ベルトコンベアの火災原因を調査したところ、ベルトコンベアのローラの回転軸部分が固着し、この固着部分が摩擦によって異常昇温して、落炭や付着炭が発火することが分かっている。そのため、ベルトコンベアの火災を未然に防止するには、ローラの温度を計測することが望ましい。
しかしながら、特許文献1の光ファイバを利用した温度計測では、光ファイバの特性として、ある一定長(数m)の平均温度しか計測できず、ローラなどの局所的な温度を計測することはできないため、ローラの異常昇温を早期に発見することはできない。また、光ファイバでローラの温度を計測するために、全てのローラの近傍に光ファイバを敷設することも考えられるが、ベルトコンベアの長さは数百mにおよぶ場合があり、施工に時間や費用がかかってしまう。さらに、ベルトコンベアの補修作業などにおいては、光ファイバを切断しないように慎重に作業を行う必要があるため、やはり時間や費用がかかってしまう。
特許文献2のベルトを駆動しながら温度を計測する構成では、ベルトの温度しか計測することはできず、個々のローラの温度を計測することはできない。また、赤外線放射温度計をレール上で移動させる構成では、ベルトを介してローラの温度を計測することはできるが、ベルトによって遮蔽された温度を計測することになるので、正確な温度は計測できない。さらに、ベルトコンベアには、搬送物を搬送するキャリア側と、搬送後に戻ってくるリターン側とにそれぞれローラが設けられているが、ベルトを介してリターン側のローラの温度を計測することはできない。
本発明は、上記課題を解決するために、ベルトコンベアのキャリア側およびリターン側のローラの温度を計測することができるベルトコンベアの温度監視システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ベルトコンベアの搬送方向に沿って敷設されたレールと、レール上を移動可能な第1の移動手段と、第1の移動手段に設けられ、ベルトコンベアの側方で、少なくともベルトコンベアのキャリア側とリターン側との間で移動可能な第2の移動手段と、第2の移動手段に保持された非接触式の温度センサと、第1の移動手段および第2の移動手段により、温度センサをベルトコンベアの複数のローラの側方に移動させる移動制御手段と、温度センサにより、キャリア側およびリターン側のローラの温度を側方から計測し、温度センサから出力された温度情報に基づいてローラの温度を監視する温度監視手段と、を備えるベルトコンベアの温度監視システムである。
請求項1に記載の発明によれば、移動制御手段により第1の移動手段および第2の移動手段を制御して、温度センサをキャリア側およびリターン側のローラの側方に移動させる。そして、温度監視手段により、温度センサを制御してローラの温度を側方から計測し、温度センサから出力された温度情報に基づいてローラの温度を監視する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のベルトコンベアの温度監視システムにおいて、レールが、ベルトコンベアが設置された建屋の天井または壁に敷設されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のベルトコンベアの温度監視システムにおいて、搬送方向に沿って配置され、搬送方向におけるローラの位置情報を移動制御手段へ送信する位置情報送信手段を備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のベルトコンベアの温度監視システムにおいて、温度監視手段は、ベルトコンベアの運転停止後にローラの温度の監視を開始することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のベルトコンベアの温度監視システムにおいて、複数のローラの過去に計測された温度情報を記憶する温度情報記憶手段と、この過去の温度情報に基づいて、ベルトコンベアの火災の発生を予測する火災予測手段とを備えることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のベルトコンベアの温度監視システムにおいて、温度情報に基づいてベルトコンベアの火災の発生を検知する火災検知手段を備えることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のベルトコンベアの温度監視システムにおいて、火災検知手段は、火災を検知した場合に、ベルトコンベアの消火設備を作動させるための消火信号を出力することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のベルトコンベアの温度監視システムにおいて、レール、第1の移動手段、第2の移動手段および温度センサをベルトコンベアの両側方にそれぞれ設置し、ローラの温度を両側方から測定することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、第1の移動手段および第2の移動手段により、温度センサをキャリア側およびリターン側のローラの側方に移動させることができるので、搬送物やベルトなどの障害物を介さずにキャリア側およびリターン側のローラの温度を直接計測することができる。また、第1の移動手段および第2の移動手段により、温度センサの位置が調節可能となるので、ローラの温度計測に障害となるもの、例えばベルトコンベアの基台などがある場合でも、その障害物を避けるようにして様々な角度からローラの温度を計測することができる。このように、障害物を介さずに直接計測したローラの温度を監視するので、ベルトコンベアの状況を正確に把握することができ、火災の防止だけでなく補修作業の要否判定など、ベルトコンベアの適正な運用に資することができる。さらに、少ない台数の温度センサで複数のローラの温度を計測することができるので、装置の施工時間や費用を低減することができる。また、ベルトコンベアの遠隔監視が可能となるので、従来の作業者による監視に比べ、作業者の負担を軽減することができ、監視にかかる時間の低減や、確認漏れなども防止することができる。
請求項2に記載の発明によれば、レールが、ベルトコンベアの建屋の天井または壁に敷設されているので、温度計測時以外は、温度センサをベルトコンベアから遠ざけておくことができる。したがって、ベルトコンベアの補修作業などの際に温度センサが邪魔になることはなく、補修作業に支障をきたすことがない。
請求項3に記載の発明によれば、位置情報送信手段により、搬送方向におけるローラの位置情報を移動制御手段へ送信するので、移動制御手段は、この位置情報に基づいて第1の移動手段および第2の移動手段を制御し、温度センサをキャリア側およびリターン側のローラの側方に移動させることができる。したがって、ベルトなどの障害物を介さずに、ローラの温度を正確に計測することができ、火災の予防およびベルトコンベアの適正な運用に資することができる。
請求項4に記載の発明によれば、温度監視手段により、ベルトコンベアの運転停止後にローラの温度の監視を開始するので、ベルトへの放熱の影響を受けることなく、ローラの温度を正確に計測することができ、火災の予防およびベルトコンベアの適正な運用に資することができる。
請求項5に記載の発明によれば、複数のローラの過去に計測された温度情報に基づいて、ベルトコンベアの火災の発生を予測するので、ローラの異常昇温による火災の発生を未然に防止することができる。また、火災発生予測をローラの補修時期の目安にすることもできるので、ベルトコンベアの適正な運用に資することができる。
請求項6に記載の発明によれば、温度情報に基づいてベルトコンベアの火災の発生を早期に検知することができる。また、請求項7に記載の発明によれば、火災を検知した場合に、ベルトコンベアの消火設備を作動させるための消火信号を出力するので、ベルトコンベアの火災を自動的、かつ早期に消火することができる。これらによれば、ベルトコンベアで火災が発生した場合でも早期に検知して消火することができるので、火災による損害を最小限にすることができる。
請求項8に記載の発明によれば、レール、第1の移動手段、第2の移動手段および温度センサをベルトコンベアの両側方にそれぞれ設置し、ローラの温度を両側方から測定するようにしたので、ローラの片側の回転軸部分に発生している異常昇温も確実に検知することができ、火災の予防およびベルトコンベアの適正な運用に資することができる。
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は、石炭火力発電所において、貯炭場からボイラまで石炭を搬送するベルトコンベア装置(以下、コンベア装置という)1の概略的な構成を示す斜視図、図2は、ベルトコンベアの温度監視システム(以下、温度監視システムという)2を示す斜視図である。コンベア装置1は、コンベアベルトCB、ヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜Rn、テンションローラTR、錘Wを備える。
コンベアベルトCBは、耐熱性および難燃性を有するゴムで無端状に形成されており、貯炭場から供給コンベア10、シュート11を介して供給された石炭12を載置し、ボイラに石炭12を供給するバンカ13まで石炭12を搬送する。ヘッドプーリHPは、コンベアベルトCBの先端側に配置されており、モータ(図示せず)の駆動によってコンベアベルトCBを駆動する。テールプーリTPは、コンベアベルトCBの後端側に配置されてコンベアベルトCBが外周に掛けられており、コンベアベルトCBの移動に従って回転する。
キャリアローラC1〜Cnは、コンベアベルトCBの石炭12を搬送するキャリア側(図中上側)に配置されており、コンベアベルトCBのキャリア側を下方から支持する。リターンローラR1〜Rnは、石炭12を搬送してテールプーリTP側に戻ってくるコンベアベルトCBのリターン側(図中下側)に配置されており、コンベアベルトCBのリターン側を下方から支持する。テンションローラTRは、リターンローラR1〜Rnの間に配置されて外周にコンベアベルトCBが掛けられており、錘Wによって下方に荷重がかけられことにより、コンベアベルトCBに張力を付与する。
ヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜RnおよびテンションローラTRは、円筒状のローラ本体と、ローラ本体の両端に組み込まれたベアリングと、このベアリングに支持された回転軸(いずれも図示せず)とを備えている。これらの各プーリおよびローラの回転軸は、金属製のフレーム材で構成された基台14によって支持されている。
図3は、温度監視システム2の側面図、図4は、温度監視システム2の機能的な構成を示すブロック図である。温度監視システム2は、コンベア装置1の上方で、かつコンベア装置1の左右の側方に配置されたレール21L、21Rと、温度計測ユニット22L、22Rと、監視制御装置23とを備える。
レール21L、21Rは、コンベア装置1が設置されたコンベア建屋(図示せず)の天井15に敷設された金属製の1本のレールであり、コンベア装置1の搬送方向に沿うように敷設されている。なお、図2では、図面の煩雑化を避けるため、レール21Rは、コンベア装置1に重ならない位置で図示を省略している。
温度計測ユニット22L、22Rは、走行機構(第1の移動手段)24L、24Rと、昇降機構(第2の移動手段)25L、25Rと、サーモカメラ(温度センサ)26L、26Rと、本発明の位置情報送信手段の一部を構成するタグリーダ30L、30Rとを備える。
走行機構24L、24Rは、温度計測ユニット22L、22Rをレール21L、21R上で走行させるための機構である。走行機構24L、24Rは、詳しくは図示しないが、例えば、レール21L、21Rに当接する車輪と、車輪を回転駆動するモータなどから構成されており、モータによって車輪を回転させることにより、温度計測ユニット22L、22Rをレール21L、21R上で走行させる。
昇降機構25L、25Rは、サーモカメラ26L、26Rを上昇および下降させ、少なくともコンベアベルトCBのキャリア側とリターン側との間で移動させるための機構である。昇降機構25L、25Rは、走行機構24L、24Rが組み込まれた筐体28L、28R内に一緒に組み込まれており、走行機構24L、24Rによってレール21L、21R上を移動する。昇降機構25L、25Rは、筐体28L、28Rの下面に設けられた伸縮アーム251L、251Rを上下方向で伸縮させて、サーモカメラ26L、26Rを上昇および下降させる。伸縮アーム251L、251Rは、複数の板状のステーを両端および中間部分が回転自在となるように連結した構造を有しており、昇降機構25L、25Rによって一部のステーが回転されることにより伸縮する。
サーモカメラ26L、26Rは、物体から放射される赤外線を撮像して熱分布を表すサーモ画像を出力する装置であり、赤外線サーモグラフィとも呼ばれる。サーモカメラ26L、26Rは、伸縮アーム251L、251Rの下端に保持されており、撮影方向がコンベア装置1を向くように配置されている。
タグリーダ30L、30Rは、コンベア装置1の基台14に取り付けられたRFID(Radio Frequency Identifier)タグ31R、31Lとともに、本発明の位置情報送信手段を構成する。RFIDタグ31R、31Lは、ヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜Rn、テンションローラTRの近傍に配置されており、タグリーダ30L、30Rからの電波をエネルギー源として動作し、タグリーダ30L、30Rに向けて、ヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜Rn、テンションローラTRの位置を表す位置情報を送信する。
筐体28L、28R内には、監視制御装置23との間で無線通信を行なう無線通信装置281L、281Rが組み込まれている。この無線通信装置281L、281Rと、サーモカメラ26L、26Rおよびタグリーダ30L、30Rの間は、ケーブル261L、261Rによって接続されている。サーモカメラ26L、26Rは、撮像したローラのローラNo.と、サーモ画像とを含む温度情報を、ケーブル261L、261Rを介して無線通信装置281L、281Rに送信する。また、タグリーダ30L、30Rは、対応するローラのローラNo.と、RFIDタグとの間の無線強度とを含む位置情報をケーブル261L、261Rを介して無線通信装置281L、281Rに送信する。無線通信装置281L、281Rは、受信した温度情報および位置情報を監視制御装置23に送信する。
監視制御装置23は、コンピュータ装置からなり、詳しくは図示しないが、制御プログラムが格納されたストレージデバイス、ストレージデバイスから読み出された制御プログラムが展開されるメモリ、制御プログラムに従ってコンベア装置1の温度監視を行なうCPU(Central Processing Unit)、無線通信装置281L、281Rと無線通信を行なう無線通信部などを備えている。監視制御装置23のCPUは、制御プログラムに従って動作することにより、移動制御部(移動制御手段)231、温度監視部(温度監視手段)232、火災検知部(火災検知手段)233、温度情報データベース(DB)(温度情報記憶手段)234および火災予測部(火災予測手段)235として機能する。なお、図面の煩雑化を防ぐため、無線通信部の図示は省略している。
移動制御部231は、タグリーダ30L、30Rから受信した位置情報に基づいて、ヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜Rn、テンションローラTRの位置を特定する。具体的には、位置情報に含まれるローラNo.に基づいて、近傍にあるローラを特定し、無線強度に基づいて、タグリーダからRFIDタグまでの距離、すなわちサーモカメラからローラまでの距離を特定する。移動制御部231は、位置情報に基づいて、走行機構24L、24Rおよび昇降機構25L、25Rを駆動制御するための移動制御情報を生成して、走行機構24L、24Rおよび昇降機構25L、25Rに送信する。これにより、移動制御情報に基づいて走行機構24L、24Rおよび昇降機構25L、25Rが駆動され、ヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜Rn、テンションローラTRの側方に、サーモカメラ26L、26Rが移動される。
温度監視部232は、温度監視システム2全体を統括的に制御する制御部であり、所定時間あるいは所定日数などの所定期間毎に、温度監視システム2にコンベア装置1の温度監視を開始させる。また、温度監視部232は、サーモカメラ26L、26RがヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜Rn、テンションローラTRの側方に移動された場合に、サーモカメラ26L、26Rに各ローラの温度を計測させる。温度監視部232は、サーモカメラ26L、26Rから出力された温度情報を受信し、この温度情報に基づいて、監視結果である監視情報を生成して制御コンソール4に送信する。監視情報は、例えば、計測日時と、各ローラの温度とを含む情報である。制御コンソール4は、例えば、石炭火力発電所の監視制御室に設置されており、監視情報は、制御コンソール4を利用して監視員により確認される。
温度情報は、火災検知部233にも入力される。火災検知部233は、入力された温度情報が所定温度以上(例えば100°C以上)である場合に、コンベア装置1が火災になっていると判定し、制御コンソール4に火災検知情報を送信する。制御コンソール4は、火災検知情報を受信すると、火災発生を知らせる警報を発し、消防署への自動通報などを行なう。また、火災検知部233は、火災を検知した場合には、コンベア建屋内に設置された消火設備5を動作させるための消火信号をスプリンクラー制御装置51に送信する。消火信号を受信したスプリンクラー制御装置51は、ウォータポンプ52を駆動させ、消火配管53を介して、コンベア建屋の天井15に設置されたスプリンクラー54から水を噴射し、コンベア装置1の火災を自動的に消火する。
温度情報DB234は、過去の温度情報を格納するデータベースである。温度情報は、温度監視部232によって温度情報DB234に格納される。図5は、温度情報DB234を表しており、温度情報は、ヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜RnおよびテンションローラTR毎に、各計測日に計測された温度が記憶されている。
火災予測部235は、温度情報DB234に格納されている過去の温度情報に基づいて、コンベア装置1の火災の発生を予測する。火災予測部235は、例えば、温度が100°Cを超えているローラがある場合に、そのローラに基づく火災の発生を予測する。図5に示す例では、例えばキャリアローラC3の「2015年11月15日」における温度が169°Cとなっているため、火災予測が行なわれる。
図6は、火災予測部235による火災予測をグラフによって表したものである。火災予測部235は、温度情報DB234から、例えば、最後に行なわれたコンベア装置1の補修作業以降の温度情報を読み出し、読み出した温度情報に基づいて、対象とするローラの温度が、石炭12の発火温度である200°Cに達する火災予測日Fdを予測する。なお、火災予測に、最後に行なわれた補修作業以降の温度情報を利用するのは、補修作業によってローラの不具合が解消され、火災予測日が変化するためである。
図6は、上述したキャリアローラC3の火災予測日Fdを予測したものであり、最後の補修作業以降の最初の計測日Mdから、最後の計測日「2015年11月15日」までの温度変化に基づいて、キャリアローラC3の温度が200°Cに達する火災予測日Fdを、「2016年3月21日」と予測している。火災予測部235は、対象とするローラNo.と、火災予測日Fdとを含む火災予測情報を制御コンソール4に送信する。制御コンソール4で受信された火災予測情報は、監視員により確認され、コンベア装置1の補修作業の計画などに利用される。
次に、上記温度監視システム2の作用について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。温度監視部232は、コンベア装置1による石炭12の搬送中には、コンベア装置1の温度監視は行なわず、コンベア装置1の運転停止後に温度監視システム2による温度監視を開始する(ステップS1でYES)。このように、コンベア装置1の運転停止後に温度監視を行なうのは、運転中は、コンベアベルトCBによってローラの熱が放熱されてしまい、正確な温度計測が行なえないからである。
移動制御部231は、タグリーダ30L、30RにRFIDタグ31L、31Rから位置情報を受信させ、タグリーダ30L、30Rで受信した位置情報を、ケーブル261L、261Rおよび無線通信装置281L、281Rを介して監視制御装置23に送信させる。移動制御部231は、受信した位置情報に基づいて移動制御情報を生成し、走行機構24L24Rおよび昇降機構25L、25Rに送信する。走行機構24L24Rおよび昇降機構25L、25Rは、移動制御情報に基づいて、サーモカメラ26L、26Rを最初に温度計測が行なわれるテールプーリTPの側方に移動させる。
温度監視部232は、サーモカメラ26L、26RにテールプーリTPの温度を両側方から計測させる(ステップS2)。サーモカメラ26L、26Rから出力されたサーモ画像は、ローラNo.を含む温度情報として、監視制御装置23に送信される。
火災検知部233は、テールプーリTPの温度情報に基づき、コンベア装置1に火災が発生しているか否かを検知する(ステップS3)。火災検知部233は、火災発生を検知した場合には(ステップS3でYES)、制御コンソール4に火災検知情報を送信し、スプリンクラー制御装置51に消火信号を送信する(ステップS4)。制御コンソール4は、火災検知情報を受信すると、火災発生を知らせる警報を発し、消防署への自動通報などを行なう。また、スプリンクラー制御装置51は、消火信号を受信すると消火設備5を作動させ、コンベア装置1の火災を消火する。
また、温度監視部232は、火災検知部233で火災の発生が検知されなかった場合には(ステップS3でNO)、移動制御部231によりサーモカメラ26L、26Rを次のキャリアローラC1の側方に移動させ、両側方から温度を計測させる(ステップS5)。火災検知部233は、キャリアローラC1の温度情報に基づき、コンベア装置1に火災が発生しているか否かを検知する(ステップS6)。火災発生を検知した場合には(ステップS6でYES)、制御コンソール4に火災検知情報を送信し、スプリンクラー制御装置51に消火信号を送信する(ステップS4)。
また、火災検知部233で火災の発生が検知されず(ステップS6でNO)、未計測のローラがある場合には(ステップS7でNO)、移動制御部231によりサーモカメラ26L、26Rを次のキャリアローラC2の側方に移動させ、両側方から温度を計測させる(ステップS5)。以上のように、監視制御装置23は、コンベア装置1の全てのローラの温度が計測し終わるまで、ステップS5〜S7を繰り返す。
監視制御装置23は、コンベア装置1の全てのローラの温度が計測し終わり(ステップS7でYES)、所定温度以上(例えば、100°C以上)のローラがない場合には(ステップS8でYES)、温度監視部232に監視情報を生成させ、生成された監視情報を制御コンソール4に送信する(ステップS9)。
また、監視制御装置23は、所定温度以上のローラがある場合には(ステップS8でNO)、火災予測部235にそのローラについての火災予測処理を実行させる(ステップS10)。火災予測部235は、温度情報DB234から、最後に行なわれたコンベア装置1の補修作業以降の温度情報を読み出し、読み出した温度情報に基づいて、対象とするローラの温度が、石炭12の発火温度である200°Cに達する火災予測日Fdを予測する。また、監視制御装置23は、ローラNo.と火災予測日Fdとを含む火災予測情報を制御コンソール4に送信する(ステップS11)。制御コンソール4で受信された火災予測情報は、監視員により確認され、コンベア装置1の補修作業の計画などに利用される。
以上のように、本発明を実施したベルトコンベアの温度監視システム2によれば、走行機構24L、24Rおよび昇降機構25L、25Rにより、サーモカメラ26L、26RをヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜RnおよびテンションローラTRの側方に移動させることができるので、石炭12やコンベアベルトCBなどの障害物を介さずにキャリア側およびリターン側のローラの温度を直接計測することができる。また、走行機構24L、24Rおよび昇降機構25L、25Rにより、サーモカメラ26L、26Rの位置が調節可能となるので、ローラの温度計測に障害となるもの、例えばコンベア装置1の基台14などがある場合でも、その障害物を避けるようにして様々な角度からローラの温度を計測することができる。このように、障害物を介さずに直接計測したローラの温度を監視するので、コンベア装置1の状況を正確に把握することができ、火災の防止だけでなく補修作業の要否判定など、コンベア装置1の適正な運用に資することができる。さらに、少ない台数のサーモカメラ26L、26Rで、ヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜RnおよびテンションローラTRの温度を計測することができるので、装置の施工時間や費用を低減することができる。また、コンベア装置1の遠隔監視が可能となるので、従来の作業者による監視に比べ、作業者の負担を軽減することができ、監視にかかる時間の低減や、確認漏れなども防止することができる。
また、レール21L、21Rが、コンベア装置1の建屋の天井15に敷設されているので、温度計測時以外は、サーモカメラ26L、26Rをコンベア装置1から遠ざけておくことができる。したがって、コンベア装置1の補修作業などの際にサーモカメラ26L、26Rが邪魔になることはなく、補修作業に支障をきたすことがない。
さらに、タグリーダ30L、30RおよびRFIDタグ31L、31Rにより、搬送方向におけるヘッドプーリHP、テールプーリTP、キャリアローラC1〜Cn、リターンローラR1〜RnおよびテンションローラTRの位置情報を移動制御部231へ送信するので、移動制御部231は、この位置情報に基づいて走行機構24L、24Rおよび昇降機構25L、25Rを制御し、サーモカメラ26L、26Rをキャリア側およびリターン側のローラの側方に移動させることができる。したがって、コンベアベルトCBなどの障害物を介さずに、ローラの温度を正確に計測することができ、火災の予防およびコンベア装置1の適正な運用に資することができる。
また、温度監視部232により、コンベア装置1の運転停止後にローラの温度の監視を開始するので、コンベアベルトCBへの放熱の影響を受けることなく、ローラの温度を正確に計測することができ、火災の予防およびコンベア装置1の適正な運用に資することができる。
また、複数のローラの過去に計測された温度情報に基づいて、コンベア装置1の火災の発生を予測するので、ローラの異常昇温による火災の発生を未然に防止することができる。また、火災発生予測をローラの補修時期の目安にすることもできるので、コンベア装置1の適正な運用に資することができる。
さらに、温度情報に基づいてコンベア装置1の火災の発生を早期に検知することができる。また、火災を検知した場合に、消火設備5を作動させるための消火信号を出力するので、コンベア装置1の火災を自動的、かつ早期に消火することができる。これらによれば、コンベア装置1で火災が発生した場合でも早期に検知して消火することができるので、火災による損害を最小限にすることができる。
また、レール21L、21R、走行機構24L、24R、昇降機構25L、25Rおよびサーモカメラ26L、26Rをコンベア装置1の両側方にそれぞれ設置し、ローラの温度を両側方から測定するようにしたので、ローラの片側の回転軸部分に発生している異常昇温も確実に検知することができ、火災の予防およびコンベア装置1の適正な運用に資することができる。
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、レール21L、21Rは、コンベア建屋の天井15に敷設したが、壁面に敷設してもよい。また、水平なコンベア装置1だけでなく、斜めに石炭12を搬送するコンベア装置や、垂直方向に搬送するコンベア装置にも本発明は適用可能である。さらに、移動制御部231、温度監視部232、火災検知部233、温度情報DB234および火災予測部235を監視制御装置23に設けたが、それぞれを個別の装置として構成してもよい。さらに、温度センサとしてサーモカメラを用いたが、そのほかの非接触型温度センサを用いてもよいし、石炭12以外の搬送物を搬送するコンベアの温度監視にも利用してもよい。