JP2009220477A - 非接着部を有するマイクロチップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 互いに恒久接着可能な材質からなる第1の基板と第2の基板のうちの少なくとも一方の基板の貼り合わせ面を表面改質処理してから両基板を貼り合わせて恒久接着させることによりマイクロチップを製造する方法において、非接着部となるべき箇所に対応する箇所の前記第1の基板の外表面を吸引手段により引き上げながら前記第2の基板と貼り合わせることにより両基板間の非接着部となるべき箇所を剥離状態に維持し、前記表面改質処理による活性化状態が消失した後に、前記吸引手段による前記第1の基板の引き上げを停止させることにより非接着部を形成することを特徴とする非接着部を有するマイクロチップの製造方法。
【選択図】 図1
Description
(1)接着剤や溶剤を用いて接着する。
微細な流路や反応室を損なうことなく接着剤や溶剤を塗布することは比較的困難であり、生産性が低い。
(2)高温、高圧を(場合により溶剤も)作用させて接着する。
この方法は、ガラスの熱溶着やアクリルの拡散接合等に使用できるが、僅かながらも素材の変形を伴い、微細な流路や反応室を損なう危険がある。また、特殊な技術と大がかりな生産設備を必要とする。
(3)基板となる素材が持つ自己吸着性のみを用いて貼り合わせる。
この方法の場合、使用できる素材が限られ、また発生できる吸着力が弱いため、チップの機械的強度や管路耐圧が低い。
(4)負圧を用いて基板同士を吸着させ、貼り合わせる。
本来の流路や反応室の他に、吸引管路を設け、真空吸引することにより負圧を発生させ、吸盤のように基板同士を吸着させて貼り合わせる方法であるが、余分な吸引管路を必要とするばかりか、貼り合わせ力も弱い。
(5)シリコーンの恒久接着(いわゆるパーマネント・ボンディング)を用いる。
シリコーンには数々の種類や形態が存在するが、基本となる比較的純粋な構造を持つ物質はPDMS(ポリジメチルシロキサン)と呼ばれる。主鎖にシリコン(Si)基を持つ高分子化合物で、エラストマータイプの樹脂である。具体的には、米国ダウコーニング社製のSYLGARD 184 SILICONE ELASTOMER等がある。PDMSは微細構造鋳型に対する良好なモールド転写性や、透明性、耐薬品性、生体との相互作用の少なさなどのマイクロチップにおける優れた特徴を有している。
液状やグリース状を除く固形のシリコーン全般に関して、恒久接着と呼ばれる特異な性質を示すことが知られている。前処理としてシリコーン基板の貼り合わせ面に酸素プラズマ等を作用させ、適度な活性化状態を励起させる。その後、直ちに貼り合わせ面同士を十分に密着させ、一定時間放置すると、貼り合わせ面の接着が行われる。この接着現象を恒久接着と呼ぶ。
恒久接着の接着強度は、外部から力を加えて無理に剥がそうとすると、貼り合わせ面が剥がれるのではなく、シリコーンが千切れてしまう程の十分な強度を有している。接着剤や溶剤を使用せず、高温や高圧を作用させることもないので、微細な流路や反応室を損なわない。更に、特殊な技術を必要とせず、設備も簡便である。このため、シリコーンを用いたマイクロチップの製作において、基板同士の貼り合わせに一般的に使用されている。
第1の基板を固形のシリコーンとした場合、恒久接着が可能な第2の基板の材質は、シリコーン、ガラス、シリコン(単結晶)、サファイア、ポリスチレンなどの一部の樹脂などである。第1の基板は必ず貼り合わせ前に表面改質処理などの前処理が必要だが、第2の基板のうちガラスやシリコンなどは必ずしも前処理を必要としない材質もある。
例えば、シリコーン素材の基板の恒久接着を用いた貼り合わせの場合、一般的に、下記の3種類の方法が試用されている。
(1)非接着部に対応したマスクを載置し、酸素プラズマ処理又はエキシマUV光照射処理を行う方法。
この方法は特許文献1の段落0033及び特許文献3の請求項5に記載されている。この方法は、非接着部が微小で、広範囲に点在している場合、マスクの製作や使用が困難である。また、マスクを使用する際、マスクに付着していたゴミなどの異物で基板の貼り合わせ面を汚染する危険性がある。更に、流体が通過する流路内にプラズマやエキシマUV光で処理された部分と処理されない部分とが存在し、流路壁面性状の均一性に欠ける。流路内壁と微量流体との間には相対的に大きな界面力が作用するので、流路壁面性状は流体の挙動に大きく影響する。また、微小部分に対するマスクによる処理の選択性は必ずしも十分ではない。プラズマやエキシマUV光及びそれに伴い発生するオゾンの効果はマスク下部にも及び、また逆にマスク周辺の処理効果が低下する傾向がある。その結果、処理部と未処理部との境界付近は処理程度が曖昧になり、接着部と非接着部との明確な造り分けが困難になる。
(2)非接着性物質又はプラズマで活性化しない物質を塗布する。
この方法は特許文献2の請求項4及び請求項5に記載されている。この方法は、流路内を出入りする物質と塗布物質との相性(耐性)が問題となり、また流路内に塗布した部分と塗布しない部分との流路壁面性状の大きな不均一が生じる。また、塗布時の異物混入の恐れもある。更に、非接着部が微小で広範囲に点在している場合、正確に塗布することが難しく、生産性に欠けるか又は利用が困難であり、技術的にも高度な塗布装置を必要とする。また、塗布物質の表面張力等の影響により、塗布面の厚みは必ずしも均一にならない。その結果、塗布部と非塗布部との境界が曖昧になり、接着部と非接着部との明確な造り分けが困難になる。特許文献2には、別法として、非接着性の表面を有する埋め込み材を用いる方法が請求項7及び請求項8に記載されているが、前記と同様な問題点がある。
(3)石英ガラスを基材としたマスクを用いてエキシマUV光照射処理を行う方法。
この方法は特許文献4(特開2001−324816号公報)の請求項1〜請求項5に記載されている。エキシマUV光を透過する石英ガラスに遮光パターンを形成し、これをマスクとしてエキシマUV光を照射する。この方法は、前記のマスクを用いる方法と異なり、非接着部が微小で広範囲に点在している場合でも使用可能である。しかし、マスク使用による異物による汚染、流路壁面性状の不均一性、接着境界の不明瞭性は同様に存在する。また、石英ガラス製マスクは高価で壊れやすく、取り扱いに細心の注意が必要である。更に、長期のエキシマUV光照射による石英ガラスの透過率の劣化も懸念される。
(1)恒久接着前の表面改質処理時にマスクを使用しないため、マスク由来の異物汚染が生じない。
(2)恒久接着前の表面改質処理終了後に2枚の基板を貼り合わせる過程においても、貼り合わせ面を汚染するような行為(例えば、貼り合わせ面上に物をかざしたり、接触させる等)が無い。
(3)恒久接着前に貼り合わせ面を均一に表面改質処理するため、非接着部の流路と他の一般的な溝状のチャネル構造の流路との差が無いので、非接着部に基づく流路壁面性状の均一性が高い。
(4)恒久接着前に貼り合わせ面を均一に表面改質処理するため、接着部と非接着部との境界が明瞭に形成できる。
(5)非接着物質等の塗布や埋め込みを全く行わないため、それらによる流路の汚染、流路壁面性状の不均一性が生じない。
(6)塗布装置などの特殊な技術や装置を必要としない。
第1の基板1は非接着部が適度に変形できるように、厚さは10μm〜5mm、好ましくは30μm〜3mm、より好ましくは100μm〜1mmの範囲内である。図示されていないが、第1の基板1の貼り合わせ面には流路、反応室、液体貯留室、ポートなどのマイクロチップとして必要な微細構造が形成されていてもよい。
第2の基板3はマイクロチップとして必要十分な機械的強度を発揮できる厚さであることが好ましい。第2の基板3の厚さは層の積層構造に応じて変化する。例えば、第1の基板とだけ積層される2層構造の場合、一般的に、機械的強度が発揮できる0.5mm〜5mm程度が好ましい。一方、3層以上の多層構造の場合、必ずしも第2の基板3に機械的強度を持たせる必要性が無いので、第1の基板と同様に、10μm〜5mm程度でよい。第2の基板3の貼り合わせ面には流路、反応室、液体貯留室、ポートなどのマイクロチップとして必要な微細構造が形成されていてもよい。
図7に示される断面構造を有するマイクロチップを製造した。第1の基板1の材質はポリジメチルシロキサン(PDMS)である。第1の基板1の全体厚さは200μmであり、流路21の幅は100μm、高さは30μmである。バルブ室27の直径は1mm、高さは30μmであり、弁23の幅は30μmである。第2の基板3の材質はガラスであり、厚さは1mmである。第3の基板19の材質はPDMSであり、厚さは2mmであり、吸引室7は平面が円形の形状をしており、直径は1.1mm、高さは150μmである。吸引管路9の幅は100μm、高さは150μmであり、吸引口11の直径は2mmである。前記の寸法の流路21、バルブ室27及び弁23を有する第1の基板1を常用の光リソグラフ法により製作し、同様に、前記の寸法の吸引室7,吸引管路9及び吸引口11を有する第3の基板19を常用の光リソグラフ法により製作した。第1の基板1と第3の基板19の各貼り合わせ面をクリーンルーム内で照射強度が20mW/cm2のエキシマUV光を1分間照射することにより表面改質処理してから両基板を恒久接着させた。次いで、この貼り合わせ体の第1の基板1の露出面側と第2の基板3の貼り合わせ面をクリーンルーム内で照射強度が20mW/cm2のエキシマUV光を1分間照射することにより表面改質処理し、第3の基板19の吸引口11に真空ポンプを接続して第1の基板1を吸引室7内に吸引変形させ、弁座25が第2の基板3の貼り合わせ面に接触しないように維持しながら、第1の基板1を第2の基板3に恒久接着させた。この状態のまま約1時間静置した。その後、第1の基板1の吸引変形を解除し、弁23の弁座25を第1の基板1に接触させた。
(2)弁開閉試験
マイクロチップの流路21の一方から赤色に着色された水を5kPaの圧力を掛けて送入した。バルブ室27の手前で赤色水が停止するのが確認された。その後、吸引口11から真空ポンプで弁23を吸引変形させると、赤色水が弁23を通過して他方の流路へ流れ出るのが確認され、吸引変形を解除すると赤色水の流下が止まることが確認された。この試験により、本発明の方法に従って製造されたマイクロチップ13Cの弁座25が非接着の状態に維持されており、これにより弁23が正常に開閉動作できることが立証された。
3 第2の基板
5,5A,5B 吸引用部材
7 吸引室
9 吸引管路
11 吸引口
13,13A,13B,13C マイクロチップ
15 非接着部
17 空隙
19 第3の基板
21 流路
23 弁
25 弁座
27 バルブ室
100 従来のマイクロチップ
102 基板
104 流路
105,106 ポート
108 基板
200 特許文献2に記載された化学反応用カートリッジ
202 第1の基板
204,206 ポート
208 第2の基板
210 薄膜層
212 加圧手段
214 空隙
Claims (6)
- 互いに恒久接着可能な材質からなる第1の基板と第2の基板のうちの少なくとも一方の基板の貼り合わせ面を表面改質処理してから両基板を貼り合わせて恒久接着させることによりマイクロチップを製造する方法において、非接着部となるべき箇所に対応する箇所の前記第1の基板の外表面を吸引手段により引き上げながら前記第2の基板と貼り合わせることにより両基板間の非接着部となるべき箇所を剥離状態に維持し、前記表面改質処理による活性化状態が消失した後に、前記吸引手段による前記第1の基板の引き上げを停止させることにより非接着部を形成することを特徴とする非接着部を有するマイクロチップの製造方法。
- 前記吸引手段は、少なくとも吸引室と吸引口を有する吸引用部材からなり、前記吸引室は前記第1の基板を負圧で吸引変形させるのに必要十分な容積を有し、前記吸引口には排気手段が接続され、前記吸引用部材は前記第1の基板の引き上げが停止された後、前記第1の基板から剥離される請求項1記載のマイクロチップの製造方法。
- 前記吸引手段は、少なくとも吸引室と吸引口を有する第3の基板からなり、前記吸引室は前記第1の基板を負圧で吸引変形させるのに必要十分な容積を有し、前記吸引口には排気手段が接続され、前記第3の基板及び前記第1の基板のうちの少なくとも一方を表面改質処理してから両基板を貼り合わせ、前記第3の基板は前記第1の基板の引き上げが停止された後、前記第1の基板上にそのまま残置される請求項1記載の非接着部を有するマイクロチップの製造方法。
- 前記吸引手段は、少なくとも吸引口と吸引管路を有する第3の基板からなり、前記第1の基板の当該第3の基板との貼り合わせ面側に、前記第1の基板を負圧で吸引変形させるのに必要十分な容積を有する吸引室が形成されており、前記第3の基板及び前記第1の基板のうちの少なくとも一方を表面改質処理してから両基板を貼り合わせる際、前記第3の基板は、前記吸引管路を前記第1の基板の吸引室と位置合わせして前記第1の基板と貼り合わされ、前記吸引口には排気手段が接続され、前記第3の基板は前記第1の基板の引き上げが停止された後、前記第1の基板上にそのまま残置される請求項1記載の非接着部を有するマイクロチップの製造方法。
- 前記第1の基板はポリジメチルシロキサン、シリコンゴム及び硬化後のRTVゴムからなる群から選択される固形シリコーンから形成されており、前記第2の基板は前記固形シリコーン、ガラス、シリコン(単結晶)、サファイア及びポリスチレンからなる群から選択される材料から形成されており、前記吸引用部材はプラスチック又は金属からなる群から選択される材料から形成されている請求項2記載の非接着部を有するマイクロチップの製造方法。
- 前記第1の基板はポリジメチルシロキサン、シリコンゴム及び硬化後のRTVゴムからなる群から選択される固形シリコーンから形成されており、前記第2の基板は前記固形シリコーン、ガラス、シリコン(単結晶)、サファイア及びポリスチレンからなる群から選択される材料から形成されており、前記第3の基板は前記固形シリコーン、ガラス、シリコン(単結晶)、サファイア及びポリスチレンからなる群から選択される材料から形成されている請求項3又は4記載の非接着部を有するマイクロチップの製造方法。
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