本発明の多管式熱交換器について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、多管式熱交換器の第1実施形態を示すもので、図1(a)は容器軸心位置での概略断面図、図1(b)はバッフルの一部を拡大して示す図である。図2は、図1の多管式熱交換器の容器軸心に垂直な面での断面を示すもので、図2(a)は、図1(a)のA−A方向矢視図、図2(b)は、図1(a)のB−B方向矢視図である。図3は、本実施形態の多管式熱交換器における胴側流体の流通経路を示す模式図である。
本実施形態の多管式熱交換器は、図1(a)、図2(a)(b)に符号1で示すもので、円筒状の容器2を備える。本実施形態では、容器2は、容器2の軸心に沿う方向が上下方向となる姿勢に配置されている。容器2の軸心方向に沿う方向は、以下、容器軸心方向という。
容器2内の容器軸心方向の一端側となる個所(図1(a)では上端側の個所)には、管板3により仕切られた第1の流体としての管側流体F1の分配ヘッダ4が設けられている。容器2内の容器軸心方向の他端側となる個所(図1(a)では下端側の個所)には、別の管板5により仕切られた管側流体F1の集合ヘッダ6が設けられている。
容器2における各管板3と5の間に位置する円筒状の部分は胴7である。胴7の内側には、容器軸心方向に平行に配置された複数の伝熱管10による管群9が設けられている。なお、図1(a)に示した伝熱管10の数や、伝熱管10同士の間隔は、図示するための便宜上のものであり、実際の伝熱管10の数や伝熱管10同士の間隔を反映したものではない。また、図示する便宜上、図1(a)と図2(a)(b)とでは、伝熱管10の数や伝熱管10の配置は異なっている(後述する各実施形態の図においても同様)。
各伝熱管10の一端部は、管板3を介して分配ヘッダ4に連通接続されている。各伝熱管10の他端部は、管板5を介して集合ヘッダ6に連通接続されている。
容器2の軸心方向の一端部には、管側流体F1の入口11が、分配ヘッダ4に連通して設けられている。容器2の軸心方向の他端部には、管側流体F1の出口12が、集合ヘッダ6に連通して設けられている。
入口11の上流側には、図示しない管側流体F1の供給部が接続される。これにより、供給部より管側流体F1が供給されると、管側流体F1は、入口11を通して分配ヘッダ4に流入し、この分配ヘッダ4内から、管群9を形成している各伝熱管10内に供給される。各伝熱管10内に供給された管側流体F1は、各伝熱管10内を通過する間に、各伝熱管10の外面に接する後述の第2の流体としての胴側流体F2と、各伝熱管10の管壁を介して間接的に熱交換される。各伝熱管10内を通過した後の管側流体F1は、集合ヘッダ6で集合させられた後、出口12を通して容器2の外部へ取り出される。この容器2の外部へ取り出された管側流体F1は、出口12の下流側に接続された図示しない管側流体F1の需要先や回収部に送られるようにすればよい。
胴7の内側の空間部で且つ各伝熱管10の外側の領域は、胴側流体F2の流通領域8となる。
本実施形態の多管式熱交換器1は、流通領域8における容器軸心方向の複数個所、たとえば、2個所に、バッフル13aとバッフル13bとを備えた構成とされている。
各バッフル13a,13bは、流通領域8の容器軸心方向に垂直な面での断面形状を有する円板の中央部に、円形の開口部14a,14bを備えたリング状の構成とされている。各バッフル13a,13bは、外周部が全周に亘り容器2の胴7の内面に取り付けられている。
更に、各バッフル13a,13bは、管群9の各伝熱管10の配置に個別に対応する位置に、図1(b)に示すように、管挿通孔16を備えた構成とされている。各管挿通孔16には、対応する伝熱管10が挿通配置されている。
これにより、流通領域8には、容器軸心方向に、各バッフル13a,13bにより仕切られた3段の区画15a,15b,15cが形成されている。各区画15a,15b,15cは、説明の便宜上、容器軸心方向の一端側(図1(a)では上端側)に位置するものから順に、1段目の区画15a、2段目の区画15b、3段目の区画15cという。
1段目の区画15aと2段目の区画15bは、バッフル13aの開口部14aを介して、互いの中央部同士が連通している。また、2段目の区画15bと3段目の区画15cは、バッフル13bの開口部14bを介して、互いの中央部同士が連通している。
図3は、本実施形態の多管式熱交換器1における胴側流体F2の流通経路を示す模式図であり、容器2の胴7の部分について、容器軸心位置での断面を示してある。図3において、図1(a)(b)、図2(a)(b)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。なお、図3では、便宜上、容器2の胴7以外の部分、各バッフル13a,13bにおける管挿通孔16、各伝熱管10、および、後述する開口部17a,17b,17c、分散板19、入口20、入口21、出口22の記載は省略してある。
各区画15a,15b,15cにおける容器軸心方向に沿う方向の寸法を流路幅というものとする(後述する各実施形態においても同様)。
本実施形態では、図3に示すように、1段目の区画15aの流路幅と、3段目の区画15cの流路幅とが、同様の寸法Wに設定されている。また、2段目の区画の流路幅は、たとえば、1段目の区画15aの流路幅と3段目の区画15cの流路幅の2倍の寸法2Wに設定されている。
なお、前記した1段目と3段目の各区画15a,15cの流路幅同士の関連について、「同様の寸法」は、同一の寸法に厳密に限定されるものではなく、製造時の誤差など、本発明の効果が得られる範囲で許容される誤差を含んでいてもよい。
図1(a)、図2(a)(b)に示すように、胴7の周壁には、容器軸心方向における各区画15a,15b,15cとそれぞれ対応する個所に、開口部17a,17b,17cが、各区画15a,15b,15cに個別に連通した状態で設けられている。各開口部17a,17b,17cは、胴7の周方向に断続した状態で、周方向の全周に亘り設けられている。なお、図示しないが、各開口部17a,17b,17cは、周方向の全周に亘り連続して設けられた構成であってもよい。この場合は、胴7の周壁における各開口部17a,17b,17cの両側に位置する部分が後述する分散板19を介して繋がれる構成とすればよい。
各開口部17a,17b,17cの外側には、胴7の外周面に沿って延びる樋状のヘッダ部材18a,18b,18cが、周方向の全周に亘り各開口部17a,17b,17cを覆うように配置されて、胴7の外周面に取り付けられている。
更に、開口部17a,17b,17cには、分散板19が備えられている。分散板19は、開口部17a,17b,17cを胴側流体F2が通過するときに或る程度の圧力損失を生じさせて、胴側流体F2の周方向への分散を促すためのものである。分散板19は、前記の胴側流体F2の分散促進機能を備えていれば、多孔板、パンチングメタル、スリットを設けた板、メッシュを用いる構成など、任意の構成のものを採用してよい。
また、分散板19は、胴7の周壁に、内外方向に貫通する孔やスリットを穿設した構成としてもよい。この場合は、分散板19は胴7の周壁の一部であるため、各開口部17a,17b,17cは、実際の開口ではなく、胴7の周壁における孔やスリットが設けられた領域を指すものとなる。
本実施形態の多管式熱交換器1は、更に、ヘッダ部材18aとヘッダ部材18cには、周方向の1個所に、胴側流体F2の入口20,21を備え、ヘッダ部材18bには、周方向の1個所に、胴側流体F2の出口22を備えた構成とされている。
これにより、ヘッダ部材18aの内側の空間は、入口20から供給される胴側流体F2を、周方向に分散させてから、開口部17aを通して1段目の区画15aに流入させる分配ヘッダ23となる。同様に、ヘッダ部材18cの内側の空間は、入口21から供給される胴側流体F2を、周方向に分散させてから、開口部17cを通して3段目の区画15cに流入させる分配ヘッダ24となる。
一方、ヘッダ部材18bの内側の空間は、2段目の区画15bから開口部17bを通して流出する胴側流体F2を、集合させてから出口22へ導く集合ヘッダ25となる。
したがって、本実施形態では、胴側流体F2の流通領域8にバッフル13a,13bで仕切られて形成された3つの区画15a,15b,15cのうち、1段目の区画15aと3段目の区画15cとが、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する流入区画となり、2段目の区画15bが、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する流出区画となる。
なお、図2(a)(b)では、図示する便宜上、分散板19を周方向に均等な構造で示した。しかし、入口20、入口21(図1(a)参照)、出口22の周方向の配置と、胴側流体F2の流通方向などを考慮して、分散板19は、胴側流体F2が通過時に生じる圧力損失が、周方向に均一に分布していないものであってもよいことは勿論である。また、各開口部17a,17b,17cに備える各分散板19は、同一構成のものでもよいし、同一構成のものでなくてもよい。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1は、入口20に胴側流体F2が供給されると、胴側流体F2は、入口20から分配ヘッダ23に流入し、分配ヘッダ23で周方向に分散された後、開口部17aを通して1段目の区画15aの外周部に流入する。
1段目の区画15aでは、外周部に流入した胴側流体F2は、主として、バッフル13aに沿い1段目の区画15aの中央部に向けて流れる。よって、図1(a)、図2(a)、図3に示すように、1段目の区画15aでは、胴側流体F2の主流Maは、容器2の半径方向に沿って外周側から内周側に向かう管群直交流となる。
1段目の区画15aの中央部に達した胴側流体F2の主流Maは、バッフル13aの開口部14aを通して2段目の区画15bの中央部へ向かう流れとなる。
この際、1段目の区画15aでは、胴側流体F2の一部は、図1(b)に示すように、バッフル13aの各管挿通孔16の内面と、各伝熱管10の外面との間の隙間を通して2段目の区画15bへ流出するリークLaとなる。
また、本実施形態の多管式熱交換器1は、入口21に胴側流体F2が供給されると、胴側流体F2は、入口21から分配ヘッダ24に流入し、分配ヘッダ24で周方向に分散された後、開口部17cを通して3段目の区画15cの外周部に流入する。
3段目の区画15cでは、外周部に流入した胴側流体F2は、主として、バッフル13bに沿い3段目の区画15cの中央部に向けて流れる。よって、図1(a)、図3に示すように、3段目の区画15cでは、胴側流体F2の主流Mcは、容器2の半径方向に沿って外周側から内周側に向かう管群直交流となる。
3段目の区画15cの中央部に達した胴側流体F2の主流Mcは、バッフル13bの開口部14bを通して2段目の区画15bの中央部へ向かう流れとなる。
この際、3段目の区画15cでは、前記1段目の区画15aと同様に、胴側流体F2の一部は、バッフル13bの各管挿通孔(図示せず)の内面と、各伝熱管10(図1(a)参照)の外面との間の隙間を通して、図3に示すように2段目の区画15b側へ流出するリークLcとなる。
2段目の区画15bでは、中央部に、容器軸心方向の両側から、1段目の区画15aにおける胴側流体F2の主流Maと、3段目の区画15cにおける胴側流体F2の主流Mcとが流入する。2段目の区画15bの中央部に流入した胴側流体F2は、2段目の区画15b内で流通可能な方向が外周側の開口部17bに向かう方向に制限される。そのため、図1(a)、図2(b)、図3に示すように、2段目の区画15bでは、胴側流体F2の主流Mbは、容器2の半径方向に沿って内周側から外周側へ向かう管群直交流となる。
2段目の区画15bに形成される胴側流体F2の主流Mbには、前記各バッフル13a,13bを介して1段目と3段目の各区画15a,15cから流入するリークLa,Lcが合流される。その後、2段目の区画15bの外周部に達した胴側流体F2は、開口部17bを通して集合ヘッダ25に流入し、集合ヘッダ25で周方向に集合させられた後、出口22から排出される。
ここで、本明細書では、本発明の多管式熱交換器の構成を説明する便宜上、流通領域8に設けられた複数のバッフルのそれぞれを基準として、仮想のパスを、次のように定義する。
仮想のパスは、基準とされた1つのバッフルの一方の面側に形成された流入路と、該バッフルの開口部と、該バッフルの他方の面側に形成された流出路とを含む胴側流体F2の一連の流路であり、且つ、設定された流量、たとえば流量Qで流入路へ流入する胴側流体F2が、流出路から流量Qで流出する流路である。なお、前記バッフルを挟んだ配置の流入路と流出路との間では、流入路から流出路へのリークが生じるので、仮想のパスが前記のような一連の流路であるとしても、その途中では、胴側流体F2の流量はリークの発生量に応じて流量Qよりも低減する。
本実施形態の多管式熱交換器1では、流通領域8に設けられた2つのバッフル13a,13bのうち、バッフル13aを基準とする仮想のパスは、胴側流体F2が、バッフル13aの上面側の流入路である1段目の区画15aを流通した後、バッフル13aの開口部14aを通過して流れの向きが折り返され、次いで、バッフル13aの下面側の流出路である2段目の区画15bを流通する流路となる。このバッフル13aを基準とする仮想のパスの経路の概略は、図3では、主流Maの矢印と主流Mbの矢印とを開口部14aに配置された半円弧状の矢印で繋いだ線で示される。
また、バッフル13bを基準とする仮想のパスは、胴側流体F2が、バッフル13bの下面側の流入路である3段目の区画15cを流通した後、バッフル13bの開口部14bを通過して流れの向きが折り返され、次いで、バッフル13bの上面の流出路である2段目の区画15bを流通する流路となる。このバッフル13bを基準とする仮想のパスの経路の概略は、図3に、主流Mcの矢印と主流Mbの矢印とを開口部14bに配置された半円弧状の矢印で繋いだ線で示される。
したがって、各区画15a,15b,15cのうち、端部に位置する1段目の区画15aは、片側にのみバッフル13aが存在しているので、そのバッフル13aを基準とする1つの仮想のパスの流入路となっている。
同様に、端部に位置する3段目の区画15cは、片側にのみバッフル13bが存在しているので、そのバッフル13bを基準とする1つの仮想のパスの流入路となっている。
これに対し、中間部に位置する2段目の区画15bは、両側にバッフル13a,13bが存在している。そのため、2段目の区画15bは、バッフル13aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル13bを基準とする仮想のパスの流出路とが合わさったものであると見做すことができる。なお、仮想のパスは、あくまでも、本発明の多管式熱交換器の構成を説明するための仮想の流路であって、実際の2段目の区画15bにて、1段目の区画15aから流入する胴側流体F2と、3段目の区画15cから流入する胴側流体F2との混合が生じることに何ら問題はない。
このように、2段目の区画15bは、2つの仮想のパスの流出路が合わさったものであると考えられるため、2段目の区画15bの流路幅が寸法2Wとされているとしても、1つずつの仮想のパスの流出路は、流路幅が寸法Wとなる。
したがって、本実施形態では、バッフル13aを基準とする仮想のパス、および、バッフル13bを基準とする仮想のパスは、流入路の流路幅と流出路の流路幅との比率が1:1の設定とされている。
本実施形態の多管式熱交換器1では、1段目の区画15aに開口部17aから供給された胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに開口部17cから供給された胴側流体F2の圧力とが同様であれば、1段目の区画15aから2段目の区画15bへのリークLaによる流出と、3段目の区画15cから2段目の区画15bへのリークLcによる流出とが同様に生じる。
ここで、容器2における管群直交方向の位置を基準とする、管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布を、流量プロファイルという。本実施形態の多管式熱交換器1では、各区画15a,15b,15c内での胴側流体F2の流れは、容器2の半径方向に沿う方向となっている。したがって、本実施形態では、流量プロファイルは、容器2の半径方向の位置を基準とする管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布として求めることができる。
この流量プロファイルを各区画15a,15b,15cについて求めると、1段目の区画15aについての流量プロファイルと、3段目の区画15cについての流量プロファイルとは、同様になる。1段目と3段目の各区画15a,15cは、それぞれ1つの仮想のパスにのみ属する流入路であるため、1段目と3段目の各区画15a,15cについての流量プロファイルは、そのまま仮想のパス当たりの流量プロファイルとなる。
2段目の区画15bは、1段目と3段目の各区画15a,15cの主流Ma,Mcと、各区画15a,15cから流出するリークLa,Lcとが流入する。この際、容器2の半径方向のある位置について、1段目と3段目の各区画15a,15cにおけるリークLa,Lcによる管群直交流の流量の減少分は、2段目の区画15bにおける管群直交流の流量の増加分と一致する。2段目の区画15bでは、胴側流体F2の管群直交流の流量(流量の絶対値)は、1段目と3段目のそれぞれの区画15a,15cにおける管群直交流の流量(流量の絶対値)に比してほぼ2倍となっている。しかし、前記したように、2段目の区画15bは、2つの仮想のパスの流出路が合わさったものであると見做すことができるので、2段目の区画15bにおいても、仮想のパス当たりの流量プロファイルは、1段目と3段目の各区画15a,15cについての流量プロファイルと同様になる。
以上の点に鑑みて、本実施形態の多管式熱交換器1を使用する場合は、図1(a)に示すように、入口20と入口21に、入口20と入口21に供給する胴側流体F2の圧力を制御する機能を備えた供給手段26を接続して、熱交換システムを形成すればよい。
供給手段26は、たとえば、入口20に接続された供給ライン27と、入口21に接続された供給ライン28と、各供給ライン27,28の上流側に接続された共通のポンプ29とを備えている。更に、供給ライン27には、圧力制御弁30と、供給ライン27における圧力制御弁30よりも下流側、すなわち入口20側に設けられた圧力計などの圧力検出手段31とを備え、供給ライン28には、圧力制御弁32と、供給ライン28における圧力制御弁32よりも下流側、すなわち入口21側に設けられた圧力計などの圧力検出手段33とを備えた構成とされている。
本実施形態の多管式熱交換器1では、胴側流体F2が入口20から分配ヘッダ23、開口部17aの分散板19を経て1段目の区画15aに流入するときに生じる圧力損失は、設計情報に基づく数値計算や、試験などにより明らかにすることができる。同様に、胴側流体F2が入口21から分配ヘッダ24、開口部17cの分散板19を経て3段目の区画15cに流入するときに生じる圧力損失は、設計情報に基づく数値計算や試験などにより明らかにすることができる。
したがって、圧力検出手段31の検出結果からは、入口20から分配ヘッダ23を経て1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力の情報を得ることができる。また、圧力検出手段33の検出結果からは、入口21から分配ヘッダ24を経て3段目の区画15cに流入する胴側流体F2の圧力の情報を得ることができる。
そこで、供給手段26には、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに流入する胴側流体F2の圧力とが同様になるように、入口20へ供給する胴側流体F2の圧力の目標値と、入口21へ供給する胴側流体F2の圧力の目標値と、それぞれの目標値に対する誤差の許容範囲が設定される。
供給手段26では、圧力検出手段31による圧力の検出値と、圧力検出手段33による圧力の検出値とが、それぞれに設定された目標値からの許容誤差の範囲に収まるように、圧力制御弁30および圧力制御弁32が制御される。
あるいは、供給手段26は、圧力検出手段31による圧力の検出値と、圧力検出手段33による圧力の検出値の双方を監視して、圧力制御弁30と圧力制御弁32に適宜制御指令を与える図示しない制御手段を備えた構成としてもよい。供給手段26にこの種の制御手段を備えた場合は、たとえば、ポンプ29の運転状態を変化させるときにも、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに流入する胴側流体F2の圧力とを同様に制御することができる。
なお、図1(a)では、共通のポンプ29に接続された供給ライン27と供給ライン28に個別の圧力制御弁30,32を備えた構成を示したが、供給ライン27と供給ライン28に個別のポンプを備えた構成として、各圧力検出手段31,33の圧力の検出値に基づいて、各ポンプの吐出圧力を制御するようにしてもよい。
本実施形態では、更に、供給手段26で胴側流体F2を循環利用するため、ポンプ29の吸入側には、本実施形態の多管式熱交換器1の出口22が、胴側流体F2の回収ライン34を介して接続されている。ポンプ29の吐出側には、胴側流体F2と図示しない熱媒体とを熱交換させる熱交換器35が設けられている。したがって、本実施形態の多管式熱交換器1へ供給される胴側流体F2の温度は、熱交換器35で調整される。
たとえば、本実施形態の多管式熱交換器1が、胴側流体F2により管側流体F1を冷却する機能を備える場合は、熱交換器35は、入口20,21への供給時に比して温度上昇した状態で出口22から回収される胴側流体F2を対象として、その放熱を行わせる機能を備えるものとすればよい。
一方、本実施形態の多管式熱交換器1が、胴側流体F2により管側流体F1を加熱する機能を備える場合は、熱交換器35は、入口20,21への供給時に比して温度低下した状態で出口22から回収される胴側流体F2を対象として、その加熱を行う機能を備えるものとすればよい。
なお、図1(a)では、熱交換器35を、ポンプ29の吐出側に1つ備えた構成を例示したが、供給ライン27と供給ライン28に個別の熱交換器35を備える構成や、ポンプ29の吸入側に熱交換器35を備える構成としてもよいことは勿論である。
以上の構成としてある熱交換システムによれば、供給手段26のポンプ29の運転により、本実施形態の多管式熱交換器1の入口20と入口21に胴側流体F2を供給して、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cへ流入する胴側流体F2の圧力とを同様に制御することができる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1では、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフル13a,13bで仕切られて形成されて、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画15a,15b,15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
そのため、本実施形態の多管式熱交換器1は、胴側流体F2の流通経路に、従来の多管式熱交換器に存在していたような流量プロファイルが異なっていて熱交換能力が劣る区画を有しないものとすることができる。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1では、入口20に供給された胴側流体F2が容器2内で通るのは、1段目と2段目の2つの区画15a,15bのみである。同様に、入口21に供給された胴側流体F2が容器2内で通るのは、3段目と2段目の2つの区画15c,15bのみである。
そのため、本実施形態の多管式熱交換器1は、胴側流体F2の単位時間当たりの供給量が同じ場合、胴側流体F2が蛇行して流れる3段以上の区画を備えた従来の多管式熱交換器に比して、熱通過率の低下は小さく抑えつつ、胴側流体F2の圧力損失の低減化を図ることができる。このことは、後述する数値解析の結果から明らかである。
これにより、本実施形態の多管式熱交換器1は、供給手段26に備えて胴側流体F2の供給を行うポンプ29に必要とされるポンプ動力の低減化を図る場合に有利な構成とすることができる。
[第1実施形態の応用例]
第1実施形態の多管式熱交換器1は、2段目の区画15bを、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する流入区画とし、1段目の区画15aと3段目の区画15cを、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する流出区画としてもよい。
この場合は、図示しないが、ヘッダ部材18bに、胴側流体F2の入口を設け、ヘッダ部材18aとヘッダ部材18cに、胴側流体F2の出口を設けた構成とすればよい。これにより、ヘッダ部材18bの内側の空間が、入口から供給される胴側流体F2を、周方向に分散させてから、開口部17bを通して2段目の区画15bに流入させる分配ヘッダとなる。
一方、ヘッダ部材18aとヘッダ部材18cの内側の空間は、それぞれ対応する区画15a,15cから開口部17a,17cを通して流出する胴側流体F2を、集合させてから出口へ導く集合ヘッダとなる。
また、この場合、供給手段26は、図1(a)に示した構成において、ポンプの吸入側と吐出側とを入れ替えて、回収ライン34を胴側流体F2の供給ラインとして用い、供給ライン27,28を胴側流体F2の回収ラインとして用いる構成とすればよい。その際、圧力制御弁30,32は、圧力検出手段31,33で検出される背圧を制御することで、1段目の区画15aと3段目の区画15cの圧力が同様になるように制御する機能を備えるようにすればよい。
本応用例の構成によれば、2段目の区画15bに開口部17bから供給された胴側流体の主流は、図3に示した主流Mbとは逆の方向の流れとなる。すなわち、胴側流体F2の主流は、2段目の区画15bでは、容器2の半径方向に沿って外周側から内周側に向かう管群直交流となり、その後、各バッフル13a,13bの開口部14a,14bを通して1段目の区画15aと3段目の区画15cに流入し、該各区画15a,15cで容器2の半径方向に沿って内周側から外周側に向かう管群直交流となる。
この際、本応用例では、1段目の区画15aと3段目の区画15cの圧力が同様とされているため、2段目の区画15bから1段目の区画15aと3段目の区画15cとに分かれて流れる主流の流量は同様になる。更に、2段目の区画15bから1段目の区画15aへのリークによる流出と、2段目の区画15bから3段目の区画15cへのリークによる流出とが同様に生じる。
本応用例では、1段目の区画15aは、バッフル13aを基準とする1つの仮想のパスの流出路となる。同様に、3段目の区画15cは、バッフル13bを基準とする1つの仮想のパスの流出路となる。
また、2段目の区画15bは、バッフル13aを基準とする仮想のパスの流入路と、バッフル13bを基準とする仮想のパスの流入路とが合わさったものと見做すことができる。
よって、本応用例によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第2実施形態]
図4は、多管式熱交換器の第2実施形態を示すもので、図4(a)は、容器軸心位置での概略断面図、図4(b)は、仕切板の一部を拡大して示す図である。
なお、図4(a)(b)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図4(a)に符号1aで示すもので、第1実施形態と同様の構成に加えて、2段目の区画15bにおける容器軸心方向の中間部に、容器軸心方向に垂直な姿勢で配置された仕切板36を備えた構成としたものである。
仕切板36は、少なくとも、各バッフル13a,13bの開口部14a,14bよりも大きな円板形状として、容器2の軸心位置に、容器軸心方向に垂直な姿勢で配置された構成を備えることが好ましい。これは、1段目の区画15aからバッフル13aの開口部14aを通して2段目の区画15bに流入する胴側流体F2の流れが、仕切板36における開口部14aに臨む側の面に当たるようにして、流れの向きを径方向外向きとなる方向へ案内するためである。また、同様に、3段目の区画15cからバッフル13bの開口部14bを通して2段目の区画15bに流入する胴側流体F2の流れが、仕切板36における開口部14bに臨む側の面に当たるようにして、流れの向きを径方向外向きとなる方向へ案内するためである。
本実施形態では、仕切板36は、流通領域8の容器軸心方向に垂直な面での断面形状の円板に、図4(b)に示すように、管群9の各伝熱管10の配置に個別に対応する配置で管挿通孔37を備えた構成とされている。各管挿通孔37には、対応する伝熱管10が挿通配置されている。仕切板36は、外周部が全周に亘り容器2の胴7の内面に取り付けられている。
これにより、2段目の区画15bは、仕切板36によって容器軸心方向の一端側と他端側に分割された2つの分割流路38a,38bを備えた構成とされている。
したがって、本実施形態では、2段目の区画15bにおいて、分割流路38aは、バッフル13aを基準とする仮想のパスの流出路として機能し、分割流路38bは、バッフル13bを基準とする仮想のパスの流出路として機能するようになる。
なお、本実施形態では、前記したように仕切板36の外周部を胴7の内面に取り付けるようにしてある。そのため、胴7の周壁に設ける開口部17bは、各分割流路38a,38bの外周側に、仕切板36の取付位置を避けた配置で、容器軸心方向に2分割された分割開口部39a,39bとして設けられている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1aは、第1実施形態と同様に使用して、同様の効果を得ることができる。
また、1段目の区画15aと3段目の区画15cで胴側流体F2の圧力が同様となっているため、2段目の区画15bでは、1段目の区画15aから分割流路38aへの主流MaおよびリークLaによる流入と、3段目の区画15cから分割流路38bへの主流McおよびリークLcによる流入とが同様に生じる。したがって、分割流路38aと分割流路38bとでは、胴側流体F2の圧力がほぼ同様になる。
そのため、仕切板36には、各管挿通孔37の内面と、各伝熱管10の外面との間に隙間が存在しているが、この隙間を通過する胴側流体F2の流れはほとんど生じない。よって、2段目の区画15bでは、胴側流体F2は、仕切板36の両側の各分割流路38a,38bで円滑に案内されて、共に径方向外向きの流れとなる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1aによれば、2段目の区画15bにて、1段目の区画15aから流入する胴側流体F2の流れと、3段目の区画15cから流入する胴側流体F2の流れとを、互いに混合させることなく整流することができ、よって、胴側流体F2の流れについて、圧力損失の低減化を図ることができる。
なお、前述したように、分割流路38aと分割流路38bとでは圧力差がないため、仕切板36は、分割流路38aと分割流路38bとが連通する図示しない開口部を備える構成や、仕切板36の外周部と胴7の内面との間に隙間が存在するような構成であってもよい。なお、仕切板36を胴7の内面から離して設ける場合は、半径方向に沿って配置された支持部材を介して胴7の内面に支持させるか、あるいは、バッフル13a,13bの開口部14a,14bに通して配置した容器軸心方向に延びる支持部材を介して管板3,5に支持させるようにすればよい。このような構成としても、前記したと同様の効果を得ることができる。
[第3実施形態]
図5は、多管式熱交換器の第3実施形態として、第2実施形態の応用例を示すもので、容器軸心位置での概略断面図である。
なお、図5において、第2実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図5に符号1bで示すもので、第2実施形態と同様の構成において、2段目の区画15bの各分割流路38a,38bの外周側に共通の集合ヘッダ25を備えた構成に代えて、各分割流路38a,38bの外周側に、個別の集合ヘッダ40a,40bを備えた構成としたものである。
各分割開口部39a,39bの外側には、図5に示したヘッダ部材18a,18cと同様の出口42a,42bを備えたヘッダ部材41a,41bが個別に取り付けられている。これにより、各集合ヘッダ40a,40bは、各ヘッダ部材41a,41bの内側に形成されている。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1bは、各分配ヘッダ23,24の入口20,21と、各集合ヘッダ40a,40bの出口42a,42bに、図5に示す如き供給手段26aを接続して、熱交換システムが構成されている。
供給手段26aは、たとえば、入口21に接続された供給ライン28と、供給ライン28の上流側に接続されたポンプ43と、ポンプ43の吸入側と出口42aとを接続する回収ライン44を備え、更に、入口20に接続された供給ライン27と、供給ライン27の上流側に接続されたポンプ45と、ポンプ45の吸入側と出口42bとを接続する回収ライン46を備えた構成とされている。
各供給ライン27,28には、図1(a)に示したと同様の圧力制御弁30,32と圧力検出手段31,33とが設けられている。
更に、本実施形態の供給手段26aは、出口42aから回収される胴側流体F2が流通する供給ライン28にのみ、図1(a)に示したと同様の熱交換器35を備えた構成とされている。
以上の構成としてある熱交換システムを使用する場合は、第1実施形態で説明したと同様に、供給手段26aには、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに流入する胴側流体F2の圧力とが同様になるように、入口20へ供給する胴側流体F2の圧力の目標値と、入口21へ供給する胴側流体F2の圧力の目標値と、それぞれの目標値に対する誤差の許容範囲が設定される。この状態で、供給手段26aでは、各ポンプ43,45が運転される。
ポンプ43から吐出されて熱交換器35で温度調整された胴側流体F2は、供給ライン28を経て入口21へ供給される。入口21に供給された胴側流体F2は、分配ヘッダ24で周方向に分散された後、開口部17cを通して3段目の区画15cの外周部に流入する。
3段目の区画15cの外周部に流入した胴側流体F2の主流は、3段目の区画15cを径方向内向きに流れ、バッフル13bの開口部14bを経て分割流路38bに流入し、分割流路38bを径方向外向きに流れてから分割開口部39bに達する。この点は、第2実施形態と同様である。
その後、分割開口部39bに到達した胴側流体F2は、集合ヘッダ40bで集合させられた後に、出口42bから排出される。
出口42bから回収ライン46に回収された胴側流体F2は、ポンプ45の運転により昇圧された後、供給ライン27を経て、入口20へ供給される。
入口20に供給された胴側流体F2は、分配ヘッダ23で周方向に分散された後、開口部17aを通して1段目の区画15aの外周部に流入する。
1段目の区画15aの外周部に流入した胴側流体F2の主流は、1段目の区画15aを径方向内向きに流れ、バッフル13aの開口部14aを経て分割流路38aに流入し、分割流路38aを径方向外向きに流れてから分割開口部39aに達する。この点は、第2実施形態と同様である。
その後、分割開口部39aに到達した胴側流体F2は、集合ヘッダ40aで集合させられた後に、出口42aから排出される。
出口42aから回収された胴側流体F2は、回収ライン44を経てポンプ43に再び供給される。
このように、本実施形態では、熱交換器35で温度が調整された状態で入口21に供給される胴側流体F2を、先ず、3段目の区画15cおよび分割流路38bを流通させて、伝熱管10内を流通する管側流体F1と熱交換させることができる。この熱交換により温度が変化した胴側流体F2は、更に、1段目の区画15aおよび分割流路38aを流通させて、伝熱管10内を流通する管側流体F1との熱交換に利用することができる。
このような胴側流体F2の利用方式においても、供給手段26aでは、各圧力制御弁30,32および各圧力検出手段31,33を用いて、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cへ流入する胴側流体F2の圧力とを同様に制御することができる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1bによっても、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフル13a,13bで仕切られて形成され、胴側流体F2を管群直交流として流通させる1段目の区画15a、2段目の区画15bの各分割流路38a,38b、3段目の区画15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
[第4実施形態]
ところで、前記各実施形態は、胴7内の胴側流体F2の流通領域8に、容器軸心方向の2個所にバッフル13a,13bを備えて、胴側流体F2を管群直交流として流通させる区画を容器軸心方向に3段の区画15a,15b,15cとして備える構成を例示した。
これに対し、本発明の多管式熱交換器は、流通領域8に容器軸心方向に配列して設けるバッフルの数を増やして、胴側流体F2を管群直交流として流通させる区画を、容器軸心方向に4段以上で備える構成としてもよい。
図6は、多管式熱交換器の第4実施形態を示すもので、胴側流体の流通経路を示す模式図である。なお、図6では、図3と同様に構成の一部の記載を省略してある。
また、図6において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図6に符号1cで示すもので、胴7内の流通領域8について、容器軸心方向の4個所に、バッフル130a,130b,130c,130dを備える構成としたものである。
各バッフル130a,130b,130c,130dは、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、中央部に開口部140a,140b,140c,140dを備えたリング状の構成とされている。
これにより、流通領域8には、容器軸心方向に、各バッフル130a,130b,130c,130dにより仕切られた5段の区画150a,150b,150c,150d,150eが形成されている。各区画150a,150b,150c,150d,150eは、説明の便宜上、容器軸心方向の一端側(図6では上端側)に位置するものから順に、n段目(1,2,3…)という。
更に、各区画150a,150b,150c,150d,150eのうち、容器軸心方向の一端側から奇数番目の各区画150a,150c,150eは、外周側に、第1実施形態における分配ヘッダ23,24と同様の分配ヘッダ47,48,49を備えた構成とされている。
また、容器軸心方向の一端側から偶数番目の各区画150b,150dは、外周側に、第1実施形態における集合ヘッダ25と同様の集合ヘッダ50,51を備えた構成とされている。
これにより、本実施形態の多管式熱交換器1cは、1段目、3段目、5段目の各区画150a,150c,150eが、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する流入区画となり、2段目と4段目の各区画150b,150dが、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する流出区画となる。
また、本実施形態では、1段目と5段目の各区画150a,150eの流路幅が同様に設定され、この寸法をWとすると、残りの各区画150b,150c,150dの流路幅が寸法2Wとなるように設定されている。
したがって、本実施形態では、流入区画となる各区画150a,150c,150eのうち、端部に位置する1段目の区画150aは、片側にのみバッフル130aが存在しているので、そのバッフル130aを基準とする1つの仮想のパスの流入路となる。
同様に、端部に位置する5段目の区画150eは、片側にのみバッフル130dが存在しているので、そのバッフル130dを基準とする1つの仮想のパスの流入路となる。
これに対し、中間部に位置する3段目の区画150cは、両側にバッフル130b,130cが存在している。そのため、3段目の区画150cは、バッフル130bを基準とする仮想のパスの流入路と、バッフル130cを基準とする仮想のパスの流入路とが合わさったものであると見做すことができる。このように、3段目の区画150cは、2つの仮想のパスの流入路が合わさったものであると考えられるため、3段目の区画150cにおいても、1つの仮想のパス当たりの流入路の流路幅は、1段目および5段目の各区画150a,150eと同様の寸法Wになっている。
一方、流出区画となる2段目の区画150bは、両側にバッフル130a,130bが存在している。そのため、2段目の区画150bは、バッフル130aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル130bを基準とする仮想のパスの流出路とが合わさったものであると見做すことができる。
同様に、流出区画となる4段目の区画150dは、両側にバッフル130c,130dが存在している。そのため、4段目の区画150dは、バッフル130cを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル130dを基準とする仮想のパスの流出路とが合わさったものであると見做すことができる。
このように、2段目の区画150bと、4段目の区画150dは、いずれも2つの仮想のパスの流出路が合わさったものであると考えられるため、これらの各区画150b,150dの流路幅が寸法2Wとされているとしても、1つの仮想のパス当たりの流出路の流路幅は、寸法Wである。
したがって、本実施形態では、各バッフル130a,130b,130c,130dを基準とする仮想のパスは、それぞれ流入路の流路幅と流出路の流路幅との比率が1:1の設定となっている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1cは、流入区画となる各区画150a,150c,150eに供給される胴側流体F2の圧力が同様であれば、1段目の区画150aから2段目の区画150bへのリークによる流出と、3段目の区画150cから2段目の区画150bへのリークによる流出と、3段目の区画150cから4段目の区画150dへのリークによる流出と、5段目の区画150eから4段目の区画150dへのリークによる流出とが同様に生じる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1cによれば、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフル130a,130b,130c,130dで仕切られて形成されて、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画150a,150b,150c,150d,150eについて、第1実施形態と同様に、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
なお、本実施形態の多管式熱交換器1cは、図6に二点鎖線で示すように、2段目、3段目、4段目の各区画150b,150c,150dに、前記第2実施形態における仕切板36と同様の仕切板36を備えた構成としてもよい。
[第5実施形態]
図7は、多管式熱交換器の第5実施形態を示すもので、胴側流体の流通経路を示す模式図である。なお、図7では、図3と同様に構成の一部の記載を省略してある。
また、図7において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図7に符号1dで示すもので、胴7内の流通領域8について、容器軸心方向の3個所に、バッフル131a,131b,131cを備える構成としたものである。
各バッフル131a,131b,131cは、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、中央部に開口部141a,141b,141cを備えたリング状の構成とされている。
これにより、流通領域8には、容器軸心方向に、各バッフル131a,131b,131cにより仕切られた4段の区画151a,151b,151c,151dが形成されている。各区画151a,151b,151c,151dは、説明の便宜上、容器軸心方向の一端側(図7では上端側)に位置するものから順に、n段目(1,2,3…)という。
更に、各区画151a,151b,151c,151dのうち、容器軸心方向の一端側から奇数番目の各区画151a,151cは、外周側に、第1実施形態における分配ヘッダ23,24と同様の分配ヘッダ52,53を備えた構成とされている。
また、容器軸心方向の一端側から偶数番目の各区画151b,151dは、外周側に、第1実施形態における集合ヘッダ25と同様の集合ヘッダ54,55を備えた構成とされている。
これにより、本実施形態の多管式熱交換器1dは、1段目、3段目の各区画151a,151cが、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する流入区画となり、2段目と4段目の各区画151b,151dが、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する流出区画となる。
また、本実施形態では、1段目と4段目の各区画151a,151dの流路幅が同様に設定され、この寸法をWとすると、残りの各区画151b,151cの流路幅が寸法2Wとなるように設定されている。
したがって、本実施形態では、流入区画となる各区画151a,151cのうち、端部に位置する1段目の区画151aは、片側にのみバッフル131aが存在しているので、そのバッフル131aを基準とする1つの仮想のパスの流入路となる。
これに対し、中間部に位置する3段目の区画151cは、両側にバッフル131b,131cが存在している。そのため、3段目の区画151cは、バッフル131bを基準とする仮想のパスの流入路と、バッフル131cを基準とする仮想のパスの流入路とが合わさったものであると見做すことができる。このように、3段目の区画151cは、2つの仮想のパスの流入路が合わさったものであると考えられるため、3段目の区画151cにおいても、1つの仮想のパス当たりの流入路の流路幅は、1段目の区画151aと同様の寸法Wになっている。
一方、流出区画となる各区画151b,151dのうち、4段目の区画151dは、片側にのみバッフル131cが存在しているので、そのバッフル131cを基準とする1つの仮想のパスの流出路となる。
これに対し、中間部に位置する2段目の区画151bは、両側にバッフル131a,131bが存在している。そのため、2段目の区画151bは、バッフル131aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル131bを基準とする仮想のパスの流出路とが合わさったものであると見做すことができる。このように、2段目の区画151bは、2つの仮想のパスの流出路が合わさったものであると考えられるため、2段目の区画151bにおいても、1つの仮想のパス当たりの流出路の流路幅は、4段目の区画151dと同様の寸法Wになっている。
したがって、本実施形態では、各バッフル131a,131b,131cを基準とする仮想のパスは、それぞれ流入路の流路幅と流出路の流路幅との比率が1:1の設定となっている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1dは、流入区画となる各区画151a,151cに供給される胴側流体F2の圧力が同様であれば、1段目の区画151aから2段目の区画151bへのリークによる流出と、3段目の区画151cから2段目の区画151bへのリークによる流出と、3段目の区画151cから4段目の区画151dへのリークによる流出とが同様に生じる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1dによれば、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフル131a,131b,131cで仕切られて形成されて、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画151a,151b,151c,151dについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
なお、本実施形態の多管式熱交換器1dは、図7に二点鎖線で示すように、2段目、3段目の各区画151b,151cに、前記第2実施形態における仕切板36と同様の仕切板36を備えた構成としてもよい。
[第6実施形態]
前記各実施形態は、各バッフル13a,13b,130a〜130d,131a〜131cを基準とする仮想のパスについて、いずれも流入路の流路幅と流出路の流路幅との比率が1:1の設定とされた構成を例示した。
これに対し、本発明の多管式熱交換器は、各バッフルを基準とする仮想のパスについて、流入路の流路幅と流出路の流路幅の比率を、1:1以外の任意の設定とした構成としてもよい。
図8は、多管式熱交換器の第6実施形態として、第1実施形態の変形例を示すもので、胴側流体の流通経路を示す模式図である。なお、図8では、図3と同様に構成の一部の記載を省略してある。
また、図8において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図8に符号1eで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、バッフル13aを基準とする仮想のパス、および、バッフル13bを基準とする仮想のパスについて、流入路の流路幅と、流出路の流路幅との比率が、1:0.4に設定された構成を備えている。
本実施形態では、流入区画となる1段目と3段目の各区画15a,15cの流路幅が寸法Wに設定されている。
1段目の区画15aは、バッフル13aを基準とする仮想のパスにおける流入路である。したがって、このバッフル13aを基準とする仮想のパスにおける流出路の流路幅は0.4Wとなる。
また、3段目の区画15cは、バッフル13bを基準とする仮想のパスにおける流入路である。したがって、このバッフル13bを基準とする仮想のパスにおける流出路の流路幅も0.4Wとなる。
2段目の区画15bは、バッフル13aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル13bを基準とする仮想のパスの流出路とを合わせたものと見做すことができるものであり、よって、本実施形態では、2段目の区画15bの流路幅が0.8Wに設定されている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1eによっても、流入区画となる各区画15a,15cに供給される胴側流体F2の圧力が同様であれば、1段目の区画15aから2段目の区画15bへのリークによる流出と、3段目の区画15cから2段目の区画15bへのリークによる流出とが同様に生じる。
本実施形態では、前記のように各バッフル13a,13bを基準とする仮想のパスについて、流入路の流路幅と、流出路の流路幅が相違しているため、胴側流体F2の管群直交流の流速は、1段目および3段目の各区画15a,15cと、2段目の区画15bとでは相違する。しかし、容器2の半径方向のある位置について、1段目と3段目の各区画15a,15cにおけるリークLa,Lcによる管群直交流の流量の減少分は、2段目の区画15bにおける管群直交流の流量の増加分と一致する。よって、2段目の区画15bにおける仮想のパス当たりの流量プロファイルは、1段目と3段目の各区画15a,15cについての流量プロファイルと同様になる。したがって、本実施形態の多管式熱交換器1eによっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第7実施形態]
図9は、多管式熱交換器の第7実施形態として、第4実施形態の変形例を示す模式図である。
なお、図9において、第4実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図9に符号1fで示すもので、第4実施形態と同様の構成において、各バッフル130a,130b,130c,130dを基準とする仮想のパスについて、流入路の流路幅と、流出路の流路幅との比率が、1:0.75に設定された構成を備えている。
本実施形態では、バッフル130aを基準とする仮想のパスの流入路となる1段目の区画150aと、バッフル130dを基準とする仮想のパスの流入路となる5段目の区画150eの流路幅が寸法Wに設定されている。また、バッフル130bを基準とする仮想のパスの流入路と、バッフル130cを基準とする仮想のパスの流入路とが合わさったものと見做される3段目の区画150cの流路幅は、寸法2Wに設定されている。
このように、各バッフル130a,130b,130c,130dを基準とする仮想のパスは、流入路の流路幅が寸法Wとなる。したがって、各バッフル130a,130b,130c,130dを基準とする仮想のパスにおける流出路の流路幅は0.75Wとなる。
2段目の区画150bは、バッフル130aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル130bを基準とする仮想のパスの流出路とを合わせたものと見做すことができるものである。また、4段目の区画150dは、バッフル130cを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル130dを基準とする仮想のパスの流出路とを合わせたものと見做すことができるものである。よって、本実施形態では、2段目と4段目の各区画150b,150dの流路幅が1.5Wに設定されている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1fによっても、流入区画となる各区画150a,150c,150eに供給される胴側流体F2の圧力が同様であれば、1段目の区画150aから2段目の区画150bへのリークによる流出と、3段目の区画150cから2段目の区画150bへのリークによる流出と、3段目の区画150cから4段目の区画150dへのリークによる流出と、5段目の区画150eから4段目の区画150dへのリークによる流出とが同様に生じる。
本実施形態では、前記のように各バッフル130a,130b,130c,130dを基準とする仮想のパスについて、流入路の流路幅と、流出路の流路幅が相違しているため、胴側流体F2の管群直交流の流速は、1段目、3段目および5段目の各区画150a,150c,150eと、2段目および4段目の各区画150b,150dとでは相違する。しかし、各バッフル130a,130b,130c,130dを基準とする仮想のパスでは、容器2の半径方向のある位置にて、流入路で生じる対応するバッフル130a,130b,130c,130dを介したリークによる管群直交流の流量の減少分は、流出路での管群直交流の流量の増加分と一致する。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1fによれば、各区画150a,150b,150c,150d,150eについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができて、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第8実施形態]
図10は、多管式熱交換器の第8実施形態として、第5実施形態の変形例を示す模式図である。
なお、図10において、第5実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図10に符号1gで示すもので、第5実施形態と同様の構成において、各バッフル131a,131b,131cを基準とする仮想のパスについて、流入路の流路幅と、流出路の流路幅との比率が、1:0.75に設定された構成を備えている。
本実施形態では、バッフル131aを基準とする仮想のパスの流入路となる1段目の区画151aの流路幅が寸法Wに設定されている。また、バッフル131bを基準とする仮想のパスの流入路と、バッフル131cを基準とする仮想のパスの流入路とが合わさったものと見做される3段目の区画151cの流路幅は、寸法2Wに設定されている。
このように、各バッフル131a,131b,131cを基準とする仮想のパスは、流入路の流路幅が寸法Wとなる。したがって、各バッフル131a,131b,131cを基準とする仮想のパスにおける流出路の流路幅は0.75Wとなる。
2段目の区画151bは、バッフル131aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル131bを基準とする仮想のパスの流出路とを合わせたものと見做すことができるものである。よって、本実施形態では、2段目の区画151bの流路幅が1.5Wに設定されている。
また、4段目の区画151dは、バッフル131cを基準とする仮想のパスの流出路となる。よって、本実施形態では、4段目の区画151dの流路幅が0.75Wに設定されている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1gによっても、流入区画となる各区画151a,151cに供給される胴側流体F2の圧力が同様であれば、1段目の区画151aから2段目の区画151bへのリークによる流出と、3段目の区画151cから2段目の区画151bへのリークによる流出と、3段目の区画151cから4段目の区画151dへのリークによる流出とが同様に生じる。
本実施形態では、前記のように各バッフル131a,131b,131cを基準とする仮想のパスについて、流入路の流路幅と、流出路の流路幅が相違しているため、胴側流体F2の管群直交流の流速は、1段目および3段目の各区画151a,151cと、2段目および4段目の各区画151b,151dとでは相違する。しかし、各バッフル131a,131b,131cを基準とする仮想のパスでは、容器2の半径方向のある位置にて、流入路で生じる対応するバッフル131a,131b,131cを介したリークによる管群直交流の流量の減少分は、流出路での管群直交流の流量の増加分と一致する。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1gによれば、各区画151a,151b,151c,151dについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができて、第5実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第9実施形態]
前記各実施形態では、胴側流体F2の流通領域8に備える複数のバッフル13a,13b,130a〜130d、131a〜131cを、円板の中央部に円形の開口部14a,14b,140a〜140d、141a〜141cを備えてなるリング状の構成を有するものとしたが、バッフルは他の形状としてもよい。
図11は、多管式熱交換器の第9実施形態を示すもので、図11(a)は、容器軸心位置での概略断面図、図11(b)は、図11(a)のC−C方向矢視図、図11(c)は、図11(a)のD−D方向矢視図である。
なお、図11(a)(b)(c)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図11(a)(b)(c)に符号1hで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、バッフル132a,132bを、従来のシングルセグメンタル形式のバッフルと同様の構成としたものである。
すなわち、バッフル132a,132bは、流通領域8の容器軸心方向に垂直な面での断面形状を有する円板の周方向の一部を、弦に沿って切欠いた形状とされている。各バッフル132a,132bは、切欠き部分の周方向位置を揃えた姿勢として、外周部の円弧部分が容器2の胴7の内面に取り付けられている。
これにより、流通領域8には、第1実施形態と同様に、容器軸心方向に、各バッフル132a,132bにより仕切られた3段の区画15a,15b,15cが形成されている。
また、流通領域8の容器軸心方向におけるバッフル132aが取り付けられた個所には、バッフル132aの切欠き部分と、胴7の周壁とによって囲まれた内側に、1段目の区画15aと2段目の区画15bとが連通する開口部142aが形成されている。
更に、流通領域8の容器軸心方向におけるバッフル132bが取り付けられた個所には、バッフル132bの切欠き部分と、胴7の周壁とによって囲まれた内側に、2段目の区画15bと3段目の区画15cとが連通する開口部142bが形成されている。
本実施形態では、胴7の周壁に各区画15a,15b,15cに対応させて設ける各開口部17a,17b,17cは、容器2の軸心位置を中心として、各開口部142a,142bと対称配置となる周方向位置に設けられている。
また、各ヘッダ部材18a,18b,18cと、分配ヘッダ23、分配ヘッダ24、集合ヘッダ25は、前記各開口部17a,17b,17cの配置に対応する周方向配置として設けられている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1hによっても、1段目の区画15aに開口部17aから供給された胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに開口部17cから供給された胴側流体F2の圧力とを同様とすることにより、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画15a,15b,15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
なお、本実施形態では、各区画15a,15b,15cにおける胴側流体F2の管群直交流は、各開口部17a,17b,17cと、バッフル132a,132bにより形成された各開口部142a,142bとを結ぶ容器2の直径に平行な方向となる。そのため、前記流量プロファイルは、容器2における前記所定の直径に平行な方向の位置を基準として、管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布を示したものとすればよい。
[第10実施形態]
図12は、多管式熱交換器の第10実施形態を示すもので、図12(a)は、容器軸心位置での概略断面図、図12(b)は、図12(a)のE−E方向矢視図、図12(c)は、図12(a)のF−F方向矢視図である。
なお、図12(a)(b)(c)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図12(a)(b)(c)に符号1iで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、バッフル133a,133bを、従来のダブルセグメンタル形式のバッフルと同様の構成としたものである。
すなわち、バッフル133a,133bは、流通領域8の容器軸心方向に垂直な面での断面形状を有する円板を、一方向の直径に沿う位置で切欠いた形状とされている。各バッフル133a,133bは、切欠き部分の延びる方向を揃えた姿勢として、外周部の円弧部分が容器2の胴7の内面に取り付けられている。
これにより、流通領域8には、第1実施形態と同様に、容器軸心方向に、各バッフル133a,133bにより仕切られた3段の区画15a,15b,15cが形成されている。
また、流通領域8の容器軸心方向におけるバッフル133aが取り付けられた個所には、バッフル133aの切欠き部分と、胴7の周壁とによって囲まれた内側に、1段目の区画15aと2段目の区画15bとが連通する開口部143aが形成されている。
更に、流通領域8の容器軸心方向におけるバッフル133bが取り付けられた個所には、バッフル133bの切欠き部分と、胴7の周壁とによって囲まれた内側に、2段目の区画15bと3段目の区画15cとが連通する開口部143bが形成されている。
本実施形態では、胴7の周壁に各区画15a,15b,15cに対応させて設ける各開口部17a,17b,17cは、前記各開口部143a,143bが形成されている直径の方向から90度ずれた周方向位置に設けられている。
また、各ヘッダ部材18a,18b,18cと、分配ヘッダ23、分配ヘッダ24、集合ヘッダ25は、前記各開口部17a,17b,17cの配置に対応する周方向配置として設けられている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1iによっても、1段目の区画15aに開口部17aから供給された胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに開口部17cから供給された胴側流体F2の圧力とを同様とすることにより、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画15a,15b,15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
なお、本実施形態では、各区画15a,15b,15cにおける胴側流体F2の管群直交流は、各開口部17a,17b,17cと、バッフル133a,133bにより形成された開口部143a,143bとを結ぶ方向、すなわち、前記各開口部143a,143bの延びる方向とほぼ直交する方向になる。そのため、前記流量プロファイルは、容器2における前記所定の方向の位置を基準として、管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布を示したものとすればよい。
[第11実施形態]
図13は、多管式熱交換器の第11実施形態を示すもので、容器軸心位置での概略断面図である。
なお、図13において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図13に符号1jで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、管群9の各伝熱管10に、触媒56が充填された構成としてある。
更に、各伝熱管10に流通させる管側流体F1は、触媒56を介した触媒反応の対象とする反応原料および反応生成物としてのプロセス流体とし、流通領域8の各区画15a,15b,15cを流通させる胴側流体F2は、熱媒とした構成とされている。
なお、本実施形態の多管式熱交換器1jでは、熱媒として用いる胴側流体F2は、各伝熱管10の管内側におけるプロセス流体である管側流体F1の熱伝達率に比して管外側の熱伝達率が大きくなるように、密度、比熱、熱伝導率や流量が設定してあるものとする。また、熱媒としての胴側流体F2は、触媒反応が発熱反応の場合は、冷却媒体を用いるようにし、触媒反応が吸熱反応の場合は、加熱媒体を用いるようにすればよい。更に、熱媒としての胴側流体F2の種類は、触媒反応に所望される温度条件等に応じて適宜選定すればよい。
本実施形態の多管式熱交換器1jを使用する場合は、管側流体F1の入口11への供給と、胴側流体F2の入口20,21への供給を行う。
この際、1段目の区画15aに開口部17aから供給された胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに開口部17cから供給された胴側流体F2の圧力とが同様となるように、胴側流体F2の入口20,21への供給を制御する。
これにより、各伝熱管10の内部で、触媒56により反応原料より反応生成物を生成させる触媒反応が進行する。
この際、本実施形態の多管式熱交換器1jでは、第1実施形態と同様に、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画15a,15b,15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化が図られている。
このため、各伝熱管10に対しては、長手方向の全長に亘り、同様の熱交換能を得ることができる。
よって、本実施形態の多管式熱交換器1jでは、従来の多管式のリアクターで生じていたような、伝熱管10の長手方向中間部での熱交換能が低下するという問題を回避することができる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1jは、各伝熱管10で触媒反応を良好に進行させることが可能な多管式反応器として使用することができる。
なお、本実施形態のように各伝熱管10に触媒56を充填する構成は、前述の各実施形態に適用してもよいことは勿論である。
[胴側流体の流通経路のパターン]
ここで、前述の各実施形態および応用例から明らかとなる流通領域8における胴側流体F2の流通経路のパターンについて述べる。
本発明の多管式熱交換器は、容器2の胴7内における胴側流体F2の流通領域8に、容器軸心方向の複数個所に配置された複数のバッフルを備える。各バッフルは、管群9の各伝熱管10を挿通させる管挿通孔16を備えると共に、容器軸心方向に胴側流体F2を通す開口部を形成可能なものとする。これにより、流通領域8には、各バッフルで仕切られて、胴側流体F2を管群直交流として流通させる区画を、容器軸心方向に3区画以上の複数区画で備える。なお、バッフルは、前記開口部を形成できれば、リング状と欠円形状のいずれであってもよい。また、容器軸心方向に配列される区画の数は、奇数と偶数のいずれであってもよい。
容器軸心方向に配列された各区画は、胴側流体F2が容器2外から容器2内へ流入する流入区画と、胴側流体F2が容器2内から容器2外へ流出する流出区画とに交互に設定される。この際、容器軸心方向の一端側から奇数番目の区画を流入区画とし、且つ偶数番目の区画を流出区画とする構成と、容器軸心方向の一端側から奇数番目の区画を流出区画とし、且つ偶数番目の区画を流入区画とする構成のいずれを採用してもよい。
また、各区画の流路幅は、以下の2つの条件を満たすように設定される。
第1の条件は、各バッフルを基準とする仮想のパスにおける流入路の流路幅と、流出路の流路幅との比率が、一定に設定されるという条件である。前記各実施形態では、この比率について、1:1と、1:0.4と、1:0.75とする設定例を示したが、これら以外の任意の比率(x:y)に設定された構成でもよいことは勿論である。また、前記仮想のパスにおける流入路の流路幅と、流出路の流路幅との比率がx:yの場合、xとyは、x>y、x=y、x<yのいずれの条件であってもよいことは勿論である。
第2の条件は、各バッフルを基準とする仮想のパスは、流入路の流路幅同士、流出路の流路幅同士が同様に設定されるという条件である。
したがって、本発明の多管式熱交換器にて、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフルで仕切られて形成される複数の区画の流路幅は、一般化すると、以下のように設定される。なお、バッフルを基準とする仮想のパスにおける流入路の流路幅と、流出路の流路幅の比率は、x:yとする。
流通領域に形成される区画の数が奇数であって、容器軸心方向の一端側に位置するものからの順序で奇数番目の区画が流入区画の場合は、各区画の流路幅の比は、「x,2y,x」、「x,2y,2x,2y,x」、「x,2y,2x,…,2y,x」(…の部分は「2y,2x」の繰り返し)というように設定される。
また、流通領域に形成される区画の数が奇数であって、容器軸心方向の一端側に位置するものからの順序で奇数段目の区画が流出区画の場合は、各区画の流路幅の比は、「y,2x,y」、「y,2x,2y,2x,y」、「y,2x,2y,…,2x,y」(…の部分は「2x,2y」の繰り返し)というように設定される。
更に、流通領域に形成される区画の数が偶数の場合は、各区画の流路幅の比は、「x,2y,2x,y」、「x,2y,2x,…,y」(…の部分は「2y,2x」の繰り返し)というように設定される。
以上の構成を備えた本発明の多管式熱交換器によれば、各流入区画に供給された胴側流体F2の圧力を同様にすることにより、すべての区画について、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
また、以上の構成を備えた本発明の多管式熱交換器によれば、各流出区画の出口側での胴側流体F2の圧力(背圧)を同様にすることによっても、すべての区画について、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
なお、前記流路幅の寸法については、厳密に限定されるものではなく、製造時の誤差など、本発明の効果が得られる範囲で許容される誤差を含んでいてもよいことは勿論である。
更に、容器軸心方向の両端部に位置する区画以外の中間部の区画には、第2実施形態に示した仕切板36を備えた構成としてもよい。仕切板36を備える構成とする場合は、1つの区画内で仕切板36の両側に形成される2つの分割流路に対して、胴7の周壁に個別の開口部を備える構成としてもよい。また、このように各分割流路に対し個別の開口部を備える場合は、該各開口部に対して共通のヘッダを備える構成としてもよいし、個別のヘッダを備える構成としてもよい。
また、本発明は前述の各実施形態のみに限定されるものではなく、ヘッダ部材18a,18b,18cや、ヘッダ部材41a,41bを別々の部材とした構成を示したが、胴7の外面に沿って容器軸心方向に延びる樋状の部材の内部空間を仕切板で仕切ることで、容器軸心方向に分配ヘッダおよび集合ヘッダを適宜形成させる構成としてもよい。
流通領域8に設けるバッフルの数は、5以上としてもよい。したがって、流通領域8には、容器軸心方向に区画の数は、6以上としてもよい。
管群9における各伝熱管10の配列としては、三角配列を例示したが、図示した以外の規則配列や、その他、任意の配列を採用してもよい。また、各伝熱管10の径や本数、配列ピッチは適宜変更してよい。
容器2の軸心方向寸法と径寸法との比、容器2内における各管板3と5の設置位置、分配ヘッダ4と集合ヘッダ6の容積、各管板3と5同士の間隔、入口11と出口12の配置、各区画に対応して胴7の周壁に備える各開口部の容器軸心方向の寸法等は、管側流体F1と胴側流体F2の供給量や、温度条件等の熱交換処理に所望される種々の条件に応じて、図示したものから適宜変更してもよい。
管側流体F1および胴側流体F2は、ガスまたは液体のいずれであってもよい。
本発明の多管式熱交換器は、いかなる熱交換処理を行う熱交換器に適用してもよい。
本発明の多管式熱交換器は、容器2の軸心方向を、上下方向以外のいかなる方向に向けた姿勢で用いるようにしてもよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明の多管式熱交換器について、図14(a)に示した如き管路網の解析モデルSを設定して、胴側流体F2の圧力分布について管路網の解析手法による流動解析を行った。
図14(a)に示すように、解析モデルSは、胴側流体F2の流通領域8(図1(a)(b)参照)に、容器軸心方向にバッフル13a,13bにより仕切られて形成された3つの区画15a,15b,15cを備えた構成のものである。
更に、解析モデルSは、図5に示した第3実施形態の多管式熱交換器1bと同様に、区画15bには、仕切板36によって容器軸心方向に2分割された分割流路38a,38bを備えると共に、各分割流路38a,38bの外周側に個別の集合ヘッダ40a,40bを備えた構成としてある。これにより、区画15bについては、区画15aから主流とリークによる胴側流体F2の流入が生じる分割流路38aと、区画15cから主流とリークによる胴側流体F2の流入が生じる分割流路38bとを、独立した流路として取り扱うことができるようにしてある。
また、解析モデルSは、区画15aの外周側に分配ヘッダ23を備え、区画15cの外周側に分配ヘッダ24を備えた構成とされている。
図14(b)は、比較例の解析モデルScである。比較例は、従来の管群直交流形式の多管式熱交換器であって、胴側流体F2の流通領域に、容器軸心方向の3個所に胴側流体F2の流れ方向を変更するためのドーナツ状のバッフル2枚とディスク状のバッフル1枚を設けてなる4段流路構成としたものである。この比較例の構成について、管路網を設定して、上記と同様に、胴側流体F2の圧力分布について流動解析を行った。
図14(b)において、符号a1〜a4は、流通領域の上部と下部に設けられた2枚のドーナツ状のバッフルb1,b3とその間の1枚のディスク状のバッフルb2により仕切られて形成された1段目から4段目の流路を示している。また、符号cは、1段目の流路a1の外周部に設けられた胴側流体F2の分配ヘッダ、符号dは、4段目の流路a4の外周部に設けられた胴側流体F2の集合ヘッダである。
比較例の解析モデルScは、各段の流路a1〜a4の流路幅を、本発明の多管式熱交換器の解析モデルSにおける区画15a、分割流路38a、分割流路38b、区画15cの流路幅と同様に設定してある。また、本発明の多管式熱交換器の解析モデル、および、比較例の解析モデルを用いた流動解析では、伝熱管10(図5参照)の径、伝熱管10の配置、管ピッチ、本数、各バッフルの管挿通孔における伝熱管10との隙間、解析モデル全体に供給する胴側流体F2の流量の条件を同様に設定した。
なお、図14(a)(b)は、いずれも、左端が容器2(図5参照)の軸心位置を示し、右端側が容器2の外周部となっている。
図14(a)(b)において、図中の破線は管群9(図5参照)の設置領域を示している。また、図中の丸付きの数字は、圧力の観測位置となる節点の番号を示している。図14(a)(b)の図中の数字は、各節点間の流路番号を示している。なお、図14(a)において、流路22〜29,22´〜29´は、バッフル13a,13bの管挿通孔16(図1(b)参照)において管群9の伝熱管10との間に形成された隙間を通過するリークによる流路を示している。同様に、図14(b)において、流路42〜49、流路50〜57、流路58〜65は、バッフルb1、バッフルb2、バッフルb3の管挿通孔で生じるリークによる流路を示している。
なお、図14(a)に示した解析モデルSでは、仕切板36は、管挿通孔37(図4(b)参照)と伝熱管10と間に、図14(a)に一点鎖線で示すように、分割流路38aと分割流路38bの双方に連通する隙間が存在しているが、前述したように、この隙間を通過する胴側流体F2の流れはほとんど生じない。よって、図14(a)の解析モデルSは、仕切板36を通過する胴側流体F2の流れはゼロとおくことができ、よって、分配ヘッダ23、区画15a、分割流路38a、集合ヘッダ40aからなる系統の管路網と、分配ヘッダ24、区画15c、分割流路38b、集合ヘッダ40bからなる系統の管路網とを、個別に設定して数値解析を行うことができる。この際、各系統の管路網は、図14(a)に示すように、仕切板36を中心に対称な配置として設定することができる。よって、流動解析は、1つの系統の管路網について実施すればよい。
更に、本発明の多管式熱交換器の解析モデルSと、比較例の解析モデルScは、以下の式で定義されるすきま形状係数Zについて、Z=150とした条件と、Z=43とした条件の下で流動解析を行った。
Z=2t/(D−d)
ここで、tはバッフルの厚さ、Dは管挿通孔の径、dは伝熱管の径である。したがって、バッフルの厚さが一定の場合、Zの値が大きいほど管挿通孔における伝熱管との隙間が小さく、Zの値が小さいほど前記隙間が大きいことを表している。
なお、各解析モデルS,Scの全体に供給する胴側流体F2の流量の条件は、1500L/minとした。したがって、図14(a)の本発明の多管式熱交換器の解析モデルSでは、2つの系統の管路網に、それぞれ胴側流体F2が750L/minの流量で供給される。
更に、本発明の多管式熱交換器については、図示しないが、図6に示した第4実施形態の多管式熱交換器1cに、図6に二点鎖線で示した仕切板36を備えてなる構成に対応する解析モデルとして、前記図14(a)の解析モデルSの容器軸心方向の寸法を1/2とし、区画15a、分割流路38a、分割流路38b、区画15cの流路幅を1/2としたものを2段重ねた構成の解析モデルS1を設定し、この解析モデルS1についても流動解析を行った。この解析モデルS1では、管路網が4つの系統となるので、各系統の管路網に、それぞれ胴側流体F2が375L/minの流量で供給される設定とした。
本発明の多管式熱交換器の解析モデルSについての解析結果を、図15(a)(b)に示す。また、本発明の多管式熱交換器の別の解析モデルS1についての解析結果を、図16(a)(b)に示す。更に、比較例の解析モデルScについての解析結果を、図17(a)(b)に示す。
図15(a)、図16(a)、図17(a)は、解析モデルS,S1,Scにおける胴側流体F2の圧力分布の解析結果をそれぞれ示すものである。なお、グラフの縦軸は、胴側流体F2の圧力の値であり、胴側流体F2の流路出口側の圧力(図14(a)では節点21,21´、図14(b)では節点41)の圧力値を基準値(=0)としてある。また、横軸は、管群9の設置領域を半径方向の0.25〜1.0の範囲となるように設定して無次元化した値である。
図15(a)、図16(a)、図17(a)における「□」はZ=150の条件による結果であり、「●」はZ=43の条件による結果である。
図15(a)、図16(a)の解析結果と、図17(a)の解析結果とについて、「□」同士の比較、および、「●」同士の比較により、Z=150とZ=43のいずれの条件によっても、本発明の多管式熱交換器によれば、比較例の多管式熱交換器に比して圧力損失を大幅に低減できることが分かる。
図15(b)、図16(b)、図17(b)は、解析モデルS,S1,Scにおける半径方向位置を基準として、胴側流体F2の管群直交流の流量分布、すなわち、流量プロファイルの解析結果をそれぞれ示すものである。なお、グラフの縦軸は、管群直交流の流量を、1つの系統の管路網に流入する胴側流体F2の流量Qinを基準値として無次元化した値である。なお、本発明の多管式熱交換器の解析モデルSでは、Qin=750L/minである。本発明の多管式熱交換器の別の解析モデルS1では、Qin=375L/minである。比較例の解析モデルScでは、Qin=1500L/minである。また、グラフの横軸は、容器2内の半径を基準として無次元化した値である。
ここで、先ず、図17(b)の解析結果について説明する。図17(b)では、比較例の解析モデルScにおける1段目の流路a1の流量分布を実線で示し、2段目の流路a2の流量分布を破線で示し、3段目の流路a3の流量分布を一点鎖線で示し、4段目の流路a4の流路分布を二点鎖線で示している。
図17(b)の結果から明らかなように、比較例の解析モデルScでは、2段目と3段目の各流路a2,a3における管群直交流の流量分布は、1段目と4段目の各流路a1,a4における管群直交流の流量分布とは明らかに相違することが分かる。また、2段目と3段目の各流路a2,a3における管群直交流の流量の絶対値が、1段目と4段目の各流路a1,a4に比して小さくなっていることも分かる。この結果は、Z=150とZ=43のいずれの場合も同様の傾向となる。
これに対し、図15(b)の結果からは、図14(a)の構成を有する本発明の多管式熱交換器の解析モデルSによれば、胴側流体F2が分配ヘッダ23、区画15a、分割流路38a、集合ヘッダ40aからなる系統の管路網を流通するときには、区画15aでの流量分布と、分割流路38aでの流量分布とが同様となることが分かる。また、胴側流体F2が分配ヘッダ24、区画15c、分割流路38b、集合ヘッダ40bからなる系統の管路網を流通するときには、区画15cでの流量分布と、分割流路38bでの流量分布とが同様となることが分かる。この結果は、Z=150とZ=43のいずれの場合も同様の傾向となる。
また、図16(b)の結果からは、本発明の多管式熱交換器の別の解析モデルS1によっても、胴側流体F2が各系統の管路網を流通するときには、その系統に属する区画と分割流路のそれぞれでの流量分布が同様となることが分かる。この結果は、Z=150とZ=43のいずれの場合も同様の傾向となる。
なお、図示しないが、前記本発明の多管式熱交換器の解析モデルS、および、本発明の多管式熱交換器の別の解析モデルS1の構成から仕切板36を省略した構成においても、同様の結果が得られた。
したがって、図15(b)、図16(b)の結果からは、本発明の多管式熱交換器によれば、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフルで仕切られて形成されて、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画について、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができることが判明した。
前記本発明の多管式熱交換器の解析モデルS、および、本発明の多管式熱交換器の別の解析モデルS1について、伝熱管10と管内側を流通させる管側流体F1との間の熱伝達率(管内側の熱伝達率)h1、及び、伝熱管10と管外側を流通させる胴側流体F2との間の熱伝達率(管外側の熱伝達率)h2と、管側流体F1と胴側流体F2との伝熱管10の管壁を介した熱通過率Kについて数値解析した。
なお、熱通過率Kの算出は、次式に基づいて行った。
また、比較として、前記比較例の解析モデルScについても、同様の数値解析を行った。
解析条件は、伝熱管10には触媒が充填され、管側流体F1がガスであると想定して、管内側の管側流体F1が、管外側の胴側流体F2に比して熱伝達率が低くなるように設定した。また、入口流量一定で比較を行った。伝熱管10は、30mm径、600本とした。容器2は、半径を約1000mmとし、各段の流路幅(流路高)は200mmとした。更に、1/4ケーキカットモデル(1/4円モデル)について、解析評価を行った。
その解析結果として、Z=43の条件の結果を表1に示し、Z=150の条件の結果を表2に示す。なお、表1、表2では、各熱伝達率h1およびh2と、熱通過率Kについては、前記各解析モデルS,S1と、比較例の解析モデルScに共通している伝熱管10内に流通させる管側流体F1側の熱伝達率(管内側の熱伝達率)h1の解析結果の値を基準となる1とおいて、前記各項目の解析結果を規格化している。
以上の結果から明らかなように、本発明の多管式熱交換器によれば、比較例に比して、熱通過率Kの低下は小さく抑えられていることが分かる。