JP2019105418A - 多管式熱交換器および熱交換システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 胴側流体の流通経路の全体に亘り流速の均一化を図る。【解決手段】 多管式熱交換器1は、胴側流体F2の流通領域8に、伝熱管10の管群9を備える。流通領域8には、容器軸心方向の2個所でリング状のバッフル13a,13bにより仕切られた3つの区画15a,15b,15cを形成する。区画15aと区画15cは、胴側流体F2が容器内に流入する流入区画とし、区画15bは、胴側流体F2が容器外へ流出する流出区画とする。バッフル13a,13bは、副通路17を、開口部14a,14bに近い領域に、遠い領域に比して数多く備える構成とする。これにより、区画15a,15cの圧力を同様とすることで、各区画15a,15cから区画15bへの主流およびリークによる胴側流体F2の流入を同様にし、更に、副通路17を通過する分岐流れを内周側で多くすることにより、管群直交流の内周側での増速を抑制する。【選択図】図1
Description
本発明は、複数の伝熱管内を流通させる流体と、各伝熱管の外側を流通させる別の流体との熱交換を行う多管式熱交換器、および、熱交換システムに関するものである。
熱交換器の一つとしては、多管式熱交換器が知られている。
また、多管式熱交換器型の反応器として、多管式反応器が知られている。この多管式反応器は、多管式熱交換器の構成を基本として、伝熱管内に触媒が充填された構成を更に備えたものである。よって、多管式反応器は、多管式熱交換器の一種と捉えることができる。
多管式熱交換器の一般的な構成は、容器(シェル)の胴内に、平行に配置された複数の伝熱管による管群が設けられている。各伝熱管の一端側と他端側には、管側流体の分配ヘッダと集合ヘッダがそれぞれ接続されている。
容器の胴には、胴側流体の入口と出口が設けられ、胴内における各伝熱管の外側の領域が、胴側流体の流通領域とされている。
胴側流体の流通領域には、伝熱管の長手方向の複数個所に、バッフル(邪魔板、そらせ板とも称する)が備えられている。
バッフルとしては、シングルセグメンタル形式のバッフルや、ダブルセグメンタル形式のバッフルが広く用いられている。また、ディスク状(円板状)のバッフルとドーナツ状(リング状)のバッフルとを交互に配置したディスクアンドドーナツ形式といわれるバッフルも用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
これらのバッフルを備えた多管式熱交換器は、胴側流体の流通領域に、バッフルによって仕切られた複数段の区画が形成され、胴側流体は、各バッフルで流れの向きが180度折り返されながら各区画を順に流れる。したがって、各区画では、胴側流体の流れの方向が、常に各伝熱管の長手方向に直交する方向の流れ、すなわち、管群直交方向の流れとなって各伝熱管に当たるようになる。以下、胴側流体の管群直交方向の流れは、管群直交流という。
この状態で、多管式熱交換器は、管群の各伝熱管内を流通させる管側流体と、シェルの胴内で前記各伝熱管の外面に接する胴側流体との間で熱交換を行うようにしてある。この際、多管式熱交換器としての多管式反応器の場合は、管群の各伝熱管内を流通させる管側流体が伝熱管に充填された触媒の存在下で触媒反応するときの温度が、各伝熱管の外面に接する胴側流体との熱交換によってコントロールされる。
ところで、バッフルは、管群の各伝熱管の配置に応じた位置に個別の管挿通孔が穿設され、各管挿通孔に各伝熱管が挿通された構成となっている。そのため、バッフルでは、管挿通孔の内周面と、伝熱管の外周面との間に隙間が形成されている。
胴側流体の流通経路では、胴側流体の流通時の圧力損失に伴い、流通経路の上流側から下流側に向けて、胴側流体の圧力が徐々に低下する。
したがって、バッフルを挟んで隣接する2つの区画の間では、胴側流体の流通経路の上流側に位置する区画から下流側に位置する区画へ、前記隙間を通過する胴側流体の流れ、所謂リークが生じる。
なお、バッフルは、通常、全面に亘り均一な厚み寸法を備えており、各管挿通孔は均一な径で設けられている。そのため、各管挿通孔で形成されている前記隙間は、胴側流体のリークに関わる流路断面積および流路長が、すべての管挿通孔で同様になっている。
そのため、個々の管挿通孔の位置で生じるリークの流量の大小は、管挿通孔の一方の開口部側での胴側流体の圧力と、他方の開口部側での胴側流体の圧力との圧力差の大小に依存して決まる。
多管式熱交換器が、胴側流体の流通領域に2枚以上のバッフルによって仕切られた3段以上の区画を備え、3段以上の区画により胴側流体が蛇行して流れる一連の流通経路が構成されている場合は、各区画で生じるリークは以下のようになる。
流通経路の最上流側の区画では、下流側の隣接区画へのリークによる流出のみが生じる。流通経路の最下流側の区画では、上流側の隣接区画からのリークによる流入のみが生じる。
これに対し、流通経路の最上流側と最下流側とを除く中間部の区画では、上流側の隣接区画からのリークによる流入と、下流側の隣接区画に対するリークによる流出とが同時に生じる。したがって、中間部の区画では、管群直交流の流量の絶対値は、最上流側の区画や最下流側の区画に比して小さくなる。
更に、それぞれの区画内では、前記流通経路に沿い上流側に位置する部分である上流側領域から、下流側に位置する部分である下流側領域に向けて、胴側流体の圧力の低下が生じている。
中間部の区画における上流側領域は、上流側の隣接区画における下流側領域と、下流側の隣接区画における下流側領域とに、それぞれバッフルを介して隣接している。中間部の区画における下流側領域は、上流側の隣接区画における上流側領域と、下流側の隣接区画における上流側領域とに、それぞれバッフルを介して隣接している。
そのため、中間部の区画では、区画内で上流側から下流側へ行くにしたがって、上流側の隣接区画との圧力差が増大する。よって、中間部の区画は、区画内で上流側から下流側へ行くにしたがって、上流側の隣接区画からのリークによる流入量が増加する。
また、中間部の区画では、区画内で上流側から下流側へ行くにしたがって、下流側の隣接区画との圧力差が減少する。よって、中間部の区画は、区画内で上流側から下流側へ行くにしたがって、下流側の隣接区画へのリークによる流出量が減少する。
したがって、中間部の区画は、管群直交流に対してリークによる流入と流出とが混在して生じ、しかも、区画内の上下流方向で、リークによる流入量と、リークによる流出量がそれぞれ変化する。
ここで、各区画について、容器における管群直交方向の位置を基準とする、管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布を、流量プロファイルという。
最上流側の区画についての流量プロファイルと、最下流側の区画についての流量プロファイルとは、おおよそ同様の傾向になる。しかし、管群直交方向の位置の変化に応じて、管群直交流の流速には差が生じてしまう。
更に、中間部の区画では、管群直交流の流量の絶対値が、最上流側の区画や最下流側の区画に比して小さくなっている。そのため、中間部の区画は、流量プロファイルが、最上流側の区画や最下流側の区画についての流量プロファイルとは明らかに異なる。しかも、中間部の区画でも、管群直交方向の位置の変化に応じて、管群直交流の流速には変化が生じてしまう。
そのため、中間部の区画は、最上流側の区画や最下流側の区画に比して、熱交換能が劣っている。特に、多管式熱交換器の一種である多管式反応器では、伝熱管の長手方向の中間部での発熱量が長手方向の両端部よりも大きくなることが多いが、前記のように胴側流体の流通領域に複数のバッフルで仕切られた3段以上の区画が形成され、この3段以上の区画が一連に繋がる胴側流体の流通経路とされた構成の場合は、伝熱管を冷却したい部分での冷却能が低下していることになる。
更に、多管式熱交換器では、各区画における管群直交流の上流側となる領域と、下流側となる領域についても、胴側流体の流速の差に起因する熱交換能の差が生じてしまう。
そこで、本発明は、胴側流体の流通領域に、複数のバッフルで仕切られて胴側流体を管群直交流として流通させる区画を3段以上備える形式の多管式熱交換器において、胴側流体の流速を、胴側流体の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる多管式熱交換器、および、該多管式熱交換器を備える熱交換システムを提供しようとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために、容器と、前記容器内に該容器の一端側から他端側に延びる方向に沿って配置されて、第1の流体を流通させる伝熱管の管群と、前記容器内における前記管群の各伝熱管の外側に設けられた第2の流体の流通領域とを備え、前記第2の流体の流通領域には、前記各伝熱管を挿通させる管挿通孔と開口部と副通路を備えた複数のバッフルで仕切られて形成されて、前記第2の流体が管群直交流として流通する区画を、3区画以上の複数区画で備え、前記複数区画は、前記第2の流体が前記容器の外部から内部へ流入する流入区画と、前記第2の流体が前記容器の内部から外部へ流出する流出区画とに交互に設定され、更に、前記バッフルは、片面側の前記流入区画における前記第2の流体の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記管挿通孔と前記伝熱管との隙間と、前記副通路とを合わせた前記第2の流体に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成を備えた、多管式熱交換器とする。
前記バッフルは、片面側の前記流入区画における前記第2の流体の流通方向の上流側から、下流側に向けて、或る領域に存在している前記隙間の流路断面積の和と、該領域に存在している前記副通路の流路断面積の和との合計値が、順次大きくなる構成としてある。
前記複数区画のうち、両端部の区画を除く中間部の区画内に、前記伝熱管の長手方向に垂直な姿勢で配置された仕切板を備えた構成としてある。
また、前記構成を備えた多管式熱交換器と、前記多管式熱交換器に第2の流体を供給する供給手段とを備え、前記供給手段は、前記多管式熱交換器に前記第2の流体を供給する各供給ライン、または、前記多管式熱交換器から前記第2の流体を回収する各回収ラインに、圧力制御弁を備える構成を有する熱交換システムとする。
本発明の多管式熱交換器および熱交換システムによれば、胴側流体の流通領域に、複数のバッフルで仕切られて胴側流体を管群直交流として流通させる区画を3段以上備える形式の多管式熱交換器において、胴側流体の流速を、胴側流体の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる。
本発明の多管式熱交換器について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、多管式熱交換器の第1実施形態を示すもので、図1(a)は容器軸心位置での概略断面図、図1(b)はバッフルの一部を拡大して示す図である。図2は、図1の多管式熱交換器の容器軸心に垂直な面での断面を示すもので、図2(a)は、図1のA−A方向矢視図、図2(b)は、図1のB−B方向矢視図である。図3は、バッフルの構成を示すもので、バッフルの四半円の部分を容器軸心方向の片側から見た拡大図である。図4は、本実施形態の多管式熱交換器における胴側流体の流通経路を示す模式図である。
図1は、多管式熱交換器の第1実施形態を示すもので、図1(a)は容器軸心位置での概略断面図、図1(b)はバッフルの一部を拡大して示す図である。図2は、図1の多管式熱交換器の容器軸心に垂直な面での断面を示すもので、図2(a)は、図1のA−A方向矢視図、図2(b)は、図1のB−B方向矢視図である。図3は、バッフルの構成を示すもので、バッフルの四半円の部分を容器軸心方向の片側から見た拡大図である。図4は、本実施形態の多管式熱交換器における胴側流体の流通経路を示す模式図である。
本実施形態の多管式熱交換器は、図1(a)、図2(a)(b)に符号1で示すもので、円筒状の容器2を備える。本実施形態では、容器2は、容器2の軸心に沿う方向が上下方向となる姿勢に配置されている。容器2の軸心方向に沿う方向は、以下、容器軸心方向という。
容器2内の容器軸心方向の一端側となる個所(図1(a)では上端側の個所)には、管板3により仕切られた第1の流体としての管側流体F1の分配ヘッダ4が設けられている。容器2内の容器軸心方向の他端側となる個所(図1(a)では下端側の個所)には、別の管板5により仕切られた管側流体F1の集合ヘッダ6が設けられている。
容器2における管板3と管板5の間に位置する円筒状の部分は胴7である。胴7の内側には、容器軸心方向に平行に配置された複数の伝熱管10による管群9が設けられている。なお、図1に示した伝熱管10の数や、伝熱管10同士の間隔は、図示するための便宜上のものであり、実際の伝熱管10の数や伝熱管10同士の間隔を反映したものではない。また、図示する便宜上、図1(a)と図2(a)(b)、更に、後述する図3では、伝熱管10の数や伝熱管10の配置は異なっている(後述する各実施形態の図においても同様)。
各伝熱管10の一端部は、管板3を介して分配ヘッダ4に連通接続されている。各伝熱管10の他端部は、管板5を介して集合ヘッダ6に連通接続されている。
容器2の軸心方向の一端部には、管側流体F1の入口11が、分配ヘッダ4に連通して設けられている。容器2の軸心方向の他端部には、管側流体F1の出口12が、集合ヘッダ6に連通して設けられている。
入口11の上流側には、図示しない管側流体F1の供給部が接続される。これにより、供給部より管側流体F1が供給されると、管側流体F1は、入口11を通して分配ヘッダ4に流入し、この分配ヘッダ4内から、管群9を形成している各伝熱管10内に供給される。各伝熱管10内に供給された管側流体F1は、各伝熱管10内を通過する間に、各伝熱管10の外面に接する後述の第2の流体としての胴側流体F2と、各伝熱管10の管壁を介して間接的に熱交換される。各伝熱管10内を通過した後の管側流体F1は、集合ヘッダ6で集合させられた後、出口12を通して容器2の外部へ取り出される。この容器2の外部へ取り出された管側流体F1は、出口12の下流側に接続された図示しない管側流体F1の需要先や回収部に送られるようにすればよい。
胴7の内側の空間部で且つ各伝熱管10の外側の領域は、胴側流体F2の流通領域8となる。
本実施形態の多管式熱交換器1は、流通領域8における容器軸心方向の複数個所、たとえば、2個所に、バッフル13aとバッフル13bとを備えた構成とされている。
各バッフル13a,13bは、流通領域8の容器軸心方向に垂直な面での断面形状を有する円板の中央部に、円形の開口部14a,14bを備えたリング状の構成とされている。各バッフル13a,13bは、外周部が、容器2の胴7の内面に、周方向の複数個所で溶接などにより取り付けられて支持されている。
これにより、流通領域8には、容器軸心方向に、各バッフル13a,13bにより仕切られた3段の区画15a,15b,15cが形成されている。各区画15a,15b,15cは、説明の便宜上、容器軸心方向の一端側(図1(a)では上端側)に位置するものから順に、1段目の区画15a、2段目の区画15b、3段目の区画15cという。
1段目の区画15aと2段目の区画15bは、バッフル13aの開口部14aを介して、互いの中央部同士が連通している。また、2段目の区画15bと3段目の区画15cは、バッフル13bの開口部14bを介して、互いの中央部同士が連通している。
各バッフル13a,13bは、管群9の各伝熱管10の配置に個別に対応する位置に、図1(b)、図3に示すように、管挿通孔16を備えた構成とされている。各管挿通孔16には、図1(b)、図3に示すように、対応する伝熱管10が挿通配置されている。なお、図3では、便宜上、図中で下端寄りに配置された一列の管挿通孔16についてのみ、挿通配置された伝熱管10を示し、その他の管挿通孔16については、伝熱管10の記載を省略してある。
更に、各バッフル13a,13bは、図3に示すように、各管挿通孔16とは干渉しない位置に、板厚方向に貫通する副通路17を、設定された配置で穿設した構成を備えている。したがって、各バッフル13a,13bでは、各管挿通孔16の位置で生じるリークとは別に、各副通路17の位置で、1段目と3段目の各区画15a,15cから各副通路17を通過して2段目の区画15bへ流入する胴側流体F2の流れが形成される。この副通路17の詳細については後述する。
本実施形態では、図4に、本実施形態の多管式熱交換器1における胴側流体F2の流通経路を模式的に示すように、胴側流体F2の流通領域8にバッフル13a,13bで仕切られて形成された3つの区画15a,15b,15cのうち、1段目の区画15aと3段目の区画15cとが、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する区画に設定されている。2段目の区画15bは、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する区画に設定されている。以下、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する区画は、流入区画といい、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する区画は、流出区画という。
なお、図4は、容器2の胴7の部分について、容器軸心位置での断面を示している。図4において、図1(a)(b)、図2(a)(b)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。また、図4では、便宜上、容器2の胴7以外の部分、各バッフル13a,13bにおける管挿通孔16、各伝熱管10、および、後述する開口部18a,18b,18c、分散板20、入口21、入口22、出口23の記載は省略してある。
各区画15a,15b,15cにおける容器軸心方向に沿う方向の寸法を流路幅というものとする(後述する各実施形態においても同様)。
本実施形態では、図4に示すように、1段目の区画15aの流路幅と、3段目の区画15cの流路幅とが、同様の寸法Wに設定されている。また、2段目の区画の流路幅は、1段目の区画15aの流路幅と、3段目の区画15cの流路幅とを足した寸法となる2Wに設定されている。
なお、前記した1段目と3段目の各区画15a,15cの流路幅同士の関連について、「同様の寸法」は、同一の寸法に厳密に限定されるものではなく、製造時の誤差など、本発明の効果が得られる範囲で許容される誤差を含んでいてもよい。同様に、寸法Wと2Wとの比についても、本発明の効果が得られる範囲で許容される誤差を含んでいてもよい。
図1(a)、図2(a)(b)に示すように、胴7の周壁には、容器軸心方向における各区画15a,15b,15cとそれぞれ対応する個所に、開口部18a,18b,18cが、各区画15a,15b,15cに個別に連通した状態で設けられている。各開口部18a,18b,18cは、胴7の周方向に断続した状態で、周方向の全周に亘り設けられている。なお、図示しないが、各開口部18a,18b,18cは、周方向の全周に亘り連続して設けられた構成であってもよい。この場合、胴7の周壁は、各開口部18a,18b,18cの部分で周方向の全周に亘り切り欠かれると、周壁が容器軸心方向に分断された状態になってしまう。よって、この場合は、それぞれの開口部18a,18b,18cの容器軸心方向の一端側と他端側に位置している胴7の周壁同士を、各開口部18a,18b,18cに配置される、後述する分散板20を介して、繋いだ構成とすればよい。
各開口部18a,18b,18cの外側には、胴7の外周面に沿って延びる樋状のヘッダ部材19a,19b,19cが、周方向の全周に亘り各開口部18a,18b,18cを覆うように配置されて、胴7の外周面に取り付けられている。
更に、開口部18a,18b,18cには、分散板20が備えられている。分散板20は、開口部18a,18b,18cを胴側流体F2が通過するときに或る程度の圧力損失を生じさせて、胴側流体F2の周方向への分散を促すためのものである。分散板20は、前記の胴側流体F2の分散促進機能を備えていれば、多孔板、パンチングメタル、スリットを設けた板、メッシュを用いる構成など、任意の構成のものを採用してよい。
また、分散板20は、胴7の周壁に、内外方向に貫通する孔やスリットを穿設した構成としてもよい。この場合は、分散板20は胴7の周壁の一部であるため、各開口部18a,18b,18cは、実際の開口ではなく、胴7の周壁における孔やスリットが設けられた領域を指すものとなる。
更に、ヘッダ部材19aとヘッダ部材19cには、周方向の1個所に、胴側流体F2の入口21,22を備え、ヘッダ部材19bには、周方向の1個所に、胴側流体F2の出口23を備えた構成とされている。
これにより、ヘッダ部材19aの内側の空間は、入口21から供給される胴側流体F2を、容器2の外部で周方向に分散させてから、開口部18aを通して1段目の区画15aの外周部に流入させる分配ヘッダ24となる。同様に、ヘッダ部材19cの内側の空間は、入口22から供給される胴側流体F2を、容器2の外部で周方向に分散させてから、開口部18cを通して3段目の区画15cの外周部に流入させる分配ヘッダ25となる。
一方、ヘッダ部材19bの内側の空間は、2段目の区画15bの外周部から開口部18bを通して容器2の外部へ流出する胴側流体F2を、集合させてから出口23へ導く集合ヘッダ26となる。
したがって、1段目の区画15aと3段目の区画15cは、それぞれ、容器2外部の分配ヘッダ24,25から胴側流体F2が容器2内へ流入する流入区画となり、2段目の区画15bは、流出区画となる。
なお、図2(a)(b)では、図示する便宜上、分散板20を周方向に均等な構造で示した。しかし、入口21、入口22(図1(a)参照)、出口23の周方向の配置と、胴側流体F2の流通方向などを考慮して、分散板20は、胴側流体F2が通過時に生じる圧力損失が、周方向に均一に分布していないものであってもよいことは勿論である。また、各開口部18a,18b,18cに備える各分散板20は、同一構成のものでもよいし、同一構成のものでなくてもよい。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1は、各バッフル13a,13bにて、流入区画である第1の区画15aおよび第3の区画15cにおける胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側の開口部14a,14bに向けて、管挿通孔16と伝熱管10との隙間(以下、単に隙間という)と、副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成を備えている。
なお、この構成は、各バッフル13a,13bを基準にすると、本実施形態の多管式熱交換器1は、各バッフル13a,13bにて、開口部14a,14bからの距離が大となるにしたがって、隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が、順次大きくなる構成を備えている、と表現することもできる。
バッフル13a,13bにおける隙間と副通路17を通過する胴側流体F2について考えると、これらの隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が大きくなるほど、胴側流体F2の通過流量は、少なくなる。一方、隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が小さくなるほど、胴側流体F2の通過流量は、多くなる。
ここで、隙間の流路断面積は、管挿通孔16の断面積と、伝熱管10の断面積との差である。本実施形態では、各管挿通孔16の径が一定で、且つ各伝熱管10の径が一定の構成として、各隙間の流路断面積は一定とする。
また、隙間と副通路17の流路長は、各バッフル13a,13bの厚さに依存している。本実施形態では、各バッフル13a,13bが全面に亘り均一な厚さを有するものとして、各隙間と各副通路17の流路長は一定とする。
この条件の下では、或る領域に存在している各隙間の流路断面積の和をXaとし、同じ領域に存在している副通路17の流路断面積の和をXbとすると、該領域における胴側流体F2に対する流動抵抗の大小は、Xa+Xbの値を用いて評価することができる。すなわち、Xa+Xbの値が大きくなるほど流動抵抗は小さくなり、Xa+Xbの値が小さくなるほど流動抵抗は大きくなる。
そこで、本実施形態の多管式熱交換器1は、各バッフル13a,13bにて、流入区画である第1の区画15aおよび第3の区画15cにおける胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記Xa+Xbの値が順次大きくなる構成を備えている。
具体的には、本実施形態における各バッフル13a,13bは、図3に示すように、中央部に円形の開口部14a,14bを備えたリング状の構成とされている。また、第1の区画15aと第3の区画15c(図1(a)、図2(a)、図4参照)は、外周部に流入した胴側流体F2が開口部14a,14bに向けて半径方向に沿って内向きに流通する区画となっている。
よって、本実施形態では、図3に示すように、各バッフル13a,13bに対し、開口部14a,14bからの距離が大きくなるにしたがって、すなわち、本実施形態では、半径方向に沿い内周側から外周側へ、複数の同心円状の領域R1,R2,R3を並べて複数設定する。更に、各バッフル13a,13bは、たとえば、最も外周寄りの領域R3、その内周側に位置する領域R2、更に内周側に位置する領域R1の順に、副通路17の数が次第に多くなる構成としてある。
なお、図3では、一例として、各バッフル13a,13bは、領域R3における副通路17の数がゼロとなる構成を示しているが、領域R3に、領域R2よりも少ない数で副通路17を備えた構成としてもよいことは勿論である。
また、図3では、図示する便宜上、半径方向に3つの領域R1,R2,R3のみを示したが、実際の多管式熱交換器1では、容器2の径は図に比して大幅に大きく、また、伝熱管10の半径方向に配列される本数も多いので、半径方向に設定する円周状の領域の数は実機のサイズに応じて自在に変更してよい。この際、同心円状に設定する領域の半径方向の寸法を幅広く取れば、副通路17の数の変化は半径方向にステップ状の変化になるが、円周状の領域の半径方向の寸法を狭く設定すれば、副通路17の数の変化はほぼ連続的になる。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1は、入口21に胴側流体F2が供給されると、胴側流体F2は、入口21から分配ヘッダ24に流入し、分配ヘッダ24で周方向に分散された後、開口部18aを通して1段目の区画15aの外周部に流入する。
1段目の区画15aでは、外周部に流入した胴側流体F2は、主として、バッフル13aに沿い1段目の区画15aの中央部に向けて流れる。よって、図1(a)、図2(a)、図4に示すように、1段目の区画15aでは、胴側流体F2の主流Maは、容器2の半径方向に沿って外周側から内周側に向かう管群直交流となる。
1段目の区画15aの中央部に達した胴側流体F2の主流Maは、バッフル13aの開口部14aを通して2段目の区画15bの中央部へ向かう流れとなる。
この際、1段目の区画15aでは、胴側流体F2の一部は、図4に示すように、バッフル13aの各管挿通孔16の内面と、各伝熱管10の外面との間の隙間を通して2段目の区画15bへ流出するリークLaとなる。
更に、本実施形態では、1段目の区画15aを流通する胴側流体F2は、その一部がバッフル13aの副通路17を通る分岐流れNaとなって2段目の区画15bへ流出する。
また、本実施形態の多管式熱交換器1は、入口22に胴側流体F2が供給されると、胴側流体F2は、入口22から分配ヘッダ25に流入し、分配ヘッダ25で周方向に分散された後、開口部18cを通して3段目の区画15cの外周部に流入する。
3段目の区画15cでは、外周部に流入した胴側流体F2は、主として、バッフル13bに沿い3段目の区画15cの中央部に向けて流れる。よって、図1(a)、図4に示すように、3段目の区画15cでは、胴側流体F2の主流Mcは、容器2の半径方向に沿って外周側から内周側に向かう管群直交流となる。
3段目の区画15cの中央部に達した胴側流体F2の主流Mcは、バッフル13bの開口部14bを通して2段目の区画15bの中央部へ向かう流れとなる。
この際、3段目の区画15cでは、前記1段目の区画15aと同様に、胴側流体F2の一部は、バッフル13bの各管挿通孔(図示せず)の内面と、各伝熱管10(図1(b)参照)の外面との間の隙間を通して、図4に示すように2段目の区画15b側へ流出するリークLcとなる。
更に、本実施形態では、3段目の区画15cを流通する胴側流体F2は、その一部がバッフル13bの副通路17を通る分岐流れNcとなって2段目の区画15bへ流出する。
2段目の区画15bでは、中央部に、容器軸心方向の両側から、1段目の区画15aにおける胴側流体F2の主流Maと、3段目の区画15cにおける胴側流体F2の主流Mcとが流入する。2段目の区画15bの中央部に流入した胴側流体F2は、2段目の区画15b内で流通可能な方向が外周側の開口部18bに向かう方向に制限される。そのため、図1(a)、図2(b)、図4に示すように、2段目の区画15bでは、胴側流体F2の主流Mbは、容器2の半径方向に沿って内周側から外周側へ向かう管群直交流となる。
2段目の区画15bに形成される胴側流体F2の主流Mbには、前記各バッフル13a,13bを介して1段目と3段目の各区画15a,15cから流入するリークLa,Lcと分岐流れNa,Ncとが合流される。その後、2段目の区画15bの外周部に達した胴側流体F2は、開口部18bを通して集合ヘッダ26に流入し、集合ヘッダ26で周方向に集合させられた後、出口23から排出される。
ここで、本明細書では、本発明の多管式熱交換器の構成を説明する便宜上、流通領域8に設けられた複数のバッフルのそれぞれを基準として、仮想のパスを、次のように定義する。
仮想のパスは、基準とされた1つのバッフルの一方の面側に形成された流入路と、該バッフルの開口部と、該バッフルの他方の面側に形成された流出路とを含む胴側流体F2の一連の流路であり、且つ、設定された流量、たとえば流量Qで流入路へ流入する胴側流体F2が、流出路から流量Qで流出する流路である。なお、前記バッフルを挟んだ配置の流入路と流出路との間では、流入路から流出路へのリークと分岐流れが生じるので、仮想のパスが前記のような一連の流路であるとしても、その途中では、胴側流体F2の流量はリークと分岐流れの発生量に応じて流量Qよりも低減する。
本実施形態の多管式熱交換器1では、流通領域8に設けられた2つのバッフル13a,13bのうち、バッフル13aを基準とする仮想のパスは、胴側流体F2が、バッフル13aの上面側の流入路である1段目の区画15aを流通した後、バッフル13aの開口部14aを通過して流れの向きが折り返され、次いで、バッフル13aの下面側の流出路である2段目の区画15bを流通する流路となる。このバッフル13aを基準とする仮想のパスの経路の概略は、図4では、主流Maの矢印と主流Mbの矢印とを開口部14aに配置された半円弧状の矢印で繋いだ線で示される。
また、バッフル13bを基準とする仮想のパスは、胴側流体F2が、バッフル13bの下面側の流入路である3段目の区画15cを流通した後、バッフル13bの開口部14bを通過して流れの向きが折り返され、次いで、バッフル13bの上面の流出路である2段目の区画15bを流通する流路となる。このバッフル13bを基準とする仮想のパスの経路の概略は、図4に、主流Mcの矢印と主流Mbの矢印とを開口部14bに配置された半円弧状の矢印で繋いだ線で示される。
したがって、各区画15a,15b,15cのうち、端部に位置する1段目の区画15aは、片側にのみバッフル13aが存在しているので、そのバッフル13aを基準とする1つの仮想のパスの流入路となっている。
同様に、端部に位置する3段目の区画15cは、片側にのみバッフル13bが存在しているので、そのバッフル13bを基準とする1つの仮想のパスの流入路となっている。
これに対し、中間部に位置する2段目の区画15bは、両側にバッフル13a,13bが存在している。そのため、2段目の区画15bは、バッフル13aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル13bを基準とする仮想のパスの流出路とが合わさったものであると見做すことができる。なお、仮想のパスは、あくまでも、本発明の多管式熱交換器の構成を説明するための仮想の流路であって、実際の2段目の区画15bにて、1段目の区画15aから流入する胴側流体F2と、3段目の区画15cから流入する胴側流体F2との混合が生じることに何ら問題はない。
このように、2段目の区画15bは、2つの仮想のパスの流出路が合わさったものであると考えられるため、2段目の区画15bの流路幅が寸法2Wとされているとしても、1つずつの仮想のパスの流出路は、流路幅が寸法Wとなる。
したがって、本実施形態では、バッフル13aを基準とする仮想のパス、および、バッフル13bを基準とする仮想のパスは、流入路の流路幅と流出路の流路幅との比率が1:1の設定とされている。
本実施形態の多管式熱交換器1では、1段目の区画15aに開口部18aから供給された胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに開口部18cから供給された胴側流体F2の圧力とが同様であれば、1段目の区画15aから2段目の区画15bへのリークLaおよび分岐流れNaによる流出と、3段目の区画15cから2段目の区画15bへのリークLcおよび分岐流れNcによる流出とが同様に生じる。
ここで、容器2における管群直交方向の位置を基準とする、管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布を、流量プロファイルという。本実施形態の多管式熱交換器1では、各区画15a,15b,15c内での胴側流体F2の流れは、容器2の半径方向に沿う方向となっている。したがって、本実施形態では、流量プロファイルは、容器2の半径方向の位置を基準とする管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布として求めることができる。
この流量プロファイルを各区画15a,15b,15cについて求めると、1段目の区画15aについての流量プロファイルと、3段目の区画15cについての流量プロファイルとは、同様になる。1段目と3段目の各区画15a,15cは、それぞれ1つの仮想のパスにのみ属する流入路であるため、1段目と3段目の各区画15a,15cについての流量プロファイルは、そのまま仮想のパス当たりの流量プロファイルとなる。
2段目の区画15bは、1段目と3段目の各区画15a,15cの主流Ma,Mcと、各区画15a,15cから流出するリークLa,Lcおよび分岐流れNa,Ncが流入する。この際、容器2の半径方向のある位置について、1段目と3段目の各区画15a,15cにおけるリークLa,Lcおよび分岐流れNa,Ncによる管群直交流の流量の減少分は、2段目の区画15bにおける管群直交流の流量の増加分と一致する。2段目の区画15bでは、胴側流体F2の管群直交流の流量(流量の絶対値)は、1段目と3段目のそれぞれの区画15a,15cにおける管群直交流の流量(流量の絶対値)に比してほぼ2倍となっている。しかし、前記したように、2段目の区画15bは、2つの仮想のパスの流出路が合わさったものであると見做すことができるので、2段目の区画15bにおいても、仮想のパス当たりの流量プロファイルは、1段目と3段目の各区画15a,15cについての流量プロファイルと同様になる。
以上の点に鑑みて、本実施形態の多管式熱交換器1を使用する場合は、図1(a)に示すように、入口21と入口22に、入口21と入口22に供給する胴側流体F2の圧力を制御する機能を備えた供給手段27を接続して、熱交換システムを形成すればよい。この供給手段27の構成については、後述する。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1では、各バッフル13a,13bに設定した領域R1,R2,R3ごとに、副通路17の数を変化させることで、流入区画である第1の区画15aおよび第3の区画15cにおける胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記Xa+Xbの値が順次大きくなる構成を備えている。
そのため、Xa+Xbの値が大小異なる各バッフル13a,13bの外周側と内周側とでは、1段目と3段目の各区画15a,15cから流出して2段目の区画に流入する分岐流れNa,Ncに対する流動抵抗が、外周側に比して内周側の方が小さくなっている。
よって、1段目と3段目の各区画15a,15cでは、各バッフル13a,13bに設定された各領域R1,R2,R3にて、各バッフル13a,13bの内周側、すなわち、開口部14a,14bに近付くほど、副通路17を介した2段目の区画15bへの分岐流れNa,Ncが生じやすくなる。そのため、1段目と3段目の各区画15a,15cでは、外周側から流入した胴側流体F2が、開口部14a,14bへ向けて半径方向に沿い内向きに流れるときには、2段目の区画15bへのリークLa,Lcと分岐流れNa,Ncとによる流出量が、次第に増加するように調整される。
なお、従来の多管式熱交換器は、バッフルに備えた管挿通孔が均一な径とされた構成を備えている。かかる形式のバッフルにより仕切られて形成された従来の多管式熱交換器における各段の区画(流路)では、内周側での管群直交流の流速が、外周側に比して増加してしまう。このことは、後述する従来の管群直交流形式の多管式熱交換器の解析モデルSc(図14(b)参照)を用いた解析結果(図21参照)から明らかである。
これに対し、本実施形態の多管式熱交換器1における1段目と3段目の各区画15a,15cでは、前記したように、外周側から流入した胴側流体F2が、半径方向に沿い内向きに流れるときに、2段目の区画15bへのリークLa,Lcと分岐流れNa,Ncとによる流出量が次第に増加するので、内周側での管群直交流の流速の増加を抑えることができる。よって、1段目と3段目の各区画15a,15cでは、それぞれの胴側流体F2の流通経路にて、胴側流体F2の流速の均一化を図ることができる。
2段目の区画15bでは、開口部14a,14bから流入した胴側流体F2が、外周側へ向けて半径方向に沿い外向きに流れるときには、1段目と3段目の各区画15a,15cからのリークLa,Lcと分岐流れNa,Ncとによって流量は次第に増加するため、バッフル13a,13bの開口部14a,14bからの距離に関する流速分布は、1段目と3段目の各区画15a,15cと同様になる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1は、胴側流体F2の流通領域8に、複数のバッフル13a,13bで仕切られて胴側流体F2を管群直交流として流通させる3段の区画15a,15b,15cを備えた形式にて、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化させることができる。
この効果は、本実施形態の多管式熱交換器1が、次の2つの構成を共に備えることで達成されている。第1の構成は、1段目、2段目、3段目の各区画15a,15b,15cを、流入区画と流出区画とに交互に設定して、1段目の区画15aの流量プロファイルと、3段目の区画15cの流量プロファイルと、2段目の区画15bにおける仮想のパス当たりの流量プロファイルとを同様にする構成である。第2の構成は、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、管挿通孔16と伝熱管10との隙間と、副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が順次小さくなる構成である。この第2の構成は、本実施形態では、各バッフル13a,13bに設定した領域R1,R2,R3ごとに副通路17の数を変化させて、隙間と副通路17とによる流路の面積の合計値を変化させることで実現している。
したがって、多管式熱交換器が、従来のように、胴側流体の流通領域に2枚以上のバッフルによって仕切られた3段以上の区画を備え、3段以上の区画により胴側流体が蛇行して流れる一連の流通経路が構成されている場合は、たとえ、各バッフルに、本実施形態の多管式熱交換器1におけるバッフル13a,13bの副通路17と同様の副通路を、同様の分布で備えたとしても、胴側流体の流速を、胴側流体の流通経路の全域に亘り均一化させることは困難である。これは、以下の理由による。
すなわち、胴側流体の流通領域に3段以上の区画により胴側流体が蛇行して流れる一連の流通経路が構成されている場合は、流通経路の最上流側の区画と、最下流側の区画についての流量プロファイルはおおよそ同様の傾向になる。しかし、中間部の区画では、管群直交流に対してリークによる流入と流出とが混在して生じるために、管群直交流の流量の絶対値が、最上流側の区画や最下流側の区画に比して小さくなる。しかも、中間部の区画では、区画内の上下流方向で、リークによる流入量と、リークによる流出量がそれぞれ変化する。よって、中間部の区画における流量プロファイルは、最上流側の区画や、最下流側の区画についての流量プロファイルとは相違する。
よって、この場合は、流量プロファイルの相違に起因して、流通経路の最上流側の区画、および、最下流側の区画に関して、胴側流体の流速の均一化を図るために望まれるバッフルにおける副通路の分布と、流通経路の中間部の区画に関して、胴側流体の流速の均一化を図るために望まれるバッフルにおける副通路の分布が、相違する。したがって、流量プロファイルが相違する区画の間に配置されるバッフルについて、両側の区画で胴側流体の流速の均一化を共に図るためには、各バッフルについて、副通路の分布を含む最適な設計を個別に見つけ出す必要があり、その設計は極めて煩雑になってしまう。しかも、各バッフルについては、必ずしも設計解が存在するとは限らないという問題もある。
次に、本実施形態の多管式熱交換器1を使用した熱交換システムの形成に用いる供給手段27について説明する。
供給手段27は、たとえば、入口21に接続された供給ライン28と、入口22に接続された供給ライン29と、各供給ライン28,29の上流側に接続された共通のポンプ30とを備えている。更に、供給ライン28には、圧力制御弁31と、供給ライン28における圧力制御弁31よりも下流側、すなわち入口21側に設けられた圧力計などの圧力検出手段32とを備え、供給ライン29には、圧力制御弁33と、供給ライン29における圧力制御弁33よりも下流側、すなわち入口22側に設けられた圧力計などの圧力検出手段34とを備えた構成とされている。
本実施形態の多管式熱交換器1では、胴側流体F2が入口21から分配ヘッダ24、開口部18aの分散板20を経て1段目の区画15aに流入するときに生じる圧力損失は、設計情報に基づく数値計算や、試験などにより明らかにすることができる。同様に、胴側流体F2が入口22から分配ヘッダ25、開口部18cの分散板20を経て3段目の区画15cに流入するときに生じる圧力損失は、設計情報に基づく数値計算や試験などにより明らかにすることができる。
したがって、圧力検出手段32の検出結果からは、入口21から分配ヘッダ24を経て1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力の情報を得ることができる。また、圧力検出手段34の検出結果からは、入口22から分配ヘッダ25を経て3段目の区画15cに流入する胴側流体F2の圧力の情報を得ることができる。
そこで、供給手段27には、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに流入する胴側流体F2の圧力とが同様になるように、入口21へ供給する胴側流体F2の圧力の目標値と、入口22へ供給する胴側流体F2の圧力の目標値と、それぞれの目標値に対する誤差の許容範囲が設定される。
供給手段27では、圧力検出手段32による圧力の検出値と、圧力検出手段34による圧力の検出値とが、それぞれに設定された目標値からの許容誤差の範囲に収まるように、圧力制御弁31および圧力制御弁33が制御される。
あるいは、供給手段27は、圧力検出手段32による圧力の検出値と、圧力検出手段34による圧力の検出値の双方を監視して、圧力制御弁31と圧力制御弁33に適宜制御指令を与える図示しない制御手段を備えた構成としてもよい。供給手段27にこの種の制御手段を備えた場合は、たとえば、ポンプ30の運転状態を変化させるときにも、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに流入する胴側流体F2の圧力とを同様に制御することができる。
なお、図1(a)では、共通のポンプ30に接続された供給ライン28と供給ライン29に個別の圧力制御弁31,33を備えた構成を示したが、供給ライン28と供給ライン29に個別のポンプを備えた構成として、各圧力検出手段32,34の圧力の検出値に基づいて、各ポンプの吐出圧力を制御するようにしてもよい。
本実施形態では、更に、供給手段27で胴側流体F2を循環利用するため、ポンプ30の吸入側には、本実施形態の多管式熱交換器1の出口23が、胴側流体F2の回収ライン35を介して接続されている。ポンプ30の吐出側には、胴側流体F2と図示しない熱媒体とを熱交換させる熱交換器36が設けられている。したがって、本実施形態の多管式熱交換器1へ供給される胴側流体F2の温度は、熱交換器36で調整される。
たとえば、本実施形態の多管式熱交換器1が、胴側流体F2により管側流体F1を冷却する機能を備える場合は、熱交換器36は、入口21,22への供給時に比して温度上昇した状態で出口23から回収される胴側流体F2を対象として、その放熱を行わせる機能を備えるものとすればよい。
一方、本実施形態の多管式熱交換器1が、胴側流体F2により管側流体F1を加熱する機能を備える場合は、熱交換器36は、入口21,22への供給時に比して温度低下した状態で出口23から回収される胴側流体F2を対象として、その加熱を行う機能を備えるものとすればよい。
なお、図1(a)では、熱交換器36を、ポンプ30の吐出側に1つ備えた構成を例示したが、供給ライン28と供給ライン29に個別の熱交換器36を備える構成や、ポンプ30の吸入側に熱交換器36を備える構成としてもよいことは勿論である。
以上の構成としてある熱交換システムによれば、供給手段27のポンプ30の運転により、本実施形態の多管式熱交換器1の入口21と入口22に胴側流体F2を供給して、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cへ流入する胴側流体F2の圧力とを同様に制御することができる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1では、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフル13a,13bで仕切られて形成されて、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画15a,15b,15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
よって、本実施形態の多管式熱交換器1は、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り、胴側流体F2の流速を、従来の多管式熱交換器に比して均一化を図ることができる。このことは、後述する数値解析(流動解析)の結果から明らかである。
そのため、本実施形態の多管式熱交換器1は、各伝熱管10の管外側の熱伝達率を一定にして、管群9の全域で均等に熱交換させることができる。したがって、本実施形態の多管式熱交換器1は、胴側流体F2の流通経路に、従来の多管式熱交換器に存在していたような流量プロファイルが異なっていて熱交換能が劣る区画を有しないものとすることができる。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1では、入口21に供給された胴側流体F2が容器2内で通るのは、1段目と2段目の2つの区画15a,15bのみである。同様に、入口22に供給された胴側流体F2が容器2内で通るのは、3段目と2段目の2つの区画15c,15bのみである。
そのため、本実施形態の多管式熱交換器1は、胴側流体F2の単位時間当たりの供給量が同じ場合、胴側流体F2が蛇行して流れる3段以上の区画を備えた従来の多管式熱交換器に比して、胴側流体F2の圧力損失の低減化を図ることができる。これにより、本実施形態の多管式熱交換器1は、供給手段27に備えて胴側流体F2の供給を行うポンプ30に必要とされるポンプ動力の低減化を図る場合に有利な構成とすることができる。
[第1実施形態の応用例]
第1実施形態の多管式熱交換器1は、2段目の区画15bを、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する流入区画とし、1段目の区画15aと3段目の区画15cを、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する流出区画としてもよい。
第1実施形態の多管式熱交換器1は、2段目の区画15bを、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する流入区画とし、1段目の区画15aと3段目の区画15cを、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する流出区画としてもよい。
この場合は、図示しないが、ヘッダ部材19bに、胴側流体F2の入口を設け、ヘッダ部材19aとヘッダ部材19cに、胴側流体F2の出口を設けた構成とすればよい。これにより、ヘッダ部材19bの内側の空間が、入口から供給される胴側流体F2を、周方向に分散させてから、開口部18bを通して2段目の区画15bに流入させる分配ヘッダとなる。
一方、ヘッダ部材19aとヘッダ部材19cの内側の空間は、それぞれ対応する区画15a,15cから開口部18a,18cを通して流出する胴側流体F2を、集合させてから出口へ導く集合ヘッダとなる。
また、この場合、供給手段27は、図1(a)に示した構成において、ポンプの吸入側と吐出側とを入れ替えて、回収ライン35を胴側流体F2の供給ラインとして用い、供給ライン28,29を胴側流体F2の回収ラインとして用いる構成とすればよい。その際、圧力制御弁31,33は、圧力検出手段32,34で検出される背圧を制御することで、1段目の区画15aと3段目の区画15cの圧力が同様になるように制御する機能を備えるようにすればよい。
本応用例の構成によれば、2段目の区画15bに開口部18bから供給された胴側流体の主流は、図4に示した主流Mbとは逆の方向の流れとなる。すなわち、胴側流体F2の主流は、2段目の区画15bでは、容器2の半径方向に沿って外周側から内周側に向かう管群直交流となり、その後、各バッフル13a,13bの開口部14a,14bを通して1段目の区画15aと3段目の区画15cに流入し、該各区画15a,15cで容器2の半径方向に沿って内周側から外周側に向かう管群直交流となる。
この際、本応用例では、1段目の区画15aと3段目の区画15cの圧力が同様とされているため、2段目の区画15bから1段目の区画15aと3段目の区画15cとに分かれて流れる主流の流量は同様になる。更に、2段目の区画15bから1段目の区画15aへのリーク、および、バッフル13aの副通路17を通る分岐流れによる流出と、2段目の区画15bから3段目の区画15cへのリーク、および、バッフル13bの副通路17を通る分岐流れによる流出とが同様に生じる。
本応用例では、1段目の区画15aは、バッフル13aを基準とする1つの仮想のパスの流出路となる。同様に、3段目の区画15cは、バッフル13bを基準とする1つの仮想のパスの流出路となる。
また、2段目の区画15bは、バッフル13aを基準とする仮想のパスの流入路と、バッフル13bを基準とする仮想のパスの流入路とが合わさったものと見做すことができる。
よって、本応用例によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第2実施形態]
図5は、多管式熱交換器の第2実施形態を示すもので、図5(a)は、容器軸心位置での概略断面図、図5(b)は、仕切板の一部を拡大して示す図である。
図5は、多管式熱交換器の第2実施形態を示すもので、図5(a)は、容器軸心位置での概略断面図、図5(b)は、仕切板の一部を拡大して示す図である。
なお、図5(a)(b)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図5(a)に符号1aで示すもので、第1実施形態と同様の構成に加えて、2段目の区画15bにおける容器軸心方向の中間部に、容器軸心方向に垂直な姿勢で配置された仕切板37を備えた構成としたものである。
仕切板37は、少なくとも、各バッフル13a,13bの開口部14a,14bよりも大きな円板形状として、容器2の軸心位置に、容器軸心方向に垂直な姿勢で配置された構成を備えることが好ましい。これは、1段目の区画15aからバッフル13aの開口部14aを通して2段目の区画15bに流入する胴側流体F2の流れが、仕切板37における開口部14aに臨む側の面に当たるようにして、流れの向きを径方向外向きとなる方向へ案内するためである。また、同様に、3段目の区画15cからバッフル13bの開口部14bを通して2段目の区画15bに流入する胴側流体F2の流れが、仕切板37における開口部14bに臨む側の面に当たるようにして、流れの向きを径方向外向きとなる方向へ案内するためである。
本実施形態では、仕切板37は、流通領域8の容器軸心方向に垂直な面での断面形状の円板に、図5(b)に示すように、管群9の各伝熱管10の配置に個別に対応する配置で管挿通孔38を備えた構成とされている。なお、仕切板37における管挿通孔38は、仕切板37全体に亘り均一な径で設けられていればよい。この仕切板37における管挿通孔38は、各バッフル13a,13bにおける管挿通孔16と同様の径寸法を備えた状態で設けられていてもよい。かかる構成の仕切板37は、仕切板37を各バッフル13a,13bと重ねた状態で、管挿通孔38および管挿通孔16の穴あけ加工を一度に行うことが可能になる。
仕切板37の各管挿通孔38には、対応する伝熱管10が挿通配置されている。仕切板37は、外周部、容器2の胴7の内面に、周方向の複数個所で溶接などにより取り付けられて支持されている。
これにより、2段目の区画15bは、仕切板37によって容器軸心方向の一端側と他端側に分割された2つの分割流路39a,39bを備えた構成とされている。
したがって、本実施形態では、2段目の区画15bにおいて、分割流路39aは、バッフル13aを基準とする仮想のパスの流出路として機能し、分割流路39bは、バッフル13bを基準とする仮想のパスの流出路として機能するようになる。
なお、本実施形態では、前記したように仕切板37の外周部を胴7の内面に取り付けるようにしてある。そのため、胴7の周壁に設ける開口部18bは、各分割流路39a,39bの外周側に、仕切板37の取付位置を避けた配置で、容器軸心方向に2分割された分割開口部40a,40bとして設けられている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1aは、第1実施形態と同様に使用して、同様の効果を得ることができる。
また、1段目の区画15aと3段目の区画15cで胴側流体F2の圧力が同様となっているため、2段目の区画15bでは、1段目の区画15aから分割流路39aへの主流Ma、リークLaおよび分岐流れNaによる流入と、3段目の区画15cから分割流路39bへの主流Mc、リークLcおよび分岐流れNcによる流入とが同様に生じる。したがって、分割流路39aと分割流路39bとでは、胴側流体F2の圧力がほぼ同様になる。
そのため、仕切板37には、各管挿通孔38の内面と、各伝熱管10の外面との間に隙間が存在しているが、この隙間を通過する胴側流体F2の流れはほとんど生じない。よって、2段目の区画15bでは、胴側流体F2は、仕切板37の両側の各分割流路39a,39bで円滑に案内されて、共に径方向外向きの流れとなる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1aによれば、2段目の区画15bにて、1段目の区画15aから流入する胴側流体F2の流れと、3段目の区画15cから流入する胴側流体F2の流れとを、互いに混合させることなく整流することができ、よって、胴側流体F2の流れについて、圧力損失の低減化を図ることができる。
なお、前述したように、分割流路39aと分割流路39bとでは圧力差がないため、仕切板37は、分割流路39aと分割流路39bとが連通する図示しない開口部を備える構成や、仕切板37の外周部と胴7の内面との間に隙間が存在するような構成であってもよい。なお、仕切板37を胴7の内面から離して設ける場合は、半径方向に沿って配置された支持部材を介して胴7の内面に支持させるか、あるいは、バッフル13a,13bの開口部14a,14bに通して配置した容器軸心方向に延びる支持部材を介して管板3,5に支持させるようにすればよい。このような構成としても、前記したと同様の効果を得ることができる。
[第3実施形態]
図6は、多管式熱交換器の第3実施形態として、第2実施形態の応用例を示すもので、容器軸心位置での概略断面図である。
図6は、多管式熱交換器の第3実施形態として、第2実施形態の応用例を示すもので、容器軸心位置での概略断面図である。
なお、図6において、第2実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図6に符号1bで示すもので、第2実施形態と同様の構成において、2段目の区画15bの各分割流路39a,39bの外周側に共通の集合ヘッダ26を備えた構成に代えて、各分割流路39a,39bの外周側に、個別の集合ヘッダ41a,41bを備えた構成としたものである。
各分割開口部40a,40bの外側には、図5に示したヘッダ部材19a,19cと同様の出口43a,43bを備えたヘッダ部材42a,42bが個別に取り付けられている。これにより、各集合ヘッダ41a,41bは、各ヘッダ部材42a,42bの内側に形成されている。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1bは、各分配ヘッダ24,25の入口21,22と、各集合ヘッダ41a,41bの出口43a,43bに、図6に示す如き供給手段27aを接続して、熱交換システムが構成されている。
供給手段27aは、たとえば、入口22に接続された供給ライン29と、供給ライン29の上流側に接続されたポンプ44と、ポンプ44の吸入側と出口43aとを接続する回収ライン45を備え、更に、入口21に接続された供給ライン28と、供給ライン28の上流側に接続されたポンプ46と、ポンプ46の吸入側と出口43bとを接続する回収ライン47を備えた構成とされている。
各供給ライン28,29には、図1(a)に示したと同様の圧力制御弁31,33と圧力検出手段32,34とが設けられている。
更に、本実施形態の供給手段27aは、出口43aから回収される胴側流体F2が流通する供給ライン29にのみ、図1(a)に示したと同様の熱交換器36を備えた構成とされている。
以上の構成としてある熱交換システムを使用する場合は、第1実施形態で説明したと同様に、供給手段27aには、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに流入する胴側流体F2の圧力とが同様になるように、入口21へ供給する胴側流体F2の圧力の目標値と、入口22へ供給する胴側流体F2の圧力の目標値と、それぞれの目標値に対する誤差の許容範囲が設定される。この状態で、供給手段27aでは、各ポンプ44,46が運転される。
ポンプ44から吐出されて熱交換器36で温度調整された胴側流体F2は、供給ライン29を経て入口22へ供給される。入口22に供給された胴側流体F2は、分配ヘッダ25で周方向に分散された後、開口部18cを通して3段目の区画15cの外周部に流入する。
3段目の区画15cの外周部に流入した胴側流体F2の主流は、3段目の区画15cを径方向内向きに流れ、バッフル13bの開口部14bを経て分割流路39bに流入し、分割流路39bを径方向外向きに流れてから分割開口部40bに達する。この点は、第2実施形態と同様である。
その後、分割開口部40bに到達した胴側流体F2は、集合ヘッダ41bで集合させられた後に、出口43bから排出される。
出口43bから回収ライン47に回収された胴側流体F2は、ポンプ46の運転により昇圧された後、供給ライン28を経て、入口21へ供給される。
入口21に供給された胴側流体F2は、分配ヘッダ24で周方向に分散された後、開口部18aを通して1段目の区画15aの外周部に流入する。
1段目の区画15aの外周部に流入した胴側流体F2の主流は、1段目の区画15aを径方向内向きに流れ、バッフル13aの開口部14aを経て分割流路39aに流入し、分割流路39aを径方向外向きに流れてから分割開口部40aに達する。この点は、第2実施形態と同様である。
その後、分割開口部40aに到達した胴側流体F2は、集合ヘッダ41aで集合させられた後に、出口43aから排出される。
出口43aから回収された胴側流体F2は、回収ライン45を経てポンプ44に再び供給される。
このように、本実施形態では、熱交換器36で温度が調整された状態で入口22に供給される胴側流体F2を、先ず、3段目の区画15cおよび分割流路39bを流通させて、伝熱管10内を流通する管側流体F1と熱交換させることができる。この熱交換により温度が変化した胴側流体F2は、更に、1段目の区画15aおよび分割流路39aを流通させて、伝熱管10内を流通する管側流体F1との熱交換に利用することができる。
このような胴側流体F2の利用方式においても、供給手段27aでは、各圧力制御弁31,33および各圧力検出手段32,34を用いて、1段目の区画15aに流入する胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cへ流入する胴側流体F2の圧力とを同様に制御することができる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1bによっても、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフル13a,13bで仕切られて形成され、胴側流体F2を管群直交流として流通させる1段目の区画15a、2段目の区画15bの各分割流路39a,39b、3段目の区画15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
また、本実施形態の多管式熱交換器1bは、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる。
[第4実施形態]
ところで、前記各実施形態は、胴7内の胴側流体F2の流通領域8に、容器軸心方向の2個所にバッフル13a,13bを備えて、胴側流体F2を管群直交流として流通させる区画を容器軸心方向に3段の区画15a,15b,15cとして備える構成を例示した。
ところで、前記各実施形態は、胴7内の胴側流体F2の流通領域8に、容器軸心方向の2個所にバッフル13a,13bを備えて、胴側流体F2を管群直交流として流通させる区画を容器軸心方向に3段の区画15a,15b,15cとして備える構成を例示した。
これに対し、本発明の多管式熱交換器は、流通領域8に容器軸心方向に配列して設けるバッフルの数を増やして、胴側流体F2を管群直交流として流通させる区画を、容器軸心方向に4段以上で備える構成としてもよい。
図7は、多管式熱交換器の第4実施形態を示すもので、胴側流体の流通経路を示す模式図である。なお、図7では、図4と同様に構成の一部の記載を省略してある。
また、図7において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図7に符号1cで示すもので、胴7内の流通領域8について、容器軸心方向の4個所に、バッフル130a,130b,130c,130dを備える構成としたものである。
各バッフル130a,130b,130c,130dは、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、中央部に開口部140a,140b,140c,140dを備えたリング状の構成とされている。
これにより、流通領域8には、容器軸心方向に、各バッフル130a,130b,130c,130dにより仕切られた5段の区画150a,150b,150c,150d,150eが形成されている。各区画150a,150b,150c,150d,150eは、説明の便宜上、容器軸心方向の一端側(図7では上端側)に位置するものから順に、n段目(1,2,3…)という。
更に、各区画150a,150b,150c,150d,150eのうち、容器軸心方向の一端側から奇数番目の各区画150a,150c,150eは、外周側に、第1実施形態における分配ヘッダ24,25と同様の分配ヘッダ48,49,50を備えた構成とされている。
また、容器軸心方向の一端側から偶数番目の各区画150b,150dは、外周側に、第1実施形態における集合ヘッダ26と同様の集合ヘッダ51,52を備えた構成とされている。
これにより、本実施形態の多管式熱交換器1cは、1段目、3段目、5段目の各区画150a,150c,150eが、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する流入区画となり、2段目と4段目の各区画150b,150dが、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する流出区画となる。
また、本実施形態では、1段目と5段目の各区画150a,150eの流路幅が同様に設定され、この寸法をWとすると、残りの各区画150b,150c,150dの流路幅が寸法2Wとなるように設定されている。
したがって、本実施形態では、流入区画となる各区画150a,150c,150eのうち、端部に位置する1段目の区画150aは、片側にのみバッフル130aが存在しているので、そのバッフル130aを基準とする1つの仮想のパスの流入路となる。
同様に、端部に位置する5段目の区画150eは、片側にのみバッフル130dが存在しているので、そのバッフル130dを基準とする1つの仮想のパスの流入路となる。
これに対し、中間部に位置する3段目の区画150cは、両側にバッフル130b,130cが存在している。そのため、3段目の区画150cは、バッフル130bを基準とする仮想のパスの流入路と、バッフル130cを基準とする仮想のパスの流入路とが合わさったものであると見做すことができる。このように、3段目の区画150cは、2つの仮想のパスの流入路が合わさったものであると考えられるため、3段目の区画150cにおいても、1つの仮想のパス当たりの流入路の流路幅は、1段目および5段目の各区画150a,150eと同様の寸法Wになっている。
一方、流出区画となる2段目の区画150bは、両側にバッフル130a,130bが存在している。そのため、2段目の区画150bは、バッフル130aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル130bを基準とする仮想のパスの流出路とが合わさったものであると見做すことができる。
同様に、流出区画となる4段目の区画150dは、両側にバッフル130c,130dが存在している。そのため、4段目の区画150dは、バッフル130cを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル130dを基準とする仮想のパスの流出路とが合わさったものであると見做すことができる。
このように、2段目の区画150bと、4段目の区画150dは、いずれも2つの仮想のパスの流出路が合わさったものであると考えられるため、これらの各区画150b,150dの流路幅が寸法2Wとされているとしても、1つの仮想のパス当たりの流出路の流路幅は、寸法Wである。
したがって、本実施形態では、各バッフル130a,130b,130c,130dを基準とする仮想のパスは、それぞれ流入路の流路幅と流出路の流路幅との比率が1:1の設定となっている。
各バッフル130a,130b,130c,130dは、図示しないが、第1実施形態における図3に示したバッフル13a,13bと同様に、管挿通孔16を備えると共に、開口部140a,140b,140c,140dからの距離が異なる領域ごとに、副通路17を異なる数で備えた構成とされている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1cは、流入区画となる各区画150a,150c,150eに供給される胴側流体F2の圧力が同様であれば、1段目の区画150aから2段目の区画150bへのリークおよび分岐流れによる流出と、3段目の区画150cから2段目の区画150bへのリークおよび分岐流れによる流出と、3段目の区画150cから4段目の区画150dへのリークおよび分岐流れによる流出と、5段目の区画150eから4段目の区画150dへのリークおよび分岐流れによる流出と、が同様に生じる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1cによれば、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフル130a,130b,130c,130dで仕切られて形成されて、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画150a,150b,150c,150d,150eについて、第1実施形態と同様に、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
更に、第1実施形態と同様に、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる。
なお、本実施形態の多管式熱交換器1cは、図7に二点鎖線で示すように、2段目、3段目、4段目の各区画150b,150c,150dに、前記第2実施形態における仕切板37と同様の仕切板37を備えた構成としてもよい。
[第5実施形態]
図8は、多管式熱交換器の第5実施形態を示すもので、胴側流体の流通経路を示す模式図である。なお、図8では、図4と同様に構成の一部の記載を省略してある。
図8は、多管式熱交換器の第5実施形態を示すもので、胴側流体の流通経路を示す模式図である。なお、図8では、図4と同様に構成の一部の記載を省略してある。
また、図8において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図8に符号1dで示すもので、胴7内の流通領域8について、容器軸心方向の3個所に、バッフル131a,131b,131cを備える構成としたものである。
各バッフル131a,131b,131cは、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、中央部に開口部141a,141b,141cを備えたリング状の構成とされている。
これにより、流通領域8には、容器軸心方向に、各バッフル131a,131b,131cにより仕切られた4段の区画151a,151b,151c,151dが形成されている。各区画151a,151b,151c,151dは、説明の便宜上、容器軸心方向の一端側(図8では上端側)に位置するものから順に、n段目(1,2,3…)という。
更に、各区画151a,151b,151c,151dのうち、容器軸心方向の一端側から奇数番目の各区画151a,151cは、外周側に、第1実施形態における分配ヘッダ24,25と同様の分配ヘッダ53,54を備えた構成とされている。
また、容器軸心方向の一端側から偶数番目の各区画151b,151dは、外周側に、第1実施形態における集合ヘッダ26と同様の集合ヘッダ55,56を備えた構成とされている。
これにより、本実施形態の多管式熱交換器1dは、1段目、3段目の各区画151a,151cが、外部から容器2内へ胴側流体F2が流入する流入区画となり、2段目と4段目の各区画151b,151dが、容器2内から外部へ胴側流体F2が流出する流出区画となる。
また、本実施形態では、1段目と4段目の各区画151a,151dの流路幅が同様に設定され、この寸法をWとすると、残りの各区画151b,151cの流路幅が寸法2Wとなるように設定されている。
したがって、本実施形態では、流入区画となる各区画151a,151cのうち、端部に位置する1段目の区画151aは、片側にのみバッフル131aが存在しているので、そのバッフル131aを基準とする1つの仮想のパスの流入路となる。
これに対し、中間部に位置する3段目の区画151cは、両側にバッフル131b,131cが存在している。そのため、3段目の区画151cは、バッフル131bを基準とする仮想のパスの流入路と、バッフル131cを基準とする仮想のパスの流入路とが合わさったものであると見做すことができる。このように、3段目の区画151cは、2つの仮想のパスの流入路が合わさったものであると考えられるため、3段目の区画151cにおいても、1つの仮想のパス当たりの流入路の流路幅は、1段目の区画151aと同様の寸法Wになっている。
一方、流出区画となる各区画151b,151dのうち、4段目の区画151dは、片側にのみバッフル131cが存在しているので、そのバッフル131cを基準とする1つの仮想のパスの流出路となる。
これに対し、中間部に位置する2段目の区画151bは、両側にバッフル131a,131bが存在している。そのため、2段目の区画151bは、バッフル131aを基準とする仮想のパスの流出路と、バッフル131bを基準とする仮想のパスの流出路とが合わさったものであると見做すことができる。このように、2段目の区画151bは、2つの仮想のパスの流出路が合わさったものであると考えられるため、2段目の区画151bにおいても、1つの仮想のパス当たりの流出路の流路幅は、4段目の区画151dと同様の寸法Wになっている。
したがって、本実施形態では、各バッフル131a,131b,131cを基準とする仮想のパスは、それぞれ流入路の流路幅と流出路の流路幅との比率が1:1の設定となっている。
各バッフル131a,131b,131cは、図示しないが、第1実施形態における図3に示したバッフル13a,13bと同様に、管挿通孔16を備えると共に、開口部141a,141b,141cからの距離が異なる領域ごとに、副通路17を異なる数で備えた構成とされている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1dは、流入区画となる各区画151a,151cに供給される胴側流体F2の圧力が同様であれば、1段目の区画151aから2段目の区画151bへのリークおよび分岐流れによる流出と、3段目の区画151cから2段目の区画151bへのリークおよび分岐流れによる流出と、3段目の区画151cから4段目の区画151dへのリークおよび分岐流れによる流出とが同様に生じる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1dによれば、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフル131a,131b,131cで仕切られて形成されて、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画151a,151b,151c,151dについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1dによれば、第1実施形態と同様に、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる。
なお、本実施形態の多管式熱交換器1dは、図8に二点鎖線で示すように、2段目、3段目の各区画151b,151cに、前記第2実施形態における仕切板37と同様の仕切板37を備えた構成としてもよい。
[第6実施形態]
前記各実施形態では、胴側流体F2の流通領域8に備える複数のバッフル13a,13b,130a〜130d,131a〜131cを、円板の中央部に円形の開口部14a,14b,140a〜140d,141a〜141cを備えてなるリング状の構成を有するものとしたが、バッフルは他の形状としてもよい。
前記各実施形態では、胴側流体F2の流通領域8に備える複数のバッフル13a,13b,130a〜130d,131a〜131cを、円板の中央部に円形の開口部14a,14b,140a〜140d,141a〜141cを備えてなるリング状の構成を有するものとしたが、バッフルは他の形状としてもよい。
図9は、多管式熱交換器の第6実施形態を示すもので、図9(a)は、容器軸心位置での概略断面図、図9(b)は、図9(a)のC−C方向矢視図、図9(c)は、図9(a)のD−D方向矢視図である。
なお、図9(a)(b)(c)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図9(a)(b)(c)に符号1eで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、バッフル132a,132bを、従来のシングルセグメンタル形式のバッフルと同様の構成としたものである。
すなわち、バッフル132a,132bは、流通領域8の容器軸心方向に垂直な面での断面形状を有する円板の周方向の一部を、弦に沿って切欠いた形状とされている。各バッフル132a,132bは、切欠き部分の周方向位置を揃えた姿勢として、外周部が、容器2の胴7の内面に、周方向の複数個所で取り付けられて支持されている。
これにより、流通領域8には、第1実施形態と同様に、容器軸心方向に、各バッフル132a,132bにより仕切られた3段の区画15a,15b,15cが形成されている。
また、流通領域8の容器軸心方向におけるバッフル132aが取り付けられた個所には、バッフル132aの切欠き部分と、胴7の周壁とによって囲まれた内側に、1段目の区画15aと2段目の区画15bとが連通する開口部142aが形成されている。
更に、流通領域8の容器軸心方向におけるバッフル132bが取り付けられた個所には、バッフル132bの切欠き部分と、胴7の周壁とによって囲まれた内側に、2段目の区画15bと3段目の区画15cとが連通する開口部142bが形成されている。
本実施形態では、胴7の周壁に各区画15a,15b,15cに対応させて設ける各開口部18a,18b,18cは、容器2の軸心位置を中心として、各開口部142a,142bと対称配置となる周方向位置に設けられている。
本実施形態におけるバッフル132a,132bは、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、管挿通孔16を備えている。
更に、本実施形態におけるバッフル132a,132bは、流入区画である第1の区画15aおよび第3の区画15cにおける胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記Xa+Xbの値が順次大きくなる構成を備えている。
具体的には、バッフル132a,132bは、図9(b)(c)に示すように、開口部142a,142bからの距離が大きくなるにしたがって、複数の領域R1,R2,R3を並べて設定する。
更に、各バッフル132a,132bは、設定された領域R1,R2,R3ごとに、図3に示した第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、副通路17を異なる数で備えた構成とされている。
各ヘッダ部材19a,19b,19cと、分配ヘッダ24、分配ヘッダ25、集合ヘッダ26は、前記各開口部18a,18b,18cの配置に対応する周方向配置として設けられている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1eによっても、1段目の区画15aに開口部18aから供給された胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに開口部18cから供給された胴側流体F2の圧力とを同様とすることにより、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画15a,15b,15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
なお、本実施形態では、各区画15a,15b,15cにおける胴側流体F2の管群直交流は、各開口部18a,18b,18cと、バッフル132a,132bにより形成された各開口部142a,142bと、を結ぶ容器2の直径に平行な方向となる。そのため、前記流量プロファイルは、容器2における前記所定の直径に平行な方向の位置を基準として、管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布を示したものとすればよい。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1eによれば、第1実施形態と同様に、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる。
[第7実施形態]
図10は、多管式熱交換器の第7実施形態を示すもので、図10(a)は、容器軸心位置での概略断面図、図10(b)は、図10(a)のE−E方向矢視図、図10(c)は、図10(a)のF−F方向矢視図である。
図10は、多管式熱交換器の第7実施形態を示すもので、図10(a)は、容器軸心位置での概略断面図、図10(b)は、図10(a)のE−E方向矢視図、図10(c)は、図10(a)のF−F方向矢視図である。
なお、図10(a)(b)(c)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図10(a)(b)(c)に符号1fで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、バッフル133a,133bを、従来のダブルセグメンタル形式のバッフルと同様の構成としたものである。
すなわち、バッフル133a,133bは、流通領域8の容器軸心方向に垂直な面での断面形状を有する円板を、一方向の直径に沿う位置で切欠いて、切欠き部分に沿う弦と円弧とで囲まれた形状の一対の部材で構成されている。各バッフル133a,133bは、切欠き部分の延びる方向を揃えた姿勢として、外周部の円弧部分が、容器2の胴7の内面に、周方向の複数個所で取り付けられて支持されている。
これにより、流通領域8には、第1実施形態と同様に、容器軸心方向に、各バッフル133a,133bにより仕切られた3段の区画15a,15b,15cが形成されている。
また、流通領域8の容器軸心方向におけるバッフル133aが取り付けられた個所には、バッフル133aの切欠き部分と、胴7の周壁とによって囲まれた内側に、1段目の区画15aと2段目の区画15bとが連通する開口部143aが形成されている。
更に、流通領域8の容器軸心方向におけるバッフル133bが取り付けられた個所には、バッフル133bの切欠き部分と、胴7の周壁とによって囲まれた内側に、2段目の区画15bと3段目の区画15cとが連通する開口部143bが形成されている。
本実施形態では、胴7の周壁に各区画15a,15b,15cに対応させて設ける各開口部18a,18b,18cは、前記各開口部143a,143bが形成されている直径の方向から90度ずれた周方向位置に設けられている。
更に、本実施形態におけるバッフル133a,133bは、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、管挿通孔16を備えている。
更に、本実施形態におけるバッフル133a,133bは、流入区画である第1の区画15aおよび第3の区画15cにおける胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記Xa+Xbの値が順次大きくなる構成を備えている。
具体的には、バッフル133a,133bは、図10(b)(c)に示すように、開口部143a,143bからの距離が大きくなるにしたがって、複数の領域R1,R2,R3を並べて設定する。
更に、各バッフル133a,133bは、設定された領域R1,R2,R3ごとに、図3に示した第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、副通路17を異なる数で備えた構成とされている。
各ヘッダ部材19a,19b,19cと、分配ヘッダ24、分配ヘッダ25、集合ヘッダ26は、前記各開口部18a,18b,18cの配置に対応する周方向配置として設けられている。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1fによっても、1段目の区画15aに開口部18aから供給された胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに開口部18cから供給された胴側流体F2の圧力とを同様とすることにより、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画15a,15b,15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
なお、本実施形態では、各区画15a,15b,15cにおける胴側流体F2の管群直交流は、各開口部18a,18b,18cと、バッフル133a,133bにより形成された開口部143a,143bと、を結ぶ方向、すなわち、前記各開口部143a,143bの延びる方向とほぼ直交する方向になる。そのため、前記流量プロファイルは、容器2における前記所定の方向の位置を基準として、管群直交流の流量(流量の絶対値)の分布を示したものとすればよい。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1fによれば、第1実施形態と同様に、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる。
[第8実施形態]
図11は、多管式熱交換器の第8実施形態を示すもので、容器軸心位置での概略断面図である。
図11は、多管式熱交換器の第8実施形態を示すもので、容器軸心位置での概略断面図である。
なお、図11において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器は、図11に符号1gで示すもので、第1実施形態と同様の構成において、管群9の各伝熱管10に、触媒57が充填された構成としてある。
更に、各伝熱管10に流通させる管側流体F1は、触媒57を介した触媒反応の対象とする反応原料および反応生成物としてのプロセス流体とし、流通領域8の各区画15a,15b,15cを流通させる胴側流体F2は、熱媒とした構成とされている。
なお、本実施形態の多管式熱交換器1gでは、熱媒としての胴側流体F2は、触媒反応が発熱反応の場合は、冷却媒体を用いるようにし、触媒反応が吸熱反応の場合は、加熱媒体を用いるようにすればよい。更に、熱媒としての胴側流体F2の種類は、触媒反応に所望される温度条件等に応じて適宜選定すればよい。
本実施形態の多管式熱交換器1gを使用する場合は、管側流体F1の入口11への供給と、胴側流体F2の入口21,22への供給を行う。
この際、1段目の区画15aに開口部18aから供給された胴側流体F2の圧力と、3段目の区画15cに開口部18cから供給された胴側流体F2の圧力とが同様となるように、胴側流体F2の入口21,22への供給を制御する。
これにより、各伝熱管10の内部で、触媒57により反応原料より反応生成物を生成させる触媒反応が進行する。
この際、本実施形態の多管式熱交換器1gでは、第1実施形態と同様に、胴側流体F2を管群直交流として流通させるすべての区画15a,15b,15cについて、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化が図られている。
このため、各伝熱管10に対しては、長手方向の全長に亘り、同様の熱交換能を得ることができる。
更に、本実施形態の多管式熱交換器1gによれば、第1実施形態と同様に、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる。
このため、各伝熱管10では、同様の熱交換能を得ることができる。
よって、本実施形態の多管式熱交換器1gでは、従来の多管式反応器で生じていたような、伝熱管10の長手方向中間部での熱交換能が低下するという問題や、伝熱管10が配置されている位置に応じて、伝熱管10ごとの熱交換能に差が生じるという問題を回避することができる。
したがって、本実施形態の多管式熱交換器1gは、各伝熱管10で触媒反応を良好に進行させることが可能な多管式反応器として使用することができる。
なお、本実施形態のように各伝熱管10に触媒57を充填する構成は、前述の各実施形態に適用してもよいことは勿論である。
[第9実施形態]
ところで、前記各実施形態および応用例は、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成として、バッフル13a,13b,130a〜130d,131a〜131c,132a,132b,133a,133bに、開口部14a,14b,140a〜140d,141a〜141c,142a,142b,143a,143bからの距離が異なる領域ごとに、副通路17の数を変化させる構成を例示した。
ところで、前記各実施形態および応用例は、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成として、バッフル13a,13b,130a〜130d,131a〜131c,132a,132b,133a,133bに、開口部14a,14b,140a〜140d,141a〜141c,142a,142b,143a,143bからの距離が異なる領域ごとに、副通路17の数を変化させる構成を例示した。
これに対し、本発明の多管式熱交換器は、バッフルに、開口部からの距離が異なる領域ごとに、径の異なる副通路17を備える構成としてもよい。
図12は、多管式熱交換器の第9実施形態を示すもので、バッフルの四半円の部分を容器軸心方向の片側から見た図である。
なお、本実施形態の多管式熱交換器1は、バッフルの構成以外は図1に示した第1実施形態と同様である。また、図12において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器1は、図12に示す如きバッフル134を備えている。
本実施形態におけるバッフル134は、図12に示すように、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、開口部144からの距離に応じて複数の同心円状の領域R1,R2,R3が設定されている。
更に、バッフル134は、たとえば、最も外周寄りの領域R3には、副通路17を設けず、その内周側に位置する領域R2には、或る配置で或る径の副通路17を備え、更に内周側に位置する領域R1には、領域R2の副通路17よりも径の大きな副通路17を、領域R2と同様の配置で備えた構成としてある。
なお、図12では、バッフル134は、領域R3には副通路17を設けない構成を示した。これは、領域R3における副通路17は径がゼロであると捉えることができる。これに対し、図示しないが、バッフル134は、領域R3に、領域R2の副通路17よりも径の小さい副通路17を、領域R2と同様の配置で備えた構成としてもよいことは勿論である。
以上の構成としてある本実施形態におけるバッフル134によっても、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、流入区画である第1の区画15aおよび第3の区画15c(図1(a)参照)における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記Xa+Xbの値が順次大きくなる構成を実現することができる。
なお、図示しないが、バッフル134にて、各領域R1,R2,R3ごとに、副通路17の径を変化させることに加えて、副通路17の数を変化させる構成を採用してもよいことは勿論である。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1は、第1実施形態と同様に使用して同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態におけるバッフル134は、第2、第3、第4、第5、第8の各実施形態に適用してもよいことは勿論である。
また、図12では、バッフル134は、円板の中央部に、円形の開口部144を備えたリング状の構成のものを例示した。これに対し、本実施形態におけるバッフル134の領域R1,R2,R3ごとに副通路17の径を変えるという考えは、図9(a)(b)(c)に示した第6実施形態におけるシングルセグメンタル形式のバッフル132a,132bや、図10(a)(b)(c)に示した第7実施形態におけるダブルセグメンタル形式のバッフル133a,133bに対して、それぞれ、領域R1,R2,R3ごとに副通路17の径を変える構成として適用してもよい。
[第10実施形態]
また、前記各実施形態および応用例は、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成として、バッフル13a,13b,130a〜130d,131a〜131c,132a,132b,133a,133bにて、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記Xa+Xbの値が順次大きくなる構成を例示した。
また、前記各実施形態および応用例は、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成として、バッフル13a,13b,130a〜130d,131a〜131c,132a,132b,133a,133bにて、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記Xa+Xbの値が順次大きくなる構成を例示した。
これに対し、本発明の多管式熱交換器は、バッフルにて、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2の流動抵抗が順次小さくなる構成として、バッフルの開口部からの距離が異なる領域ごとに、バッフルの厚さを変化させる構成を採用してもよい。
図13は、多管式熱交換器の第10実施形態を示すもので、図13(a)はバッフルの四半円の部分を容器軸心方向の片側から見た図、図13(b)(c)(d)は、バッフルにおける開口部からの距離が異なる位置に設けられた管挿通孔および副通路について、それぞれの断面を拡大して示す図である。
なお、本実施形態の多管式熱交換器1は、バッフルの構成以外は図1に示した第1実施形態と同様である。また、図13(a)(b)(c)(d)において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の多管式熱交換器1は、図13(a)に示す如きバッフル135を備えている。
本実施形態におけるバッフル135は、図13(a)に示すように、第1実施形態におけるバッフル13a,13bと同様に、開口部145からの距離に応じて複数の同心円状の領域R1,R2,R3が設定されている。
更に、バッフル135は、図13(d)に示す最も外周寄りの領域R3における厚さに比して、図13(c)に示すように、より内周側に位置する領域R2では厚さが減少し、図13(b)に示すように、更に内周側に位置する領域R1では、更に厚さが減少した構成を備えている。
なお、図13(a)(b)(c)(d)に示すように、各領域R1,R2,R3には、同様の径を備えた副通路17が、同様の配置で設けられている。
したがって、本実施形態では、バッフル135にて、開口部145からの距離が異なる領域R1,R2,R3ごとに、隙間および副通路17の流路長を相違させることで、胴側流体F2の流動抵抗を、流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて順次小さくなるようにしている。
なお、図示しないが、バッフル135にて、各領域R1,R2,R3ごとに、バッフル135自体の厚さを変化させることに加えて、副通路17の数や径を変化させる構成を採用してもよいことは勿論である。
以上の構成としてある本実施形態の多管式熱交換器1は、第1実施形態と同様に使用して同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態におけるバッフル135は、第2、第3、第4、第5、第8の各実施形態に適用してもよいことは勿論である。
また、図13(a)では、バッフル135は、円板の中央部に、円形の開口部145を備えたリング状の構成のものを例示した。これに対し、本実施形態におけるバッフル135の領域R1,R2,R3ごとにバッフル135自体の厚さを変えるという考えは、図9(a)(b)(c)に示した第6実施形態におけるシングルセグメンタル形式のバッフル132a,132bや、図10(a)(b)(c)に示した第7実施形態におけるダブルセグメンタル形式のバッフル133a,133bに対して、それぞれ、領域R1,R2,R3ごとに厚さを変える構成として適用してもよい。
[胴側流体の流通経路のパターン]
ここで、前述の各実施形態および応用例から明らかとなる流通領域8における胴側流体F2の流通経路のパターンについて述べる。
ここで、前述の各実施形態および応用例から明らかとなる流通領域8における胴側流体F2の流通経路のパターンについて述べる。
本発明の多管式熱交換器は、容器2の胴7内における胴側流体F2の流通領域8に、容器軸心方向の複数個所に配置された複数のバッフルを備える。
各バッフルは、管群9の各伝熱管10を挿通させる管挿通孔16を備えると共に、容器軸心方向に胴側流体F2を通す開口部を形成可能なものとする。
更に、各バッフルは、一方の面側に形成される流入区画における胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、隙間と副通路17とを合わせた胴側流体F2に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成を備えている。
これにより、流通領域8には、各バッフルで仕切られて、胴側流体F2を管群直交流として流通させる区画を、容器軸心方向に3区画以上の複数区画で備える。なお、バッフルは、前記開口部を形成できれば、リング状と欠円形状のいずれであってもよい。また、容器軸心方向に配列される区画の数は、奇数と偶数のいずれであってもよい。
容器軸心方向に配列された各区画は、胴側流体F2が容器2外から容器2内へ流入する流入区画と、胴側流体F2が容器2内から容器2外へ流出する流出区画とに交互に設定される。この際、容器軸心方向の一端側から奇数番目の区画を流入区画とし、且つ偶数番目の区画を流出区画とする構成と、容器軸心方向の一端側から奇数番目の区画を流出区画とし、且つ偶数番目の区画を流入区画とする構成のいずれを採用してもよい。
また、各区画の流路幅は、以下の2つの条件を満たすように設定される。
第1の条件は、各バッフルを基準とする仮想のパスにおける流入路の流路幅と、流出路の流路幅との比率が、1:1に設定されるという条件である。
第2の条件は、各バッフルを基準とする仮想のパスは、流入路の流路幅同士、流出路の流路幅同士が同様に設定されるという条件である。
したがって、本発明の多管式熱交換器にて、胴側流体F2の流通領域8に複数のバッフルで仕切られて形成される複数の区画の流路は、一般化すると、以下のように設定される。なお、バッフルを基準とする仮想のパスにおける流入路の流路幅、および、流出路の流路幅は、共にwとする。
流通領域に形成される区画の数が奇数、偶数のいずれの場合も、流通領域に形成される各区画の流路幅の比は、「w,2w,w」、「w,2w,…,w」(…の部分は「2w」の繰り返し)というように設定される。
以上の構成を備えた本発明の多管式熱交換器によれば、各流入区画に供給された胴側流体F2の圧力を同様にすることにより、すべての区画について、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
また、以上の構成を備えた本発明の多管式熱交換器によれば、各流出区画の出口側での胴側流体F2の圧力(背圧)を同様にすることによっても、すべての区画について、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができる。
更に、これらいずれの場合も、本発明の多管式熱交換器によれば、胴側流体F2の流通領域8に、複数のバッフルで仕切られて胴側流体F2を管群直交流として流通させる3段以上の区画を備えた構成にて、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができる。
なお、前記流路幅の寸法については、厳密に限定されるものではなく、製造時の誤差など、本発明の効果が得られる範囲で許容される誤差を含んでいてもよいことは勿論である。
更に、容器軸心方向の両端部に位置する区画以外の中間部の区画には、第2実施形態に示した仕切板37を備えた構成としてもよい。仕切板37を備える構成とする場合は、1つの区画内で仕切板37の両側に形成される2つの分割流路に対して、胴7の周壁に個別の開口部を備える構成としてもよい。また、このように各分割流路に対し個別の開口部を備える場合は、該各開口部に対して共通のヘッダを備える構成としてもよいし、個別のヘッダを備える構成としてもよい。
また、本発明は前述の各実施形態および応用例のみに限定されるものではない。
本発明におけるバッフルは、片面側の流入区画における第2の流体としての胴側流体F2の流通方向の上流側から、下流側に向けて、管挿通孔16と伝熱管10との隙間と、副通路17とを合わせた前記第2の流体に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成を備えていればよい。このように、バッフルに、前記隙間と副通路17とを合わせた前記第2の流体に対する流動抵抗を変化させるための手段としては、副通路17の数を変化させること、副通路17の径を変化させて副通路17の流路断面積を変化させること、バッフルの板厚を変化させて副通路17や前記隙間の流路長を変化させること、更には、管挿通孔16の径を変化させて伝熱管10との隙間の流路断面積を変化させること、の4つの手段のうち、いずれを採用してもよい。また、バッフルは、これら4つの手段のうちの複数の手段を、任意の組み合わせで採用してもよい。
更に、バッフルは、流入区画における上流側から下流側に向けて、管挿通孔16と伝熱管10との隙間と、副通路17とを合わせた前記第2の流体に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成を備えていれば、一枚のバッフルの中で、部分ごとに、前記流動抵抗を変化させる手段が異なっていてもよいし、複数の手段の組み合わせが異なっていてもよい。また、複数の手段を組み合わせて或る流動抵抗を得る場合は、バッフルの中で、部分ごとに、個々の手段の寄与率が変化していてもよい。
また、流通領域8に設けられる各バッフルは、隙間と、副通路17とを合わせた前記第2の流体に対する流動抵抗が、すべてのバッフルで同様の分布となるようにしてあれば、個々のバッフルにおける、前記隙間と副通路17とを合わせた前記第2の流体に対する流動抵抗を変化させるための構成は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ヘッダ部材19a,19b,19cや、ヘッダ部材42a,42bを別々の部材とした構成を示したが、胴7の外面に沿って容器軸心方向に延びる樋状の部材の内部空間を仕切板で仕切ることで、容器軸心方向に分配ヘッダおよび集合ヘッダを適宜形成させる構成としてもよい。
流通領域8に設けるバッフルの数は、5以上としてもよい。したがって、本発明の多管式熱交換器は、流通領域8に、容器軸心方向に6以上の区画を備える構成としてもよい。
管群9における各伝熱管10の配列としては、三角配列を例示したが、正方配列などの図示した以外の規則配列や、その他、任意の配列を採用してもよい。また、各伝熱管10の径や本数、配列ピッチは適宜変更してよい。
容器2の軸心方向寸法と径寸法との比、容器2内における各管板3と5の設置位置、分配ヘッダ4と集合ヘッダ6の容積、各管板3と5同士の間隔、入口11と出口12の配置、各区画に対応して胴7の周壁に備える各開口部の容器軸心方向の寸法等は、管側流体F1と胴側流体F2の供給量や、温度条件等の熱交換処理に所望される種々の条件に応じて、図示したものから適宜変更してもよい。
管側流体F1および胴側流体F2は、ガスまたは液体のいずれであってもよい。
本発明の多管式熱交換器は、いかなる熱交換処理を行う熱交換器に適用してもよい。
本発明の多管式熱交換器は、容器2の軸心方向を、上下方向以外のいかなる方向に向けた姿勢で用いるようにしてもよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明の多管式熱交換器について、図14(a)に示した如き管路網の解析モデルSを設定して、胴側流体F2の流量配分について管路網の解析手法による流動解析を行った。
図14(a)に示すように、解析モデルSは、胴側流体F2の流通領域8(図1参照)に、容器軸心方向にバッフル13a,13bにより仕切られて形成された3つの区画15a,15b,15cを備えた構成のものである。
更に、解析モデルSは、図6に示した第3実施形態の多管式熱交換器1bと同様に、区画15bには、仕切板37によって容器軸心方向に2分割された分割流路39a,39bを備えると共に、各分割流路39a,39bの外周側に個別の集合ヘッダ41a,41bを備えた構成としてある。これにより、区画15bについては、区画15aから主流とリークによる胴側流体F2の流入が生じる分割流路39aと、区画15cから主流とリークによる胴側流体F2の流入が生じる分割流路39bとを、独立した流路として取り扱うことができるようにしてある。
また、解析モデルSは、区画15aの外周側に分配ヘッダ24を備え、区画15cの外周側に分配ヘッダ25を備えた構成とされている。
図14(b)は、比較例の解析モデルScである。比較例は、従来の管群直交流形式の多管式熱交換器であって、胴側流体F2の流通領域に、容器軸心方向の3個所に胴側流体F2の流れ方向を変更するためのドーナツ状のバッフル2枚とディスク状のバッフル1枚を設けてなる4段流路構成としたものである。この比較例の構成について、管路網を設定して、上記と同様に、胴側流体F2の流量配分について流動解析を行った。
図14(b)において、符号a1〜a4は、流通領域の上部と下部に設けられた2枚のドーナツ状のバッフルb1,b3とその間の1枚のディスク状のバッフルb2により仕切られて形成された1段目から4段目の流路を示している。また、符号cは、1段目の流路a1の外周部に設けられた胴側流体F2の分配ヘッダ、符号dは、4段目の流路a4の外周部に設けられた胴側流体F2の集合ヘッダである。
比較例の解析モデルScは、各段の流路a1〜a4の流路幅を、本発明の多管式熱交換器の解析モデルSにおける区画15a、分割流路39a、分割流路39b、区画15cの流路幅と同様に設定してある。また、本発明の多管式熱交換器の解析モデルS、および、比較例の解析モデルScを用いた流動解析では、伝熱管10(図6参照)の配列は正三角形配列とし、配列の一辺の長さは、管ピッチ/管径=1.26として計算した。また、解析モデル全体に供給する胴側流体F2の流量の条件を同様に設定した。
なお、図14(a)(b)は、いずれも、左端が容器2(図6参照)の軸心位置を示し、右端側が容器2の外周部となっている。
また、解析モデルSおよび解析モデルScの計算条件では、胴側流体F2は、各伝熱管10の管内側における管側流体F1(図1(a)参照)の熱伝達率に比して管外側の熱伝達率が大きくなるように、密度、比熱、熱伝導率や流量を設定した。
図14(a)(b)において、図中の破線は管群9(図6参照)の設置領域を示している。また、図14(a)における丸付きの数字1〜22と丸付きの数字1´〜22´、および、図14(b)における丸付きの数字1〜42は、圧力の観測位置となる節点の番号を示している。図14(a)(b)の図中の数字は、各節点間の流路番号を示している。なお、図14(a)において、流路22〜29,22´〜29´は、バッフル13a,13bの管挿通孔16(図3参照)において管群9の伝熱管10との間に形成された隙間を通過するリークによる流路を示し、流路30〜37,30´〜37´は、バッフル13a,13bの副通路17を通過する分岐流れによる流路を示している。これは、たとえば、番号3の節点(丸付きの数字3が付された節点)と、番号20の節点(丸付きの数字20が付された節点)との間は、管挿通孔16と伝熱管10との隙間による流路番号29の流路と、副通路17による流路番号37の流路が並列に接続されることを示している。
また、図14(b)において、流路42〜49、流路50〜57、流路58〜65は、バッフルb1、バッフルb2、バッフルb3の管挿通孔で生じるリークによる流路を示している。
なお、図14(a)に示した解析モデルSでは、仕切板37は、管挿通孔38(図5(b)参照)と伝熱管10と間に、図14(a)に一点鎖線で示すように、分割流路39aと分割流路39bの双方に連通する隙間が存在しているが、前述したように、この隙間を通過する胴側流体F2の流れはほとんど生じない。よって、図14(a)の解析モデルSは、仕切板37を通過する胴側流体F2の流れはゼロとおくことができる。よって、分配ヘッダ24、区画15a、分割流路39a、集合ヘッダ41aからなる系統の管路網と、分配ヘッダ25、区画15c、分割流路39b、集合ヘッダ41bからなる系統の管路網とは、個別に設定して数値解析を行うことができる。この際、各系統の管路網は、図13(a)に示すように、仕切板37を中心に対称な配置として設定することができる。よって、流動解析は、1つの系統の管路網について実施すればよい。
流動解析は、図14(a)に示した解析モデルSと、図14(b)に示した解析モデルScについては、各節点における連続則と、任意の2節点間の圧力損失が経路によらず一定であること、を利用して管路網の流量配分を解析した。なお、後述する図18、図19、図20(a)(b)(c)(d)にて、流速一定を実現するXb/Xaの分布に関するRout/Rinの影響、Rout/dの影響、Reの影響についての解析では、管挿通孔16と伝熱管10との隙間、および、副通路17の分布は、管群直交方向の流速がすべて等しくなるように、順解析を繰り返す収束計算を行って算出している。
ここで、以下の説明で用いる記号を示す。
Routは管群9の設置領域の外半径、Rinは管群9の設置領域の内半径、dは伝熱管10の径、rは容器2の半径座標である。
Reは管群直交方向に沿う流れのレイノルズ数であり次の式で示される。
Re=(U・d)/ν
ここで、Uは隣接する伝熱管10同士の最小隙間断面積に基づく平均流速、νは流体の動粘性係数である。
Zは、バッフルの厚さt、管挿通孔の径D、伝熱管10の径dを基に、以下の式で定義される、パラメータ(隙間形状係数)である。
Z=2t/(D−d)
Xaは、前記したように或る領域に存在している隙間の流路断面積の和、Xbは、同じ領域に存在している副通路17の流路断面積の和である。
Routは管群9の設置領域の外半径、Rinは管群9の設置領域の内半径、dは伝熱管10の径、rは容器2の半径座標である。
Reは管群直交方向に沿う流れのレイノルズ数であり次の式で示される。
Re=(U・d)/ν
ここで、Uは隣接する伝熱管10同士の最小隙間断面積に基づく平均流速、νは流体の動粘性係数である。
Zは、バッフルの厚さt、管挿通孔の径D、伝熱管10の径dを基に、以下の式で定義される、パラメータ(隙間形状係数)である。
Z=2t/(D−d)
Xaは、前記したように或る領域に存在している隙間の流路断面積の和、Xbは、同じ領域に存在している副通路17の流路断面積の和である。
本発明の多管式熱交換器の解析モデルSについての解析結果は、図15、図16、図17、図18、図19、図20(a)(b)(c)(d)に示す。
図15は、容器2の半径方向に関する管群直交流の流量分布を示す解析結果である。なお、横軸は、容器2の半径を、管群9の設置領域の外半径で割ることにより無次元化した値である。また、Rout/Rin=10、Rout/d=33.3とし、Re=5.0×104の条件と、Re=6.6×103の条件についての結果を示している。
図16は、容器2の半径方向に関する管群直交流の流速分布を示す解析結果である。なお、図16における横軸は、図15と同様に無次元化した値である。また、解析の条件は、図15に示したと同様である。
図17は、容器の半径方向に関する全圧分布の解析結果である。なお、図17における横軸は、図15と同様に無次元化した値である。また、解析の条件は、Rout/d=33.3、Re=6.6×103とした場合についての結果を示している。図17における「◇」は、Rout/Rin=4の条件による結果であり、「○」は、Rout/Rin=10の条件による結果である。
図18は、流速一定を実現するXb/Xaの分布に関するRout/Rinの影響を示す結果である。横軸は、容器2の半径を、管群9の設置領域の内半径で割ることにより無次元化した値である。また、解析の条件は、Z=150、Rout/d=33.3、Re=6.6×103とした場合についての結果を示している。図18において、「○」は、Rout/Rin=20の条件による結果、「◇」は、Rout/Rin=10の条件による結果、「□」は、Rout/Rin=4の条件による結果、「△」は、Rout/Rin=2の条件による結果、をそれぞれ示している。
図19は、流速一定を実現するXb/Xaの分布に関するRout/dの影響を示す結果である。なお、図19における横軸は、図18と同様に無次元化した値である。また、解析の条件は、Z=300、Rout/Rin=10、Re=6.6×103とした場合についての結果を示している。図19において、「△」は、Rout/d=200の条件による結果、「×」は、Rout/d=133.3の条件による結果、「□」は、Rout/d=66.7の条件による結果、「◇」は、Rout/d=33.3の条件による結果、をそれぞれ示している。
図20(a)(b)(c)(d)は、流速一定を実現するXb/Xaの分布に関するReの影響を示す結果である。図20(a)は、Rout/Rin=20の場合、図20(b)は、Rout/Rin=10の場合、図20(c)は、Rout/Rin=4の場合、図20(d)は、Rout/Rin=2の場合の結果をそれぞれ示す。なお、図20(a)(b)(c)(d)における横軸は、図18と同様に無次元化した値である。また、解析の条件は、Z=150、Rout/d=33.3で統一している。
図20(a)(b)(c)(d)において、「△」は、Re=1.0×103、「◇」は、Re=6.6×103、「□」は、Re=5.0×104、の各条件による結果をそれぞれ示している。
図21は、比較例の解析モデルScについて、容器2の半径方向に関する各段の流路a1,a2,a3,a4における管群直交方向の流速分布の解析結果である。なお、横軸は、図15と同様に無次元化した値である。図21において、「×」は1段目の流路、「△」は2段目の流路、「□」は3段目の流路、「◇」は4段目の流路の流速をそれぞれ示している。
図15の結果は、本発明の多管式熱交換器の解析モデルSにおける上方から順に配列された区画15a、分割流路39a、分割流路39b、区画15cのそれぞれの流量分布を示しているが、すべて重なっている。このことから、本発明の多管式熱交換器では、仮想のパス当たりの流量プロファイルの均一化を図ることができることが分かる。
図16の結果は、本発明の多管式熱交換器の解析モデルSにおける上方から順に配列された区画15a、分割流路39a、分割流路39b、区画15cのそれぞれの流速分布を示しているが、すべて重なっている。更に、容器2の半径方向の異なる位置でも、流速はほぼ均一に保持できることが分かる。
一方、図21の結果からは、従来の多管式熱交換器では、各段の流路では、流速が異なり、更には、容器の径方向位置が変化することに伴って、管群直交方向の流速も変化していることが分かる。
したがって、図16の結果を図21の結果と比較することにより、本発明の多管式熱交換器では、胴側流体F2の流速を、胴側流体F2の流通経路の全域に亘り均一化を図ることができることが明らかである。よって、本発明の多管式熱交換器は、各伝熱管に、均一な熱交換能を得ることができる。
また、図18、図19、図20(a)(b)(c)(d)の結果からは、本発明の多管式熱交換器は、Re、Rout/d、Rout/Rinの各パラメータの変化に対しても、幅広く対応可能であることが分かる。本発明者等は、Re=1000〜50000、Rout/d=33.3〜200、Rout/Rin=2〜20の範囲で、流速一定を実現するXb/Xaの分布を得ることができる知見を得ている。
なお、Xb/Xaの値は、流入区画における上流側よりも下流側の方が胴側流体の流速が大とならないように設定すればよい。
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g 多管式熱交換器、2 容器、8 流通領域、9 管群、10 伝熱管、13a,13b バッフル、130a,130b,130c,130d バッフル、131a,131b,131c バッフル、132a,132b バッフル、133a,133b バッフル、134 バッフル、14a,14b 開口部、140a,140b,140c,140d 開口部、141a,141b,141c 開口部、142a,142b 開口部、143a,143b 開口部、144 開口部、15a,15b,15c 区画、150a,150b,150c,150d,150e 区画、151a,151b,151c,151d 区画、16 管挿通孔、17 副通路、27,27a 供給手段、28 供給ライン、29 供給ライン、31 圧力制御弁、33 圧力制御弁、37 仕切板、F1 管側流体(第1の流体)、F2 胴側流体(第2の流体)
Claims (4)
- 容器と、
前記容器内に該容器の一端側から他端側に延びる方向に沿って配置されて、第1の流体を流通させる伝熱管の管群と、
前記容器内における前記管群の各伝熱管の外側に設けられた第2の流体の流通領域とを備え、
前記第2の流体の流通領域には、前記各伝熱管を挿通させる管挿通孔と開口部と副通路を備えた複数のバッフルで仕切られて形成されて、前記第2の流体が管群直交流として流通する区画を、3区画以上の複数区画で備え、
前記複数区画は、前記第2の流体が前記容器の外部から内部へ流入する流入区画と、前記第2の流体が前記容器の内部から外部へ流出する流出区画とに交互に設定され、
更に、前記バッフルは、片面側の前記流入区画における前記第2の流体の流通方向の上流側から、下流側に向けて、前記管挿通孔と前記伝熱管との隙間と、前記副通路とを合わせた前記第2の流体に対する流動抵抗が、順次小さくなる構成を備えたこと
を特徴とする多管式熱交換器。 - 前記バッフルは、片面側の前記流入区画における前記第2の流体の流通方向の上流側から、下流側に向けて、或る領域に存在している前記隙間の流路断面積の和と、該領域に存在している前記副通路の流路断面積の和との合計値が、順次大きくなる構成を備えた
請求項1記載の多管式熱交換器。 - 前記複数区画のうち、両端部の区画を除く中間部の区画内に、前記伝熱管の長手方向に垂直な姿勢で配置された仕切板を備えた
請求項1または2記載の多管式熱交換器。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多管式熱交換器と、
前記多管式熱交換器に第2の流体を供給する供給手段とを備え、
前記供給手段は、前記多管式熱交換器に前記第2の流体を供給する各供給ライン、または、前記多管式熱交換器から前記第2の流体を回収する各回収ラインに、圧力制御弁を備えること
を特徴とする熱交換システム。
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-
2017
- 2017-12-13 JP JP2017239046A patent/JP2019105418A/ja active Pending
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