JP6801584B2 - マイクロチップ - Google Patents
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Description
このようなマイクロリアクタを用いた反応分析システムは、マイクロ・トータル・アナリシス・システム(以下、「μTAS」という。)と称されている。このμTASによれば、試薬の体積に対する表面積の比が大きくなることなどから高速かつ高精度の反応分析を行うことが可能となり、また、コンパクトで自動化されたシステムを実現することが可能となる。
接着剤によって2枚のマイクロチップ基板を接合する方法においては、接着剤が微小流路を構成する空間に染みだして微小流路が閉塞したり、微小流路を構成する空間の一部が狭くなって微小流路の径が不均一となったり、また、流路壁面の均質な特性に乱れが生じたりする、という問題がある。しかも、得られたマイクロチップ(接合体)において、高温高湿環境下にて両基板の間に剥離が生じる、という問題もある。
また、熱融着によって2枚のマイクロチップ基板を接合する方法においては、加熱溶融温度以上で融着した場合には加熱段階で流路溝がつぶれてしまったり、流路溝が所定の断面形状に保持されなかったりするため、マイクロチップの高機能化が困難となる、という問題がある。
そこで、近年、紫外線をマイクロチップ基板の接合面に照射することによって、当該マイクロチップ基板の接合面を活性化させ、その後、マイクロチップ基板を貼り合わせることによって接合する方法が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献4参照)。
すなわち、基板の接合面に照射される紫外線の照度、基板同士を接合する際における加圧圧力、加熱温度および加熱時間などの条件を高い精度で管理しても、得られる接合体の接合状態にばらつきが生じている。そのため、接合体によっては、基板同士の接合力が弱く、両基板が容易に剥離することがある。
特に、紫外線を利用して、少なくとも一方のマイクロチップ基板に流路溝が設けられたマイクロチップ基板同士を接合してマイクロチップを得る場合には、得られたマイクロチップによっては、接合力が弱い部分から微小流路を通過する液体が漏出するという不具合が発生することも考えられる。
このような問題は、接合体を高温高湿環境下において保管した場合に顕著である。
図10および図11を用いて説明する。
このようにして紫外線Lが照射された基板31,32の接合面31A,32Aは活性化される。具体的には、下記(1)〜(3)に示すような状態となる。すなわち、基板31,32の接合面31A,32Aは、化学反応が生じやすい状態となる。
(2)接合面31A,32Aにおいて高分子主鎖が切断されてラジカルが生成される。
(3)接合面31A,32Aに反応性の高い官能基(具体的には、酸素原子を含む官能基)が生成される。
このようにして積層した基板31,32を、適宜、加圧・加熱することにより、図10(d)に示すように、接合面31A,32B同士が接触した領域において脱水縮合反応が生じて酸素(O)の共有結合が生成され、その酸素の共有結合により、両ワークが強固に接合される。なお、脱水縮合反応の過程においては、図10(d)に示されているように、水(H2 O)と二酸化炭素(C2 O)が生成される。
前記第1のマイクロチップ基板と前記第2のマイクロチップ基板との間には、前記流路に沿って環状に形成された内側接合部と、当該第1のマイクロチップ基板および当該第2のマイクロチップ基板のそれぞれの外周縁部に沿って形成された外側接合部とが形成されており、当該内側接合部と当該外側接合部との間に、当該内側接合部を囲繞するように密閉空間が形成されていることを特徴とする。
また、このような構成の本発明のマイクロチップにおいては、前記密閉空間の圧力が50kPa以下であることが好ましい。
また、このような構成の本発明のマイクロチップにおいては、前記密閉空間の圧力が0.1MPa〜0.5MPaであればよく、0.1MPa〜0.2MPaであることがより好ましい。
しかも、密閉空間において、吸湿剤を充填すること、減圧状態とすること、乾燥不活性ガスを充填することによって、水分吸着機能または水分ブロック機能を付与して水分制御空間とすることにより、接合界面(内側接合部および外側接合部)に水分が浸透しやすい境界層が形成された場合であっても、当該水分制御空間の作用によって当該境界層における水分量の増加を抑制することができる。
従って、本発明のマイクロチップによれば、第1のマイクロチップ基板と第2のマイクロチップ基板との接合部において、水分量が大きくなることに起因する2枚の基板の間の剥離の発生を抑制することができることから、2枚の基板の接合部に、高い強度の接合状態が得られ、また貼り合わせ状態を長期間にわたって維持することが可能となる。
また、本発明のマイクロチップにおいては、密閉空間が流路を囲繞するように設けられていることから、当該密閉空間の作用により、保温効果および断熱効果が得られる。
図1は、本発明のマイクロチップの構成の一例を、第1のマイクロチップ基板側から見た状態を示す説明図である。図2は、図1のA−A線断面を示す断面図である。
このマイクロチップ10は、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16とが厚み方向に積層された状態で接合された略平板状のものであり、第1のマイクロチップ基板11の一面(図2における上面)が当該マイクロチップ10の表面とされている。マイクロチップ10の内部には、第1のマイクロチップ基板11の接合面(図2における下面)に形成された流路溝12よりなる微小流路Rが形成されている。すなわち、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との間には、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16の面方向に伸びる微小流路Rが形成されている。この微小流路Rは、一端において第1のマイクロチップ基板11の一面(マイクロチップ10の表面)に設けられた注入口13Aに連通し、他端において当該第1のマイクロチップ基板11の表面に設けられた排出口14Aに連通している。
第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16は、光透過性材料よりなる板状体である。この第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16を構成する光透過性材料としては、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂などの光透過性を有するプラスチック材料、および、石英ガラス等のガラス材料などが挙げられる。また、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16とは、同一の構成材料からなるものであってもよく、また異なる構成材料からなるものであってもよい。
この図の例において、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16は、いずれも、シクロオレフィンポリマー(COP)よりなるものである。第1のマイクロチップ基板11は、接合面の中央部に、直線状に伸びる、断面が矩形状の流路溝12が形成されており、また、当該流路溝12に連通する、円柱状の注入口用貫通孔13および円柱状の排出口用貫通孔14が形成された略矩形平板状のものである。また、第2のマイクロチップ基板16は、第1のマイクロチップ基板11の接合面と同等の縦横寸法の接合面(図2における上面)を有する矩形平板状のものである。そして、第1のマイクロチップ基板11に形成された流路溝12が、第2のマイクロチップ基板16によって閉塞されることにより微小流路Rが形成されている。
この図の例において、第1のマイクロチップ基板11の接合面には、流路溝12を囲繞するように矩形環状の密閉空間用凹所15が形成されており、この密閉空間用凹所15が第2のマイクロチップ基板16によって閉塞されることにより密閉空間Sが形成されている。また、微小流路Rと密閉空間Sとを隔てる内側障壁部22は、第1のマイクロチップ基板11の接合面における流路溝12と密閉空間用凹所15との間に形成された内側土手部分によって構成されている。そして、第1のマイクロチップ基板11の接合面における内側土手部分と第2のマイクロチップ基板16の接合面とが接合されることによって内側接合部21が形成されている。また、第1のマイクロチップ基板11の接合面においては、密閉空間用凹所15の外方側、すなわち外周縁部に外側土手部分が形成されており、その外側土手部分と第2のマイクロチップ基板16の接合面(具体的には、第2のマイクロチップ基板16の接合面の外周縁部)とが接合されることによって外側接合部26が形成されている。そして、外側土手部分により、外側障壁部27が構成されている。
図1においては、内側接合部21と外側接合部26とが、破線によって囲まれて示されている。
接合面の面積が10%未満の場合、接合性が必ずしも良好とはならないおそれがある。また、接合面の面積が40%を超えると密閉空間Sの体積が相対的に小さくなり、結果として水分制御機能が不十分となるおそれがある。
内側障壁部22の厚みが過小である場合には、マイクロチップ基板成形用の金型における微細加工が必要になり製造コストが高くなる。また金型において精密な端部処理を行う必要がある。精密な端部処理を怠るとヒケやバリなど、貼り合わせにとって阻害要因となる形状を含んだマイクロチップ基板が成形されてしまうという問題が生じる。また貼り合わせ面積が微小になるため、接合によっては製造したマイクロチップの機械的強さ(接合強さ)が低下するほか、形成した流路をマイクロチップの微小流路Rとして使用する際に、流れる流体の注入圧力等で生じる外力によって内側障壁部が破断してしまう。したがって、マイクロチップとしての品質に問題が生じるおそれがある。
この図の例において、内側障壁部22の厚みは、0.5mmである。
外側障壁部27の厚みが過小である場合には、貼り合わせ面積が微小になるため、内側障壁部26のときと同様、接合によって製造したマイクロチップの機械的強さ(接合強さ)が低下するほか、外側障壁部の破断に対する耐性に余裕がなくなるなど、マイクロチップとしての品質に問題が生じるおそれがある。
この図の例において、外側障壁部27の厚みは、0.5mmである。
具体的に説明すると、マイクロチップ10が、紫外線を照射した、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16の接合面を密着する過程を経て接合されたものである場合には、接合界面(具体的には、内側接合部21および外側接合部26)において、境界層が形成されることがある。その境界層は、活性化された接合面に存在していた官能基(具体的には、ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)およびアルデヒド基(−CHO)など)の一部が、脱水縮合反応、すなわち酸素の共有結合の生成に寄与せずに、接合界面に残存することに起因して形成され、水分からの影響を受けやすい、具体的には、水分が浸透しやすいものである。然るに、密閉空間Sが水分制御空間とされることによれば、水分吸着機能または水分ブロック機能により、境界層における水分量の増加を抑制することができるため、当該境界層の水分量が大きくなることに起因する第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との間の剥離の発生を抑制することができる。
而して、水分制御空間が水分吸着機能を有する場合には、内側接合部21および外側接合部26に浸透した水分が、水分制御空間に吸着される。具体的に説明すると、図3に示すように、マイクロチップ10においては、当該マイクロチップ10の周囲環境雰囲気を構成する気体中に存在する水分Wが外側接合部26(境界層)に浸透する場合、および、微小流路Rの雰囲気を構成する気体中に存在する水分Wや微小流路Rを流動する液体を構成する水分が内側接合部21(境界層)に浸透する場合がある。そのような場合において、水分制御空間が水分吸着機能を有することによれば、図4に示すように、内側接合部21および外側接合部26に浸透した水分Wが、水分制御空間に吸着される。そのため、内側接合部21および外側接合部26の水分量、すなわち残留する浸透水分量を低減させることができる。
本発明者らの実験によれば、減圧状態の密閉空間Sの圧力を50kPa以下とすることにより、内側接合部21および外側接合部26に浸透した水分の水分吸着機能を十分に密閉空間Sに持たせることが可能となり、水分に起因するマイクロチップ基板同士の剥離を十分に低減できることが分かった。
而して、水分制御空間が水分ブロック機能を有する場合には、図5に示すように、内側接合部21において、微小流路Rの雰囲気を構成する気体中に存在する水分Wや微小流路Rを流動する液体を構成する水分Wが浸透することを防止または十分に抑制することができる。また、外側接合部26において、マイクロチップ10の周囲環境雰囲気を構成する気体中に存在する水分Wが浸透することを防止または十分に抑制することができる。
また、乾燥不活性ガスにおける含有水分量は、露点温度−40℃以下であることが好ましい。
乾燥不活性ガスが充填された密閉空間Sの圧力が過小である場合には、水分ブロック機能が低下するおそれがある。
一方、乾燥不活性ガスが充填された密閉空間Sの圧力が過大である場合には、マイクロチップ基板同士の接合力が弱くなるおそれがある。
以下、マイクロチップ10の製造方法の具体例を、図を用いて説明する。
以下において、第1の製造方法は、密閉空間Sを、吸湿剤を充填することによって水分吸着機能を有する水分制御空間として用いるマイクロチップ10を製造する方法である。第2の製造方法は、密閉空間Sを、減圧状態とすることによって水分吸着機能を有する水分制御空間として用いるマイクロチップ10を製造する方法である。また、第3の製造方法は、密閉空間Sに、大気圧または陽圧で乾燥不活性ガスを封入することによって、当該密閉空間Sを水分ブロック機能を有する水分制御空間として用いるマイクロチップ10を製造する方法である。
まず、図6に示すように、例えばCOPよりなる第1のマイクロチップ基板11と、例えばCOPよりなる第2のマイクロチップ基板16と、例えばシリカゲルよりなる吸湿剤29とを用意する。第1のマイクロチップ基板11は、接合面(図6(a)、図6(b)および図6(d)における上面)に流路溝12および密閉空間用凹所15が形成され、また注入口用貫通孔13および排出口用貫通孔14が形成された略矩形平板状のものである。また、第2のマイクロチップ基板16は、第1のマイクロチップ基板11の接合面と同等の縦横寸法の接合面(図6(c)における上面であって図6(d)における下面)を有する矩形平板状のものである。
吸湿剤充填工程においては、図6(a)に示すように、第1のマイクロチップ基板11における密閉空間用凹所15に吸湿剤29を充填する。
この吸湿剤充填工程において、密閉空間用凹所15に吸湿剤29を充填する具体的な方法としては、例えば、粉末状の乾燥剤粉末をエタノールに分散させ、この分散液をピンセットや筆、ディスペンサーで密閉空間用凹所15の表面に塗布し、この塗布工程後の乾燥工程により溶媒であるエタノールを乾燥、除去することにより、当該密閉空間用凹所15に吸湿剤29を充填する手法が用いられる。
紫外線照射工程においては、図6(b)および図6(c)に示すように、吸湿剤充填工程を経た第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面のそれぞれに対して、酸素を含む雰囲気中(例えば、大気中)において、波長200nm以下の真空紫外線L1,L2を照射する。
この紫外線照射工程を経ることにより、真空紫外線L1,L2が照射された第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面が活性化される。具体的には、接合面に付着していた有機物が分解・除去され、また、接合面においてラジカルが生成されると共に、反応性の高い官能基(具体的には、酸素原子を含む官能基)生成される。ここに、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16がCOPよりなる場合には、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面は、紫外線照射工程を経ることにより、ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)およびアルデヒド基(−CHO)などの官能基が結合した状態となる。
第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面の各々に照射される真空紫外線L1,L2の照度は、例えば10〜100mW/cm2 であり、特に40mW/cm2 が好ましい。
また、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ16の接合面の各々に対する真空紫外線L1,L2の照射時間は、第1のマイクロチップ基板11および第2のマクロチップ基板16の構成材料、および第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16の接合面の状態などに応じ、吸湿剤29の種類を考慮して適宜設定されるが、例えば5〜120秒間であり、特に60秒間が好ましい。
接合工程においては、図6(d)に示すように、紫外線照射工程を経た第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16を、それぞれの接合面が互いに密着した状態となるように積層する。その後、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との積層体を、加圧または加熱する。あるいは、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との積層体を、加圧しながら加熱する。
この接合工程を経ることにより、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16の接合面同士が接触した領域、すなわち接合界面において、脱水縮合反応が生じて酸素(O)の共有結合が生成され、その酸素の共有結合により、両マイクロチップ基板が強固に接合される。その結果、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16とが接合され、密閉空間Sが、吸湿剤29の充填によって水分吸着機能を有する水分制御空間とされてなるマイクロチップ10が得られる。
積層体を加圧した後に加熱することによれば、加圧後の積層体における接合界面に、十分な接合状態が得られている部分と、十分な接合状態が得られていない部分とが混在している場合であっても、加熱により、十分な接合状態が得られていない部分において、その接合状態を、所期の状態とすることができる。
紫外線照射工程が完了してから接合工程を開始するまでの時間が10分間を超える場合には、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面に、水分(余剰水分)や不純物が再付着するおそれがある。そのため、得られるマイクロチップ10において、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との間に、高い強度の接合状態を確実に達成することが困難となるおそれがある。
まず、図7に示すように、例えばCOPよりなる第1のマイクロチップ基板11と、例えばCOPよりなる第2のマイクロチップ基板16とを用意する。第1のマイクロチップ基板11は、接合面(図7(a)および図7(c)における上面)に流路溝12および密閉空間用凹所15が形成され、また注入口用貫通孔13および排出口用貫通孔14が形成された略矩形平板状のものである。また、第2のマイクロチップ基板16は、第1のマイクロチップ基板11の接合面と同等の縦横寸法の接合面(図7(b)における上面であって図7(c)における下面)を有する矩形平板状のものである。
紫外線照射工程においては、図7(a)および図7(b)に示すように、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面のそれぞれに対して、酸素を含む雰囲気中(例えば大気中)において、波長200nm以下の真空紫外線L1,L2を照射する。
この紫外線照射工程を経ることにより、真空紫外線L1,L2が照射された第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面が活性化される。具体的には、接合面に付着していた有機物が分解・除去され、また、接合面においてラジカルが生成されると共に、反応性の高い官能基(具体的には、酸素原子を含む官能基)生成される。
第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面の各々に照射される真空紫外線L1,L2の照度は、例えば10〜100mW/cm2 であり、特に40mW/cm2 が好ましい。
また、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ16の接合面の各々に対する真空紫外線L1,L2の照射時間は、第1のマイクロチップ基板11および第2のマクロチップ基板16の構成材料、および第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16の接合面の状態などに応じて適宜設定されるが、例えば5〜120秒間であり、特に60秒間が好ましい。
接合工程においては、まず、紫外線照射工程を経た第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16が存在する雰囲気、すなわち第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ16との接合を行う雰囲気を、減圧雰囲気(真空雰囲気)とする。次いで、図7(c)に示すように、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16を、それぞれの接合面が互いに密着した状態となるように積層する。その後、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との積層体を、加圧または加熱する。あるいは、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との積層体を、加圧しながら加熱する。
この接合工程を経ることにより、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16の接合面同士が接触した領域、すなわち接合界面において、脱水縮合反応が生じて酸素(O)の共有結合が生成され、その酸素の共有結合により、両マイクロチップ基板が強固に接合される。その結果、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16とが接合され、密閉空間Sが、減圧状態とされることによって水分吸着機能を有する水分制御空間とされてなるマイクロチップ10が得られる。
減圧雰囲気の雰囲気圧力が過大である場合には、得られるマイクロチップ10において、密閉空間Sに、所期の水分吸着機能を付与することができなくなるおそれがある。
積層体を加圧した後に加熱することによれば、加圧後の積層体における接合界面に、十分な接合状態が得られている部分と、十分な接合状態が得られていない部分とが混在している場合であっても、加熱により、十分な接合状態が得られていない部分において、その接合状態を、所期の状態とすることができる。
紫外線照射工程が完了してから接合工程を開始するまでの時間が10分間を超える場合には、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面に、水分(余剰水分)や不純物が再付着するおそれがある。そのため、得られるマイクロチップ10において、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との間に、高い強度の接合状態を確実に達成することが困難となるおそれがある。
まず、図8に示すように、例えばCOPよりなる第1のマイクロチップ基板11と、例えばCOPよりなる第2のマイクロチップ基板16とを用意する。第1のマイクロチップ基板11は、接合面(図8(a)および図8(c)における上面)に流路溝12および密閉空間用凹所15が形成され、また注入口用貫通孔13および排出口用貫通孔14が形成された略矩形平板状のものである。また、第2のマイクロチップ基板16は、第1のマイクロチップ基板11の接合面と同等の縦横寸法の接合面(図8(b)における上面であって図8(c)における下面)を有する矩形平板状のものである。
紫外線照射工程においては、図8(a)および図8(b)に示すように、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面のそれぞれに対して、酸素を含む雰囲気中(大気中)において、波長200nm以下の真空紫外線L1,L2を照射する。
この紫外線照射工程を経ることにより、真空紫外線L1,L2が照射された第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面が活性化される。具体的には、接合面に付着していた有機物が分解・除去され、また、接合面においてラジカルが生成されると共に、反応性の高い官能基(具体的には、酸素原子を含む官能基)生成される。
第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面の各々に照射される真空紫外線L1,L2の照度は、例えば10〜100mW/cm2 であり、特に40mW/cm2 が好ましい。
また、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ16の接合面の各々に対する真空紫外線L1,L2の照射時間は、第1のマイクロチップ基板11および第2のマクロチップ基板16の構成材料、および第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16の接合面の状態などに応じて適宜設定されるが、例えば5〜120秒間であり、特に60秒間が好ましい。
接合工程においては、まず、紫外線照射工程を経た第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16が存在する雰囲気、すなわち第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ16の接合を行う雰囲気を、含有水分量が著しく低い乾燥不活性ガスよりなる乾燥不活性ガス雰囲気とする。次いで、図8(c)に示すように、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16を、それぞれの接合面が互いに密着した状態となるように積層する。その後、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との積層体を、加圧または加熱する。あるいは、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との積層体を、加圧しながら加熱する。
この接合工程を経ることにより、第1のマイクロチップ基板11および第2のマイクロチップ基板16の接合面同士が接触した領域、すなわち接合界面において、脱水縮合反応が生じて酸素(O)の共有結合が生成され、その酸素の共有結合により、両マイクロチップ基板が強固に接合される。その結果、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16とが接合され、密閉空間Sが、乾燥不活性ガスが充填されることによって水分ブロック機能を有する水分制御空間とされてなるマイクロチップ10が得られる。
乾燥不活性ガス雰囲気の雰囲気圧力が上記の範囲外である場合には、得られるマイクロチップ10において、密閉空間Sに、所期の水分ブロック機能を付与することができなくなったり、マイクロチップ基板同士の接合力が弱くなるおそれがある。
積層体を加圧した後に加熱することによれば、加圧後の積層体における接合界面に、十分な接合状態が得られている部分と、十分な接合状態が得られていない部分とが混在している場合であっても、加熱により、十分な接合状態が得られていない部分において、その接合状態を、所期の状態とすることができる。
紫外線照射工程が完了してから接合工程を開始するまでの時間が10分間を超える場合には、第1のマイクロチップ基板11の接合面および第2のマイクロチップ基板16の接合面に、水分(余剰水分)や不純物が再付着するおそれがある。そのため、得られるマイクロチップ10において、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との間に、高い強度の接合状態を確実に達成することが困難となるおそれがある。
しかも、密閉空間Sに水分吸着機能または水分ブロック機能を付与して水分制御空間とすることにより、接合界面(内側接合部21および外側接合部26)に水分が浸透しやすい境界層が形成された場合であっても、当該水分制御空間の作用によって当該境界層における水分量の増加を抑制することができる。
従って、マイクロチップ10によれば、内側接合部21および外側接合部26において、水分量が大きくなることに起因する、第1のマイクロチップ基板11と第2のマイクロチップ基板16との間の剥離の発生を抑制することができることから、当該内側接合部21および外側接合部26に、高い強度の接合状態が得られ、また貼り合わせ状態を長期間にわたって維持することが可能となる。
また、本発明のマイクロチップによれば、密閉空間Sが微小流路Rを囲繞するように設けられていることから、当該密閉空間Sの作用により、保温効果および断熱効果が得られる。
例えば、第2のマイクロチップ基板は、光透過性材料よりなるフィルム状体であってもよい。第2のマイクロチップ基板を構成するフィルム状体においては、接合性(接合強さ)および水分制御性(水分吸着機能)の観点から、厚みが小さいことが好ましく、例えば、フィルム状体の厚みは、50〜200μmである。このような構成の第2のマイクロチップ基板を備えたマイクロチップにおいて、密閉空間は、当該密閉空間を減圧状態とする手法によって水分吸着機能が付与されて、水分制御空間として利用される。このマイクロチップにおいては、図9に示すように、密閉空間Sの圧力と周囲環境雰囲気の雰囲気圧力との差の作用によって第2のマイクロチップ基板19(フィルム状体)が密閉空間用凹所15の底面15Aに向かう方向に撓み、当該第2のマイクロチップ基板19の接合面が当該底面15Aに接触した状態となる。そのため、密閉空間Sは、内側障壁部22による壁面に沿って環状に伸びる、断面が略直角三角形状の環状空間と、外側障壁部27による壁面に沿って環状に伸びる、断面が略直角三角形状の環状空間とにより構成されることとなる。ここに、内側障壁部22または外側障壁部27と第2のマイクロチップ基板19との最大離間距離は、当該第2のマイクロチップ基板19の厚みに応じて、例えば0.1〜2mm程度となる。
このような構成のマイクロチップによれば、密閉空間Sにおいて水分制御性(水分吸着機能)を得ることができると共に、内側接合部21および外側接合部26においてより一層高い接合強さを得ることができる。
(マイクロチップの製造例1)
図1および図2に示した構成に基いて、マイクロチップを作製した。
具体的には、まず、第1のマイクロチップ基板、第2のマイクロチップ基板および吸湿剤を用意した。
具体的には、第1のマイクロチップ基板としては、接合面とされる一面に、流路溝、当該流路溝に連通する貫通孔(注入口用貫通孔および排出口用貫通孔)および密閉空間用凹所が形成された略矩形平板状のCOP基板(縦寸法75.5mm×横寸法25.5mm×厚み3mm)を用意した。この第1のマイクロチップ基板において、流路溝は、幅800μm、長さ9000μm、深さ200μmの断面矩形状のものであり、接合面の中央部に形成されている。また、密閉空間用凹所は、幅1000μmの内側土手部分と幅1000μmの外側土手部分との間において、流路溝を囲繞するように形成された矩形環状のものであり、その断面形状は矩形状であって、深さは50μmである。
また、第2のマイクロチップ基板としては、矩形平板状のCOP基板(縦寸法75.5mm×横寸法25.5mm×厚み1mm)を用意し、また、吸湿剤(乾燥剤)としては、粉末状のシリカゲル、すなわちシリカゲル微粒子(平均粒径5.0μm)を用意した。
具体的に説明すると、紫外線照射工程を経た第1のマイクロチップ基板と、紫外線照射工程を経た第2のマイクロチップ基板とを、接合面が互いに対向し、その間に、密閉空間に適合した大きさの塩化コバルト紙(塩化コバルト(II)六水和物の試験紙)を挟んだ状態で積層した。塩化コバルト紙としては、予め乾燥させたものを用いた。そして、得られた積層体を、貼り合わせ装置の加圧ステージ上に載置し、当該加圧ステージ上において、当該積層体を構成する2枚のマイクロチップ基板の水分を除去するために、200秒間以下の条件によって予備加熱を行った。また、それと同時に、貼り合わせ装置の処理空間において真空排気を行った後、当該処理空間の雰囲気を適宜調整した。その後、貼り合わせ装置によって、積層体を、加圧力3000Nおよび加熱温度130℃の条件によって300秒間にわたって加熱しながら加圧した。
このようにして、第1のマイクロチップ基板と第2のマイクロチップ基板とが接合されており、密閉空間に塩化コバルト紙が配設されたマイクロチップ(以下、「マイクロチップ(1)」ともいう。)を得た。このマイクロチップ(1)は、密閉空間に吸湿剤が充填されることによって当該密閉空間が水分吸着機能を有する水分制御空間とされたものである。
なお、密閉空間に塩化コバルト紙が配設された構造としたのは、下記に示すようにマイクロチップを評価するためである。
作製したマイクロチップ(1)を、恒温恒湿槽内に配置し、温度40℃、湿度95%RHの環境条件下において最大で2週間放置した後、塩化コバルト紙における呈色反応の発生の有無および呈色反応発生箇所の分布、並びに、剥離の発生の有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
(マイクロチップの製造例2)
実施例1のマイクロチップの製造例1において、吸湿剤充填工程を経なかったこと、および、接合工程において、貼り合わせ装置の処理空間の雰囲気を真空雰囲気(雰囲気圧力100Pa)としたこと以外は当該マイクロチップの製造例1と同様にして、マイクロチップ(以下、「マイクロチップ(2)」ともいう。)を作製した。このマイクロチップ(2)は、密閉空間を減圧状態(雰囲気圧が100Paの真空状態)とすることによって当該密閉空間が水分吸着機能を有する水分制御空間とされたものである。
作製したマイクロチップ(2)について、実施例1と同様の手法によって、塩化コバルト紙における呈色反応の発生の有無および呈色反応発生箇所の分布、並びに、剥離の発生の有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
(マイクロチップの製造例3)
実施例2のマイクロチップの製造例2において、接合工程において、貼り合わせ装置の処理空間内の雰囲気を、含有水分量が露点温度換算で−40℃である乾燥窒素ガスの陽圧雰囲気(雰囲気圧力0.15MPa)としたこと以外は当該マイクロチップの製造例2と同様にして、マイクロチップ(以下、「マイクロチップ(3)」ともいう。)を作製した。このマイクロチップ(3)は、密閉空間に乾燥窒素ガスを陽圧(雰囲気圧0.15MPa)で封入することによって当該密閉空間が水分ブロック機能を有する水分制御空間とされたものである。
作製したマイクロチップ(3)について、実施例1と同様の手法によって、塩化コバルト紙における呈色反応の発生の有無および呈色反応発生箇所の分布、並びに、剥離の発生の有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
(マイクロチップの製造例4)
実施例2のマイクロチップの製造例2において、第2のマイクロチップ基板として、COP基板に代えて、厚みが100μmのCOP製のフィルム状体を用いたこと以外は当該マイクロチップの製造例2と同様にして、マイクロチップ(以下、「マイクロチップ(4)」ともいう。)を作製した。このマイクロチップ(4)は、密閉空間を減圧状態(雰囲気圧が100Paの真空状態)とすることによって当該密閉空間が水分吸着機能を有する水分制御空間とされたものである。
作製したマイクロチップ(4)について、実施例1と同様の手法によって、塩化コバルト紙における呈色反応の発生の有無および呈色反応発生箇所の分布、並びに、剥離の発生の有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
10A 外周面
11 第1のマイクロチップ基板
12 流路溝
13 注入口用貫通孔
13A 注入口
14 排出口用貫通孔
14A 排出口
15 密閉空間用凹所
15A 底面
16 第2のマイクロチップ基板
19 第2のマイクロチップ基板
21 内側接合部
22 内側障壁部
26 外側接合部
27 外側障壁部
29 吸湿剤
31 基板
31A 接合面
32 基板
32A 接合面
40 マイクロチップ
41 第1のマイクロチップ基板
42 流路溝
43 注入口用貫通孔
43A 注入口
44 排出口用貫通孔
44A 排出口
46 第2のマイクロチップ基板
48 接合部
R 微小流路
S 密閉空間
Claims (6)
- 第1のマイクロチップ基板および第2のマイクロチップ基板が接合されてなり、当該第1のマイクロチップ基板の表面に設けられた注入口および排出口に連通する、当該第1のマイクロチップ基板および第2のマイクロチップ基板の少なくとも一方の基板に形成された流路溝よりなる流路を内部に有するマイクロチップにおいて、
前記第1のマイクロチップ基板と前記第2のマイクロチップ基板との間には、前記流路に沿って環状に形成された内側接合部と、当該第1のマイクロチップ基板および当該第2のマイクロチップ基板のそれぞれの外周縁部に沿って形成された外側接合部とが形成されており、当該内側接合部と当該外側接合部との間に、当該内側接合部を囲繞するように密閉空間が形成されていることを特徴とするマイクロチップ。 - 前記密閉空間に、吸湿剤が充填されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
- 前記密閉空間が減圧状態とされていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
- 前記密閉空間の圧力が50kPa以下であることを特徴とする請求項3に記載のマイクロチップ。
- 前記密閉空間に、乾燥不活性ガスが充填されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
- 前記密閉空間の圧力が0.1MPa〜0.2MPaであることを特徴とする請求項5に記載のマイクロチップ。
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