13は、正極集電体11の表裏両面に配置されていてもよい。図2のx軸方向において、正極集電体11が正極活物質層12から突出した部分は、外部端子81(後述)と接続される。
《正極集電体》
正極集電体11は導電性の電極基材である。正極集電体11は例えば1μm以上17μm以下の厚さを有していてもよい。正極集電体11は例えば金属箔等であってもよい。正極集電体11は例えばアルミニウム(Al)箔であってもよい。Al箔は例えば5μm以上17μm以下の厚さを有していてもよい。正極集電体11は例えばチタン(Ti)箔であってもよい。Ti箔は例えば1μm以上15μm以下の厚さを有していてもよい。
本実施形態において各構成の「厚さ」は例えばマイクロメータ等により測定され得る。各構成の厚さは、例えば断面顕微鏡画像(例えば走査型電子顕微鏡画像)等において測定されてもよい。厚さは少なくとも3箇所で測定される。少なくとも3箇所の算術平均値が採用される。
《中間層》
図1には図2のxy平面に相当する断面が概念的に示されている。図1に示されるように、中間層13は正極集電体11と正極活物質層12との間に配置されている。中間層13は例えば0.5μm以上の厚さを有していてもよい。中間層13は例えば2μm以上の厚さを有していてもよい。中間層13の厚さに上限は特に設けられていない。中間層13が厚くなる程、発熱量が小さくなることが期待される。ただし中間層13が過度に厚くなると、無視できない程度に電池容量が減少することになる。中間層13は例えば10μm以下の厚さを有していてもよい。中間層13は例えば5μm以下の厚さを有していてもよい。中間層13は例えば4μm以下の厚さを有していてもよい。
中間層13は第1粒子群および第2粒子群を少なくとも含む。第2粒子群は低ヤング率材料を含む。中間層13に第2粒子群が含まれていることにより、中間層13の延性が大きくなると考えられる。これにより外部入力時、正極集電体11の露出が抑制され、発熱量が小さくなることが期待される。
《第1粒子群》
本実施形態において「粒子群」は、固体粒子の集合体(粉体)を示す。第1粒子群は短絡電流の発生および伝播を抑制する成分である。中間層13は例えば35質量%以上85質量%以下の第1粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば75質量%以下の第1粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば65質量%以下の第1粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば45質量%以上の第1粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば55質量%以上の第1粒子群を含んでいてもよい。
第1粒子群は金属酸化物材料を含む。第1粒子群は実質的に金属酸化物材料のみからなっていてもよい。金属酸化物材料は絶縁性を有する。本実施形態において「絶縁性を有する」とは、107Ω・cm以上の体積抵抗率を有することを示す。金属酸化物材料は例えば1010Ω・cm以上の体積抵抗率を有していてもよい。金属酸化物材料の体積抵抗率に上限は特に設けられていない。金属酸化物材料は例えば1019Ω・cm以下の体積抵抗率を有していてもよい。体積抵抗率は従来公知の方法で測定され得る。体積抵抗率が既知の金属酸化物材料が使用されている場合、既知の値(文献値)が使用されてもよい。
絶縁性を有する限り、金属酸化物材料は特に限定されるべきではない。金属酸化物材料は、例えば、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニアおよびベーマイトからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
第1粒子群は、例えば0.1μm以上2μm以下のd50を有していてもよい。本実施形態の「d50」は、体積基準の粒子径分布において微粒側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を示す。d50はレーザ回折法によって測定され得る。例えばマイクロトラック・ベル社製の粒子径分布測定装置「MT3000IIシリーズ」等が使用されてもよい。該測定装置と同等の機能を有する測定装置が使用されてもよい。粒子径分布は、粒子群が分散媒に分散された状態で測定され得る(いわゆる「湿式法」)。分散媒は例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等であってもよい。
第1粒子群は例えば0.32μm以上0.83μm以下のd50を有していてもよい。第1粒子群は例えば0.54μm以上のd50を有していてもよい。第1粒子群は例えば0.72μm以下のd50を有していてもよい。第1粒子群は例えば0.71μm以下のd50を有していてもよい。第1粒子群は例えば0.70μm以下のd50を有していてもよい。
第1粒子群に含まれる個々の粒子の形状は、特に限定されるべきではない。粒子の形状は例えば球状、針状、フレーク状等であってもよい。個々の粒子の形状は実質的に全て同一であってもよい。個々の粒子の形状は互いに異なっていてもよい。
《第2粒子群》
第2粒子群は中間層13に延性を付与する成分である。中間層13は例えば5質量%以上60質量%以下の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば10質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば20質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば30質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば50質量%以下の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば40質量%以下の第2粒子群を含んでいてもよい。第2粒子群は例えば0.1μm以上20μm以下のd50を有していてもよい。
(低ヤング率材料)
第2粒子群は低ヤング率材料を含む。第2粒子群は実質的に低ヤング率材料のみからなっていてもよい。低ヤング率材料のヤング率は、第1粒子群に含まれる金属酸化物材料のヤング率よりも低い。なお低ヤング率材料も絶縁性を有していてもよい。
本実施形態の「ヤング率」は微小圧縮試験機により測定される。例えば島津製作所社製の微小圧縮試験機「型名 MCT−511」等が使用され得る。同試験機と同等の機能を有する微小圧縮試験機が使用されてもよい。
測定条件は以下のとおりである。
上部加圧圧子:種類=フラット圧子、直径=50μm、材質=ダイヤモンド
試験力:9.8mN
測定手順は以下のとおりである。
粒子(試料)が樹脂系接着剤によりガラス板の表面に固定される。粒子が固定されたガラス板が、微小圧縮試験機の下部加圧板上に配置される。粒子が視認されながら、上部加圧圧子により粒子が圧縮される。試験力(荷重)および変位が測定される。試験力−変位グラフが作成される。試験力−変位グラフにおいて、圧縮開始から破壊点までの間の線形領域の傾きから、ヤング率が求められる。測定は少なくとも3回実施される。少なくとも3回の算術平均値が採用される。ヤング率が既知の材料が使用されている場合、既知の値(文献値)が使用されてもよい。
なお水分の影響により試料のヤング率が変化する可能性がある場合、露点が管理されたドライルーム内でヤング率が測定される。水分の影響を受ける試料としては、例えば硫化物系固体電解質材料(後述)等が考えられる。ドライルームの露点は、水と試料との反応性等に基づいて適宜調整される。ドライルームの露点は例えば−20℃以下であり得る。
本実施形態において、第1粒子群に含まれる金属酸化物材料のヤング率は、例えば100GPa以上であってもよい。金属酸化物材料のヤング率は、例えば200GPa以上であってもよい。金属酸化物材料のヤング率は、例えば500GPa以下であってもよい。金属酸化物材料のヤング率は、例えば400GPa以下であってもよい。金属酸化物材料のヤング率は、例えば350GPa以下であってもよい。
低ヤング率材料のヤング率は、例えば96GPa以下であってもよい。低ヤング率材料のヤング率は、例えば88GPa以下であってもよい。低ヤング率材料のヤング率は、例えば83GPa以下であってもよい。低ヤング率材料のヤング率は、例えば76GPa以下であってもよい。低ヤング率材料のヤング率に下限は特に設けられていない。低ヤング率材料のヤング率は、例えば3.5GPa以上であってもよい。
なお正極集電体11のヤング率は、例えば50GPa以上90GPa以下であってもよい。正極集電体11のヤング率は、例えば60GPa以上80GPa以下であってもよい。
本実施形態の低ヤング率材料としては、例えば無機固体電解質材料、樹脂材料等が考えられる。すなわち低ヤング率材料は、無機固体電解質材料および樹脂材料からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば第2粒子群に、無機固体電解質材料を含む粒子群と、樹脂材料を含む粒子群の両方が含まれていてもよい。
(無機固体電解質材料)
第2粒子群は無機固体電解質材料を含んでいてもよい。第2粒子群は実質的に無機固体電解質材料のみからなっていてもよい。無機固体電解質材料は、金属酸化物材料に比して低いヤング率を有し得る。無機固体電解質材料はイオン伝導体である。無機固体電解質材料は可動イオンを含む。可動イオンは電池の電荷担体であり得る。例えば電池がリチウムイオン電池である場合、無機固体電解質材料はリチウムイオンを含んでいてもよい。第2粒子群に無機固体電解質材料が含まれていることにより、第2粒子群から正極活物質に電荷担体が供給され得る。これにより例えば不可逆容量の低減等が期待される。
無機固体電解質材料は例えば硫化物であってもよい。硫化物系固体電解質材料は低いヤング率を有し得る。無機固体電解質材料は、例えば、Li3.250.954、Li10GeP212、Li7311、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3およびLi2S−P22からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。無機固体電解質材料は、例えばLi3.250.954、Li10GeP212、Li7311およびLi9.54Si1.741.4411.7Cl0.3からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
無機固体電解質材料は、例えば76GPa以上96GPa以下のヤング率を有していてもよい。無機固体電解質材料は、例えば83GPa以上のヤング率を有していてもよい。無機固体電解質材料は、例えば88GPa以下のヤング率を有していてもよい。
第2粒子群が無機固体電解質材料を含む場合、中間層13は例えば10質量%以上60質量%以下の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば20質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば30質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば40質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば50質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。
第2粒子群が無機固体電解質材料を含む場合、第2粒子群に含まれる個々の粒子の形状は、特に限定されるべきではない。粒子の形状は例えば球状、針状、フレーク状等であってもよい。個々の粒子の形状は実質的に全て同一であってもよい。個々の粒子の形状は互いに異なっていてもよい。
(樹脂材料)
第2粒子群は樹脂材料を含んでいてもよい。第2粒子群は実質的に樹脂材料のみからなっていてもよい。樹脂材料は、金属酸化物材料に比して低いヤング率を有し得る。樹脂材料は、例えばポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。樹脂材料はPSを含んでいてもよい。
樹脂材料は、例えば金属酸化物材料のヤング率の1/20以上1/5以下(20分の1以上5分の1以下)のヤング率を有し得る。樹脂材料は、例えば0.4GPa以上4.2GPa以下のヤング率を有していてもよい。樹脂材料は、例えば2.7GPa以上のヤング率を有していてもよい。樹脂材料のヤング率は例えば3.5GPa程度であってもよい。
第2粒子群が樹脂材料を含む場合、中間層13は例えば5質量%以上30質量%以下の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば10質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。中間層13は例えば20質量%以上の第2粒子群を含んでいてもよい。
第2粒子群が樹脂材料を含む場合、第2粒子群のd50は、例えば第1粒子群のd50の1/5(5分の1)以下であってもよい。これにより第1粒子群の隙間を埋めるように、第2粒子群(樹脂材料)が充填され得る。その結果、中間層13の延性が大きくなることが期待される。第2粒子群は、例えば0.1μm以上2μm以下のd50を有していてもよい。第2粒子群は、例えば0.13μm以上のd50を有していてもよい。第2粒子群は、例えば0.76μm以下のd50を有していてもよい。第2粒子群は、例えば0.45μm以下のd50を有していてもよい。第2粒子群は、例えば0.2μm以下のd50を有していてもよい。
第2粒子群が樹脂材料を含む場合、第2粒子群に含まれる個々の粒子の形状は、特に限定されるべきではない。粒子の形状は例えば球状、針状、フレーク状等であってもよい。個々の粒子の形状は実質的に全て同一であってもよい。個々の粒子の形状は互いに異なっていてもよい。
《その他の成分》
中間層13は実質的に第1粒子群および第2粒子群のみからなっていてもよい。中間層13は第1粒子群および第2粒子群に加えて、例えば導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。
中間層13において、第1粒子群および第2粒子群の合計含量は、例えば70質量%以上99.2質量%以下であってもよい。例えば中間層13は、35質量%以上85質量%以下の第1粒子群と、10質量%以上60質量%以下の第2粒子群と、0.5質量%以上20質量%以下の導電材と、残部のバインダとを含んでいてもよい。
(導電材)
導電材は正極集電体11と正極活物質層12との間に電子伝導パスを形成する。導電材は特に限定されるべきではない。導電材は例えば粒子群であってもよい。導電材は、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック(AB)および黒鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば中間層13は0.5質量%以上のABを含んでいてもよい。これにより例えば本実施形態に好適な電子伝導パスが形成されることが期待される。中間層13は1.5質量%以上のABを含んでいてもよい。これにより例えば高負荷充放電時の抵抗増加率が低下することが期待される。
(バインダ)
バインダは中間層13に含まれる各成分を固定し得る。中間層13は例えば0.3質量%以上10質量%以下のバインダを含んでいてもよい。バインダは例えばフッ素含有高分子材料を含んでいてもよい。フッ素含有高分子材料としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が考えられる。バインダは例えばアクリル系高分子材料を含んでいてもよい。アクリル系高分子材料は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体が重合することにより形成された高分子材料を示す。バインダは、例えばPVDF、PTFE、アクリル系高分子材料、ポリアクリル酸(PAA)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
《正極活物質層》
正極活物質層12は中間層13の表面に配置されている。正極活物質層12は例えば50μm以上100μm以下の厚さを有していてもよい。正極活物質層12は正極活物質を少なくとも含む。正極活物質層12は正極活物質に加えて、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。例えば正極活物質層12は、80質量%以上99質量%以下の正極活物質と、0.1質量%以上10質量%以下の導電材と、残部のバインダとを含んでいてもよい。
正極活物質は典型的には粒子群である。正極活物質は例えば1μm以上30μm以下のd50を有していてもよい。正極活物質は特に限定されるべきではない。正極活物質は、例えばコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムおよびリン酸鉄リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
ニッケルコバルトアルミン酸リチウムは例えば下記式(I):
LiNix1Coy1Alz12 …(I)
〔ただし式中、x1、y1およびz1は、0.82≦x1≦0.95、0.01≦y1≦0.15、0.01≦z1≦0.15、x1+y1+z1=1を満たす。〕
で表される化合物を示す。x1は例えば0.88程度であってもよい。
ニッケルコバルトマンガン酸リチウムは例えば下記式(II):
LiNix2Coy2Mnz22 …(II)
〔ただし式中、x2、y2およびz2は、0.35≦x2≦0.95、0.01≦y2≦0.60、0.01≦z2≦0.60、x2+y2+z2=1を満たす。〕
で表される化合物を示す。
正極活物質層12に含まれる導電材は、特に限定されるべきではない。導電材は、例えばAB、ファーネスブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、チャンネルブラック、サーマルブラック、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
正極活物質層12に含まれるバインダは、特に限定されるべきではない。バインダは、例えばPVDF、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、PTFEおよびアクリル系高分子材料からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
<電池>
図3は本実施形態の電池の構成の一例を示す概略図である。
電池100はリチウムイオン電池である。電池100はケース80を含む。図3のケース80の形状は角形(扁平直方体)である。ただしケース80の形状は角形に限定されるべきではない。ケース80の形状は例えば円筒形等であってもよい。ケース80は例えばAl合金製であってもよい。ケース80は例えばAlラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
ケース80は外部端子81を有する。ケース80は、例えばCID(current interrupt device)、ガス排出弁、注液孔等をさらに有していてもよい。ケース80は電極群50および電解質(不図示)を収納している。電極群50は外部端子81と電気的に接続されている。
図4は本実施形態の電極群の構成の一例を示す概略図である。
電極群50は巻回型である。電極群50は、正極10、セパレータ30、負極20およびセパレータ30がこの順序で積層され、さらにこれらが渦巻状に巻回されることにより形成されている。すなわち電池100は正極10と負極20とを少なくとも含む。
正極10の詳細は前述のとおりである。正極10には前述の中間層13(図4では不図示)が含まれている。そのため電池100は、外部入力時の発熱量が小さいことが期待される。
電極群50は扁平状に成形されていてもよい。電極群50はスタック型であってもよい。すなわち電極群50は、正極10と負極20とが交互にそれぞれ1枚以上積層されることにより形成されていてもよい。正極10と負極20との各間にはセパレータ30がそれぞれ配置される。
《負極》
負極20はシート状の部品である。負極20は負極集電体21および負極活物質層22を含む。負極集電体21と負極活物質層22との間に、前述の中間層13が配置されていてもよい。負極20にも中間層13が含まれていることにより、外部入力時の発熱量が小さくなることが期待される。
負極集電体21は例えば銅(Cu)箔等であってもよい。負極集電体21は例えば5μm以上12μm以下の厚さを有していてもよい。負極集電体21は例えば5μm以上8μm以下の厚さを有していてもよい。
負極活物質層22は負極集電体21の表面に配置されている。負極活物質層22は負極集電体21の片面のみに配置されていてもよい。負極活物質層22は負極集電体21の表裏両面に配置されていてもよい。負極活物質層22は40μm以上125μm以下の厚さを有していてもよい。負極活物質層22は負極活物質を少なくとも含む。負極活物質層22は負極活物質に加えて、導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。例えば負極活物質層22は、80質量%以上99質量%以下の負極活物質と、0.1質量%以上10質量%以下の導電材と、残部のバインダとを含んでいてもよい。
負極活物質は典型的には粒子群である。負極活物質は例えば1μm以上30μm以下のd50を有していてもよい。負極活物質は特に限定されるべきではない。負極活物質は、例えば黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、アモルファス炭素および酸化珪素からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。負極活物質は、例えば複合材料を含んでいてもよい。複合材料は、例えば黒鉛と、該黒鉛の表面を被覆するアモルファス炭素とを含んでいてもよい。
負極活物質に酸化珪素(SiO)が含まれる場合、酸化珪素の含量は負極活物質全体に対して、例えば4質量%以上70質量%以下であってもよい。酸化珪素は予めリチウム(Li)がドープされていてもよい。リチウムドープ後の酸化珪素(LiSiO)に珪素(Si)は10mоl%以上80mоl%以下含まれていてもよい。
本実施形態において、容量比(正極容量に対する負極容量の比)は、例えば1.05以上2.2以下であってもよい。容量比は負極容量が正極容量で除されることにより算出される。負極容量は、負極20に含まれる負極活物質の合計質量と、該負極活物質の比容量との乗算により算出される。正極容量は、正極10に含まれる正極活物質の合計質量と、該正極活物質の比容量との乗算により算出される。
負極活物質層22に含まれる導電材は、特に限定されるべきではない。導電材は、例えばAB、ファーネスブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、チャンネルブラック、サーマルブラック、CNTおよびグラフェンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
負極活物質層22に含まれるバインダは、特に限定されるべきではない。バインダは、例えばCMCおよびスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
《セパレータ》
セパレータ30は多孔質膜である。セパレータ30は絶縁性を有する。セパレータ30は例えば単層構造を有していてもよい。例えばセパレータ30は、実質的にPE製の多孔質膜のみからなっていてもよい。単層構造のセパレータ30は例えば5μm以上30μm以下の厚さを有していてもよい。
セパレータ30は例えば多層構造を有していてもよい。例えばセパレータ30は、ポリプロピレン(PP)製の多孔質膜、PE製の多孔質膜およびPP製の多孔質膜がこの順序で積層されることにより形成されていてもよい。多層構造のセパレータ30は例えば10μm以上30μm以下の厚さを有していてもよい。多層構造のセパレータ30において、PP製の多孔質膜およびPE製の多孔質膜の各々は、例えば3μm以上10μm以下の厚さを有していてもよい。
セパレータ30の表面に例えば耐熱膜が形成されていてもよい。耐熱膜は例えば2μm以上12μm以下の厚さを有していてもよい。耐熱膜は耐熱材料を含む。例えば耐熱膜は、2質量%以上30質量%以下のバインダと、残部の耐熱材料とを含んでいてもよい。バインダは特に限定されるべきではない。バインダは、例えばアクリル系高分子材料、PVDF、PVDF−HFP、アラミド、SBRおよびPTFEからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。耐熱材料も特に限定されるべきではない。耐熱材料は例えば粒子群であってもよい。耐熱材料は、例えばベーマイト、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
なお同様の耐熱膜が正極活物質層12の表面にも形成されていてもよい。同様の耐熱膜が負極活物質層22の表面にも形成されていてもよい。
《電解質》
電解質はイオン伝導体である。本実施形態の電解質はリチウムイオン伝導体である。電解質は、液体電解質、ゲル電解質、固体電解質のいずれであってもよい。液体電解質は、例えば電解液、イオン液体等であってもよい。本明細書では電解質の一例として電解液が説明される。
電解液は溶媒および支持塩を含む。支持塩は溶媒に溶解している。支持塩の濃度は例えば0.5mоl/L以上2mоl/L以下(0.5M以上2M以下)であってもよい。支持塩は、例えばLiPF6、LiBF4、LiN(FSO22およびLiN(CF3SO22からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
溶媒は非プロトン性である。溶媒は、例えば環状カーボネートおよび鎖状カーボネートを含んでいてもよい。環状カーボネートおよび鎖状カーボネートの混合比は、例えば「環状カーボネート/鎖状カーボネート=1/9〜5/5(体積比)」であってもよい。環状カーボネートは、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)およびフルオロエチレンカーボネート(FEC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
鎖状カーボネートは、例えばジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
溶媒は、例えばラクトン、環状エーテル、鎖状エーテル、カルボン酸エステル等を含んでいてもよい。ラクトンは、例えばγ−ブチロラクトン(GBL)、δ−バレロラクトン(DVL)等を含んでいてもよい。環状エーテルは、例えばテトラヒドロフラン(THF)、1,3−ジオキソラン(DOL)、1,4−ジオキサン(DX)等を含んでいてもよい。鎖状エーテルは、1,2−ジメトキシエタン(DME)等を含んでいてもよい。カルボン酸エステルは、例えばメチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)等を含んでいてもよい。
電解液は、溶媒および支持塩に加えて、各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤の濃度は、例えば0.005mоl/L以上0.5mоl/L以下であってもよい。添加剤としては、例えばガス発生剤(いわゆる「過充電抑制剤」)、SEI(solid electrolyte interface)膜形成剤、難燃剤等が考えられる。
ガス発生剤は、例えばシクロヘキシルベンゼン(CHB)、ビフェニル(BP)等を含んでいてもよい。SEI膜形成剤は、例えばビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、LiB(C242、LiBF2(C24)、LiPF2(C242、LiPO22、プロパンサルトン、エチレンサルファイト(ES)等を含んでいてもよい。難燃剤は例えばホスファゼン等を含んでいてもよい。電解液に1種の添加剤が単独で含まれていてもよい。電解液に2種以上の添加剤が含まれていてもよい。
以下、本開示の実施例が説明される。ただし以下の説明は特許請求の範囲を限定するものではない。
<実験1>
《実施例A1》
実験1では、低ヤング率材料として無機固体電解質材料を含む中間層13が評価された。以下の材料が準備された。
第1粒子群:アルミナの粒子群(ヤング率=350GPa、d50=0.7μm)
第2粒子群:Li3.250.954の粒子群(ヤング率=83GPa)
導電材:AB
バインダ:PVDF
分散媒:NMP
正極集電体:Al箔(厚さ=15μm)
乾式混合により、第1粒子群、第2粒子群、導電材およびバインダが混合された。これにより粉体混合物が調製された。乾式混合は、液体が実質的に共存しない状態で、固体の粉体材料が混合されることを示す。混合比は「第1粒子群/第2粒子群/導電材/バインダ=75/20/3/2(質量比)」である。粉体混合物が分散媒に分散された。これにより分散液が調製された。分散液の固形分比率は40質量%である。固形分比率は、分散媒以外の成分の質量比率を示す。
ダイコータにより分散液が正極集電体11の表面(表裏両面)に塗布され、乾燥された。乾燥温度は80℃である。これにより中間層13が形成された。中間層13は4μmの厚さを有する。
正極活物質等を含む分散液が、中間層13の表面に塗布され、乾燥されることにより、正極活物質層12が形成された。圧延機により正極活物質層12が圧延された。正極活物質層12(片面)は75μmの厚さを有する。正極活物質層12の厚さは両面の合計で150μmである。以上より正極10が製造された。
さらに正極10を含む電池100が製造された。電池100は角形リチウムイオン電池である。電池100の構成は以下のとおりである。
(電池構成)
1.正極10
上記で製造されたもの
2.負極20
負極集電体21:Cu箔(厚さ=10μm)
負極活物質層22:片面の厚さ=80μm(両面の合計厚さ=160μm)
3.容量比
負極容量/正極容量=1.9
4.セパレータ30
多孔質膜:PE製、単層構造、厚さ=16μm
耐熱膜:ベーマイト/アクリル系高分子材料=96/4(質量比)、厚さ=5μm
5.電解質(電解液)
溶媒:EC/EMC/DMC=3/3/4(体積比)
支持塩:LiPF6(濃度=1.1mоl/L)
6.電極群50
構造:巻回型
幅寸法(図3のx軸方向の寸法):130mm
高さ寸法(図3のz軸方向の寸法):50mm
巻回テンション:0.35N/mm2以上4.3N/mm2以下
「巻回テンション」は巻回時にセパレータ30に加わる張力がセパレータ30の断面積で除された値を示す。
《実施例A2〜A5》
下記表1に示されるように、第1粒子群および第2粒子群の含量が変更されることを除いては、実施例A1と同様に、正極10および電池100が製造された。
《実施例A6およびA7》
下記表1に示される無機固体電解質材料が使用されることを除いては、実施例A1およびA3と同様に、正極10および電池100が製造された。
《実施例A8およびA9》
下記表1に示される無機固体電解質材料が使用されることを除いては、実施例A2と同様に、正極10および電池100が製造された。
《比較例A1》
下記表1に示されるように、第2粒子群(無機固体電解質材料)を含まない中間層13が形成されることを除いては、実施例A1と同様に、正極10および電池100が製造された。
《評価》
釘刺し試験により、外部入力時の発熱量(短絡時発熱量)が評価された。
電池100が充電された。電池100がデータロガーに接続された。データロガーは電圧測定機能および電流測定機能を有する。釘(ダイドーハント社製、丸釘、胴部径=3mm)が準備された。釘が電池100に刺し込まれた。電圧降下が確認された時点で、釘の刺し込みが停止された。釘の停止後、電圧上昇が検出されるまでの間、電圧および電流が測定された。電圧降下は短絡の発生を示すと考えられる。電圧降下後の電圧上昇は、短絡のジュール熱によって釘の周囲のAl箔(正極集電体11)が溶け広がり、短絡状態が解消されたことを示すと考えられる。電圧上昇が検出されるまでの間の電圧、電流および時間から、短絡時発熱量が算出された。「短絡時発熱量」は下記表1に示される。
Figure 0006806125
《結果》
実験1の低ヤング率材料は無機固体電解質材料である。上記表1に示されるように低ヤング率材料のヤング率は、金属酸化物材料のヤング率よりも低い。低ヤング率材料は96GPa以下のヤング率を有する。
上記表1に示されるように、実施例A1〜A9は、比較例A1に比して、発熱量が小さい。中間層13に第2粒子群(低ヤング率材料)が含まれていることにより、中間層13の延性が大きくなったためと考えられる。
第2粒子群のd50および低ヤング率材料のヤング率が一定である場合、第2粒子群の含量が多い程、発熱量が小さくなる傾向がみられる。第2粒子群の含量が多くなる程、中間層13の延性が大きくなるためと考えられる。
<実験2>
《実施例B1〜B5、比較例B1およびB2》
実験2では、低ヤング率材料として樹脂材料を含む中間層13が評価された。以下の材料が準備された。
第2粒子群:ポリスチレンの粒子群(粒子形状=球状、ヤング率=3.5GPa、d50=0.2μm)
実験1と同様に、下記表2の中間層13を含む正極10が製造された。さらに実験1と同様に正極10を含む電池100が製造された。下記表2〜4においてポリスチレンは「PS」と略記されている。比較例B1およびB2では、第2粒子群(低ヤング率材料)を含まない中間層13が形成されている。
《評価》
実験2では中間層13の延性が評価された。以下の要領で測定試料が作製された。
分散液が準備された。該分散液は、中間層13の原料となった分散液と実質的に同一組成を有する。分散液が正極集電体11の表面(表裏両面)に塗布され、乾燥されることにより、中間層13が形成された。中間層13の表面に正極活物質層12が形成された。正極活物質層12の目付量(単位面積あたりの質量)は、両面で400g/m2である。正極活物質層12が圧延されることにより、測定試料が作製された。測定試料は120μmの厚さを有する。
引張試験機により、5mm/minの速度で、測定試料が破断するまで、測定試料が引っ張られた。これにより破断伸び(破断時の伸び率)が測定された。結果は下記表2の「延性」の欄に示される。さらに実験1と同様に「短絡時発熱量」が測定された。結果は下記表2に示される。
Figure 0006806125
《結果》
実験2の低ヤング率材料は樹脂材料である。上記表2に示されるように低ヤング率材料のヤング率は、金属酸化物材料のヤング率よりも低い。
上記表2に示されるように、実施例B1〜B5は、比較例B1およびB2に比して、発熱量が小さい。中間層13に第2粒子群(低ヤング率材料)が含まれていることにより、中間層13の延性が大きくなったためと考えられる。
上記表2において、延性(破断伸び)が大きい程、発熱量が小さくなる傾向がみられる。また中間層13が厚くなる程、延性が大きくなる傾向がみられる。
<実験3>
《実施例B6〜B10》
実験3では第1粒子群(金属酸化物材料)の影響が評価された。
下記表3の中間層13を含む正極10が製造された。さらに実験1と同様に正極10を含む電池100が製造された。なお下記表3の第1粒子群のヤング率の欄において、「≧100」は「100以上」を示す。
《評価》
実験2と同様に破断伸びが測定された。結果は下記表3の「延性」の欄に示される。実験1と同様に「短絡時発熱量」が測定された。結果は下記表3に示される。
Figure 0006806125
上記表3の結果から、金属酸化物材料の材種が発熱量に及ぼす影響は小さいと考えられる。したがって金属酸化物材料は特に限定されるべきではない。
<実験4>
《実施例B11〜B14》
実験4では、第2粒子群(PSの粒子群)のd50の影響が評価された。
下記表4の中間層13を含む正極10が製造された。さらに実験1と同様に正極10を含む電池100が製造された。
《評価》
実験2と同様に破断伸びが測定された。結果は下記表4の「延性」の欄に示される。実験1と同様に「短絡時発熱量」が測定された。結果は下記表4に示される。
Figure 0006806125
《結果》
上記表4に示されるように、第2粒子群が樹脂材料を含む場合、第2粒子群のd50が小さい程、延性が大きくなり、発熱量が小さくなる傾向がみられる。第1粒子群の隙間を埋めるように第2粒子群が充填されるためと考えられる。
実施例B11は発熱量が特に小さい。実施例B11において、第2粒子群のd50は、第1粒子群のd50の1/5以下である。
本開示の実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。特許請求の範囲の記載によって確定される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
10 正極、11 正極集電体、12 正極活物質層、13 中間層、20 負極、21 負極集電体、22 負極活物質層、30 セパレータ、50 電極群、80 ケース、81 外部端子、100 電池、200 鋭利物。

Claims (5)

  1. 正極集電体、中間層および正極活物質層を含み、
    前記中間層は前記正極集電体と前記正極活物質層との間に配置されており、
    前記中間層は第1粒子群および第2粒子群を少なくとも含み、
    前記第1粒子群は金属酸化物材料を含み、
    前記金属酸化物材料は絶縁性を有し、
    前記第2粒子群は低ヤング率材料を含み、
    前記低ヤング率材料のヤング率は、前記金属酸化物材料のヤング率よりも低
    前記低ヤング率材料は、無機固体電解質材料を含み、
    前記無機固体電解質材料は硫化物を含む、
    正極。
  2. 正極集電体、中間層および正極活物質層を含み、
    前記中間層は前記正極集電体と前記正極活物質層との間に配置されており、
    前記中間層は第1粒子群および第2粒子群を少なくとも含み、
    前記第1粒子群は金属酸化物材料を含み、
    前記金属酸化物材料は絶縁性を有し、
    前記第2粒子群は低ヤング率材料を含み、
    前記低ヤング率材料のヤング率は、前記金属酸化物材料のヤング率よりも低く、
    前記低ヤング率材料は、樹脂材料を含み、
    前記樹脂材料はポリスチレンを含む、
    正極。
  3. 前記無機固体電解質材料はLi3.250.954、Li10GeP212、Li7311およびLi9.54Si1.741.4411.7Cl0.3からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
    請求項に記載の正極。
  4. 前記低ヤング率材料のヤング率は96GPa以下である、
    請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の正極。
  5. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の前記正極と、
    負極と、
    を少なくとも含む、
    電池。
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