JP2010043928A - バイオチップの製造方法およびバイオチップ - Google Patents

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Abstract

【課題】生体試料に悪影響を与えることなく、かつ、正確な生体検査が可能なバイオチップの製造方法を提供する。
【解決手段】第1基板(100)に試料を設けるべき反応流路(110)を形成する工程、反応流路との間に隔壁が介在するように、接着剤を充填するための接着剤流路(120)を第1基板(100)と第2基板(200)とに形成する工程、第2基板(200)に接着剤を注入するための注入孔(221)を設ける工程、第1基板(100)と第2基板(200)とを密着させる工程、注入孔(221)から接着剤(310)を注入する工程、接着剤(310)を硬化させる工程を備える。
【選択図】図6

Description

本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応によりプライマーを増幅するPCR(Polymerase Chain Reaction)の実施等に適したバイオチップの製造方法およびバイオチップに関する。
従来、基礎研究や臨床分野における使用を目的として、DNAやタンパク質等の生体分子が特定の分子と特異的に結合するという性質を利用したマイクロチップ(以下、「バイオチップ」という。)が広く開発されている。バイオチップは、僅かな生体分子の検体量で検査が行えるため反応効率が良く、迅速に生体分子を特定するためのツールとして注目されている。
このようなバイオチップの製造に関して、例えば、特開2008−8880号公報には、熱可塑性プラスチップフィルムを接着剤で接合する製造方法が記載されている(特許文献1)。フィルムや基板は微細加工技術を適用しやすく、バイオチップやマイクロチップの製造に適している。
ここで、DNAの溶液のなかから、自分の望んだ特定のDNA断片だけを選択的に増幅して、わずかなDNA断片から確実に生体反応を引き起こさせることができる原理および手法として、ポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」ともいう。)が知られている。このPCRによるDNA断片の増幅に用いる装置(以下、「PCRチップ」という。)としては、特表2005−519381号公報に記載されているように、小型チューブを複数個まとめて利用するものが開発されている(特許文献2、段落番号0002)。このPCRチップについても、微細加工が必要であることからフィルムや基板を貼り合わせて製造することが好ましいと考えられる。
ただし、接着剤はDNAと反応を生じる場合があるため、基板同士を接合してバイオチップを製造する際にはできれば接着剤を使用することを避けたい。このような、接着剤を使用せずに基板同士を接合する技術としては、特開平10−274638号公報に開示されているように、超音波ウェルダーを用いて局所的に加熱する方法や活性化接合法が開発されていた(特許文献3、段落0014、図2)。
特開2008−8880号公報 特表2005−519381号公報 特開平10−274638号公報
しかしながら、超音波ウェルダー法や活性化接合法は、局所的とはいえども高温になるため、例えば、PCRチップなど、基板の接合前にDNA断片等の試料を封入する必要があるバイオチップでは、接合処理の高温でDNAが反応しなくなってしまう可能性があり、このような接合法は利用できない。生体試料に悪影響を与えないような温度での接合となると、やはり接着剤を利用せざるを得ない。
一方、接着剤を利用した接合方法では、接合時に接着剤が反応流路に溢れ出ると、幾つかの不都合を発生するおそれがあった。まず、反応流路にはみ出た接着剤がDNAと反応してしまう可能性がある。また、仮にDNAに対して不活性な接着剤を利用したとしても、反応流路に接着剤が漏れ出ると反応流路の体積に影響を与えてしまう。バイオチップでは、生体分子の検体量が僅かであるため、反応流路の僅かな体積変化が定量検査における誤差の要因となってしまうのである。
そこで本発明の目的の一つは、生体試料に悪影響を与えることなく、かつ、正確な生体検査が可能なバイオチップの製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明のバイオチップの製造方法は、第1の基板および第2の基板を接合して構成されるバイオチップの製造方法であって、該第1の基板に試料を設けるべき反応流路を形成する工程と、該第1の基板または該第2の基板の少なくとも一方に接着剤を充填するための接着剤流路を形成する工程と、該第1の基板または該第2の基板のいずれか一方に該接着剤流路に接着剤を注入するための注入孔を設ける工程と、該第1の基板と該第2の基板とを密着させる工程と、該注入孔から該接着剤を注入する工程と、該接着剤を硬化させる工程と、を備えたことを特徴とする。
上記課題を解決するために、本発明のバイオチップは、接合された2つの基板により構成されるバイオチップであって、試料を設けるべき反応流路を備える第1の基板と、該第1の基板と接合される第2の基板と、を備え、該第1の基板または該第2の基板の少なくとも一方には接着剤を充填するための接着剤流路が形成されており、該第1の基板には、該反応流路と該接着剤流路との間に該接着剤流路に充填された接着剤が該反応流路に流れることを防止する隔壁が設けられており、該第1の基板または該第2の基板のいずれか一方には、該接着剤流路に接着剤を注入するための注入孔が設けられていることを特徴とする。
かかる発明によれば、第1の基板に形成される反応流路との間に隔壁が介在するように接着剤流路が形成されているので、第1の基板および第2の基板が接合後に注入孔から接着剤が注入されて接着剤流路に接着剤が充填されていっても、接着剤流路と反応流路との間の隔壁が障壁となって反応流路に接着剤が流れ込むことを防止する。よって、接着剤が試料やDNA溶液と反応したり、接着剤のはみ出しにより反応流路の容積を変化させたりすることが防止される。
ここで、前記第1の基板または前記第2の基板のいずれか一方に、前記接着剤流路に充填する接着剤を吸引するための吸引孔を形成する工程をさらに備えることは好ましい。すなわち、第1の基板または前記第2の基板のいずれか一方には、前記接着剤流路に充填する接着剤を吸引するための吸引孔が設けられている。かかる構成によれば、例え充填させる接着剤の粘度との兼ね合いで接着剤流路の流路抵抗が高いものであっても、吸引孔から吸引することで接着剤流路全長に亘って接着剤を充填することができ、減圧雰囲気にする必要がない。
ここで、前記第1の基板において、前記第2の基板との接合面に前記接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程をさらに備えることは好ましい。かかる構成によれば、第2の基板と接する第1の基板の接合面は接着剤に対して非親和性を示すことになるので、流路を超えて接着剤がはみ出すことを防止可能である。
また、前記第2の基板において、前記第1の基板との接合面に前記接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程をさらに備えることは好ましい。かかる構成によれば、第1の基板と接する第2基板の接合面は接着剤に対して非親和性を示すことになるので、流路を超えて接着剤がはみ出すことを防止可能である。
さらに接着剤流路において、少なくとも底面に前記接着剤に対する所定の親和性を付与する工程をさらに備えることは好ましい。かかる構成によれば、接着剤流路は少なくとも底面において接着剤に対し親和性を示すので、接着剤流路に沿って接着剤を流し易くなる。
ここで、前記接着剤流路の側面に、前記接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程をさらに備えることは好ましい。かかる構成によれば、接着剤の固化時に接着剤の収縮による引っ張り応力が第1の基板の接着剤流路底面と第2の基板との間にのみ作用し、接着剤流路の側壁に作用することがない。このため、接着剤の収縮に伴う強い引っ張り応力による基板の反りや破壊を防止することが可能である。
ここで、前記第1の基板と前記第2の基板とを密着させる工程の前に、前記反応流路に前記試料を付着させる工程をさらに備えることは好ましい。かかる工程によれば、PCRチップなど、試料を封入した状態で提供されるバイオチップを提供可能である。
ここで、前記接着剤流路を形成する工程では、前記第1の基板と前記第2の基板とに略半円形状の溝を形成するものであり、前記第1の基板と前記第2の基板とを密着させることにより断面が略円形状の前記接着剤流路が形成されることは好ましい。すなわち、前記第1の基板および前記第2の基板が接合されることにより断面が略円形状の前記接着剤流路が形成されているバイオチップである。かかる構成によれば、接着剤流路の断面が略円形状であるため、接着剤の収縮に伴う応力が均一にかかり、基板の反りや破壊を効果的に防止可能である。
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の実施形態における部材の形状、材料や、製造方法における条件は例示に過ぎず、実施形態に例示のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で任意に変形可能である。
(定義)
本明細書における用語を以下のように定義する。
「試料」:生体高分子(糖質、蛋白質(酵素やペプチド)、核酸(DNA、RNA)等)を含む有機化合物をいうが、無機化合物を除外するものではない。
「バイオチップ」:試料を定着させ、所定の溶液との生化学反応を生じさせるための装置をいい、少なくともPCR法によりDNA断片を増幅するための装置(PCRチップ)を含む。
「基板」:流路や孔を設けることが可能な部材であり、その平面形状や厚み等の外形には限定はなく、平面形状が矩形であっても多角形であっても円(楕円)形状であってもよい。また、必ずしも平板状である必要はなく曲面状を呈していてもよい。但し、流路に充填された接着剤を固化可能なようにエネルギーを透過または伝達しうる材料であることが好ましい。
「反応流路」:試料を付着させるための部位をいい、試料に生化学反応を生じさせるための所定の溶液を供給可能に構成されていればよく、必ずしも溶液が流れるように構成されている必要はない。
「接着剤流路」:接着剤を充填させるための部位をいい、接着剤を充填可能であればよく、必ずしも注入孔および吸引孔が設けられている必要はない。
「接着剤」:流路に充填され固化することによって第1の基板と第2の基板とを接着する材料であり、無機系、有機系、合成系のいずれであるかを問わない。また光硬化型、熱硬化型、光/熱硬化型のいずれであるかを問わない。特に比較的低い温度(例えば常温)でも硬化しうることが好ましい。
「親和性」「非親和性」:使用する接着剤に対する部材表面の濡れ性をいい、相対的に接着剤によく濡れる性質を「親和性がある」といい、接着剤をはじく性質を「非親和性がある」または「親和性がない」という。部材表面に対する接着剤の接触角で定量的に計測可能である。
「エネルギー」:接着剤を硬化させるために与えられるパワーであり、光を含む電磁波で与えられる場合や熱を直接伝達する場合を含む。
(実施形態1)
実施形態1は、断面が円形状の接着流路を有するPCRチップおよびその製造方法に関する。
(構造)
図1〜図3に、本実施形態1のPCRチップの構造を示す。図1は第1基板と第2基板とを離した状態での斜視図、図2は第1基板の構造を示す三面図、図3は第2基板の構造を示す三面図である。図2(a)は第1基板の平面図、図2(b)は平面図の2b−2b断面における断面図、図2(c)は平面図の2c−2c断面における断面図、図2(d)は平面図の2d−2d断面における断面図である。図3(a)は第2基板の平面図、図3(b)は平面図の3b−3b断面における断面図、図3(c)は平面図の3c−3c断面における断面図、図3(d)は平面図の3d−3d断面における断面図である。
図1に示すように、PCRチップ1は、第1基板100と第2基板200とを接合して構成される。第1基板100および第2基板200の材料としては、適度な耐熱性および機械的強度、並びに、生体高分子である試料や反応流路に供給される溶液に影響を与えない化学的安定性を有していればよい。
製造時の耐熱性については、充填させた接着剤を固化させるためにエネルギーを付与する場合には、少なくともその熱に対して耐性があることが要求される。使用時の耐熱性については、使用条件によって種々に変わるが、当該PCRチップ1では、PCR法によりDNAを増幅する際に繰り返し供給される100℃近い熱に対して耐性があることが要求される。製造時の機械的強度については、製造時のハンドリングにおいて損傷せず、接着剤を注入および吸引する際にも影響を受けず、かつ、接着剤が固化して体積が収縮することにより発生する引っ張り応力に抗して損傷を受けず、かつ、反りを生じないことが必要である。使用時の機械的強度については、使用時の熱の断続的な供給に対して反りを生じないことが要求される。なお、後に注入される接着剤を光(例えば紫外線)により硬化させる場合には、少なくとも光を照射する側の基板については、硬化用の光の波長に対してある程度の光透過性が必要である。以上のような条件を満たす基板材料としては、シクロオレフィン、ポリプロピレン等が挙げられる。第1基板100および第2基板200の厚みはPCRチップの仕様に応じて選択可能であるが、典型的には1.0〜0.5mmである。
図1および図2に示すように、第1基板100には、反応流路110と接着剤流路120とが形成されている。反応流路110は、試料を付着させ、DNA溶液を流通させる領域であり、供給領域111と排出領域112とを備えており、流路の中ほどに後述する試料を付着させるようになっている。接着剤流路120は、後述する接着剤を充填するための領域であり、接着剤が注入される注入領域121と、オプショナルで接着剤を吸引するための吸引領域122と、を備えている。接着剤流路120の全長は、後述する接着剤の粘度、接着剤の注入圧力、吸引圧力との兼ね合いで定まる。また接着剤の注入箇所の数および吸引箇所の数によっても変動する。
図2(b)、図2(c)、図2(d)に示すように、第1基板100の反応流路110は断面形状が矩形状である所定の深さの溝として形成されているが、断面形状を半円形状としてもよい。接着剤流路120は断面が半円形状の溝として形成されている。断面が半円形状の第1基板100の接着剤流路120は第2基板200と接合されることにより、第2基板200の接着剤流路220と整合して断面が略円形状の接着剤流路(以下、第1基板100と第2基板200とが接合されることにより密封されて形成される流路を「接着剤流路300」と称する。)を形成するようになっている。接着剤流路の断面が略円形状であると、接着剤の収縮に伴う応力が均一にかかり、基板の反りや破壊を効果的に防止可能である。反応流路110の深さおよび幅は付着させる試料に対して適正な溶液量となるように調整すべきである。
接着剤流路120の幅および深さは、第1基板100の厚みと充填する接着剤の粘度や硬化時の引っ張り応力に応じて種々に調整すべきである。すなわち、使用する接着剤を流路全長に亘って確実に充填するための流路抵抗を備えるべきであるし、第1基板100と第2基板200とを接合するために十分な引っ張り応力を発生させる接着剤の量が充填可能なように調整される。但し、基板の反りを防止し、機械的強度を保つため、基板の厚みの1/2を超えない程度の深さにすべきである。接着剤に十分な引っ張り応力を発生させて基板の反りを引っ張り応力で矯正するためには、基板の厚みの1/3程度が好適である。
第2基板200には、図1および図3に示すように、供給口211、排出口212、および接着剤流路220が形成されている。第2基板200は第1基板100と接合されることにより、上記反応流路110および接着剤流路120を密封するようになっている。供給口211および排出口212は、第1基板100と接合されることにより第1基板100の反応流路110における供給領域111および排出領域112とそれぞれ対向するようになっている。接着剤流路220は、接着剤を充填するための領域であり、接着剤が注入される注入孔221と、オプショナルで接着剤を吸引するための吸引孔222と、を備えている。注入孔221および吸引孔222は、第1基板100と接合されることにより第1基板100の接着剤流路120における注入領域121および吸引領域122とそれぞれ対向するようになっている。接着剤流路220の全長は、後述する接着剤の粘度、接着剤の注入圧力、吸引圧力との兼ね合いで定まる。また注入孔の数および吸引孔の数によっても変動する。
図3(b)、図3(c)、図3(d)に示すように、第2基板200の接着剤流路220は断面が半円形状の溝として形成されている。接着剤流路220は上述したように第1基板100と接合されることにより第1基板の接着剤流路120と整合して、断面が略円形状の接着剤流路300を形成するようになっている。接着剤流路220の幅および深さは、第1基板100について説明したように第2基板200の厚みと充填する接着剤の粘度や硬化時の引っ張り応力に応じて種々に調整することが可能である。なお、第2基板200には第1基板100の反応流路110に対向する位置に流路構造を設けてもよい。
図1〜図3から明らかなように、第1基板100と第2基板200とが接合されることにより、反応流路110と接着剤流路300との間に隔壁が形成されることになる。この隔壁が障壁となって反応流路110に接着剤が流れ込むことが防止される。
(製造方法)
次に図4〜図6を参照しながら本実施形態1におけるPCRチップの製造方法を説明する。図4〜図6は、図1〜図3で説明した第1基板100および第2基板200を、反応流路110、接着剤流路120および220、注入孔221、並びに吸引孔222を含めて模式的に示した製造工程断面図である。
本実施形態におけるPCRチップの製造方法は、以下の工程を備える。
(1)第1基板100に試料を設けるべき反応流路110を形成する工程、
(2)第1基板100に接着剤を充填するための接着剤流路120を形成する工程、
(3)接着剤流路120に接着剤に対する所定の親和性を付与する工程、
(4)第1基板100において、第2基板200との接合面に接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程、
(5)反応流路110に試料136を付着させる工程、
(6)第2基板200に、接着剤を充填するための接着剤流路120を形成する工程、
(7)第2基板200において、接着剤流路300に接着剤を注入するための注入孔221を設ける工程、
(8)第2基板200に、接着剤流路300に充填する接着剤を吸引するための吸引孔222を形成する工程、
(9)接着剤流路220に接着剤に対する所定の親和性を付与する工程、
(10)第2基板200において、第1基板100との接合面に接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程、
(11)第1基板100と第2基板200とを密着させる工程、
(12))注入孔221から接着剤310を注入する工程、および
(13)接着剤310を硬化させる工程。
図4は上記(1)〜(5)の各工程を説明する第1基板100の製造工程断面図である。図5は上記(6)〜(10)の各工程を説明する第2基板200の製造工程断面図である。図6は上記(11)〜(13)の各工程を説明する接合された第1基板100および第2基板200の製造工程断面図である。上記各工程の順序は一例に過ぎず、必ずしも上記工程断面図の順序で処理される必要はない。製造工程の簡略化やコストダウンの観点から工程の順序を入れ替えたり、複数の工程を同時に実行したりすることが可能である。
<第1基板:反応流路形成工程および接着剤流路形成工程>
図4(a)に示すように、第1基板100に反応流路110と接着剤流路120とを形成する。図4(a)では反応流路110と接着剤流路120とを同時に形成するように図示されているが、流路形成方法が異なる場合には順次流路を形成していくことになる。
本実施形態1では、流路形状を設けた金型を用いて反応流路110と接着剤流路120とを同時に射出成形する。射出成形を適用する理由は、第1基板100と第2基板200とを接合した際に断面が略円形状の接着剤流路300となるように、第1基板100に断面が略半円形状の接着剤流路120を好適に形成できるからである。例えば、反応流路110および接着剤流路120の形状を放電加工等の方法を適用して金属に形成して金型を作成する。そして既述のシクロオレフィン、ポリプロピレン等の樹脂を軟化する温度に加熱し、上記金型に所定の射出圧(例えば、10〜3000kgf/c)を加えて押込んで型に充填して成形する。
<第1基板:親和性付与工程>
図4(b)に示すように、オプショナルで、射出成形された第1基板100の流路形成面に対し、親和性を付与するための表面処理を行う。第1基板100の材料そのものが接着剤に対して十分な親和性を示す場合にはこの工程のように改めて表面処理を行う必要はない。
親和性を有するか否かは、流通させる流動体の性質によって変動する。一般に極性を有する分子(水など)を主体的に含む流動体に対しては、極性基(カルボニル基や水酸基等)が表面に配置される表面に対して親和性を示し、配置されていない表面に対して非親和性を示す。逆に極性を有しない分子(油など)を主体的に含む流動体に対しては、極性基が表面に配置されていない表面に対して親和性を示し、配置されている表面に対して非親和性を示す。実際には、表面と流動体との接触角を測定することにより、親和性の程度を相対的に判断すべきものである。
親和性を調整するための表面処理については、公知技術を種々に適用可能である。例えば、図4(b)に示すようにフッ素化合物または酸素ガスを含んだ導入ガス130を減圧雰囲気下または大気圧雰囲気下でプラズマ照射する。基板材料として無機材料を用いた場合、このようなプラズマ放電により未反応基が発生し、未反応基が酸化されてカルボニル基や水酸基等の極性基が発生する。このような極性基は水性の接着剤に対しては親和性を付与することが可能である。一方、基板材料として有機材料を用いた場合であってフッ素系化合物が酸素よりも多いと、上記反応と並行してフッ素系化合物が有機材料表面に入り込み、有機系の接着剤に対して親和性を付与することが可能である。基板材料が接着剤に対して非親和性を示していたとして、この工程により少なくとも接着剤流路120の底面に親和性が付与される。
<第1基板:非親和性付与工程>
図4(c)に示すように、オプショナルで、第1基板100において、第2基板200との接合面に接着剤に対する所定の非親和性を付与する。接着剤流路120と反応流路110との間の隔壁の幅が十分あったり密着性がよかったりして接着剤が反応流路110に流入するおそれが無い場合には当該工程は必要ない。
第1基板100の接着剤流路120内面の親和性を保ちながら、第2基板200との接触面を非親和性にする方法としては、接着剤流路120にマスクをしてから非親和性を与える表面処理をする方法が考えられる。また、第2基板200との接触面となる第1基板100の表面に非親和性を示す材料を塗布したり、上記表面処理により形成された親和性を示す分子(基)を取り除いたりすることが考えられる。例えば、図4(c)に示すように、ローラ132を用いて非親和性を示す材料、例えばフッ素化合物を第1基板100の表面に塗布する。この工程により、少なくとも接着剤流路120と反応流路110との間の隔壁の頂部が非親和性を有することとなる。
<第1基板:試料付着工程>
図4(d)に示すように、反応流路110の所定位置にPCR法のための試料136を付着させる。試料136はPCR法では増幅対象(テンプレート)となるDNAである。この工程は、予め試料をチップ内に付着させておくべき場合に必要となる処理であり、製造時に付着させる必要がないチップでは不要な工程である。また、この付着工程は、試料136に影響を与えない限り、先の工程において付着しておいてもよい。
<第2基板:反応流路形成工程および接着剤流路形成工程>
図5(a)に示すように、第2基板200に接着剤流路220を形成する。図4(a)で示した上記第1基板における接着剤流路形成と同様に、流路形状を設けた金型を用いた射出成形により接着剤流路220を形成する。例えば、接着剤流路220の形状を金属に形成して金型を作成する。そして既述のシクロオレフィン、ポリプロピレン等の樹脂を軟化する温度に加熱し、上記金型に所定の射出圧(例えば、10〜3000kgf/c)を加えて押込んで型に充填して成形する。
<第2基板:注入孔および吸引孔形成工程>
図5(b)に示すように、第2基板200の接着剤流路220の所定位置に接着剤を充填するための注入孔221を成形する。同時に、図5(b)に示すように、第2基板200の接着剤流路220の所定位置に接着剤を吸引するための吸引孔222をオプショナルで形成する。吸引しなくても接着剤の接着剤流路220への充填が可能であれば、吸引孔222を必ずしも形成する必要はない。吸引孔222を形成する場合には、注入孔221と同じ工程ができようできるため、同時に形成することが生産効率上有利である。孔形成方法としてはドリルやエッチング等の公知技術を適用すればよい。なお、注入孔221および吸引孔222は、第2基板200側に設ける必要はなく、いずれか一方または双方とも第1基板100側に設けてもよい。
<第2基板:親和性付与工程>
図5(c)に示すように、オプショナルで、射出成形された第2基板200の流路形成面に対し、親和性を付与するための表面処理を行う。第2基板200の材料そのものが接着剤に対して十分な親和性を示す場合にはこの工程のように改めて表面処理を行う必要はない。図4(b)で説明した上記第1基板に対する親和性付与工程と同様に、親和性を調整するための表面処理については、公知技術を種々に適用することが可能である。
<第2基板:非親和性付与工程>
図5(d)に示すように、オプショナルで、第2基板200において、第1基板100との接合面に接着剤に対する所定の非親和性を付与する。接着剤が第1基板100の反応流路110に流入するおそれが無い場合には当該工程は必要ない。図4(c)で説明した上記第1基板に対する非親和性付与工程と同様に、第2基板200において第1基板100との接触面を非親和性に加工する。この工程により、少なくとも接着剤流路220の内部を除き第1基板100との接合面が非親和性を有することとなる。
<密着工程>
図6(a)に示すように、第1基板100と第2基板200とを密着させる。密着させる際に、第1基板100の供給領域111、排出領域112、注入領域121、および吸引領域122が、第2基板200の供給口211、排出口212、注入孔221、および吸引孔222に、それぞれ対向するような向きで接合する。本実施形態では流路および孔の開口位置が幾何学的に平面対称となっているので、特に向きに留意する必要はない。少なくとも第1基板100の接着剤流路120と第2基板200の接着剤流路220とが適正位置で整合することにより、断面が略円形状の接着剤流路300が形成されるように密着させる。第1基板100と第2基板200とを密着させたら、接着剤注入時の応力により両基板が離間しないように治具301および302で密着した第1基板100および第2基板200を両側から加圧する。加圧の程度は、接着剤注入時に発生する応力に対抗し、かつ、その後の接着剤硬化によって基板に反りが生じない程度の圧力とする。治具301および302は接着剤の注入孔221および吸引孔222に対応する位置に接着剤注入用のノズル304および接着剤吸引用のノズル306を挿入するための開口を設けておく必要がある。また接着剤を光で硬化させる場合には接着剤硬化用の光を照射する側の治具を透明な材料、例えば石英ガラスで形成しておくことが好ましい。
<接着剤注入工程>
図6(b)(c)に示すように、第2基板200の注入孔221から接着剤310を注入する。まず図6(b)に示すように、接着剤注入用のノズル304を注入孔221に挿入し、オプショナルで、接着剤吸引用のノズル306を吸引孔222に挿入する。接着剤が治具に接触しないように接着剤流路300の中程までノズル304の先端を挿入することが好ましい。
次いで図6(c)に示すように接着剤注入用のノズル304から接着剤流路300に接着剤310を注入する。使用可能な接着剤310の条件としては、接着剤の粘度(粘性係数)、硬化時に収縮により発生する引っ張り応力、硬化に光または熱といったエネルギーが必要な場合には硬化に必要な光の波長や温度等がある。
接着剤310の粘度は接着剤流路300における接着剤の流動性に影響を与える。粘度が低いほど流れやすい。粘度の上限は、接着剤流路300の流路抵抗との兼ね合いで定まり、接着剤流路300の注入領域から吸入領域までの全長に亘って充填可能な程度であることを要する。注入に係る送液圧力が高いほど接着剤の粘度が高くてもよく、また、オプショナルで本実施形態のように吸引する場合には、吸引圧力が高いほど接着剤の粘度が高くでもよい。
引っ張り応力はPCRチップの使用時に加えられる周期的な熱の印加により基板に生じうる反りの力に十分抗するような大きさとする。例えば接着剤硬化に伴い発生する単位面積当たりの引っ張り応力をPa、熱サイクルで基板に発生する単位面積当たりの反りの力をPbとすれば、Pa≧10Pb、とするような接着剤を選択することが好ましい。逆に接着剤そのものの収縮率が大きすぎる場合には硬化時に流路の側壁を破壊する可能性があるため、収縮率が大きすぎないことも必要である。収縮率が大きすぎる場合には例えば接着剤流路300に詰まらない程度の微細なビーズを混入させて収縮率を適正な範囲になるよう調整する。
接着剤310の硬化に光や熱を要する場合には、硬化に必要な光の波長や温度が試料136に影響を与えないことを要する。例えば試料136にDNAが含まれる場合、一般に光の波長が300nmより短いとDNA錯を切断する可能性があるので、300nm以上の波長で硬化する接着剤であることを要する。また、試料136に含まれるDNAは100℃より高い温度で反応を生じたり切断されたりすることが多いため、100℃以下の温度で硬化することが好ましく、70℃以下で硬化することがさらに好ましく、理想的には生体高分子に影響を与えない温度、例えば常温で硬化する接着剤であることがさらに好ましい。
以上のような条件を満たす接着剤310としては、例えば協立化学産業(株)の接着剤、「ワードロック」(商品名)No.XVL−90等が挙げられる。図6(d)に示すように、上記条件を満たす接着剤310を接着剤流路300の全長に亘って充填し終わったら、ノズル304およびノズル306を引き抜く。
<接着剤硬化工程>
図6(d)に示すように、接着剤310が光硬化型である場合には、治具301および302で第1基板100と第2基板200とを圧着させたまま、所定の光308を照射して接着剤310を硬化させる。例えば、試料136に影響を与えない300nm以上の波長を有する紫外線を照射する。第1基板100と第2基板200とを密着させるに足りる引っ張り応力を発生する程度にまで接着剤310が硬化したら、治具301および302を取り外す。以上で、PCRチップ1の製造工程が終了する。
以上、本実施形態1のPCRチップおよびその製造方法によれば、以下の利点を有する。
(1)反応流路110との間に隔壁が介在するように接着剤流路300が形成されているので、接着剤310が充填される際に反応流路110へ接着剤310が流れ込むことが防止される。このため、接着剤が反応流路へはみ出すことによって反応流路の容積を変動させて定量検査に誤差を生じたり気泡を生じて反応流路に流通させる溶液の流通を阻害したりすることが防止できる。また試料に含まれるDNAに影響を与える性質を有する接着剤も、上記接着剤に要求される条件を満たしている限り使用することができるため、接着剤選択の範囲を拡げることができる。
(2)第2基板200に吸引孔222を形成するので、接着剤流路300に注入する接着剤310の粘度が高いものであっても、接着剤流路300の流路抵抗に抗して接着剤310を充填することができる。このため、接着剤310の選択範囲を拡げ、また、接着剤流路300の流路抵抗を下げるための措置(例えば減圧雰囲気にすること)を必要とすることができる。
(3)第1基板100および第2基板200において対向する基板との接合面に非親和性を付与してあるので、注入圧力が高すぎたり接着剤310の粘度が低すぎたりしても接着剤流路300を超えて反応流路110に接着剤310がはみ出すことを防止可能である。粘度が低い接着剤310を使用することも可能であるという点で、接着剤選択の余地を拡げることができる。
(4)接着剤流路300に接着剤310に対する親和性を付与したので、接着剤流路300の流路抵抗を下げ、接着剤310を充填しやすくなる。接着剤310の粘度が高くても接着剤310を充填できるという点で、接着剤選択の余地を拡げることができる。
(5)第1基板100と第2基板200とに略半円形状の溝が形成され、両基板を密着させることにより断面が略円形状の接着剤流路300を形成するので、接着剤310の収縮に伴う引っ張り応力が均一にかかり、基板の反りや流路の破壊を効果的に防止可能である。
(実施形態2)
実施形態2は、断面が矩形状の接着流路を有するPCRチップおよびその製造方法に関する。上記実施形態1と同様の構成については同じ符号を付すものとし、上記実施形態1と同様の説明が当てはまる。
図7および図8に、本実施形態2のPCRチップの構造を示す。図7は実施形態2の第1基板100Bの構造を示す三面図、図8は実施形態2の第2基板200Bの構造を示す三面図である。図7(a)は第1基板100Bの平面図、図7(b)は平面図の7b−7b断面における断面図、図7(c)は平面図の7c−7c断面における断面図、図7(d)は平面図の7d−7d断面における断面図である。図8(a)は第2基板200Bの平面図、図8(b)は平面図の8b−8b断面における断面図、図8(c)は平面図の8c−8c断面における断面図、図8(d)は平面図の8d−8d断面における断面図である。
本実施形態2のPCRチップは、上記実施形態1と同様、第1基板100Bと第2基板200Bとを接合して構成される。基板材料についても上記実施形態1の第1基板100および第2基板200と同様である。
図7に示すように、第1基板100Bには、反応流路110と接着剤流路120Bとが形成されている。反応流路110については上記実施形態1と同様である。接着剤流路120Bは、接着剤を充填するための領域であり、平面形状については、上記実施形態1と同様に、接着剤が注入される注入領域121と、オプショナルで接着剤を吸引するための吸引領域122と、を備えている。接着剤流路120Bの全長は、後述する接着剤の粘度、接着剤の注入圧力、吸引圧力との兼ね合いで定まる。また接着剤の注入箇所の数および吸引箇所の数によっても変動する。
図7(b)、図7(c)、図7(d)に示すように、接着剤流路120Bは、上記実施形態1と異なり、断面が矩形状の溝として形成されている。接着剤流路120Bの幅および深さは、第1基板100Bの厚みと充填する接着剤の粘度や硬化時の引っ張り応力に応じて種々に調整される。すなわち、使用する接着剤を流路全長に亘って確実に充填するための流路抵抗を備えるべきであるし、第1基板100Bと第2基板200Bとを接合するために十分な引っ張り応力を発生させる接着剤の量が充填可能なように調整される。但し、基板の反りを防止し、機械的強度を保つため、基板の厚みの1/2を超えない程度の深さにすべきである。接着剤に十分な引っ張り応力を発生させて基板の反りを引っ張り応力で矯正するためには、基板の厚みの1/3程度が好適である。
図8に示すように、第2基板200Bには、供給口211および排出口212が形成される点で上記実施形態1と同じであるが、接着剤流路が形成されない点で上記実施形態1と異なる。すなわち、当該第2基板200Bは第1基板100Bと接合されることにより、上記接着剤流路120Bを密封する蓋として機能するように構成されている。また、第2基板200Bには、接合時に第1基板100Bの接着剤流路120Bの注入領域121に対応する位置に接着剤が注入される注入孔221と、接着剤流路120Bの吸引領域122に対応する位置にオプショナルで接着剤を吸引するための吸引孔222と、を備えている。
図7および図8から明らかなように、第1基板100Bと第2基板200Bとが接合されることにより、反応流路110と接着剤流路120Bとの間に隔壁が形成されることになる。この隔壁が障壁となって反応流路110に接着剤が流れ込むことが防止される。
本実施形態2におけるPCRチップの製造方法は、以下の工程を備える。
(1)第1基板100Bに試料を設けるべき反応流路110を形成する工程、
(2)第1基板100Bに反応流路110との間に隔壁が介在するように、接着剤を充填するための接着剤流路120Bを形成する工程、
(3)接着剤流路120Bに接着剤に対する所定の親和性を付与する工程、
(4)第1基板100Bにおいて、第2基板200Bとの接合面に接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程、
(5)反応流路110に試料136を付着させる工程、(6)第2基板200Bにおいて、第1基板100Bの接着剤流路120Bに接着剤を注入するための注入孔221を設ける工程、
(7)第2基板200Bに、第1基板100Bの接着剤流路120Bに充填する接着剤を吸引するための吸引孔222を形成する工程、
(8)第2基板200において、第1基板100との接合面に接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程、
(9)第1基板100と第2基板200とを密着させる工程、
(10)注入孔221から接着剤310を注入する工程、および
(11)接着剤310を硬化させる工程。
本実施形態2におけるPCRチップには第2基板200Bに接着剤流路を設けないため、上記実施形態1の製造方法のうち、第2基板における接着剤流路形成工程、および、第2基板の接着剤流路に親和性を付与する工程は不要である。上記各工程の順序は一例に過ぎず、必ずしも上記工程断面図の順序で処理される必要はない。製造工程の簡略化やコストダウンの観点から工程の順序を入れ替えたり、複数の工程を同時に実行したりすることが可能である。
上記製造工程のうち、次の工程を除いて、上記実施形態1と同様に考えられる。
上記(1)の第1基板100Bに反応流路110を形成する工程および(2)の第1基板100Bに接着剤流路120Bを形成する工程では、金型を用いた射出成形を用いることもできるが、コスト削減の観点からは、フォトリソグラフィ法等を適用して反応流路110および接着剤流路120Bを形成することが好ましい。例えば、第1基板100Bの流路形成面にレジストを塗布し、マスクを介して反応流路110および接着剤流路120Bの形状に露光し現像し、エッチングをして、所定の幅および深さの反応流路110および接着剤流路120Bを形成する。
上記(10)の第2基板200Bの注入孔221から接着剤310を注入する工程では、図6(b)で説明したノズル304および306を第1基板100Bの接着剤流路120Bにまで届くような深度に挿入する。接着剤注入の詳細については上記実施形態1と同様である。
以上、本実施形態2によれば、上記実施形態1と同様の作用効果を奏する他、接着剤流路120Bを第1基板Bのみに設け、しかも金型を用いないので、比較的安価にPCRチップを製造することができる。
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。すなわち、上記実施形態1および2を通じて説明されたPCRチップの構造や製造方法は、具体的な使用目的に応じて適宜に変更を加えることができ、上記実施形態の記載に限定されるものではない。そして、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば、上記実施形態1では第1基板100と第2基板200とに接着剤流路を設け、上記実施形態2では第1基板100Bに接着剤流路を設けていたが、第2基板のみに接着剤流路を設けるように構成してもよい。この場合、第1基板には反応流路のみが設けられることになる。
また、上記実施形態では、オプショナルであると説明したように、第2基板200(200B)に吸引孔222からの吸引をしなくてもよいし、吸引孔222を設けなくてもよい。吸引孔222を設けない場合、接着剤の充填に伴い接着剤流路空間の気体の逃げ道が無くなってしまうので、接着剤を充填する工程を減圧(真空)雰囲気下で行うことが好ましい。
また、接着剤流路に設ける注入孔および吸引孔の個数は任意であり、それぞれを複数設けてもよい。特に接着剤の粘度と接着剤流路の流路抵抗の兼ね合いから、接着剤流路の全長に亘って接着剤が流れない場合には、複数の注入孔から接着剤を注入したり、複数の吸引孔から接着剤を吸引したりしてもよい。
さらに、上記実施形態では、接着剤流路120(120B)および220の内面全体に親和性を付与していたが、親和性を付与する領域は接着剤流路の底面のみとし、接着剤流路の側面(側壁)には非親和性を付与するようにすることは好ましい。このようにすれば、接着剤の固化時に接着剤の収縮による引っ張り応力が第1基板100(100B)の接着剤流路底面と第2の基板との間にのみ作用し、接着剤流路の側壁に作用することがない。このため、接着剤の収縮に伴う強い引っ張り応力により接着剤流路の側壁が反ったり破壊されたりすることを防止することが可能である。なお、接着剤流路の側壁に非親和性を付与する工程としては、上記接合面に非親和性を付与する工程において塗布する非親和性を示す材料の塗布量を多めに調整し、接合面のみならず接着剤流路の側面にまで非親和性材料が及ぶようにすることが考えられる。
実施形態に係る第1基板と第2基板とを離した状態でのPCRチップの斜視図 実施形態1に係る第1基板の構造を示す三面図であり、図2(a)は第1基板の平面図、図2(b)は平面図の2b−2b断面における断面図、図2(c)は平面図の2c−2c断面における断面図、図2(d)は平面図の2d−2d断面における断面図 実施形態1に係る第2基板の構造を示す三面図であり、図3(a)は第2基板の平面図、図3(b)は平面図の3b−3b断面における断面図、図3(c)は平面図の3c−3c断面における断面図、図3(d)は平面図の3d−3d断面における断面図 実施形態1に係る第1基板100の各工程を説明する製造工程断面図 実施形態1に係る第2基板200の各工程を説明する製造工程断面図 実施形態1に係る接合された第1基板100および第2基板200の各工程を説明する製造工程断面図 実施形態2の第1基板100Bの構造を示す三面図であり、図7(a)は第1基板100Bの平面図、図7(b)は平面図の7b−7b断面における断面図、図7(c)は平面図の7c−7c断面における断面図、図7(d)は平面図の7d−7d断面における断面図 実施形態2の第2基板200Bの構造を示す三面図であり、図8(a)は第2基板200Bの平面図、図8(b)は平面図の8b−8b断面における断面図、図8(c)は平面図の8c−8c断面における断面図、図8(d)は平面図の8d−8d断面における断面図
符号の説明
1…PCRチップ、100、100B…第2基板、110…反応流路、111…供給領域、112…排出領域、120、120B、220、300…接着剤流路、121…注入領域、122…吸引領域、130…導入ガス、132…ローラ、136…試料、200、200B…第2基板、211…供給口、212…排出口、221…注入孔、222…吸引孔、301…治具、304、306…ノズル、308…光、310…接着剤

Claims (11)

  1. 第1の基板および第2の基板を接合して構成されるバイオチップの製造方法であって、
    該第1の基板に試料を設けるべき反応流路を形成する工程と、
    該第1の基板または該第2の基板の少なくとも一方に接着剤を充填するための接着剤流路を形成する工程と、
    該第1の基板または該第2の基板のいずれか一方に該接着剤流路に接着剤を注入するための注入孔を設ける工程と、
    該第1の基板と該第2の基板とを密着させる工程と、
    該注入孔から該接着剤を注入する工程と、
    該接着剤を硬化させる工程と、を備えたこと
    を特徴とするバイオチップの製造方法。
  2. 前記第1の基板または前記第2の基板のいずれか一方に、前記接着剤流路に充填する接着剤を吸引するための吸引孔を形成する工程をさらに備える、
    請求項1に記載のバイオチップの製造方法。
  3. 前記第1の基板において、前記第2の基板との接合面に前記接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程をさらに備える、
    請求項1または2に記載のバイオチップの製造方法。
  4. 前記第2の基板において、前記第1の基板との接合面に前記接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程をさらに備える、
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバイオチップの製造方法。
  5. 前記接着剤流路において、少なくとも底面に前記接着剤に対する所定の親和性を付与する工程をさらに備える、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバイオチップの製造方法。
  6. 前記接着剤流路の側面に、前記接着剤に対する所定の非親和性を付与する工程をさらに備える、
    請求項5に記載のバイオチップの製造方法。
  7. 前記第1の基板と前記第2の基板とを密着させる工程の前に、
    前記反応流路に前記試料を付着させる工程をさらに備える、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載のバイオチップの製造方法。
  8. 前記接着剤流路を形成する工程では、
    前記第1の基板と前記第2の基板とに略半円形状の溝を形成するものであり、
    前記第1の基板と前記第2の基板とを密着させることにより断面が略円形状の前記接着剤流路が形成される、
    請求項1乃至7のいずれか一項に記載のバイオチップの製造方法。
  9. 接合された2つの基板により構成されるバイオチップであって、
    試料を設けるべき反応流路を備える第1の基板と、
    該第1の基板と接合される第2の基板と、を備え、
    該第1の基板または該第2の基板の少なくとも一方には接着剤を充填するための接着剤流路が形成されており、
    該第1の基板には、
    該反応流路と該接着剤流路との間に該接着剤流路に充填された接着剤が該反応流路に流れることを防止する隔壁が設けられており、
    該第1の基板または該第2の基板のいずれか一方には、
    該接着剤流路に接着剤を注入するための注入孔が設けられている、
    ことを特徴とするバイオチップ。
  10. 前記第1の基板または前記第2の基板のいずれか一方には、
    前記接着剤流路に充填する接着剤を吸引するための吸引孔が設けられている、
    請求項9に記載のバイオチップ。
  11. 前記第1の基板および前記第2の基板が接合されることにより断面が略円形状の前記接着剤流路が形成されている、
    請求項9または10に記載のバイオチップ。
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